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  • 【No One Lives Forever】 -- 2013-10-09 (水) 22:47:39
    • (明かりを点ける)
      (緩慢に反応した電灯が、気だるげに仕事を始め、緩やかに室内を照らす)
      (昼間から酔っぱらいの喧騒が遠くに聞こえている。どこかの親切な輩が鎮圧したのかガラスの割れる音を最後に、人の声は消えた)
      (静かにその『便利屋事務所』という擦れてギリギリで読めない看板の掛かった部屋へと足を踏み入れる)
      (積もった埃の臭いが鼻先に漂い、家主の長期の不在を親切に知らせてくれた) -- 2013-10-09 (水) 22:52:11
      • (家主は戻らなかった。あの夜を最後に)
        (まるで闇に魅入られた者がそれを欲す余り、暗がりに足を踏み入れて戻れなくなるように、ザックという男は忽然と姿を消した)
        (事務所の更新手続きの直後に失踪したこともあって、日数の経った今でもこの事務所は法的に彼の物であるが、それも時間の問題だ)
        (――『前例』があるように、またこの土地と建物が発する腐臭に釣られて群がってくる小蝿が、やがてその身を食い尽くすだろう)
        (跡形もなく。土は土に、灰は灰に) -- 2013-10-09 (水) 22:56:32
      • (シズという男の正体は、分からず終いだった。ただ、目撃者の証言によれば、あいつはザックと共に海へと消えたらしい)
        (吟遊詩人と俺の前で謳ったあいつが何を以ってザックを道連れにしたのかは分からない)
        (それを想像するには、俺はあいつのことを何も知らなすぎたし、あいつもだから、あえてそれを知らせようとはしなかったのだろう)
        (ギリギリまで、その思惑を隠して、本当に欲しい物を奪っていくのが、あいつの仕事のやり方だったから)
        (ただ、もし、ザックがシズに『選ばれた』のだとしたら。その決断をさせたのだとしたら)
        (あいつは、それはそれで嬉しかったんじゃないかと思う)
        (あいつの背中を、長い間見てきた俺だから言える。あいつは他人と居ても、いつだって孤独だったから)
        (だからあいつは、本人に自覚はなくとも、そういう孤独を共有できる相手を、側に置きたがったのだから) -- 2013-10-09 (水) 23:03:32

      • ――嘘つきだらけだな。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:04:40

      • (それは、分かっていた事だった。嘘を吐くのが上手いことが、この業界で長く生きるコツだ)
        (それは他人に吐く嘘だったり、自分に吐く嘘だったり、時には顔も知らない誰かに吐く嘘だったりする)
        (そういう嘘を作ることが上手い奴が、他人をその嘘に巻き込み、正直者が損をするんだ)
        (善良な第三者はいつだって主役に振り回されて蚊帳の外へと追い出される)
        (――今回の事件に限って言えば、俺は最初から蚊帳の外だった。たった一歩を、踏み込まなかったばっかりに)
        (ザック。シズ。ランディ。この事務所の中で、便利屋を営んでいた者たちは、もう誰一人として帰ることはない)
        (永遠に生きる者などいないし、永遠に生きれたとして、その中でデランデルの語るような物語の中のような冒険譚を、どれだけの人間が紡げるだろう)
        (糞溜めのような世界で、なんとか空気を吸うために必死で藻掻く糞虫が俺たちだ)
        (輝ける一握の人間の為の土台が俺たちだ。しかも、ご丁寧にクソッタレたその人生は最悪の終わりを迎える以外に強制終了をする手段はない) -- 2013-10-09 (水) 23:10:26

      • (――と、唐突に電話が鳴る)
        (どうやら、電話の契約も切れていなかったらしい)
        (一度破壊の跡が生々しく残すその電話は、けたたましく音を奏で始める)
        (俺は何かに導かれるようにその受話器に手を伸ばすと、耳に当てて返答をした) -- 2013-10-09 (水) 23:13:10

      • ――こちら、便利屋。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:14:23

      • (何故、そう口走ったかは分からない)
        (ただ、その言葉は自然に喉から出てきて、ありえたはずの今を思い、喉の奥に苦い物が走った)
        (電話は、公共機関からだった。こちらが、家主の不在を説明する前に、その男は興奮気味に用件を伝えてきた)
        (その剣幕と、勝手に電話を取った罪悪感に後押しされ、その用件をメモに残す) -- 2013-10-09 (水) 23:16:40
      • (それは、依頼の電話だった)
        (なんでも、長崎剣友会の内紛によって治安のバランスが崩れたことで、再び裏社会の低年齢化が深刻化してきているらしい)
        (その象徴ではないが、現在俺たちのいた路地裏は三人の少年によって牛耳られているという)
        (どうにか、元路地裏の出身として少年たちの補導に当たってくれないかという依頼だった)
        (俺は、面映ゆいものを感じた。かつて、そうしてオルカに補導され、捕縛されてきた少年を、二人知っていたから)
        (俺が何かを返す前に、概要は後で端末に送るというお役所仕事な対応を以って、その電話は切れた)
        (クライアントはいつだってプレイヤーの意図なんかお構いなしに事を進めていく) -- 2013-10-09 (水) 23:20:23

      • (家主の不在を嘆く)
        (いつだって、俺はあいつの尻拭いだ)
        (あいつが居なくなった後でも、それは変わらないらしい)
        (日々が、人の死で何も変わらないのと同じように)
        (誰かが居なくなっても、この世界は廻り続けるのと同じように)
        (失った部分は補完され、足りない部分は補足される。そうして、世界はただ一歩の後退も許さないまま、前へ前へと進んでいく)
        (俺はサングラスを指で持ち上げると、大きく嘆息をした)
        (これではまるで――主役不在時の主役の役割(外伝のPC1)じゃないか)
        (嘆息に、誰も返事を返してくれなかったので、俺は一人でその書き留めた少年たちの名前を呟いた) -- 2013-10-09 (水) 23:24:57

      • ――ウィレム・サクマ。

        ――カイセ・ミツェーリ。

        ――レィジー・ヒルベルト。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:31:26

      • (覚えるまでもない。きっとこいつらにとって、名前よりも何よりも、生き様こそが重要で)
        (そういうはしゃいだ子供は、鼻っ柱を一撃してやる方が、百の説法を浴びせるよりも効くだろう)
        (己を何者だと思っているかは知らないが、所詮は井の中の蛙であることを知り、大人として正しく腐らせてやらなければならない)

        (俺はサングラスを上げると、ショットガンを背負い、蛇腹剣の柄に手をやった) -- 2013-10-09 (水) 23:34:06

      • (急がねばならない。夜には、またルゥがあの屋敷で俺を待つことだろう)
        (そういえばデランデルも同席したがっていた、勝手にすればいいと俺は思う)
        (別件の依頼についてもそろそろ話を先に進めなければならないし)
        (単車の月賦の支払いの為に入金にも行かねばならない)
        (やることは山積みだ)
        (それでも、この依頼はこなさなければならない)
        (……何故かって?) -- 2013-10-09 (水) 23:37:03

      • ――仕事だからさ。 -- スネイル 2013-10-09 (水) 23:37:40

      • 【つづく】
        【――死ぬまで】 -- 2013-10-09 (水) 23:38:31
  • 【never beginning story】 -- 2013-10-09 (水) 22:55:35
    • (染みの酷い、天井が見えた)
      (見慣れた天井だ。もう何回見上げたかしれない天井だ)
      (見上げて安心する、酷く小汚い天井だ) -- 2013-10-09 (水) 23:00:08
      • (顔を包帯で覆った男が笑う。あざ笑う)
        (一通り嘲笑い、コケにしたあと、『回覧板』だけおいて帰っていく)
        (一度も振り返ることもなく。その結果を見てただ嘲笑い、帰っていく) -- 2013-10-09 (水) 23:03:41
      • (慣れたものだという様子でベッドの上で男は嘆息し、ベッドから起き上がりもせずに『回覧板』をひっつかむ)
        (そして、寝転がったまま一瞥してからゴミ箱に放り投げ、寝返りをうった)
        (もう済んだ事だ。夢は終わった)
        (否も応も関係ない。願おうが願うまいが関係ない。夢は終わった)
        (なら、それだけだ。それ以上もそれ以下もない)
        (夢の続きを望んで横になったところで、同じ夢は見れない)
        (子供でもわかる簡単な話だ) -- 2013-10-09 (水) 23:13:19
      • (大きく溜息をついてから、再びまどろみに落ちようとすると……柔らかな声がかかる)
        (声に導かれるまま、首だけをそちらに向ければ……そこに居たのは銀髪の少年だった)
        (限りなく白に近い、銀色の少年がそこにいた)
        (彼は問い掛けてる。どうしてあんなことをしたのかと) -- 2013-10-09 (水) 23:18:13
      • 仕事だからですよ -- 2013-10-09 (水) 23:22:48
      • (そうそっけなくいえば、少年はそっと首に手をかけて、きつく首を絞める)
        (そして、笑顔のまま、優しくまた言葉をかける)
        (嘘を吐かないでと) -- 2013-10-09 (水) 23:23:45
      • (皮膚に食い込むほど、爪跡がはっきりわかるほどきつく首を絞められても、男は咳き込みもしない)
        (慣れてしまっているからだ)
        (やがてゆっくりと拘束がとかれ、発言の自由を与えられた男は漸うゆっくりと喋り始める) -- 2013-10-09 (水) 23:26:48
      • 本当に、仕事だったからですよ
        それが僕の仕事だったからです
        今回は仕事が特に多かったんですよ
        まず、テロリストであるランディ・レッドフォードの監視
        彼はこの辺じゃあ名前が通ってませんが、故郷だと中々有名な人でしてね
        ただの凡人だの普通の人間だのいっておきながら、大したカリスマを持った男でしたよ
        国一つ1人で傾かせる程のね
        そんなのがこの辺に乗り込んできて裏世界を纏め上げでもしたらどうなるか……そう懸念した人は多かったわけですよ。外にも中にもね
        おかげで、荒稼ぎさせてもらいました -- 2013-10-09 (水) 23:34:11
      • 次に、裏社会の掃除
        ここ最近、少しばかり長崎剣友会の力が大きく成り過ぎていましたからね
        彼等は暴力装置であればいい。それ以上をする必要はない。本心ではきっと彼等もそう望んでいる
        だからこそ彼等の上層部が我々委員会に組織の規模縮小を依頼してきた
        彼等の内面は我々が想像している以上にシンプルだ
        彼等はヤクザであってヤクザではない
        金も、面子も、任侠も……本心では求めて居ない
        全て、争う為の建前でしかない
        刃を振るい、銃弾を捻じ込み、臓腑を喰らい、そして最後に……己ですら肝を吐いて死ぬ
        今の混沌こそが彼等が求めた構造であり、腐り落ちない為の本当の自浄作用なんでしょう
        獣を支える為の力は、暴力だけで十二分……いいや、暴力だけであるべきだ。それが獣というものです -- 2013-10-09 (水) 23:45:42
      • 結構苦労したんですよ?
        デュラハンの首送りつけてみたり腐った幹部連中を炊き付けてみたり、ピュアテイルに媚を売ったり……
        育英会の方には流石に顔をだせないんで、ランディを通して間接的にコンタクトを取ったりと色々しました
        まぁ、おかげで仕上がりは上々といったところですけどね -- 2013-10-09 (水) 23:50:19
      • そして最後に自分の存在の抹消
        そういう工作員がいたという記録を根こそぎ抹消すること
        生きた事すら、死んだ事すら、その全てを曖昧にしてあやふやにして無かった事にすること
        まるで『瞬く』かの如く、消え去る事
        どんな記録からも消える事。記憶した人間すら『瞬く』間に忘れる人間像を作る事
        まぁ、最後のこれはいつも通りの仕事ですけどね -- 2013-10-09 (水) 23:55:02
      • (聞き終わり、銀髪の少年は悲しそうに慰めの言葉を呟く)
        (そしてそっと頭を撫でて、男の満足する言葉を送ってくれる)
        (いつも通りだ) -- 2013-10-09 (水) 23:57:03
      • ははは、ありがとうございます
        でも、大丈夫ですよ。いつもの事ですから

        いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも(いつもって言葉の意味忘れちゃうくらい)……そう、いつもの事ですから

        何も問題はありません。何もありません。そう、なぁんにも
        (乾いた笑顔を貼り付けて、男は目を閉じる) -- 2013-10-10 (木) 00:06:05
      • (銀髪の少年は、満足したように、それでもどこか悲しそうにその言葉を聞く)
        (聞きながら、静かに問い返す)
        (あのザックという青年はどうだったのかと)
        (猛獣のようでいながら……その実、猫ようなきまぐれさとそっけなさを持った彼はなんだったのかと。興味深そうに) -- 2013-10-10 (木) 00:09:02
      • (その質問に対して、男は……黒髪の男は、うんざりと言った様子で……それでも、口元を吊り上げたまま、目を閉じて呟く)

        アイツは……仕事とは関係ありませんよ

        たまたま、お互いのやりたい事と、お互いの敵意がかち合ったから斬り合った
        そういう義務があったわけじゃない
        それによるメリットがあったわけでもない
        ただ、そうしたいからそうした。それだけです
        僕はアイツを殺したかった
        アイツも僕を殺したかった
        叩き潰して磨り潰して泥沼の奥底まで(シズ)めてやりたかった
        そうするべきだと、思いました

        だから、そうしたんです -- 2013-10-10 (木) 00:22:04
      • (少し冷たい声で、それでも面白そうに少年は呟く。理由になっていないと) -- 2013-10-10 (木) 00:23:41
      • そうかもしれませんね
        でも、アイツとばっかりは、まぁそういう理由なんですよ
        殺しても殺し足りない
        殴っても殴り足りない
        裏切っても裏切り足りない
        アイツが猫を装って韜晦を続けているように見えて、気に入らなかったのかもしれません
        本当に猫だったのか、それとも虎だったのか、今となっては分からず仕舞いですがね -- 2013-10-10 (木) 00:28:12
      • (珍しく熱の篭る男を前にして、近親憎悪って奴なのかな、と面白そうに少年は聞き返す)
        (面白そうに) -- 2013-10-10 (木) 00:31:41
      • いえ、それだけは絶対ないです
        (きっぱりという)
        そう思いたいですが……まぁ、否定したくなるということは、どこかそうなのかもしれないですね -- 2013-10-10 (木) 00:35:11
      • (剥きになるってことはそういうことじゃないかなと、面白そうに笑って呟く)
        (そして、でもやっぱり仕事以外にも理由があったねと少年は小さく呟き、柔らかく微笑んでから……男の望む言葉を紡ぐ)
        (黒髪の男はそれで満足する。それでいい。そうであるべきだ)
        (少年がそう言うのならそれでいい) -- 2013-10-10 (木) 00:40:40
      • (それきり、男はまたまどろみに落ちていく)
        (深い、深い、海の底に(シズ)むように、眠る)
        (また、別の夢を見るために)
        (この幸せな悪夢を見続けるために) -- 2013-10-10 (木) 00:47:10
      • 【つづく】
        【何も終わらないし始まらない】
        【ただただ、つづく】 -- 2013-10-10 (木) 00:49:39
  • 【track for cut down#4】 -- 2013-10-06 (日) 21:37:46
    • (委員会。裏の三大組織の1つ。その中でも最も目立たない組織)
      (裏方に徹底し、流通管理だけを黙々とこなす装置。外側の大型資本が母体らしいが、詳しい事は何もわかっていない)
      (剣友会とのパイプはザック、育英会とのパイプはランディ……そして、この委員会とのパイプを持っていたのはシズであった)
      (時には追っ手を始末しながら、埠頭の倉庫街をザックと進めば……)
      なんだ、早い迎えだったじゃねぇか
      (そこにいたのは……包帯で顔を巻いたあの男) -- シズ 2013-10-06 (日) 21:45:13
      • アナタこそ、手筈通りといったところですかね
        相変わらずつまらない仕事をしていますね、クココココ(そう、嘲るように男は笑う) -- 包帯男 2013-10-06 (日) 21:45:46
      • ああ、久しぶり。案外早い再会だったな。そして一番最悪の再会だわ。
        ……どう考えても、窮地に陥ってるオレたちに助言をくれるタイプの人間じゃあないよな、アンタは。 -- ザック 2013-10-06 (日) 21:47:42
      • ええ、私はお金と私の楽しみにならない事には一切手を出しませんからネ
        今回はお金になるから手を出しにきただけですが……『アナタ』の窮地を救う事にはきっとならないでしょうネ
        強いて言うなら、説明はその男がしてくれるでしょう。ねぇ……?

        『委員長』

        -- 包帯男 2013-10-06 (日) 21:55:08
      • (包帯男の言葉に被さるようにして、シズのダガーが音もなくザックの喉元を狙い、薙ぎ払われる) -- シズ 2013-10-06 (日) 21:55:57
      • (回避ではない。防御でもない。ただ何度も自分を狙ってきたことのある軌道だったから、そう動くのが自然だっただけの動作で)
        (その攻撃は、「外れた」。後ろに、無様に蹈鞴を踏むような形でよろめいた動作で、偶然外れただけだ)
        ……………。
        ……………シズ
        (オレは、その男の、名前を呼んだ) -- ザック 2013-10-06 (日) 21:58:34
      • (さらに一歩踏み込み、ダガーを振るいながら、静かに呟く)
        ザック……前にいっただろ
        確実な賞金首の仕留めかたは……賞金首と親しくすることだってな
        (いつも、この前も、いや、ずっと前から)
        (やってきたこと。先日、ランディともこなして、1人の少女を殺めた手法) -- シズ 2013-10-06 (日) 22:05:20
      • (二撃目は、その殺意を感じ取れたからこそ、長ドスで受け、獣は牙を剥いた)
        ……シズ。
        お前もか……。

        お前もオレを――騙したのかぁ!!

        (大声で叫び、大振りの長ドスの一撃を相手に向けて力の加減なく振り回す) -- ザック 2013-10-06 (日) 22:13:44
      • (空中で器用に身を捻り、ザックの膂力に合わせて跳ねるように距離を取れば……わかるだろう、すでにザックは周囲を、黒尽くめの集団に囲まれていた)
        (委員会のアサシン共だ)

        そうですよ、ザック君。僕は……君を騙しました

        剣友会の抗争の件ですけどね、いつかヌマルさんも戻るかもしれないっていったじゃないですか
        あれ、嘘なんですよ。本当は戻るかどうか分からないんです。ムネトさんがいなくなったせいで裏側の抑え役が完全にいなくなりましたからね。そこに来て先日のシュネライト騒動ともなれば、蜂の巣をつついたような騒ぎになるのは必至です
        今、剣友会は荒れに荒れています。ヌマル1人に媚びうってりゃ安泰ってわけじゃなくなっちゃったんですよ
        そこで君ですよ、ザック君
        どうせ無自覚なんでしょうけど……外からみりゃ君は実質的なヌマルの右腕なんですよ。その首を他の幹部に放り投げりゃ、我々『対外流通管理委員会』が取り入るには十分過ぎる程の土産になる
        (そこで一度大きくためいきをついて、いつもの口調に戻り)

        ……まぁ、そういうわけだわ。騙された理由も死ぬ理由もこれでわかったろ?
        ランディがいなくなったせいで、監視で小遣い稼ぎもできなくなっちまった。お前もあの事務所も、もう用済みなんだよ

        (いうなり、アサシン達が手にもったボウガンがザックへ放たれる)
        (殺す気だ。確実に) -- シズ 2013-10-06 (日) 22:28:43
      • (いつもそうだ。いつも事は自分以外の場所で起こる)
        (平和を望んでも、平穏を望んでも、いつだって外側から何かの力が加わって、オレの積み上げてきた物は一瞬で瓦解する)
        (身を縮めて、急所を守るようにしてボウガンを受ける。いくつかは避け、いくつかは払い落とせたが、腕の半ば、太ももの半ばを貫通し、膝をつく)

        そう、かよ。
        ……そうだよな。
        オレたちにとっては、今更の話なんだ。
        仕事の上で対立したことだって、互いを僅かな金で売り買いしたことだってあった。
        このクソッタレた世界で、それが当たり前だったっていうことも知ってた。
        隣人はすぐ裏切るし、昨日感謝を述べてきた口で今日オレを罵ることだってあった。
        分かってた。
        分かってた、つもりだったよ。 -- ザック 2013-10-06 (日) 22:48:07
      • そう、今更の話だ
        俺たちに、絆なんてものはない
        たまたま、同じ場所にいる理由があったから……そうしていただけだ
        そういう、ただのロクデナシの集まりが『便利屋』だ
        俺もランディも……スネイルじゃないし、デランデルでもない……ましてオルカであろうはずもない
        俺達はな……他人なんだよ
        どうしようもないくらいに。取り返しが付かないくらいに、他人なんだ
        (近寄ることもなく、一定の距離をとり、口を開く……いつものように)
        (いつも事務所で、そうしてきたように)
        今日だって、今まで通りだ。何も変わらない
        お前を殺せば俺の懐が潤う。だから殺す。それだけだ。全く今まで通りだ
        ビジネスライクに考えろよ、ザック
        生き残りたいなら俺を殺してみろ。出来ないなら俺の為に死ね
        俺の金蔓になれ、野良猫 -- シズ 2013-10-06 (日) 22:58:21

      • ああ、そうか。お前は、何でも知ってるんだな。何も教えなかった癖に。
        ……オレを、猫って呼んだか。
        よりにもよって、お前は今……オレをネコだと言いやがったか。
        (全身の筋肉が盛り上がる。怒りと、理不尽さと、嘆きを、全て飲み込み、覚悟に変えたことでそれは力になる)
        (盛り上がった筋肉に押し出されるようにして、ボウガンの矢が抜け、余りに余った血が吹き出す)
        (人より優れた心臓が、全身に酸素を行き巡らせ、戦闘態勢となった獣がそこにいた)

        一つだけ、教えてやるよ。
        ――オレを猫と呼んでいいのはな。由来を知ってる奴だけなんだよ。
        「分別なく他人に攻撃をしてまわる様はただの子猫みたいに見えたから」
        お前が知っているのは、その辺までか。実はな、この話には続きがあるんだ。
        「ただ、子猫は、もしかしたら虎の子かもしれない。育って、虎になれないうちは、いつまでも子猫と呼び続けるぞ」
        オルカは……そう言ったんだ。

        だからな。その名前は、オレを利用し、金に変える赤の他人が、口にしていい言葉じゃないんだよッ……!!
        (オルカ)が自分の名から付けた(キティ)という名前を――てめえが語るんじゃねえッッ!!

        (踏み込みは、まるで猛獣が飛びかかるかの如き速度でシズの下へと虎を走らせ)
        (空気を切り裂く音すらその場に置き去りにした一閃が奔った) -- ザック 2013-10-06 (日) 23:16:49
      • 代わりにお前の過去もべらべら聞きゃしなかっただろう。勝手に調べただけでな
        それが俺の仕事だからな
        (風を置き去りにし、音すら置き去りにしそうな猛虎の一撃を、大きくバックステップして交わす。受けすらしない)
        (そういう男だ。ただ逃げ回る。その間にも包囲網は縮まり、委員会のアサシン達がボウガンや投げナイフでザックを攻撃する)
        (リスクを避け続けろ、シズはそういう男だった)
        気にいらねぇなら、黙らせて見ろ
        お前も俺も、ランディも、ずっとそうやってきたはずだろう
        これはいつも通りの仕事だ。いつも通りのクソみたいで、最低で最悪の仕事だ、何も変わらない
        いつも通り……俺にてめぇの我侭を通して『魅せろ』、ザック!
        (壁を蹴り、三角飛びして空中でムーンサルトをしながらザックの背後を取り、ダガーを投げる。毒の塗られたダガーだ)
        (一切の容赦が無い、ただ殺すことだけを考えている) -- シズ 2013-10-06 (日) 23:56:36
      • (襲い掛かる矢も、ナイフも、軌道上から逃れるという単純な方法でかわす)
        (つまり、その疾駆は加速し続けていた。猛獣が獲物に近づくにつれて速度を上げるように)
        (時になぎ払い、時に素手で叩き落としながら倉庫の壁に叩きつけるようにして動きを変え、竹林の中を縦横に飛び回る猛虎のような動きで避け続ける)
        ああ。
        知ってたよ。世界がクソッタレだってことも、最低で最悪の仕事ばかりなことも。
        でもな。
        (振り返り、空中を飛ぶシズの目を見る)
        (二つの目が合い、軌道上に存在する毒ナイフが近づき)
        (僅かな傷も許さないその殺すことだけを考えた一撃を、『自らの牙』で受け止めると、それを叩きつけるように吐き出し)
        (身体のバネだけを使って大きく空中へと跳んだ)

        ――それでも。
        オレは、楽しかったんだよ。

        (歯を食いしばりながら、長ドスを斜めに振り抜ける) -- ザック 2013-10-07 (月) 00:26:34
      • (シズとザックの距離が縮まれば、周囲の取り巻きは手を出せなくなる。下手に手を出せばシズにあたるからだ)
        (それが分かっているシズはひたすら間合いを取ろうと縦横矛盾に動き回るが、ザックは追従してくる)
        (猫科の猛獣を思わせる、柔らかくも力強いその武に、誰もが目を見開く)
        (しかし、シズだけは目を細めて……)
        はッ……土壇場で甘えた事いってんじゃねぇ
        (両手にもったダガーの刃を交差させ、火花を散らして長ドスの斬撃を受け止める)
        (空中では受ける事しか出来ない。いつかのように、碧眼と黒瞳が至近距離で交錯する)
        さっきもいったろ、楽しい夢は醒めるもんだ

        (着地後。後退のフェイントを一度だけいれてから、その反動を利用して一歩深く踏み込み)

        醒めたくねぇってんなら……俺が目玉抉り出してでも、醒めさせてやるぜ

        (右手のダガーで長ドスの刃を滑らせながら、更にもう一歩)

        ザックっ!!

        (左手のダガーで、喉笛を狙う) -- シズ 2013-10-07 (月) 04:01:40
      • ――土壇場だからだよ。はっきりさせておきたかったんだ。
        お前らと居るのは、楽しかった。でも、それだけだ。
        一人で、自分の力だけでオレに向かってこなかった時点で――お前の負けなんだよ。
        オレたちは、少なくとも世界オレたちだけはそうあるべきだったのに、お前は最後の最後でオレを裏切った――。
        お前の周りの他人と同じように扱ったッ!! デランデルがそうしたように、オレを活かす為に殺そうとしたッ!!
        それが、何より許せない……お前にとってオレは、その程度の存在なのかってな、オレにとってのお前は、その程度の存在だったのかってなぁ!!

        (迷わず素手で)
        (その喉元を狙ったダガーを、左手で親指以外の四指で無理やり掴み、奪い)
        (その毒が体を巡る前に、根本から覚悟と共に四指を切り落とした
        (自分の中の、大切な何かを切り捨てるように)

        ――シズ
        さよならだ。
        楽しかった

        (長ドスを、渾身の力を以って振り下ろした) -- ザック 2013-10-09 (水) 19:52:43
      • (刃が、突き刺さる)
        (根元まで。鍛え上げられた刃が突き刺さる)
        (喉元を狙ったダガーは指ごと地面に叩き落とされ、今まで開いていた彼我の距離が一気に縮まる)
        (赤黒い鮮血が舞い、内腑の汚臭が鼻腔を踏み荒らす)
        (シズの身体に埋まった長ドスは、どこまでも互いの距離を近付ける。鼻が付きそうな距離にまで、顔を寄せ合う)
        (今まで一度もないほど、近くにまで)
        (本来ならば致命傷。人としての機能が保てるはずも無い。勝負あったと思われる距離。だがしかし)

        へ、やっと我儘らしい我儘いいやがったな……でもなぁ、見縊るんじゃねぇ


        (心臓は、ギリギリ外れている)
        (シズは、笑った。不敵に。シニカルに。敵意と殺意をこめて、確かに)
        俺にとっちゃあお前は気兼ねの必要もねぇくらいに他者だからだよクソが
        お前は仲間じゃあねぇ、友でもねぇ、まして道具ですらねぇ

        誰でもない、俺にとって、たった一人、身勝手な殺意をぶつけるに値する他人がてめぇなんだよ
        裏切り? その程度? お前のそういうてめぇ勝手な思い込みが最初っからきにいらねぇんだよ
        他の野郎はともかく、俺まで同じ物差しで計ろうたぁいい度胸だ
        (血を目に吹きかけて、刹那、逡巡を間を作り)
        俺が、何も教えないといったな
        お前も同じだ。自分から踏み込もうともしないで、俺にだけ踏み込めだの踏み込むなだの勝手な話だろう?
        ……だけどな、安心しろよ

        いくらお前が我儘言おうが、それを魅せる限りは……お前を殺すために、こっちからいくらでも距離をつめて踏み込んでやるよ
        こんな風にな
        (左手を突き出して、胸倉を……いいや、五爪で喉を引き掴み、ザックの身体を引き寄せる。さらに刃が身に沈み込む事など、構いもせず)
        (既に指の痺れた右手でもザックの首を締め上げて……そのまま空中での姿勢制御を諦める)

        ――ザック
        じゃあな
        俺も楽しかったぜ

        (さすれば、2人の身体は中空で勢いに任せるまま海中へと没する)
        (倉庫街近隣の海辺は潮の流れが激しい。一度、重りのついた人間が落ちれば引き上げるのは容易ではない)
        (男達の影は、夜の帳が降り始めた倉庫街の暗い海に……深く、深く、沈んでいった) -- シズ 2013-10-09 (水) 22:25:27

      • 【つづく】 -- 2013-10-09 (水) 22:42:21
  • 【track for cut down#3】 -- 2013-10-06 (日) 19:55:50
    • (いつも通り、小汚いフードを被って事務所に戻り、やけに整理されたデスクを見て溜息を漏らす)
      (なんだ、ランディの野郎もういったのか)
      (いつもよりも、いくらか不機嫌そうな面をしたザックを尻目にそう呟く)
      (思えば、こいつは結構ランディに懐いていたよな)
      (まぁ面倒見のいい男だったしな) -- シズ 2013-10-06 (日) 19:59:13
      • こういう時アイツなら、飛んでく鳥が跡を散らかさない、とかそういうことを言うんだろ。
        ……そんなもんだろう。この業界も、この世界も。
        人の死も、別れも、意識しないだけで生活のすぐ側にある。取り立てて飾り立ててやる程のモンじゃないってだけだ。
        (コツコツと自分の机を指で叩き、シズのデスクを顎で指す)……届け物だとよ。包帯だらけの乱ぐい歯のとんでもない美人が持ってきた。 -- ザック 2013-10-06 (日) 20:07:38
      • (そうだな、そんなもんだな。別れが言えただけ上等ってもんだ)
        (そういってから、ジグソーパズルを片付けて自分もそろそろ引き上げるかと思った矢先……ザックの口からとんでもない言葉出てくる)
        (奪うようにデスクの上に転がった『回覧板』を手に取り、目を見開き、無意識にクソがと呟く)

        ザック! 3秒で荷造りしろ! ズラかるぞ!

        (ハーフマスクをズリおろし、形振り構わないといった様子で声を荒げる) -- シズ 2013-10-06 (日) 20:16:21
      • (状況が飲み込めない顔で、眉根を寄せる)
        (久しぶりに聞いたシズのくぐもりのない肉声と勢いに気圧されていたのもあるが、動きは緩慢だった)
        ズラかる? ……どういうことだ? -- ザック 2013-10-06 (日) 20:23:11
      • ヌマルの旦那がハメられて失脚したんだよ! ムネトさんがいなくなったせいで他の連中が群がってきたんだ!(そういって、回覧板をつきつける。暗号だらけで読めない事すら気付かないほど、今のシズは焦っていた)
        ヌマルの旦那のことだ、そう遠く無い未来に返り咲くだろうが、それより先に『知りすぎた』俺たちは消される
        シュネライト、デュラハン、それにあらゆる物品の非合法取引の上にピュアテイル家の知られたくない事まで知ってる俺等だ
        後ろ盾がなきゃ1日だってこの街じゃ生きられねぇ! -- シズ 2013-10-06 (日) 20:29:45
      • (嫌そうに眉根を寄せ)……お前それ、マジで言ってんのか。ヌマルの兄ィが、失脚……!? っていうかこの前も見たがその回覧板何なんだよ!!
        お前、それがマジなら、本気で消されるだろ、それ……特にシュネライトの一見が不味い、不味すぎる……!
        少なくとも、街の、いや、下手したら国の外まで逃げる必要があるだろそれ……。
        つまり、荷造りってことは、この事務所を捨ててほとぼりが冷めるまでどこか他の土地で暮らせってことか!? -- ザック 2013-10-06 (日) 20:37:31
      • 回覧板は回覧板だっつーんだよ! あとでスネイルのクソにでも読み方教われ!!! 俺から教わりたいなら金を払え!!!!
        バカが! 街の外なんざ張られてるに決まってんだろうが! 顔も声帯もとりかえて指紋も消して、ついでに偽造戸籍でもなきゃでられねぇよ! デランデルのクソに頼むなら好きにしていいが、戸籍の準備はもうランディがいねぇんだからどうにもならねぇ!
        ヌマルの旦那が反乱勢力を鎮圧して、この街にまた無法の平和が訪れるまで、俺等はこの街の中でチキンレースしなきゃならねぇんだよ! クソが!! -- シズ 2013-10-06 (日) 20:45:01
      • お前がふざけろ!降りしきる雨の中で雨粒に一つも当たらずに家に帰れってくらい無茶苦茶な話だろうが!!
        このプライバシーすら自分で守るしかない狭い街で、シルク情報局の情報網を掻い潜った上で、裏社会最大勢力の長崎剣友会の包囲網をかわせって!?
        無茶言うにも程があるだろ! 三秒で荷造りしてどうにかなるようなもんじゃねえだろーが!! -- ザック 2013-10-06 (日) 20:53:01
      • 無茶だろうがなんだろがやらなきゃ死ぬだけなんだよ!
        地下ルートから街の外にでようにもどっちにしろ間は置かなきゃならねぇ、その間はどうしたって頑張って街の中にいなきゃあっというまに穴空きチーズにされちま……
        (と、いいかけた所で)
        !? クソがぁあああ! 伏せろザック!
        (無数の発砲音と共に事務所の窓ガラスが叩き割られる) -- シズ 2013-10-06 (日) 21:03:38
      • (言われるがままに伏せる。顔から血の気が引き、同時に引きつったような笑いが零れる)
        ……いや、ちょっと待て、おい、これマジかよ……。悪い夢とかなら早めに覚めてくれると嬉しいんだが。 -- ザック 2013-10-06 (日) 21:06:24
      • 良い夢だと思い込めよ、そしたら醒めるかもしれねぇぜ
        (いいながら姿勢を低くして反対側の窓へと駆けていく。2階くらいの高さならなんでもない)
        一応、当てはある。お前はどうする? ついてくるなら5000だ -- シズ 2013-10-06 (日) 21:12:13
      • (パリパリとガラスを踏みながら幾分緩慢な動きで後を追い)
        ……どうするっつってもな。寝てる所に水ぶっかけられたような気分でどうしようもないが。
        その当てにぶら下がったとして、どれだけ保つんだよ。お前の方が状況が分かってるんだからお前が判断しろよ、値段交渉の余地なんかあるかこんな取引。 -- ザック 2013-10-06 (日) 21:29:25
      • 交渉の余地がない所までひっぱりだすから儲かるんだよ取引ってのは
        ヌマルの兄貴がしょちゅうやってたろお前に?
        ま、交渉は成立と判断した。うまくぶらさがれりゃ数日は持つだろう
        まずは、『委員会』の懐まで逃げ込むぞ -- シズ 2013-10-06 (日) 21:34:33
      • 【つづく】 -- 2013-10-06 (日) 21:34:51
  • 【track for cut down#2】 -- 2013-10-06 (日) 18:38:41
    • (薄汚れた地下バーで飲みながら、待ち人を待つ)
      (そう何度も顔をあわせなかった待ち人を)
      (琥珀色の液体は驚くほど酩酊をスネイルに与えず、酩酊が無ければ本当の意味での酒の愉悦があるわけもない)
      (端的にいって不味い酒だった) -- スネイル 2013-10-06 (日) 18:41:03
      • (待ち人は、静かに現れた。珍しくスーツに身を包んで。スーツを着た黒髪の男は静かにスネイルの隣に腰掛けて、問う)
        (契約破棄なら、わざわざ呼び出さなくてもいいんだがな、と) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:42:47
      • ああ、そっちはいわなくても勝手になると思ってた。どうせ全部分かってるだろうしな
        外から何時も部外者面して眺めているアンタらのことだ。ランディって奴のほうだって大筋は分かって出てったんじゃねぇのか?
        流石に予測でしかないけどよ -- スネイル 2013-10-06 (日) 18:45:03
      • (哺乳類のガキより両生類の成体のほうが頭がいいとは驚きだ、といって乾いた笑い声を漏らす)
        (部外者面でもなんでもない。俺たちは部外者でしかなかった。元々この話はお前たちの話だ。俺たちの話じゃあない)
        (俺たちはお前たちの話に一時擦れ違った部外者であって、それ以上でもそれ以下でもない)
        (俺たちはNPC(端役)ですらない。GM(黒幕)の手の内にすら入れてもらえない)
        (少なくとも、俺はそういう生き方を好んでいる。今までも、そしてこれからも)
        (しっているか? 関わりのない演目(セッション)ってのは見て楽しむものなんだぜ?) -- シズ 2013-10-06 (日) 18:49:24
      • (吐き捨てるように……そう、吐き捨てるように苦笑を漏らして、琥珀色の液体を一気に嚥下する)
        (空になったグラスが高らかに音を響かせて、身の内で氷塊を躍らせる)
        そうだったな。考えてもみれば、俺たちもそうだった。俺もそうだった
        それで楽しめるなら、それが一番低リスクで効率的だ。自分から首を突っ込んだらツケを払わされる事もある
        だが、人が踊っているのを傍目から見る限り……そんな苦労はせずに済む
        まぁいい、話を戻そう
        あの事務所の件なんだがな。少し無茶いってもいいか -- スネイル 2013-10-06 (日) 18:56:38
      • (いってみろよ、俺とアンタの仲だ。長年、座って眺めるだけの仕事で美味しい思いをさせてもらってきた)
        (少しくらいの無茶ならきくぜ、とこちらもまたちびちびと果実酒を啜る) -- シズ 2013-10-06 (日) 19:12:52
      • じゃ、遠慮なくいうけどよ
        (そういって、シズの暗い……虚のような黒瞳を見つめて、口を開く)

        あの事務所から、出てってくれないか

        あそこは、俺たちの聖域だ
        俺と、キティと、デランデルと……そしてオルカの居るべき場所だ
        アンタ達のステージじゃない
        そろそろ、返してくれたっていいだろう -- スネイル 2013-10-06 (日) 19:19:08
      • (やっぱり、その話か) -- シズ 2013-10-06 (日) 19:25:14
      • ああ、その話だ……今まで、散々世話になっといて悪いけどな
        それがお互いの為だろ?
        (そう、苦笑する) -- スネイル 2013-10-06 (日) 19:25:42
      • (気まずそうな苦笑に、気安い苦笑で返して、果実酒を呷る)
        (そして、目を伏せて、静かにその言葉を嚥下し……意味を反芻してから、頷く)
        (構わねぇよ。アンタのいう通り、それがお互いの為だ)
        (もうランディもいないんじゃ楽に稼ぐ事もできねぇ)
        (そろそろ、俺は俺のいるべき場所に戻るよ)
        (そういって、席を立つ。奢りだ、といって札束をテーブルに転がしてから) -- シズ 2013-10-06 (日) 19:29:59
      • (目の前に転がされた『手切れ金』を見てから、心底分からないといった風に口を開く)
        なぁ、『ブリンク』
        俺はさっきは人が踊るのを見るが楽しいとはいったがよ
        俺は、それだけ見てたら我慢はできねぇ
        俺も踊らなきゃ……我慢ならない
        だから俺は俺の立ち位置(PC3)が好きなんだ
        アンタはそれでいいのか? 踊っているわけでも踊らされてるわけでもないままでいいのか?
        俺にはアンタが分からない -- スネイル 2013-10-06 (日) 19:36:54
      • (構わないさ。そういって、振り向きもせずに男は呟く)

        (俺はその他大勢(MOB)でいたほうが気が楽だからな)
        (自分でやりたきゃ自分でシナリオを仕込むさ)
        クソGM(吟遊詩人)のほうが、俺は性にあっている)

        (最早、スネイルにでもなく、自分にでもなくそう嘯いて……バーを後にした) -- シズ 2013-10-06 (日) 19:52:09
      • 【つづく】 -- 2013-10-06 (日) 19:52:51
  • 【track for cut down】 -- 2013-10-06 (日) 17:34:16
    • (その来客は、妙な男だった)
      (何が妙って、まず外見が最高に妙だ。何せ、顔を出鱈目に包帯で撒いている。まるで大怪我でもしたかのように。その上で来ているスーツは非常に仕立ての良い上等なもの)
      (だが、漂う雰囲気は決して真っ当ではない。まるで、墓場の其処から這い出して来たような、墓石の真下から漂うような不気味で不愉快な空気を纏っている)
      (そして、耳まで裂けているのではないかと錯覚するような大口で、ニヤニヤと笑みを絶やさずに事務所に入り、)
      誰か、イマすかね?
      (完全に中に入ってからそんなことをザックに聞いてくる) -- 2013-10-06 (日) 17:40:03
      • (いかにも胡散臭い男が入ってきたことに眉根を寄せ)
        在不在の話なら居るが、話を聞く相手が居るか居ないかなら、用件次第だぞ。
        便利屋への客か……? -- ザック 2013-10-06 (日) 17:51:22
      • ま、そんなところですかね、クコココ(掠れるような声を漏らす。良く聞けば、それが笑い声だとなんとか判別できる)
        『ブリンク』さんはいますかね? いないようなら一先ずアナタでもいいんですけどね。ザック・ザリップスさん
        いや、ジャックさんの片割れとでもいったほうがいいですかね? クカ、クカカカカカ! -- 包帯男 2013-10-06 (日) 17:55:44
      • ……随分と偉い客引っ張ってきた無能がこの事務所にはいるらしいな。シズは不在だ。居たとしたらオレにアンタの対応を任すような間の抜けた男じゃない。
        ひとまずという前置きが気になるが、同じことをもう一度尋ねさせてもらっていいか。オレもこう見えてプロだ。暇じゃない。
        どういう経緯で、何を調べて、誰に聞いて、オレをそんな名で呼ぶのかは知らないが、オレが聞きたいのは一つだ――用件を言え。(ソファに座ったまま横目で包帯男を睨みつけて、言う) -- ザック 2013-10-06 (日) 18:02:22
      • おお、怖い怖い。そんな目で見られたらついつい眼鏡がずり落ちて……おっと、イマはメガネかけてませんでしたね(おどける様にいって肩を竦め、カバンから何やら取り出してテーブルに置く)
        用件は一つだけですよ。これを『ブリンク』さんに渡してくださいな。それ以上は何も求めません。報酬が欲しいというならいくらか準備はしますが?
        (そういって、テーブルに置いた『回覧板』から手を放す)
        しかし……随分と彼を高く買っているんですねぇザックさん
        彼は私からみるとマヌケで腰抜けのコソ泥にしかみえないんですがネ、クカカカカ -- 包帯男 2013-10-06 (日) 18:08:59
      • オレに比べての話だ。高く買ってるように見えたなら身内贔屓のバカ男とでも思え。
        ……分かった。渡しておこう。正式な依頼報酬はいい、その程度なら手間はないしな。
        ただ、その代わりオレが中身を見る、シズに渡さない、そのまま破棄する等の処置を取らないよう、保証として身分証明か名前を置いていって貰いたいんだが。
        素性も知らない包帯男からの贈り物があると聞いて、そのマヌケで腰抜けのコソ泥が怖気づいて受け取るのを拒否することもありえるからな。
        (相手の言葉尻を取って返し、小さく嘆息する) -- ザック 2013-10-06 (日) 18:15:30
      • (ニィとタダでさえ裂けた笑顔を更に切り裂いて、ずらりと並んだ歯を見せて笑う)
        別に中身を見られても渡さなくても破棄されても構いませんよ
        アナタがそうしたいならそうするべきだ、仕事は自分で選べませんが、多少結末を選ぶ事くらいは誰にでもできますからネ
        (そういいながらも、トランプのようなものを懐から取り出して、『回覧板』に挟む)
        (『委員会より』とだけ書かれたメッセージカードだ)
        それを見てもまだ受け取らないようなら、彼は私の期待よりは面白い男だと思いますよ
        まぁ、ありえませんがネ
        (そういって、徐に立ち上がると、踵を返して背を向け、事務所を後にする)
        それでは、私はこれで -- 包帯男 2013-10-06 (日) 18:26:32
      • (メッセージカードに目を落とし、やはり自分に分からないようになっている単語を確認し)
        分かった。渡しておく。どうあれ望みの物が手に入ったからには守秘義務くらいは守れと、言われていたんでね。
        ああ、鉄火場で会わない事を祈ってるよ。色男(ロメオ)

        (男が去った後、メッセージカードと回覧板を手に取り、シズの普段からあまり使われていない机に置こうとして)
        (一瞬だけその手が中空を泳いだが、ランディに言った言葉が、スネイルからされた仕打ちが思い出されて)
        (それをそのまま机の上に、分かるように並べておいた) -- ザック 2013-10-06 (日) 18:32:02
      • 【つづく】 -- 2013-10-06 (日) 18:37:47
  • 【END GAME】 -- 2013-10-06 (日) 04:26:26
    • ザック、おいザック。聞こえてるのか -- ランディ 2013-10-06 (日) 04:26:55
      • ん……あ? ランディか? -- ザック 2013-10-06 (日) 13:47:28
      • か?じゃない。お前な…水道料金の支払い方法、電話代の支払い、電気料金、公共料金の支払いは簡単だが更新手続きは「忘れてました」ではすまないんだぞ?
        役所というのはこちらに落ち度があれば「聞かなかった方が悪い」を平気でやる連中なんだからそこを念頭にだな。
        俺らにとって水道さんは絶対唯一だが水道さんにとって俺らはワンオブゼムでしかないんだからな
        (春。いつもの事務所、いつもの事務机からザックに書類仕事を説明する。)
        (水道事変があってからこうした手続き等を一人に分散するよりもと考えた結果でもあるのだが…) -- ランディ 2013-10-06 (日) 14:17:28
      • ああ……そういやそんな話してたな、軽く夢の中だったよ。
        お前が耳元で料金料金水道水道言うせいで蛇口捻ったら金が出てくる夢見る羽目になった。
        (書類に目を落とし)……面倒臭いな、正直。役所は蛇口を捻れば出てくるような簡単な事情をなんでここまで複雑化出来る。
        (ペンを回しながら面倒臭そうにあくびをした) -- ザック 2013-10-06 (日) 14:29:53
      • 東洋では春眠暁を覚えずとも言うが、最近特に気が抜けてるなお前は…
        水道さんはそんなに都合のいい女ではないから覚えておけ。金で喉は潤わないからな。
        一人から見ればそうだが、管理する立場からすれば何万といる人口の水道事情を段階的に管理しているんだ。
        複雑にしようと思えばくらでもできる上に、最後の融通が利くのはアナログだ。デジタルではなく紙が一番の証明になる。
        今後お前がやっていくんだろうから、それぐらいこなせないとまたここを取られるぞ。正当に公な手続きを踏まない限り主張できるものなどない
        こと権利に限ってはな(立ち上がれば、公的書類規格が入る大きさの封筒をザックのデスクに置いて自らは自身のデスクに腰かける)
        そいつがなければいくら喚いてもここは別の人間の権利の中だ。失くすなよ。 -- ランディ 2013-10-06 (日) 14:38:55
      • 誰にでも優しい女は誰にも優しくないのと同じ……水道さんも飴玉で喜ぶ10歳の幼子じゃないってことか。
        読むのは得意だが書くのはそれ程得意じゃないんだがな、オレは……。(辞典を捲りながら言う)
        (書類に目を落としたまま)……なあ、ランディ。お前が何処まで知ってるかは知らないけど。
        なんであの時この事務所の権利を自分の物にしなかったんだ。お前なら口八丁手八丁オレやあのクソバカから法律とかそういうので正当に奪えたんだろう。
        (かつてランディが書いた過去の施設と土地の権利書を取り出し、そこに無理やり書かされたザック・ザリップスの署名を見る) -- ザック 2013-10-06 (日) 14:49:54
      • 筆記も鍛えておけよ。それが仕事に繋がるなら尚更だ。
        そういうことについて俺が女々しく1から10までお話しする男だと思っているのなら流石に殴るぞ。
        つまり、そういうことだ。ロマンティックな理由が欲しいなら勝手に適当な理由つけておけ。
        (加えてザック・ザリップスが公的に存在することを証明する台帳表を確認させる)
        (これがあれば公的に存在し、書類の正当性を証明する手形にもなる。)
        (無理やり上書きされた名前が力を持つ証明でもある)
        それに俺はこんな小汚い事務所を寝場所にするほど居心地の良さを覚えてはいない。もっと素敵なマイホームとカジュアルなデスクワークが待っているんだ -- ランディ 2013-10-06 (日) 15:21:46
      • 女々しく1から10までお話してもらわないと仕事も出来ない男だと思われてるならクロスカウンターだな。(へらっと笑い)
        言いたくないならいい。考えるのは面倒だが、お前が処理したほうがいい面倒臭さの方がこの世には多いんだろうってことだけは分かる。
        ただ……必要なことまで知らされないのは、もうゴメンだって話だ。
        (上から下まで流し読みをして、半分以上書いてある意味を理解出来なかったが捺印をする)
        小汚い事務所を寝場所にして、知らされてない必要事項を枕にすれば、流石にオレも夜は寝苦しい(ギィと背もたれに体を預けた) -- ザック 2013-10-06 (日) 15:34:30
      • 俺が知っていたのはお前が…ここに陣取っていた人間が「何をした」ヤツだったかだけだ。そこから先は…
        当の本人が暴れるもんで勝手に出てきた。今では正解だと思ってるよ。
        なら一応言っておくがな、当時「お前がいる」というだけで万年マスク男のような地上げ屋モドキは相当にいたんだぞ
        前任者は相当人気もので、お前も人気者だったというわけだ。気づかなかったわけじゃないだろう。
        (本当はこの書面について1から10まで口頭で説明したほうがいいんじゃないかと思いつつも烙印を確認する)
        加えて言うならば、俺は公示された証拠や伝聞。記録をそのままに信じはしない。そういう仕事についていたからな。物をみて判断する。
        どこぞの誰かが周囲の伝えと違うのなら、見方を改めるだけだ。そいつが本当にこの場所を必要としているのなら尚更な。
        出所後ここに居座るということが端から見れば狂人の沙汰だと理解してたのか?お前は
        (ついでと言わんばかりに車のキーも寄越す。事務所も車ももう必要なくなったのだと、間接的に告げながら) -- ランディ 2013-10-06 (日) 15:50:00
      • さあな。ぶっちゃけるなら、行く宛がないから元いた場所に戻ってきたっていう単純な理由だよ。
        そういう意味では他人を宛てにしてたのかもな。現実は荒れ放題利用され放題でクソったれた世の中を再確認しただけだったが。
        何処に居たって、誰と居たって、他人が何を言おうが、何を思おうが。オレはオレだからいいんだよ。
        地上げ屋の方は初耳だ……他人の物を平気で奪うような奴ばかりで、世界なんか滅んでしまえばいいって気分だ。
        (あくびをしながら投げられたキーを受取り)
        オレに渡していいのか。……お前ほど繊細な運転出来ないから、お前が許せない程凹ますぞ。
        (こちらも言外に、再びランディが車を運転するようなことがあるのか尋ねる) -- ザック 2013-10-06 (日) 16:04:31
      • 世の中、とあるように一人ではどうしようもないことはある。お前がそう生きていくのはお前らしいが…まぁ今更何言っても変わらんし今更すぎるな
        他人のいない世の中というものはない。他人を気にしすぎるのもどうかだが、気にしなさすぎるのもどうかだな。
        …いるはずのない他人を宛てにしたんだ、別の人間を宛にしてもいいだろう。
        いいさ、好きにしろ。ここに戻ることはない。お前の車で、お前が保険料払っておいてくれ
        (机から降りて上着を羽織り、鞄ひとつ手にして。眼鏡のない顔で最後の言葉を残す)
         
        …こういうときどういうべきだろうな。お前に世話になったわけじゃないんだが。
        いない誰か、にしておこう。こいつ共々勝手に世話になった。
         
        じゃぁな。達者でやれよ。 -- ランディ 2013-10-06 (日) 16:22:35
      • 誰もがそんなに器用に出来てると思うなよ。他人に上手く頼れる奴は、元から他人を宛てにしなくても物事を上手く回せるんだ。
        どういう意図や目的があろうとも、そういう不器用な奴を止まり木にするような連中がいるから、オレは今までどうにか繋がってこれただけだ。

        そうか。じゃあオレも、お前には世話になったばかりだったが、いない誰かの代わりに言おう。
        ……ありがとな。最悪の坩堝の中で、それなりに悪くない日々だった。

        こんな世界だ。また会おうとは言わないでおく。互いの心の平穏のためにな。 -- ザック 2013-10-06 (日) 16:31:36
      • (短く手を振って、振り返りもせずに事務所を後にした。)
        (便利屋ではなく、一人の人間としてやらねばならないことのために)
        (ランディ・レッドフォードの便利屋での話はここで終わった) -- ランディ 2013-10-06 (日) 16:36:57

      • (椅子の背もたれに体を預けたまま、しばらく、中空を眺める)
        (空いたデスク)
        (山積みにされた処理済みの書類)
        (几帳面に掃除されたクローゼット)

        (懐から、煙草を取り出す)
        (禁煙中の人間はもう居ない。気兼ねなくこれからは吸えるだろう)
        (口に咥えたところで、手が止まり、少し考えた後滅多に吸えないその新品の煙草を折り曲げ)
        (男は、静かに箱ごとゴミ箱へ捨てた)

        (――日々は続いていく。無慈悲に、無遠慮に、誰の感傷にも構わず) -- ザック 2013-10-06 (日) 16:44:18

      • 【つづく】 -- 2013-10-06 (日) 16:44:50
  • 【猟奇事件解明 −陸】 -- 2013-10-05 (土) 23:16:35
    • ……最悪だ。
      なんでわざわざ一ヶ月も間ぁ開けたのに、お前とタイミングが被るんだよ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:17:32
      • こっちのセリフだ。……お前が情報を仕入れて嫌がらせに併せたとしか思えん。
        なんだお前は、前歯を折られた意趣返しか……? -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:18:24
      • お前じゃないんだ、誰がそんな陰湿なことするかよクソホモ。
        どけよ、っていうか、花もうちょっとどけろお前、邪魔くさい。俺の入れたらパンパンになるだろう。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:19:50
      • 黙れ。お前の貧乏臭い華を入れて喜ぶ死者が居るか。自分の菊穴にでも挿してろ。
        それか、餓死する前に花からカロリーを得る練習でもしておけ。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:21:11
      • なんとかギリギリ入ったか。きっついな、金持ってるならもっと入り口大きいやつを買っとけよクソ野郎。
        世渡り上手が聞いて呆れるな、金の巡りが悪いのはお前も同じだろう。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:22:51

      • ――あっれ。二人共、珍しいね。
        ……もしかして、揃って二人でオルカのお墓参り? -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:23:33
      • 誰かが仕組んだだろう、これは。流石に。
        お前の仕業か、デランデル。また俺たちの知らないところで、そうせざるを得ないように誘導されていたのか? -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:24:18
      • オレがこのバカと仲良く墓参りするように思ってんなら今すぐ認識を改めろ。偶然以外の何物でもない。
        おい辞めろよ、笑えないぞその冗談。もしそうだとしたら、最悪の悪趣味だろう。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:25:24
      • まさか。何でもかんでも人のせいにするもんじゃないって、イケメンは忠告しておこう。
        流石に、歯は安定したみたいだね、ザック。歯科医は本業じゃないけど成功してたらしいね、良かった。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:26:25
      • その若さで入れ歯かと笑いそうになったが、差し歯か、ザック。
        どうせならその細工の下手くそなカミサマの造形も修正してもらえば良かったろうに。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:27:38
      • その前に、お前の目が世界を正確に捉えられないのと、脳の美的感覚を修正してもらえ。
        成功して良かったとか言うなよ、不安になるだろ、やたら切り刻まれた感触あって今思い出しても気持ち悪いんだよ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:29:19
      • またやりたい。結構楽しかったからさ。
        ……さて、掃除までスネイルとザックが終わらせてくれたんだったら、後は乾杯かな。
        よっと。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:30:48
      • ちょっと待て。デランデル。
        お前、もしかしてそれをオルカの墓に掛けるつもりか。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:31:18
      • そうだけど。……なんかおかしかった? お酒好きだった人のお墓に、お酒を掛ける風習があるってイケメン聞いたんだけど。
        どうせ掛けるなら好きなお酒がいいかなと思って、結構重いのに持って来たんだよこのビール。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:32:20
      • 百歩程譲って、本人の好きな酒を選んだとしてもなんで炭酸をチョイスした。
        そんなもの掛けたらせっかく掃除した墓前が泡だらけになるだろう。清酒を持ってきているからそれを掛けろ。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:33:20
      • あ? こういうのは自分が好きな酒持ってくればいいんじゃないのか?
        オレ、ワイン持ってきたぞ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:34:04
      • 墓前が血塗れに見えるだろうッ!! お前は底なしのバカかッ!
        少しは考えて行動しろ便利屋ッ! -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:34:52
      • ほーら、オルカ。
        オルカの好きだったビールだよー。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:35:46
      • 人の話を聞く耳はあるのか、お前は……! ビールは開けずに墓前に……。
        ああ……もう、知るか……せめて清酒で泡を流してやろう。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:36:35
      • チャンポンするならワインだって構わないだろ。よっと。
        うわあ、すげえ、軽くグロいな、オルカの墓。殺人現場みたいになった。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:37:27
      • ハッハッハ! 多分生きてたら大爆笑しながら、ワンパンで三人とも昏睡だっただろうね。
        んじゃさ、俺たちもご相伴に与ろうか。せっかくだし。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:39:25
      • 世界一不謹慎な参拝客だな……。
        なんだ、乾杯するようなめでたいことなんか、何もないだろう。茶番はゴメンだぞ。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:40:30
      • オレは飲めればなんでもいいぞ。半分は自分で呑むつもりだったし。
        というよりは、逆に聞きたいとこだけどな……。

        デランデル。このクソッタレた世の中の、何に乾杯するんだよ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:41:31
      • ……そうだね。世界は相変わらず俺たちに厳しいし、取り立てて華々しいことなんか何もないよ。
        何処を切り取っても湧いてくるのはゴミの臭いと血の生臭さで、掴めそうな栄光は全部掻っ攫われていく。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:45:44
      • 依頼は何もかも都合が悪く、美味しい儲け話が簡単に罠にその姿を変える。美人が持ってくる依頼は特にだ。
        いつになっても懐が潤うことはないし、金を持っていない人間に興味を持つ奴は居ない。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:46:02
      • 優しさを見せれば漬け込まれ、善人から順番に縄で首を括られていく。
        親切を掛ければ損をして、増長して、付け上がり、もっと多くのものを奪おうとしてくる、最悪の世界だ。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:46:33

      • だからさ。
        そんな世界で『今日までバカやってきた俺ら』に。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 23:51:09

      • 今日の不味い酒』に。 -- ザック 2013-10-05 (土) 23:51:32

      • 今日から先の、変わらずクソッタレた人生』に。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 23:52:11

      • ――『けして切れない絆に

      • ――乾杯。 -- 2013-10-05 (土) 23:53:10

      • 【――つづく】 -- 2013-10-05 (土) 23:53:48
  • 【猟奇事件解明 −伍】 -- 2013-10-05 (土) 21:11:10
    • (夜闇。月明かり。廃病院の中、天井のない病室に、僅かな明かりが落ちてきている)
      (崩れかけの廊下を渡り、デランデルの病室へとキティの肩を借りながら進む)
      (ここまでは。多分、デランデルの予想通りと言ってもいい。あいつは、そういう展開を望む男だから)
      (真っ直ぐ、歪みなく、ただ自分が面白いと思える物が、他人にも面白いと思ってもらえると信じているはずだから)
      (階段を登り牛歩のような進みで病室に向かうと、俺を迎えた時と違い、あいつは4Fの壁のない病室で、立ったまま俺たちを出迎えた) -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:14:49
      • やあ。遅かったね、キティ。
        それと、スネイルも。……三人で会うことなんて、もうないと思ってたよ。
        ……いや違うかな。俺はもしかしたら、ここで三人また会えるかもしれないと思って、キミ達を呼んでたのかもしれない。
        (屈託なく笑い、白衣のポケットに両手を突っ込んだまま、少年のように呟いた) -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:18:40
      • ……そうか。だったら、お前としちゃクライマックスか何かなのか、これは。
        前のシェリオの事件の時から思ってた。お前は他人を何だと思ってるんだ。
        オレは、スネイルは、オルカは、お前の人生に華を添えるための傀儡や道化じゃないんだぞ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 21:21:55
      • そんな風には思ってないよ。傀儡や道化が死を迎えたところで、誰も泣かないし、悲しまない。
        俺はザックやスネイルを愛しているし、オルカのことは愛していた。
        だから、俺が起こした事件でオルカが死んだ時、俺はその死を本気で嘆いたんだ。二度と取り返しの付かないことをした自分を、悔やんで、死を選ぼうとした。
        でもさ、そこで俺が脱落する訳にはいかなかったんだ。そこで俺が死んでしまえば、オルカの死の真相を解明することが出来なくなる。
        だから俺は、自分の性質も利用したんだ。
        全てを詳らかにして、それを誰かに知って貰いたかったから。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:26:07
      • (サングラス越しに、デランデルの顔を見る)……それは、詭弁だ。
        飾り立てなくても、誰かの死はそれだけで尊い物だ。
        お前がやっていることは、過剰装飾でその死を悪趣味に盛りたてているだけだ。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:27:14
      • クソナメクジ野郎、ちょっと黙ってろ……割り込んでくんなややこしい。
        俺はスネイルと同じ意見じゃない。死は死だ。どんなに綺麗に装飾しようが、残るのは汚い死体で、死人に口はない。
        飾り立てるのは生きてるやつが勝手にやってることで、誰も他人の死そのものには興味がないのがこの街だ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 21:28:49
      • ――俺にとって、オルカは特別だった。だから、その死は飾られずに埋もれるべきじゃない。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:29:33
      • ――俺にとって、オルカは特別だった。だから、その死は飾らずとも誰かに受け継がれる。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:30:15
      • ――オレにとってオルカは特別だった。だが、それはオルカの死とは関係がない。 -- ザック 2013-10-05 (土) 21:31:19
      • ……あの時、俺たちは同じ気持ちを抱いていながら、違う道に歩き始めたんだ。
        一人は死を悼み、一人は死を背負い、一人は死を引き継いだ。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:33:29
      • 皆が、独力で事を成そうとした。
        そもそもを考えれば、ジャック・ザ・リッパーの事件ですら、誰にもそれを打ち明けずに、各々でその足取りを追っていた。
        誰か一人を疑ってしまえば、他の三人の力でそれをねじ伏せ、殺しきるしかなかったから。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:35:36
      • だからこれは、怪異に、正面から挑んだ末路だ。オレたちは正体不明のジャック・ザ・リッパーに、1VS1を挑もうとしていた。
        相手の力に合わせることで、相手すら傷つけず、事を収めようとしたんだ。
        それが、そもそもの間違いだったんだな。 -- ザック 2013-10-05 (土) 21:37:52
      • オルカが、俺を疑いながらも、俺に刃を向けられなかった理由が、多分それなんだろう。
        俺は、オルカの刃を受けるには余りにも非力すぎた
        同じことを、ザックやスネイル達も思っていたとするなら、俺の立場は消去法で選んでいい犯人じゃなかった。
        疑い、確定してしまえば――絶対に殺すことが出来る相手だったから。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:39:41
      • だから、オルカは俺に刃を向け、キティの刃を受けた。
        未熟な俺達が直接ぶつかれば、必ずどちらかが壊れることを、オルカは知っていたんだ。
        自身が緩衝材になることで、その直接のぶつかりを回避して、ことを曖昧にしようとした。
        もしかしたら、オルカは分かっていたのかもしれない。この結末がいつか訪れることを。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:41:41
      • ……ただ優しくするだけが愛情じゃないなんて言葉、後付で死者に捧げてるだけかもしれないが。
        そういう意味じゃ……迷いなく、育ててきた少年を斬り、育ててきた少年に斬られることを選んだあのババアは。
        言うまでもなく、オレたちの親だったんだろ。

        デランデル。
        死にたいか。
        この、猟奇事件の黒幕として。
        ジャック・ザ・リッパーとして。
        ――オルカ=セルフランセの仇として。 -- ザック 2013-10-05 (土) 21:46:17

      • ああ。
        ――そうしてくれると、俺は嬉しい。
        (白衣を着た青年は。涙を零しながら嗤い、静かに告げた) -- デランデル 2013-10-05 (土) 21:48:28

      • (ベルトの位置を直し、とっておきの時にしか吸わない新品の煙草を咥え、火をつける)
        (紫煙を吐き出し、長ドスを腰から外し、地面に落とした)
        オレはな。
        争い事が大嫌いなんだ。
        ……この世から戦争なんて無くなればいいと思っているし、近所の餓鬼共がたわいないことで言い争いをしているのを聞いているだけでも胸が痛む。
        創作話の中で男女の愁嘆場があるだけでも本を閉じるし、そこに暴力が絡んで来るとなれば尚更眉間にしわを寄せる。
        オレは平和主義なんだ。だから平等という言葉と公正という言葉と両手を繋いで、心穏やかに生きていく事が出来るならそれが最高の幸せだと思っている。

        そんなオレの手や、オレの目を、お前の血で汚させるなよ、デランデル
        (無慈悲に、その言葉を投げ)
        (昏い、暗い笑みで、嘲笑ってやった) -- ザック 2013-10-05 (土) 21:57:29

      • (俺は、その男の後ろで)
        (キティという男の、本当の恐ろしさを垣間見て、言葉を飲み込んだ) -- スネイル 2013-10-05 (土) 21:59:18

      • だよね。分かった。
        じゃあね、キティ、スネイル。

        (その両足が、地面を蹴り、後ろに広がる中空へと消えていく――) -- デランデル 2013-10-05 (土) 22:01:31

      • (――駆け出す。新品の煙草で『調べた』距離は四歩分) -- ザック 2013-10-05 (土) 22:29:11
      • (――駆け出す。そうするしかないように仕向けたザックに従い、一歩後ろを) -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:29:28
      • (やられたことは、平等にやり返すのが主義だったから
        デランデルが使った他人を動かす手法を、そっくりそのまま返してやることで、あいつに一番綺麗な道を選ばせた。
        いくつもあった選択肢の中から、オレのセリフに合った最期として、飛び降りを選ぶとオレは読んでいた) -- ザック 2013-10-05 (土) 22:29:46
      • (クソッタレ。いつだってこいつはやることが突然で、それに対処するのが遅れて一歩後ろを歩かさせられる)
        (暗闇の中で生きてきた頃だって、俺が尻拭いを勧んでやってきたわけじゃない)
        (こいつを相棒にしていると、突拍子もない行動に驚かされて一歩分行動が遅れるだけなんだ)
        (こいつはいつだって自分勝手で、自分本位で、勝手に――俺が一歩後ろを追いかけてきていることを信じきって行動を起こす) -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:30:09
      • (迷いなく、地面を蹴る、先に落ちたデランデルの位置を確かめ、さっき確かめたベルトからワイヤーを射出する)
        (落ちゆくデランデルの身体に絡みつき、オレは空中で後ろに向けて、腕を伸ばした) -- ザック 2013-10-05 (土) 22:30:30
      • (迷いなく、地面を蹴る。距離はキティの一歩後ろ。それも後ろ向きに跳んだ
        (後先も何も考えずにデランデルを助ける方を選ぶ確信していたから、蛇腹剣を上へと伸ばす)
        (それは廃病院の崩れかけの鉄柱に巻きつき、俺は空中で後ろに向けて、腕を伸ばした) -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:30:48
      • 互いに相手の腕を掴むと、引っ張られるような感覚に襲われ、廃病院の壁に突っ込む)
        (足を突き刺すようにして身体を固定すると、下にいるデランデルを巻き取るために、反対の手でベルトに触れた) -- ザック 2013-10-05 (土) 22:31:09
      • 二度と、出来る気がしない。沢山の偶然を重ねあわせて、ようやく首の皮一枚で繋がった状態だった)
        (腕が軋み、二人の体重を一瞬支えた右腕の骨が、折れていることに気づく)
        (キティが足を壁に突き刺さなければ三人纏めて地面の染みになっていた) -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:31:31
      • (デランデルの身体を、二度と抜け出せない程の力で掴み、抱き寄せる)
        (オレは、何も言わないそいつに向けて、呟いた)
        ……なあ、デランデル。
        過去は覆らない。
        死者も生き返らない。
        ましてや生まれ変わることもないし、死者たちが暮らす楽園なんか存在しない。

        犯した過ちは、誰にも許されることはないし、
        例えオレたちが全員、自らの命を断ったところで、誰も許しちゃくれない。
        オレがオルカを殺した理由も、お前がオルカを殺した理由も、誰にも理解されることはないし、
        共感をして慰めてくれるやつなんか絶対にいない。
        それが元で、オレたちはオルカを知る全ての人間に恨まれることになるし、
        何よりその罪悪感で死ぬ寸前までずっと、もがき苦しんで苛まれていく。

        この罪からは永遠に逃れられない。
        人が死に、苦しみ、悲しんだ物語が、綺麗に終わることなんて絶対にないんだ。
        それは、ただ上からもっと幸福な未来を塗り重ねることによって綺麗に見えるだけで、
        過去に受けた傷も、与えた傷も、どんなに時間が経とうとも治りはしない。
        誰かが忘れても、誰も知らなくても、もう自覚してしまえばオレたちは永遠に苦しみ続けるだろう。
        お前が死の先にどんな綺麗な結末を思い描いていたかは知らない。
        でも、これだけは言える。
        お前が死んだところで何も変わらない。
        お前が死んだところで、何一つ綺麗に物事が終わることはないんだ。
        これは、人が死んだ話だから。
        どんなに装飾を加えたところで、誰かが見れば後味の悪い、便所の落書きみたいなもんだからな。

        世界は、クソッタレなんだ。
        お前がどんなにはしゃいで、飾り立てたところで。
        現実は、日常は、絶対に誰かを楽しませ続ける事は出来ない。
        だから、生きろよ。
        血反吐を吐きながら、苦しんで、世界を憎み続けて、生きてる理由さえも分からないまま。
        この、辛いだけの世界を。死んだつもりでな。 -- ザック 2013-10-05 (土) 22:42:38

      • 酷いな。
        ……台なしだろ。
        ……せっかくの結末が。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 22:44:12

      • (サングラスの位置を、首の振りで直して、呟く)
        ……区切りもなく、曖昧で、締まりもない。
        それが、クソ溜めみたいなこの世界での生き方だ。
        お前は、今まで夢の中だったんだろう。母親の腕の中で見る夢のな。
        ……いつまでも、一人だけ物語の中に居るなんて、少なくとも俺は許せない。
        シンデレラが王子と結ばれた後、桃太郎が鬼を退治した後、何一つ不自由なくずっと幸福だったと思うのか……?
        それにな。
        お前がオルカの死をここでお前という黒幕で終わらせようとし、それがキティという存在に観測された以上。
        オルカの死を引き継いだ俺が、その話を終わらせるのは――けして許さない。
        ここから先。俺も、お前も――いつ終わるか分からない終わりに怯えながら、観測されない平坦な日常を、紡ぎ続けるんだからな。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:51:57

      • ズルいな、そういうのは。
        ――行間の、想像の余地も残してくれないなんて。
        (涙を流し、苦笑を零した)

        ……あまりに、辛すぎるだろう。 -- デランデル 2013-10-05 (土) 22:54:00

      • 知らなかったのか?
        世界は、生きていくのは、辛いんだよ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 22:55:31

      • 俺たちは、知っていた。
        ……暗闇の中にいた、あの頃からな。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 22:56:03

      • 【つづく】 -- 2013-10-05 (土) 22:56:21
  • 【猟奇事件解明 −肆】 -- 2013-10-05 (土) 15:54:23
    • (頭に血が上る。呼吸が荒い。怒りでどうにかなりそうだった)
      (長ドスを持ったまま、オレはスネイルを見る。オレを騙し、謀り続けていたかつての相棒を睨む)
      (口の端から漏れる吐息は怒りの分だけ熱く、ここまで駆けずり回って来た疲れも手伝って、獣の唸り声のように自分の耳に届く)

      (デランデルにジャック・ザ・リッパーの疑いが掛かり、賞金が掛けられていることを知り、キャロルに連絡を取りながらあちこちを探しまわった)
      (途中、デランデルがかつてオルカを死に追いやり、俺を罠に嵌めたジャック・ザ・リッパーであることが分かり、あいつの本当の目的も聞かされた)
      (ヌマル若頭筆頭の力さえ使いながら、途中いくつもの障害を力づくで破壊しながら、ようやく誰よりも早く辿り着いた場所がここだった)

      (そこに、あいつはいた)
      (いつものスカした顔で、何もかも分かったような顔をして、オレの前に立ちはだかっていた)
      (こいつはあの時、オルカが死んだ時から全てを知っていて――オレにだけそれを隠していたんだ)

      スネエエエエエエエエイルッッッ!!!
      (呼ばれた名前に応えるように、相手の名前を叫びながら斬りかかる) -- ザック 2013-10-05 (土) 16:03:01
      • (固定状態にした蛇腹剣で斬撃をいなし、距離を取る)
        (鋼糸で繋がれたドスの刃同士が離れ、鋭利な鞭となり地面に触れてジャラリと音を立てる)

        今頃、何をしに出てきた。
        ここに、お前の居場所はない。いや、俺達の居場所は最初から何処にもなかったッ。
        怒りに任せて何かを成し、自身の無聊を慰めるのが目的なら、ここにお前の満足するような回答はないッ。
        お前が何もしなくても、デランデルは自ら死を選ぶ――そこにお前が入れば、またオルカの二の舞いになる!! -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:07:02
      • (言いながら振ってきた蛇腹剣がオレの長ドスに巻きつき、ギシリと音を立てる)
        (普段なら単純な腕力勝負で引けを取ることはないが、二日程全力疾走を続けたせいで、身体が重く、怒りに着いて行かない)

        そんなこと、オレが許せると思うかッ!!
        何年も、オレを騙し続けておいて、今更自分だけ綺麗な死を迎えられる程甘くないんだよッ!!
        あの時、ジャック・ザ・リッパーの正体さえ分かっていれば、オレ達はあんな選択をしなくて済んだかもしれない。
        これだけ多くの物を失わずに済んだかもしれないッ!!
        それを、こんな形で終わらせることなんて、オレは許せねえッ!! -- ザック 2013-10-05 (土) 16:10:56
      • (相手の身体が固定されたところで、散弾銃を放つが、横に跳び、相手はそれをかわす)
        (連射の聞かない得物であるため、その間に病院の壁の裏を遮蔽物にされ、舌打ちをする)

        お前は、過去に囚われているからいつまでも子猫(キティ)なんだよ……ッ!!
        お前の溜飲を下げる為にこの事件に明確な終点を打ってしまえば、オルカの死はそれこそ無駄になるッ!!
        俺たちを一人残らず生かし、先に進ませる為に自らの命を投げ捨て、事実を曖昧にしたオルカの死が無駄になるんだッ!!
        俺は、それだけは止めないといけない。彼女の死を踏み躙る相手なら、例えかつての相棒だろうが殺してみせるッ!! -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:16:56
      • (遮蔽物にしていた壁に指を差し、腕力だけでもぎ取り、それを壁にしながらスネイルの方向へ走る)
        (壁を貫通してきた散弾銃の第二射が俺の脇腹を抉るが、その射撃でひび割れた壁を粉々に粉砕しながら相手の腕を撫で斬る)

        曖昧な事実で誰が救われるッ!! その結果が、いつまでも停滞したオレたちの今だッ!!
        過去を認めず、正しく捉えず、偽りの記憶によって憎しみ合ったせいで、オレたちはあの雨の中からまだ一歩も動けていないんだよっ!!
        他人の死を治せないと嘆いたデランデルがまた人を殺し、オルカに傷つけられたお前は彼女の幻想を追いかけ続けてる。
        そしてオレは、いつまでも何も分からない知らされない子猫のままだッ!! そんな継続が、オルカの望んだオレたちの未来のはずがないだろうッ!! -- ザック 2013-10-05 (土) 16:23:12
      • (撫で斬られた腕で相手の腕を怒りに任せて掴み。踏み込み、全力で地面に叩きつける)
        (怒りによってストッパーが外れたのか、相手の身体がバウンドするのに合わせて無理やりに蛇腹剣を振り下ろした)
        (キティはそれを長ドスで防ぎ、咳き込みながら転がり、距離を置いた)

        お前に――お前にオルカの何が分かるッッ!!
        オルカが死ななければ、オレたちは今ここに三人とも存在すら出来なかったッ!!
        人間性を与え、可能性を残してくれたのは彼女だ、お前こそ、オルカが何を願ってお前に殺されたか、何一つ理解出来ない子猫の分際でッ!!
        お前がデランデルを裁けば、オルカの遺志は全て失われる、彼女の本当の死が訪れるんだッ!!
        オルカが残した何かを、お前が踏み荒らし、お前が破壊しようとしているんだ!!
        俺の目の前で、彼女を殺したあの時のようにッ!!
        -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:28:44
      • (蛇腹剣が刺突の形に構えられ、音速の振りによって俺の腹部を貫通する。内臓がかき回される灼熱の痛みに歯噛みしながら、地面に長ドスを刺して踏みとどまる)
        (スネイルがオレを見て、オレはスネイルを見た。いつもサングラスに隠されているその金色の瞳が、歪みに歪んでいた)
        (そうか。やっぱり、あの瞬間――スネイルは、オレがオルカを殺す瞬間を、見ていたのか)

        ああ。
        そうだな。
        ――オルカを殺したのは、オレだ。
        (ず、と腹部に食い込んでくる蛇腹剣を手繰るように、前に踏み出す)
        オレはだから、お前の、デランデルの、その怒りを正面から受け止めるべきだったんだ。
        どんな理由があろうとも、誰がそれを仕組もうとも、彼女にトドメを差し、全てを動かしたのはオレの刃だったから。
        分かってる。オルカは……そうやってオレたち三人に、満遍なく罪を背負わせようとした。誰か一人じゃ支えきれない罪を背負わせて、三人を前に進ませようとした。
        (腹部に食い込んでくる蛇腹剣を、片手でぎしりと掴む)

        オルカのその選択は、間違っていた。
        オレたちは、互いに支えあうことが出来るほど強くなかった、己の中に均等に配分された罪を互いに押し付けあって、啀み合い、殺し合った。
        お前は、デランデルを止められなかった罪をデランデル自身に押し付けるために、オレに殺意を向けたんだ。
        オレが、オレ自身が彼女を殺したことを認めたくないために、お前に殺意を向けたようになッ!! -- ザック 2013-10-05 (土) 16:37:40
      • (刃を握られ、動かせなくなった蛇腹剣以上に、その言葉に俺自身が縫い止められる)
        (本当に、こいつは――何も知らない癖に、言いたい放題言ってくれる)
        (心からの殺意が、胸の内を黒く染めていく。俺は、そうはなれない。中途半端な賢しさが、実直に物事を捉えさせてくれない)
        (それが恐らく、デランデルが俺を解決役(PC1)に据えなかった理由であると思うと――俺は小さく笑うことが出来た)

        キティ。
        何かを悟った気になった、哀れな子猫が。
        昔は、同じ方向を向いていたから気づかず。
        今までは、理由は先に与えられてからお互いを睨み合っていたから気づかなかったよ。

        ――俺は。お前が大嫌いだったんだな。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:44:12

      • ――それは、オレは、知らなかったがな。

        (向けられた散弾銃の銃口をズラすために、傷口に埋まった蛇腹剣を掴んだその手で、思い切り剣を引く)
        (引き金を引くタイミングに合わせたその姿勢崩しは相手の銃口の向く先を僅かにズラし、オレの左腕を掠めて後方へと死の悲鳴を長く響き渡らせた)
        (相手の姿勢が回復する前に踏み込み、長ドスを振りかぶり、相手の頭を狙って振り下ろす――) -- ザック 2013-10-05 (土) 16:47:00
      • (蛇腹剣を引っ張るも、相手の傷口に引っかかり、抜けない。姿勢も悪い。最悪の選択肢として散弾銃で相手の長ドスを受ける)
        (銃身の半ばまで食い込んだ相手の刃を、捻るようにして打ち上げると、得物同士が絡み合った状態で空中へと弾け飛んだ)
        (二人はその様を見上げ、そして即座に相手を見た)

        (俺の拳がキティの顔面に突き刺さり、キティの拳が俺の腹へと食いこむ)
        (蛇腹剣を引き抜く暇などない。両手を離して相手の拳を受けながら、相手に拳を叩き込む) -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:51:02
      • (一撃が、重い。どう考えてもスネイルが出せる膂力以上の重さがそこにはあった)
        (何かの覚悟がなければ、それだけの物を拳に乗せることなど出来ない。ここを退くくらいなら死んだほうがマシと言わんばかりの一撃が、オレの内臓の位置を動かす)
        (オルカが、何を思ってオレに殺されたのか、本当の意味ではオレは理解出来ない。何故オルカが死ななければならなかったのか、オレは何故オルカを殺さなくてはならなかったのか)
        (何一つ分からないけれど、それを肯定するスネイルも、それを今更一人で死を以って贖おうとするデランデルも)
        (――自分の頭の悪さも、何一つ許すことが出来なかった) -- ザック 2013-10-05 (土) 16:53:59
      • (素手で蛇腹剣の刃を掴み、指を切り刻まれながら相手の身体を引きつける。カウンター気味に合わせた拳が相手の顎に突き刺さると同時に、顎に衝撃が走る)
        (視界が揺らぎ、目が霞む。相手の姿がぐにゃぐにゃと歪み、俺は震える膝でどうにか持ちこたえる)

        (俺は、何も出来なかった)
        (キティや、デランデルと違い、俺は事務所の誰かがジャック・ザ・リッパーであったとき、一番その状況を俯瞰で見ることが出来たはずなのに)
        (俺が、それぞれの思惑が分かり、何もかもを正しく動かせていたら)
        (キティの言う通り、何もかもを分かっていたなら――俺はオルカを死なせずに済んだのに)
        (振るった拳がキティの歯を砕き、骨を折った。血だらけの顔面を引き起こして、思い切り頭を叩きつけようとして、相手の頭が逆に顔面に突き刺さる)
        (鼻骨が折れる音がして、バタバタと鼻血が地面に落ちた) -- スネイル 2013-10-05 (土) 16:59:14
      • (地面に、折れた歯を吐き出して、拳を振り回すと、思い切り空振りをしてたたらを踏む)
        (肩で息をしながらスネイルの姿を見る。同じように顔をボコボコに腫らした無残な顔が、オレを睨んできている)

        ……オレたちは、罪を背負うべきじゃなかったんだ。
        スネイル。逃げ回らないと生きていけない時代は、もう過ぎた。
        クソったれな世界にピッタリの、クソったれた大人になったんだよ。
        誰もがオルカのようには生きられない。あの死は高潔であったけれど、それだって誰かの視点から見た高潔さであって、絶対的なものじゃない。
        デランデルは、オレに言った。
        いつまでも、過去を、引きずるなって。……あれが、もし、オレに対するSOSだったんだとしたら。
        ……オレは、それすらも分からない自分と、今更そんなことを零すあいつが……このままオルカと同じような高潔な死を選ぶことを、許せない。 -- ザック 2013-10-05 (土) 17:16:17
      • ……だから、お前が裁くのか。
        お前が許しを与えて、オルカの呪縛から解き放ち、あいつを改心させるのか。
        そんな三流のシナリオも……俺は認める事は出来ない。
        この話は、語られるべきではなかったんだ。最初から、このシナリオは破綻していたッ。
        どんな方向であろうとも、事態を正しく着地させれば、それは何処にあってもデランデルという導き手の手のひらの上だ。
        オルカの死も、俺とお前の確執も、何もかもが与えられた配役の上であるなんて――俺は、認めない。 -- スネイル 2013-10-05 (土) 17:23:35
      • (青白い顔で、ふらつき、懐を探り、シケモクを取り出そうとして全部地面にぶちまける)
        ……悪い。血ィ出したせいで、もう難しいこと考えられないわ。
        (腹部から蛇腹剣を抜き、地面に転がす)

        オレは多分――知ってたなら、早く言えって、お前らに文句が言いたいだけなのかもな。

        デランデルが死を選ぼうとしてるなら。それがどんな死の形であれ、オレはそれを許さん。
        それを、お前が全てを知っていながら肯定しようっていうなら、お前を倒してでもアイツの前に立ってやる。
        なあ、スネイル。
        オルカは死んだよ。そこには大きな穴が開いた。
        でも――その穴は、他の何かで埋められるものじゃなかった。
        オレたちはその穴を埋めるために、その幻影を背負い、贖い、学んだ。
        でも、本当はそんな必要なかったんじゃないかって、思った。

        オルカが死のうが死ぬまいが――オレたちは、あそこに四人で生きていた。
        オルカになる必要も、その悼みを引き継ぐことも必要なく。
        ただそこに、オレたちがあるだけで、オルカがいた証明になったんじゃないかって。

        なあ、スネイル。オルカは完璧な存在じゃなかったんだ。
        ただ、自分がいたことの証明を、お前と同じように後の世界に残そうとしただけの。
        ――ただのオレたちと同じ、人間だったんだ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 17:35:46

      • 知ってたよ。そんなこと。
        ……俺はだから。
        少しでも、その存在を繋ぎ止めるために……お前と敵対することを選んだんだから。
        俺もお前も、デランデルと同じように。
        オルカの死を、どこにでもある死にしてしまいたくなかったんだから。

        (大きく息を吐き、静かにその事実を告げ、踏み込んだ) -- スネイル 2013-10-05 (土) 17:41:40

      • だったら、大丈夫だろ。
        (焦点の定まらない目で、ぼんやりと笑いながら、すきっ歯になった歯でへらへらと笑った)

        最初から、同じことを思ってた人間達の争いなんて、どう考えても茶番にしかならない
        オレたちは同じ物を目指して、違う方向を向いて、互いを憎みあっていただけの。
        (相手の踏み込みに併せて、スネイルの懐に入り――その心臓を、拳で撃ちぬいた)

        ――出来の悪い息子たちだったんだろ。 -- ザック 2013-10-05 (土) 17:44:10

      • (心臓を撃ち抜かれ、胸の奥から這い上がってきた血塊を吐き出し、ザックに身体を預ける)
        (まだ残っている意識に感謝しながら、血まみれの口元で笑った)

        ――バカ言え。出来の悪いのは、お前、だけだ。

        (多分、それは、オルカが死に際に笑ったときと同じような笑み)
        (他の二人の無軌道さは、お前が正しく導いてやってくれと、俺に向かって微笑んでいたオルカが残した、最期の笑みと同じもので)

        (俺は、思った)
        (ああ、そうか俺は)
        (あの女が好きだったんじゃなく――ずっと、あの女になりたいと、そう思っていただけだったんだと) -- スネイル 2013-10-05 (土) 17:49:18

      • (しなだれ掛かってくるスネイルの身体を起こし、肩を貸す)
        (もう何年も前に、こうやって薄暗い路地裏を逃げまわっていたことを嫌々思い出した)

        ……お前も大概同類だろうが。ムカつくことに。
        もう一仕事ある。……最後までやるのがプロだ。
        末っ子をシバキ倒しに行くのを、手伝えよ……。
        ――相棒。
        (真っ直ぐ、廃病院をにらみつけながら、左肩を貸したスネイルに右の拳を差し出す) -- ザック 2013-10-05 (土) 17:53:19
      • (血痰を吐き出しながら、咳き込む。息も絶え絶えに言葉を返す)
        ……頭も悪い上に、物覚えも悪いか。
        俺は、お前のことが大嫌いで、お前の味方じゃないと、言ったはずだろう。
        ……全く。
        お前は、いつまで経っても、あの頃と何一つ変わってない。
        ――ただの子猫だな。
        (静かに、左拳を出してぶつけた) -- スネイル 2013-10-05 (土) 17:56:23

      • 【つづく】 -- 2013-10-05 (土) 17:56:38
  • 【猟奇事件解明 ―参】 -- 2013-10-04 (金) 21:49:35
    • (そいつは、廃病院の一室、沢山の落書きがそのままにしてある部屋の中で、椅子に座っていた)
      (今、この街中の人間がそいつの行方を探しているというのに、そんな事情もどこ吹く風に、何処からか持ってきた背もたれのある椅子に深く腰掛けていた)
      (俺はサングラスの位置を指で直すと、その男――デランデルに向けて言葉を投げる)

      まるで最初から俺が来ることが分かっていたような様子だな。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 21:52:44
      • (椅子の背もたれから体を起こし、眼鏡の位置を直すと、少年の幼さの残る表情で肩をすくめてみせた)

        そりゃ、分かるよ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 21:54:18
      • ――それは、お前がイケメンだから……か? -- スネイル 2013-10-04 (金) 21:54:35
      • ……違うよ。
        きっと、最初に来てくれると、他ならぬ俺が思って、期待していたからさ。
        ここで、俺が最初に遭うとするなら、キミがいいと俺が思ったから、そうなったんだよ、多分ね。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 21:56:17
      • (サングラスの位置を直し、俯く)
        その為に、自身に懸賞金を掛けるような無謀を犯してもか。
        もっと突っ込んで尋ねよう。市井を扇動してジャック・ザ・リッパー事件の犯人が自分であるとした上で、だろう。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 21:58:18
      • スネイルは、何でも知ってるよね。俺なんかよりずっと頭がいいから、医者とか目指してみたら良かったんじゃないかな。
        言うとおりだよ。認めることが、最初にここに辿り着いたことへの報酬になるなら、認めよう。
        今のところ、全部思惑通りに行っていることを付け加えた上で、何か聞きたいことはあるかい、スネイル。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:00:11
      • ない。
        俺は、お前に聞きたいことなど、何一つない。
        お前を通じて、事実を正そうという気で此処に来たわけじゃない。
        ただ、そこにお前がいるという情報があって、お前が何をしようとしているかが分かり、
        そんな時、お前がどんな顔をしているのか、見に来ただけだ。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:01:58

      • スネイルの思っている通りだよ。
        ――俺が、ジャック・ザ・リッパーなんだ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:02:54

      • (その言葉は、完全に不意打ちだった)
        (虚を突くことを目的とし、更にそれを致命傷にするために全く無駄がなく差し込まれた刃だった)
        (耳を塞ぐことも、聞かない振りをすることも、否定の言葉を即座に重ねる事もできずに)
        (ただ、事実が事実として存在することを、虚を突かれた無言が証明してしまう) -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:05:00

      • いやぁ、ね。僕って医者目指してたじゃない。
        だからさ、人の中身とか内臓とか、特に若い女の子のそれにすっごい興味あってさ!!
        だから、このゴミ溜めみたいな街の中のゴミみたいな人間なら一人くらい死んだって誰もわかんないなあと思ったんだよ!!
        実際殺してみたら思った以上にハマってさあ! いいよね、内臓に刃を滑りこませる感触、実は俺の精通ってその時だったんだよ!
        被害に遭った子達も、まあ可哀想だったけど、普通の人間よりもイケメンに殺される方が本望だよね!!
        泣き叫ぶ女の子を切り刻むのってさ!! すっげー楽しいんだ!!
        分かるよね!! スネイル!!
        キミなら俺のこの高尚な趣味を分かって、俺の味方をしてくれるよね!! -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:16:10

      • ――辞めろッッ!! -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:16:52

      • (天井も壁も疎らな廃病院の中、一瞬だけ、静寂が広がる) -- 2013-10-04 (金) 22:17:18
      • (その一喝で、デランデルは興奮気味の言葉を飲み込み)
        (静かに俺の顔を見た)
        (その状況に、むしろ俺の方が、絶句をしていた
        (それだけは)
        その言葉だけは、絶対に、口にしてはいけないはずの言葉で、口にするつもりのなかったはずの言葉だったのに)
        (――デランデルの言葉を遮るためだけに、俺の口から迸っていたから) -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:18:03

      • (穏やかな笑みを浮かべて、スネイルを見る)……俺はさ。
        だから、スネイルに来て欲しかったんだ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:19:27
      • それ以上……オルカを……デランデル自身を、貶めるな……ッッ!!
        (息を荒くし、ショットガンを背中から抜き、片手で構える)
        (はぁ、はぁという自分の呼吸音が五月蝿い)
        (感情に流されないのが美徳だと思っていても、どうしても途中からそうなってしまうことを、悔やんだ)
        (冷静であると周囲に言いながらも、最後にはこうやって馬鹿な真似をしてしまう。何度悔やんでも、同じ道を辿るしかない自分が嫌になる)

        お前は……猟奇殺人犯じゃない。
        殺したいから殺す、なんて不条理で物事を回転させている、シリアルキラーなんかじゃ、絶対にない。
        それを、俺に言わせるためだけに、狂人の演技をするのを辞めろッ!! デランデルッ!! -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:20:00
      • そうだね。俺は、人を殺す時にそんな快楽に似た感情なんか抱いちゃいない。
        何人も殺して来たのは事実だけれど、一度もそれが楽しいなんて思ったことはなかったよ。
        人の死ってさ、オルカの時にも痛いほど分かったんだけど、とても悲しい物なんだよ。
        だから、出来るだけ人は死なない方がいい。そんなこと、オルカがキティに殺される前から、知ってたんだ。
        オルカは、俺にそれを伝える為だけに、キティに自分を殺させたんだと、僕は思ってるしね。

        俺が死体の解体を行ってた事務所の別部屋は、毎日鍵は締めてたけど、オルカも合鍵くらいは持ってただろうから。
        それにオルカは血の匂いに敏感だったから、もしかしたら俺が頻繁に外に持ち出そうとしてたバケツの中身が、人間の血だって知ってたのかもしれない。
        所詮子供のやることだから、何処かに必ず穴があって、だからこそオルカは俺がジャック・ザ・リッパーだったっていうのを知ってたんだ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:26:55
      • 数年前のあの日、オルカは、俺を正面から斬り伏せることで、俺の中にあった『デランデル犯人説』を消そうとしたんだな。
        どう足掻いたところでお前が俺に一太刀浴びせるのは不可能であるから、オルカがジャック・ザ・リッパーでないとしたら、消去法で俺の殺意はキティに向くことを、オルカは知っていたんだ。
        俺はついさっき、キャロルからお前の情報を貰うまで、ずっと、ザックが俺を切り伏せた殺人鬼だと思っていた。
        だが、真実を敢えて不透明にするためだけに、オルカは俺達の事務所の誰が殺人鬼であるのか、分からない状況を作り上げたんだ。
        キティは俺を恨み、俺はキティを恨み、真実に一番近いデランデルを蚊帳の外に置いた。
        それが、オルカが俺を斬り、キティに殺された真相なんだろう。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:33:08
      • 一つだけ、訂正するとするなら、俺は真実に一番近い位置にいたわけじゃない。
        むしろ、一番遠くにいたんだと思う。何しろ、俺がそれを思い出すまで、これだけの時間が掛かったんだから。
        幼少期に過度なストレスを受けた少年が陥りやすい記憶の欠落ってさ、実はキティだけじゃなくて俺も罹患してたんだよ。
        キティが俺が殺人を犯す姿を見て放心状態になったのと同じように、俺は人を殺す瞬間だけを後から都合良く消すことが出来たんだ。
        だから自分が殺人を行っている自覚はなかったし、今もそんな大それたことを出来るなんて思えないんだ。
        俺は、人なんて殺したくないからさ。必要がない限り。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:37:11
      • 必要があったから、なんだろう。
        そしてお前の立ち位置は、「自分が殺人を犯していることを気づかない」方が都合がいい立ち位置だ。
        だから、お前は人を殺し、人を殺す自覚を失い、ただの登場人物としての自身を全うした。
        フェルトハイム症候癖・A型罹患」。
        別名「配役至上思考」……他者に役割を与え、ロールプレイを行わせる行為の重篤中毒の権化が……お前なんだろう。
        ……今のこの状態も、お前のシナリオ上で俺達が遊んでいるだけに過ぎないんだろう。
        配役された自身の役すら全うして、人の死すらシナリオに組み込んでッ!! -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:42:13

      • そんな大層なものじゃないよ。
        (デランデルという青年は、椅子に座ったまま、白衣を纏った上半身を少しだけ倒し)
        (くすんだ金髪を両手で掻き上げて、静かに呟いた)
        ただ、俺はそうとしか生きられないだけなんだ、スネイル。
        四六時中、視界に入る物事に、こうだったらもっと楽しいのに、や、こうだったら上手く纏まるのに、とか。
        そんなことを、ずっと考えているだけなんだよ。
        俺は、現実に一度も満足したことがないから、だからせめて他人の欲求くらいは満たせるようにしようと思ってるだけなんだ。
        欠落を埋めることも、無駄をそぎ落とすことも医者の勤めだと思えば、これは治療行為と言ってもいい。

        どんなシナリオだって、問題が起きなければ動き始めないだろう。
        なんでもない日常が許容されるような創作話って見たことがないだろう。
        それは、世界の危機であったり、新しいキャラクターだったり、何かの覚醒だったり。
        そういう何かのイベントを起点にしないと、人生はあまりに平坦で何の区切りもないただの連続性で繋がっている道になってしまう。
        そんな道の一部を切り取ったとしても、誰も興味を抱いてくれないし、誰も見向きもしないと思うんだ。
        だから、俺はいくつか布石を打っておいた。例えばさ、治安が悪いとはいえジャック・ザ・リッパーなんて「そのまま」のネーミングの殺人鬼が現れたら。
        きっと、キミだけじゃなく、誰もがその正体が気になり、血気盛んな人間はそれを解決しようと思ってくれるかなって、そう思った。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:49:39
      • だから、お前は……その噂を流し、時には自身がジャック・ザ・リッパーとなって街を暗躍した。
        お前はただ布石を巻いただけで、その点を線で繋いだのは、大衆の意思だ。
        物事に繋がりがあり、それが伏線となって表出することを望んだ誰もが、その虚構の殺人鬼を作り出した。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:51:45
      • 都市伝説とかさ、七不思議とか、UMAとか、超常現象とか。
        やっぱりさ、そういうのって人間大好きなんだなって思ったよ。
        それが、我が身に振りかかる可能性があっても、人はそれをジャック・ザ・リッパーだのなんだの言って面白がれるんだから。
        それくらい、人は刺激に飢えているんだと思うと、やっぱり俺みたいな罹患者が出てきたのもカミサマの応急処置なんじゃないかって思った。
        だから、俺はその偽りのジャック・ザ・リッパーを、俺のシナリオの中に組み込んだんだ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 22:53:57
      • そして、そこにプレイヤーとして、オルカが現れた。
        ジャック・ザ・リッパーの真相に、誰よりも早く気づいていたから、そのシナリオに入り込んでしまった。
        今まで自身がその魅力で、他人を自分のシナリオに組み込んでしまうことが多かったオルカだからこそ、潜在的にそのシナリオにはプレイヤーとして参加したかったんだろう。
        ただ、オルカにはプレイヤーの自覚がなかった。が故に、物語にカタルシスのないままそれを瓦解させようとした。
        だからお前は、キティと俺に配役を与え、結末をズラし、そうするしかない状況に追い込んだんだ。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 22:57:21
      • ギリギリでね、多分オルカは気づいていたんだと思う。
        これが、俺の選んだ道であり、自分がそのシナリオの中でプレイヤーとして組み込まれていたことを。
        とても、賢くて、とても強い人だったから。
        滑稽だよね。自分の一番大切だった相手の死すら、俺はシナリオに組み込む事が出来たんだから。
        あの時俺は、死者は治せないことを学んで、涙を零したんだ。
        俺は、ちゃんと他人の死で泣けるくらいの感受性があるのに、だからこそ、その死を尊い物として昇華させようとした。
        病魔に冒されたオルカの死を意味のないものにしないために、意味を持たせたかったんだ。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 23:01:44
      • それが、オルカを死なせ、俺とキティを対立させた、その理由か……ッ!! -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:02:33
      • そうするべきだと、思ったんだよ。
        きっと、そうした方が、いいって、思ったんだ。ただそれだけなんだよ、スネイル。
        全てのシナリオは解決するためだけに存在する、だから、あの事件をオルカが考えるように曖昧にしておくことは出来なかった
        そんなこと、俺には許せなかったから……誰も用意しないなら、俺が黒幕になるしかないだろうって思っただけだよ。

        スネイル。
        何で俺が、最初にキミに来て欲しかったか、分かるだろう。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 23:05:08
      • ふざけるなァッ!! こんなことが、解決だなんて、俺は認めないッ!!
        俺がお前を恨み、お前の死によって全てが解決するこの展開を、それを聞かされた後に俺が全うすると思うかッ!!
        ……言っただろう、俺は、お前の顔を見に来ただけだ。お前のシナリオに付き合うためにここまで来たわけじゃない!!
        お前が、他者を使った自殺をしたいのは勝手だが、死を願うなら勝手にすればいい……!
        ……デランデル。俺は、お前を恨まない。
        オルカがそれを望んだのなら、俺はオルカのその遺志のまま、真実を曖昧にしてこの配役から降りさせてもらう。

        俺は――主人公(PC1)なんか、真っ平だ。 -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:09:28

      • (その言葉を聞き、少しだけ寂しそうに俯く)そう、か。
        スネイルがそれを望んでいるのなら。俺は強要したりなんてしない。
        本人が役を降りるっていうのなら、俺は罹患者(GM)失格だからさ。

        ごめん、スネイル。ずっと、騙してて。 -- デランデル 2013-10-04 (金) 23:11:35

      • 謝るな。俺は、お前を、許してやることも出来ない。
        じゃあな、デランデル。死にたければ、一人で死ね。
        (ショットガンを担ぎ直し、踵を返す)
        (後ろから言葉が掛かることはなく、襲い掛かってくることもなかった)
        (最初からそれを覚悟していたかのような笑みを浮かべて、あいつはただ静かにそこにいた) -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:14:08

      • (真夜中の病棟を出たところで、玄関の先に誰かが立っていることに気づく)
        (デランデルが真相を知った俺の始末のために呼んだ刺客だろうと、蛇腹剣を抜き、構える)

        (――その時、月に掛かっていた雲が風に流され、一瞬だけその男の顔が見えた)
        (そいつは)
        (息を荒げ)
        (あちこち探しまわったような傷だらけの様相で)
        (自分の得物を片手に、戦意に歯を食いしばりながら)

        (真っ直ぐ、俺の顔を見ていた) -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:17:24

      • スネイルゥッ……!! -- ザック 2013-10-04 (金) 23:18:44

      • (怒りの形相で、オルカの形見を片手に、その男ザック=ザリップス――キティはそこに立っていた)
        (依りにも依って、一番会いたくないタイミングに現れる辺り、本当にこいつは、自分の配役を分かっている

        (――と)
        (そこまで考えて)
        (俺は、デランデルの言葉の真意に気がついた)
        (その閃きを裏打ちするように、キティは口角泡を飛ばして、叫ぶ) -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:20:58

      • お前もッ……!!
        デランデルがジャック・ザ・リッパーだって、知っていたんだなッ……!!
        -- ザック 2013-10-04 (金) 23:22:37

      • (誰が誘導したかは、知らない。キャロルが俺達の会話を聞いて、キティにそれを歪めて横流ししたのかもしれない)
        (ともすればデランデル自身が、それを本人にリークした可能性すらある)
        (だが、そんなことは問題でもなんでもなく)

        (この状況は、余りにも)
        (余りにも恣意的で、まるでシナリオの上であるかのような、逃げ場のない状況だった)
        (この馬鹿は、デランデルという男のシナリオに、ケリをつけに来た)
        (オルカという恩人を殺された復讐者として、黒幕であるデランデルを討ち滅ぼす為に、ここに訪れたのだ)
        (それが、デランデルの思惑通りならば)
        (俺が、最初に此処に呼ばれたのは、この状況を作り出すなのだとしたら)

        (俺はここで、ザックがデランデルに接触しないようにするしかない
        (あいつが自分で死を選んでこそ、それが贖いとなるのだ。こいつを通し、あいつのシナリオを成就させてしまったら、オルカの死を茶番と認めることになる)

        (そうか)
        (ここが)
        (――この状況が、オルカが立たざるを得なかった場所か) -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:27:42

      • お前は、全てを知っていたんだな……ッ!!
        オレが……オレだけが、罪の中で、永遠に許されない苦しみの中で藻掻いていたのか!!
        スネイル……ッ!! てめえ……ッ!!
        -- ザック 2013-10-04 (金) 23:29:23

      • ああ。そうだ。
        ――キティ。俺は全てを知っていて、お前を欺いた。
        知らなかったのか。
        (サングラスを指で持ち上げ、それを胸に仕舞うと、キティの顔を見る)

        俺達は、ずっと、味方なんてもんじゃなかったってことを。

        (告げる。それが、配役だったとしても)
        (その配役を全うした上で――俺は、オルカを超えなければならない
        (オルカが受け入れた結末よりも、更に上の答えを――あの出題者(デランデル)に突きつけてやらなくてはならない)

        (そうだ)
        (俺は、こっちの役割(PC3)の方が――いつだって心地いいんだ) -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:35:33

      • 知ってたさ……

        (獣は吠え、得物を握り直した)

        暗闇の中にいた――あの頃からなァッ!! -- ザック 2013-10-04 (金) 23:38:25
      • (いいさ。それ(PC3)が俺の配役なら、その思惑の中で、お前の想像を超えてやる)
        (こんなクソみたいなシナリオ、お前(PC1)ごと、全て台無しにしてやるよ)

        キティイイイイィイイイイィイ――!!!! -- スネイル 2013-10-04 (金) 23:40:40

      • 【つづく】 -- 2013-10-04 (金) 23:41:02
  • 【猟奇事件解明 −弐】
    • (夜闇の中のビルとビルの狭間。端末を開き、文字を入力する)
      『この世からバカがいなくならないのは何でだと思う』
      (手早く入力し終えると、送信先である情報屋・クリスマス=キャロルから即座に返信が返ってくる) -- スネイル 2013-10-03 (木) 22:54:44
      • 『それはですね、スネイルさん。
         僕思うんですけどデランデルさんという明確な容疑者が居ることによって、便乗して女性を襲っても彼のせいに出来ると踏んで凶行に及ぶ人が、
         貴方の足元に散らばってる『その若者』のように一定数居るからではないですか。
         それと、今日日こんなに簡単に道に迷うのも同じくらいバカだと僕は思います。地図送りましょうか?』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 22:57:09
      • (サングラスを指で直し、煙の出る散弾銃を肩に担ぎなおし)
        『俺が迷っているだと。いや……確かに、俺は迷っているさ。
        暗闇の中にいた、あの頃からな』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 22:59:13
      • 『ごめんなさい。ものすっごい格好わるいです。
         今地図送りますので現在地を確認して下さい。相変わらずの方向音痴っぷりですね。
         それと、その散らばってる若者が襲ってた女性、そろそろフォロー入れておかないと公安が来たとき勘違いされますよ? その現場』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:01:38
      • (地図が送られてきたので相手の口座に入金をする。と同時に端末を胸に仕舞い、この路地裏で襲われていた女性へと目を移す)
        (服のあちこちを破れさせながらも、大きな怪我はないらしく、一種の恐慌状態に陥っていた)
        (何かを言おうと口を開くが、言葉にならないようで、震える手を胸の前で合わせて訴えかけてくる)
        ……深呼吸をしろ。そして、何も喋らなくていい。
        礼も必要ない。言ってしまえば、お前も同類になる。
        こちらの世界に迷い込んだだけの者が、殺人を肯定する必要なんてないんだ。
        表の世界で、汚れずに生きていけ。立てるか。 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:05:52
      • (ふらふらと立ち上がると、目尻に涙を浮かべながら何度も頭を下げ、もつれる足を動かして路地裏から去っていく)
        (途中何度も転びそうになりながら月明かりの届くところまで行くと、走りだし、やがてその背中は見えなくなっていった) -- 女性 2013-10-03 (木) 23:07:19
      • 『今度はちょっと格好いいですよ。スネイルさん。
         困ったものですね、便乗犯まで出る始末。それもこれもデランデルさんが姿を晦ましてるせいなんですけどね』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:09:41
      • 『ご自慢の情報網はどうした? 意中の女性の下着の色まで調べあげるのがシルク情報局の強みだったはずだが。
         今なら優良顧客がその情報、言い値で買うが』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:11:25
      • 『実は僕そのキャッチフレーズあんまり好きくないんですよ。上品とは言えなくて。
         ただ、非常に残念で、非常に忸怩たる思いなんですけど、実はデランデルさんに上手く巻かれてるんですよね。追いきれませんでした。
         完全に素人だと思って舐めて掛かっていた僕らが悪いんですけど、まさかダミーまで混ぜる高等テクニックで逃げられるとは思ってなかったんで。
         しかも情報撹乱までされると、電脳上での結びつきしかない僕らにはちょっと追いきれませんでした。
         それと、情報ってやっぱり伝達して初めて有機性を持つ物なので、恐らくデランデルさんは誰とも合わずに今の今までずっと隠れ続けてるんじゃないかと思います。
         それこそ、買い物もせずに隠れ続けていなければ情報局をここまで煙に巻くことは出来ないと断言していいです』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:16:03
      • (他人の情報を盗み見る立場で上品下品を語るとは、と思ったが、相手がこちらを何らかの方法で監視している可能性もあるので口には出さないでおいた)
        『型なしだな。怒ると饒舌になるお前こそ、相変わらずじゃないか。
         つまり、デランデルは誰とも合わず、誰にも接触しない形で何処かに潜んでると、そう言いたいのか』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:18:24
      • 『それは間違いないと断言してもいいでしょう。この情報はサービスしておきます』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:19:09
      • 『……ということは、デランデルの失踪は計画的な物であるのか。
         それが、デランデル本人の意思なのか、それ以外の他人の意思なのかはさておき。
         このクソのように人の多い街で誰の目にも触れずに生きていくとしたら、お前の言うようにどこかに潜む必要があるだろうし、
         だとしたらそれ相応の準備は必要になってくる。
         何処かで野垂れ死んでいるという可能性はないのか』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:21:57
      • 『ないと思います。生死不明で40,000Gというのは懸賞金としては破格ですから。
         今まで偽物の死体を整形した『モノ』が、四、五体冒険者ギルドに持ち込まれてるらしいですからね。
         それこそ、道端に何日も金塊が放置してあるようなものですし、道端に放置してある金塊の場所くらいなら僕らにでも分かります』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:24:09
      • 『その時はいち早く情報を回してくれ、すぐに回収しよう。
         じゃあ、可能性としては二つか。デランデルが自分の意思で隠れているか、誰かによって監禁されているか。
         前者に似ているが、誰かに匿われているという可能性もあるだろうな……オルカの時といい、あいつはイケメンを自称するだけあって女に取り入るのが上手かったからな』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:26:08
      • 『監禁とは穏やかではないですね。カタギの発想ではないです』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:27:27
      • 『カタギじゃないからだろう。
         一つ尋ねる。報酬は後で纏めて支払おう。
         何故、デランデルがジャック・ザ・リッパー事件の容疑者になった』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:28:33
      • 『それがですね、明確な原因があったわけじゃないんですよ。口コミというか、それこそ情報上でそうなっていったというか。
         少しプライベートな話まで踏み込んで、正直に言ってしまえば、数年前のジャック・ザ・リッパー事件の際、その中心に居たのはザックさん――キティさんであったじゃないですか。
         でも、後々になって公安が調べてみると、ザックさん一人で犯行に及ぶにはいくつかの針に糸を通すような綱渡りの確率の上を歩かないといけないことが分かったんです。
         もちろん不可能じゃないですよ? でも、そういう都市伝説って事実が逆転すると人々って受け入れやすいのか信じこんじゃうんですよね。
         ほのぼのなアニメ映画が実は主人公の女の子達は死んでて、大きな可愛いモンスターは死神だった、みたいな説とか、
         実は耳のないネコ型ロボットはダメダメだった少年がもう一度会いたいから自分の手で作ったロボットだった、みたいな説とかですかね』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:33:14
      • (手の中で、端末が少しだけ軋んだ)
        『……つまり、世論は、ジャック・ザ・リッパーとして自首をしたキティがジャック・ザ・リッパーではなかったと。
         そういう説を信じ始めたということか。……悪趣味で、下世話な話だ』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:35:27
      • 『ええ、そうですね。そういう説もあったというだけで、主流だった訳ではないんですけどね。
         他にもオルカさんがそうだったとか、スネイルさんがそうだったとか、色々流言飛語あったんですよ』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:36:36
      • 『……つまり、そのいくつかある説の中に、デランデル犯人説というものが存在した、というわけか。
         大衆の悪意が作り上げた不可視の刃だな、それは……』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:37:29
      • 『はい。そして、そこに今回のジャック・ザ・リッパーの再来、みたいな切り裂き事件が起こり始めた。
         もう既に何人か被害に遭っていて、死者も出ています。最初の事件と違うところは、犯行の手段がマチマチであるというところなんですけど、
         これは今のスネイルさんなら簡単に予想がつくと思いますが、今回は模倣犯が大量に出ているんです。
         何故かというと、ジャック・ザ・リッパーの再来事件が囁かれ始めたのと同時期に、闇医者・デランデルさんに高額の懸賞金が掛けられたからなんですよ。
         これによって、デランデルさんがジャック・ザ・リッパーであるという説に非常に強い信ぴょう性が出てきて、なおかつ便乗して日頃の鬱憤を晴らすための格好のスケープゴートが用意された感じになってしまったんですね』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:41:04
      • 『賞金を掛けたのは誰だ』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:42:49
      • 『それが、分からないんですよ。御存知の通り賞金稼ぎの原則は、賞金前貸し犯人後入れです。
         他人に行動をさせるのですから、担保として賞金はギルドに対して供託することで信頼関係が成り立つわけです。
         ですから、その誰かはポンと40,000Gという大金を担保に出来る財を持った人間ということになりますね』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:45:44
      • 『……その時点で賞金を掛けたのがキティという説が消えたわけだ。
         元々、世論ではキティは既に罰を受けた人間として同情的な見方もあった、というのがキャロルの見識だとすれば、
         あの子猫がその罪を手近な人間に擦り付けたという説もあったわけだが、あいつの懐という事実によってこの説は消えたな。
         オルカは既に死に、俺はあの事件の被害者でもあった。ほぼ消去法でデランデル犯人説が浮かんでいたところに、賞金が掛かれば……。
         一種のお祭り騒ぎになることは容易に想像できる』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:48:54
      • 『実際情報網の上では酷い感じでしたよ。デランデル知らんでる。みたいな定型まで出来ましたから。
         結局のところ、デランデルさんが表に出てこないので電脳上では早くも飽きられているんですけどね。現実に冒険者や賞金稼ぎが動き始めたら、事件は民衆の手から離れてしまうもんです。
         だから、今がチャンスといえばチャンスであると思います』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:52:25
      • 『チャンスか……。
         実を言えば……俺には、良く分からん。
         俺は、この情報を知って、どう行動すべきか……今になって分からなくなってきた』
        (サングラスを直しながら、文字を打つ) -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:54:40
      • 『……どう、って。
         助けて差し上げないんですか、お友達なんでしょう?』 -- キャロル 2013-10-03 (木) 23:55:44
      • 『友達、じゃあない。けして、俺たちはそんな人間らしい繋がりではなかったんだ。
         オルカの元にいた数年間だけが、俺たちにとって人間らしい一瞬であって、それより前とそれより先は、ただの獣と敗走者だ。
         あったはずの繋がりも温もりも失った、冷たく乾いた死体が俺たちだ。……帰る家を失った蝸牛は、蝸牛ではありえない。
         だから、俺は、デランデルに何かをしてやれるとは思えない』 -- スネイル 2013-10-03 (木) 23:58:40
      • 『冷たいですね。ザックさんの方を宛てにしたほうが良かったかもしれません。
         といっても、ザックさんもデランデルさんと同じで音通不信なんですけどね……。
         本当に、助けないんですか、スネイルさん』 -- キャロル 2013-10-04 (金) 00:00:02
      • (小さく嘆息し。文字を打つ)

        『正確に言おう……俺では、助けられない、という方が正しい。
         俺ではどうしようもない問題なんだ。
         俺が今お前に貰った情報から立てたこの仮説が正しいなら、俺はあいつを助けることは出来ない
         それをしてしまえば、俺は俺を許すことが出来なくなる。
         どれだけ譲歩しても、どれだけ努力をしても、俺はデランデルが抱える問題を解決してやることは不可能なんだ』 -- スネイル 2013-10-04 (金) 00:03:05
      • 『……それは、どういう意味なんです?』 -- キャロル 2013-10-04 (金) 00:03:50
      • 『俺たち三人は、オルカの死を以って道を三つに分けた。
         俺は病み、キティは贖い、デランデルは背負った。
         それだけ、オルカという女の存在は俺たちにとって大きな物だった。
         一人で背負いきれない罪を、三つに分けることによって、俺たちはジャック・ザ・リッパーという事件をけして忘れず、潰されないように抗ったんだ。
         でも、だからこそ。
         俺は、今回の事件は、解決すべきでないと思っただけだ。
         こんなもの……俺や、俺以外の人間の手に負えるような話じゃない。
         お前の情報を無駄にしないため、できる限りのことはしよう。
         ただ、俺はギリギリで引き返す。これ以上、オルカの幻影に惑わされるのはゴメンだ……』 -- スネイル 2013-10-04 (金) 00:07:16

      • 『もしかして……スネイルさん、デランデルさんが何処に居るか、わかったんですか?』 -- キャロル 2013-10-04 (金) 00:08:30
      • 分かってる』 -- スネイル 2013-10-04 (金) 00:09:02
      • 『この事件がどういう事件かも、ですか?』 -- キャロル 2013-10-04 (金) 00:09:47
      • 分かってる』 -- スネイル 2013-10-04 (金) 00:10:18
      • 『――もしかして。
         ジャック・ザ・リッパーの正体も、ですか……?』 -- キャロル 2013-10-04 (金) 00:11:03
      • 『――ああ
         残念なことに。それも……今、分かったよ』 -- スネイル 2013-10-04 (金) 00:12:04

      • 【つづく】 -- 2013-10-04 (金) 00:12:21
  • 【猟奇事件解明 −壱】 -- 2013-10-01 (火) 20:32:21
    • (その時間になると、彼女は窓を開ける。これは俺達の間にある数少ない決まり事であったし、俺がした数少ない約束だった)
      (俺が2Fの窓を見上げていると、そこから少女が顔を出し、眠たげな目を擦った)
      (十分に目を擦り終えると俺の姿を探してしばらくきょろきょろと視線を動かし、やがて目的の姿を見つけると微笑み、手を振った)
      (俺は無言で手を上げると、少し下がれというジェスチャーをして彼女を下がらせ、その窓から買ってきた贈り物を投げ入れる)
      (少し驚いたようで、彼女は小さく悲鳴を上げたが、すぐにその大きな袋を抱えて窓から顔を出してきた) -- スネイル 2013-10-01 (火) 20:41:04
      • ……入ってきたらいいんじゃないですか、スネイルさん。
        (不思議そうな顔で首を傾げ、犬耳の少女は尋ねた) -- ルゥ 2013-10-01 (火) 20:43:13
      • 無駄に体力を使わせてもなと思ってな。ここでいい。
        (ルゥという名前の少女の誘いを断り、サングラスを指で上げる)
        それに、仕事の後だ。血の匂いは病人の身体に障るだろう。
        特に、獣人は鼻腔が敏感らしいからな、尚更だ。 -- スネイル 2013-10-01 (火) 20:46:19
      • ……あの、だから、私は病人じゃないんですけど……。
        健康体なので、お気を使っていただかなくても大丈夫ですよ……?(困ったような顔で言う) -- ルゥ 2013-10-01 (火) 20:47:24
      • (恐らく、掛かり付けの主治医にでも、そう思えとでも言われたのだろう。病は気からとも言う)
        (或いは、俺自身に遠慮をして、そういう強がりを口にしているのかもしれない。その健気さに汚れた俺の心が浄化される心地だった)

        (少女に出会ったのはもう一年も前の話だ。『合理屋』という看板を掲げ、裏の世界に再び足を踏み入れてしばらくしたときのこと)
        (この屋敷の令嬢である彼女の護衛を依頼された。結局はその護衛自体が偽の任務であったために、報酬は払われずじまいだったのだが、その時の縁で今でもこうして時々逢っている)
        (ずっと屋敷の中で育ってきた彼女は身体が弱く、護衛の最中も良く「頑張れない」と零していたため、恐らく何らかの疾患を持っている不運な少女なのだと思う)
        (たまにこうして訪れては、無駄話に興じているだけの関係だった)
        (何が楽しいのかわからないが、俺や俺の仲間が巻き込まれる裏の汚い稼業の話を、彼女は冒険譚のように面白がってくれた)
        (それは今や俺のクソッタレな人生の中で凪のように穏やかな時間となっている)
        (見上げると銀色の細い髪が月明かりに揺れて美しいと思えた) -- スネイル 2013-10-01 (火) 20:54:24
      • お仕事の後、ということは……お疲れではないんでしょうか……。
        それとも、今日も頑張らずにいけましたか……? -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:08:33
      • 生憎、日々を生きるのに精一杯でな、本当なら頑張らずに生きていけるくらいが理想なのは分かっている。
        だが、何かと物騒な街だ、アンタには生きづらいかもしれないが、手を抜かない限り俺のような奴が食い逸れることはない。
        それは、感謝して然るべきなのかもしれない。お陰で手土産を持ってこれるくらいには懐も潤った。 -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:11:05
      • 余り危ないことをしないでくださいね。
        それと、いつもありがとうございます。気を使っていただかなくてもいいですのに。
        これは何でしょう、ぬいぐるみでしょうか。
        (袋を少しだけ抱きしめる) -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:12:36
      • 白いワンピースだ。それと、合わせて麦わら帽が入れてある。
        アンタに似合うと思ってな。外出許可が降りた時に、陽射しを遮るのに使えるだろう。
        サイズは、分からなかったから、もし合わなければそのまま捨ててくれていい。 -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:14:25
      • ええと……特に外出を制限とかされてないんですけど、はい、分かりました。
        その時には、ご一緒していただけると嬉しいです。スネイルさん。
        ああ、そういえば……お仕事ということは……例の、お友達と一緒にですか? -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:16:51
      • (少しだけ、サングラスの位置を治す)
        ニュアンスで気づいたが、恐らくあの薄汚い子猫のことを指しているのなら、アンタでも訂正をしないといけない。
        キティは商売敵でこそあれ、仲間や、ましてやお友達なんかでは断じてありえない。
        ……そんなに面白いか、俺とキティの話が。
        (一つ、彼女の悪癖を指摘するとすれば、それに尽きる)
        (彼女は人間関係を美化しすぎる。家の中で外出も許可されず篭っていれば外の世界への憧れが美化を招くことは容易に想像がつくので、取り立てて指摘するまでもないと思っていた)
        (だが、ことキティのことに関しては、きっちりと訂正をしておかなければならない。その線引が無くなれば困るのは俺であり、あいつであるのだから) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:22:30
      • そうですか……? 勝手ですけど、私はそういう昔からの知り合いがいないので、羨ましく思えるんですけどね。
        そう聞いてしまうと、ないものねだりというのが正しいのかもしれません。 -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:31:44
      • 昔馴染みというのは、いいことばかりじゃない。知らなくてもいい、知らないほうがいいことを知ることだってある。
        昔だって、必要があったから共にいただけで、そこには明確な繋がりなんてなかった。
        仮にあったとしても、その繋がりは、キティ自身が断ち切ってしまった物だ。
        一度振ってしまったサイコロは振り直すことが出来ない。取り返しのつかないことだってあるんだ。
        たまに顔をつき合わすだけの人間を、仲間や友達なんて綺麗な言葉で飾ること程馬鹿らしいことはない。 -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:35:54
      • 寂しいこと言わないでください。
        たまに顔をつき合わせるだけの私は、スネイルさんをお友達だと思っているんですけど? -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:38:34
      • ……今晩は機嫌がいいな。いや、良いのは体調の方か?
        (薄く笑いながらルゥの部屋を見上げた) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:39:29
      • 別に体調……むぅ、そういえば少しだけ、お腹の調子は悪いですが、良好です。ぽんぽんぺいんになんて負けませんよ。
        ……いつか、その方と分かり合える日が来るといいですね。私は、勝手に願ってます。 -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:41:33
      • (そのルゥのセリフには言葉を返さず、ただ苦笑だけを送っておいた)
        (そんな日が来ないことは、オルカが死んだあの日からずっと分かりきっていた)
        (俺達は、なるべくしてこうなり、行くべくしてここに辿り着いたのだ)
        (それが、オルカという自分勝手な俺達の育ての親の『願い』だったから)
        (ルゥが、何も言わない俺の様子を察してか、言葉を掛けてくる) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:43:35
      • そういえば昔から知っているといえば、うちの使用人たちなんですけど、
        事あるごとにルゥちゃかわいいルゥちゃかわいいってからかってくるんですよ。この間なんか――。 -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:44:56
      • (上機嫌に話すルゥの言葉を、無粋な着信音が遮った)
        ……すまない、俺の着信だ。
        (電源を切っておくべきだったと毒づきながら、懐から端末を取り出して開く)
        (そこには、仕事仲間であるハルヤからの電脳通信が送られてきていた。無視をする訳にはいかないので展開する)
        (ゴシップ記事の切り抜きであるのか、下品な色彩の惹句が俺の目に飛び込んできた)
        (その内容は、余りにも愉快なものではなかったため、ルゥの視線を逃れるように少しだけ角度を変えた)

        (そこには、『ジャック・ザ・リッパー再来?』という、余りにも直接に俺の殺意を刺激する文句が並んでいた)

        (ハルヤはどうやらキャロル経由でこの情報を得てきたらしく、急いで俺に向かって送ってきたのか他の情報は載っていなかった)
        (折り返しに通信の返信を返そうとしたところで、今度はキャロルから通信が入る) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:54:20
      • 『届きました?』 -- キャロル 2013-10-01 (火) 21:55:03
      • (ああ、と短く返信を打って送ると、すぐに返信が返ってくる) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:55:36
      • 『すいません、お取り込み中。情報屋としてどうしても耳に入れておくべきかなと思ったので緊急で送りました。
         ハルヤさんからの依頼だったんですけど、本人の了承を得て情報をそちらの端末に転送させてもらいたいと思うんですけど。
         持ち合わせありますか、スネイルさん。1000です』 -- キャロル 2013-10-01 (火) 21:57:09
      • (交渉も面倒なので、端末操作でシルク情報局に直接1200Gを振り込む)
        (どこかの便利屋と違って金の巡りにそれほど苦労をしてはいない)
        (入金が確認されたのか、キャロルから追加で情報が送られてきた)
        (俺は、その内容を読み進めていき、ある人物の名前が出てきたところで、端末の操作が止まった) -- スネイル 2013-10-01 (火) 21:58:57
      • あの……スネイルさん、大丈夫ですか……?
        (窓から身を乗り出し、心配そうに声をかけてくる) -- ルゥ 2013-10-01 (火) 21:59:47
      • ………悪い。ルゥ。
        日を改める。この埋め合わせは必ず。
        (言うが早いか、コートを翻して夜の闇に駆け出す)

        (キャロルから送られてきた情報は、確かにハルヤやキャロルならば俺に送るべきと判断しておかしくない物だった)
        (ここ数日、かつてこの街で出没した殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーによく似た犯行が行われているという)
        (ただ、昔と違い、今回の犯行はある特定の人物が起こしているのではないかと疑われているらしい)
        (その容疑者は、現在姿を晦ませていて、その首には40,000Gという高額の賞金が掛けられているという内容だった) -- スネイル 2013-10-01 (火) 22:03:57

      • 見ろ。
        いいことばかりじゃないんだ。

        (俺は闇の中を疾駆しながら、端末に視線を落とした)

        (『――闇医者・デランデル』
        (『ジャック・ザ・リッパー事件の犯人、その身柄の引き渡しに、40,000Gの賞金』)
        (『目撃談についても要相談。捕縛は――生死不問とする』) -- スネイル 2013-10-01 (火) 22:07:18

      • 【つづく】 -- 2013-10-01 (火) 22:08:43
  • 【猟奇事件解明 −零】 -- 2013-09-30 (月) 22:57:57
    • この家業を選んだ時点で自分が長生き出来るとは思っていなかった。
      冒険者の半数は二ヶ月目で命を落とすという今や普遍的に皆が知る事実を実際に目の当たりにしたからだ。
      腕っ節を使って金を稼ぎ生きるというのは、裏を返せばそういう野垂れ死んだ屍の上を歩くような物だという覚悟は最初からあった。
      いつかは自分の傍らで志半ばに死んでいった誰かと同じように、自分も寿命を全うすることなく人生の幕を下ろすことは覚悟していた。
      何でも屋なんて名前を変えて、人より少し賢しいところを誰かに見せたところで、一度踏み入れた暴の世界からは逃れようもなく。
      生き物を殺した数だけの罪を背負いながら、人の振りをして過ごすのだ。
      オルカ・セルフランセという人の殻を被った空虚は、そうやって日々を過ごしていた。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:05:37
      • 横合いから殴られたのは二十歳も半ばを超えた時だ。
        何気なく受けた健康診断で、自分が長く生きられないことを知った。
        その知らせを聞いてあたしは、ああ、そういうこともあるよな、と妙に納得した記憶がある。
        ここに於いても、自分はまだ寿命で死ねるという贅沢を捨てたつもりで、剣を持ったまま死ねるという小贅沢を懐に抱えていた事に気づき、忸怩たる思いだった。
        生は人に平等ではないが、死は平等に訪れる。まるで誰かが振ったダイスが1のゾロ目を出すような偶然で以って、オルカという人間にはいち早い死の宣告が齎された。
        残りの寿命が分かるような優秀な医者がこの街に居れば良かったのだが、生憎とこの街では優秀や善良は常に枯渇気味だ。
        なんとなくぼんやりと、その内眠ったまま起きないこともあるだろう、なんていう曖昧な表現で死の切符は手渡された。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:12:47
      • 取り敢えずそれを棚に上げたところで、自分の人生について考えてみた。
        人間、いくつになったところで悩みの種という物は尽きることがない。もしかしたら人は死ぬその直前まで惑い続けるのではないかと、そう思っている。
        悩んでいる間にもカウントダウンは始まっていると思うと少しは焦りそうな物だが、最初から生きていること自体が幸運の連続のようなものだったから、腰を据えて悩む事が出来た。
        自分の寿命が残り1年、あるいは2年だったとしたら、自分はどう生き、何を成すべきなのか。
        汚れ仕事や鉄火場に足や顔を突っ込んでいたせいで、一財は築けていた。自分が後何年生きるかは知らなかったが、残りの猶予期間を遊興や怠惰と共に暮らしていくことも出来るし、それも選択肢の一つであるかなとは思っていた。
        ただ、それすらもなんとなく選ぶのが憚られ、何も決めないまま、そして命は潰えないまま少しだけ年月が過ぎた。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:19:55
      • キティとスネイルを拾ったのはその頃だった。
        何のロマンチックなめぐり合わせもなく、なんとなく受けた市の依頼である「青少年の更生」という依頼の保護対象がこの二人だっただけだ。
        まだ若いその子猫たちは、そんな若い内から絶望し、世界を敵に回し、深く刺さることのない牙を一生懸命研いで生きていた。
        境遇の不幸もあったろう。単純な不運もあったろう。何が悪かったかといえば、巡りが悪かったとしか言い様がない。
        ただ、その巡りの悪さを嘆くことなく、悲嘆にくれるでもなく、その二匹の子猫は懸命にその数奇な運命に抗おうとしていた。
        関係なくぶっ飛ばした。
        正直に言おう。気持ちよかった。スカッとした。
        若者に説教するのが楽しくなったら終わりだと思っていたにも関わらず、気づけば裏の世界の札付きのワル二人を地面に寝かせたまま四時間半説教食らわせてやった。
        飽きたらず事務所まで引っ張っていき、更に四時間半説教を食らわせたところでスネイルが完全に気絶し、ザックが嘔吐して昏倒したので四部編成だった説教は二部で終了した。
        自らが傷つけた相手を自らが治療してやり、ついでに暴れられては困るので手錠を掛けたところで、市職員から電話が掛かってきた。
        市は二人の引き渡しを依頼してきたが、何故かその時は既に愛着が湧いており、二人を引き取る方向で話は進んでいった。
        デスクに足を載せ、その二人を眺め、起きた時にどんな言葉を掛けてやるかを考えている間……あたしは誰にも見せたことのないような笑顔をしていることに気づき、少しだけ呆れたのを覚えている。
        こんな家族ごっこをやりたかったのかと、だったら最初から裏の稼業になんか手を出さなければよかったのにと、自分の身の上が面白おかしくて、一人で笑っていたように思う。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:34:11
      • 三人での生活は、まあ賑やかな物だった。血を見なかった日はないし、二人が逃げ出した回数も両手の指どころか髪の毛の本数ですら足りない程だった。
        まあ【情報屋】の事も【平中組織連絡網】の事も知らない小僧二人がこの街の何処に逃げたところで、一発で居場所など分かるのだが。
        その内に二人が逃亡を諦めた辺りでネタバレしたときの絶望的な表情だけで、ご飯が三杯は食べられた。釈迦の手の上で暴れてた孫悟空ってあんな感じだったんだろうな。
        二人については多少手は焼いたが思考は単純な所があったのでコントロールもある程度容易だった。
        その上、この街の裏に蔓延っていた少年ギャング二人を手なづけた事である一定の評価が得られたようで、青少年更生関係の仕事が多々舞い込むことになる。
        自分としてはどんな相手だろうが間違ったことをすれば怒るし、正しいことをしたら褒めるという、本当に当たり前の事しかしていなかったにもかかわらず、人はそれを大いに有難がった。
        まあ、人を叩く時は叩かれた方も痛いが叩く方も痛いという当たり前の条理を放棄して、他人にそれを委託してくる者達が、自分をどういう意図で褒めているかは客観的に考えて十分に理解出来た。
        誰だって、痛いことはしたくないし、されたくないのは当然のことだもんな。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:43:33
      • デランデルという少年と逢ったのは、そういう経緯と背景からだった。
        最初に逢ったのは、ザックやスネイルと違って暗い路地裏ではなく、明るい明るい病棟の中だった。
        真っ白なはずの壁一面に描かれた、沢山の絵の中でデランデルという名前の少年は、ただ存在していた。
        くすんだ金髪は地面に引きずるほど長く、その隙間から爛々と光る目が壁の絵を、ただじっと眺めている。
        入り口には「フェルトハイム症候癖・A型罹患者」という物々しい病名が掲げられていた。
        なんでも、フェルトハイム・エドルワードという高名な医者が発見した精神疾患とそれに付随した症状の複合罹患者が彼であるらしかった。
        医者が専門用語で連々と語った事を要約すると、何でも全ての価値観が物語の配役を全うするという方向性で凝り固まる症状の事を言うらしい。
        そうあるべきだと思えば、自分の生命や他人の生命すらもその天秤に掛ける偏執とも言っていい精神傾向を持ち合わせている病例であり、その中でもA型と呼ばれる重篤な疾患を持ち合わせた患者であるらしかった。
        国からの補助金を打ち切られ、廃院に追い込まれた医院の医院長は申し訳なさそうにその病状について語ってくれた。
        今回の依頼は、簡単に言えば厄介払いだった。他のこの病院の患者は、それぞれ行く先が決まっていたのだが、余りに重篤な症状を抱えていたデランデルという少年については、
        近隣の病院が受け入れを拒否したため、民間のツテとしてあたしを頼ってきたとのことだった。
        それはある意味では死の宣告であり、そんな重篤な患者を抱えきれる訳がないあたしにお鉢が回ってきたのは、
        「民間でも受け入れが拒否された」という記録を以って、かの少年を廃棄処分とするためであったことは、いくらなんでも理解できた。
        あたしは裏を掻くのが好きだった。
        デランデルを引き取ると告げた時の、医者の顔ったらなかった。 -- オルカ 2013-09-30 (月) 23:56:37
      • あたしにしてみればデランデルは普通の少年だった。会話も成立するし、伸ばし放題だった髪を短く切ってやると、ベビーフェイス気味の普通の顔が表れた。
        視点が主観ではなく俯瞰であるという点に注意さえすれば、扱いやすい部類であったといえる。
        それどころか、この少年に対し、自分は親近感すら覚えていた。
        かつて、ザックやスネイルが居なかった頃の自分の空虚さと同じようなものを、デランデルという少年は持っているように見えた。
        主観から離れ、客観でしか物が見ることが出来ないということは、言い換えれば己の中は空虚であるということと同義だ。
        だとしたら、この少年の本質について理解してやれるのは自分より他に居ないのかもしれないと、そう思っていた。 -- オルカ 2013-10-01 (火) 00:03:22
      • 何でもない日々が始まった。
        歪な四人が、互いの弱さなど他人に見せないまま、家族ごっこをするような滑稽な姿に見えただろう。
        救ってやったはずの少年達に、いつの間にか救われている自分に気づくのも、そう時間は掛からなかった。
        自分は死を恐れていなかったんじゃなく、死を恐れるほど生を正面から捉えていなかったことにも気づけた。
        誰もが黄金の栄光を掴む為にその生命を対価として支払い、払い戻された死だけがいつも側にあったから、生きるということと向き合うことをしていなかったのだろう。
        死にたくないと思った。同時に、悔いのないように生きようと思った。
        明日死んでしまったとしても に恥じる のないような素 らしい人生であると胸を張って言え 。
        肩を寄せあ  生きる四人の生活は、それだけ自分の今までの  方や価値  を変えてしまう  の輝きがあ  。
        あたしは   う   永遠    続けば  と。 -- オルカ 2013-10-01 (火) 00:09:51


      • ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。


        -- 2013-10-01 (火) 00:11:24
      • そうするしかなかった。
        これは、最善ではないけれど、最良の手だった。
        あたしはいつの間にか、何一つ失う事が出来ない、弱い女になっていた。
        未練がましく全てを抱えていようと思ったから、全ての形を歪め、この結末へと立つしかなかったのだ。

        キティが、刀を握りしめる。
        その顔には、あたしへの確かな殺意があった。
        あたしは笑う。笑って応える。
        この事件の黒幕は、きっと笑っているべきだと思ったから。 -- オルカ 2013-10-01 (火) 00:15:01
      • キティが吠え、駆け出す。獣の疾駆のように姿勢を低くして。
        確実にあたしを殺すために、気持ちを萎えさせない為に、威嚇のように大きく吠えて。
        地面を引きずる刃から、火花が飛び散る。それはキティの最後の未練のように、その場に子猫を引き止めようとする。

        キティ。
        多分きっと、人より優しいアンタだから。
        ずっと心の傷として、抱えていくことになるんだろうね。
        ごめんな。
        ダメな親代わりで。
        必要以上のものをお前に背負わせてしまう、本当にダメな女で。 -- オルカ 2013-10-01 (火) 00:21:59
      • 長ドスを振り上げ、躊躇いなく振り下ろす。
        それは掛け値なしの本気の一撃であったし、そうでなければいけない覚悟の一撃だった。
        刃同士が噛合い、喰い合う音がして。
        自分の手に返ってくる感触が、ふと軽くなった。
        刀によって両断された自分の長ドスを視界に捉えて。
        こんな時なのに、自分の自慢の義息子に、良くやったなと、声を掛けてやりたくなって。

        そこで、あたしの意識は途絶えた。
        キティ。
        スネイル。
        デランデル。
        ……ごめんな。
        今ここで、この罪を、『誰か一人』に背負わせてしまえば。
        きっと、そこからは何も始まらない。あたしが生まれてからアンタらに出会うまでの空虚さを、そのまま齎してしまう。
        だからあたしは、平等に傷を与えることにしたんだ。
        良ければ褒め、悪ければ叱るように、ただ、あるがまま。

        なあ、キティ、いつかあたしを殺したことを乗り越えて、強い大人になりなさい。アンタの実直さは、他の二人を殺しかねないから、本当の意味で、強くね。
        スネイル、あたしがアンタを傷つけたこと、許せなんて言わない。ただ、そうしなければならなかった理由を、誰よりも賢いアンタには分かって欲しい。
        そしてデランデル。死んだ人間は生き返らない。それはとてもとても尊いルールなんだ。世界を俯瞰でしか見れないアンタに、今すぐ理解しろなんて言わない。
        ただ、あたしの死を通じて、知って欲しいんだ。本物の不条理は、導き手が解決するものではなくて……人の意思が解決するものなんだということを。 -- オルカ 2013-10-01 (火) 00:31:48


      • ―。
        ――。
        ―――。
        そうして、ジャックザリッパーは数年という長い眠りに付くことになる。
        人々の記憶の中から淡く薄れていき、オルカという名前の何でも屋がいたことすら、少しずつ忘れ。
        少年たちは大人になり、オルカの言葉と生き方の意味を知った。 -- 2013-10-01 (火) 00:34:28
      • ――これは、彼女に捧げる物語だ。
        何一つ解決せず、ただ眠りについたその事件に、追悼を捧げるための物語である。
        そこには救いも希望もない。
        ただ陰鬱で、陰惨で、嗅ぎ慣れた、現実の饐えた臭いのする、色のない物語である。 -- 2013-10-01 (火) 00:36:46

      • 【つづく】 -- 2013-10-01 (火) 00:38:32

Last-modified: 2013-10-10 Thu 00:49:39 JST (3843d)