名簿/498156

  • (これまでのあらすじ)エンドナンバーズの一人アートプッケがその母たるビッグEに肉体と精神を乗っ取られてより幾ばくかの月日が流れた。同じくエンドナンバーズの一人であるロットバーンはかの大禍神がここ、洋上学園都市に潜んでいることを突き止め侵入、捜索を開始する。だが生徒として数年を過ごすも未だ神との対面を果たせぬまま、焦燥ばかりを募らせるのであった…… -- 2013-04-20 (土) 23:33:53
    • アカデミアは広い。一つの街としても十分に。であるとしても、その全てを見て回るのに数年を要するということはあるまい。たとえ徒歩であったとしてもだ。だが実際、ロットバーン(ここではバン・ロットーと名乗っている)は数年の時間をかけてあらゆる場所を捜索した、はずであるにも関わらず、未だかの者の所在を明らかに出来ていない。なぜか?それが分かれば苦労はない。「冷めるな……」バンはぼやいた。心なしか自慢の髪も萎れ気味だ。 -- 2013-04-20 (土) 23:42:13
      • 今日も今日とて捜索は続く。見つかるまでだ。だが、「今日はもう止めだ。熱いコーヒーを飲みたい。」唸るほどに熱いコーヒー。それを一気に飲み干して、心の疲れを癒したい。ああだが、ごまかすにも限界はある。なにせ今日もまた電信で女王から小言をもらったばかりなのだ。脳裏にハイなテンションの少女声が再生される。『ねーまだ見つからねーの?もうさ、あれさ、私出よっか?ほら私ちょっと最近運動量がね!やべえのよ!脚が!あ、いや腰はいいのよ?毎晩ね!くねってるからね!セッションでね!やだ何言わせんのよ!セクハラか!!』……気が滅入る。 -- 2013-04-20 (土) 23:54:45
      • あまり女王に頼るわけにもいかない。未だ若々しさを保ってはいるが高齢には違いない。生れながらの魔人とは違う、人間。直接口に出しては言えないが、寄る年波というものは、ある。((確かそろそろ齢110…)) -- 2013-04-22 (月) 00:11:21
      • 黄昏時。探索の途中、ふと気づけば日も落ち、暗くなり始めていた。何か出るとすれば、そう、このくらいの時間帯だろう。そうだ、夜は俺たちの時間だ。にわかにテンションも上がる。足は自然と、人気のない場所へと向かっていった。何かがある予感を覚えながら。 -- 2013-04-22 (月) 00:55:59
      • 落第街の奥、入り組んだ路地を延々と歩き続ける。大通りの喧騒から逃れるように、奥へ奥へ。人の気配もなく、もはや何の為に存在するかも分からぬ建築物の壁だけが視界にある。魔人の五感が隅を走り回るネズミの気配のみを拾った。違う、それだけではない!「誰だ?」 -- 2013-04-22 (月) 18:44:52
      • 問いかけに応えるものがある。不気味に響く低い声だ。地獄の底から這い上がってくるような。「……ゥゥゥム。まさか今日という日に貴様に会うことになるとはな、エンドナンバー……」声は聞こえど姿は見えず。どこにいる?気配で探る。どの影にもそれらしきものは感じない。もっと奥か?いや、そうではない!弾かれるように顔を上げる。いる!壁だ、壁に張り付いている!それも二本の足で!「器用なことだ。ニンジャかお前は」 -- 2013-04-22 (月) 18:49:16
      • 「似たようなものだろう。ニンジャも魔人も!俺もお前もだ!」そう吐き捨てる言葉から察せることは多い。つまりこの異形はバンと同じく魔人の身。そしておそらくは――「新しく生んだということか。ええ、弟さんよ」「違うな!お前は兄ではない……古くなって捨てられた玩具よ……!」「我らが神も随分趣味が変わったな?お前のような醜い子を作るとは。……ああ、アートプッケの趣味か。意識が混じっているのか?」「侮辱はゆるさんぞ!」激高した怪魔人が空中に躍り出る! -- 2013-04-22 (月) 18:56:07
      • 「我が名はエンドニール・スレッドロード!お前の首を手土産にすれば、ビッグE様の助けになるだろう!ありがたく死ね!グゥォォォオ!」獣のような咆哮と共にスレッドロードの歪な体が直上より迫る。さて、これを待ち受けてカウンターを叩き込むのは魔人の技量を持ってすれば容易なことだが、今回は相手も魔人。であれば、おそらくは魔術を使うのだろう。警戒するに越したことはない。ひとまず距離を開けて――「……何?」驚愕に目を開く!当然だ、バックステップの最中、空中で体が動きを止めたのならば! -- 2013-04-22 (月) 19:29:56
      • 「フゥハハハハ!かかったなアホウめ!我が糸魔術の罠は最初からすでに貴様を捕らえておったわ!死ねい!」万事休す!空中で魔力の糸に絡め取られたバンは身動きが出来ない!だが彼の表情はどこまでもクールだ。まだ、内なる熱がその殻を破るほどではない。「気配もなく罠にかける技量は認めてやる。だが、ネタバラシには早すぎたな」「何!?」今度は逆にスレッドロードが驚愕する。無理もない、自慢の糸が一瞬で切断されたのならば!「なぜだ!」 -- 2013-04-23 (火) 18:26:29
      • 「熱だ。我が異能、我が力。バン・ロッターは加熱する。自らを高熱体とすれば、糸程度など一瞬で焼ききれる道理」バンの肉体余すところなく、今や灼熱!触れればたちどころに焼却!だがスレッドロードは不敵に笑った。「グゥフフ…!ネタバラシが早いのはそちらだったな!タネが分かれば対応可能!」「勘違いも甚だしいな。ネタバラシは終わった後にするものだ。そうだ、分かるな?……お前はもう終わっている」 -- 2013-04-23 (火) 18:54:20
      • 驚愕!スレッドロードの体が煙を吹いて燃えたのだ!「俺の異能は自らと自らが触れたもの全ての加熱。糸は俺に触れていた。そして糸はお前に。分かるな?」「ま、待て……」体を内部から焼き焦がされれば、いかに魔人といえども無事ではすまない。息も絶え絶えに命乞いをするスレッドロードだが、バンはもがく魔人を見下ろしながらズルリと奇怪な剣を取り出して見せた。「待たせたな、フレイムタン。さあ、食事の時間だ!」 -- 2013-04-23 (火) 19:09:52
      • 「よせ!ヤメロー!」無様な叫びに応えるように、バンの口端がつりあがる。ああ今こそ、内なる熱を解き放つとき!フレイムタンに内蔵されたジェット機構が唸りを上げて、灼熱の咆哮を放つ。勢いのままにプロペラの如く回転させ、剣速をあげる。圧縮合金製の刀身が赤熱化し、空気を焦がす。今や一万度に達した赫灼の剣は肉を命を食らうそのときを今か今かと舌なめずりしている。――さあ、イタダキマス!!「食らい尽くせ!赫炎の竜舌(フレイムタン)!!!」 -- 2013-04-23 (火) 19:48:23
      • 熱と衝撃が周囲の建築物ごとスレッドロードを叩き割った!その凄まじさたるや、筆舌に尽くしがたし!フレイムタンが舐めた跡はドロドロに溶けて跡形もなく、局地的な地獄の有様だ。直撃を受けたスレッドロードも言うに及ばず、完全に消滅……いや、違う!首から上が残されている!魔人の脅威の耐久力がなせる業か?否、それは加減の結果だ!「スレッドロード、お前らの目的を吐いて貰おう。なぜこの洋上学園都市へ潜伏した?なぜ今になって動き出した?言えば最後の一太刀は勘弁してやろう」 -- 2013-04-23 (火) 20:38:35
      • 「わ、わかった…言う。俺の任務は餌集めだ…我らが神への供もグアアアア!」突如苦しみだすスレッドロードの首!驚愕に目を見開いたまま、謎の絶命!「魔術か?いや、そういう類の気配はなかったな…。まさか、異能…?」考えを巡らすが答えは出ない。貴重な情報源を失ったのは痛いが、手ごたえは感じていた。何かが始まったのだ。と、「「ゴヨーだ!ゴヨーだ!」」周囲が俄かに騒がしくなる。人の気配が近づいている。「風紀警察か。流石に早いな」面倒ごとに巻き込まれる前にその場を後にしようとして、恐るべき事態に気がついた!「これは…!」スレッドロードの生首が!見知らぬ若い少年の首へと変わっている!身代わりか?違う!「……そうか。一般学生に紛れ込んでいるのか、魔人が!」じわりと滲む空恐ろしさを感じながら、バンは現場を去っていった。 -- 2013-04-23 (火) 22:48:39
      • 現場近辺、高層建築物の屋上。はるかな高みから見下ろす影がある。数は六つ、いや、七つ。「スレッドロードがやられたか」「フフフあやつなど我ら(リアル)エンドナンバーズの中でも最も小物……」「異能も使えぬ半端物ではな。所詮は最も小物……」「(リアル)エンドナンバーズの恥さらしよ。小物小物……」不気味に笑いあう影たち。その輪より少し外れて、やはり影。他の異形たちとは違う線の細い、少女と見紛うような少年の姿。「予想通り、ロットバーンは魔術を使いませんでしたね。まあ、アレが女王の指図で来ているのならばそうでしょうが」不敵に、不遜に、怪しく笑って。「……しかし」半眼で、六つの異形に視線を移し。「あれ、ワザとやってるんでしょうか?アートプッケも趣味が悪…ごほん、ごほん」

        (つづく) -- 2013-04-28 (日) 01:49:14

Last-modified: 2013-04-28 Sun 01:49:14 JST (4015d)