名簿/457699
- 鯉の夢 --
- 夢を見ている・・・
・・・夢の中の俺は一匹の鯉になってて、穏やかな水の流れの中を悠々と泳いでいる・・・ --
- そのままでも十分幸せになれる筈なのに・・俺は何かに急かされるみたいに上流へ上りたくなるんだ --
- 上流へと上っていけば自然と流れは速くなってきて・・・ある時不意に、上から物凄い水の勢いを感じるんだ・・・ --
- 滝・・そう思って水面から上空を見上げると・・・・・・
・・・そこに・・流れている滝のそのもっと先に・・とてつもなくデカイ・・・何かが浮いていて・・・ --
- 大きくて・・・力強くて・・何より恐ろしい・・・自由に空を舞うそれの輪郭を把握仕切ることは今の俺には出来なくて・・・
でも・・分かるんだ・・・俺はいつかアイツを超えなきゃならない・・・アイツと同じ空に昇って、アイツよりもっと高く舞い上がって・・・アイツよりももっと強い、アレにならなきゃいけない・・・ --
- その為には、まずはこの滝を登らないといけなくて・・・でも俺の非力なヒレじゃ、この水の奔流を掻き分ける事なんて出来なくて・・・挑む度にはじかれる・・
そうこうしている内に体力は尽きて・・・俺はまた下流に流されていくんだ・・・ --
- ・・・とまぁそういう事なんだけど・・・(別室でルイと話している修道女) -- ソラ
- なるほどね・・・んで、その訳のわからねぇのっぺら野郎を、俺に懲らしめて欲しいと(話題は広場やスラムで目撃された顔のない男の事)
(本来彼女が当たるべき案件であるが・・・少女にはもうそれだけの時間はなかった)・・・おっけっ(ぱんっと膝を打って)オジサンにまかせなさいっなぁに、直ぐにボッコボコのギッタンギッタンにしてやらぁ --
- す、直ぐに暴力に訴えるのはよくないんだよ?・・・うぅ・・本当に大丈夫かなぁ・・・ -- ソラ
- あぁあぁ分かってる分かってるって(ぽんぽんと肩を叩き)・・・やりたい事があんだろ?だったらこんなトコで立ち止まってる暇はないじゃねーか
(にっと笑って)ほれ、行って来い --
- う、うん・・・(しょぼんと肩を落とし)・・・分かった・・・じゃぁ、お願いしますっ(元気に頭を下げ、去っていった) -- ソラ
- ・・・?(帰りがけに顔を合わせた修道女に首をかしげて)・・今の、あの教会のシスターだろ?何しにきたんだ? --
- おぅっお帰りーくそ坊主・・ん〜?あぁ、大したこたぁねぇ、ちょっとした仕事の依頼だよ --
- (晴れ上がった目と鼻を洗っている)くっそ・・情けねぇ・・・(これでは今までと変わらない・・・自分は変わる、そう決めたはずだ)
(自分の息子と同年代の子供たちが冒険に出てきている・・・いい加減もう今までみたいな醜態を晒し続けてはいられないのだ) --
- ・・・親父?帰ってたのか?・・・どうしたんだよその目・・ --
- (スラムから逃げ帰って今は深夜、起きているとは思わなかった)・・・んでもねぇよ・・
それより、子供は寝る時間だ、明日学校だろ? --
- んだよ・・・人が折角・・・あぁそうかい、もういいや・・(部屋へと戻っていく) --
- ・・・(またやってしまった・・それほどキツイ言い方をしたつもりではなかったのだが・・・声にイラつきが混じっていたのだろう)
(拳をたたきつける)・・・次はこうはいかねぇぞ・・・ --
- (人は愛する者ができると強くなるのか、弱くなるのか・・・若い頃考えたことを最近また考える・・・)
あぁいいんじゃないか、行ってこいよ (朝の庭先、剣を素振りしながら友人と海に行きたいという息子にそう答える) --
- あ、あぁ・・・(反対はされないと思ってた、元々そういうノリの親父だったし・・・ついてこようとしないのは意外だったけど)
・・・(親父が真面目に剣を振ってるのなんて始めてみた・・・ただ上に振り上げ、振り下ろしているだけなのにとてつもなく強い力を感じる) --
- (昔は強くなると信じていた・・・実際守ることってのはただ攻撃的でいるよりもずっと有意義で満ち足りて、人生に明るいものを示してくれた)
・・っ・・・っ・・(だがそれだけじゃなかった・・・必要以上に死が怖くなった、生きるか死ぬかの瀬戸際に立つ事すら避けさせ、勘を鈍らせた) (ギラついた闘争心は衰え、醜い生への執着だけが残る・・・身を守る毛皮や角ばかりが育ち、獲物を狩る牙と爪がさび付いた・・・かつての獣は、家畜へと堕ちた) --
- (酒を飲んでふざけた時に見せるなよなよした太刀筋とは明らかに違った・・・本物・・そう、本物の剣だ)
・・・(声を出すことすら躊躇われる、実際、親父に問われるまで相談する事ができなかった・・・) --
- (・・・安定を望みながらかつての自分を捨てきれず、惰性で仕事を続けて張りぼての獣を演じる・・・その結果築いたものは?)
(幸せの象徴だった妻を癒せる力もなく、その死に目にも立ち会えず、息子に軽蔑されるダメな男が一人・・・馬鹿げてる) (爪を研げ、牙の剥き方を思い出せ・・・お前は今一度、野生を取り戻さなくてはならない) --
- (今まで剣ってのは腕で振るものだと思ってた・・・でもこうしてみると明らかに違う、足、腰、背中・・・文字通りの全身を使って振るんだ・・・)
(切っ先がまるでぶれない・・・まっすぐに剣先を見つめるあの集中力は何処から来るのか・・・柄を握る手の動き・・微妙なあの動きはきっと重要な物で・・・・・・少年は父の背を見て、可能な限り学ぼうとする) --
- (齢37正直もうトシだ、だが息子はもうすぐ15歳になる・・・この街では重要な意味を持つ年齢・・その時自分はアイツの最後の壁にならないといけない・・・乗り越えるべき、最後の障害に)
っぷっは・・・ふぅ・・・あん?まだいたのか?・・学校、行かなくていいのかよ --
- え?あ・・・(問われてたじろぐ・・・自分でも何であんなに見入っていたのかわからない・・・)も、もう行くよ
朝飯、ちゃんと食えよな・・(それだけ言うと逃げるように屋上を後にするのだった) --
- ?・・・おうよっ・・・(なんだろうかと首をかしぐも)
っし・・・もういっちょ・・(再び訓練にいそしむのだった) --
- ん〜・・・(今日から13歳、壁に背をつけ、本を当てて線を引く)よっと・・・
(見る、145cm)へへっ伸びたな --
- ・・・(冒険者になりたい、父親にそういうのは何度目になるだろう・・・答えは分かりきっていた) --
- まだはえーよ、13だろ?大体、お前じゃ弱っち過ぎて無駄死にするのがオチだ --
- っ!弱くねぇ!これでも特訓してるんだ!・・・俺より年下の奴だって冒険してるんだっ俺にだってできる! --
- (知っている、こっそり毎日木刀振って、走りこみして、戦いだけじゃないマッピングやサバイバルの知識を得ていることくらい)
じゃぁお前はそいつ等より弱いんだ、残念だったなぁ --
- 弱くねぇっつってんだろ!何でそんな事親父にわかんだよ!見てもねぇ癖に!
(木刀を突き出し)・・・っ(キッとにらみつける) --
- ・・・やろうってのか?(振るだけでまともに交えてきた事がない者に彼我の実力差を見極めろというのは酷な話なのかも知れない)
(だからこそ、ここで教えてやら無いといけない、コイツの根拠の無い慢心は今ここで砕いてやらないときっといつか無茶をする) いいぜ(木刀を手に取り)庭に出ろ、何回負けたら泣くかな? --
- 泣いたりなんかしねぇよっ(自分の分を取り、後について外に出る) --
- (向かい合い、正眼に構える)・・・いいぜ・・じゃぁこうしよう
一発でも俺にクリ−ンヒットかませば、冒険者になるのを許可してやるよ --
- 言ったなっ・・後で取り消そうったってダメだかんな! --
- 言わねぇよ?(嘲笑する)だって俺つえぇもん --
- こンのぉおおぉお!(思いっきり振りかぶり突撃していく・・・)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・ --
・・・想像してたより悪ぃな・・・(ピッと木刀を振るうと、ぺいっと放り捨ててその場を後にする) ・・雨降ってきたな・・とっとと戻れよ(まだ倒れている息子に声をかける) --
- はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・(敵わなかった・・・まるで足元にも及ばない・・・)
っ・・(がむしゃらに振った剣は交わらせてももらえなかった、相手の動きなんてまったく見えなくてまるで魔法かと思った) はぁ・・くそ・・・ちくしょう・・・(振り下ろしの直前で躊躇う自分とは対照的にアイツの剣には油断も躊躇も情けも容赦も感じられなくて・・・途中から自分が何処を殴られているかもわからなくなってた) ・・・・・・(最後の交差、それでも諦めようとしない自分に、アイツが出したあの技・・・)・・・(右の手を見る・・・そこに握られた木刀は、刀身を模した部分が根元から、まるで刃物でも使ったかのようにばっさりと断ち切られていた・・・あの瞬間を見たとき、まるで自分の中の芯みたいな物まで一緒に折れてしまったようで)・・・あんなの・・・アリかよ・・(雨の中、庭に倒れ伏しながら一人泣いていたのだった) --
- ・・・(キオはこれからどうなるのか・・このまま折れてしまうか・・また立ち上がってくるか・・・)
(まだまだ青かったが、本気なのは分かった・・・だからこちらも可能な限り全力で応じた、取っておきも見せた・・お前はまだまだ未熟なのだと、これで分かってくれるか)・・・折れちまうんじゃねぇぞ・・ --
- (体に包帯を巻きながら)ってぇ・・・チクショウ・・・あんの野郎・・・ --
- (ふと遠くを見るように)あぁ、そうそう、俺ってそんなイメージだよなぁ・・・ --
- (ある日の夕方、公園で木刀を振るう姿がある)ふっ・・・ふっ!・・・(がむしゃらに、一心不乱に) --
- おー?誰かと思えば、フォールズさん家のお坊ちゃんじゃぁねぇですか、怪我はいいんですかい?(にやにや笑って近づき)何やってんだよ、こんなトコで --
- ・・・うるさい、気が散るっ(ぶんっぶんっ) --
- ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(横で見ている) --
- ・・・・・・・・・なんだよ・・ --
- ・・・(ため息)あ〜ぁ、見てらんねぇ・・・(歩いて少し距離を取る、剣を抜き)
姿勢も、手の内も、振りも、まるでなっちゃいねぇ。良いか?よく見とけよ?(こう、こうだっとやって見せて) --
- ・・・・・・・・・誰も教えてくれなんて頼んでねぇよ・・・(それでもチラチラと確認して)
(その内並んで降り始める)・・こうか?・・こう・・ってか手の内ってなんだよ? --
- あぁ?ちげぇよだからこうだって! --
- やってるじゃねぇかこうだろ!?(ぶつくさ言い合いながら剣を振る父子の姿があった) --
- (また一つ歳をとった、身長を測ってみる)
・・・・・・・・・150・・・ぃよっし! --
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