名簿/498831
- (その日、ミヤナ・ヒトは誰かに後を付けられている気配を得ていた)
(巻き込まれ体質である彼女にとって、誰かに狙われることは日常茶飯事であろう) (いつものように彼女を恨みを持ったり、逆恨みをしたり、衝動的な行きずりの犯行かもしれない) (だが些かその尾行は杜撰なようで、頭隠して尾を隠さずとその動きは取るように分かる) (曲がり角を進んで待ち伏せても良いし、動き先を読んで縛り上げてもいいだろう) -- ?
- そんなに珍しいことではない。この島の警察からは手配されているし(DEADorALIVEとかかれた手配書はあちこちにべたべたと貼ってある。公的機関の貼ったものから個人的な恨みで作られた手書きのものまでさまざまだが、たいていの手配書はひどく凶悪な顔か解像度の低い世界初の3Dポリゴンのような写真であるため、銀髪・マフラーそしてひどく青い瞳くらいしか特徴は現せていない。)怨恨から個人的に賞金をかけているものもいた。
その場合の多くは間接的な怨恨で、直接かかわった者は二度とかかわりたくないと心底思う。 無論、そういったヒトを知ってのものではないのかもしれない。無警戒にふらふらと歩く女子供は凶暴な性質のものにとっては格好の獲物だし、両方であればまさに餌だ。 そんなに珍しいことではなかった。 そしてこういう場合、えてして雪ダルマ式に事態が大事になるのはわかっていたので、ヒトの行動もまたいつも決まっている。 不意をつくようにすばやく駆け出し、角を曲がる。逃げるのだ。 角を曲がればもうそこに姿はない。 ただし、相手を確認しておくのは必要というほどではないが悪いことではないと判断したヒトは、どんなやつがつけてきているのか、見てみることにした。 頭上、足場のないビルの壁にクモ男のように張り付いて尾行者が来るのを待つ。 -- ヒト
- (急に走り出され、尾行していた何かは慌てて曲がり角へと向かう)
(ミヤナ・ヒトは直観的に、いや人情的に彼女の考えていたものとは違うことが想像されたことだ) (ミヤナよりも年下、追いかけていた少女が直上にいるとも気付かず壁に手をついて息を切らす) (まだ少年とも少女とも取れる外見だが、男子制服がかろうじて彼であることを教えさせてくれる) (彼は額に浮かんだ汗をぬぐい、どこへ行ったのだろうと呟く) -- ?
- ―――子供…?
上手くない…というよりへたくそな尾行にも納得が出来た。目を細めてみてみると、それは制服を着ているのも似つかわしくないようなまだあどけない少年で、そのような少年が自分を尾行していることに全く心当たりはない。 外見で判断できないのはこの島の常であった(何より自分が一番そうであることは心の棚に上げている。)。 もうしばらく様子を見て正体を探ろうと決めたが、さかさまに張り付いていたのは誤りでぶかぶかのニット帽がするりと脱げて落ちてゆく。 「あっ…!」 とっさに力を消す。力を消せば、身体は地面に引かれるようににっと帽を追って落下していく。伸ばした右手で帽子をつかみ、胸元に抱きしめてほっとした。 -- ヒト
- (だが声をあげたことで少年もまた上を見上げてしまい)
あ…っ! (爪先を立て手を伸ばし、跳躍をすれば届きそうな距離に追い続けていた人がいた) (声が出ない。言いたかった一言が出てこない。緊張する) (ん、ん、ん。胸を叩いてぐっと息を飲み干せば)
あ、あの。ボク、ユーロと言います! その、せ、せ、先輩には… そそ、その。助けられて、えっと。上手く言葉にできないんですが… (顔を赤らめ、俯き。次の一言を出すべきかと悩む) -- ユーロ
- ちょうど建物の中は2階の床の位置だろうか?外壁の突起につかまってぶら下がり、落下を免れた。
だだ、見つかってしまった。見つかってしまったのなら仕方ない。突起から指を離し、地面に降り…ようとして、ドスン、しりもちをつく。 お尻をさすりながら立ち上がると、少年が名乗っているのに気付き、あわててこちらも名乗る。それが礼儀であるように思われた。 「ど、どうも、水中也一です。えっと…何か私に用ですか?」 普段どおりの間の抜けた顔でにこやかに問う。こんな阿呆の面では、誰も彼女が《爆心地》とか《地獄の黙示録》だとか《歩く閻魔帳》だとは思わない。 -- ヒト
- あ、はい。先輩の名前はし、知ってます…
(先輩のにこやかな顔、それを見ると胸がどきりとして直視ができなくなって視線どころか顔そのものを下へと向ける) (だが視線を合わせないことを好機とし、おもむろに懐へと手を伸ばせばヒトは警戒を強めるかもしれない) (だが彼の懐から抜かれたものは黒光りする砲身でもなければ、抜き身のドスでもなく。ごく一般流通しているシールの貼られた封書だった) あ、そ、その! 文通から、えっと。始めさせてください!! (勇気を出し、気弱な少年が腹の底から出した一声は若干上擦っていた) -- ユーロ
- 「はい。」
と空返事。つい無警戒にその封書を受け取ってしまう。 殺意や殺気に関しては結構敏感で、そうでなくてはならなかったのだが、少年の不可解な態度がそうさせた。それに、なんとなく故郷の幼馴染を思い出させた。彼とは8つのとき以来あっていない。それが装うのではない無警戒さで手紙を受け取らせたのだ。 笑顔のしたでつぶさに少年を観察する。先輩と呼ぶということは、1年か2年だろうか?名前はユーロっていったけど、知らない名前だ。だが自分のことは知っているという(つけて来たのだから当たり前だが)そういえば先ほど助けたとか何とか言ってたっけ………。受け取った手紙を封筒の上からなでて中身をチェックする。 「これを、わざわざ私に渡しに?」 -- ヒト
- (封書には少年が一生懸命に書いたであろう文が入っており、几帳面にも一字一句が枠線からはみ出ないように書かれていた)
(はじめまして、先輩。貴方は覚えていないかもしれませんがボクはあなたに助けられたことがあります) (数年前、先輩が風紀員会に手配される原因となったバスジャック事件) (ボクはあの場に居合わせ、犯人たちに殴られそうになったのを先輩が止めてくれましたよね) (あのまま殴られていなくても、バスに取り付けられた爆弾が爆発していたら命が無かったかもしれません) (ですが翌日の新聞には重要参考人として先輩の名があげられ、驚きました) (先輩はボクたちを助けてくれたのだと風紀員会に抗議もしましたが、聞き入れてくれず) (以降も先輩はたびたび風紀委員会や色々な人に目を付けられていると聞いています) (ですがボクは知っています。先輩が例え事件の責任を負わされ追われたとしても、きっと誰かを救った結果なんだと) (ボクは自分も省みず、誰かを救おうとしている先輩を尊敬しています。きっとボクには真似できないことだから…) (ですが最近は先輩のことを思うたびに心が締め付けられ、息苦しくなることが多くなりました) (ボクは他に頼れる人もなく、相談できる人もいません。…不躾ですが、ボクをもう一度救ってはくれないでしょうか)
(文に目を通すと、これを書いたであろう少年は俯きミヤナ・ヒトと視線が合わせられないと頬に赤みを帯びさせていた) -- ユーロ
- //文通でお願いしまう! --
- 渡した本人の目の前で読むのはちょっと気が引けたが、何も言わないので仕方なく封を破く。先ほどの手ごたえではどうやら危険なものが入っているわけではないようだ。年の割りにきれいな字で読みやすく、几帳面な性質がうかがえた。
手紙を読んでみると、あの事件のことだろう。もう2年も前になるのかと感慨深い。よくよく少年を見てみれば、確かにあの時犯人に「誰が漕いだかyour boat」を歌わされていた乗客の一人に面影が似ている。 あの時はバスの揺れでよろけて転んだ振りをしたのだが(転んだ拍子にズボンをつかまれた犯人は、怒ってヒトを射殺しようと銃を撃ったのだが何発撃っても命中せず、車内で銃を撃たれる恐怖に運転手がハンドル操作を誤り、ひっくり返ったバスに急ブレーキをかけた後続車両が玉突き事故を起こしたのだ。その中には警察のDCも混じっていた。)、真意を見抜いていたのだろうか?侮れない。 急いでいたもので、死人を出さずにすんだのを確認してその場を離れたのがまずかった。逃走した犯人の共犯者と思われてしまったのだ。 しかし、見抜かれているとなるとそれはそれで恥ずかしい。赤面しながら手紙を読み進め…最後の一文に目を留めた。 「…あの、何か危ない目にあっているんですか?」 助けを求める手紙、心配そうに少年に尋ねる。 知てしまったのだから見捨てることは出来ない。ここで何もせずこの少年が死ぬようなことがあれば、それは自分が殺したも同然だ。 人間は動物とは違う。自分のしていること、自分が何をしているか理解することが出来る。人間であるなら理解しなければならない。無自覚に物事を行うのは動物も同じだ。 誰かを殺すのであれば、自分がどんな人間を殺したのかきちんと知らねばならない。相手のことを知らずに命を奪う行為は、自分がしていることを理解できない獣と同じだ。 だから 「なにか大変なことに巻き込まれてたりするんですか?」 目の届く範囲の誰かを見殺しにすることなど出来ない。 -- ヒト
- え。えっと、現在進行形で巻き込まれてるというか…あ、あの。その…
(緊張が限界に達したのか、それとも虚弱体質なのが災いしたのか) (憧れの先輩を前にして胸の鼓動から来る息苦しさを押さえていたのが、立ちくらみによってよろけて前へと倒れそうになった) -- ユーロ
- 「現在進行形っ!?」周囲の気配を探る。いきなりきょろきょろしては、相手を警戒させてしまう。仕留めるのが目的ではないのだからそれで引いてくれればいいのだが、そうでない場合はさらに巧妙な手段に訴えかけてくるかもしれない。ヒトはそれほど自信家ではないのだ。
倒れそうになった少年を抱きとめて支えた。ヒトは小柄だといえこの年代は女の子の方が体格が良いものだ。わずかに数cm背が高い。 力があるほうではないが、それゆえに支えることが出来た。人間に対して力を使うのは禁忌としているだけに、少しほっとする。 よほどの事態なのだろう。緊張の連続に少年の神経は衰弱しているように見えた。 「大丈夫ですか?しっ…このまま話してください。」守るように抱え、耳元に小声でささやく。 -- ヒト
- (もう少し苦労するかとは思ったが、意外と簡単にヒトは見つかった)
(探せば目につく、程度の特徴はあるも、彼女の少々小柄な体躯は群衆の中では埋没してしまう) (見失いそうになったのを、無理やり手首を掴んで逃がすまじと捕える) 応、見つけたぜ。 (言うなりヒトの小さな手に、無理やりに紙袋を握らせる) (中身は毛糸で編んだニットの帽子) (相手の意図は分からないが、とにかく返礼はしなければなるまいと、何を用意するか悩んで) (そういえばよく帽子を被っていたと思い至り、選んだ) -- 龍樹
- //ごめんなさい、ちょっと返信遅くなりそうです。 -- ヒト
- 手首に触れるとホンの一瞬、殺気とは違う鋭い警戒心に空気が凍る。が、それもわずかな瞬間だけ。気の抜けた動きでくるりと振り向き、龍樹の姿を見て間の抜けた表情で驚いてみせる。
「あ、龍樹さん?お久しぶりです。」 春の日差しにふさわしい笑顔で勢いよく頭を下げる。うなじを覆う銀髪が軽やかに光に踊る。 いきなり押し付けるように渡された紙袋を両手で抱いて、目をぱちくりさせる。きょとんとした表情で龍樹と紙袋をきょろきょろ見比べ「なんです、これ?あけても…?」と断って、恐る恐る開封する。 中から出てきたのは毛糸のニット帽。意味を図りかね、しばらくじっと帽子を覗き込んでいたが、やがてそれに気付くと、ぱぁとうれしそうな笑顔に変わり 「あ、あの!これ、貰っても良いんですか!?本当に?」 他人からプレゼントをもらったのは本当に久しぶりだった。マフラーが春風になびいて翻る。 -- ヒト
- (ごめんなさい、めっちゃ遅くなってしまった…。) -- ヒト
- (指先から沸き上がる針のような感覚は、おそらくヒトの警戒心の表れ)
(わざとらしさが先立つ彼女の挨拶にも、普段の笑っているか怒っているのかよく分からない表情で返して) 貰っとけ貰っとけ。役得だ。ちなみに手作りな。 俺も女のファッションがどうとか聞かれると厳しいので、似合わなかったら諦めてくれ。 (屈託なく喜ぶ表情は本当に、ただのどこにでもいる女の子のようで) (ぽん、何も知らないフリをして、軽くヒトの肩を叩く。触れられることを恐れているならば、次も同じに警戒されるかと予測を立てながら) -- 龍樹
- それは驚くほどに予想外で、先ほどの感覚は夢か幻だったのかとでも言うように、自然に龍樹の手はすんなりと年頃の少女の華奢な肩に当たる。無警戒で駄犬めいたその様子は、別の意味で危なっかしくも見える。
龍樹の意図を理解しているからなのか、それとも龍樹だからなのかはわからない。 「いえいえ!似合わなくても大事にしますっ!本当に…ありがとうございます!」 勢いよく頭を下げる。 「手編みなんですね。」と手元をじっと見つめる。既製品とは違うどこか個を感じさせる帽子を、王冠をかぶるようにニット帽をかぶると、ぶかぶかのニット帽のシルエットとあわせて銀色の子猫のよう。 もう一度、感謝の印に大きく頭を下げれば、ずり落ちそうになってあわてて手で押さえた。 -- ヒト
- (採寸を取ったわけでもないので、多少サイズが大きいことは仕方がない)
(目算で一般的な女性の頭部をイメージし、手頃な女友達を捕まえて被せて調整した結果がこうだ) 応、毛糸扱うのも初めてだし、強度に自信がないがそこは堪えてくれ。俺こう見えても美術部なんだぞ。 美術部とはもう名ばかりで、手芸だの料理だの大抵の創作活動やってる。 (会話を続けながらもヒトの一挙一動を観察する。帽子が下がるのを抑える姿には、思わず笑みを漏らして) ははは、折角の先輩からのプレゼントなんだ、大事にしてくれ。 ……お前、俺より後輩だよな、確か? (その後はよくある世間話に終始する。できれば、ヒトの輝く笑顔や喜びが、取り繕った表層上のものだけではないよう祈りながら) -- 龍樹
- 「美術部ですか?」美術部と手芸と龍樹と、どれもちぐはぐなように思えて不思議そうな表情を浮かべるが、すぐに羨望の眼差しに変わり、「部活動、青春ですね!いいなぁ………。」と声が漏れる。
青春を満喫するのが目的ではあったが、必要以上に他人と深くかかわることは避けてきた。避けられることも多いが、それ以上に親しい人間に迷惑をかけたり、なにより失うことを恐れている。一定のラインを越えないように、越えられないようにすごしている。
他愛もない会話は好きだ。深く物事を考えるのは苦手だし、ゆったりとした時間が好きだ。 「龍樹さんがいつの入学かはわからないですけど、私は247年入学ですね。」 などという会話をしてすごした。 -- ヒト
- (残暑の残る9月。秋というにはまだ夏の色を濃く残す、そんな季節)
(都市部の往来道を歩くヒトに対して、声が掛けられる) ようお嬢ちゃん。アイスクリーム買っていかないかい。サービスするぜ。 (普通ならそのまま通り過ぎるはずのヒトへ声を掛けてきたのは、かつて肝試しである意味で生死を共にした男子学生) (木で組まれた仮説の店舗を飾る看板には汚い字で「アイスクリーム・美術部出張店」と書かれてあった) -- 龍樹
- 「ふわっ!」
吃驚して思わず猫が放り投げられたような声を出す。暑さにだらけきった顔をしながらボーっと歩いているところに声をかけられ、振り向いた先に居たのはそれなりに知っている顔だ。 赤面し、「その節はどうも」などとしどろもどろな受け答え。恥ずかしくもあり、それ以上に怒ってはいないだろうかと伺うような視線を向ける。 だが、特に責められることも内容でとりあえず安心する。何より、看板がすばらしい。 アイスクリーム! 君は知っているか!?冷たいのである。その上甘いのである。 この時期にこれほど心躍らせるものがあろうか。 「良いですね!アイスの食べ収めですよ!」 夏の陽光にも負けぬ笑顔で、屋台を覗き込む。 チョコも良い。だが基本のバニラも捨てがたい。さっぱりしたチョコミントだって良い。しかしここは…。 「クッキー&クリーム!クッキー&クリームくださいっ!」 スカートのポケットをまさぐり、硬貨を手のひらに乗せて差し出す。 -- ヒト
- (驚嘆から反転した朗らかな顔は、かつての相も変わらず)
(かと思えばカフェテリアで見せたような大立ち回りをするし、どうにも印象が二転三転してしまう) (表情で相手に威圧感を与えないよう顔を崩すと、ヒトの注文を聞き入れて) そんなモノ……うちにはないよ。(冷淡な瞳で返事をする) うちにあるのは俺謹製の男のバニラだけだ。クッキー&クリームなんざ甘酸っぱいな味は、犬に食わせてしまったね。 (クーラーボックスを開いて、中身をヒトに示す) (そこに収められていたのはバニラ、バニラ、バニラ。バニラのフルコース) さーもう一度注文を聞こうか。何味が食べたい? -- 龍樹
- ―――がーんだな…。出鼻をくじかれてしまった…。
クッキーのサクサク感が良いアクセントになって飽きさせない食感のクッキー&クリームは無いらしい。気を取り直してクーラーボックスをチェックする。右から………。 バニラ バニラ バニラ バニラ バニラ 「えっと、じゃあこのバニラっていうのをひとつ………。」 指先を躍らせしばし迷う。並んだバニラの中からバニラをチョイスして指差す。指の先に漂う冷気が心地よい。 髪を結い上げたうなじに、残暑の日差しがじりじりと照りつける。 -- ヒト
- はいまいど。(にこやかにバニラのカップを二つ取り出すと、変わりに代金を受け取って)
一つはおまけだよ。クッキー&クリームを期待させた分の詫びと。 これから、俺の質問に応えてもらうから、その時間を取らせる分の駄賃。 (愛想のいい表情が一転する。ウサギは既に罠の中といえど、絶対に油断してはいけない) (相手のここぞという時の胆力は、十二分に承知していた) (遭遇は敢えて偶然を装うも、実は、随分前から張りこんでいた) (生徒から聞き込みをしヒトと思われる目撃情報を探し) (風紀警察の巡回を観察して、ヒトがまず通過しないと思われるルートを外し) (この道路に、狙いを定め、そして獲物を引っ掛けた) -- 龍樹
- 「ふわぁ〜〜〜このために生きてますねぇ………。」
「いいんですか?悪いですよ」と言いつつ二つ受け取り、アイスをぺろりと一口。広がるバニラの香りと甘み、冷たさに至福の表情。 龍樹の変化にも気付かない様子でのほほんとアイスを食べている。 それは、なかなかすごい勢いで食べている。早食いといったほどではないが、工場でプログラムされたロボットがコンベアに乗った部品を運ぶのに似て滑らかだった。 しかししっかりと味わっているのは、その表情からも明らかだった。 「と…溶けちゃうじゃないですか!二つもあるんだもん」 龍樹の視線に気付くと、そう言い訳した。 -- ヒト
- すぐには溶けないっつーの。ちゃんと屋根で日陰になってるんだし。
(規則正しくアイスクリームを口へ運ぶヒトは、純粋にアイスクリームの味を楽しんでいるようで) (先日の肝試しの件がなければ、このまま見逃してやりたかった) 食べながらでいいんだ、俺の言い訳から聞いて欲しい。 お前が湖で溺れて助けた時な、お前を大分罵倒したし、きつい言葉も掛けた。 あれはお前が憎かったんだんじゃなくて、その、「お前の行動が」気に食わなかったんだ。 微妙なニュアンスだがどうか心に留めて欲しい。(と前置きして) 単なる俺の勘違いなら、俺が間抜けなピエロだったで済む。そっちの方が楽だな。 お前が意識を失う直前だ。まるで……生きることを諦めて、湖の中の死神に、生死を委ねたように見えてな。 あの時のお前から、生きようとする意思が感じられなかった。 「死んでもいいや」と、捨鉢になったと思った。それに腹が立って、怒った。 (ヒトはどんな表情で、心情で聞いているのか。怒り出してくれるならまだいい、むしろ望んでいた。違う、と一笑に付してくれることを) -- 龍樹
- 「溶けたアイスはおいしくないですよ?甘すぎてべたべたして、ジュースのがまだましってくらいです。」
そう言いながら、食べる手を止めない。「うっ」とうめいてこめかみを押さえる。一つ目を食べ終えると、まるで玄人のような手つきでカップを置き換え、二つ目に手を出す。 神妙な表情になり、「あの時はご迷惑をおかけしました………。でも、無事に単位を取れてよかったですよ。」とぺこりとアイスを口に運びながら頭を下げる。 「まさか、あんなところにあんなものが浮いてるとは思わなくて………。」 「あれ、結局見間違いだったみたいで、警察が湖を捜索したけど何も出てこなかったみたいですね。湖で死んだ子が居なくてよかった………。」 新聞から得た知識である。たいしたニュースにもなっていなかったが、誤報かいたずらかという見出しで小さな記事になっていた。 発見者として顔を出せばきっとまた騒ぎになってしまうだろうから、朝を待って匿名で連絡したのだった。すぐに封鎖されてしまい、脱いだものは回収できなかったが、よくある制服だし自分のものだとはきっと思わないだろう。
数秒…いや、もっと短い沈黙。 「まさかぁ…。そんなはずないじゃないですか。そう見えましたか?ちょっと藻が絡んで身動きが取れなくなっちゃいましたが………。あれ、まるで触手みたいですよね。動けば動くほど絡み付いてくるんですよ」 と、ぴたりと手を止めて笑顔を向ける。 「若い身空でまだまだやりたいことだってありますしぃ………。」 手にしたスプーンから、バニラの白い液体が手袋にたれる。 -- ヒト
- //ぶんつうでお願いしますのポーズ! --
- //文章こねこねしてたらレスが遅くて申し訳ありませんの構え。 --
- (ヒトの言うように、あの水死体が見間違いにしてはリアリティが過ぎる)
(自分も、レベッカも同じく目撃しているのだから、幽霊か、もしくは水死体に似て膨張したビニール袋の塊か) (極まった集団心理の中では、人間の意識が同調し実態のない虚像を作りだすという研究説を耳にした) (本当に幻覚であったなら、あの時の自分含めた三人は、どれだけ未知の恐怖に怯えていたことか) ……そうか。ならいいんだ。俺の思い過ごしでよかった。 (平静を装うヒト。指摘に対して、やはり仮面を被ることを選んだ) (溶け始めたバニラアイスがプラスチックのスプーンから落ちる様は、何よりもヒトの心情を雄弁に語っている) (最初は確かに、ヒトも必死に抵抗していたようだった) (そして水藻が絡まるにつれ、ばたつく様子が見られなくなり、やがて動きを止めた) (何か。何か思うところがあったはずだ) (『死』を受け入れるための引き金となった、ヒトのルーツが) (しかしそれに言及するには、自分はあまりにも、水中也一に対して、遠すぎる存在だった) -- 龍樹
- 沈黙。
凍りついたような笑顔で龍樹を見ている。最後のセミだろうか?ジジジジジという鳴き声が聞こえ………。 そして止まる。
「おわー!やっぱり二つを溶けきる前に食べるのは無理でしたかー!?アイスがこんなになっちゃってますよ!」 カップを龍樹に向けて、スプーンで混ぜる。半分ほど残ったバニラは、でろでろになって粘ついた濃いミルク色の半液体と化している。 これ以上の追求は無いと思ったのだろう。くるくるとめまぐるしく表情を変えながら、カップに口をつけて溶けたアイスを飲む。 「でも、これはこれで…。ぬるいバニラというのも風物詩といえば風物詩ですしね!」 ぺろりと白いひげをなめる。 -- ヒト
- 気が済むまでゆっくり食べてくれ。今日は店仕舞いだ。アイスの在庫が切れちまったよ。
(屋台の枠組みを片付け始める。金具で接続されているためか、一本の足を外すと簡単に崩れ落ちた) (分解した木の足を纏め、屋根の布ごと紐で括る。ヒトがアイスを食べ終わる頃には、屋台は完全にその姿を消していた) (屋台のセットを背負い、クーラーボックスを肩に下げ、にこやかに……ではないにせよ、軽く笑みを見せてヒトに別れを告げる) (ごく当たり前に存在する精神の深奥にある不可侵の領域に、みすみす入り込もうとした自分を恥じる) (それでも。完全に他人と言っていいヒトが、背負った重圧に屈する姿を見過ごせず、手を伸ばした) (助けの手が振り解かれたとしても。ニンゲンが本質的にどこまでも孤独な生物であったとしても) (それが常葉龍樹の流儀。誰にも縛ることのできない、自分だけのスタイル) -- 龍樹
- うん、おもしろい名前で一瞬何かと。来月同行したりするのでよろしくね
……ああ、なんかちょっと前にカフェか何処かで暴れてた人かな…私あの時なだれ込む風紀にめっちゃ踏まれたのよね… -- カナリナ
- 初対面で突然面白い名前といわれ、戸惑う。一瞬、何を言っているんだろうという顔でぽかーんとした。
「ちょっと、いきなりひとの名前を面白いって言うのは失礼じゃないですかっ!?」 この名前の本当の意味についてはヒト自身も知らないことであったが、亡くなった親がつけてくれた名前だという思いはあったから、莫迦にされれば怒りもする。 「訂正して…」 むっとした顔で言いかけて、相手の次の言葉が口を止める。 ―――い、何時のことだろう? カフェテリアと風紀という二つの単語で絞り込めるほど、カフェテリアと風紀にまつわる事件は少なくはなかった。あの12月の事件だろうか?確信が持てるほどではなかったが、カフェテリアで風紀と揉めたなかで、比較的被害のあった事件だ。 「それは…災難でしたねぇ………。人違いじゃないですかぁ?」 誤魔化す。 下手に認めて面倒なことになるのは避けたい。なるべく平穏に、面白おかしく愉快に華麗に青春を謳歌したいのだ。だから必死で誤魔化した。 -- ヒト
- 嘲笑されるってのは私のフルネームのようなものをいうのよ!(バーン)
でも面白いってのが褒め言葉に取れない場合を考慮してなかった、珍しいって言った方がよかったかしら、ごめんなさい ヒト違わないと思うけど…まぁ踏んだの風紀委員だし構わないけどね。とにかく実習よろしく (そして帰ってきた)…来月も同行ね……またよろしく? -- カナリナ
- 頭上にクエッションマークを浮かべる。
カナリナシキマ。何かこっちの国では愉快な言葉なのだろうか? カナリナシキマ。頭の中で呪文のように唱えてみる。 よくわからない。そんな表情をした。
「ありがとう。これは…パパとママが残してくれたものだから…。」 由来はよくわからない。でも、両親が自分の名を呼ぶ声はまだ記憶に残っている。 だからこれは、大切な名前だ。 コーヒーと紅茶の香りのする。大事な思い出のひとつなのだ。嘲笑われたのではないのなら、安心した。 他人を嫌いにはなりたくない。
土下座。 土下座だ。 そうは言われても、警察が狙っていたのは自分だし、騒ぎを大きくしてしまったのもきっと事実なのだろう。 流れるような華麗な土下座を決める。 もし新体操の舞台だったら、審査員は迷わず銀メダルをくれるだろう。そんな土下座だ。 -- ヒト
- お疲れ様でしたー。今度の冒険も無事に成功して本当によかった…… -- ヴィエルド
- 「やーやー!お疲れ様です!」
少年の手を両手で握り、ぶんぶんと勢いよく上下に振る。手袋越しにしなやかさを感じさせる、暖かい手だ。そこだけ春になったような満開の笑顔。実習の同行者から声をかけられたことは初めてだ。 「いやー本当に無事でよかったですねぇ!」 えへへと笑いながら頭をかく。この少女の言う無事と言うのは、実習の同行者だけではない。敵のことも含めて、だ。 戦闘中も執拗に敵の無力化にこだわっていた。その所為で服もマフラーもぼろぼろだ。怪我もせず、誰も死ななかったのは戦力差なのだろう。 この少女のこだわりを、少年は甘いと取るのだろうか? 「また一緒になることがあったらよろしくお願いしますね。」 そういって再び笑顔を向けた。 -- ヒト
- sex --
- 「セェーーーックス!!」
一番の笑顔とポーズで応える。 国が違えば言葉が変り、言葉が変れば同じ音で意味が変る偶然もある。 これもそうした言葉の一つだとすでに勉強していた。青春を満喫するための下準備には余念がないのだ。 少々恥ずかしくはあるが、ここは外国。祖国の言葉の意味などわかるまい。 これからの学園生活、最高のものにするぞ。そんな思いをこめて元気にはじめましての挨拶をした。 -- ヒト
- 眠いですー。 -- ヒト
- //本日(5/26)22時からここ?でリング争奪野球拳やります! --
- 今年卒業ですー。 -- ヒト
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