キャロレの声が響き……三人は、立っていた。キャロレの前に。
その空間の空には、無数の数式が浮かび上がり、計算が続けられていた。世界を壊し、書き換え、新生するための。世界の方程式が浮かび上がっていた。
それはビッグ・ベンの内部にして頂上。すでに時空は歪み、数式の空の果てには、廃都ロンドンが召喚された界境街が映りこんでいた。皆、未だ戦っている。
ここは世界の境界。全ての計算が終わった時、この境界は歪み、キャロレ達が住んでいた世界が、ブラスト達の世界に代入され、新たな世界が創造される。
キャロレの理想とする、彼が憎むすべてのものが無い世界が。
キャロレが黄金の数式で生み出した、《解析機関》……アナリティカル・エンジンによって、それは成される。界境街を見上げ、同時に見下ろす歪んだ空間。
キャロレはそこに立っていた。彼の後ろにある黒板には、黄金の数式そのものが書かれていた。
数式の城。世界の果て。ある種の舞台じみたこの異空間で、キャロレは三人を、待っていたのだった。
「……そんなこと、させないわ、パパ。あたしが、あたしたちが、止めて見せる。……パパの、悲しみも、全部!」
黄金の午後の輝きをもつ少女が叫んだ。世界の命運を賭けた戦いが、幕を開けたのだ―― --
アリス