ヨモの一族が眠る墓地
とは言っても、その形は質素を通り越したもので、ただ死体を生めた跡が残るばかりである
島の中では子供が肝試しに来る以外、誰も近寄ろうとはしない
「遺書読んだよ、お父さん」
「正直私的にはお父さんの言ってる事はあまりわかんなかったし、急に復讐とか言われても分からんないよ」
「それにこの力だって、無意識に使えるだけだし」
「なにより良い思い出がないから、あんまり使いたくないんだ」
12年前
「ここが噂の墓地よ、いいあなた達。これは私達の力を証明するチャンスだわ」
「ね、ねぇ……やっぱりやめましょうよ。こんなところ、危ないわ」
「そうよ、そんな……アンデッド退治なんて。ここ熊が出るって言うし」
「
だまらっしゃい! いい! アンデッドがなんだというの!」
「私達が教会学校で習った基礎を思い出しなさい、護身魔法学に対アンディッド魔法がばっちり入っていたはずよ!」
「実習訓練でもちゃんと使えたのだから、今回だってちゃんと出せるわ!」
「で、でも……」
「ねぇ……?」
「なによ! 言いたい事があるならはっきり言いなさいよ! 踏んづけるわよ!」
「その、アンデッドには効いても。熊には効かないじゃない……」
「
んまーっ! 熊が何よ! そんなの私の特殊な交渉術でなんとかしてやるわよ!」
「そんな無茶な……」
あれは私が小さい頃、墓地の方から聞こえる声に気づいて
様子を見に行くと、同じ歳ぐらいの女の子が3人居たんだ
物心付いた頃からそういった存在とまったく関わらなかったから、どうしても興味が湧いたんだっけ
「……」
「……あら、なんだかあそこ、誰か居ない?」
「本当ね、アンデッド……って感じでもないわ。じっとこっちを見てなにかしら」
「熊じゃないかしら」
「熊!? あれが熊なの!? 人そっくりね」
「どう見ても人よ」
「あ、あの……」
「話しかけてきたわよ!」
「どうするの、人に化けたアンデッドかもしれないわよ!」
「なによ人に化けたアンデッドって。まぁ見てなさい、私が交渉術でなんとかしてやるわ」
「あなた! ここらじゃ見慣れない顔ね。いったいどこの子かしら!」
「えっえ……その……私、ここの子で……」
「ここの子? よく分からないけど、あんたもこの墓地にアンデッド退治に来たの?」
「あんた教会学校でも見た事無いけど、魔法ちゃんと使えるんでしょうね」
「ま、魔法? よく分からないけど、出来る事は……ある、よ」
「へぇ、随分自信がありそうじゃない。ちょっとやってみなさいよ」
「う、うん……じゃあ、えっと…あっ」
「なにあの子、急に足元にある鳥の死骸を拾ったわ」
「というかあんなのよく触れるわね」
「……」
「なにやってるの、あんた……っ!」
「うっうそでしょ……」
「腐りかけの鳥の死体が、動き始めて……」
「こ、これで……どう、かな」
「ね、ねぇ……これって」
「えぇ、これって……」
「……」
「……?」
「え……」
「えーマジネクロマンシー!?」
「キモーイ!」
「ネクロマンシーが許されるのは養護学校までだよねー!」
「「「キャハハハハハハ!」」」
「えっ…えっ……」
「というか今時ネクロマンシーとか養護学校ですら教えないわ! 禁術よ禁術!」
「そういえばあんたここの子だって言ったわね。どこに住んでるのよ」
「え……そ、そこの祠の地下で……」
「んまーッ! じゃあこいつくすんだ一族じゃない!」
「えっじゃあこいつに触られたらくすみが感染するって事じゃない」
「やばいわ! アンデッドどころじゃないじゃない!」
「逃げるわよ、こんな獣以下のクズの血を引く人間をこれ以上見ていられないわ!」
「この干物女!」
「くたばれ干物女!! 行きましょ皆!」
「土に還れ干物女!」
「あっ……」
「干物……」
「……」
「お父さん、私やるよ」