名簿/510368

  • (こうして、私の聖杯の舞台の幕は閉じられた)
     
    (魔法の解かれた廃教会を後にして)
    (私は一人、なるべく貴方の居る、天に近い場所へと)
    (あの時貴方と出会った星空の様な、満天な輝きの夜空の下)
    (星星の輝きを反射する、湖が広がる崖の上に立っていた)
     
    (ここからなら、きっと貴方の居る場所に近いかしら)
    (ここからなら、飛び降りた時に私も夜空の星になれるかしら)
    (ここからなら、私は魚となれるかしら)
     
    (貴方の魔法が解けて)
    (テメノス孤児院の姿は、あの時の戦いでの廃墟になったけれど――……)
    (貴方の魔法が解けても)
    (私のドレスが変わらない代わりに、靴を脱いで)
    (貴方から貰った『will』の指輪を最後に見つめて、微笑むの)
     
    ……貴方のお姉さんの瞳、本当に『will』の様に綺麗な輝きだったわ
    (きっと、姉の瞳の様な宝石と)
    (貴方の瞳に似た、サファイアの様な天空と、湖の深い輝きの中ならば)
    (すぐに見つけて貰えるかもしれないから)
     
    (怖くない)
    (私は、一人じゃない)
    (貴方達が、きっと傍に居てくれるから――……)
    (貴方が迎えに来てくれるって、信じているから――……)
     
     
     
     
    (静かに静かに、私は崖の上から湖へと身を投げる)
    (両手を広げて、貴方からの迎えを待つように)
    (迎えに来てくれたら、いつもの様に『お帰りなさい』といって、抱きつくように)
     
    (音も無く、時は流れる)
    (呼吸が出来なくて苦しい――……)
    (冷たい水に、身を打ち沈んで行く――……)
    (苦しくて、足掻いてしまいそうになるけれど……大丈夫)
     
    (この先には、貴方が待っているから――……) -- メルセフォーネ 2014-04-20 (日) 23:31:16
    • (音の無い夜の下で、ごぽごぽと自分の体の沈みゆく音だけが静かに奏でられる)
      (それが少女の耳にする、最後の世界に響き渡る音楽)
       
       
       
       
      (暗く冷たい湖の中を、どれだけ沈んだ頃だろうか)
      (あの時の、彼の魔法によく似た) (一条の光のみが差し込む湖の底で)
      (光の梯子から、彼のおかあさんが降りて来て、沈みゆく私の手を取って)
      (天へと連れて行ってくれる)
      (泳ぐように、この星星の海を渡って)
      (貴方の待つ、綺麗な空の上で再開したら)
      (両手を広げて、貴方の胸に飛び込むの)
       
      『おかえりなさい』
      (を言ってくれる貴方へ)
       
      『ただいま』
      (を言って) -- メルセフォーネ 2014-04-22 (火) 23:31:53
      •  
         
         
        これは、空の上の母を想い、空を見上げていた青年と
        空を見上げ、星を詠みながら生きてきた少女の物語
        】 -- メルセフォーネ 2014-04-22 (火) 23:36:37
  • (「どうしても戦いたい相手が居る」)

    (テメノス孤児院跡全体へ防護魔方陣を施して、外側からの干渉を不可能にして彼は戦いへ赴いた)
    (敗北を喫したあと、時守のキャスターが“聖杯”へ抱く“否定”を否定せしめんと決意を固めた)
    (それは彼なりの“聖杯戦争”へのけじめである。メルセフォーネを守り、傍に居ることとは別に、彼自身が“聖杯”へ望む戦いであった)
    (アサシン“ジャック・ヴィールズ”が自分へ戦いを挑んだことを真似て)

    (光芒の海の中で、彼は、時守のキャスターが表情を歪めるのを見た)
    (無表情でもなく、嘲笑でもない。上っ面の感情が打ち崩れた、心底の、絶望を表現した顔だった)
    (彼の魔術により齎されたものではない。次元の亀裂から“何か”を見たのだ。何を見たのかはわからない)
    (“時を止める魔法”との決着は終ぞつかない。けれど、戦場の綾が自分を勝利に導いた)

    (留守番を頼んだメルセフォーネの待つ、テメノス孤児院跡へ歩く。魔方陣による結界が綻びを見せている)
    (扉を開く。現界してから、幾度となく握ってきたノブが、異様に固く感じた。息を吸い、力を籠めて扉を開けた)
    ……ただいま、メルセフォーネ。
    (彼の身体には綻びが生じている。指先から魔力の滓が流れて、光となり空気へ溶けている)
    -- 打雲紙のキャスター 2014-04-19 (土) 23:20:10
    • (温厚で平和的な彼が、そういうのは本当に珍しい事で)
      (何があったのかと思ったけれど――……きっと、彼が戦いたいという相手なのだから)
      (そこには、何かしらの『理由』があるのだと思った)
      (聖杯の運命の元で、私達は巡る――……けれど)
      (サーヴァントでありながら、彼は戦いを避けて『ありふれた日常の幸せ、尊さ』を教えてくれる人だったから)&br; 気を付けて……無理をしないで。お願いだから、無事に帰ってきて……
      (祈る様に、彼の無事を案ずるように向かえる事が精一杯で)
      (彼に守られた結界の中で、彼の背中を見送った)
      (――……あの時の、アサシン『ジャック・ヴィールズ』の影と重なるのは何故だろう)
      (ほんの少しだけ、不穏を覚えながらも、結界の中でただひたすら 彼の無事を祈る)
       
       
      (彼の行方が気になって、誰と戦っているのかが気になって――……)
      (オブジディアンの黒い器に水を張り、水鏡を作って彼の戦いの相手とその流れを映して見ていた)
      (そこに浮かんだのは、以前自分を襲った黒いフードのキャスターで)
      (時を止める魔術を使うキャスターで在るという事を知ると、戦いの行方と彼の安否に眼を離せなかったけれど)
      (最後に――……彼は光の魔法を以て、時の魔女に打ち勝った)
       
      (キャスターが勝った……けれど――……)
      (戦いから眼が離せなくて、彼が勝った事に気付いた時には……)
      (彼との魔力や繋がりを表す様に、張られた結界は綻びはじめている)
      (彼の帰ってくる気配も感じながら、彼のいる方向へと駆けていく)
       
      キャスター……!!
      (おかえりなさいの言葉も忘れて、堪らなくなって泣きながら私は、彼に抱きついた)
      (もう、彼の体からも綻びが生じている……魔力が流れて光となっている)
      (あの時の、ジャックさんの様に)
       
      (お別れの時は近い――……)
      (言いたい事、今までの感謝やお礼、一緒に入れて幸せだった事)
      (沢山の伝えたい事がある筈なのに……何を言っていいか分からない)
      (けれど……)&br; 無事に、帰ってきてくれて……良かった……
      貴方の最後のお別れを言う時間があって……本当に良かった――……
      おかえりなさい、キャスター……
       
      (涙を流しながら、いつものように 彼に『おかりなさい』を言う)
      (それは、彼が日常を大切にしていた人だから)
      (さようならの代わりにできる、最後の挨拶)
       
      (『行かないで欲しい』『消えないで欲しい』)
      (本当は、最もそれを言いたいけれど――……)
      (それは、叶いそうになくて――……) -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 23:41:44
      • (ほろほろと)
        (ほろほろと)
        (彼の魔力が解れて崩壊へと向かっている)
        (そっと頭を撫でられて微笑む彼を見ながら、涙を流す)
         
        (お帰りの挨拶に、満ち足りている表情の彼との別れを惜しむように)
        (或いは、現世に少しでも繋ぎとめておくかの様に、固く握りしめる)
        (初めて出会った時と同じ様に、手を繋ぐけれど)
        (……あの時と違うのは、彼との終焉――……別れの時だという事)
        (徐々に空気を掴むかのように、彼の手の感触も薄れていく――……)
         
        私、貴方と一緒に入れて本当に幸せだった
        ずっとずっと、私は誰かの下で従属しながら生きて来たけれど
        貴方と出会って、初めて生きる事の楽しさを、ありふれた日常の幸せを知る事が出来たの
         
        私はずっと、預言者として誰かに求められていて
        人としては要らない子だった
        ……欠陥品だった
        だけど、貴方と過ごす中で、初めてそういう事をしなくても良い
        ただ『私が居るだけでいい』日々を重ねられて……
        幸せだった
        ……本当に、貴方と出会えて、貴方が呼びかけに答えてくれて……良かった
         
        (もう、残された時間は僅かだというのに)
        (言いたい事も沢山ある筈だというのに)
        (何から話したらいいのか分からなくて、温もりを求める様に彼の手を握りながら)
        (彼に伝えていなかった自分の想いを伝える) (彼と重ねた時間と想い出は、語らなくてもこの手の暖かさに全てが籠っているから)
        (本当に彼と共に過ごす時間は幸せだった)
         
        (意識も朦朧とし、既に現世にとどまるのも辛うじての状態である、彼の言葉を聞こうとする)
        (しかし、言葉を紡ぐのは厳しいのか……『……最後、に……。』の一言だけで、それ以上言葉が綴られる事は無かった)
        (けれど――……代わりに解けた魔力がテメノス孤児院の天蓋が、プラネタリウムの様に輝いている)
        (それは、彼の魂の輝きに等しい、美しい星空の輝き――……)
         
        (最後の彼の宝具達)
        (始めに、ブラッド・トランスレーションで)
        (輝きが4人の影を形作っていく――……彼の血。彼の運命が刻まれたものであると同時に)
        (きょうだい達と流れている同じ血、DNAが……彼らを再現するかのように、幻影に息吹が吹き込まれる)
        (その順番は、兄弟達の順番なのだろう――……)
        (彼の全ての上の兄弟達の幻想が出来あがれば、皆から『ありがとう』の祝福を受けた)
        (初めて出会う、彼のきょうだい達)
        (静かに、身守るだけだけれど――……『天使の子達』の優しい守護が、そこには満ち溢れていた)
         
        …………っ!(気が付けば、彼に握られた手の感覚が、殆ど無いに等しくなってしまっている)
        (何かを呟いているけれど……唇の形も微弱に動くばかりで、何を語ろうとしているのか分からない)
         
        (続いて、フォールディング、アンフルフィルド・ウィッシュの宝具が解放されて)
        (純潔な白のハンカチ程の紙が、折られていく)
        (それは、彼の祈りを込めた折り紙)
         
        (白紙に文字が書かれるのを見れば、表にはきっと母へ宛てた手紙が)
        (裏には、きっと魔術関連の研究書類の書かれたものが紙飛行機になり、折られて飛んでゆく)
        (それは正に、彼の人生を全て詰め込んだかの様な紙飛行機)
         
        (更に折られてゆく紙は、幾度も幾度も折られていき――……だんだん、だんだん天高く伸びていく)
        (それはまるで、天に掛けられる梯子の様でも、天界と人間界を繋げるビフレストの様)
         
        (限界に挑戦している彼に『頑張って』っと心の中で応援しながら)
        (気が付けば、彼の魔術で修復されていたテメノス孤児院は)
        (アサシンとの戦いの時の、戦争の痕跡の廃教会の姿へと戻っていた)
        (……もう、彼の魔力は無い)
        (けれど、紙だけは一条の光の様に天に昇ってゆく――……)
         
         
         
         
        (彼のかけた魔法、彼を繋いでいた聖杯の絆も終焉を迎えている)
        (四人の幻影も、無言で静かに佇んでいる)
        (……もしかしたら、彼らの姿が辛うじて残っているだけでも精一杯なのかもしれないと思った)
        (彼の肉体の崩壊も止まらず、ほろほろ ほろほろと崩れていき、膝から先は消えてしまった)
        (消えかかって、空気にも等しくなってしまった手を、懸命に握る)
        (最後の彼を見守る様に)
         
         
         
         
        (輝きが、降りて来た)
        ("折られる紙"の祈りが伝わるかのように、ふわりと誰かが降りて来た)
        (天使の様な羽は無かったけれど、頭に乗せられた輝きと、ここに居る5人の天使達と同じ髪色から)
        ("彼ら"のお母さんである事が分かった)
         
        (泣きそうな顔で、贖罪の言葉を述べる彼女は)
        (天の梯子とステンドグラスの燐光と相まって、天使の様に光が輝いて、神聖な美しさを佇ませていた)
        (祈りは――……彼の願いは、天に届いた)
        (これは、ずっとずっと彼の望み求めていた『母との再会』)
         
        ("彼らのおかあさん"は、ずっと空の上で、子供達の事を想っていた)
        (彼が、母を想って空を眺めるように)
        (彼の母も、同じように空の下から下界を覗いて、彼らの運命を見ていた)
        (叶わなかった願いは、果たされた)
        (子供を想わない親なんていない)
         
        (結界の中の彼は、普段のサファイアの瞳から、エメラルドの瞳に変化していた)
        (彼と母の繋がりを、髪の色だけでなく瞳の色にも現れたかのように)
        (微かに現れる天使の輪は、左の中指に指輪の様に纏っていた)
        (それはまるで、守護を示す左中指の指輪に)
        (今まで、天の上から見守っていた母からの守護と、子を想う愛情を示すかのように)
         
        (母親に会う願いともう一つ、母を想っていて『幸せ』であると伝える願いも)
        (きっと、彼らが幸せだった事が伝わったのだろう……いや、出会って伝えなくても)
        (遥か彼方の空の上から、ずっとずっと、彼らを見ていて幸せである事は伝わっていたかもしれないけれど)
        (最後に叶えられた、優しい親子のひとときに 私も涙が溢れた)
         
        (キャスターの願いが叶って良かった)
        (きょうだい達、親子の願いが叶って良かった)
         
        (私にも、感謝の言葉を向けられれば、首を小さく横に振って答える)
         
        彼に助けられて、彼と一緒に居られて幸せだったのは 私の方です
        ずっとずっと欲しかった繋がりを、彼と出会って得る事が出来て
        彼と一緒に過ごして『幸せ』を知る事が出来たから……
         
        (『本当は、一番、一人が嫌いな子だから』)
        (嗚呼、そうか――……彼も一人が嫌いなのか……)
        (語り掛けられ、キャスターの傍に降りるのを見て、幸せな気持ちに満たされながら――……)
         br; (問われる)
        (最後の決断を)
         
        ありがとうございます、気持ちはとっても嬉しいですが――……
        私は、いつまで生きるのか、自分で自分の寿命が分かりません
        人では無くて、魔術で改造されているから
        今も、人よりも遥かに長い時間を生きていますし――……何より
         
        ……ずっとずっと、彼は『母と再会する事』を願っていたから
        このまま、現世に留めてしまうよりも、皆さんと一緒に居られた方が、彼にとっても幸せだと思うから……
        (彼と生きるのは、とてもとても楽しくて、幸せだった)
        (一緒に居られたら――……そう、想うけれど)
        (自分の寿命が分からない事もあったし、もう私が生きている意味も、必要性も無いのだから)
        (私の我儘で、彼を留めてしまうよりは――……)
        (願わくば――……)
         
         
        でも、もし……
        私の願いを、一つだけ聞いて頂けるのであれば
        我儘を、聞いて頂けるのであれば――……
         
        私も、皆さんの傍に、一緒に居させて欲しい……です
        (もう、この世に私の居場所は無いから)
        (それよりも、天国で彼らの傍に居たいと願ったから)
        (願わくば――……私が死ぬ時は、迷わないようにキャスターに迎えに来て欲しいなと想いながら)
        (まっすぐに見つめて、答えると――……最後に)
         
         
        (もう、既に消えかけてしまっている彼の傍に寄り添うと、キャスターに微笑んで――……)
        キャスター……貴方の事が、本当に好きだった
         
        (誰かを好きな気持ちも、知らなかったけれど)
        (それを教えてくれたのも、貴方)
        (初めて『人の子』のままで、優しく接してくれたのも――……貴方だから)
        (始めは、貴方と一緒に過ごす日常そのものが、幸せだと思っていた)
        (貴方と一緒に居られるだけで、幸せで満たされていて)
        (けれど……この気持ちは きっと)
        (……最後になってしまったけれど――……きっと)
         
        初めて出会った時から、好きだったけれど……
        始めは、英霊として優しい貴方が、頼れる貴方が好きだったけれど……
        (日々を重ねて行く程に 想い出が、重なって行く程に)
        (気がつかないうちに、それは)
        (淡い、淡い少女の初恋へと変化して)
         
        (『愛してる』の気持ちを、そっと唇に重ねて淡い口付けをする)
        (もう、殆ど空気に近しくて、彼の唇の感触も無かったけれど)
        (暖かさだけは確かに残っていて――……)
         
         
         
        ありがとう……一緒に居てくれて、本当にありがとう
         
        さようなら……
         
         
         
         
         
        (最後に、手を振って皆を見送る)
        (掛かっていた全ての魔法が消え去って、テメノス孤児院は朽ちた廃教会へと姿を戻した)
        (静寂で『天使と天使の子達』の清らかな空気に満ちている中に)
        (彼の温もりを、私に宿して)
        (私は一人残ったまま――……静かに佇んでいた)
         
        (私は一人だけれど、孤独ではないから)
        (彼の形見の『will』の指輪を見つめながら、囁いた)
         
        ……私も、これから貴方の所へと行くわね……
        迷わないように、離れ離れにならないように、迎えに来て…… -- メルセフォーネ 2014-04-20 (日) 23:00:34
  • お願いだから 私の鎖を解かないで
    貴方との繋がりを保てるのなら――……
     
    たとえ私が貴方の畜生になってもいい
    貴方が望むのであれば……私は心の臓でも差し出すから……
     
    ……だから どうか――……
     
    私と繋がったこの手を、もう離さないで……
    絶対に、離さないで
    -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:04:08
    • これは、願い
      私の存在は『誰か』と共に在り、必要とされる事で保てるのだから
      お願いだから、私の事を捨てないで
      要らないって言わないで
       
      ……傍に、居て -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:06:16
      • だって
         
        私が生まれて来たのは――…………
         
         
        -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:07:40
      • 神国アルメナの魔術の発達している国の下で、一人の少女が生まれる事となる
        その娘は、まさしく魚の娘だった
         
        黄道十二宮は、牡羊から始まり魚サインで終わる
        けれど、サインの輪はDNAの螺旋の様にぐるぐると廻っていく
        牡羊サインが、この世に産声を上げる、生まれたての赤ん坊で在るとするならば
        全てのサインの最後に存在し、全てのサインを飲みこんだ魚サインは
        人生の最後、老人でありながら
        牡羊で生誕する為の準備――……すなわち死後の世界であり、生まれる為の準備をする胎児でもある
         
        全てのサインの意味を持ちながらも
        まだ生まれる前の弱さも同時に含むサインである
         
        ……その意味からしても、彼女はまさに魚の娘に相応しく
        故に、個人天体の殆どを魚に持ちながら生まれたに相応しかったのかもしれないけれど -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:23:14
      • 魚の娘……メルセフォーネ・モイラは
        魔術の発達した国の、占いや魔術の権威として生まれる事となる
         
        彼女の母が妊娠して、子供が生まれる予定の日の幾つかの『仮』のホロスコープを
        モイラ家は参考の一つとして、照らし合わせる事となった
         
        占星術とは『この世にその人が生まれる時、最もその人に相応しい配置』の時に
        人が生まれて誕生するという考え方をしている
        故に、そこからその人の持つ特性や才を、生まれた時の空の配置から読んでいるのだけれど――……
        占いに長けた家だからこそ、だった
        禁忌に近い行いに 手を染めるきっかけとなったのは――…… -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:28:29
      • 簡潔に言うと、彼女本来の生まれる予定の星の配置は
        モイラ家の人々からして、芳しい時期に生まれる予定だった
        それよりも――……妊娠が発覚してから考えれば随分短い期間ではあるが
        近々、珍しい配置を宿す日があり、その日に生まれて欲しいと考えた
         
        けれど、それは妊娠もようやく5か月程で、到底人が生まれられる時期ではない
        けれど、ここは神国アルメナ
        異様に発達した魔術を使用して、人体改造に長けた国なのだ
        生まれる胎児が、予定の時期に間に合わないのであれば
        それに間に合う様に、母体から魔術をかければいい
         
        大切なのは『生まれてくる子供』であり
        嫁なんて、所詮借り腹なのだから
        母体の健康や精神状態を無視したまま、魔術実験の一つではあったけれど
        無理矢理、魔術で腹の中の子供を成長させ、生まれる日にちをコントロールされた中で彼女は生誕したけれど
         
        彼女の命と引き換え、おぞましい行為の代償に、彼女の母は絶命した
        生まれてこれたのが奇跡な程――……
        異常なほどの難産の中、胎盤を被った仮死状態で生まれた為、殆ど死産と思われた中で  
        生まれて来た時の彼女は ヒトの形をしてはいなかった
        ……けれど、それを見た『モイラ家』の人々は――……
        そんな姿で生まれた彼女を
        その日、その時刻で生まれた彼女を大層喜んだ
        それは、狂気にも等しい喜び -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:44:55
      • 魚の娘は、生まれた時から人では無かった
        『袋子』で生まれたのである――……
        袋子とは、羊水を包む膜ごと生まれてくる状態で、まるで卵から人間が生まれたように見え
        これは大予言者の生まれと言われる
         
        故に、占いの名門家『モイラ家』では彼女の生誕を非常に喜ばしく思った
        ……傍から見れば、死にかけた奇形児の生まれに等しい彼女だったけれど
        神の息吹のかかった運命図の下で
        星を読む運命の輪の歯車の下で『造られるように』して、彼女は生まれた -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:52:51
      •  
        仕組まれた運命図の元に
        仕組まれた意図の元に
        彼女の才能は、予知の力は正に『神の子』と呼ばれるに相応しいものだった
         
        それは、全てを見据える『予知』としての能力だけを見れば
        占いや魔術だけであれば、尋常でない才を持っていた彼女だったけれど
        同時に『人』としては非常に未熟で、生きていくことは出来なかった
         
        例えるなら、それは『生まれる時のパラメータを全て占いに費やした』状態で生まれたに等しいのだから
        神に等しい力を持ち合わせながらも、人として生きていく事の出来ない彼女は
        人として見るならば、未熟児そのもので『誰かに従属する形』をとって生きて来た
         
        けれど、それすらも
        上流の者が、体よく彼女を道具として使用する為には都合の良い状態で
        『予知の力』を持つ限り、彼女は誰からも欲されたし、生きていく事は出来た
        皮肉な事に、人としては『要らない子』だったけれど -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 22:58:54
      •  
        『神の子』として望まれ
        『人の子』としては不要とされる彼女は
         
        懸命に、懸命に捨てられない為に、ただひたすらに占いと予知をしてきた日々を過ごした
        始めは、そんな現実を知らなかったけれど――……
        最初に、予知では無くて治癒の力を失った時に、酷く周囲は落胆して
        幼いながらにも、私は『今自分の持ちえる才』を失ってはいけない事だけは……そこで知る事となった
        皮肉な事に、私が大切にされていたのは
        『私』ではなくて『私の持つ能力』を周囲が望んでいたからだった -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 23:03:48
      •  
        何故、私が治癒能力を失ったかというと『初潮』が来たからだった
        成長によって、治癒能力が失われる事から、大人達はこう考えた
         
        『もしかしたら、予知能力も成長したら失われてしまうのではないか?』と
        その答えはいまだ分からないけれど、可能性は否めない
        それまですくすく成長していた私の体に魔術を施して
        私のエーテル体に残されている『過去の私』の身体の記録を
        アカシックレコードから読みだして
        私の体を6才程度の年齢で固定させた
         
        それは、0〜6歳というのは『月の領域』の年齢であるからで
        月は無意識も象徴する上に、私の月が魚で、魔術をするには都合が良いからなのだと思う
        ……もしかしたら、他に詳しい理由もあるかもしれないけれど
        私の推測では、そこまでしか分からない けれど――……
        これはずっと後になって 宗爛様の国の方で、こう言う言葉がある事を知った
         
        『7歳までは、神のうち』 -- メルセフォーネ 2014-04-19 (土) 23:13:58
  • (太陽の光が赤く染まり、逢魔が刻を迎えた町中。人々は今も忙しなく動き続けている)
    (子供達の時間は既に終わって、その姿は余り見当たらない。大人達が行き交う街路一人、足早に通り過ぎて、目的地へと急ぐ少女の姿がある)
    (目深に被ったフードはこの時期ならばそれ程目立つものではなく、誰も彼女を気に留める事はない。それは街が、異物を見て見ぬふりする人間という存在と同じである事と一緒で…)
    (かくして、街には未だ慣れない少女が目的地へと辿り着いたのは既に夜の帳が降りきった頃で。かつては人が溢れていたであろう朽ちかけた孤児院の、ノッカーを叩く) -- カグラ 2014-03-30 (日) 23:43:03
    • (夕暮れ時の、オレンジ色に輝く世界の中で――……)
      (いつもと変わり無い時が流れる中で、いつもとは違う少女の急ぐ光景が、そこには『在った』)
      (冒険者の、それも変わりものも多い町では、フードを深く被った少女は、極自然に街に溶け込み……決して目立つ事は無かった)
      (勿論、慣れない街に迷う事も――……)
      (活気の溢れた酒場の中心街から外れて、既に人も少なく、嘗て賑わいを見せて人に溢れていた孤児院は)
      (夜の闇に静かに溶けながら、静かに佇み、孤児院にノックが響く――……)
       
      (まだ、夜遅くなのにキャスターは帰ってこない 普段なら居留守を使うが、今日は特別)
      (森に住まう少女の、高く研ぎ澄まされた魔力を感知して、扉を開けて招く)
      カグラちゃん……いらっしゃい(にっこりと歓迎して、嬉しそうにエメラルドの瞳の少女は微笑む)
      (孤児院の中は、物静かだが居心地の良さと、キャスターのこまめな掃除のお陰か、古いのに清潔な空気が漂う) -- メルセフォーネ 2014-03-31 (月) 00:05:04
      • (この扉が開くまではまだ、安心することは出来ない。張り詰めた緊張感も、ドアの向こうから聞こえる足音と、随分と親しんだ魔力を感じれば解れていった)
        …ええと、お邪魔しますメルセフォーネ。(何処か余所余所しさを感じるのはこうして人を訪ねる、という事に慣れていないからだろう)
        (しかし数度の邂逅を経て、共闘を結んだ少女には随分と柔らかい表情を見せるようになった。言葉の硬さとは裏腹に、扉から除いたメルセフォーネの微笑みに)
        (ふっと、安堵の薄い笑みが浮かんだのはカグラにとって数少ない、気安い相手だという証明で)
        (孤児院の中に入ればフードを外した。場所は教えられていたが、こうして彼女等の拠点に足を踏み入れたのは初めての事)
        (見かけの古さに反した清潔な空間…彼女のサーヴァント、キャスターは潔癖と取れる程の綺麗好きだと聞く、その現れだろう)
        (嘗てここで暮らしていた子供達が刻んだであろう、生活の痕跡。埃のそれとは違う、古い建物の香り。森とは違うが…落ち着く空間だった)
        …貴方も素敵なところに暮らしているんですね、メルセフォーネ。優しい暮らしの、その残り香を感じます。この場所からは…
        (今夜を過ごす為に用意してもらった部屋への案内を受けながら、物珍しげに建物の中を眺めている) -- カグラ 2014-03-31 (月) 00:41:18
      • (正面玄関を抜けると、高い天蓋が迎える)
        (廃教会は、その在り方を孤児院に変え、廃墟に変え、しかしなおも荘厳な雰囲気を失わずに湛えている)
        (古硝子がぼんやりと夕陽を透かし、粲々と采り取りの光を板張りの床に落としている)
        (そこに人影があると気づくのには、若干の刻を要するだろう)
        (奇妙な眼鏡、奇妙な服装。人だかりの中に居れば、琳檎の山にオレンジが一つ混じっているような、絶大な違和感とも言える目立ち方をしそうなものなのに)
        (彼の姿は、ここに溶け込んでいる)

        ……………。(しかしながら。彼は立ち尽くしていた。自然にそこに居たから、自然に見過ごされた。ただそれだけなのになんだか手酷く悲しい)
        (「ふふ……」「声をかけるタイミング……ミスっちゃったな……?」)
        エエト。(彼は調理場に向かい。湯をかんかんに沸かしたあと、レモンバームのハーブティーを淹れた。トレイにカップとポットを乗せて、お茶請けを幾らか用意する)
        (私室のドアをノック。返答を待ち、扉を開く。予め聞いていた風貌を見つける。「有角人……」値踏みするような眼になるのを、できるかぎり避けた)
        ようこそ。キミがカグラちゃんだネ? 初めまして。メルセフォーネのサーヴァントです。
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-31 (月) 00:58:21
      • いらっしゃい(よそよそしさを感じる少女を出迎えながら、同じくこうして誰かが訪ねてくる事は初めてで……何だか凄く嬉しかった)
        (態度はよそよそしいものの、柔らかい表情が仲の良さを表していて。初めてお家にお友達が来るときめきとワクワクで、自分も少し落ち着かなかった)
        (薄い微笑みに、満面の笑みが返される)
        (手を引きながら、中を案内して……孤児院を褒められれば嬉しそうに)ありがとう、私も この場所は好きなの。昔の孤児院の、にぎやかで楽しい想い出と、教会だった頃の美しさが残っていて、居心地が良くて
        (案内して貰った部屋に到着すれば、清潔な白いベットや机等が彼女を待っていたかのように揃えられていて)
        (孤児院だった頃に『誰か』を招き入れる暖かさが、カグラを迎える)
         
        (ノックが聞こえると、キャスターに返事をして紹介する)……あ、あのね……この子が以前お話したカグラちゃんなの
        (二人の挨拶が、和やかに交わされる様子を見て、頬が緩む……なんだかあまりに嬉しくて、聖杯じゃなくて本当にお友達で……泊りに来たとかならいいのに。と想いつつ) -- メルセフォーネ 2014-03-31 (月) 01:12:10
      • (屋内には至るところにその荘厳さから、神への感謝と、祈りを彷彿させる様相を呈している。この場所が孤児院跡であるという事は知っていたが…)
        (自身は月を神として崇めていた、謂わば此処は異教の協会であった成れの果てではあるのだが…不思議と違和感も、居心地の悪さも無かった)
        (それはきっと、ここでメルセフォーネとサーヴァントが…戦争の最中であっても、優しく暮らしているという事が感じ取れるからだろう)
        (信頼しあっている…それは自分達も同じ事ではあるが。それとは質の違う…生活の温もりが、此処にはあった)
        (随分と前に失ってしまったもの。郷愁と回顧が頭をよぎるが…今はそれを、考えるべきではない)
        …ええ、僕もこの場所は好きです。初めて来る場所の筈なのに…何処か、懐かしさを感じる…貴方達の、暖かさを感じさせます…
        (案内された先は小奇麗に纏まった部屋、自分の為にわざわざ整えてくれたのだろう。感謝の気持ちに、頭を下げた)

        (普段は夜空を、茂る葉を、ごつごつとした岩壁を天辺として日々を過ごす自分には低く感じる天井)
        (ベッドに腰掛けたところで聞こえたノックの音。応対するメルセフォーネの様子を見ればそれが彼女のサーヴァントによるものとすぐに分かる)
        (…そういえば 先ほど彼の姿をちらりと 見掛けたような…)
        あ、っと…先ほどは、すみません。今日は受け入れて頂いて、ありがとうございます。メルセフォーネの………友人、カグラです。
        (本来であれば敵対する筈の、サーヴァント。緊張し、警戒して然るべき相手)
        (しかし、メルセフォーネから聞いていた彼の気性。そして…身を持って体感したこの暖かな空間を整えた彼に)
        (敬意と、感謝を現して…友人と、自らを称する事にした。彼女も、彼も、今この場に血腥い戦いを持ち込みたくはないだろうと、思えたから)
        …僕のサーヴァントも、後で合流する事になるかもしれません。今夜はご迷惑をお掛けします
        (しかし…それにしても…奇抜な格好をした、サーヴァントだった。一際目を引く、その眼鏡を。無遠慮に眺めてしまう)
        …奇術師…………?(そして、思わず心中を零してしまった。警戒とともに遠慮までも抜け落ちてしまったように。見た目相応といえば、そうだが) -- カグラ 2014-03-31 (月) 01:39:08
      • (聖杯戦争に携わる者の礼儀として、彼はカグラを警戒する素振りを見せる。一挙一動、そして魔力域の変動などを逐一、睨むように見極める)
        (まぁ、それも儀式的なものだ。「あまりに無警戒すぎるのも不躾」だ、という義務感から来るもので、きっと悟られもしない間にそれは取りやめる)
        (「マスターが嬉しそうだし、変な雰囲気出したくないものな」そわそわするメルセフォーネの様子を横目で見て、表情を緩ませた)
        (トレイを机に置き、真新しく白いカップを一つ、二つ、三つと置く。とぽとぽ、空気を含ませながらハーブティーを注ぐ。清涼感のあるレモンの香りがした)
        (先ほどのホールにもあった、神を模ったステンドグラス。その、色硝子の破片を嵌め込んだようなその眼鏡が、光を透かしてカグラを見つめた)
        (カグラへ微笑みを向け、カップを差し出す)どうぞ。くくく、奇術師じゃありまセンよ。魔術師です。マ、一般的とは云い難い魔術体系のモノですケレド。
        (メルセフォーネにも、カップを寄越す。そして最後に自分のものを注ぎ、率先してそれに口をつけた。香りはレモンのようだが、味はミントのようだ)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-31 (月) 02:10:42
      • (教会跡でもあるのに、居心地の悪さが無いのは……きっと、その後孤児院へと変わった時の、嘗てのキャスターの人柄や、人を受け入れる暖かい生活の余韻が残っているからかもしれない)
        (二人の生活が、聖杯戦争の中であるというのに……暖かさと幸せの満ちた生活を送っている空気があるからなのも、あるかもしれないけれど)
        (初めて自分が来た時も、孤児院後なのに居心地が良くて好きだった……だから、彼女も同じように好きで、懐かしさや温かさを感じさせると言われれば、嬉しかった)
         
        (キャスターと、カグラの初対面……互いを警戒し、緊迫した空気が流れるのは、敵同士だから仕方ないかもしれない)
        (けれど、険悪なムードが悪化する事も無く、穏やかに挨拶も済めば安心した)
        (『奇術師?』との彼女の言葉に、ふんわり笑いながら答えた)……奇術師っぽいわよね。キャスター…… 私も初めて会った時にそう見えたの
         
        (キャスターの心中も知らず、無邪気に。キャスターが用意してくれたハーブティーが入れられれば喜んで)キャスター、ありがとう
        (カグラに)キャスターね、料理とかお茶を入れたりするのがとても上手なの……ハーブティもとても美味しいから、気に入って貰えると思うわ
        (嬉しそうに、楽しそうに語りながら口を付ける……レモングラスやミントのブレンドだろうか?爽やかな香りと、すっきりとした清涼感のある味わいが美味しい)
        ねぇ、キャスター……今日は何のハーブティなの?(寛ぐ姿から、彼らの生活の姿が垣間見える) -- メルセフォーネ 2014-03-31 (月) 02:36:48
      • (街に、森に、何処にいる時でも緊張を緩め無いよう心がけて来た。以前にはまだあった油断は幾度かの戦いで随分と薄れてきている)
        (しかし…それも今はする必要が無いと、信用していた。少なくともメルセフォーネにはこちらへの害意は今はまだ、無い)
        (話に聞き、出会った印象からしてもキャスターはメルセフォーネを大事に思っている事は疑いようがなく、その意に反する事はしないだろう)
        (…戦争である以上、後の脅威を摘んでおこうとする事は考えられないではないが…彼が向けた微笑みからは、悪意を感じ取る事が出来なかった)
        魔術師、ですか。僕はそれらに対する知識は余り、ありませんが…(手の内を明かしてもいいのか、という皮肉はすんでのところで止める)
        キャスターというよりも、それでは貴方のお手伝いさんのようですねメルセフォーネ。余りわがままを言って、困らせるような事はしてはいけませんよ?
        (…どうにも、相手を試すような言動が染み付いてしまっている、いけない。お茶の注がれたカップに口をつける)
        (それに悪意は無いと、自ら示してみせたのだ。同盟を結ぶ者同士として、その誠意に応える)
        (………優しい味だ、故郷の森で暮らしていた頃に、母が煎れてくれたものと少し似ている)…美味しい、ですね。
        レモングラスミントティーでしょうか。森の中ではハーブを乾燥させるのも手間がかかるので作れませんが…
        …故郷にいた頃は、母が作る手伝いをしたものです。これも、キャスターのお手製ですか?だとすれば、器用なんですね。
        (余りにも平和な姿。聖杯戦争という舞台上にいるとは思えない穏やかな姿は眩しいくらいで)
        (それに当てられたのだろう…自然と、口数も増えていった) -- カグラ 2014-03-31 (月) 02:45:53
      • ンー、惜しいデスね。レモンバームです。なになに、時期を見て摘み、風通しの良い所で乾燥させればいいのだから難しいことはしてませんよ。
        ……プランターでも育つんで、生前、ちょっと住んでたアパートの庭借りて育ててよく飲んだものです、ええ。(少々目を逸らす)
        (彼は、貧乏だった。まさに今寛いでいる、このテメノス孤児院への寄付が主な原因である。彼は、冒険者報酬をほとんど全額寄付に回していた)
        (あまり出資も受けられない場末の孤児院だったため、そうしなければ立ち行かなかった。その結果、彼の主なビタミン元は家庭菜園と野草に深く依存することになる)
        (そんな話も今は昔で、こうしてささやかに茶会を開ける程度の手腕が身についていることを感謝する。「いやァー大変だったなァーあの頃……」)
        お手伝いサン、とはイイますけれども。僕、人の世話焼くの好きですカラね。自分の存在意義が見つかる感じで嬉しいのですヨ。
        ……。(逡巡があった)とすると、カグラちゃんのサーヴァントはどんな様子で普段過ごしてらっしゃるので? 気になりマスね。
        (「探りを入れたふうにとられるかな」純粋な興味である。それでも、その興味というのが言い訳がましく思えて、複雑な気持ちになった)
        (「一応、同盟者という立場にあるのだし、日常的なことぐらい知っといて互いに損はないだろう……」きっと、カグラもそこまで迂闊ではない。言って拙いことは言うまい)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-31 (月) 03:12:58
      • (キャスターの多少の緊張感は、聖杯戦争の間柄故に、完全には拭いされないかもしれない……けれど)
        (きっかけを作った、当の本人は、二人の内心を露知らず……という程緩み切っていて、害意や悪意どころか、聖杯に似つかわしくないゆるゆるっぷりでお茶を楽しんでいた)
        (『まぁ、聖杯だし仕方ないよね』と想う反面、やっぱり過去の戦争の経験から言って、本当にヤバい相手であれば察して逃げるし、ましてや自分の拠点に受け入れようなんて到底思えない)
        (信頼している証だからこそ、招いて部屋まで用意した上に『キャスター』の話も、日常のお話程度や性格等、困らない事はお話しして居るという事もあり)
        (同時に、キャスターにもカグラの知っている事を語ったりしていた(とはいえ、それも友達のお話程度の内容だけれど))
        (お手伝いさんのようです、とか 我儘を言って困らせてはいけませんよ?と注意されれば、首を振って『ううん、我儘はねー言ってないの』と、緩やかに語る……我儘言ってないのは無自覚かもしれないが)
        (カグラの故郷のお話を聞きつつ『お母さんのお手伝いするって、偉いなぁ』と思う。勿論やったことない)
         
        あ……レモンバームね(カップにまだ残る、水色を見つめながら) キャスターは、家庭菜園をするの上手で、細かくお世話してて凄いわ……私なら枯らしそうだもの(或いは、没頭しまくって凄まじい成長をさせるかもしれない、極端)
        (『人の世話焼くの好きですカラね』と、語る彼に、心の中で同意して頷く……性格からも自分のサーヴァントとして現れてくれて本当に良かったと思う)
        (彼の優しい人柄と雰囲気に、私も始めは怖いと思った聖杯も、彼とならきっと楽しめると思ったし――……何より 一緒に居たいと思うから)
        (聖杯戦争だから、サーヴァントを聞けば『探り』だと思われても仕方ない……けれど、敵意の無い表れとして多少は伝えた事もあるから、聞いても迷惑じゃないかな?と思う)
        (彼女がどう判断するかは分からないけれど――……それに、後で来る時に『どんなサーヴァントかわからないと、争いになって余計な火種にもなりかねない気もするし』とも思うから)
        迷惑じゃ無かったら、どんなサーヴァントか聞いても良い?(一言付け加えて、尋ねる。やんわりと柔らかく) -- メルセフォーネ 2014-03-31 (月) 03:36:32
      • 我々は一処に留まる、という事をしていませんから…なるべく痕跡も消すようにしていますし。荷物も最小限に抑えるようにしていると、中々
        (森の中の事はほとんど庭のように知っているが…ハーブを乾燥させる為にそれを放置しておけば、そこから人がいると推測される原因となる)
        (だから、こうしてお茶を味わう、というのも久しぶりの事だ。その味が好みだった事もあり、あっという間にカップは空になって…)
        …あ、あの…すみません、おかわりを貰ってもいいでしょうか…(おずおずと、少々恥ずかしげに申し出る。冬の街路を歩いてきた体は冷えきっていたが故に)
        (メルセフォーネは見るからに世間慣れしておらず、こういった家事能力に関してはからきしだろうと推測出来る。世話を焼くのが好きだという彼には、格好の相手だろう)
        (自身のサーヴァントも、過保護なところがあると思っていたが…多分、彼女等はそれ以上なのだろうな、と思えば微笑ましさを感じて)
        (故に、彼等が此処にいる事を悲しくも思う。もっと違う形で彼等が出会っていれば…彼等と出会っていれば…)

        (サーヴァントについて問われれば、少しだけ表情に硬さを張り付かせる)
        (今までメルセフォーネにも、殆ど自分の、自分達の情報を伝えてはいない。サーヴァントの姿も、遠目に見せたことがある程度だった)
        (メルセフォーネが躊躇うこと無く彼をキャスターと呼んだことも、自身の手の内を多少ながら見せたキャスターも)
        (それは、対等な同盟として、信頼する友人としての十二分の誠意だ。ならば、自分もそれに応えるべきだろう)
        …既に、あの老キャスターの手によってある程度情報は…出回っているものと思っていましたが。貴方達は彼と接触を持っていないのですね
        分かりました、僕の"D"に…バーサーカーについて。余り多くの事は…話せませんが。
        (そうして語られるのは、当り障りのない事。メルセフォーネ達について自分が知り得る事と同程度の事実)
        (バーサーカーと言ったが彼は理性がある事、自身を守る献身的な騎士である事、普段は口数が少なく…キャスターと違い家事能力はからきしである事)
        〜……鹿肉で作ったスープは口に合ったみたいです、珍しくおかわりをしていましたし。
        ("D"と呼ばれる彼について話すカグラは何処か、自身の家族について語るように自慢気にも見えた) -- カグラ 2014-03-31 (月) 04:07:55
      • (「この娘、案外肝が太い」彼は、主人に対する印象を改めはじめている)
        (的確に自分の立ち位置を把握し、カグラの人柄や聖杯戦争参加者としての性質を見抜いて、結果、いま心の底から茶会を愉しめている)
        (死に体から足掻き、藁にも縋る思いで手に入れた“聖杯戦争”という居場所で、存分に泳ぎまわるかのよう)
        (キャスターは、そんなふうに振る舞えるメルセフォーネをなんだか尊敬してしまった)
        (「“一触即発”みたいな空気になったっておかしくないんだけどね」「互いに表面的な笑顔を浮かべて、腹を探り合ってさ」)
        (「それが、お茶請けがどんなもんか、とか。フレーバーは口に合いましたか、とか。お代わりはいかが?、とか。そういう腹具合のほうを気にしてる」)
        エエ、いいデスよ。ご遠慮なさらずに。(ポットに被せていたティーコージーを外して、熱さを保ったハーブティーをカップへ注ぐ)
        どうぞ。(「……」カグラへカップを差し戻しながら、横目で自分の主人を見る。「多分、彼女が居なきゃこの状況って成り立たないんだろうナー……」)

        や。その老キャスターとやらは……茶飲み友達? のヨウナ? とにかく、彼は信用ならないから、情報を引き出してはいないよ。
        (「バーサーカー!!?」召喚時に、聖杯から与えられた知識が警笛を鳴らした。笑顔のままびしりと凍り付き、茶を噴霧しそうになるが堪える)
        (然し乍ら、戦慄にも近い警戒心と恐怖心は、カグラの話しぶりを見て徐々に解かれていった)
        (「どこかしら理性を喪失してはいるのだろうけれど、セイバーみたいな雰囲気を伴っているのだろうか」)
        (“D”のお話は冒険譚の序章のようにも感じられた。そして、そのサーヴァントのマスターであることを、純粋な気持ちで誇りに思うことが伝わってくる)

        (「家事全般をこなし、世話を焼いて日常を保持する僕と」「口数少なく、主人を守り戦う献身的な騎士たる“D”と」)
        (英霊として、聖杯戦争に臨む姿勢そのものが、見事に陰陽分かれているようだ。キャスターはそう思った)
        そういうの、格好いいですネ。
        (微笑みに載せたものは尊敬と、それからほんのすこしの羨望である)
        (“キャスター”は聖杯戦争に積極的ではない。情報収集や警戒、この孤児院跡を陣地とするため罠を張り巡らすこともした)
        (けれど、他の英霊に対して仕掛けたはことはないし、もしも出くわしても戦闘は出来る限り避けるように立ち回った)
        (「メルセフォーネに大見得を切ったけど」「僕が“英霊”だなんて、信じられない話なんだ。今も……」「こうして、美味しい茶を淹れて寛いでるのが本来の僕なんだ」)
        (ふと、“キャスター”のことが思い浮かぶ。話に出た、“老キャスター”のことだ。彼は、自分が然程の力もない単なる老人だと言っていた)
        (しかし、話によると彼もアンテナは張り巡らして、“戦って”いるようだ。「…………」「僕は……」)
        (「おっと、いけない、いけない」「景気の悪い顔してちゃあ、いけないよな」「……折角話してくれたというのに、変に、嫉妬みたいなことするなんて」)
        (キャスターは、人知れず表情を引き締めた)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-04-01 (火) 01:16:26
      • (サーヴァントの話を出せば、カグラの凍りつく反応に『変な事言っちゃったかな……?』と心配になる)
        (森の中でも生活の痕跡を残さないように気を付けたり、細やかに気を配る彼女からすれば……つつかれたくなかった話だとは想うから)
        (聖杯戦争に参加しているから、それは仕方の無い事だけれど……出来れば、彼女のサーヴァントの話を聞いておきたかった)
        (『もし、万が一――……孤児院に来た時に、キャスターと知らないうちに険悪な関係になってしまったら嫌だから』と思ったから)
        (また、キャスターの考える通り、カグラの人柄や性格から『彼女は安心できる』と思って、こうして自分のキャスターの話や拠点も教え、受け入れている)
        (――……本当に、彼女がヤバいと思う相手なら、こんな事、出来やしない…… けれど、相手の捉え方によっては、友達だと言う事で都合よく腹の探り合いをしている様に捉えられても仕方の無い事)
        (だから、もしかしたらとんでもない話題を付きつけたのかもしれない事に……一歩遅れて気付く、抜けている所があるのだけれど、やっぱりそこは、彼女を信頼して気が緩んでいるんだろうなって想う)
         
        老キャスター……?(首を傾げ、すぐに横に振る) ううん、知らないわ……私ね、引き籠ってばかりだもの(ねぇ、キャスター と言おうとして振り向くが――……)
        えっ、キャスター知ってたの?(いつ会ったのだろうと、不思議そうな表情を隠せない。けれど、キャスターが『信用ならない』っていうから、自分もその『老キャスター』という相手は信用しないようにしようと思った)
        老キャスターは知らないけれど……以前ね、黒いフード被ったキャスターに襲われた事があるの、カグラちゃんも気を付けて
        (キャスター関連の話で、思い出したかのように偽のキャスターの特徴や、過去の出来事を語る)
         
        (カグラから、サーヴァントがバーサーカーだと教えて貰うと、酷く驚くが……同時に『教えて貰ってよかった』と、心底思う)
        (もし、ここにそんな強力なサーヴァントが来たら、確実に私もキャスターも警戒して、争いに発展している可能性が、きっと高確率で起こりえただろうから)
        (けれど、理性がある事を知るとホッとして……先程までの、お友達同士の他愛無いお話を楽しむ顔に戻り『うん……うん……』と、相槌を打ちながら彼女の話に耳を傾ける)
        献身的な騎士……何だか凄いカッコイイというか。紳士的な性格なのね いいなぁ、無口なところもクールな感じで……
        でもね、うちのキャスターも……普段はこんな感じだけれど……戦ったり魔術をする時の横顔は、カッコイイの(詳しい事は離せなくてごめんね、と言いつつ)
        鹿肉のスープね……私、お肉は嫌いだけれどカグラちゃんの料理は食べてみたいな、お代わりしたって事はとても美味しかったんだろうなって思うし……
        そっかぁ……理性があるなら、機会があればお話ししてみたいなぁ……バーサーカーから見た、カグラちゃんのお話とか知りたいもの(無邪気に笑いながら語る、とても嬉しそうに)
        ねぇ、キャスター カグラちゃん遊びに来ているんだし、明日はお茶と一緒にクッキーか何かお茶菓子欲しいかな……作って貰っても良い?(――……なんて、笑顔でキャスターに振り向きながら) -- メルセフォーネ 2014-04-01 (火) 22:18:18
      • (こうして本音を語るのも、やはり久しぶりの事…二人の知る由ではないが、元来カグラは今のような、冷静を装う大人びた性格ではない)
        (聞き分けが良い真面目な性格ではあったものの、今とは比べようも無い明朗な性質を持っていた。だからだろう)
        (話し始めた時には探り探り…と言った様子であったが、それは次第に熱を帯びていき、歳相応と思える柔和な表情を見せるに至っていた)
        (話が終わりに近づくにつれそれに気付いた様子で、表情は抑えられてはいったが…「話しすぎました」と、冷めかけたお茶を口に含む彼女の耳はほんのりと朱に染まっていた)

        …ええ、私…僕………(先の会話中にも何度かつい、一人称を変え忘れていた事に気付く)もう、貴方達には素性が知れていますし、いいですか…ともかく
        "D"は、とても頼りになりますし…とても………その、素敵ですよ。(なんだか、カッコいい、という言葉を使うのは恥ずかしかった)
        (そう語るカグラの表情はやはり誇らしげで、言葉尻を捉えればサーヴァントを男性としての魅力に優れている、と捉えれそうでもあるが)
        (彼女が唯一「信頼」をする相手がバーサーカーであり、彼を大事にしている事が伺えた)
        …失礼かもしれませんが…正直な所、キャスターさんが戦っている姿…というのは、余り想像出来ません。
        (キャスターの姿を目に据えて、その姿を眺める。確かに高い魔力がある事は感知出来る。しかしその質が戦いに向いているとは思えない)
        (こうして会話をしている印象と同じ、彼の魔力はとても穏やかで、何処か神秘性を感じさせる、荒事に向いたものではないと。この戦争の中で培った魔力への感応は捉えていた)
        …それでしたら、明日の朝食は私が用意させて貰いますよ。炊事場を貸して頂けるならですが。故郷では森のものばかりで、塩も貴重品でしたから味付けが口に合うかはわかりませんけれど…
        …私が答えて、といえば答えるとは思うけれど…彼はそういう話が余り得意ではないから、期待はしない方がいいと思います

        (なんて穏やかな空気なのだろうか)
        (時折キャスターは、その為に呼ばれた者としての責任感か…それとも、聖杯によって植え付けられた危機感か。表情を僅かに変える事があるが)
        (笑顔でキャスターにお菓子を作ってくれるよう、ねだるメルセフォーネの姿は、最初に彼女に感じたものと同じ)
        (聖杯戦争という舞台からは最も縁遠い様な存在と思える。願いの為に他の総べてを犠牲にする覚悟なんて、無いように思える)

        (だから、だろうか)

        ………見ての通り、私の額には角が生えています。種族の名は、月角種(ルナコーン)。有角種は数多く存在しますが…その中でも、特に希少な種族と言われていたそうです。
        …月を祖とし、神として。自然の理の中で生きていく事を由とし、世界に伝わる伝承や伝説を語り継ぎ、編纂する事を役割として、ひっそりと暮らしていました。
        …今は、起源を同じとする種は世界の何処かにいるかもしれませんが…少なくとも、私の…ソーマの一族は、私の他にいません。
        滅ぼされました、人間の手によって
        (それは、唐突に。この安穏とした空気を打ち壊すかの如く、語られた。何処にでも有るような、一つの種の滅亡の、お話)
        (メルセフォーネとキャスターが作り上げた、この優しい世界が。暖かな世界が。凍り付いていく事を、感じる)
        私の願いは。余りにも唐突に奪われてしまった…平穏を。皆を…取り戻す事です。
        …ごめんなさい、こんな話をするつもりは、ありませんでした。…こんな話を一方的に聞かされた後に、こんな事を言うのは卑怯だと、分かっています。
        しかし…どうしても、貴方達が何故。こんなにも、非常な戦いの舞台へと上がっているのか、知りたくなってしまいました。…聞かせて、貰えませんか?
        …貴方達の、願いを。 -- カグラ 2014-04-02 (水) 12:45:11
      • (「ありがとう」自分を褒めてくれた主人へ礼を述べる)
        (カグラとメルセフォーネが従える英霊は、それぞれまるで趣が違う。けれど、二人の持つ敬慕は同じ色をしている)
        (信頼が寄せられている。どちらも強く、きっと純粋なものだ。マスター、サーヴァントなんて言葉では片付けられないぐらいに)
        いいですヨ。そこまで豪華なものにはできませんが、ご了承。朝ごはんはお言葉に甘えてカグラちゃんに任せましょうか。楽しみですね、明日が。
        (彼は、“D”という男に会いたいと思う気持ちを強めた。そして、訊きたいのだ。「どうすれば、こんな眩しい気持ちに応えられる?」)

        (嘘偽りのない笑顔は、独特の温度を放つものだと思う。熱はその場に滞留して心を煖める)
        (いらぬ考えを回して冷え気味のキャスターの心も、温まり落ち着いた気持ちになるのだ。悩みはあっても、それを解消に向かわすことができる余裕がある)
        (そう。そんなふうに悩めることは幸せで。本当なら、“聖杯”以外の何もを考えてはいけないものなのかもしれない)
        (ここにある“日常”の裏に隠れているものは、多かれ、少なかれ、悲劇なのだから)

        (カーバンクルという種族がキャスターの産まれた国に存在していた。マナを多く浴びた宝石が変質し、人化できるようになったものだ)
        (小さな集落を作り、寄り合って暮らしていたそうだが、魔力を帯びた宝石を求める不届き者に狙われることがたびたびあったそうな)
        (今こそ、とあるカーバンクルを伴侶にした貴族が保護政策を打ち出して、自治区を与えられるまでになったが、厳しい生活を強いられていたらしい)
        (物語のように伝え聞いた話。それを思い出す。その物語が悲劇を辿れば、カグラのような存在を生むのだろうか)
        (水が浸透するように、カグラの言葉は心へ染みこんでいく。聖杯戦争という舞台と、カグラの額に生える角が、現実味を引き立てていた)

        (闘争のみではない。その先にある“願い”の話が存在するのが、聖杯戦争というもの。互いに疲弊し、ただ血と廃鉄のみが残る戦乱とは違う)
        (希望は絶望を照らしあげる。その絶望が深いほど光は強く、また絶望から作られる影も深くなる)
        (今ここにあるのは、影か、光か。どちらかといえば、光に近いように思えた。キャスターは、指先をかけたまま止めていたカップを口元へ近づけ傾ける)
        ……マスターの幸せのために戦ってる。なんて言い切れたら格好いいんだけどね。単純明快に言おう。
        僕の願いは、母さんにもう一目会うこと。ただそれだけだし、きっと、これ以上の説明もいらないだろう。
        当然、最初に言ったのも嘘ではないけれどね。

        (はきはきと、そう言った。彼は、自分の願いをそこまで重要に考えてはいない。ここで、肝心なのはきっと)
        (彼はメルセフォーネを横目で見る。何も言わないし、眼で何かを伝えようともしない。ただ、彼女の言葉を待った)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-04-04 (金) 22:02:04
      • お互い、頼りになる素敵なサーヴァントという所は同じね(彼女の言葉ににっこり微笑む)
        (お礼を述べるキャスターに微笑んで『私も、貴方に助けて貰っているから。いつもありがとう』と返して)
        (Dという名のバーサーカーも素敵だと思うけれど、やっぱり自分は一緒に居て助けてくれるキャスターが一番だと思った)
        (そう思えるのも、互いに素敵なサーヴァントと縁があって、かつ互いに相応しい英霊が現れたと思うから)
        (きっと、カグラちゃんとDの二人は、素敵なペアなのだろうな――……と、想像を膨らませる)
        (お互いにこうして、束の間かもしれないけれど……互いの事を話せるというのは素敵だなと思いながら)
        そうね……家のキャスターは戦闘よりも、エプロン姿の方が似合うもの(と、語って、ハーブティで口を湿らせる)
        本当?カグラちゃんの朝ごはん、嬉しい(彼女の言葉に目を輝かせて、キャスターに『楽しみね』と返す)……大丈夫、私濃い味よりも薄味の方が好きだから
        無口なサーヴァント、って言っていたものね……(彼女の言葉に、やはり無口な分お話が苦手なのかな――……と思いつつ)
        (彼女のお話から、どんな人か会ってみたいと思う期待に胸が一杯になる)
         
         
        (少し思いつめた様にも見える、彼女の告白――……願いと、過去)
        (月角種――……以前、幻想種図鑑という、空想上の種族や遠い昔に絶滅してしまい、今はもう歴史から消え去ってしまった種属について記された本で、ほんの少しだけ見た事があった)
        (高い魔力を感じると思ってはいたけれど……それは、彼女の月角の結晶に蓄積された膨大な魔力で、それも元より魔力を持っている希少種だったのかと思いながら)
        (人間の手によって滅ぼされたと言われると、自身の人種と、故郷の文化自体が他者を人とも思わない無残な行いを平気で行える文化である事、また昔の戦乱の時代等が胸の中から浮かんで、ずしんと心が重くなる)
        (……彼女の願いは、無念の内に殺されてしまった自分の血族の復活なのか……と思いながら)
        (戦争で、周囲の人が殺されていく無念な中、独り残ってしまった悲しさと虚しさ、過去の辛い記憶は……彼女の過去と重なるところもあり、尚更胸を締め付ける)
        …………ううん、出来れば私は、聖杯のマスターたちの願いを知りたいと思っているから……聞けて良かったと思うわ
        (皆、きっと各々の過去や、どうしても手に入れたかった願いを抱えていると思うから)
        (『卑怯じゃない』と言いたそうに首を振る。『大丈夫、決して貴方を卑怯なんて思っていない――……』)
        (聞かせて貰えませんか?と問われると『勿論』と頷く――……先に口を開いたのは、キャスターの方)
        (そういえば、私はキャスターの願いを知らない……それを含めて、彼女とキャスターの願いを聞ける良い機会だと思った)
         
        (『マスターの幸せのために戦ってる』と、言われれば……少し頬が紅潮する が、本題の彼の願いに入れば、しっかりと聞いて)
        キャスターは……お母さんに会う事?(知らなかった……そして、それ以上の説明を要さずに意味はわかるけれど――……)
        (彼の事は、やっぱり深く知りたい気がした――……自分のサーヴァントでもあるから。彼を深く知りたいと思うから)
        (また『最初に言ったのも嘘ではないけれどね』と言われれば、嬉しさと気恥ずかしさに照れが隠せない)
        (小さく『ありがとう』と、返してから――……彼と目があって、改めて自分の過去と願いを話す)
         
         
        私は、今は『叙事詩』と記される歴史の時代――……嘗て栄えていた、大爛帝国の帝の血を引く主君の一人の元で、星を読んで戦乱の世を占っていたの
        その人の名前は『宗爛』様……彼は、捨てられて途方に暮れていた私の手を取り、居場所を与えてくれた人だった
        戦乱の世で、私自身も人と接するのが苦手で――……星を読む為に籠ってばかりだけれど、今思い返せば周囲の人々に恵まれていて、どうしてもっと関係を深めなかったのかと後悔するくらい、良い人々と環境だったの
        ……始めは優勢で栄えていたけれど……争いの途中で、私は長い間眠る事になって――……気付いた時には、既に変わり果てて、皆死んでいた
        私達生き残りは、死者の血肉を啜り、食べながら生き伸びて来たけれど……私は元々肉も苦手な上に、長い年月を寝ていた身体は弱り果てていて、それを受け付けられなかった
        危険な状況だったけれど、一瞬だけ――……此方が優勢になった時期があったの。その時に私は先に領地に変えるよう命令され……戻ったわ
         
        ――……もう、占いをしなくても未来なんて誰もが分かっている
        私が要る必要なんてなかったから――……けれど
         &r; 私はそこを離れ、独り生き伸びてしまったけれど――……周囲の人は皆死んでしまった
        良い人たちだったのに、良い国だったのに……そして、自分を救ってくれた人にお礼すらろくに言えないまま――……
        私の願いは、嘗ての恩人にお礼を言いたい。また会って、もう一度だけでいい……手を握りたい
        けれど、過去に戻りたい訳ではないし、戻ったところで私は歴史を変えられる力が無い……何より、あの過去を繰り返すのはもう沢山だから――……
        この願いが叶うという時は、きっと死ぬ時なのでしょうけれど……私は生きたい
        二つの願いで、迷っていたけれど…… 以前とあるマスターとお話しして、気付いたの
        私の最も大切な願いは――…… 『もう、誰かと離れ離れになるのは嫌。繋がった手を離したくない』 と、言う事
        ……だからきっと、こうしてキャスターが一緒に居て欲しいと私は思うわ……彼の負担になってしまうかもしれないけれど
        彼と一緒に居たいという事が、今の私にとっては一番の願いなの -- メルセフォーネ 2014-04-05 (土) 00:50:25
      • (三者の、聖杯への願いが語られた。穏やかであった空気は消えた。だが、それでもなお、平穏な時間が流れていた。優しい時が。)
        (……そこに、迫る者があった。孤児院に近づく黒い気配、重圧。絶望や憎悪、憤怒などを凝縮したような気配を放つものが近づいていた。)
        (非常に禍々しい気配。恐るべきもの。そんな気配を溢れさえるものが、孤児院の扉をあけ放ち、中へと入ってきた。)
        (靴音を響かせ、漆黒の気配、漆黒の衣装に身を纏った男が歩いてくる。)
        (その体には先ほどまで行っていた、戦闘の臭いが残っていた。既に塞がってはいるようだが、傷の痕もある。)
        (深い深い絶望を秘めた昏い瞳で、キャスターとメルセフォーネを一瞥する。これまでの雰囲気を破壊してしまいかねない、異形のものがここに降臨した。)
        (カグラのサーヴァントたる、バーサーカーであった。)
        (献身的な騎士というには闇が深く、とても食事をしている姿なども想像はできないだろう。その秘められた戦闘能力がかなりのものであるということは感じられるだろうが。)(初見のものは、カグラの説明とその実像に、乖離を感じるであろうか。)
        (男は二人から視線を外すと、静かにカグラの下へと向かい、影のように彼女の傍で控え始めた。)
        ……我が主。今帰還した。既に我らが敵は屠った。
        怪我などは、ないか。(自らの主人を気遣うようにそう言った。瞳に狂気を宿し、禍々しい気配を纏ってはいるものの、確かに理性はあった。)
        (そしてそのまま、影のようにカグラの傍で控えている。 -- バーサーカー 2014-04-05 (土) 01:48:03
      • (自身以外の、この聖杯戦争に向かう願い、それに至るまでの道程。今までこの戦いに身を置きながら、それを聞くことは敢えて避けてきていた)
        (自分の持つ願いと同様の切なる願いを、背負ってしまった過去を聞いてしまえば。自分の脆弱な心は迷いを抱いてしまうだろうから)
        (彼等にそれを問いかけたのは…恐らく、既に揺らぎつつあったから、だろう)
        (自身と友になってくれたメルセフォーネの、それを受け入れたキャスターの、二人の暖かさは。凍り付いてしまったと思っていた感情を、溶かしつつあった)
        (それが溶けきってしまえば、甘えとなる。何故、彼女達はその弱さを抱えたままで、戦えるのか)
        (きっとそれが知りたかった。まず語り始めたのはキャスター。世界との契約を果たしてまで、叶えたい願いとは)

        (母と会う為。ある意味でそれは自分の願いと似通ったものを感じられる)
        (彼の生前の暮らしは、過去は知る方法は無い。彼の明快な言葉からはそれを伺い知れない)
        (しかし、家族と会いたいと、そう願う心はこの世に生まれ愛を知るものであれば誰もが持ちえる想いだろうと、カグラは考える)
        (その願いの為…それだけではなくメルセフォーネに彼が抱いた心情も大いに関係しているのだろうが、彼女の幸せも願っている)
        (優しい人なのだろう。本来であればこんな戦いに身をおく事は彼にとって不本意な事の筈。それすらもこうしてこの世に現れた以上、利用すべきと考える大人らしさも彼は備えていた)
        (メルセフォーネのサーヴァントとして、それは他にいないと思わせる程に相応しく感じられた)

        (キャスターに促されるようにして続いた少女の語る”お話”)
        (ずっとメルセフォーネに抱えていた一種の違和感。この世の穢れ、その一切を排して育ったようにすら思える純なる心の持ち様)
        (それでいながら、彼女の聲は、表情は、時に老獪とも思えるほどに熟成したものを感じさせた)
        (その理由は、想像をしていたものの遥か上を行っていた。気性ゆえだろうか、いや違う彼女はそうと思っているのだろう。何重にも包まれて語られたそれは、つまり)
        (戦争の道具として利用されていたという事、そうして彼女は一人で、時に置き去られ…遠い世界で目を覚ました)
        (経緯も、役割も、全てが違うというのに…メルセフォーネと自分は、とても、とても良く似ていた)
        (あくまでも、そこまでは)
        (その先に語る彼女の希望は、自身の信念を揺るがし兼ねない言葉。心の奥底では分かっているけれど、ひた隠しして気付かないふりをしている事)
        (自分よりもずっと幼く、弱く見える彼女が…過去を、振り返る事はしても…それを取り戻そうとはせず、未来へ向かおうとしている)
        (その強さは随分と眩くて、視線を俯かせる。彼女が最たると言った、その願いは。語る通り、キャスターと)
        (…多分、自分ですらも。手を離したくないと言っている)
        (揺らぐ、揺らいでしまう)
        …貴方達は、強い…のですね、私には…決して…
        (固く決めていた筈の覚悟の揺らぎを、自覚し始めた頃…自分にとってはもう慣れた、メルセフォーネとキャスターからすれば異様たる気配が近づいてくるのを感じる)

        (その男を見て、安堵を覚えるのは…今、自分がある意味で追い詰められていた事の証左だろう)
        (やがて姿を表した自身のサーヴァントは対面する二人を気にかけた様子も無く、傍らに控えた)
        (それだけで今まで揺れていた心が嘘のように落ち着いて来る)
        …お疲れ様でした、"D"。…私の事は心配ありません、この二人は…少なくとも今は、敵ではありませんから。
        それよりも貴方の方が心配ですよ…手強い、相手だったようですね。良く、戻ってきてくれました。
        (労るように微笑みかける。それはメルセフォーネ達に見せる表情とはまた少し違う色がうかんでいて)
        …ありがとうございました、メルセフォーネ、キャスター。貴方達の願いを聞くことが出来て…良かった。
        (先程までは随分と緩んでいた糸が張り直されたような、凛とした声。彼女にとっての彼の存在が…この戦いにおける芯といえる事が伺える)
        …丁度良かったかもしれませんね、"D"。貴方の願いも、彼女等に教えて上げて下さい。…そのような話を、していたところなのです。
        (自分は何度も聞いた、彼の願い。幾多の絶望を越えて尚、折れる事無き信念を、今は聞きたかった) -- カグラ 2014-04-05 (土) 10:37:43
      • (脳裏に刻まれた、メルセフォーネの物語を聞く。フォノグラフに乗せたレコードが同じ曲を流しながら回るように、彼女の声は哀しい旋律を含ませながら語る)
        (最後の“願い”については、前に聞いた時と答えが違っていた。不覚ながら、涙腺にその言葉が響く。そして、少し、不安を覚えた)
        (「お互いに平凡な人間だったら、未来がさてどうなるか解らなくても、迷いなく確約を口にできたのだけれど」)
        (「聖杯戦争で、それを成し遂げられるのだろうか。僕は……」)
        (不意に目に入ったカグラの顔は、俯いていた。影を落とし、カップを抱えている。「思うところが、あるのだろうな、何か……」)

        (黙りこみ、感じた不安を飲み下す。カップを傾けるといつのまにか空になっている。ポットから続きを注いで、改めて口をつけた)
        (他に飲み終わりの人は居ないか、と、メルセフォーネ、カグラの手元を観る)

        (扉の向こう側に、もう一人の気配がある)
        (悪意、殺意、憎悪、そのどれとも違い、どれもを含む。喩えるならば、夜闇の無慈悲な暗さに似た、魔力の鼓動が伝わってくる)
        (覗かせた顔に、生気はない。光を宿さない瞳を見ると、心が真っ黒に塗り潰されてしまいそうだった。「なんて、哀しい目だ……」)
        (それと共に伝わるものがある。覇気か、闘気か、形容しがたい威容を纏っている。戦闘能力の高さが伺え、無意識にキャスターは身構えた)

        (カグラの隣に侍り、気遣い、また忠節を怠らないその姿を見て、ようやく彼が“D”であると気づくことができた)
        (俯き加減の表情が和らぎ、心底から来る安堵を見せる。“魔獣”のような彼はしかし、誰よりも相応しくカグラの騎士たる者のようだ)
        (カグラの表情はしゃんとして見える。“黒騎士”と“月角種”の二人は、揃うと神話の挿絵のように、似合う)
        イイエ。どういたしまして。それから、こんにちは、“D”。
        (予備のカップにハーブティを注ぐ。ティーブレイクどころか、食事の一切をとるイメージも彼には湧かない)
        (カグラの話しぶりからして、彼女の料理に口をつけることはあるようだが。カップを差し出す。遠慮されても、「まぁ、仕方ないか」というふうに)
        僕も、聞きたくありマスね。……アナタがどんな夢を描くのか。

        -- 打雲紙のキャスター &new{2014-04-11 (金) 01:10:31
      • (自分の過去と願いを語り、カグラに『強いのですね』と言われれば、小さく首を振った)
        ……ううん、そんなことないわ
        (私は、決して強くない。もし、私が強いのであるとすれば――……それは、きっと隣に居る彼のお陰なのだから)
        だから――……(そっとカグラの手を取って『大丈夫、貴方のサーヴァントも頼れる人なのでしょう?』と、柔らかく微笑んで)
         
        (キャスターにお茶のお代わりを聞かれ『お願い』と答えた瞬間に――……)
        (ぞわり――……と)
        (扉の向こうに在る、死の匂いを色濃く漂わせた重圧な黒、あらゆる激しい感情を顕在したかのような憎悪と憤怒の彼が)
        (夜の帳の闇の王の威厳を纏いながら現れる)
        (彼の体に染みる、戦闘の匂いや傷跡から漂う血の匂いが生々しく、聖杯戦争の匂いを漂わせていた)
        (この世の終焉を見つめる様な、悲しみと絶望の入り交じる目が私達を捉えれば、つい緊張と恐怖に身を縮めてしまいそうになる程で)
        (思わず、キャスターの傍によって、彼の服の裾を握る――……彼から安心を得るようにして)
        ……は、はじめまして……メルセフォーネ、です(かちこちに緊張したまま、拙い自己紹介をする)
        (彼から感じる殺意や戦闘力の高さや、恐ろしさに落ち着かず、流石バーサーカーである能力の高さを知るが)
        (すぐに主人の少女に傅き、報告と彼女を想いやる発言と態度を見れば……恐ろしいながら、彼女のお話通りの紳士的な性質に、驚きから落ち着きへ心は保たれる)
        (威厳や怖さが先に出てしまうが……騎士の様に少女を守る魔王の姿はとても絵になっていて)
        (同時に、彼女の事を大切に大切にしているのも伝わり――……『D』と呼ばれる黒騎士に守られる彼女の様は、穢してはならない少女の神秘性をより一層強く感じて、物語が今にも紡がれそうな、情景)
        (きっと『魔王に守られる神秘的な少女』のお話は、聖杯戦争を通して紡がれていくのでしょうけれど――……そのお話の結末は、優しい者であると良いな、と願う)
        (闇の眷属に相応しく、食事を取る等の生活的なイメージは無いけれど、先程の彼女のお話から、鹿肉のスープを美味しく食べていたお話を思い出す)
        (キャスターがお茶を淹れて彼に用意するのを見ながら、Dに対する緊張や恐怖もやや緩む――……怖くて、戦闘能力が高いとはいえ、彼も今ここへ争いに来た訳ではないのだから)
        私も、Dさんの願いのお話を聞きたいです(キャスターに続いて、彼が語り出すのを待つ――……) -- メルセフォーネ 2014-04-11 (金) 03:02:41
      • 問題はない。どのような強敵であれ、目の前に立ちふさがる悪は、全て切り裂くのみだ。心配することは何もない、我が主。
        (カグラに心配は必要ないと短く告げる。)
        (自らの主に、己の願いを教えてほしいと言われると)
        ……そうか。我が主が、そういうのであらば。
        (目を伏せ、腰に着けていた剣を降ろす。)
        (キャスターから出されたハーブティーを一瞥する。主がそれを飲んでいるのを見れば、一口自分もそれを口にする。)

        ……俺は、我が主の従者だ。
        (メルセフォーネの自己紹介に、それだけ答えた。)

        我が主の願いこそが我が願いだ。
        我が主の命は我が命、我が主の四肢は我が四肢。そう考えて、この聖杯戦争に臨んでいる。
        (主の様子からして、目の前の二人について信頼はしているようであった。お互いの願いについて話した後のようらしい。)
        (ここで、自分の願いは主の願いと同じだと告げて終わることもできるが、それは主の望むところではない。)
        (そう察すると、再び口を開く。)
        (男の一挙動一挙動に、深い絶望と闇が込められている。どれほどの絶望を味わえばこのような黒い波動を出せるのかと思われるほどに。)
        (だが、この男はそれに沈みきってもいない。揺るがない信念がそこにはあるようだ。)
        (それは必ずしも、人からは正しいとは言えないものかもしれない。狂った故に歪んだものかもしれない。)
        (魔王となっても。絶望に身を焦がしても。神への憎悪に燃えていても。)
        (まだ彼は“勇者”であろうとしているのだ。)

        俺の願いは、「失った全てを取り戻すこと」だ。

        ――つまりそれは、世界を救うことだ。

        あらゆる、全てを。俺の願いの果ては、我が主と同じところにある。

        我が主を守り、我が主の為に戦い、そして……世界を救う。

        世界で無限の悲劇を演出する天に在るものを殺し、世界を救うために。我が主の願いを果たすために。

        そのために、俺は聖杯戦争を勝ち抜く。俺の前に立ちふさがるあらゆる邪悪を滅ぼす。主と、世界の為に。

        それが、俺の願いだ。数多の絶望により、魔王となったとしても、俺は勇者となって世界を救う。それは、俺がどんな存在であれ、変わらない。

        理不尽な運命に晒され、滅んだ世界を、滅んだ者たちを、俺はこの手で救う。

        聖杯は、そのために必要なものだ。俺が運命という螺旋から逃れるための。

        ……故に、俺は戦い続けている。それだけだ。俺が望むのは、主を守り、主の願いを叶えることだ。その果てに、俺の願いも叶えられる。

        (男の話は男の過去を知らなければよくわからないものだろう。勇者と魔王を自称し、世界を救うという。)
        (何かしら深い深い絶望を受け、そして男の大切な何かが失われた。それを取り戻すために戦っているのだという。)
        (揺るがない信念、己が絶対に正しいという狂ったような信念。それが垣間見えるだろう。)
        (それは深い絶望を背負った故に。二度とそれを繰り返さないと誓った故に。湧き上がる思念であった。) -- バーサーカー 2014-04-11 (金) 21:49:01
      • (やって来た自らの"騎士"に二人が戸惑う姿を見て、改めて感じる自身のサーヴァントの異様さ)
        (同じサーヴァントであるキャスターでさえも威圧される、その存在。ある意味当然なのかもしれない)
        (自身のサーヴァントは…英霊であって、英霊ではない存在といえる。この世界にもいた事がある、という記録が存在こそしている…しかし)
        (彼は本来異世界の存在であり、彼の伝説はどうあってかこの世界に流れ着いた、本当の意味での伝説)
        (呼び出した自分自身ですら、彼が呼応しこの世界に降り立った時には少なくない驚きを覚えたものだ)
        (まるで、お伽噺の勇者様が自分を救う為に顕現したかのような感激だった…それも、彼の威圧感に絆されすぐに消えてしまったが)
        (ともあれ、この穏やかな空間にはそぐわない存在である彼が来たことで、彼等に警戒を与えてしまわないか…少し、心配であったが)
        (自分に従う姿を見て、緊張を解いてくれたようで少し、安心する)
        (緩み切る事を良しとは思わないが…彼等との友好関係をこの場で切り離す事は、不本意であったから)

        (他者が介在したから、だろうか)
        (何度も聞いた、彼の願い…その中に、自分も聞いたことが無かった事実があった)
        (…知りえてはいた事である、何せ、それは伝説の中で語られていた事。彼は…切望していた)
        (邪悪なる意志によって歪められた運命の螺旋から逃れる術を)
        (それをその口から聞く事は…ただ、記されていた事実として知る以上の重みを感じた)
        (そして、それは)
        (…彼もまた、未来を求めているという事を、カグラに知らしめる)

        …聞いての通りです。彼の願いが、私の願いの先にある以上。私は、立ち止まる事が出来ないのです
        勿論、私にそのつもりはありませんが。…我々が歩みを止めない以上…貴方達は、この戦争から降りるという選択を考えておいた方が良いですよ
        私の"D"は負けませんから。………すみません、今のは失言ですね。この場で、そんな話をするつもりは無かったのですが
        (軽く首を振る。少女がこの聖杯戦争という舞台において被り続ける仮面が、どうしても他者を排する方向での思考に向かわせて)
        (ハーブティを啜り、カップを空ければキャスターを見上げ)…半分程、注いで貰っても良いですか。余り飲み過ぎると、夜に差し支えそうなので。
        …"D"も、警戒は必要ありません。今日はゆっくりと、身体を休ませて貰いましょう。彼はキャスター…この陣地の中にいる以上、心配はいらない筈ですから。
        (敢えて闘争から程遠い言葉を投げかけて、少し歪となった空気を取り戻そうとする。それは、今カグラにとっても必要なもので)
        (…過去を求めて戦っているのは、今この場で自分だけであるという、事実を。考えずに済むように)
        そうそう、明日の朝食は私が作る事にさせて貰いましたので、"D"にもお手伝いをお願いしますね。
        (今はこの安穏に、身を任せる)
        (危ういバランスで成り立っている。だからこそ尊い、安穏に) -- カグラ 2014-04-12 (土) 23:04:51
      • (カグラ。メルセフォーネ。そしてキャスター。その誰もが、根本的に似通った“願い”を抱いている。すなわち、“大切な人のため”のもの)
        (“D”は大切な主人に全てを捧げている。しかし、そこに根差すものは三人とは大きく異なっている)
        (「世界を救う」)
        (臆面もなく言える人間が、この夜にどれだけ存在するのだろうか。冗談でも、軽口でも、大言壮語でもなく心の底から“D”はそれを言う)
        (勇者、魔王。というキーワードが果たして何を意味しているかは見当がつかない。物語の中のそれであるなら、本来どちらも相容れないもののはず)
        (しかし、現実とあらば。その言葉は善悪と同じく、視点で百八十度立場を変えてしまうものだ。果たして彼は、“魔王”になれども自らの“勇者”を貫くのだと言い切った)

        (狂信的とも言える正義だった。どのように無残な目に遭おうと、決して折れない。決して挫けない。それが絶大の不幸を招くとしても立ち上がる)
        (“英霊”らしい英霊であった。逃れられえぬ運命を背負ったモノが持つ気配に圧倒される。「これが、“D”か……」)
        ……いいんだ。それが、君たちの意識の強さのあらわれだろうから。
        (カグラの宣誓を聞き、微笑んだ。それは、余裕でも、自嘲でもない。尊敬に近い思いがあった)
        僕らも負けない。負けずに、この聖杯戦争で生き抜いて見せるさ。……必死でね。
        マ、今日はそれを忘れろとは言わないけれど、心身を休めてくれたマエ。結界は随所に張り巡らしてある。また、大きな魔力が接近すればわかるようになってる。
        (便乗し、カグラの求めるような安寧の空気を引き込む。目を背けずに、ここに、確かな互いの信頼があるのだと再確認をするために)
        (いつか来る、この安寧を打ち壊される日までを、必死で、楽しく生きるために)
        (「僕がメルセフォーネに与えられるものは、こういう日々のみだ」「産まれた頃から僕が求め続け、そして手に入れ、維持をし続けたものだ」)

        ウム、頼むよ。
        有意義に過ごそう。

        (「“D”もお手伝いをするのか」)
        (この言葉は言ってよいのやら、悪いのやら。気の抜けたことを考えると自然に笑い顔が浮かぶ。脆いけれど、確かにここには安穏があった)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-04-14 (月) 22:38:48
      • (簡素な自己紹介をされれば、その返答に小さく頷く)
        (先程の様子から、本当にカグラちゃんの従者だなぁと思いながら、ハーブティーを飲んで)
        (『我が主の願いこそが我が願いだ』と答える様子からも、本当に自分のマスターが大事である事が伺える)
        (彼の世界の中心が、カグラちゃんで回っているかのように――……)
        (けれど、何故深い悲しみや闇が、彼の眼に宿るのだろう……? そう疑問に思った答えも同時に知れて)
        (世界を救う事、失った全てを取り戻す事が願い、勇者となって世界を救う事が願いだと知ると――……)
        (何故か、宗爛様の顔を思い出す――……それはきっと、彼の願いと)
        (嘗ての大爛帝国の為に、自ら剣となり戦いの渦中に身を投じながらも、処刑されてしまった主君と重なったから)
        (きっと、彼の守りたかった……けれど、失ってしまった世界はとても大切なものだったのだと想う)
        (彼の過去の詳しい事は分からない……けれど――……勇者であり魔王であるという、一見矛盾した事を言っている様に聞こえるけれど)
        (『世界を救いたい』という事が……彼にとって大切な願いなのだろう)
         
        (彼の願いも、分かった)
        (そして、カグラちゃんの言う事も……コクリと頷きながら、最後の『失言』にだけ小さく首を振る)
        ううん、いつか……最悪の事態で戦ってしまう可能性も、否めないし……もし、最後に二人だけ残ってしまったら戦う事を止むを得ない様な状況もあると思うわ……
        『Dさん』から戦闘力の高さは伺えるし、自信があるという事は大切だと思うから……失言ではないと思うの
        (『勝ち進む』には、相応の自信や決意も大切だと思う……寧ろ、私は揺らいでばかりでいるから、見習わなくてはいけないけれど)
        (『僕らも負けない』という、彼の言葉に頷いて)……そうね、私達も勝ち残れるように全力を尽くしましょう……
        (彼女がDに警戒を要らないと言えば、緊張した空気も緩やかになって、続くキャスターの言葉に、自分も続いて)
        キャスターの作った結界は、凄いから……敵の侵入も直ぐに分かるし安心してゆっくりしていってね(ゆるりと微笑む)
        カグラちゃんの作る朝食、楽しみだな(何を作るんだろうと思いながら、早速明日の朝ごはんへと思考が泳ぐ)
        (緊張も解けて、穏やかな空気に戻りつつありながら――……想う)
        (聖杯戦争の、敵同士でも)
        (今、彼女達がここに居る間は……聖杯戦争の事を忘れて、お互いの過去やしがらみも心の片隅に寄せて)
        (今、この間だけは――……『只のお友達』として、束の間でもいい、楽しい一時を過ごせますように――……と) -- メルセフォーネ 2014-04-15 (火) 00:57:35
  • (商用で酒場のある街、混沌の城の外に広がる世界を訪れた帰り道 家路をいそぐ人々とは逆方向をめざして歩いていた)
    (すれ違う人々の顔はだれもが皆生き生きとしていて、見捨てられた城の住人たちとは大違いだった)
    (実際、転移が起こるたび一定数の住人が瓦礫の城を去っていくのだ 去るものは追わず、しかして来る者もまた拒まず)
    (そうしてヒトが、モノが、カネが外界と交わり還流していく そんな果てしない生々流転の上にあの城は聳え立っているのだ)
    (のどかな暮らしがここにある その牧歌的な世界にも、間もなくおびただしい量の銃器が流れ込むことになるのだが)
    (セアラ・アンダーシャフト 武器商人、15歳 今日の従者は機械の四肢持つ鞄がひとつ 誇らしげな足取りで少女の後を追うばかり…) -- セアラ 2014-03-26 (水) 23:14:34
    • (酒場のある町で、今最も賑わいを見せている街、瓦礫城)
      (人も時間も、流動し交差しているその町は……人で空気が流れ、先月の裏路地よりはまだいくらかマシだった)
      (――……と、言うのも裏路地の人よりも、心の中が出来たばかりの街で、弾んで楽しそうなせいもあり、人の嫌な、どろっとした側面の流れ込みが少ないからだった)
      (人混みは苦手だけれど――……今日の私は、どうしても、ここへ来なければならない)
       
      (それは、いつもの夢で――……彼女の姿が『視えた』から)
      (それも、私と彼女が『出会っている』場面であり……これは何か会いに行かなくてはならない都合があるという事)
      (タロットの数字で、日にちと時間、場所等を調べた結果……この街に行きついた)
      (ペンタクルのカードがやたら目立った事から……お金の匂い、がする……恐らくは商人等だろうか?)
      (連鎖読みで、一緒に外見の特徴を視てみれば、Princess of cupsで、まだ若く色素の薄い金髪の女性像で在る事も、水鏡で映った像と一緒であり、同時に『確かな情報』であると確信する)
      (人目を引いて美しい女性だったから、探せば目立つし、すぐ分かるだろう――……)
      (占った時間、場所の通りに――……居た!)
      (軽やかに美しい足で、颯爽と歩いて行く彼女は、Princess of cupsの通り、可愛らしさと気品を兼ね備えた少女だった)
      (彼女の前に出れば、声をかけて足を止める)
       
      あの……セアラさん……? で、お名前は合っているでしょうか?
      私の名は、メルセフォーネと申します……もし、お時間があればお話をしたいと思っています…… -- メルセフォーネ 2014-03-26 (水) 23:35:09
      • (人波の中、見知らぬ少女に呼び止められて、かくんと前のめりに立ち止まる 足を縫いとめられたまま首をめぐらせて)
        セアラ・アンダーシャフトといえばこの私をおいて他になし…お外で呼び止められるなんて思っても見ませんでしたよ
        だって、いくらなんでも「早すぎる」じゃないですか お外の土地で精一杯いい商売して、顔と名前が売れる頃には時間切れ…次の場所に転移しちゃってますし
        メルセフォーネさん、と仰いましたっけ いいですよ、私も興味がわいてきましたから 私のことを知ってるあなたは一体どこのどちら様でしょうね…何か内緒のお話でも? -- セアラ 2014-03-27 (木) 00:07:36
      • (足を止めて、美しいプラチナブロンドの印象的な少女の瞳をじっと見つめる)
        (正式には『セアラ・アンダーシャフト』という名前なのかと思いながら……そして、どうやら彼女は話から聞けば凄腕の商人である事を情報として得る事が出来た……とはいえ、お私が彼女の客に成るかと言えば、タロットや魔術書を扱うならのお話であるし、脱線してしまうから置いといて――……)
        (『……何か内緒のお話でも?』と言われれば、頷いてお話を切り出した)
        ――……お話から、商人の中では腕ききで『知る人ぞ知る』というお方であり、売れるという事から人気のある方である事は理解できましたが
        生憎私は、貴方の御客に成るかどうかはわかりませんし――……貴方の事は、予知夢のお告げがあり、占いで今日、この場所をこの時刻で通る事を、知る事が出来たからです
         
        ……直接、私の夢に現れた訳ではありませんが――……貴方で7人目
        今まで私は、6人のマスターと夢でお会いしています
         
        (そこまで言えば、聖杯戦争関連者である事が自然と、分かるだろう)
        (改めて、生死気に名を名乗った彼女に、スカートの裾を持つと丁寧に頭を垂れ、挨拶する)
        メルセフォーネ・モイラと申します……興味を持って頂けて光栄です、出来ればどこか……立ち話も辛いのでお店へ行きませんか?
        ――……願わくば、なるべく人が少なく 話も話ですし、会話の漏れる可能性の少ない良いお店を御存知ですと、ありがたいです
        (此方の方は、詳しくないですし……と続けて) -- メルセフォーネ 2014-03-27 (木) 00:20:58
      • 信じますよ 何でもありのお城から来ましたから 風水も功夫も、辻占いの道士さまも…因果の糸を手繰る術があると、そう信じています
        でも名前までわかるなんて、なかなかのご利益じゃないですか でも、後の半分はどうでしょうね…まだまだ勉強中の身ですよ私は
        (断片的に示される話をつなぎ合わせれば、改めて問うまでもなく数奇な縁で結ばれた関係を悟って)そうですねー、これも何かのご縁でしょう!
        夢のお告げはなんと言っていました? 私はあなたにとってどういう存在になると? そういうのは本人の心がけ次第、みたいなお話です?
        (返礼に武器製造販売『下軸工業公司』董事長の名刺を渡す)あ、地元の方ではないんですか…でしたら、この間使ったお店にご案内しちゃいましょうか
        お取引できると思いますよ あなたの見たこと聞いたこと、その情報がほんとうに価値あるものなら、金貨の代わりにだってなっちゃうんですから!
        (その胸に正面きって刃をつき立てることすら苦もなく用意に達せられそうなほど無警戒に 秘密の会合場所まで迷いなく進んでいく) -- セアラ 2014-03-27 (木) 00:50:17
      • (人によっては『胡散臭い』で済まされ、怪訝な眼で見られる可能性も大いにある為に、内心冷や汗を掻いていたが――……)
        (あっさりと信じて貰える事に、安心すると共に拍子抜けした……どうやら現在、占いが流行っているせいだろうか?)
        (確かに現状の星周りを見れば、天を運行する星は、魚サインにキロンと海王星が入っている……どちらも、占い等に関連する星でもあり――……ここから『神秘的な物、目に見えないもの、直感、あやふやなもの』を使用して未来を見据えるのには、最適な運気でもあり、自分自身を癒し、自分を見つめるのに適して、更に占いや魔術をするのであれば、最適な機関であるともいえる)
        (……勉強中、という事は彼女も多少は、その辺の心得もあるという事か……)そう、ですか
        怪しまれず、嬉しい限りですが――……生憎、私は予知夢で未来を見据える事が出来ますが……自分の事は視えません
        他者の事は視えるけれど、今回は私自身の未来に関する事なので……詳細までは。ただ、こうして貴方と出会う運命は定められていた事は確かなようです
        (名刺を頂くと、頭を下げながら『この紙は何だろう……?あ、彼女のお店と名前、かな?』と思う、文化が違うので、よくわからないが大事なものである事は分かり、大事に鞄に仕舞う)
        はい、私は遠くの国の出身で……此方も、来てからあまり月日は経っておりません…… 本当ですか?ありがとうございます(案内して貰えると知ると、人懐こい無垢な笑顔を向ける)
        お取引――……そう、ですか…… うぅん、でも人は怖いですし、人混みは苦手なのもあり、商売には向かないと思います
        (苦い顔をする事から、思った事は素直に顔に出す性格の様だ……素直とも言える)
        (セアラに案内されて付いて行きながら『随分、あっさりとして度胸の据わっている子だなぁ……とか、しっかりしているなぁ』と、ぼんやりと思っていた)
        (美しい、プラチナブロンドが風に流れる姿を見ながら、どんな子なのか興味を持って) -- メルセフォーネ 2014-03-27 (木) 01:07:08
      • 便利なんだか不便なんだかわかりませんね…あなたが未来の事を夢に見られるとして、明日死んでしまうとしたらどうされます?
        自殺志願者でもなければいちおう防ぎには行きますよね そして未来は変わるかもしれない 変わらないかもしれません
        でも、あなたが手を尽くせば夢見た未来が訪れなくなる可能性はある…その時点で、あなたの見たものは予知夢ではなくなってしまう…
        だから見られないんじゃないですか? 「未来の夢」っていう考え方そのものが大きな矛盾を抱えてしまっていますし…収拾がつかなくなってしまうのかも
        お店の名前と、場所と、連絡先です 瓦礫城にお越しになる時には是非お立ち寄りを…「あんだーしゃふと・いんだすとりーず」ですよ 正しい音は別にありますけど、それで意味は通じます
        あなたの情報と、私の商品…こちらの現地通貨とか、宝石でもいいですよ…の等価交換です! 私、そんなに怖いですか?(くすくす笑って)
        (五分後には奥まった席でメニューを開いていた)お茶にします? それとも何か軽いお食事でも? お付き合いしますよー
        今日出てる中だと洋梨のタルトがおいしかったですねー チョコレート系もなかなかですよこのお店は!
        それで、あなたもマスターさんなんですよね(店員さんを呼んで)なにか、誰にも譲れないような…大切なお願い事でも? -- セアラ 2014-03-27 (木) 01:31:05
      • ……そう思うわ……(目を瞑る『もし、私自身の未来が視えて居たら――……きっと、あの時の未来は良い方向に変わったかな?』と、傷心に浸りながら)
        その可能性も否めないわ……殺される可能性は否めない(只でさえ、私の図は暗殺を強く暗示している可能性も否めないから――と思いながら)
        そうね、経験上未来は『在る程度』は確実にそれが起こる事になる、それが宿命……変えることはできない命運
        けれど、運命は変えられる――……故に、私が未来を見て、それに手を加えてしまう事によって、他の人の運命や未来にも影響が出れば予知にはならない
        例えば『私が明日死ぬ』夢を見たとして、最大限注意して……死ぬ未来を回避してしまえば『予知』ではなくなってしまう
        故に、私が見れるのは、自分自身では変えられない運命なのだと思うわ……だから『予知夢』に成りえる
        今はそんな事よりも……大切なのは他のお話しなので、未来や占いについては重要ではないから良いですが……
         
        御丁寧に、ありがとうございます――……あ、はい えっと……あんだーしゃふと・いんだすとりーず……(こくりと頷く)
        ……情報……何か持ってたかしら? 成程、此方のお金は助かります……宝石は場合によっては欲しいかもしれませんが、今のところは必要でもないです
        (怖いですか?とクスクス笑われれば、唾を飲み込む――……正直言えば、苦手なタイプだ)
        (自分は、直感や神秘能力に優れるが、地に足は付いておらずふわふわしている……隙を見せると言いくるめられたりしかねないし、それに気付かないかもしれない)
        (例えるなら、彼女は狐側を纏った、上品な子女の様だった……見た目がお嬢様っぽいのもあるが、何より『真意』が見えてこない)
        (本心を上品に包み込み、自分の武器や棘を隠し、柔らかで優雅な印象を人に与える――……嗚呼そうか)
        (ちょっとこの人、クリューエルに似ているんだ……と、思う。あそこまで露骨な禍々しさや毒の華を感じないけれど)
        (けれど――……だからこそ、だからこそ……怖い)
        (本性を、本当に上手く隠しきっているから 底が、読めないから)
        (そして何より――……私に恐怖を植え付けた女性と、上品さと仮面と立ち周りの上手さが似ているから)
        (一歩間違えれば、喰われてしまう気配が)
        (浮かない顔で、メニューを見せられるが、食事どころか甘い物も碌に通りそうにない……食べると直感も鈍るし、潜在意識の働きも弱まる)
        (いや、逆に少量の甘いモノ程度なら……寧ろ高める事に使う事も出来るし、飲み物だけだと明らかに彼女には気を許していないサインにも視えてしまうだろう)
        (紅茶にしよう、出来るだけ飲みやすくて軽い……ヌワラエリヤなら、花の様な香りで落ち着くと思うわ)
        私は、ヌワラエリヤで……えっと、そうですね……あ、洋梨のタルト美味しそう。お勧めの様ですし、それで……
        (一先ず、落ち着く為に水を一口……)
        ええ、その通りです――…… その事で貴方にお話を
         
        誰にも譲れない様な、と仰いますが――……どのマスターも皆様『争いから降りろ』と言われて降りないと思うんです
        もし、貴方も私に『今すぐ戦いから下りて下さい』って、言われてそうなさらないでしょう?
        (嗚呼――こういう会話は苦手だ……けれど、クリューエルの貴婦人のお茶会に付き合わされた緊張と、そこで口を選ぶ事を教わったから……まだ、マシかもしれない)
        (嫌な思い出だったけれど……自分の糧になってくれているのかもしれないわ、と思いながら)
        いえ、決してそのような事を言いに来た訳ではないのです……ただ
        どのマスターさんも、どんな願いを持って……戦いに挑んでいるのかそれを聞きたくて皆に伺っているのです
        何故、貴方は……聖杯戦争に参加して
        何を望み、何を欲し……何を得たいの……? -- メルセフォーネ 2014-03-27 (木) 02:21:09
      • あなたが望もうと望むまいと、もうテーブルについてしまってるんですよ その向かい側には、私みたいな他のプレイヤーが座っています
        私はあなたと握手することもできますし、もしかしたら…愛しあうことさえできてしまうのかも その反対に…
        テーブルの下で毒の針を突き立てるコトだって(厚切りのガトー・フリュイをフォークで裂き、他愛もない世間話に興じている様な話しぶりを続けて)
        私はお医者さんではありませんし、ましてや占い師でもありません なので、メルセフォーネさんの迷いにきくお薬をさしあげることはできません
        でも、商人として言わせていただくならば…見られてますよ、あなたの仕草ひとつひとつが お友達から、敵になるかもしれないヒトから…そして、あなたの兵隊さんからも
        何をしたいのかと仰いましたね 武器商人が戦場にやってくる理由、わかりませんか? 商売ですよ、いい仕事をしにきたに決まってるじゃないですか
        もっと言えば、「仕入れ」でしょうかね 英雄とよばれた人たちの武器ってどんなだろうとか、考えてみたことありません?
        人に逸話があるならば、その英霊が命を託した武器にも逸話があるはずです その武器を作った人も、売った人もいたわけですよね
        そんなステキな武器を買い付けられたらどうなります?……考えてもみて下さいよ、震えが来るほどのいいお取引ができちゃうじゃないですか!
        英霊の宝具や聖遺物、一緒に集めてみませんか? いい値段で買い取りますよ 今の話、頭の片隅にでも覚えておいて下さいね
        切った貼ったの刃傷沙汰も、人の願いも生き死にも興味ありませんけど…聖杯はちょっと別枠というか あれもいい商品になりますよね
        バンノウのガンボウキとやら、あなたが十分な対価をご用意できるのならお売りしますよ 私、武器商人ですから それで、あなたはどうしてこの戦争(パーティ)へ? -- セアラ 2014-03-27 (木) 20:28:40
      • ………………
        (その通りだ、どうあろうが既に『聖杯』というパーティのチケットを手に入れ、そこに招かれた客はすべて揃っている)
        (……その後ゲストが、どう動こうと自由である――……彼女がガトー・フリュイをフォークで突き刺す様に、私を陥れようとするのも――……)
        ………………
        (言葉は、無い その人の仕草を見る事は、相手の無意識の癖や思考が出てくるし、自然と本心も出やすいのもあるし――……)
        (『観察する』事は、実に多くの事を学べ、そこから相手に優位に立つ情報も、自然と得られるのだから)&br:  
        ……商売?(怪訝な顔をする――……が、思う『あぁ、そうか――……この子は根っからの商売人であり、仕事を楽しんでいるのか』と)
        (私には、彼女の楽しみの全ては分かりかねるが、成程……商売人であれば『英雄の宝具や聖遺物』というのは、価値のある品物であり、取引に使いたい訳なのか――……と)
        欲しい人には喉から手が出るほど欲しい代物である事は、理解できます……それに、ここは冒険者の集う街の様ですし、一層高値で売れるでしょう……人気のある英霊の品物でしたら尚更
        片隅には置いておきますが――……生憎、平和主義なので戦利品を得る機械があるかどうか……
        そう、願いも無い……聖杯すらも貴方は売り物にするという訳ね。お仕事(商売)に恋しているのは理解しました……
         
        私が参加したのは、願いを叶えたいからですが……その願いも幾つかあるわ
        一つ目は、昔死んでしまった恩人の手をもう一度だけでいい……触れてお礼をしたい事
        二つ目は、幸せだった時の、過去居た人々の所へ戻りたい……けれど、この二つが叶う時は、同時に私も死ぬという事
        時を戻した所で、同じ歴史を繰り返すだけですが……私はそれはしたくないです……そして、願わくば『生きたい』
        これが、三つ目の願い――……けれど、生きたいとはいえ……今の世の中に私の知り合いも仲間も居ないし、途方に暮れるでしょう
        願いは幾つかありますが……自分でもどれを選ぶのがベストなのか分かりません……今願いを決めた所で皮算用でもありますし&br: (お茶を口に含む――……柔らかな花に似た香りが、心を癒してくれる) -- メルセフォーネ 2014-03-27 (木) 23:00:06
      • いいですよ お取引ってアレですもんねー あなたが売りたいものがあって、私が買いたいものがある時にだけ成り立つものですから
        もちろん逆パターンもありますよ! 「なんじ平和を欲さば、戦への備えをせよ」なんていいますし…好き好んで戦争を始めたんでしょう?
        でも、それって聖杯がないと叶わないお願いなんです? メルセフォーネさんただお一人の時計の針を戻したいだけなら、幻に逃げれば済む話でしょう
        私は扱いませんけど、そういうおクスリだって出回っていると聞いてますよ…何でも、そのおクスリを使えば忘れたはずの記憶まで再生されてしまうとか
        望みは何かとおっしゃいましたね 私の願いは…アンダーシャフトの理想は聖杯ごときに叶えられるものじゃありません
        鉄を鍛えて武器を生み、世に争いがあれば駆けつけ、英雄の卵と共に戦って、大きなお金の流れを築く…何のためにそんなことをすると思います?
        一人でも多くの人が幸せに暮らすためですよ 私の相手はあなたではありませんし、他のマスターさんでもありません
        私の敵は…この世の中の後ろ暗い部分、誰もが目を背けるような場所に巣食った「貧しさ」そのものです それこそ悪の最たるもの…
        生きることは戦いですよ、メルセフォーネさん 貧しさとの戦いです その戦いに聖杯ごときの出る幕があるものですか
        (三切れ目のガトー・フリュイをよく味わう事も忘れてお茶を流し込み)さっきのお話、ちゃんと考えておいて下さいよー? けっこう真面目なお話ですからね! -- セアラ 2014-03-27 (木) 23:41:27
      • ……ですね、双方一方的では――……私が売りたくなくては駄目ですし。そして貴方が欲しいと思わなくては成り立ちませんから……
         
        …………           幻に……? 
        (その言葉を聞くと――……はたり、と)
        (目から一筋の涙が流れて)
        ――――――――……(それを始まりに、ぼろぼろと、真珠が零れていくかのように涙が流れていく)
        本当に――……本当に私は幻の中に居られるのなら――……っ
        そのまま一生目が醒めなくていい……!幻の中で溺れて、現実の世界から消えてしまえればいいのにッ……!
        ――……なのに…… それを願えない場合はどうしたらいいの……? ねぇぇ……
        『――……答えてよ。貴方、商人なんでしょう……?"何でも取り扱う――……!" だったら今すぐ私に答えを売ってよ!!
        (鞄の中から、嘗ての大爛帝国の、今はもう流通していない金貨を取り出して、積み上げる)
        生きる事は戦いって言うけれど……じゃあ、何で
        私は、周りが朽ち果てていく戦場で……何もできないで、独りでも生きていけない私が……生き残ってしまったの……?
        食べる物も無くて、最後には死んだ味方兵の血肉を食べながら生きてまで……?
        ……一体、私は――……何の為に――……!
         
        誰でもいい……答えを頂戴よ……!
        私はあの時!どうしたらよかったの!!
        役立たずなのは分かっていたのに、あのまま残って――……ああ……あああああああああっ……!
        (そのまま、感情が高まって、啜り泣きから声が大きくなる)
         
        役立たずの私じゃなくって、宗爛様が生きて居れば良かったのに!! -- メルセフォーネ 2014-03-28 (金) 02:46:17
      • (さして広くもない店の中、周りの席の話し声がはたと途絶えて ふたたび微風が立つように遠慮がちなざわめきが広がる)
        死の商人にそれを聞きますか(近づいてくる給仕に手振りだけで人を遠ざけさせて)ずいぶん珍しいものをお持ちですね
        コインマニアでなくてもわかりますよ 前に一枚だけ同じものを見たことがあります かつて強盛を誇った大帝国、今は歴史に名をとどめるばかりの…
        (戦争の歴史を紐解けば、混迷の時代にあっては皇統に連なる貴人が死を賜ることさえ特筆に価することではないことがよくわかる)
        (古今の戦史を叩き込まれた身でなければ聞き流していたかもしれない 「宗爛」といえば、お決まりの理由で処断された敗戦将軍の名だ)
        (よくある歴史の一ページ、もとい一ページにも満たない史実 教科書にも載るほどでもなく、歴史マニア向けの本で一行で説明される類の)
        (彼女の想い人が歴史上の人物と同じであるはずがない 重度の知的モノマニアや自己暗示の可能性に思い至る それとも、本当に?)
        どんないきさつがあったか知りませんけど、たったひとつの冴えたやり方があると思うから間違うんですよ
        どうすれば正解だったとか、いかにも正しい答えがあったみたいに考えてしまう どこかに救われる道があったと思いたくなる
        私も時々やっちゃいますけどね そんなご都合主義のハッピーエンド、あったと思います? 本当に思ってます?

        甘い幻想に包まれて、醒めない夢を見ていたい…かといって死ぬわけにもいかない わがままな方ですねあなたは
        でも、お売りしますよ お客さまのわがままにお応えしてお金を頂いてるんですから(大狗を招きよせ、その背から壮麗な短剣を選り抜いて)
        爛朝ゆかりの品物です 大罪を得て刑死した、とある貴人の持ち物でした 副葬品もなく陵墓もなく、時代に呑まれて消えた人の

        …なぜって、答えはすでにお持ちのはずですよ 気付いてないのか、あえて目を向けずにいるのかわかりませんけど
        それはあなたが、どんなに惨めで無様でも! 生きて戦うことを望んだからに決まってるじゃないですか!
        理不尽な目に遭うことも承知の上で、上等だよコノヤロウって覚悟を決めたから死なずに済んだんですよ
        あなたはゲームから降りることを選ばなかった それだけですけど、立派だと思いますよ…もしかしたら、あなたの大事な王子様よりも
        戦う意志をもつ人に戦う力を差し上げる それが私の商売です あなたみたいな方は好きですよ、メルセフォーネさん… -- セアラ 2014-03-29 (土) 16:00:19
      • (あの時に、私が長い間眠っていなければ――……)
        (あの時に、私が傍を離れなければ――……)
        (あの時に、私が少しでも戦力に成る強さがあれば――……)
         
        (幾つもの後悔が、頭の中に巡っては消えてゆく……それはまるで万華鏡の様に)
        (或いは、涙で想い出が滲んで流されてしまうかのように……)
        (目の前に座る彼女の事も、お店の事も、周囲の事も忘れて、ただただ過去の苦い思い出の中に囚われて、泣き喚く)
        (『ずいぶん珍しいものをお持ちですね』と、言われて返事を返そうとしても……喋る事も出来なくて)
        (私はただただ、泣きじゃくる)
        (歴史の闇に淘汰された主君の名を泣き叫ぶ……歴史知識に精通している彼女には、一歩間違えれば狂人か、妄想と現実の境が既にあやふやで、頭が可笑しい人に映るかも知れない――……けれど、彼女の積み上げる大爛帝国の昔の通貨も紛れも無い本物……ならば一体彼女は、何処でこれを積み上げる程まで入手したのだろうか?という謎が消えない)
        (散々、周囲も気に留めず泣きじゃくっていたが――『たったひとつの冴えたやり方があると思うから間違うんですよ』と言われれば、涙は止まらないものの嗚咽は抑えられて)
        (『どういう事?』と、答えを求めるかのように――彼女の話に耳を傾ける)
        (――……あぁ、そうか……私が求めていたのは都合の良いハッピーエンドだったのか)
         
        (……そうかもしれない。もし、本当に夢から醒める気が無いのであれば……きっと以前、眠りに囚われて居た時に、本当に目覚めなかったと思うから)
        (なのに、何故あの時に……私はずっと嫌だった現実へと戻ったのだろう……?)
        (撥ね退けられてしまうかと思った金貨は、対価に成りえたらしい……答えが貰えるなら、喉から手が出るほどに欲しい)
         
        (涙を拭って彼女の方を見れば――…… それは、見覚えのある短剣で)あっ……!これは、虎の姫様……喬爛様の……
        (けれど、持ち主を知り、大罪を得て刑死したと聞けば、また涙が溢れて来た)……あの方が、大罪……?
        (涙が止まらない――……あの人とは、本当に少し顔を見知っている程度で『袖振り合うも』の縁だったけれど……)
        (宗爛様付きだった私は、稀に彼女の顔を見る事があった)
        (『虎になる姫』と聞いて、始めは戦での活躍ぶりから、虎の様に敵兵を俊敏に狩る様に殺していく姫の比喩かと思ったら、本当に虎になって驚いたのだ)
        (比喩かと思っていた事も、あながち間違いでは無く――……見事な狩猟の腕で、大鳥を射とめたり、武芸にも秀でていた)
        (威風堂々とした王者の風格を持ち、大の男でも、下手な男では負けてしまう威厳を兼ね備えながらも)
        (凛として、美しい容貌を持ち……笑顔はまるで牡丹の様に、気高くも可憐な姫君だったのを覚えて居る)
        喬爛様……!虎豹騎を統べて、その名に相応しく、その血に相応しく……勇ましく戦場で御活躍されていた、高邁なお方でしたのに……!どうして……!
        (『貴方まで、歴史の闇に葬り去られたのですか……』と、涙で声が霞んでしまう)
        (短剣を握れば、胸元に抱き締めるようにして、昔の想い出、彼女の形見の品に、とうの昔に淘汰されてしまった彼女へと冥福を祈る)
         
        (『答え……?』涙で滲む声で、問う ……もう既に、私の手の中に答えはあったの……?)
        生きて……戦う?(私は、戦う事を望んでいたの? ……ちゃんと、覚悟を決めていたの?)
        (ずっと私は、誰かの顔色を伺って、揺られながら生きて来て、誰かの元で飼われるかの様に生きて来た)
        (けれど――……私は生きて戦う覚悟を、決められていたの……?)
        (……私は、私なりに立派に戦えていたのかな……? ずっとずっと、弱くて、何故生き残ってしまったのか後悔ばかりの積る日々だったけれど――……)
        (けれど、きっと私にも『聖杯のマスター』として、戦う意思があったから……キャスターが現れてくれたのかなって、泣き疲れた脳の奥で、ぼんやりと思う)
        (過去の想い出の詰まる金貨は、過去に気高く勇ましかった姫の遺品へと変わり――『意思』を象徴する剣となって、戦いぬく覚悟を贈られる)
        (誰かの剣となり、道を開く為の力を差し上げる彼女の商売とポリシーから、彼女の強さと気高さが伺えた)
        (滲む涙で、一瞬――彼女の顔は、喬爛様の様に見えた)
        (血の繋がりなんて、在る訳無い……けれど、二人の強さと気高さは良く似ていて、互いに通じるものがあるからこそ、きっと喬爛様の遺品が彼女の手へと渡ったのかもしれないと思う)
        (好きですよ、とストレートに好意を貰うと、頬が紅潮するのを隠せない) えっ あっ……
        (気恥ずかしさに俯いて、暫くすると顔を挙げる)わ、私も……セアラさんのように、堂々としていて、強さを持ったカッコイイ女性は好きです……いえ、羨ましいです
        (対価として貰った短剣を、大切そうに胸に抱えながら、思う)私も、セアラさんとこの短剣の持ち主の喬爛様の様な、戦いぬく潔さと強さ、気高さを持って、戦いに改めて挑む覚悟を持とうと思います
        (二人に恥じないように、そして少しでも近づけられるように――……この短剣に、その想いを秘める強さを貰いながら、願う) -- メルセフォーネ 2014-03-30 (日) 16:53:51
      • おや、虎人公主をご存知でしたか 戦役の大勢が決した後もずいぶん祟ったそうで…野の虎に貴人の礼は無用と大掛かりな山狩りまでされる始末
        討伐隊が持ち帰ったのは大きな大きな白虎の毛皮 虎塞第一の秘宝ともてはやされたのも束の間、虎の害はますます猛威を振るったといいます
        今でも大きな化物虎が彷徨い出ては、夜な夜な狂おしい声で鳴くのだとか この戦いが終わったらお探しになってみるのもいいかもしれませんね…

        …ええ、よくお似合いですとも 泣き顔よりずっとずっとお綺麗です!(たおやかに細い人差し指で緑の瞳の涙をすくいとって)
        ご満足いただけましたか? いいお取引をありがとうございます…たしかにお売りしましたよ、メルセフォーネさん(金貨の山を崩し、その半分を自走式機械鞄に収める)
        宝具集めのお話、考えておいて下さいよ 人殺しも辞さない悪の魔法使い集団の乱痴気騒ぎだって、何かの役に立つかもしれないんですから
        武器弾薬の調達・修理・お手入れも ご用命は下軸工業公司まで! 次はお店でお目にかかりましょうかね…それでは、また遠からず
        ご武運を(Good Hunting)!(一足先に支払いを済ませてお店を後にした) -- セアラ 2014-03-30 (日) 21:46:53
      • はい……とはいえ、私は少ししか面識がありませんが 牡丹の様な華やかな笑顔が、とても印象に残る姫君でした……
        (彼女の最後を聞くと『爛の血を引く方なのに……』と、また彼女の最後に胸が痛む)
        (『喬爛様は……帝の血を引きながら、虎として最後を迎えられたのですか……』顔を両手で覆って伏せる)
        (……けれど、その後に続く虎の話を耳にすれば――……聖杯が終わったら、その場所を探してみよう、と思う)
         
        ……ありがとうございます(優しく、華奢で形の良い白い指先で、流れる涙を拭って貰いながら)
        (対価として受け継いだ、この短剣に恥じないように、強く決意を固めて戦いに挑まなければと思う)
        ……はい、セアラさんは、とても良い商人だと思いました(頷いて、彼女の半分残した金貨と一緒に、大事そうに短剣をしまう)
        ……はい、宝具集めは先程も言った様に、戦いを好まない都合上難しいと思いますが――……代わりに、ささやかなお礼のお返し代わりとして
        この間、黒いフードのキャスターに襲われたお話を……(過去に襲われたお話をして、最後に『物騒なので気を付けて下さい』と加えて)
        (こくり、と小さく頷く)はい、何かあれば……またお伺いさせていただきます。今日は本当にありがとうございました
        (先にお店を出る彼女の背中を、ぼんやりと眺めながら)
        (『セアラさんにも、幸運が訪れますように』と心の中で小さく祈る) -- メルセフォーネ 2014-03-30 (日) 22:54:06
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
  • 『偽』と『打雲紙』のキャスター同士の戦い
    • (普段通りの街路。普段通りの人の流れ。どこまでも普段通りの顔を崩さない街の雑踏の一画で)
      (どこか生気のない目で、壁に背を預けた一人の若者が、行き交う人の波を視界に捉えていた)

      (皆ああなのか? 聖杯戦争の参加者は誰しもあんな、心の大事な部分に欠損を抱えている狂人だらけなのか?)
      (先日遭遇した、熱病に浮かされたような極端が過ぎる行動に出た敵マスターへの問いを心の中で自問する)
      (既に実入りのない仕事にはうんざりしていたが、偵察任務の統括という貧乏籤を引いてしまった以上、観察と観測を続ける他なかった)

      (焦点の定まらない瞳が、風景に混ざるメルセフォーネを捉えたのは、そんな時だった)
      (他マスターを認識した際と同じように、人体を構成する魔力の質が常人とは異なっている)
      (前回のことを顧みて少し逡巡した後、結局声を掛けた)
      おい、あんた。緑色の髪の長いあんただよ。ちょっと顔貸してくれないか。 -- 偽のキャスター 2014-03-25 (火) 23:20:53
    • (それはぼんやりと、まるで夢遊病を想わせるかのように……街並みを歩く)
      (以前住んでいた、神国アルメナとは違い、此方の方は随分と発達しており、また建物も迷路の様に立っている)
      (うろうろと迷いながらも、少しづつ覚えていかなければならないけれど……発達ぶりの驚きに、溜息が洩れる)
      (街への驚きで一杯で、一人の若者には全く気付かず――……というか、人が多すぎて色んな心の声が聞こえて、歩くのが辛い)
      (すれ違うたびに、誰かが近寄る度に、心の中で思っている事が、街中での雑音に紛れて聞こえて来て、目眩がしそうだった)
       
      (ふわりと――……軽く酔った様な頭で、不意に声をかけられた方を見れば、首を傾げる)
      ふぇっ……? 私……?(くらくらした頭と、ちょっと気持ち悪さで変な声が出る)
      (『顔を貸すって、どういう意味だろう?』等と思いながら……迂闊にも偽のキャスターにも近づく)
      (もし、これが平常時の自分であれば――……警戒して、マシな判断を下す事が出来ただろうに) -- メルセフォーネ 2014-03-25 (火) 23:31:59
      • (酒が回ったような頬にさす朱色と、イントネーションのおかしな高い吃音)
        (どういう事情かは知らないが、女マスターが疲労し、正常な判断力を失っているだろうことは伺えた)
        (好機と見るべきだ。これだけマスターが隙だらけな状況というのは、そう訪れない)
        (最も、前回は同じ状況下において、手痛い反撃を食らってしまったわけだが―)

        俺さ、ちょっと暇してて。誰か一緒に遊べないかなって思ってたんだけど。
        顔赤いね? まさか人に酔ったのか。おのぼりさんかよあんた。
        (いかにも軟派で健全な青年です、という顔を装い、さりげなくメルセフォーネの肩に慣れ慣れしく手を回す)
        キレーな髪してるねえ。どんな整髪料使ってるの?
        (から始まり、いくつか他愛ない世間話をした後で)

        で、もう誰かマスター、ぶっ殺したりしたの?
        (素知らぬ顔で、本題の言葉のナイフを切り出した) -- 偽のキャスター 2014-03-25 (火) 23:43:43
      • (ほわんほわんとする頭と、トーンの高さが可笑しな声)
        (くらくらとした頭、よたよたとした足取りで、敵のキャスターに気付かず、歩いて行く)
        (――……罠である事も気付かずに)
         
        暇……?(『何で私と遊ぼうって思ったんだろう、この人……?』首を傾げて不思議そうな顔をする)
        (おのぼりさんと言われればその通りだろう――……こんな都会よりもずっと田舎、或いは違う文化で発達した国に居たのだから)
        (肩に馴れ馴れしく手を回されると『何故そんな事をするのか?』という疑問と、異様な馴れ馴れしさに気味の悪さを覚えるが)
        (生憎、振り払う気力も元気も無い上に……中途半端に自分を支える支え代わりになってしまったのが問題だった)
        (このままの方が、独りで立つよりもずっと楽だから、もたれるようにして支え代わりに居て貰えれば、助かるって思ってしまった)
        (他愛も無い世間話には、碌に答えない……いや、答えられない。そんな余裕ないのだから)
         
        (ぼんやりと――……目も虚ろに、彼の話を話し半分に流して、時折頷く程度に返していたが)
        …………ッ!!
        (その言葉を聞くと、ハッとして 悪酔いから醒めたように青ざめて)
        貴方っ……誰っ……!?
        (気が付けば、魔力を感じる……そこまで強くは無い事から、きっと敵の――……)
        マス、ター……!?
         
        やっ…… 嫌っ……!
        (非力な力で、懸命に力を振り絞って付き飛ばそうとする)
         
        嫌ぁっ……! キャスター! どこ!?助けて……!! 
        (弱く弱く、声を上げながら 助けを求める) -- メルセフォーネ 2014-03-25 (火) 23:59:39
      • (蝶が蜘蛛の巣にかかる。狼狽するメルセフォーネに、歪な笑みを見せた)
        (人間にしては露悪的が過ぎる、こう表情を作れば、きっと相手は更に泣き叫び)
        (自分に逃げ場がないと理解してくれるだろうと追い詰める、嗜虐の表情を)

        (所詮は女の腕力。細腕でどうにか振り解こうとしても限界がある)
        (キャスター。そうか、この薄幸そうな女のサーヴァントはキャスターなのか)
        (報告が一つ増えるか。と言っても、ここで始末してしまえば、そんな必要もなくなる)
        (マスターを失ったサーヴァントは消えゆく運命が、暗黒の口を開けて待つのみだ)

        五月蠅いな。(困ったように頭を掻く。ここは陽のあたる往来からは離れた裏路地)
        (助けを呼んだとしても、むしろ"プレイ"として黙認すらされる、そんな場所)
        そろそろ黙ってくれよ。
        大丈夫、すぐに済む。(手に握られたのは銀色のナイフ。魂のないこの身にサディスティックな趣味はない)
        (ただ任務を全うする。迅速に、合理的な手段で)

        (影が支配する空間で、絶望の刃が、女の胸に振り下ろされる―) -- 偽のキャスター 2014-03-26 (水) 00:11:04
      • (バターを切り分けるように、ナイフは柔い胸元へ収まる。血の詰まった水袋は破裂し、ぱっと鮮血を流して、徐々に流れは緩くなり止まる)
        (その頃にはもうすっかり命は刈り取られている。“偽のキャスター”だってそのことを承知しているはず)

        (振り下ろしたナイフに手応えがない)
        (どれだけ後から力を加えようとも、その刃先は進むことがない)
        (見ると、メルセフォーネの心臓と、白銀のナイフの隙間に一枚の紙っぺらが挟まっている。数字の文様が、漆黒の中で爛々と輝く)
        (それが“(ふせ)いだ”のだと認識すると、もうひとつ気がつく)
        (ひらひら、ふわふわ)
        (沢山の白い翼が偽のキャスターを取り囲んでいる。それは紙飛行機。こんなにも醜悪な悲劇に、客席から退屈した子供が投げたかのような……)

        ハイハイ。キャスターさんはココですヨ? マスター。メルセフォーネ。
        僕は、キミが助けを求めるならどこへでも行くわけでありますからして。

        (狭い裏路地に、青年の声が響く。戯けてみせるのは、マスターの心境を少しでも軽くするため)
        (彼の、キャスターの精神には、火よりも熱い殺意が渦巻いている)
        (浮かんでいた紙飛行機のうち、偽のキャスターに近いものがその材質を変える。金属光沢が、差した月光を照り返す)
        (紙飛行機は突如加速し、鏃となり、偽のキャスターの虚を衝いて、手へ顔へ胸へ脚へ……)

        (ざあああ……)
        (残りの紙飛行機群が、一箇所で渦を巻くように集まる。それが晴れると、珍妙な姿をした青年が、メルセフォーネを奪還して立っていた)

        わかる? 今がどんな状況か。
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-26 (水) 00:34:01
      • (最後に少し力を込めて肉を抉れば終了、のはずだった)
        (そんな砂糖より甘い目論見は現実の壁に打ちのめされ、霧散する)
        (「やはり邪魔立てにくるのか」)
        (あの時も、あの時だって。想定通りに物事が運んだためしなど、ないのだ)

        (皮膚を容易く貫通するはずの大型の刃渡りのナイフは、たった一枚の紙片により防御される)
        なっ……!
        (間抜けな声が漏れる。ペーパークラフトを伴い、出来すぎたタイミングで現界した男は、紛れもないキャスターのサーヴァント)
        (ただのペラ紙に鋼鉄かそれ以上の硬度を与える術など、生半可な魔術師の仕業ではない)
        (白いとび羽は編隊を組み、縦横無尽に飛び回る。矢尻に傷つけられるも、若者の顔や四肢には目立った外傷はなかった)
        (挑発、脅し。一度は虜にしたマスターが強奪され返した結果が正しく『今がどんな状況か』を示していた)

        (キャスターとキャスターの対峙は続く。口を開いたのは、柄の悪い方の男)
        ああ、分かってるさ。
        (ステンドグラスを瞳に張り付けた男へ、怯むことなく気を吐く)
        お前たちの窮地は、まだ終わらないってことだよな!

        (指を鳴らす合図と共に漆黒の影が宙を舞う)
        (その正体は、ローブで人に偽装した有事のために潜ませていたゴーレム)
        (倒すことができないのならば、引き分けでもいい)
        (狙いはゴーレムの自爆)
        (マスターさえ殺害すれば、それで目的は達成される)
        弾けろッ!
        (ローブを脱ぎ捨てたゴーレムが打雲紙のキャスターに取りつこうとする)
        (体温を感じさせない、青白い氷のような肌が不気味な輝きを放った瞬間)
        (今度こそはと、自分の勝利を確信した) -- 偽のキャスター 2014-03-26 (水) 01:05:58
      • そう。ここは窮地……“戦場”ってコトだ。
        (身振りで、「隠れていて」と、メルセフォーネへ伝える。彼女は頷き、闘いの死角となるほうへ駆けていく)
        オムニシエント・オウル小隊。紙片生成(トレース・オン)。(保険として、隠匿魔法(コンシール)をかけた紙飛行機を数基追従させた) 
        (彼は、中指で奇妙な眼鏡を上げ、偽のキャスターを凝視する)
        三色硝子の三稜眼鏡(ステインド・グラッシーズ)》は伊達じゃない。……ア、度は入ってないケドね?

        なんでもかんでもお見通しってワケにゃいかないけど。……そんぐらいはわかるサ。
        (ゴーレムが肉薄する。歪なる人型が、闇から湧いて出たかのように、黒いローブを脱ぎ捨てて蒼い肌が露わになり、彼へ迫る)
        (“ヒトあらざるモノ”が主人の命令を決死で遂行する。手が伸び、腕を、胴を、首を掴まんとした)

        ……ッ、紙片生成(トレース・オン)っ!!
        (それは一瞬のこと。小さな蒼い稲妻が走り、人を包めるほど巨大な紙片が幾らか現れ、ゴーレムを包み込んだ)
        (そこには、先ほどナイフを禦いだ、四次、『木星』の魔方陣、“プロテクション”がかけられている)
        (あらゆる攻撃的なアクションを吸収し拡散し霧散させるその防壁は、絶対の拘束具となってゴーレムを束縛する)

        ただ“紙っぺら”を創り出すだけ。僕に似合いのけちな能力だ。
        (防護壁の中で、異様な輝きが炸裂する。しかし、それは微かな音と煙を吹き出して終わる。“包み紙”の中からゴーレムの破片がこぼれた)
        ハッピー・ゴー・ラッキー・ミュール、中隊。また、マジックアロー2個小隊。紙片生成(トレース・オン)
        (息をするように。空中に紙飛行機を生成する。その構造の隅々までもが彼の頭に焼き付いている。あとはそれを“複写”するだけに過ぎない)

        ……行けっ!!
        (鴎のように翼を拡げた中型の飛行機は、中隊ごと大きな円を作って飛行している。速度はゆったりとしたものだ)
        (対し、“マジックアロー”と呼ばれた、最初に偽のキャスターへ放たれた鏃の形をした紙飛行機は、赤い輝きに満ちる)
        5次、『火星』の魔方陣、ファイアーボール。(二個小隊のそれは、夜闇を照らしだして、右方と左方から偽のキャスターに迫った)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-26 (水) 01:37:00
      • (紙は人間の叡智が作り上げた偉大な発明の一つ。書写に、出版に、その用途は幅広い)
        (折り紙、という遊戯がある)
        (紙を物体に見立てて折っていく本来子供向けの工作だ)
        (しかしながら、折り紙は幅広い年齢層により嗜まれ、全世界で愛されている)
        (それは何故か。人は、そこに無限の地平を見ている)
        (千差に変化する形状。一枚の紙が織りなす数多の可能性は、既に芸術の域にまで昇華されていた)
        (打雲紙のキャスターの手芸もまた、同様だった)

        なん……だと!?
        (炸裂し敵キャスターごと葬るはずだった捨て身の戦法は、いとも簡単に抜け穴を作られる)
        (何のことはない、爆破の衝撃を軽減しただけ。しかも、その立役者は単なる紙片だ)
        (爆発の際の絞りカスであるゴーレムの無残な一片は、爆発の威力の規模を物語っていた)
        (本来防御などできるはずがないのだ)

        くそっ、聞いてねえぞ! お前の"お遊戯"につきあえるかよ!
        (分の悪さを察知し、早々に逃走の態勢に入る)
        (情けない背中を向け、戦闘の意思がないことを示すと、次の脅威は既にそこにあった)
        ……ぁ?
        (造られた紙飛行機を媒介にし発動した炎の魔術が、敗走を阻む)
        (大翼の群れは打雲紙のキャスターの怒り。マスターを狙われ、拐かされたことへの答え)
        (「僕はお前を許さない」 視線を隠すステンドグラスが、雄弁に語った)

        ぎゃあああああああああああっ! (紅蓮の焔の拡散が、偽物のキャスターへ炸裂する―) -- 偽のキャスター 2014-03-26 (水) 19:44:22
      • ─────《空まで届く平面位相幾何学(アンフルフィルド・ウィッシュ)》。
        紙っぺらたちが“折”り成す、お遊戯だよ。

        (そう語るのは口だけ。“魔法の矢”に篭められたのは、殺意そのもの)
        (裏路地がオレンジ色に明るく照らされる。連なった建物の最上階まで、くっきりと構造がわかるぐらい光は強まった)
        (それが、炎の規模を表している)

        まだ死んでないダロ。
        キミが“やろうとした”ぶんだけ、キミに返してやる。

        (ハッピー・ゴー・ラッキ・ミュール中隊。大きく翼を拡げた紙飛行機たちが、偽のキャスターの周囲を旋回している)

        五次、『火星』の魔方陣、スクラッチ。

        (紙飛行機に折り込まれた魔方陣が赤色の輝きを呈する。一瞬、その周辺の空間が歪み、煤けた建物の煉瓦に亀裂が走った)
        (これは、 『切り裂き傷つける』というだけの、単純でそれでいて攻撃的な術式)

        じゃあね。

        (彼は、メルセフォーネが身を隠す裏路地に入り彼女を抱き上げると、ふわりと地面を蹴り、紙飛行機を展開してそこから消え去る)
        (ハッピー・ゴー・ラッキ・ミュールの群れは燃え盛る“偽のキャスター”に、渦を描きながら近づいていく)
        (三百六十度全天から迫る、ジューサーの刃をずっとずっと凶暴化させたような切り裂く術式)
        (───────圧搾する)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-26 (水) 22:50:34
      • (肌面積が一定以上壊死した場合、人間は死に至る)
        (全身を焼かれる若者が人間だったならば。マスターだったならば)
        (聖杯戦争の一幕があっさりと終焉に至ったことになる)
        (そうでないことは、舞台の続きが証明していた)
        畜生ッ、畜生ッ、畜生ッ!
        (打雲紙のキャスターの言は二つの意味を含んでいる)
        (自分が刃物を用いようとした点。その手でマスターの女の命を奪おうとした点)
        (つまり、死ぬまで責め苦を味わわせてやるとの恫喝)
        畜生ーーーーーーーッ!
        (処刑が、始まる)

        (鮮烈に切り裂くだけの断罪が通り過ぎて)
        (白目を剥いたまま停止していた偽のキャスターの瞳が、光を取り戻す)
        覚えたぞ、ステンドグラスのメガネ野郎。
        ……マスターともども、最高に屈辱的に殺してやる。
        (体は半分以上が炭化し、頭部は崩れて罅割れている)
        (四肢はあちこちが欠け、ここまでくると特殊メイクを疑われそうなほど)
        (明らかに生きている人間の様相ではない。実際に人間ではないのだが)
        (力なく立ちあがり、ゴミ捨て場に落ちてあったボロ布を纏うと、ギラついた瞳のまま、いずこかへと去った)
        (深い憎しみをその心中に淀ませて) -- 偽のキャスター 2014-03-26 (水) 23:37:12
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
  • 『嘗て』と『これから』の友達
    • (梅雨明けから夏の勢力がぐんぐんと増している)
      (猛暑にはまだ遠く、汗ばみながらも涼しげな気候が有り難い)
      (温暖化、異常気象。いろいろ囁かれてはいるが、季節の循環はキャスターの知るものと同じく感じられた)

      (ひと月かけて季節外れの大晦日をしたテメノス孤児院跡はそれなりに落ち着いた空間になった)
      (生活用品も揃えたし、雨漏りの修繕なども済ませた。メルセフォーネの私室も設えたし、周辺の魔力を探って確かめておいたしそこも安心)
      (ペンキの塗り直しなど大掛かりなことはやっていないが、まぁ、聖杯戦争の拠点にするにはそれで充分だ)
      (「もしかしたら、他の英霊様が嵐のように押し掛けて来て、ここが崩れることがあるかもしれないのだし」)
      (一階、院長が使っていた部屋で、窓辺から注ぐ澄んだ光を浴びながら、机一面に並べた正方形の紙を眺めている)
      (きっと、窓を開けたら風が吹き込んで気持ち良いだろうが、それに煽られてこれらが飛んでしまうことは明白だったし、我慢する)

      -- 打雲紙のキャスター 2014-03-25 (火) 21:44:41
    • (日差しも高く、熱く降り注ぎ 汗の流れる季節――……)
      (キャスターが準備を済ませるのと一緒に、時折お手伝いをしたり(しかし、彼女の掃除はキャスターから見れば掃除には見えないレベルだったが))
      (基本的に引き籠って、一日中本当に、それしか知らないように瞑想し、魔術研究に励み、占星術で毎日の流れを見るのが日課であった彼女が)
      (その日はふらりと、突如消えたかと思えば――……また、ふらりと帰って来た)
       
      ……ねぇ、キャスター居る? お話があるの
      私としては、いいニュースだと思うけれど、角度が違えば困るニュースかもしれない……でも
      決して悪い話ではないと思うわ……(キャスターの姿を探しながら、うろうろする……孤児院跡だから、広いなぁと思いながら きっと元院長室かなと思いつつ) -- メルセフォーネ 2014-03-25 (火) 21:58:06
      • (メルセフォーネには紙飛行機の小隊を随伴させている)
        (魔術師でも容易には気づけ無いよう隠匿されており、延々とメルセフォーネを追ってゆっくり飛行し続ける)
        (危険が迫ればキャスター本人に報せ、残る紙飛行機がメルセフォーネの護衛、時間稼ぎをする)
        (「まぁ、過保護だとは思うまいよ。命には代えられないしナ」)

        む。帰ってきたか。(入り口の結界をメルセフォーネが通った。机の上の魔方陣の一つが反応し、回路が輝く)
        (椅子を軋ませ立ち上がり、メルセフォーネを出迎える)こっち、こっち。(手招き)
        おかエリ。 どうしたんダイ? いつもの本屋や呪具店ではなさそうだね、随分遠出をしたようだ。
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-25 (火) 22:32:27
      • あ、ただいま(キャスターの顔を見ると、微笑んだ)
        (こうして、帰ったら『おかえりなさい』『ただいま』と言える事は……日常にある幸せだなって思って)
        (キャスターが立ちあがると、ぱたぱたと走り 手招きされる方へと寄ってくる……実に幸せそうな笑顔で)
        うん、あのね……実はね……?(そわそわして、落ち着かない様子で頷いて)
        うん、本屋さんとか、図書館じゃなくて今日は森の奥に行ったの……ここは人も多くて息詰まるから
        その森でね、沐浴していたら……カグラちゃんっていって、女の子なのに男の子の格好をした、聖杯のマスターに会ったの
        可愛い子でね……その、お話したら、暫くの間はお互いに傷つけるのは止めようってお話になったの
        ……お姉さんが出来たら、きっとこんな感じの子なのかな? って思ったの……これは、お友達って言って良いかなぁ?
        (それは、学校でお友達が初めてできた子供の様な無邪気な顔で、嬉しそうに語る) -- メルセフォーネ 2014-03-25 (火) 22:41:48
      • (彼は“懐かしく”)
        (彼女は“新鮮に”)
        (その遣り取りは、別々でありながら、表裏一体であるかのような感情を二人へ引き起こす)
        (「聖杯戦争の中で“生”を見出す。というのが目的ではあったけれど、やっぱりこういうのは安心できるなぁ」「生きてるって感じだ」)
        (彼は、先月にジャックと出会ったことを思い出した。馴染みの酒や煙草が、彼を“出迎えて”いた。彼はいま、あのときのジャックと同じ幸せを嚼みしめている)

        ……焦んなくていいヨ?
        (苦笑をする。なるほど、今日はご機嫌のようだ。感情の発露がいつもより鮮やかで、行動の節々にうきうきした気持ちがあらわれている)
        (「え゛っ」と声を上げそうになった。「マスターと接触したのか」)……うん、うん……。(彼も、そわそわとしはじめる)
        ……休戦ってやつ?(密かに胸を撫で下ろす。メルセフォーネの態度から酷いことになっていないとは思ったが、実際聞いて、安心した)
        カグラちゃん、か。そうだね。(「“友達”」「……いつか、決死の思いで争うことになるかもしれない」「“友達”」先ほど思い出した顔が、また心に浮かんだ)
        こんな状況だから、難しいけど。……友達だよ、きっと。大切なヒトだ。大事にしないといけないね?(彼はメルセフォーネに微笑み返す)
        (「サーヴァントのクラスだとか、脅威度だとか」口を衝いて出そうになる。「そんなの野暮だよね」)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-25 (火) 23:03:28
      • (『懐かしさ』と『新鮮さ』という、過去と未来を示す、対照的な感情を含んだ表情で)
        (互いに顔を合わせて、楽しそうに語る……彼女は初めて会った時よりも、人間らしい感情や情緒が芽生えて来ている)
        (彼女の図は、水元素(情緒や情感)が強い……こうして誰かと関わる事は、大好きなのだろう)
        (キャスターと、過去と未来の角度は違うといえど……共通する『友達に会う喜び』の笑顔は格別で、いい笑顔をしていた)
         
        うん、ゆっくり落ち着いて話すね……?
        (こくり、と頷くけれど興奮が止まらない――……純粋にそれだけ嬉しいのだ)
        (だって、それはきっと初めてできた『お友達』だから、尚更――……)
        (話が展開されるにされて、そわそわする彼の様子にも気付かないまま続ける)
        うん、そう……相手の子も聖杯だって状況は理解しているし、一時休戦みたいな感じで……本当に少しの間だけになってしまうかもしれないけれど……
        (『こんな状況だから、難しいけど。……友達だよ、きっと』と、言われると、抱きついてキャスターに寄り添って顔を埋めた)……よかった
        私ね、お友達って言って良いのかなぁ、って不安だったの……でも、嬉しい。お友達が出来たの(ぎゅ、と服を握る手に力が入る)
        (大切にしないといけないねって言われると、そのまま「うん」って頷いて)
        (その後も、友達が出来て嬉しかったのか、どういう状況で会ったか、どんな流れで友達になったかを喋って)
        サーヴァントはね……強そうな気配はしたけど、姿も遠くで黒いシルエットが見えたくらいで、詳しくは分からないの……
        でも、お友達同士って事はサーヴァント同士も会った方が良いのかな?……ねぇ、キャスターはどう思う?
        (サーヴァントは知らないと、伝えつつ……その先は聖杯の戦いにも影響するので、先程よりも落ち着いて声のトーンは下がり)
        (相談するように尋ねた。どうしたらいいか、自分では判断しきれなかったらしい) -- メルセフォーネ 2014-03-25 (火) 23:24:00
      • (メルセフォーネのチャートを象徴するのは第八ハウス、双魚宮であり、死と再生を象徴している)
        (キャスターは、彼女の辿ってきた運命とそれを照らし合わせ、ふと、こんなことを思う)
        (「戦場から離れ、独りきりで生き残ったとき、メルセフォーネは一度“死んだ”ともとれる」)
        (「そして、僕を召喚したときに生き返った。……聖杯戦争の大きな流れでの中で、こんな表情ができるのは他ならない生きている証拠」)
        (「……」「これが、終わりの始まりでないことを祈ろう」)
        (────“聖杯戦争”は根本的な部分に残酷な運命を内包している)
        (寄り添うメルセフォーネの頭を撫でる。「いまだけは、こんなふうに笑っていても、いいはずだ」「これも“聖杯戦争”の一部なのだから」)
        (有り得なかったはずの、人々の出会い。果てに約束された別れが待つ出会い)

        もしかしたら、短い間かもしれない。でもね。そうして出会えて、そんなふうに仲良くできることは、嘘でも幻でも夢でもナイ。
        確かにそこにあることなんだ。……良かったね。

        (瞼の裏側に、ジャックの背姿が浮かぶ。それは、メルセフォーネに言い聞かせているようで、その実、自分へも向けられていた)
        (カグラという少女が、どんな思惑を抱いているか知れない。メルセフォーネは純粋であり、それゆえに人の本質を見抜く術に長けている。凪いだ湖面が、景色を映すように)
        (きっと、それは間違いではないはずだ)
        (出来る限り、それを守ってやりたいと思った)
        ……できれば会いたい、カナ。一時休戦、なんだから。サーヴァント同士の能力を確認しておきたくもあるだロウ。
        “顔合わせ”はしとくベキだね。
        なに、難しいことはナイ。今度遊びに行くときにでも、一緒に行けばイイ。
        (幻想のような、薄氷の上のみで成り立つ友情であっても、現実を見ないわけにはゆかない)
        (「剣呑な空気になりませんように……」その“黒いサーヴァント”が話の通じる人物であることを心から願うのであった)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-26 (水) 21:40:32
      • (彼女の特に強い8ハウスは、生死、死と再生、死の状況等も示し)
        (また、魚サインは『目に見えないもの、自己犠牲、死後の世界或いは生まれてくる前の胎児的な物を示す場所でもある』)
        (そこに、火星が入ると『事故死』等も暗示するが――……火星が入っている程度では、まだ問題ない)
        (問題は、進行している冥王星や海王星等が……そこにヒットする時……)
        (もしかしたら、彼女に暗示される『死』の匂いが、現実となる可能性も高くは無い)
        (けれど、キャスターが想像するように……『叙事詩』と『聖杯戦争』で彼女は、一度『死と再生』を迎え、彼女に変化が訪れている)
        (また、叙事詩や聖杯に共通する『生死』、また火星の戦争も、その図には ありありと、彼女の運命を記すかのように現れている)
        (この図からわかる事は、彼女は戦争や生死を通して生きる事が描かれており、ASCの支配星が8室にある事からも、それらによって彼女の資質が磨かれ成長するのが見てとれるし)
        (8室は魚サインから始まっているが、部屋は広く、殆ど雄羊サインを飲みこんでいる程の事からも、9室の雄羊の支配星……というよりは、8室の雄羊サインの所へ火星が死は異性として入り込んでいる為、余計に8室が強調される要素の一つにもなっている)
        (ドラゴンヘッド(未来へのへその緒)もそこにはあり、ここからも彼女の因縁の深さは読みとれる)
        (これ以上書くと、無駄に長くなるので省略するが……戦争とも縁の深い図でもあるのは確かであり)
        (それによって彼女が成長しているという事も……悲しい事に、また確かでもあるのだ)
         
        ……うん、そこは覚悟してるわ……恐らく長く一緒には居られないと思うの(続くキャスターの言葉に微笑む)
        うん、嬉しい……仲良くちゃんとできていて、お友達だって分かって、嬉しい
         
        (嬉しさと興奮で、キャスターの心まで深くは気付かなかった――……そして、ジャックの事にも)
        (頭の中は、初めてできたお友達の事で一杯で、嬉しくて嬉しくて仕方の無い喜びで)
        本当!? うん!私もね、会わせたいなって思っていたの……!キャスターも会いたいなら是非会いましょう!
        (きゃあ、と、彼女にしては珍しい程に喜んで、両手を握る『約束ね』って微笑んで)
        うん……お互いに紹介しましょう
        ん、わかった……じゃあ次に行く時にキャスターも一緒にね
        (キャスターの不穏をよそに、ニコニコする表情が緩みっぱなしで止まらない)
        (その日は、キャスターに『友達ってどういうの?』というお話をしきりに聞きたがり、強請る日となりました) -- メルセフォーネ 2014-03-27 (木) 01:34:28
      • (キャスターとメルセフォーネには共通点が殆どない。生きた時代も違えば、産まれた国もまるで異なる)
        (唯一、“空を見詰め続けた”という一点でのみ重なっている)
        (「僕は、そんなにも遠い遠い声に応えた」「僕が喚ばれた意味は、確かにあったのかもしれない」)
        (母親の不在を“空”に求め続けた。孤児院で仲間に囲まれ、公園では幼馴染に囲まれ、最後にはきょうだいに囲まれた)
        (求めた願いは叶わなかった。それでも彼は幸せだった。心から欠けてしまった部分を、大切な人たちが埋めてくれたから)
        (人一倍寂しがりだった彼は、それがどれだけ幸せなものか、語ることができる)
        (「そうだナー、一言では表現をし辛いものだネ」「具体的なエピソードを交えて話そうか」「ニルカーナ君っていう影の薄い子が居たんだがネ……これが」)
        (日がな一日、そうしていた)
        (「それでね、その幼馴染の一人に最近、会ったんだよ。ジャックさんって言うんだけど、このヒト、呑んだくれでねェ」)
        (そんな話で、締めくくって)
        -- 打雲紙のキャスター 2014-03-27 (木) 02:34:23
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg -- 2014-03-23 (日) 20:53:57
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg -- 2014-03-23 (日) 20:49:54
  • 遠い昔の物語『夢の妖精』の残り香と、これからの物語を紡ぐ『お姫様』の出会い
    • (深夜 街の光も少し落ち着いて星々が煌く頃)
      (眠りに付くメルセフォーネのもとに珍しい来客が訪れた)
      (それは夜に属する夢の精霊 見知った精霊ではない)
      (ただ大分衰え、恐らく今はもう存在しない…夢の残り香)
      (その精霊はメルセフォーネの上空でクスクスと笑っていた)
      (手を上げてくるくると回し、ぽっかりと夢に穴が開く)
      (開いた穴からは………………)

      へっ えっ お、落ちる〜〜〜〜!!!!
      (少女が降ってきた、というより現在進行形で落ちてきている)
      (長い長い青銀の髪をなびかせながら)


      (精霊の気配はもう無い……) -- ニーナ 2014-03-23 (日) 18:45:31
    • (此方の街は、私の居たアルメナとは違い、まるで夜の訪れぬ街の様に明るい)&br; (それでも――……幾許かと、街の光も落ち着き、辛うじて外に輝く星の煌きが視える頃だろうか)
      (私も、自身の眠りに誘われ、無意識への階段を歩んで行く)
      (眠りで意識が深くなるごとに……一歩づつ一歩づつ眠りに落ちて行けば――……)
       
       
      (夢の入口に入った頃、だろうか?)
      (見知った夜や、夢の精霊では無い…… けれど、確かに夢の精霊の香りが漂う)
      (それは、まるで私を上から見つめて笑いかけるかのように)
       
      (ふと――……今はもう、古い記憶に埋もれて久しい、夢で出会った蝶の妖精を思い出すのは何故だろう?)
      (……あの子もまた、同じように夢で会ったから……なのだろうか)
      (そういえば――……あの子は、自分の願いが叶ったのだろうか?)
      (この夢の入り口は、あの子の気配に似ている気がして)
      (アリスが兎を追い掛けるように)
      (私もまた、あの子の面影を追い掛けるように……穴の近くへと寄る――……)
      (その中から落ちて来たのは――……)
       
      …………
      (穴から落ちて来ている少女を見れば、驚いて静かにその場で目を見開くが……)
      (『えぇと……?怪我、してはいけない……わよね?』と)
      (ちょっと混乱しながら、抱きかかえて受け止めるかのようにして、両手を広げて彼女を待つ)
      (或いは、歓迎するかのように……) -- メルセフォーネ 2014-03-23 (日) 18:57:59
      • (記憶に過ぎった彼女であれば)
        (きっと心配には及ばない)
        (あれは人よりずっと強き生き物)
        (人に縛られない生き物)
        (今日もまたどこかにひっそりと暮らすのだろう)
        (そう、これから始まる新しいページとは違うページ、ただの端書)

        (ここは夢の中 そう自覚してしまえば重力に引かれ続けることも無いだろうに)
        (少女は気付いていないのか、自らの概念に支配されて落下する)
        はにゃ〜〜〜何これ、えっ人っ!?
        (けれど下に人がいるとなれば)
        (それが自分よりもずっと可憐で触れたら折れてしまいそうな少女であれば)
        (たとえ受け止めてくれる姿勢をとっていたとしても押しつぶすのは忍びない)
        とっとっ止まれ〜〜〜
        (両足に光の翼 数度羽ばたいて衝突する前に止まった)
        (同じ足場へと降り立つと翼は消えた)

        (それから声をかけることもできずに目の前の少女を見詰めている) -- ニーナ 2014-03-23 (日) 19:10:04
      • (じーっと、落ち続けながら慌てふためく彼女を見つめる)
        (賑やかな彼女の言葉で『あ、私に気付いたわ』という事だけは理解出来て)
        (『……それより私、彼女の事しっかり受け止められるかしら?』と、内心不安に思いつつ、待ち構えるが――……)&br; (彼女も同じく、此方への衝突を避けようとしたのか、両足から光の翼を羽ばたかせて――……)
        (可憐に舞い落ちて、着地する)
         
        (怪我も無く、互いに無事な状態で……目の前の少女にじっと見つめられれば――……)
        (それも、一つの問いかけであり、形の違う投じられた布石――……いいえ)
        (穴から現れるアリスを招く、夢の世界の主は声をかける)
         
        ……大丈夫? 怪我や、痛みは……無い?
        落ちてきたみたいだけれど、何処から来たのかしら……?
        (首を傾げるけれど――……きっと、これも何かの視えない因縁、運命が絡まる歯車の様に――……動き始める合図) -- メルセフォーネ 2014-03-23 (日) 19:22:23
      • ………(吸い込まれるように見詰めていたのだが)
        えっと…大丈夫、みたい(ぱたぱた確認してみるが痛いところはどこにも無い)
        どこからといわれても…寝ていたら突然……
        (ここではっと顔を上げる)

        わかった、これは…「夢」なんだね?
        私が一人で作っている夢じゃなくて、あなたと、私の、「夢」が重なって…
        現実ではない、けど、妄想でもない……
        そっか、夢を渡るなんて…もう随分なかったから
        完全に忘れていたの…
        (少し寂しげに微笑んだ)

        つまり私たちが出会ったことに意味がある
        私たちには「夢」でつながる共通点がある……
        ………………例えば。
        (一呼吸おいて)
        聖杯戦争の、マスターであるとか。

        (突然の来訪者であるニーナはメルセフォーネのように星詠みの占い師ではない)
        (ゆえに夢を渡ること、見せられる夢の大半の意味を理解することはないのだが)
        (ただ  友達  (始まりの一人)の余波か、加護か)
        (極稀にこのようなことが起こる)

        (「夢」というこの空間において魔術による隠蔽など有って無き様なもので)
        (ニーナの胸元には令呪と思わしき魔力の塊が宿っていること)
        (そしてそれとは別に背中に最初に見かけた精霊の残り香が強く残っていること)
        (特に探る気がなくても伝わってくるであろう) -- ニーナ 2014-03-23 (日) 19:37:19
      • (吸い込まれるように、見つめられる瞳は、まるでアクアマリンの様)
        (可憐で無垢な輝きを放ち、見る者の心を無邪気に魅了して惹きつけてしまいそうな瞳)
        (ぱたぱたと確認して、痛みも無く無事である事を知ると、静かに心の中で安心する)
        ……突然?(ハッと顔を上げる少女と、視線が重なって――……)
         
        (『夢なんだね?』との問いに、静かに頷く)
        ええ、これは……貴方と私の夢の交差する場所みたい……
        人は集合無意識で繋がっている――そこには『私』と『貴方』の境目は存在しない
        きっと……その手前の、互いが混じり合う前の段階なのでしょう……
        (完全に忘れていたと、少し寂しげに微笑む少女の面影も)
        (何故だろう『蝶の妖精の子』を思い出してしまうのは――……)
         
        ええ、そうね……繋がりという糸が絡まなければ、結ばれる事は無かった……
        絡み合う糸を手繰れば――……
        (聖杯、か――…… 一呼吸置いて問われる彼女に静かに頷く)
        (聖杯のマスターと出会うのは 彼女で、二人目)
        (問いに答えるように、服の裾をずらして左上腕部に輝く、真紅の煌きを放つ令呪を見せる)
         
        (彼女と私の夢の中で――……互いが混ざり合い、交差する場所で)
        (彼女の胸から、令呪の魔力と輝きが存在する事)
        (そして、広大な魔力の持ち主である事も)
        (……やっぱり、あの子の残り香が、香水の様に強く残っている事も――……)
        (全て何も聞かなくても、探らなくても伝わってくる)
         
        ……懐かしい、わね
        (――……思わず、呟いてしまう)
        (この子にとっては、何も知らない事だと思いつつも)
        (古き良き時代の郷愁に駆られるように――……)
        (変な事を言っているのは、分かってる。言葉を噤んで、微笑む)
         
        ……いいえ、この場では『初めまして』……かしらね?
        聖杯のマスターさん -- メルセフォーネ 2014-03-23 (日) 19:56:41
      • (懐かしい…? なぜ、初対面の彼女からその言葉がでてくるのか)
        (分からなくて首を傾げる)
        (けれど何かしら、彼女に思わせるものがあったのだろうと…自然にそう思えた)

        (メルセフォーネの左腕 煌く令呪を見ても微笑みあう)
        うん…初めまして、だね。
        (ぺこりとお辞儀をして)
        (穏やかで優しい出会いだった)
        (血を血で洗う戦争に参加しているなんて 覗いている者がいたら思いもしないだろう)
        まさかこんな形で…他のマスターに会うなんて思ってもなかったの
        私の名前は   …
        …あらら。 まだ、内緒みたい
        (確かに伝える意思を持って発したはずの言葉はこの夢の交差点において音と成ることはなかった)

        そっか、ほんの少し…引かれただけ
        「夢」ではここまで……

        (つい先ほどまで二人は間近に立っていた筈なのに)
        (「夢」と「夢」は僅かな邂逅だけを齎して歯車を廻し続ける)

        (もう届かないほど離れてしまったけれどメルセフォーネのほうへ両手を伸ばして)
        でも、大丈夫……… 私たちはきっと…また…………………………
        (声も届かない 二つの「夢」は完全に離れつつある)
        (けれど彼女になら伝わったのだろう)


        (二人はまた必ず出会う そう、必然) -- ニーナ 2014-03-23 (日) 20:13:45
      • (目の前で首を傾げる少女には――……きっと可笑しく思われるかもしれない)
        (……けれど、何か此方に変な感情を持っている訳ではないと知ると、ちょっと安心した)
         
        初めまして……
        (静かに微笑んで、挨拶をする)
        (スカートの裾を、微かに上げて頭を垂れる)
        (柔らかく、優しい……ふんわりとした綿菓子の様な夢の中での出会い)
        (血塗られた犠牲の上で成り立つ戦争の、マスター同士の交差の夢の筈なのに)
        (それは、甘いお菓子の様な夢の様で――……)
        (彼女に微笑みながら頷く)
        ……私も。聖杯なのに甘いお菓子とお茶が似合いそうな夢で驚いているの……
        『     』
        (音に成らない言葉に微笑んで、小さく首を振る)
        今は互いを知る時期でも、間柄でも無いのでしょう――……
        けれど、確かに――……これは貴方と私の繋がりを表す夢……
        いずれ、会う事になり 自然と名前も知るでしょう
         
        そうね、ほんの少し……袖が触れただけ……
         
        (気付けば――……互いの距離はどんどんと離れて行き、もう伸ばしても手は届かない)
        (手を伸ばす代わりに、そっと振って見送りながら)
        ええ……大丈夫。これは始まりにしか過ぎないのだから――……
        (どんどん離れて行く、けれど彼女には――……遠く離れても届くだろう)
         
        (これは、まだ私とあの子の物語の表紙に、微かに触れた合図の夢)
        (――……なのだから) -- メルセフォーネ 2014-03-23 (日) 20:26:49
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
    • 月と火星の重なる天空の運命図 -- 2014-03-21 (金) 03:49:48
      • 彼女の屋敷を抜け出して、月と火星が重なり、輝く星空の下で
        私は必死に走って、アルメナの外にある、公共の儀式用の祭壇へと駆けて行く
         
        ――……救いとしては、アルメナは魔術が盛んである土地柄であるが故に
        外にもこうした場所が幾つか存在し、魔術を行う場所には困らないことだった
         
        それは、表上は例え 民衆の士気を上げる為のパフォーマンスであっても
        嘗て存在した、戦の勝利を願う為の祭壇なのだ
         
        ――……急がなければならない
        私が抜け出した事が、ばれないうちに
         
        ――……急がなければならない
        夜明けが訪れる前に
         
        だって今夜は、最も火星が近づく時なのだから
        それは、これから始まる争いの幕開けを暗示するかのように
        それは、私の腕に浮かんだ令呪からも 見て取れた
         
        『赤い』令呪が『左上腕部』に出来ている……これは双方とも火星の象徴なのだ
         
        血塗られた道で構わない、綺麗事を言っていられない
        唯一、理解出来ることは――……今を逃したら私に待っているのは『死』である事
         
        『火星』が『戦争の象徴』であり『赤』に対応し、人体図からもそれに関する場所で出来るのであれば――……
        きっと、腕の令呪も、火星に何らかの形で対応している筈
         
        『火星は戦いの神の星』
         
        令呪を傷つけないように、その下の左上腕部を、ナイフで切れば
        その血を使って五芒星の魔法陣を必死で書きあげる
         
        中央には、今日の天体図を描いた、正方形の紙を、折り紙の様に折り畳んで置いて
        月明りのレディに飾られた、極上のルビー……ピジョンブラッドの指輪を置いて
        繋がりを求めるかのように、首に繋いでいた鎖を外して置く――……鉄は火星の金属である
        儀式用のミルラの香を焚きながら、儀式の準備にとりかかる -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 04:20:52
      • (自らの血で濡れた、鋼鉄製の短剣を右手に持って東に面すれば……)
        (右手で額に触れれば呪文を唱える)
         
        『Ateh(Unto Thee)(汝へ)』 
         
        (胸に触れて唱える)
        『Malkuth(The Kingdom)(王国)』

        (右肩に触れて、唱える)
        『ve-Geburah(and the Power)(そして力)』

        (左肩に触れて、唱える)
        『ve-Gedulah(and the Glory)(そして栄光)』

        (胸の上で両手を握り締めて、唱える)

        『le-Olahm, Amen(To the Ages, Amen)(時代達へ、アーメン)』
         
        ( 東へと向かい、手に翳すナイフを用いて五芒星型(地のそれ)を作る)
         
        (十字の形になる様に両手を広げて、唱える)

        『我が前方に Raphael』

        『我が後方に Gabriel 』

        '『 我が右手に Michael』

        『我が左手に Auriel 』

        『我が周りには五芒星が燃え上がり』

        『そして、柱(円柱領域)の内には6つの光を放射する星が立つ』

        -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 04:33:08
      • ――……どうか
        どうか、お願いだから私の呼びかけに答えて!
         
        私は、呪文を唱えながら渇望する
        ……貴方と私に繋がりがあるのなら――……!
         
        これは私に残された最後の希望
         
        お願いだから 私との絆の鎖を解かないで
        貴方との繋がりが、あるのであれば――……
         
        たとえ私が貴方の畜生になってもいい
        貴方が望むのであれば……私は心の臓でも差し出すから……
         
        ……だから どうか――……
         
        私と繋がったこの手を、もう離さないで……
        絶対に、離さないで
        -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 04:36:27
      • ひらり。

        すいすいと空を泳ぎ、紙っぺらが降りてくる。

        接近した火星は灼けた鉄のように、夜焼き星よりも熱く輝いている。
        メルセフォーネの血は、その光を反映して真紅をますます深めている、
        令呪もまた、同じように。

        ひらり。

        また一枚。そんな光景と裏腹に、どこにでもある粗末な藁半紙が一枚降りてくる。
        また一枚。また一枚。周囲に、暢気な紙っぺらが降り積もる。

        それから、また一枚。今度は丁寧に折られた紙が落ちてきた。
        端をきっちりと合わせた折り目正しい、手紙のようだった。
        また一枚。また一枚。周囲に、整然とした手紙らしきものが降り積もる。

        ふたつの紙は同じもの。ただ、折られ方だけが違う。二種類の紙っぺらは、絨毯程度の厚さまで降って地面を白く覆った。

        ひらり。

        すいすいと空を泳ぐものがひとつ。
        紙飛行機だった。
        それは今までの紙とは違い、長く滞空して、自らどこかへ向かおうとする意志を見せている。
        空から、メルセフォーネのもとへ、進んでは落ちて、進んでは落ちる。

        つぎつぎと。
        見れば、群れなす鳥のように紙飛行機が空を埋めている。
        空を飛んでいる。後に来るものほど、その造形は凝っていて、丁寧な折られ方をされ、滞空時間を伸ばしている。 -- 2014-03-21 (金) 22:59:30
      • 空から飛ばされてくるそれらは紙。
        最初にひらひら降ってきたものと同じ紙。
        ただ折られ方のみによって、空へ向かう意志を見せる紙の飛行機。

        ざあ。と。
        紙飛行機は編隊を成して、いよいよ、メルセフォーネの視界を埋めた。

        「……」

        白い翼たちが通り過ぎて、強い夜風に煽られて空へ空へと飛び去ってゆく。
        その後に、妙ちきりんな人が立っていた。
        いや、正確に言うのならばおかしい点はただひとつ。
        ステンドグラスの破片を散りばめて嵌め込んだかのような、独特きわまるサングラスのようなものが眼窩へと覆い被さっているのだ。

        「ねえ」

        万色の瞳が、メルセフォーネの縋るような視線を捉える。

        「どうやら、キミが僕のマスターだネ?」

        紙飛行機は、まだ空を舞う。星空へ滑空するそれらをバックに、彼は微笑みを見せた。
        夢というのにも憚られるような、突拍子のない光景。

        「そしてどうやら、僕は“キャスター”のようだよ」

        けれど、これが現実であり、真実である。
        彼が“サーヴァント”だ。

        圧倒的な魔力もない。精神を汚染する瘴気もない。彼の背後には伝説が見当たらない。
        ただ、紙飛行機。紙っぺら。そのようなものが、彼を象徴するもののようだった。

        -- キャスター 2014-03-21 (金) 23:17:42
      • 五芒星に祈りを掲げながら、私は渇望する
        頬を伝い、流れる涙に 血で描いた魔法陣を滲ませながら
         
        五芒星に祈りを捧げながら、私は希望を託す
        お願いだから、どうか……どうか私の呼びかけに答えて欲しい
        貴方は、私に残された最後の希望なのだから――……
         
         
         
        震えながら、私はただただ、魔法陣に全てを託して委ねる
        乞う様にして、私は静かに貴方が現れるのを待っていた
        ――……その時
         
        ひらり。
         
        空を泳ぎ、紙が舞う
         
        不思議に思いながら、空を見上げると、距離が近いせいか火星の輝きが一際目立ち、美しい
        燃え盛る炎は、希望に灯火を付ける様で
        ……気が付けば、手に持つナイフの血が、光を反射して美しく輝く
        それはまるで、貴方に捧げたピジョンブラッドの様に
        令呪も、それに呼応するかのように
         
        ひらり。
         
        また、一枚……ルビーの様な輝きの、火星に魅入って居たら藁半紙が降りてくる
        一枚づつ、一枚づつ、ひらり、ひらりと舞うそれは――……
        まるで、貴方が現れるのを待つ、私宛の手紙の様で――……
         
        『……?』
        今までと違い、丁寧に折られた紙が落ちてくる
        それは、折り目がきちんと綺麗で、美しい折り紙
        私宛の手紙の様で、綺麗な折り目に勿体なさを感じつつも――……中を開く
        そうしているうちに、ひらり、ひらりと舞い落ちてくる、手紙の様なものが降り積るのを見ながら
        私は落ち着きと共に、私の声は貴方に届いた事に 気付く
         
        紙の質は同じながらも、折られ方が違うというとはどういうことだろう?
        首を傾げながら見比べながらも――……気付いたら出来あがっていた、白い紙の絨毯を見つめる
         
        また、ひらりと紙が宙を舞う
         
        それは、まるで意思を持つように
        進んでは落ちる紙飛行機をじっと見ていれば――……
        気付いた時には、羽ばたく渡り鳥の群れの様に 紙飛行機で空が白く染まる
        後に来るものほど、凝っていて丁寧な折られ方をされて、滞在期間を延ばしているそれは
        まるで、少しづつ少しづつ――……まだぼんやりとしか分からない
        けれど、確かに存在する貴方の存在を、徐々に誇示するかのように、私には映る
         
        編隊飛行を行いながら、私の視界は辺り一面を紙飛行機で覆われる
         
        それはまるで、意思を持った翼が舞う様に
        夜風の流れに乗りながら、飛び去って視界が晴れれば――……
         
        目の前には、奇妙な眼鏡をかけた男性が立っていた
        ステンドグラス作りのそれは、とても印象的で、ミステリアスな空気を色濃くしている
         
        呼びかけられて、ステンドグラス越しから私を見つめる瞳の彼は言う
        どうやら、キミが僕のマスターだネ? って
        そしてどうやら、僕は“キャスター”のようだよ って
         
        夢じゃない、夢じゃない
        幻じゃない、幻じゃない
         
        幻想的な星空の下で
        火星と、月の一際輝く星空の下で――……
        貴方は、待つ私の所へと現れてくれた
         
        キャスター、と言うが圧倒的な魔力を感じない、けれど瘴気を感じなければ意思疎通はできる
        ……私は、魔術師には詳しい方ではあると思うけれど……彼の事は分からない
        紙飛行機が、彼を象徴するように……英霊というよりは、優しいお兄さんという風貌
         
        私は涙を拭いながら、微笑んで
        そっと、彼の手を取るbr; 繋がりを求めるかのように
        その手に、自分の命運の全てを委ねるかのように
         
        「……貴方は、私のキャスターなのね?
        ……私の名は、メルセフォーネ……」
         
        願いは届いた
        暖かい。貴方と繋がるこの手は、夢じゃない
        これは、私の都合の良い幻じゃない -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 23:53:05

      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028279.jpg

      • 「そうだよ、メルセフォーネ。
         僕は、キミのその涙を止めるために来たサーヴァント、キャスターだ」

        細身に似つかわしくない、大きな手がメルセフォーネの手を包んだ。確かに、体温を伝えて。
        紙飛行機は地上に降り、魔力に戻ってほどけて消えてゆく。輝きとなって。
        “召喚”にしては不思議な光景は消え去り、もとの景色が広がる。静かに燃える夜空が二人を見下ろす。
        キャスターは消えず、繋がれた手に応えるようにその場に残っていた。

        三原色の硝子に彩られた眼鏡の奥。神秘的とも言える瞳が細められる。彼は破顔した。
        「くっ、くっ。僕、ほんとはこんな台詞言うキャラじゃないんだけどネ? でも、キミが、あんまり寂しそうな顔をしていたから……」

        威厳もへったくれもなく、子供をあやし、不安を解消するように大袈裟に身振り、手振りをやって見せる。
        笑みは、どちらかというとぎこちない。珍妙な風貌も相成って、見る人から見れば“怖い”ともとられそうなほどに。
        それでも、初対面の少女に悲しい顔をして欲しくない、といった気持ちに溢れているのが見てとれる。

        メルセフォーネが少し落ち着くと、彼は真面目な顔をした。
        相変わらず、目は隠されていて見えないが。
        とにかく、真面目な顔だ。

        「……ところで」
        「ここは、どこだい。……僕は、どうすればイイ?」
        「キミは、どうしたい。メルセフォーネ」 -- キャスター 2014-03-22 (土) 00:34:51
      • 「……よかった、本当にキャスターが現れてくれて……
        本当に、よかった……」
         
        暖かくて大きな手が、私の手を包む――……
        血の通った、温かみのある人の手を触れたのは、幾年ぶりだろうか
        一見すれば、何ともない交流
        ……けれど、私には――……それはとても、とても嬉しくて
         
        地上に降りる紙飛行機は、意思を持つ『火の元素』が、肉体を持ち『地の元素』へと落とし込められるように
        魔力が解けて、輝きとなって消えて行く
        召喚の魔力で作られた、幻想的な光景も消えて 変わらない夜空の瞬きは、星星が呼吸するかのように輝いているけれど
        貴方と繋がる手は、変わることがなくて……
         
        ステンドグラスの色で、瞳の色も見え辛い人だったけれど――……
        神秘的な瞳が細められると、彼は笑う。私は分からなくて、静かに首を傾げる
        「…………ッ!」
         
        あんまり寂しそうな顔をしていたから……と言われれば
        変な顔をしていなかったか、とか、気恥ずかしさが込み上げて
        上手く、私は喋る事が出来なかったけれど――……
        誰かに、こうして心配して貰うのも、同時に久しぶりの事で
         
        静かに、胸の奥で『それは、とても嬉しい事』だなって、思った
         
        英霊、というよりは……本当に気の良い、優しいお兄さんという感じで
        また、マスターというよりは、手のかかる子供という様な私の不安を拭う様に、身ぶり手ぶりを見せてくれて
        それが、とても暖かくて、心地よくて……そしてどこか可笑しくて
        私は、本当に久しぶりに、心の底からの笑顔になる
         
        一見すると、奇抜な服装もあって、奇妙で怖い顔立ちかもしれない
        『普通』だったら警戒してしまうかもしれない
        ……けれど、彼から感じる魔力の質も、彼自身の性質も
        優しくて、とても落ち着く事が出来る……私に悲しませまいとしてくれる彼が、何よりの証拠
         
        不安そうな表情や、悲しい顔をしてて恥ずかしかったけれど
        彼が穏やかで優しい人だって事にすぐに気付く事が出来て、それはとても幸運だと思う
         
        私が落ち着いた所で、彼の雰囲気が先程の気さくさから、真面目なものに変わる
        ――……恐らくは、聖杯の事についてのお話だろう
        ゆっくりと、ゆっくりと口を開く
         
        「……ここは、神国アルメナ……邪教の魔術で、下界と隔てられた天空に近い場所にある国」
        「……傍に、居て欲しい。私は、誰かが居ないと……生きていけない」
        「……私、は――……」
         
        どうしたいと問われれば、躊躇う
        ――……私は、どうしたいんだろう?
        けれど、聖杯のマスターに選ばれ、令呪が浮かんだという事は
        何か、私の強い願いに反応した事なのだ
         
        「……わからない」
        素直に、ゆっくりと、ゆっくりと語り始める――……
         
        「私は……生きたい、でも 一人では生きていけないの……それは分かっている事なの」
        「皆の……皆の所へ帰りたい、もう、死んでしまった仲間の所へ帰りたい……
        でも、皆死んでしまって、時も流れて――……無理な事なの
        そして、それは宗爛様の手に、またもう一度だけでいい――……触れたいという事も、死んでしまって叶わない」
         
        何故、私は一人生き残ってしまったのだろう……願いも、自分で何が本当に望む事なのか分からない
        生きたいと、思う 死にたくない
        けれど、生きる寄りどころも、嘗ての仲間ももう居ない
        途方に暮れた少女は、自身の気持ちも、分からない
        どうしたらいいかも分からず、沼の底に沈んで視えない 自分の気持ちに揺れ動かされる -- メルセフォーネ 2014-03-22 (土) 01:03:49
      • “神国”、“空に近い場所”という言葉が、彼の記憶を想起させる。
        遙かなる空に召します己の母君に向けて、紙飛行機を投げ続けていた。そして、その裏に隠れていた因縁のことも。
        表情には出さない。(もう、すべて……すべて、終わったことなのだから)

        「……」
        キャスターは黙って最後まで聞いた。

        すっと、メルセフォーネへ手が伸ばされる。先程手はメルセフォーネから伸ばされた。今度は、その逆だ。
        彼は、火星の熾火を背負って、その手を引く。
        そうしてから、メルセフォーネの左肩口を指さす。令呪がぼんやりと輝きを放ち、主従の繋がりを示している。

        「わからないなら、戦おうか」

        快闊な笑みがメルセフォーネへ向けられた。

        「聖杯戦争を勝ち抜いて、手にするんだ。願いをね」
        「別にイマはわかんなくたっていいよ。……ただ、“生存”するんだ。古今東西、弩級の“英霊”が入り乱れる“戦争”の最中でさ」
        「ちょっとワクワクしてこないかい?」

        メルセフォーネの手を握る力は強い。彼は、あえてそうしている。
        迷い、惑う姿。寄る辺をなくし、寄る辺を求め、そして、英霊を召喚すらしてしまった彼女の姿が。
        記憶をなくして孤児院に連れられてきた昔の自分とダブったのだ。
        (“令呪(これ)”がある限り誰かしらから狙われるんだ)
        (どうせなら、それを目標にしてしまえばいい)
        (錚々たる英霊たちを打ち倒して……)(……)(……大丈夫カナ? 僕で)
        (もしかして、無責任なこと言ってマス? 僕は) -- キャスター 2014-03-22 (土) 01:59:13
      • ぽつり、ぽつりと 少しづつだけれど彼女は語る
         
        自分は以前、戦乱の時代で宗爛という主人の元で星詠みをして予言をしていた事を
        そこは、戦乱の時代ではあるが、優勢の為に豊かで、束の間の幸せがあった事
        ……けれど、いつの間にか自分は永い間 眠っていて意識が無くて
        ……気付いた時には、酷い状況に追い込まれていた過去を
        過酷な状況で、生き延びられない自分は、主君の命令でその場を離れた事を
         
        「……あの時、何故私は 離れてしまったのか――……
        何故、皆死に逝く運命の中で、私は生き伸びてしまったのか――……
                                       」
         
        ……言葉は涙で滲んで、それ以上は続かなかった
        蓋をしながら、出来るだけ見ないようにしながらも――……後悔だけが残る過去
         
        伏せて涙を静かに流していると、暖かい大きな彼の手が私に差し出される
        手を取って、引かれれば――…… 涙を静かに流しながら彼を見つめる
        差される指先にある、令呪と、彼の繋がりに、涙を止める
         
        「…………」
         
        彼の言葉と笑みに、静かに頷く
        ……泣いてなんて居られない
         
        「……勝ち抜いて、願いを……」
        戸惑う私の心を見透かす様に、続く言葉に小さく頷く
        「……まだ、願いは分からない……生存、英霊の入り乱れる戦争で……」
        小さく頷く
        ――……正直言えば、戦争は嫌いだ
        だって、嫌というほど人の命が粗末に、無残に消えて行くのを見て来たのだもの
         
        ――……けれど、私は歴史も神話も、伝承も好きだ
        だからこそ、占いや魔術等に惹かれるのかもしれないけれど――……
         
        戦争は嫌いだけれど、これは嘗ての様な、国の上層部の人間の為に、下々が犠牲になるそれでは無い
        視点を変えれば、これは『聖杯を巡る英霊達の戦い』で、それはまるで、神話の物語への扉を開けた様にも見える
         
        ……何より。キャスターの笑みと、ワクワクしてこないかい?と語る表情と人柄が
        温かくて、優しくて。力強く握る手からも、心が安らいで安心できるから
        静かに頷いて、服の裾で涙を拭うと頷いた
         
        「うん……昔の、英霊たちは見てみたい、神話とかは大好きだから」
        「それに、貴方のこの手は、好き……繋がって居たい。繋がりを絶ちたくない」
         
        キャスターの揺れる心に気付くと『そんなことない』って言いたそうに微笑んだ
         
        無責任じゃない――……貴方は、呼びかけに答えて出てくれた
        無責任じゃない――……貴方は、泣いて不安に思う私の心を和まそうとしてくれた
        無責任じゃない――……貴方の言葉は、その通りだもの
         
        泣いてなんて居られない……私は、生き延びる為にも戦わなければならないのだから -- メルセフォーネ 2014-03-22 (土) 02:28:25
      • キャスターの元となった人物は平凡とは云い難い数奇な人生に翻弄された。だが、それに戦争は絡んでいなかった。
        “戦乱の時代”どこか遠くの国の話。そして、ここはどこか遠くの国。
        メルセフォーネの言葉ひとつ、ひとつに頷く。大切な人と離れ離れになる悲しさは彼もよく知っていた。

        肯定、否定、どちらもなく。あるがままに認識する。
        メルセフォーネの言葉から、生きようとする力を感じると、それに応えるように握る手の力も強まった。
        微笑みに、微笑みを返す。少々、苦笑いだが。
        (……やれるだけ、やるか)
        (なに、僕だって弱くはナイ。頑張ってみようじゃないか)

        「わかった」
        「それが、キミなんだな。メルセフォーネ」

        キャスターには姉が居た。
        双生児同然の関係であった。いつでも一緒で、慰め合い、笑い合っていた。
        ある時に彼女は、弟を助けるために自らその手を離し、一人、過酷な人生を辿ることを選んだ。
        離れていく温もり。それを、彼は思い出している。

        「僕はこの手を離さない。約束しよう」

        芸人紛いの眼鏡をかけて、紙飛行機を操る。魔術師というよりか奇術師じみた魔術師は、そんな形でマスターへ忠誠を誓った。
        宝石や花のように可憐な少女と、火星の近づいた星空と、天空に近い邪教の神国と、戦の勝利を願う祭壇。
        彼の存在はどうにも浮いていた。重厚な油絵に、お菓子のおまけのシールを貼り付ければこんなミスマッチにもなろうか。
        でも、彼の言葉には確かな真実が含まれている。ここから手を引き、お伽話のような闘いへ連れ出せるだけの説得力がある。

        「うん」
        「それはそれとしてネ?」

        そして、その雰囲気を気の抜けた台詞が吹き飛ばす。どうも、この空気に耐え切れなくなった。照れ隠しというやつだ。
        色眼鏡で周囲を見回し、きょろきょろと落ち着きなくしていたが、そうするうちに焦りが浮かぶ

        「ここ、祭壇だよね」
        「キミ、一人だよね」
        「ここ、怖い国なんだよね」
        「…………イマの状況って一体、どんな感じ?」
        「僕、なんか、凄く。嫌な予感がしてきてるんだけど」

        -- キャスター 2014-03-22 (土) 21:58:28
      • 戦乱の時代の、国の栄光と衰退を賭けた争いの中で
        彼女は、その時代に生を受けた人間としては恵まれていた環境かもしれない
        戦乱の時代の、生まれの中で――……争いの渦中に身を投じながらも
        生きて居られる事自体が、とてもとても幸せなのかもしれない
        ――……けれど、誰も自分の周りに残っていないのは あまりにも辛くて――……
         
        答えるように、握る手が強まって……苦笑交じりの頬笑みの下
        彼が、どうやら私の支えになってくれるだろうことを感じて、とても安心した
         
        「…………」
        無言で頷いて、肯定する
         
        手を繋いでいるせいか、それともマスターとサーヴァントの関係だからか
        或いは、互いに魔術師であるせいか――……
        おぼろげにだけれど、彼の心の中の想い出の……女の子の姿が見える
        切り取った写真のアルバムを、見るように、想い出が浮かんでは消えて 浮かんでは消える
        ……彼の事も、まだ詳しく知らないけれど――……
        彼にとって、その女の子は、とても大切な人で……何かのきっかけで寂しくなった事だけは、何故か直感した
         
        「……ありがとう、私もマスターとして出来ることは全て、尽くすわ……」
         
        奇妙な眼鏡と、紙飛行機――……不思議で優しい、奇術師の様なキャスターが忠誠を誓ってくれる
        手を取られながら、傍に居る事を誓ってくれる それは、とても嬉しい事――……
        火星が近づき、戦争の幕開けを知らせる空の下で、天に近い、邪神の神国の、戦の勝利を願う祭壇で
        不吉さが不穏にも近づいてくる足音にも気付かずに――…… 私は無邪気に、安堵の笑みを浮かべた
        それは、彼の言葉と真意、それから、お伽噺の物語に……彼となら一緒に歩んで行きたいと思ったから
         
        「?」
        首を傾げる。『なんでしょうか?』と、言いたげに
         
        「はい、祭壇です……この国の戦の勝利を願う為のものです」
        「はい、一人です」
        「……そう、です……」
        「……えっと……」
         
        キャスターの言葉に、息をのみ 青ざめる――……
        忘れていた――……今の現状と、奴隷の様な私の立場を――……
        不安げにしていたのは、これからの聖杯戦争での不安では無い
         
        …………私が、もっともっと――……聖杯の戦争よりも恐れていた者は――……
         
        かたかたと、かたかたと震えながら青ざめて、声を出そうとする
        喋らなくてはいけない
        伝えなければならない
        ……けれど、心の底まで染みついた恐怖に支配させられる
         
        カツカツカツカツ
         
        夜空の下に、相応しくない優雅なヒールの音が、嫌に響く
        聞きなれた、あの 悪魔の様な女の――……
         
        きゅ、と震えながら キャスターの傍に寄って、すがる様に、護りを乞う様に胸に顔を埋める
        後ろを、振り向いては行けない
        振り向けば、神話の様に――……きっと、その場で私の命の灯火は、潰えて冥界に引きずられるでしょうから -- メルセフォーネ 2014-03-22 (土) 22:36:21
      • メルセフォーネの後ろで、キャスターと向かい合う様に
        サバトの夜宴の女司祭でもしているかのような……不吉さを身に纏いながら、一人の貴婦人が現れた
        昼間に、或いは舞踏会に
        そういう場所であれば、きっと優雅で気品のある女であっただろう
         
        けれど、戦争を象徴する星空の下、戦争の為の祭壇に現れた
        山羊の角に、額には第三の目、肘から手の先までを鴉の羽で蔽う女は
        どう見ても、悪魔の化身にしか見えない
        ――……実に、禍々しい気配を纏いながら、口元を歪ませる
         
        「……まぁぁ……?
        これは、一体どういう事なの? メルセフォーネ……
        説明をして、頂きたいわ?
         
        ……大切に、大切に『飼ってあげていた』筈、ですわよね?
        なのに、何故私の元から逃げ出そうとしたのかしら……?
         
        えぇ、えぇぇ…… そうですわね、本来なら今すぐ貴方の首を狩る所でしょう
        けれど――……貴方が私に令呪を寄こすのでしたら、今回の不祥事は見逃して差し上げますわ?」
         
        出来ますわよねぇ? 
        主人に逆らうなんて、愚かしい事しないですわよねぇ……?

         
        読唇術等無くても、そんな女の声が聞こえてきそうだ
        ――この女は、きっと、それが狙いだったのだろう
        だから、きっと彼女がキャスターを『確かに召喚した』所で現れて、令呪を寄こせと言ったのだ
        金の卵を産む鶏が、目の前に居るのであれば
        金の卵を産んでから、締め上げて殺してしまえばいいのだから――…… -- クリューエル 2014-03-22 (土) 22:46:43
      • (……だよねぇ)

        陳腐な言葉で表すと“籠の中の鳥”? いや、彼女の儚げな様子を鑑みて、“標本箱の針から抜けてきたモルフォ蝶?”
        それよりももっとずっと……メルセフォーネは、今にも窒息してしまいそうなぐらい、一人では生きていけないように見えた。
        付き添いもなく、こんな夜のこんな場所に居ることがそもそも何かおかしいのだ。
        なるほど、キャスターの言葉に彼女は、酸欠したように青褪めている。

        カツ、カツ、カツ。
        高飛車で傲慢そうな靴音!

        果たして現れたものは、世にも美しい貴婦人、なおかつ、世にも醜悪な魔女であった。
        華美であればあるほどいっそう、魔性を深める。そういう類いの、悪魔のような……。
        彼女の口から出てくる手前勝手な主張を聞くまでもなく、メルセフォーネと“悪い魔女”の関係を把握できてしまう。
        キャスターは、ちらりと横目でメルセフォーネを見遣った。
        『はい』と、震えた声が今にも絞り出されてしまいそうだ。

        (“令呪”よりもよっぽど、“呪い”のようだな)

        キャスターは、自分の手を握り、開く。指先にまで力が満ちている。メルセフォーネは魔力の潜在が随分と高いようだ。と、彼は思った。
        生前にもできなかったことができそうで、彼は、なんだか心が興奮に満ちる。

        「マスター」
        「いえいえ、貴女のことではなくて」
        「こちらの、小さなほう。メルセフォーネ。……さっき、約束してしまったからね」
        「たとえ、イマ、彼女へ令呪を譲渡しようとしても、この手は離せません」

        「そんじゃ、“英霊(サーヴァント)”キャスター。僕自身の判断で、初陣といかせて頂きます」

        片手を振り広げると、天の星が輝きを増してこちらへ迫った。
        嘘ではない。確かに、それは起こっている。火星に見守られて、大量の光の塊が、天を埋め尽くして降ってくる。
        それは、“火球”だ。

        「《空まで届く平面位相幾何学(アンフルフィルド・ウィッシュ)》」
        「中身は、アグリッパ惑星の魔方陣、五次、“ファイアボール”」
        「では、ご笑覧!」

        その軸にあるものは、紙飛行機だった。炎を纏いながら燃えず、しかし、火勢を強めて、意志があるかのようにクリューエルに迫る。
        ひとつ、ひとつが上級魔法レベルの威力をもち、その数は無数にある。次から、次へと、それは降り注いだ。

        「うぅーん、まるで流星雨のようだネ、マスター」
        「どうせだから、なにかひとつ願い事でもかけてみる? 三回ぐらい言えるでショー。この数ならね」

        彼の指先には、広めの翼を持つ紙飛行機が乗っている。
        微笑むと、メルセフォーネの手を有無を言わさず引き、走る。

        「オムニシエント・オウル」
        「……この紙飛行機の名前なんだけどね? “俯瞰する梟”……なんて。あはは。僕のオリジナルです」

        オムニシエント・オウルは青く輝く。
        祭壇の端まで来ると、そこから、メルセフォーネともども、飛び降りた!

        「四次魔法陣、ギガンティック」

        二人が落ちたのは、地面ではなくて、紙。
        大空へ翼を拡げた“オムニシエント・オウル”の上であった。
        夜風が頬を撫で、紙飛行機は風を切る。
        二人は、紙飛行機に乗って飛んでいた。

        「絶景だねぇ、マスター」
        「……僕は、もしかして勝手なことをしたかな?」
        「戻りたい?」
        「どっちにしろ、この手は離さないけどね」

        あははは、と彼は笑った。 -- キャスター 2014-03-23 (日) 00:41:26
      • 山羊座8度 『家の中で幸せそうに歌う小鳥?』――……いいえ
        天秤座1度 『突き通す針により完璧にされた蝶の標本?』――……いいえ
         
        突如、過呼吸でも引き起こした様な彼女の姿は、まるで『中毒を引き起こした鶏』のよう
        呪術に使用される為に、実験台にされた鶏が、狂ったり引きつけを起こすかのように
        ――……そうでなくても、彼女の弱弱しさは、まだ独り立ちも出来ない雛に等しい
        このまま彼女一人でいれば、いつか小鳥を狙う鷹にでも、喰われるだろう
        夜の祭壇で独り、まだ拙い子供の様に視える彼女の異和感――……
        その違和感も、症状を起こしたかのように震える答えも
        全て全て、ヒールの音と共に 容易く答えは解けた
         
        高慢で豪奢かつ優雅に――……
        暴君の色を何一つ隠さず現れる悪魔は『The Devil』のカードを連想させる
        いいえ、彼女は『The Emperor』の顕在の様
         
        何故、『The Emperor』か? ――……それは彼女が実に気高く、美しく
        牙も無く、悪臭も無く、実に見目麗しく、天使の様にも視える悪魔……だから
        その悪魔を、人はルシファーと呼ぶ。悪魔達の頂点に佇む、悪魔
        またの名を『暁の子』それは、暁の光、明星の星を示すものであり、皇帝の魔術的称号
        そして『The Emperor』の支配星は火星であり、ゲブラーに対応する
         
        それは、まるで下僕(メルセフォーネ)に与えた、ピジョン・ブラッドが象徴のヒントを示すかの様に
        火星の宝石……ルビーを代償に、血の様に輝く火星の星空の下で、火星に関連の深いサーヴァントが顕在する祭壇に
        視えない因縁を思わせるかのように――……火星の悪魔が、その姿を表す
         
        火星のサーヴァントが連想する通りの、彼女達の醜悪な主従関係
        ちらりと横目でマスターを見れば、がたがたと腕の中で尋常ではない程に震えていた
        ……このまま、あの女があと1歩でも近づけば――……今すぐにでも、震えた声で『はい』と言いかねない程に
         
        心臓に纏わりつく蛇に睨まれたかのように、マスターの精神は、あの女に支配される
         
        メルセフォーネは、魔術分野のアスペルガだった
        それしか知らない、彼女の人生には、それしか出来る事が無い、鍛錬された魔力は逸脱していた
        更に、後程知る事となる事実だが――……彼女の火星(=攻撃性・武器)は魚(=神秘、オカルト)の色に染められ相性が良く使い勝手が良い事
        その上、彼女のIC(根本)には、冥王星と天王星が合である……
        根本(IC)から始まる4室は、無意識を象徴するハウス……ここに冥王星があるという事は、魔力も底無しである事に近い
        無意識の室(場所)で、爆発的なエネルギーを示す冥王星があるのだから……
        更に、冥王星は蠍の支配星、そして蠍は、副支配星が火星であり、冥王星が発見される前は、火星が蠍を担当していたのだ
        冥王星は、1オクターブ高い火星とも言われ――……実にキャスターと、そのマスターの魔力の質も相性が良かった
        生前に出来ない事も、出来るだろう……そして、それは『火星(軍神の)の加護』の色を加えて
         
        『まぁ……賢明な判断ね?』
        実に優雅な頬笑みで『……あの子よりも、私の方がマスターに相応しいでしょう?』と、続けようとして
        否定されれば、ぴくりと一瞬だけ眉が動く……顔色は変えないものの、声には不機嫌な色を載せて
        『あっ……そう』
         
        不愉快な回答……キャスターなんて、別に要らない
        彼も所詮は、羽色の違うペット、或いは高価な宝石を見せびらかせて自慢する為の所有物としか見て居ないのだから
        私の手を払いのける、忌々しい英霊の胸元に居る少女を……今すぐに魔術で仕留めればいい
        魔術に長けた『神の名を与えられた国の公爵夫人』は、余程腕に自信でもあったのだろうか?
        杖を取り出せば、彼女の足元に魔術の法人が浮かび上がる――……
        因縁かと言いたくなる様に、今まで殺して来た少女達の血で塗られているかのように
        彼女の魔法陣も、血に染まる様に赤い炎と輝きに包まれていた
        もし『ただの魔術師』での戦いであれば……きっと彼女は、その高慢さに相応しい実力を持つ魔術師だっただろう
        炎の蛇が、魔術陣から浮かび上がれば、キャスターめがけて喰らい尽さんばかりの勢いで飛び出してくる!
        けれど、それも無意味な事である事に……まだ気付かない
         
        火星の輝きが増す
        互いの魔力に反応するように――……
         
        いいえ、呼応するのはキャスターの魔力
        彼の魔力の高まりに、息づいて輝きを増す――……それは、戦の女神の祝福の色を添えて
        下等生物の蛇が、所詮は『たかが一般の魔術師』の蛇が
        英霊の、そして戦の女神の祝福を思わせる輝きの火球には、到底太刀打ちできない
         
        まるで、火星が降り注ぐかのように、赤く燃え上がるファイアーボールが、彼女めがけて降り注ぐ――……!
        「んなっ……!?馬鹿な! たかが紙飛行機でアレらを全て操っているというのか――……!」
        軸にある、紙飛行機が炎を纏いながらも燃えない様にも
        ――……それ以上に凄まじい魔力の英霊のファイアーボールに、驚きを隠せないまま、立ち尽くすしか出来なかった
         
        紙飛行機を軸に、強く強く燃えて行くファイアーボールが降り注ぎ
        その中心で、魔女はお時話の様に、火に焼かれたまま死ぬまで踊り狂うでしょう――……
        高慢に鳴り響かせるヒールは、炎で熱されながら――…… -- クリューエル 2014-03-23 (日) 01:46:30

      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028301.jpg
      • 私は、キャスターの胸の中で、怯えて震えるだけしか出来なかった
        弱い、弱いマスターで……ごめんなさい
        ……私は、この後の戦いで……立って居られるのかしら?
        ――……目の前の悪魔にすら、私は震えているのに……
         
        ぎゅっ、と。彼の服を握る手に力が込められる
        ――……けれど、悪夢ももうお終い
         
        凝縮して高められていく、凄まじい魔力と共に、恐る恐る、視線だけでも空へ向けてみれば――……
        それは、紙飛行機と火星を中心に、赤く赤く燃え盛る炎の星星の、なんて美しい輝きが広がるのでしょうか
        灼熱の煌きの星星は、息をのむほどに美しい――……
         
        「……本当に、流星みたい」
        「……叶う、かなぁ……お願い」
         
        ぼんやりと、降り注ぐ炎の流星に願いを叶えようとして――……
        既に叶っている事に 私は気付く
        私は、願う事なら……もう一度、誰かの手に触れたかった
        そして、誰かに寄り添って貰いたかった――……
        それを、貴方は今日で2つも叶えてくれた
        それは、それは 何て素敵な魔法でしょうか……
        小さく首を振って、キャスターに微笑んだ
         
        「多分、きっと叶うと思うけれど――…… 私には今は、必要無いと思うの」
        だって、貴方の存在が。私にとっての希望で、流れ星なのだもの
         
        彼の指先を見つめる――……広い翼を持つ紙飛行機を一緒に見つめて
        貴方から微笑まれたら、手を取られて、一緒に走り出す
         
        「オムニシエント・オウル?」
        「飛行機の名前……俯瞰する梟? 素敵。オリジナルの魔術……いいな、私も何か作りたい
        そういえば……先生は射手座? ベルトのマーク、射手座のもの、でしょう?」
         
        青く輝くオムニシエント・オウルを見つめたまま――……
        祭壇の端で、二人で飛び降りながら、彼の魔法のショーに案内されたかのように
        落ちたのは紙の上――……頭上には、オムニシエント・オウルが翼を広げて飛び、空を舞う
         
        射手座なら、俯瞰する梟に、密かに二つ名を付けたい気分だった
        付けるなら『住処を移動する、ペリカン』だろうか?
        それは、自分の相応しい環境へと移動する、射手座の19度のサビアン
        羽ばたく紙飛行機の上で、ユートピアを目指す
        それは、きっと――……聖杯で血塗られた道でしょう
        争いは嫌いな筈なのに何故だろう――……彼と居ると、こんなにも胸がわくわくするのは
         
        「うん、とても良い眺め」
        小さく首を振って、否定する。勝手なことにも、戻りたいかとの問いの二つに
        握る手の温かさが心地良い
        「……私も、離したくない」
         
        笑う彼に、私も笑う
        ――……キャスターと、ずっと一緒に居たいなと思う心を胸に秘めて -- メルセフォーネ 2014-03-23 (日) 02:08:38
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
  • 囚われた鳥籠の中で、震えながら謳う小鳥 -- 2014-03-21 (金) 02:32:53
    • ここから、私が彼女の人形として、生きる日々が始まった
      ……唯一の救いは、私の予知能力と占い能力に長けていた事だった
       
      詳細をあまり話したくないが、私も元アルメナの出身で
      元を辿れば 占いや魔術の権威の家の出身だ
      魔術に長けた神国アルメナでは、名家だったのだ
      まして、神の寵児を思わせる様な運命を宿した私は
       
      密かに 密かに
      人の命運を綴り、読む名門のモイラ家で
      神意の宿った運命図を生まれ持った少女が誕生し
      予知能力があると知られた時
       
      公爵閣下は『是非に』と、大金を積んで、私を養子として引き取ったのだから
      そして『ある時』まで私は公爵閣下の元で大切に大切に育てられ、成長し
      ……その時の私は、愚かにも愚かにも ただただ大切にされていると勘違いをしながら
      時折、他の貴族の方々に自慢げに紹介をされて、愛されていると錯覚していたのだった
       
      公爵閣下お気に入りの、月明りのレディとは、見知った仲だった
      ――……とはいえ、たった一度きり
      公爵閣下が、彼女を酷く気に入り、招いたお茶会に一度だけ同席して
      愚かにも無邪気にお茶とお菓子を楽しんだ程度だったのだけれど -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:43:58
      •  
         
         
        『公爵閣下のお気に入りで、予知の出来る娘なのでしょう?
        えぇ、えぇ……私は貴方を初めて見た時から、とてもとても気になっていたのですよ?
        ……ふふ、御安心なさい? 貴方を、ほんのちょっとした不吉な予言で激怒し、手元から逃すなんて愚かしい事
        決して私は行いませんもの……』
         
        ――……実に優雅で、洗練された仕草は、指一本すらとっても完璧な動きで
        その愛くるしい笑顔と、官能的な口元の作る微笑みは、同じ女性の私ですら心が蕩けそうになる
        その類稀なる美貌と、魅力で どれだけの人の心を奪い
        どれだけの人が彼女に騙されて、命を落とされたのだろう
         
        ……けれど、私は彼女に騙されない&br; ……どんな、女性か知っている
         
        ……だって……彼女の心が私に囁くのだもの
         
        『例え、元が名門家の娘だろうが
        どんな素晴らしい能力を持っていようが
        下賤の者の下で戯れて暮らして、穢れた小娘なんて
        卑しい血を引く者と、どう違うのかしら?』 ――……って -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:52:14
      • 囚われた鳥籠の中で、震えながら謳う小鳥の様に
        彼女の機嫌を決して損ねないように
        常に彼女の求める答えを正確に選ぶように
        顔色を伺いながら、ご機嫌を取る日々が始まった
         
        決して、逆らってはいけない
        決して、不快にはさせてはいけない
         
        ……彼女の機嫌の良いうちは、綺麗に身を飾られ、大切に大切に愛されて可愛がられ
        『お気に入り』で居られる
         
        それは彼女に飼われたペットの、最大の役目であり
        唯一の処世術
        -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:57:20
      •  
        慎重に慎重に
        私は言葉を選びながら、日々を予知していき、彼女に仕えた
         
        そして、彼女は世間に私の存在を隠蔽し
        私の行う予言や日々の占いを、貴婦人達のお茶会で披露し始め
        美貌だけでなく、予言の力を手に入れたように見せかけた彼女が
        以前よりも注目される様になったのは、言うまでも無い
         
        周囲から評判も良く、彼女のご機嫌もおおむね良く保たれ
        多少の失態を、私が時折……いや、多分気付いていないだけでもっと頻繁に粗相をしていたのだろうけれど
        それに彼女が目を瞑ってくれる程度には
        ――……いえ 多少の瑣末事には寛大な態度を取って貰える位
        私の占いは、彼女の人気に貢献できていたのだった
         
        囚われた鳥籠の中で、震えながら謳う小鳥の様に
        彼女の求める日々の予言を語る 小鳥として
        辛うじて 辛うじて
        命を繋げて行く事が出来た -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 03:05:04
      •  
        他の奴隷たちから見れば、実に私は恵まれているかのように見えただろう
        他の奴隷たちから見れば、実に私は彼女に寵愛されているかのように見えただろう
         
        ――……冗談じゃない
         
        だって、彼女の求めているのは『日々の占い』でも『予言』でもなくて
        彼女の人気に繋がり、貢献できる言葉なのだもの
        それは、占いや予言を通したお世辞と変わらない
         
        ――……冗談じゃない
         
        だって、それは周囲から聞いて『実に都合が良くて、耳に良い言葉』なのだもの
        彼女も、その周囲の者達も
        占いや予言の耳障りな言葉なんて聞きたくないのだもの
         
        都合の良い言葉で、聞く者が嬉しく都合の良い言葉だけを慎重に選ぶ日々は
        酷く酷く
        私の心と神経を消耗し、常に彼女のご機嫌とりをする日々に、気が触れそうだった -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 03:13:15
      •  
        こんなのは、占いでも予言でも何でもない
        ……只の、美しい言葉で飾り、主人のご機嫌を取るだけ
         
        徐々に心と精神をすり減らしながらも
        それに気付かないまま――……いいえ
        それ以上に怖い、死と隣り合わせの日々に、私の神経は麻痺していたのだった
        自分の精神の異常事態にすら、私自身が気付けない
         
        ――……このままでは、いずれ発狂して死ぬのも時間の問題だ
        いつの間にか、どうにかして私はここを逃げなければ と
        脱出する方法と、生き延びる道を探していた
         
        ……けれど、私には そんな方法も
        まして、一人で生きて行く事も出来ない
        ……もし、それが可能であるなら――……私はきっと、ずっと前にその道を選べたのだから
         
        『どうしたらいいの?
        何故、私は人の運命は見れるのに、自分の運命は見れないの?
        誰か!誰か答えて……ッ!
        お願いだから私に答えを与えてよ!』
         
        ……私には、他の人の命運を 答えを神は授けるのに
        どうして――……どうして私の答えはくれないの!?
         
        ベットの上の枕を割いて、当たり散らしながら
        ――……八つ当たりした所で、それが何の解決にもならない事を知りながら
        けれど、私には抑えきれない程の衝動で
        張り裂ける胸の代わりとして、枕を割いていたのだ
         
        それは、まるで飛べない鳥が羽ばたくかの様に
        中毒を起こした鶏が、足掻く様に
         
        飛べない鳥が、いくら羽ばたいた所で、飛べないのは分かっている
        だって、それは『当然』なのだから
         
        ――……けれど
        彼女に奇跡は起きたのだ
         
        飛べない鳥は、羽ばたいても決して飛べないだろう
        けれど、足掻く鳥に、異変を感じて 人が助けの手を差し伸べるかのように
        飛べない鳥の、足掻きは神に届いたのだ
         
        暗闇に、月明りだけが差しこむ部屋の中で
        鮮血の様に輝く光が、左腕上腕部から放たれる
         
        血を思わせるかのように、赤い 紅い令呪が浮かぶ
        ――……その血の様な赤は、火星の色
         
        そして、この日は地球に最も火星が近づく事を日々のホロスコープで把握していた
         
        地球に火星が近づく時――……それは、戦いや戦争の幕開けでもある
        血塗られた運命である事はわかってる
        けれど、今の私には――……
         
        例え、その道が他の人の犠牲で成り立つ願いであっても
        それを選ぶしか、自分が生きて行く道は無いのだ
         
        毎日の様に占いをして、覚えている
        今日の、天体の配置も
        そして、大まかではあるけれど、明日の天体の配置も
         
        今は『活動』宮のグランドクロスが出来あがっている
        それは、自分の運命に常に挑戦していく事で 人生の開ける運命図
         
        ……迷っている暇は無い
        逃げるタイミングも、今しかない
        腰の重い私は、この絶好の運気を逃したら……きっと
        後はここで、私の気が本当に触れるまで、搾取されて、要らなくなったら捨てられるだけの末路なのは分かっている
         
        慎重に 慎重に――……
        私は彼女の館から脱出した
         
        神話の様に 決して振り返ってはいけない
        神話の様に 振り返ったら……きっと私は彼女に掴まって、命を落とすでしょう -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 03:35:51
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
  • 悪魔の夜宴 -- 2014-03-21 (金) 02:22:24
    • クリューエル・コシュマール
      別名、月明りのレディ
       
      それは、デビュタントで公爵様の前に出た時
      公爵閣下自らに『麗しい』と称され
      彼女の美しさを称して特別な呼び名を頂いたもの
       
      『人形遊び』
       
      奴隷を使った雅な遊びの一つ
      それは『生きた人間を、人形として扱う』生きた人形遊びとして、ペットの様な扱いをするのである
      気に入った人間をペットの様に飼い、好きな服や化粧で飾り立て、首輪を付けて外へ出て散歩をしたり寝食を供にさせたり、会話をする
      一見、大事に扱われているかのように見えるが、所詮は『人形』
      子供が人形遊びに飽きたら髪を切り刻んで、元の姿から徐々に改造を施し、時には捨てるように
      それに飽きたら自分達と同じような改造を施したり、時には殺して新しい人間にとりかえるだけ
      全ては自分の御主人様の気分次第である
       
      彼女は、神国アルメナの貴族の中でも 最も貴族らしい人種だった
      下々の人々を下賤と見下し、一見『慈悲』で装飾した仮面で
      羽色の変わったペットを飼う様に、生きた人間を扱う
       
      私は、彼女に捕まった次の『人形』なのだ
      気分を損なえば、或いは彼女の気分次第で
      きっと簡単に、私の命の灯火は 弄ばれて消されるだろう
      それは、何としても避けなければならない
       
      絶対に、避けなければならない -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:30:38
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
    • 水槽から放たれた魚と、獲物を捕まえた鳥 -- 2014-03-21 (金) 01:58:34
    • 宗爛様と別れた私は、一人で領地を目指し旅をしていた
      本当に、本当に此方が有利になったのは一瞬の出来事だったのだけど
      あのタイミングで私を返した主君は、今思い返せば名君だった
      ……今となっては、それを知る人も誰も居ないのだろうが
       
      お陰で、私は 戦乱の酷い状況の中でも、無事に道を進む事が出来たのが幸いだった
      そう
      宗爛様の秀逸な状況把握能力で、ゆっくりでも一歩づつ私が故郷に向かう途中で
      ……あの女に捕まるまでは -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:03:18
      •  
        『まぁぁ……下賤な下々の元へと降り立てば――……随分と面白いモノがうろついているのね?』
         
        誘う様な、甘ったるい魅惑的な声が響く
        振りかえると、漆黒の羽が まるで不吉な鴉の様に
        水槽から放たれた魚を、餌に捕まえた鳥の様に
        獲物を見下ろすかのようにして、その女は立っていた
         
        ――……彼女の名は『クリューエル・コシュマール』
         
        私の故郷、神国アルメナでは名の通った侯爵令嬢だった
        貴族の嗜みとして、人の命を弄ぶ趣味を持つ、おぞましい習慣の残された土地で
        彼女は「人形遊び」という名の奴隷遊びを先駆けた者として
        そして、また通常では考えられない様な容姿が極めて美しいと評判で
         
        『月明りのレディ』の名を冠する女だった
         
        神国アルメナの常軌を逸脱した感性では、彼女はそれはそれは美しくて
        嘗て、私も憧れていた女性だったのかもしれない
         
        ――……けれど 今は
        獲物を見下ろしてくるような女の
        額に第三の目を持ち、山羊の角を頭から生えさせ、手首から肘にかけて鴉の羽の様なものが腕から生えて覆っている女は
        私には、悪魔の化身にしか見えなかった
         
        それはまるで、水槽から放たれた魚を、餌に捕まえた鳥の様に
        私は彼女に捕獲されたのだ
        次の、新しい玩具として -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 02:15:04
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
    • それは 神の定めた予定調和の様に -- 2014-03-21 (金) 01:50:30
    • それはまるで、神意の宿った運命図のように
      人為的に操作されたかのように、私の運命図は特別なものだった
       
      一つ欠けたソロモンの印象、ダビデの星 それはまるで 神の寵児がこの世に生を受けた様な図なのだ
       
      人は生まれる時に、10の天体と物語を持って生まれてくるが
      それのどれもが、私の図は占いや魔術に適していた
       
      それはまるで、私に与えられた使命だと言わんばかりに
      拙い占い師でも、驚く程に稀有な星を持っていた
       
      それはまるで、私の宿命だと言わんばかりに
      ……今の居場所が終わったのなら、次の居場所へと
      決められていた命運の様に……
      http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028254.jpg 
      -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:57:25
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
    • 契れる鎖、離れる絆
      • ――……今の時代よりも遥か昔
        遠い過去 今となっては歴史の書物に記されている戦乱の時代
         
        その時代に、私は密かに、とある主君に拾われて、星を読み戦乱の世の流れを見ていたのだ
        彼の名前は、宗爛
        今は亡き、私の唯一の居場所を与えてくれた主君
        ……けれど、あの人の事を知る人は、誰も誰も居ないでしょう
        だって、あの人の名前は、歴史の書物には記されていないのだから
         
        別に、恋仲ではない
        ……時折、いえきっと私の見えないところでもっと勘違いをされていた気もするのだけれど
        互いの関係は『主君とそれに使える僕』だった
         
        彼は、捨てられて 途方に暮れていた私の手を取ってくれた人
        私の、使える主人
        唯一、安らぎと居場所を提供してくれた人
         
        例えるなら、それは私という現実では生きられない魚の水槽だったのだ
        ……なのに、何故……
        私は『あの時』自分に繋がれた鎖を解いてしまったのか……
        -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:27:04
      • 『それ』は 悪夢の様なゾド要塞包囲戦
         
        ……私は、永い永い眠りに囚われて、現状を、戦乱の流れも把握していなかった
        眠りから覚めた時には、変わり果てた現状に
        仲間の死体で埋め尽くされた周囲に
        一気に不利となっていた此方の軍に、唖然とした
         
        血と腐臭の充満した匂い、仲間の肉を喰らい生きる日々
        それは、本当に地獄の様な日々だった
        元々、肉を嫌うとはいえ、それを食べなければ生きていけない
        朽ち果て、物言わぬ躯となってしまった仲間の血肉を啜りながら
        泣きながら私も生き延びようとした――……
         
        けれど、永い眠りにつき、弱っていた身体に
        元より、只でさえ弱く、肉を受け付けない私には、それを食べても殆どを戻してしまう
        どんどん衰弱する私は、このままだと死んでしまう
        ……もう、既に
        占いなんて無くても、予言なんて無くても
        誰しもがこの先の行方を確信していた -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:39:04
      • 『占い師、最後の命令だ
        お前はもう、これ以上は連れて行けない
        先に一人で領土に戻れ』
         
        本当に一瞬だけ、有利に風向きの変わった状況で
        宗爛様は、私にそう言った
         
        ……私は、驚いて首を振ろうとしたが……
        もう、私が居る必要が無い事は、言われなくても分かっていた
         
        『どうか、お願いだから傍に置いて下さい』
         
        ……そう、我儘なんて言える状態でもない事は、明白だった -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:42:50
      • 『……宗爛様……
        きっと、必ずお戻りになりますよね……? 必ず』
         
        『……あぁ』
         
        何故、この時 私は離れてしまったのだろう
        それは、私を大人しく従わせる為の嘘である事に、気付いていたのに――……
         
        愚直にも、愚かしくも、主君の言葉を信じた私は
        拘束する鎖を自ら解いて、頭を垂れた
         
        『かしこまりました、宗爛様』
         
        命令を受け入れた私を見れば、静かに静かに、宗爛様は去って行った
        ……嗚呼、何故私は……
        あの時、去っていく貴方の背中をただひたすら見つめていたの……?
         
        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028295.jpg 
        -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:47:06
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg
  • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028281.jpg
    • 原罪―メルセフォーネ・モイラ―
      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028294.jpg
      • お願いだから 私の鎖を解かないで
        貴方との繋がりを保てるのなら――……
         
        たとえ私が、貴方の畜生になってもいい
        貴方が望むのであれば……私は心の臓でも差し出すから……
         
        ……だから どうか――……
         
        私と繋がったこの手を、もう離さないで……
        絶対に、離さないで -- メルセフォーネ 2014-03-21 (金) 01:14:54
      • http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp028282.jpg

Last-modified: 2014-04-22 Tue 23:36:37 JST (3650d)