界境街/中央区/聖レ・ファータ教会 / 旧市街/中央区/聖レ・ファータ教会
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- - 礼拝堂 -
- (ある男とある男が話し合っていた)
(静かな礼拝堂で)
……なあ、分かってくれ。私の理想はもう話しただろう!?
「絆と信頼による本当の平和」だ!そのために、君の力が必要なんだ! -- ブラスト
- 「それは分かる、君の理想は立派なものだと思うよ」
(青いスーツの男にまくし立てられた男は、少し困ったような表情だった)
「だけど君とは大学で同じ授業を受けていただけじゃないか、その……「響友」には……」 -- 男?
- ……ッ!た、確かに分かってる!そんなことは……深い付き合いじゃなかったのは分かってる!
でももう、色々な人に聞いて回った、もう君しかいないんだ!
頼む、私の理想には「響友」がいなくては成り立たないんだ……頼む!「絆」を……結んでくれ……! -- ブラスト
- 「……気持ちは痛いほど分かる、だが……すまない。俺は亜人だが、君よりもっと「絆」を結んだ人がいる……」
(悲しげに、低い声で男は首を振った)
「分かってくれ。俺にも、ともに生きる相手は選ぶ権利はある……君はすばらしい人間だとは思うが……」
「響友には、なれない」 -- 男?
バタン……
(礼拝堂のドアが閉まり、静寂が訪れる。青いスーツの男は、膝をついて、うなだれた)
……これは……報いなのか。私は生き方を間違ってしまったのか……
(その表情には、深い失意が刻まれている) -- ブラスト
- 「こいつは驚いた。最近は政治家先生も懺悔に来るんだな」天上から声がしたと思うと、黒い人影が男の前に降りてきた
黒い肌に金色の目をしたそれは貴男を見てニヤニヤと笑っている。話を聞かれていたらしい -- ???
- ……!(声に気づき、立ち上がる 天使が舞い降りるように――悪魔のような風貌の者が現れたのだ)
……信心深いものでね。私は人間の絆の原点は「神」の与えた道徳であると思っている……道徳心こそが、無償の信頼を生み、絆を作るのだ。
……(表情は変えなかったが、その目には哀しみの色が浮かんでいた 大層に絆を語りながら、その絆を結べなかったばかりなのだから) -- ブラスト
- (道徳心、のくだりで我慢できなくなったという風にふきだすと、げらげらと笑いながら)
「ぷっ…ハハッ! おもしれぇ! なぁ、ここ笑う所だよな政治家先生よぉ? その絆や信頼とやらは、さっきの野郎には届いてなかったじゃねーか」
「金と権力あれば大抵の奴は何とでもなるだろ? 適当に、その辺の奴に札束渡せば済む話だ」 -- ???
- (唇を噛んだ この悪魔の言うことは今の社会では正しいのかもしれない)
(だがそれでは理想に届かないことも分かっている それが歯がゆかった)
彼には彼の絆があり、信頼がある。私にそれを向けなかっただけだ……仕方の無いことなのだ。
信頼と絆は金では買えないッ!……「響友」は絆の証。幾千万のゴールドを積み上げても、「響友」に近づくことは無いんだ。
……(ため息をついて、ネクタイを直す)私の名はブラスト。ブラスト・アイディオールだ。……君は? -- ブラスト
- 「チッ…金も権力もある奴がワケわかんねー理想掲げて力を使わねーのは見ててイライラすんだよ」
「政治家先生ってのは、どいつもこいつも、こんなめんどくせぇ奴………ん?」腕組みをして視線を外した。何か思いついたらしい
「ならこういうのはどうだ? あれだ、召喚盟友(サモンクラスタ)ってのがあるだろ、そっちで契約者を探せばいい。響友と違って数の制限もないしな」
「俺か? 悪いが政治家先生に名乗る名はねーよ。まぁ、雇い主になるなら教えてやってもいいけどな」 -- ???
- それでは駄目なんだ……ただの召喚ではだめなんだ。私は「理想」のために政治家になったのだ。
「絆と信頼が生み出す真の平和」のために……だが、それを証明するには自分自身がその絆を見せることが不可欠だ。
……恥ずべきことだが、君の言うとおり……私には絆も信頼も無い。これから長い時間をかけて……響友を……
……?雇い主?何のことだ? -- ブラスト
- 「だーーーー!! クソ、ぶっ殺されてぇのかテメェ! いい加減に………あぁ?」
「何ってお前、俺と契約するか? って話だ。といっても仮契約だけどな。お前は響友が欲しい、俺は金が欲しい」
「どうだ、悪くない取引だろ? 受けるなら…ほい」ひょいっと鞘に収まったナイフを投げてよこしてきた
「持ってる金貨にお前の血を付けてこっちに寄越せ。悪い様にはしねーよ」 -- ???
- ……なん、だと?君が私の響友に?うっ!(ナイフを危なげにキャッチして、何度も見返す)
つ、つまりこういうことか?「金のために響友になる」と……馬鹿な!そんなものが成立するはずが無い!
そんなものが……(悪魔の誘惑、ナイフを持つ手が震えた 確かに……自分は自分のために響友がほしいわけではない)
(作るべき未来のために、武器として欲しいだけだ 響友という称号が それならば確かにこういう契約でも――)
い……いや、待て!やはり駄目……いや……(しかし、こんなチャンスもめったにない 唇を噛んで、悪魔をにらんだ)
ほ……本当に。私と契約するのか?「響友」に……なって、くれるのか?金さえ、出せば……
(声が、身体が震えている まさにこれは悪魔の取引 神の御前でそんな話を真に受けていることが恐ろしいのだ) -- ブラスト
- 「しっかり金払ってくれるなら、だがな。後は政治家先生が「イエス」と言えばいい。ヤるかヤらないか決めるだけだ、カンタンだろ?」
「おいおい、何度も言わせるなよ。別に命を寄越せって言ってるわけじゃねーんだ。金さえ払ってくれれば響友になるって言ってるんだぜ?」
「まぁ…嫌なら交渉決裂だな、他をあたれよ」ブラストに背を向けて、背中越しに軽く手を振り、立ち去ろうとする -- ???
- まっ、待ってくれ!(その背に呼び止めて)た……確かに、悪い交渉じゃない。だ、だが……
まず、聞かせてくれ。君の名前と……その、金で何をするのか?ということを。
外法にその金が使われるというならば、私はやはり君に金を渡すことはできない。この神の御前で、そのような真似はできないからだ。 -- ブラスト
- やれやれといった表情で歩みを止めて振り返る
「ファーストネームがクーファ、ファミリーネームがデルファーネスだ。ファミリーネームで呼べ。ファーストネームで呼びやがったら殺すぞ」
「何ってお前、金つったらアレしかないだろ、こうやって――」金貨を取り出してブラストに見せた後、そのまま口元へ運び……喰った
「喰うんだよ。正確にはカネというより金属なんだけどな。お前らも肉喰うだろ? あれと同じだ」ガリガリと飴玉でも噛む様に金貨を食べながら
「おい、契約するんなら、さっさと金貨に血付けてよこせ。響友になるなら必要なんだよ」 -- デルファーネス
- ……デルファーネス。そうか……君は、食料にするために金が欲しいのか。
……(礼拝堂の十字架に向き直り、静かに十字を切り、礼をする)
どうか、私が間違った道を歩まないよう見守っていてください。……私は彼女の「信頼」のために、私の財産を使うことをご理解ください。
(ナイフを鞘から抜き、ピ、と親指の先を切る)……(その血を、胸元から出した金貨に塗りつけた)
ピィンッ――
(金貨が指先で跳ねる音が、礼拝堂で反響し 宙を舞った金貨がデルファーネスへと向かっていった) -- ブラスト
- 祈る姿を舌打ちしながら見て(飯の種にもならん神に祈って何になるってんだ、人間ってのはわっかんねー奴だな)
金貨を受け取ると、ちらりとブラストを見て「よし、俺が良いって言うまで話しかけるなよ。気が散ると金貨が無駄になるからな」
目を閉じ大きく深呼吸すると、右手に持った金貨を顔の位置まで掲げた。そして、何やらぶつぶつと呪文を唱え始めると…金貨が淡く光り始め、何かの冷気のようなものがブラストの肌を這っていく
暫くして、再び深呼吸をすると女は目を開けた。手にあった金貨は真っ黒に変色している。どうやら終わったらしい
「ざっと、こんなもんだ。カンタンだったろ? これで契約完了ってワケだ」黒くなった金貨を口に放り込み、ガリガリと噛む。実に不味い
「あ〜…いや、まだあったな。……っ!」ぶちり、と自分の黒い鱗を1枚剥ぎ取ると、ブラストに見せながら
「これを加工して、首か足首に付けろ。仮契約だからな、繋ぎ止めておきたかったら大事にするんだな」 -- デルファーネス
- う、うおおっ……(ひやりとした感覚が脊髄を突き抜ける感覚 本当に――契約したのだという実感)
……分かった。(鱗を手にすると、とりあえずはポケットに入れた)
……デルファーネス。これで君と私は「響友」だ。……(す、と手を差し出す)
改めて……ブラストだ。よろしく頼む。 -- ブラスト
- 差し出された手を一瞥すると、何事も無かった様に話を再開する
「へいへい、よろしく。分かってると思うが、金が無くなりゃ契約も終了だ。まぁせいぜい稼ぐんだな」げらげらと笑いながらそう言った
くしゃくしゃになった紙をブラストの胸板を叩いてよこすと「ってことで、俺は帰るぞ。何かあったらここに連絡しろ。じゃーな政治家先生」 -- デルファーネス
- ……あ、ああ。(紙をポケットに入れて その表情は念願の響友を得た表情とは思えないほど苦い)
……(終止、無言で デルファーネスを見送る) -- ブラスト
- 教会の扉を閉めて出てくる竜人。こちらは当分の食い扶持を確保したとあって、かなりの上機嫌だ
「ふー、いってぇ。慣れない事はするもんじゃねーな……まぁ安いモンか」鱗を剥ぎ取った場所をさすりながら
「絆と信頼ねぇ……」教会の屋根にあるシンボルを眺め、ぽつりと呟いて教会を後にした -- デルファーネス
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