(赤い剣が天を貫いて伸びる。空間自体を切り裂いて、その空間から闇が溢れ出す。平原一帯を包み込み始める。)
(それは固有結界。Dの勇者/魔王の最後の宝具。)
(次々と、大空に走馬灯のように、「Kの伝説」と呼ばれたある勇者と魔王の物語の映像が流れていく。)
(
勇者として目覚め、旅立ち、魔王と戦い、仲間とともに駆け抜けた日々。)
(
Dの紋章の真実に気づいてもなお、運命に立ち向かい、抗い続けた男の物語。)
(この黄金の伝説の残る世界にやってきて、勇者として、魔王に堕ちず、世界を救うと友たちに語った日々。友に戦った日々。)
(
そして――神から与えられた絶望故に、狂い。世界を、自ら滅ぼしてしまった絶望の物語。その真実が今、ここに明らかになった。)
(神に運命を弄ばれ続けた男。勇者として世界を救い続けても、最後には神が現れて、全てを滅ぼしてしまう。そして、それが永遠に繰り返される。)
(Dの勇者は、それでもなお運命を乗り越えるために戦い続け――そして、遂に神によって狂わされ、魔王となった。)
(絶望の果てに――世界を滅ぼしたのだ。その手で。何もかもを。)
(男の大罪とは、自ら世界を滅ぼした事。)
(そして、男が成そうとしていることは、その贖罪。この世界と同じようにすべてを滅ぼして、神の呪縛から世界を解き放つ。)
(――そのすべてが、今此処に示されたのだった。)
――ここが、俺の原罪の地だ。
(あたりは闇に満ちていた。そう、宝具により空間が裂かれ、この地に、Dが破壊した世界が呼び出されたのだ。)
(だが、そこには何もない。何もなくなるほどに、無に還してしまうほどに、破壊してしまった世界。)
(あらゆる絶望、気が狂ってしまいそうなほどの絶望とプレッシャーが、セイバーに襲い掛かる。)
(そしてそれはバーサーカーの力となる。これは一つの賭けだった。再び、自分が世界を破壊する姿を目にすることによって、その覚悟を思い起こし、力とする。)
(この空間で、この罪の世界で、この絶望を力に変えることができれば、自らが狂わずにいられれば。)
(――勝てる、と信じて。)
これで最後だ。この世界で、俺は決着をつける。来るがいい。俺の全てを取り戻せるというのならば!
(赤い剣が伸びる。世界を滅ぼした剣が伸びる。)
(だが、どれほど力を得ようとも、超越した能力を持とうとも。)
(心は耐えられない。バーサーカーの体が揺れ、赤い涙が頬を伝い続ける。)
(全てを忘れるために、運命に打ち克つために行ったはずの行為が、自らの存在を、心を削っていく。)
(――そして、もう耐えられなかった。
うあ、ああ、あああああああ!!!! (嘆きの声を上げる。すると、何かの哄笑が空より響いていく。それは、この男を嘲笑う神の声であった。バーサーカーを嘲笑う。自らが世界を滅ぼしていく様が、映像として何度も再現されていく。)
(そんな世界の中で、バーサーカーは狂いながら、白きセイバーへと天を突く剣を以て、切りかかった。)
(魔王となった男。全てを捨てた男。だが、ほんとうは勇者になりたいのだ。世界を滅ぼしたくはないのだ。)
(それ故に、目の前の男は眩しすぎる。かつての自分だ。それを忘れ去るために、その絶望の剣で斬りかかる――!)
(魔王は勇者に勝てぬと、知り得ながらも。) --
バーサーカー