名簿/476031

  • ぬめる
  • ねこのものがたり 蛇神様と少女 
    むかーしむかしのおはなしです。山々の連なる奥に、ドがつくほどのド田舎の村がありました。
    そこには「蛇神様」とよばれる ふしぎな神様をまつる像がありました。
    なんでもこのかみさまは豊作のかみさまとしてあがめられているそうです。白くて、とても長い長い体であるといいます。
    さまざまな言い伝えが多く、たとえば犬、たとえば猫、たとえば熊、いっぱいその姿を見た人たちの歴史にはいろんな姿でのこされていました。
    結果として、ながいので蛇なのだろうということで「蛇神様」として祭られているそうです。いいかげんです。
    蛇神様がとおると荒地でさえ草木の緑に溢れ、体を地面にもぐらせればたちまち水がわくとつたえられています。
    そんなお話のある村に、ひとりの少女がいました。
    とってもやんちゃで、男の子のような元気な女の子でした。森にいっては木に上り、畑にいっては土を掘り返していました
    お父さんは畑仕事をしています。お母さんは、女の子を産んだときに腰を痛めてしまい、足がよく動かなくなってしまいました。
    でもお母さんは、女の子が元気に生まれ元気に育ってくれているだけでとっても幸せでした。
    ある日、女の子がいつものように森に遊びにいきました。すると、木々の間から何かながーいものが見えました。
    白くて、とってもとーっても長い何かです。女の子はそれをみて「もしかして蛇神様かな!」とわくわくしながら体を追ってみます。
    すると、ながいながい体の先にあったのは、まっしろでふわふわとした、ねこの姿でした。
    「なんだねこかぁ。でもながぁーいねこさんだぁ」おんなのこがびっくりしていると、ながい体のねこが何かにむかっていきます。
    女の子がその先をみると、ぴよぴよとなく小さな雛鳥が地面にいました。上を見れば木のうえに数匹の雛とともに巣がありました。
    女の子はそれを見て、あわてて木の枝をぶんぶんとふりながらねこの前にたちます。
    「だめー!ねこさんとりさんたべちゃだめなのー!」
    ながい体のねこはびっくりしたのか毛がもさぁと膨らみました。女の子は必死に枝をぶんぶんとふって追い払おうとします。でもねこはそのままゆっくりと体を下ろしていきました。
    すると、雛鳥のほうからそのねこに近づいていきます。「あ、とりさんあぶないよ!」
    でも、ぴよぴよとなきながらねこの前にむかいます。すると、ねこは雛鳥を頭に乗せて、うにょーんと伸びて巣まで雛鳥を運んだのです
    女の子はそれをみて、ねこにあやまりました。「ごめんなさいながいねこさん。ねこさんがとりさんをたべちゃうとおもったの。ねこさんはやさしいねこさんだね」
    ながい体のねこはにゃーんとなくと、女の子の体にまきつきます。とってもふわふわで女の子はうひゃーとなりながらもふもふしました。
    その夜、女の子はそのことをお父さんとお母さんにはなしました。「もしかしたらそれが蛇神様なのかもしれないなぁ、はっはっはっ」「きっとあなたは動物さんたちに優しくしてるから姿をあらわしたのね」
    お父さんもお母さんもその長い体の猫には半信半疑なようすでしたが、女の子は夢中になってそのことをはなしていました。
    次の日も森にむかうと長い体のねこはいました。頭をなでて、もふもふしました。
    次の日も、また次の日も、時々いなかったりするけど、ながい体のねこは女の子の前に現れ、もふもふしたりぺろぺろしたりいっぱい遊びました。
    ある日のことです。雨の日が続き、ねこさんに会いにいけないでもんよりとしていた女の子でした。
    雨はいっこうに収まらず、どんどん激しさをましていきました。そんなある日です。男が大雨の中、叫びながら村中を走り回ります。
    「たいへんだ!山のうえの川が決壊しそうだ!いそいでひなんするんだ!ここはあぶない!」
    それを聞いて女の子の家族は急いで避難の準備をします。女の子は「ねこさんはだいじょうぶかなぁ」と心配していました。
    準備ができて、村人たちが避難しようとしたときでした。ごろごろぴしゃーんと大きな音をたてて雷が山におちました。すると、ごごごごごと大きな地鳴りが響き渡り始めたのです。
    さきほどの雷によって山の一部が崩れ、川が決壊してしまったのです。川は茶色く濁り、大きな木や岩を巻き込みながら、土石流となっていきます。
    山の上から流れてくる土石流が村人たちから恐ろしいほどに見えました。村人たちはパニック状態で逃げ出します。
    女の子も逃げようとします。しかし、足の不自由なお母さんは走ることもできません。
    お父さんはお母さんを背にのせて、女の子をだっこして逃げようとします。でも、土石流はどんどんとせまってきます。このままでは間に合いません。
    女の子はいのりました。「蛇神様、たすけてください!むらのみんなを、おかーさんおとーさんをたすけてください!」お父さんにだっこされながら女の子は祈りました。
    そのときです。昼間なのに暗くなるほどに厚く重なった雲の一部がどんどんと薄く、晴れてきます。
    久しぶりの眩しい太陽の光が村に差し込みます。そこには、うずを巻くように何かが空を渦巻いていました。
    村人たちはそれを見ておどろきます。「なんだあれはぁ!」「むぅ、あれは蛇神様・・・」「しっているのか!」
    眩しく輝く太陽を背にした真っ白に光をうけて輝くながーい何か。女の子はそれを見てすぐにわかりました。
    「ねこさんだ!ながーいながーいねこさんだ!」
    上半身が眩しい光でよく見えませんが、その形は猫の姿です。
    その間にもどんどんと土石流は村へ迫ってきます。すると、ながい体のねこの瞳がぴかぴかと輝きます。太陽の光をうけ、それはまるで光を集めているかのようでした。
    そして、ねこの瞳がぴかー!と輝きました。その光はまるで巨大なライトのように大地を照らします。
    ねこの光は、村と土石流の間の小さな森を照らしました。するとなんということでしょう。光を浴びた木々がみるみるうちに大きくなっていくではありませんか。
    木々はどんどん大きく、太く、硬く、一本一本がまるで絵本にでてくるような世界樹のようになっていくのです。
    そして、どぉんと大地を揺らしながらその木々に土石流がぶつかります。けれど、どの木もまったく倒れません。
    家のように大きな岩も、山も崩す水の流れも、全てたくましくなった木々たちが勢いを止めて行きます。
    村に土石流が流れてきました。でももうそれは土石流ではありません。ふしぎなことに、あの木々の中をとおってきた水は、あんなに茶色く汚かったのに、とても透き通って綺麗になっていました。
    村は、村人たちは救われたのです。村人たちは歓喜をあげて喜びます。そして、空高くのびるねこに「ありがたや蛇神様」とおれいを言いながらあがめます。
    女の子は「あれはねこだよぅ」とおもいながらも、ながい体のねこにむかってありがとうと大きな声で何度も何度も叫びました。
    ながい体のねこは雲の中へと消えていきます。すると、あれだけ強かった雨も次第におさまっていきました。
    それから数日がたちました。土石流の跡は川となっていました。その川の先には、あの大きくなった木々の森です。
    真昼でもその森の中は木々の葉によって暗くなるほどでした。地面はふかふかとしており、木々に耳をあてると水の流れる音がきこえます
    川は木々を抜けて村に流れます。ちょろちょろと、川というより小さな湧き水のように村へ流れていきます。
    とても透き通り、潤った水は、飲めばどんな病気も治り、畑にまけば必ず豊作になっていました。
    そんなふしぎな水ですが、村人たちはそれをとりあうようなことはしませんでした。皆平等にわけあい、畑を、山を、森を、村人たちを潤していったのでした。
    長い年月がたち、ドがつく田舎でも、唯一の名物はその巨大な木々でした。でもドがつくほどの田舎なのでほとんど人はきません。でも村人たちは別にこの村が栄えるとかそういうことは考えていませんでした。
    蛇神様があたえてくれた大地の実り。それだけでみんな幸せだったからです。
    そしてそれから、この村には不思議なことがおこる時期があります。
    十年に一度ほど、巨大な木々からたくさんの水とともに、大きな実が流れてくるのです。
    その年だけはちょろちょろだけな水も、小さな川のようになり、木々のものとおもわれる、大きな木の実が川辺に流れ着いています。
    その実を畑に植えると、必ず大豊作になるのです。木の実からは芽は生えず、たとえ湖が干上がってしまうような熱波が続いたとしても、絶対にその実を植えた畑の作物は枯れることはありませんでした。
    そして、その実は畑に植える以外にも使い方はありました。
    その年に生まれた村の赤ちゃんに、この実を砕いて、川の水に溶かした木の実ジュースを、その赤ちゃんの成長を祈って飲ませるのです。
    するとどうでしょう。赤ちゃんはすくすくと育つ以外に、ふしぎな力をもつことがありました。
    ある子は動物とお話できたり、ある子は触れるだけで怪我や病気を癒したり、ある子はまるで蛇神様のように植物たちを活気にさせたり。
    これも蛇神様のおかげなのでしょうか、誰にもわかりません。でも村人たちは、蛇神様へ毎月豊作物をささげて祈っているのです。これからも豊作で平和でありつづけますようにと。
    ・・・・・・さて、これが私の祖先の記録による「蛇神様」の歴史です。祖先のみた蛇神様は蛇ではなく長い猫だったのですね。
    ほかにも多くの記録があって、やっぱり犬だとか蛇だとか、今でもやっぱりわかりません。
    でも、村にはこうして大きな木々、潤いの川、不思議な木の実は存在するのです。だからこの祖先の記録は間違っていないのでしょう。
    今でも蛇神様としてあがめられています。でももし本当はねこだったら、村人全員で謝らないときませんね、ふふ。
    (著作者。〇〇・×ー×:〇〇年〜黄金暦1年 死去98歳) -- 2012-03-10 (土) 21:04:57
  • ねこのものがたり 強い姫様とねこ
    むかしむかし、とある地方にそれなりに大きな街がありました。
    そこには美しい若い姫様がいました。でも美しいだけではありません。
    姫様は男も顔負けな勇敢な騎士でもあり、いつも戦いでは先陣をきっていました。
    そんな姫様は一匹のねこを飼っていました。メインクイーンのとても綺麗な毛並みのねこでした。
    名前はマーガレットといいます。とてもおとなしく、姫様もそのねこのまえではふにゃーっとのびてしまいます。
    ある日のことです。さいきんゴブリンとコボルトの襲撃が増えてきました。街のまわり、小さな村などもよく襲われていました。
    姫様は民のために毎日のように戦いを繰り返していました。来る日も来る日も獣人の襲撃は増す一方で、姫様の疲れも増していきます。
    唯一のいやしはマーガレットでした。ふわふわな毛並みにかわいらしい顔つきは荒れた心を癒してくれました。
    そして月日がたち、やっと獣人たちの襲撃もおさまってきたころでした。遠くの村にたくさんの獣人が集まり始めたと聞きました。
    姫様はいつもどおり先陣をきろうと立ち上がります。しかし、家来が「姫様、無理はだめです。わたくしたちにおまかせください。それに、もしものときに街を守れるのは姫様だけなのです」
    しぶしぶと姫様は言うことを聞いて、多くの兵をその村へといかせました。
    その夜です。ぐぅぐぅ寝ている姫様の耳に何かが響きます。地鳴りのような、地震のような音です。
    目を覚まし、あたりをうろつくとまわりがとても騒がしく動いていました。
    「なにごとだ」姫様が聞きます。「たいへんです!たくさんの!すんげぇかずの獣人がやってきました!」
    姫様はあわててお城のてっぺんから外を見ます。するとなんということでしょう。そこには、街の囲いの外に、数え切れないほどの獣人がいるではありませんか。
    姫様はあわてて準備をします。そして、兵に呼びかけ、民の避難を最優先にするよう命令します。
    大地を埋め尽くすほどの獣人。多くの兵を出払ってしまっていまは兵の数がすくないのです。
    「くそ、やつらのわなだったのか。しかし、民はやらせはせんぞ」
    少ない兵士を連れ、戦いの準備をします。その前に、姫様は部屋に戻り、マーガレットを連れ出します。
    「ここにいたらお前もきけんだ。民といっしょににげるのだ。なぁに、お前ならきっといいひとに飼われて幸せになれるだろう」
    にこりと笑うと姫様はマーガレットを街に離し、外へむかいます。
    「いいかよくきけ。このたたかい、くやしいながらやつらのかちだ。だが、われらのいのちにかえても民をまもりきるのだ。死ぬのを恐れぬ兵は我についてこい!民があんぜんなばしょまでいくまでまもりぬくのだ!」
    残ったわずかな兵をつれて姫様は塀にむかいます。塀の上からは恐ろしいほどに、獣人の数がよくみえました。
    「いいか、ここでの死は無駄死にではない。民のために掲げた栄光ある死だ。恐れるな、一匹でも多くのてきをたおすのだ!」
    兵に激励をかける姫様。しかしその足は震えていました。勇敢であっても姫様は女の子。恋もしたければ結婚もし、家族を築きたいともおもっています。
    でもその夢はここでおわる。そう考えるとどうしても足が震え、こらえる涙がどうしてもこぼれてしまいます。それでも、ここで逃げては民もきけんです。
    かくごをきめた姫様。街が壊れても民がいれば街は作れる。国だって滅びない。私の夢を民に託し、いざ、死地へむかおうとしたときでした。
    にゃーんと大きな声がします。見ると丘の上にねこがいます。マーガレットです。
    それに、まわりにはたくさんのねこがあつまり、獣人たちを威嚇します
    「ふふふ、何かとおもえばただのねこではないか。ねこがいくらあつまろうと、わしらにかてるものか」
    先陣のリーダーらしいゴブリンが笑います。すると、にゃぁーんとさらに大きな声が聞こえます。
    丘の後ろ。ねこたちの後ろから何かが現れました。
    ねこです。それはそれはとてもとても長い長い体のねこです。
    「な、なんだあれはぁ!」「ひぃ!ばけねこだぁ!」「うろたえるな!しょせんねこだ!やってしまえ!」
    あわてふためく獣人たちが長い体のねこに弓矢を、魔法をはなちます。
    しかし、くねくねとねこの体は自在にまがり全くあたりません。そして、その長い体は、大地を埋め尽くすほどの獣人をまたたくまに取り囲み、さらにどんどんと獣人たちをとりこむかのようにまきついていきます。
    するとどうでしょう。長いねこの体の毛がもふあぁとふくらみ、獣人たちをくすぐりはじめたのです。
    「うひゃひゃひゃ、くすぐったいー」「らめぇぇぇぇわきよわいのぉぉぉ」「ひぃぃぃわらいじぬぅぅぅ」
    さきほどまで凶悪に雄たけびをあげていた獣人とは思えない、情けない声をあげて獣人たちは笑い叫びます。
    さらに、丘のうえのねこたちが獣人たちの顔にのしかかり、ばりばりとひっかいます
    「ぎゃぁぁぁーねこひっかいびょうになっちゃうぅぅぅー」「ひぃぃぃぃーいたいけどくすぐったいけどいたいけどぉーひぎぃぃー」
    その光景に姫様たちはぽかんとしていました。あっけにとられそのさまを見ているだけでした。
    「や、やめてくれぇぇぇ。ゆるしてくれぇぇぇ」 にゃーん でもねこはやめません
    「ひぃぃぃぃーわかった、もうまちをおそったりはしない。だからゆるしてくれぇぇぇー」 
    すると、長い体のねこは、ゆっくりと体を離していきます。そしてねこたちも離れていきます
    ほとんどの獣人が笑いすぎて腰をぬかしていました。そして、情けない姿のまま、ひぃひぃといいながら、数え切れないほどいた獣人たちはみんな逃げていってしまいました。
    はっと我に戻った姫様のところにマーガレットがもふんと飛び掛りました。
    「あのねこはおまえがよんだのか。あぁ、よくみればせっかくきれいな毛がぼろぼろではないか。私のため、いや民たちのためにおまえはがんばってくれたのか、ありがとう」
    毛をなでながら姫様はマーガレットを抱きしめます。ぼろぼろの毛並みだけどもふもふでした。
    きづけばねこのむれも、あの長い体のねこもいませんでした。あれはいったいなんだったのか。それをしっているのはきっとマーガレットだけでしょう。
    長い体のねこによって、街のひとも、姫様たちも、そして獣人たちにもだれもぎせいしゃはでませんでした。
    それ以降、街が襲われることはありませんでした。それどころか、獣人のリーダーがやってきて、たのみごとをしてきました。
    「わしのしゅうらくはほかの獣人や人間たちによって子供までが飢えている。だからどうしてもここを襲ってしょくりょうをいっぱいとらなければならなかったんじゃ。たのむ。すこしでもいいからわしらに恵みをやってくれまいか。たのむ」
    リーダーはどげざして頼みます。家来はこれはまた罠ですよと姫様に言いますが、姫様はその頼みを許しました。
    それからというもの、獣人たちは飢えから解放され、街と交流を結ぶようになしました。不思議なことに、あのねこにくすぐられた獣人たちはみな争いごとがきらいになっていたのです。
    「きっとあのねこによってわるいこころがとりはらわれたのだろう」 姫様はマーガレットを撫でながらそうおもいました。
    それから姫様は、恋をし、結婚し、子を産み、国は栄え、そして姫様は天寿を全うしました。
    そのまちはいまでも獣人たちと平和な交流をしています。そしてその街の真ん中には、姫様の像と、マーガレットの像、そしてあの長い体のねこの像が飾られていました。 -- 2012-03-08 (木) 22:38:19
  • ねこのものがたり 空を飛ぶ有翼族のお話
    むかし、有翼族という背中に翼を持つ種族に男の子が生まれました。
    でも、その男の子はほかの子の翼よりも小さな翼であり、空を飛ぶこともできず、せいぜい高いところからゆっくりと落ちるくらいしかできませんでした
    成長しても翼はおおきくなりません。でも男の子はあきらめませんでした。いつかこの大空を飛び立つ夢を忘れないで。
    そして男の子は少年に、そして青年となりました。ですがいまだに飛ぶことはできませんでした。
    そんなある日、青年に婚約の話があがりました。それは半場強引なもので、青年の意志は無視されたものでした
    有翼族は子を持てば片方の翼を失い、二度と空を飛ぶことができなくなります。青年は、一度も空を飛べないまま、空をいつか飛ぶという希望さえもがれてしまうことが嫌で村を抜け出しました
    森の中を走って走って いっぱい走りました。もう走りきれないころにはあたりは暗くなっていました。
    青年は、逃げてきたのはいいけれどこのあとどうするか考えていませんでした。有翼族の羽は人間にとって貴重で、うかつに街などにいけば捕まって、羽どころか命さえ狩られてしまうかもしれません。
    行く当てもなく、がっくりとうなだれていると草むらからがさがさと音が聞こえます。青年はあわててそちらを向きます
    するとそこからネコがあらわれました。口には大きなねずみをくわえていました。しかし、よくみるとそのネコは片足がなくなっていました
    獣に襲われたのか、人間のわなにかかったのかわかりません。そのネコは青年の隣をぴょいぴょいと片足をなくしながらも軽快な動きで進んでいきます。青年は何を思ったのかそのネコについていきました
    森の奥へ奥へ、ネコとともに進んでいくと、小さな木の根元の穴につきました。
    そこにはまだちいさな子猫が2匹、そして、お腹に大きな傷をおったネコがいました。おそらくこのネコが母ネコなのでしょう。
    子猫はぺろぺろと心配するように母ネコを舐め続けています。ねずみをもってきた父ネコもねずみを母ネコの前におくとぺろぺろと傷口を舐め始めました。
    青年から見て、この傷は治療しなければ死んでしまうことがわかりました。青年はあたりをくまなく探し、使えそうな薬草を見つけるとすりつぶし、それを母ネコの傷口に塗ろうとしました
    しかし、子猫と父ネコが威嚇をしながら青年の腕に手に牙をたて爪で引っかきます。痛みにこらえながらも青年は母ネコの傷に薬草を塗っていきます。時折苦しそうな声をあげる母ネコにさらに牙は鋭く爪は鋭利に腕と手に食い込みます
    それでも青年は止めずに塗り続けました。そして、一日ほどたち、あたりがまた真っ暗になるころには、青年の腕は傷と血で赤く染まっていました
    でも、薬草のおかげか、母ネコの息遣いは落ち着きを取り戻し、傷の出血も止まっていました。
    それを見た子猫と父ネコは、ぺろぺろと青年の傷口を舐めていきます。ごめんなさい、と謝るかのように、ありがとうというかのように。
    そしてまた子猫も父ネコも母ネコをぺろぺろと舐めます。その光景はまるで愛に満ちていました。それを見て青年は思いました
    「僕も家族を持てばこんなふうに幸せな家族になれるだろうか」
    青年は決心しました。翼を捨てて、幸せな家族を築き上げる。それが青年の新たな人生の目標となったのです
    でもどうしても悔いがありました。一度でいいから、この大空を飛んでみたかった、と。
    そのときです。母ネコと父ネコがにゃーんとなくと、森の奥からにゃぁーんと大きな声が聞こえてきます。そして何かが現れました
    ねこです それはそれはとてもとても長い長い体のねこでした。その猫は青年の股座にもぐりこむと、青年を乗せたまま空高くあがっていきます
    「ひゃぁ」と何事がおきたのかわからず情けない声をあげて目をつぶり猫の体に必死にしがみつく青年。いつしか雲を抜け、青年が恐る恐る目を開くとそこには見たこともない光景が輝いていました
    手を伸ばせばつかめそうなほど輝く星の海。まん丸に輝く大きな月。雲のじゅうたんの上を猫とともに青年はまるで風のように駆け抜けていました。
    小さな羽根をばたつかせ、ぽかんと口を開けながら空を眺める青年。ぽろり、ぽろりと青年の瞳から涙が零れ落ちます。その涙も星の輝き、月の光をあびてきらきら輝きながら舞い落ちていきました。
    集落の近くまでくると猫は体を下ろし青年を下ろしました。そして青年は言いました
    「これで悔いはない。本当にありがとう。あと、あの猫たちにもお礼をいっておいてほしい。本当にありがとう」
    猫は「にゃーん」となくと森の中へと消えていきました。その長い長い体の尻尾が見えるまで青年は見届けていました。そのとき気付きました。尻尾だけは白黒にわかれているということを。
    そして青年は結婚し、夫のなり、妻との間に元気な男の子が生まれました。その男の子は他の有翼族よりも大きく立派な翼をもった子でした。すくすくと子は育ち、10歳になるころ、父親から聞かされた猫のお話が本当のものかたしかめるため、こっそりと夜に抜け出し大空を舞い上がっていきました
    立派な翼は雲もかき分け、そして夜空を埋め尽くす星の海、そして大きく輝くお月様が姿を現しました
    その光景に少年は感動しますた。すると、「にゃーん」と遠くで猫の声が聞こえました。
    あるか遠く、黒い影しか見えませんが、細い空が雲をつきぬけ上っていきます。そしてその先端は猫のように見えました。少年はおもわずその猫にむかって飛び立ちます。
    でも、猫は体を折り曲げ雲の中へと消えてしまい、結局見つけることはできませんでした。
    少年は村へ帰ると興奮した様子でそのことを話しました。でも、危険な夜に勝手に出て行ったことに父も母もかんかん怒りこっぴりとしかられてしまいました
    あの猫はなんだったのか、それは父にも少年にもわかりません。でも、その一家は人間に襲われることもなく、生まれる子は皆とても立派な翼を持つ子たちばかりでした
    きっとあの猫は幸運を呼ぶ猫だったのでしょう それをたしかめる統べはいまでもありません。でもいつかまた その姿を見ることができるにちがいありません
     
    (あとがきにはこう書かれている)
    私のひいひいおばあちゃんも、ひいおじいさんも、おじいさんも、おかあさんも、そして私も一度だけその猫を見たことがあるのです。でも、その猫に触れたことがあるのは祖先の一人だけです。今でもその猫が何なのかわかりません。でもその猫が何なのかそんなことはどうでもいいと思っています
    もし、その猫にまた出会うことができたら私はこう言うでしょう 「その背中に乗って大空に飛ばしてくれないか」 と。 -- 2012-03-06 (火) 01:54:21
  • むかしむかし あるところにやましごとをしているおとこがいました
    あるひ いつものようにやまへしごとにむかっていると どこからか ねこのこえがきこえました
    おとこがそのこえへむかっていくと ねことこねこをみつけました
    おやねことおもわれるねこは すでにしんでいました そのおやねこのそばでこねこがないていました
    しかしそのこねこは ちいさなかおにみあわない とてもながいからだをもったこねこでした
    「これはかわったねこだ」 おとこはそういい こねこをつれてかえることにしました
    おとこのそばで こねこはすくすくとそだち からだもどんどんとのびていき いつしかおとこよりもながいながいからだへとなっていきました
    しかし それをよくおもわないものもいました むらのそんちょうです
    そんちょうはねこがきらいで しかもさいきんは びょうきがはやっており さらにかわったからだをもつねこを あくまのけしんだといい おとこにしょぶんするようにめいじました
    しかしおとこはかたくなにこばみました しかし こばむたびにおとことねこにたいして いやがらせがおきていました
    こどもたちからはいしをなげられ おとなたちからはきみがわられ だんだんとおとこじしんも むらから きらわれていくようになりました
    それでもおとこは ねこをそだてつづけました しかし あるひ おとこはやましごとでけがをしてしまいました
    おとこがけがでうごけないのをしって むらのひとたちはそのねこをしょぶんしようとしました
    でも おとこはそれにきづき ねこににげるようにいいました 「ここにいたらおまえはころされてしまう こんなかたちでおわかれなんてすまない うらむならむらのひとではなくおれをうらんでくれ むらのひとたちをどうすることもできなかったおれをにくんでくれ」 
    そういうと ねこは「にゃーん」となき やまのほうへとにげていきました おとこは そのながいからだのしっぽがみえなくなるまで なきながらみていました
    おとこはそのご けがからのびょうきによって しんでしまいました しぬまぎわもずっと あのねこのことをおもっていました
    ねこをしょぶんできなかったけれど ねこがいなくなったのでとりあえずそんちょうはなっとくし むらにいつもどおりのにちじょうがもどりました
    それからじゅうねんたちました だれもがそのながいながいねこのことなんてわすれているころでした
    そのむらにおおあめがふり かわがはんらんし むらがこうずいにおそわれたのです
    おおくのむらびとがにげおくれ ひっしにきにしがみつくもの いまにもこわれそうないえのやねにいるもの どれもじかんのもんだいでした
    そんちょうもにげおくれたひとりでした まだちいさなまごをだいて いまにもおれそうなきにしがみついていました
    このままかわにのまれればいのちはありません そんちょうは「わしはしんでもいい でもまごだけは まごだけは」とさけんでいました
    そのときです 「にゃーん」とおおきななきごえとともに くものなかからなにかがつきぬけてきました 
    ねこです それはそれは ながいながいからだのねこです
    ねこは ながいからだをそんちょうとまごにまきつかせると そのままもちあげ あんぜんなばしょまではこびました
    ねこは そんちょうだけでなく ほかのにげおくれたむらびとたちもたすけました ロープのように はしごのように そのながいながいからだでむらびとたちをどんどんたすけていきます 
    ながいながいからだのねこによって むらびとたちは ひとりのぎせいもなくたすかりました そんちょうがそのねこにおれいをいおうとしたとききづきました そのねこのかおはまちがいなく じゅうねんまえにおいだした あのねこです
    そんちょうはなきながらあやまりました 「おまえにひどいことをしたというのに おまえはまごだけでなくわしも むらびとたちをたすけれくれた ほんとうにありがとう そしてすまない ほんとうにすまない」
    なきながらどげざしてあやまるそんちょうに ねこは「にゃーん」とじゅうねんまえとかわらないなきごえとともに そらたかくのびていきました
    そのすがたはまるで ひんがしのくににつたわる りゅう というでんせつのいきもののように しんぴてきでした
    むらびとたちは そのながいながいからだのねこの しっぽがくもにかくれてみえなくなるまで まるでかみさまをおがむようにおれいをいいながらみつづけていました
    それからこのむらは ねこをだいじにするようになりました たくさんのねこがじゆうにきままにくらし そしてねこがねずみをとることによって はらりびょうなどがなくなりようにもなりました
    そして このむらには そのながいながいからだのねこのぞうがあります そのぞうは まいにちみがかれ たたえられていました
    いこう そのむらは びょうきやあらそいもなく むらびとみんながしあわせに そしてへいわにくらしているむらでありつづけましたとさ
     さて これでおはなしはおわりです え?これがただのむかしばなしにすぎないと?たしかにそうかもしれません でも このむらはじっさいにあるのです そして このものがたりはじつはまだつづくのです
    このむらでなく おおくのくにで このながいねこのおなはしはかたりつがれています そして これからもきっと おおくのものがたりをかたりつがせていくのでしょう
  • 都市伝説の類だこれ… -- 2012-03-03 (土) 20:08:34

Last-modified: 2012-03-10 Sat 21:04:57 JST (4428d)