HMK/春惜しむ歌
- 拾って帰るだけ…拾って帰るだけ…(ヤクい魔剣のウワサを聞いて件の高校の正門前で深呼吸、誰かが拾っていっていなければ転がっているはず…? -- チアキ
- あちこちに血の痕跡が残ったままの校舎は、不気味に静まり返っている。 --
- な…なんだ脅かしやがって…血ぐらいいい加減見飽きたってのさ!(誰もいないならパッと行ってパッと帰るだけでいい!……ある。っていったってこの広い校内の…どこ?アテなんかない)
はー…まるでこの世にボクしかいないみたいだ…(校舎の屋上に登ってみればどっかに落ちてるのが見えるかも?と思いついたが、見つかるわけもなく…黄昏る) -- チアキ
- その時、校内放送が流れる。いや、流れるというほどでもない。
ノイズが走るのだ。時折、不気味に。そして割れたクラシック音楽のような音も小さく聞こえてくる。 --
- …イタズラにしちゃ手が込んでるよなあ…(黄昏てたらイカニモなBGMも流れてきて気が利いてる…なんて軽口きけたらいいんだが)
ハッタリだ!襲えるならとっくに襲ってるもんね!(魔剣なんて初見殺ししてナンボ、回りくどいことしてどうってのは大抵ロックにハメないとパワー不足とか、そういうヤツだ!チアキはそう読んだ) オラーッ!剣禍対の公務員ナメとったらあかんぞーっ!!(虚勢で自分を奮い立たせつつ、放送室へ向かう…道中血まみれだったりこう…ついこの間まで命だったものがあたり一面に転がってる気がするが一直線に前だけ見てれば視界に入らない!ヨシ!放送室にカギかけてようがこっちには異能だってある!くるならこいってんだ!) -- チアキ
- 突然、外でけたたましくカラスが鳴いた。
しかし、それ以上は何もないようだ。あなたの前に放送室の扉がある。 電気は通っているのか、使用中と書かれたライトが明滅している。 --
- ほら!やっぱり誰かいるんだ…(息を切らせて全力疾走してたどり着いた放送室、追いつめたのはこっちだクソったれ!とばかりにドアノブに手をかけ…)
動くな!剣禍対だ!(一回やってみたかった、『ドラマでよくあるドアを勢いよくあけて有無を言わさず拳銃を構える』というアクションを行ったことに満足感を感じつつ、放送室にいる何者かの正体を見る…のか?) -- チアキ
- あなたが見たのは、電源が入りっぱなしの放送室。
薄暗い。その中に。
青白く浮かび上がる人型の影がある。 --
- (ゆっくりと指を動かし、床を指した)
(その先には、妖刀『惜春』とその鞘が転がっている) -- 少年の影
- これって…幽霊ってワケ?ゾンビとダンスった後にジャパニーズホラーで幽霊なんて、緩急きかせてきたね!(と…わかりやすいクリーチャーじゃないぶん昂った神経では危険性を把握できないのだろうか。)
急にこんなもん向けて悪いけど、ボクもボクの用事すませたらさっさと帰るからさ!質問に答えてくんない?!(緊急時の対応で高圧的に接する、武器も持ってる!交渉のスタートとしては赤点もいいところだ。) ここにヤクい魔剣があるんだってね?どこに落ちてるの!(その間幽霊から目をそらさず銃を向けたまま…ここまでやって言葉が通じるタイプだろうか?なんて考えはまだない。) -- チアキ
- って…あれ?!それ!?(すんなりいっちゃったよ!?とその転がってる魔剣を見て…)
ご丁寧にサヤまである…抜き身だと危ないもんね!サンキュー!(協力的だった幽霊に感謝を伝えて魔剣に手を伸ばすが…?) -- チアキ
- もういい。
もういい………
何もかも。
(諦観と絶望の言葉を口にして) -- 少年の影
- 影は消えた。後には魔剣……妖刀惜春が残されている。
拾えば、妖刀惜春という名前とその性能が脳裏に流れ込んでくるだろう。 しかし、使わなければ害はない。 --
- ……よかないから、化けて出たんだろ…!(やる気もない力もない、だが野望だけはでっかいチアキは解る、どんだけ斜に構えたって未練も心残りもない人間なんていやしない。)
(だから生きてる時はおろか、死んでからも人は人のまんま恨んだりつらんだり…) どうでもいいってんならボクの手柄になれ、惜春…(この妖刀だって刀として生まれて、絶対に相手を斬ったことにするという夢だって叶えた、血だって吸った、もういいだろう。) (ここでの惨劇を引き起こした妖刀惜春を鞘に納め、封じ、握りしめる…帰る足取りは軽くもなければ重くもない、しかし一歩ずつ確実に) (犠牲者の供養だとか、妖刀使いの素性だとか、妖刀のことだとか…ヒーローじゃあるまいし背負う必要も、考えることもない、『手柄』を手に入れた、それだけでたくさんだ。) (チアキがその場から去れば、今度こそその場は静寂に包まれていくことだろう。) -- チアキ
- 放送室に向かう途中、あちこちにこびりついた血痕を見ながら思う。
どうして僕だけ惜春の使い手に殺されなかったのだろう、と。 --
- ………何か、忘れている気がする………なんで僕だけ、輪郭がぼやけたという結果だけ残っているんだろう。 -- 小村一朗太
- 脳裏に響く、同級生の罵声。笑いながらの暴力。それが心底嫌だった、緑ヶ丘高校の日常。 -- 小村一朗太
- そうか、僕はいじめられていたんだ。誰もが僕を見て見ぬ振りした。
僕をいないこととして扱った。だから……(一番奥の掃除道具入れを開く)
あの日、天井を突き破って落ちてきた惜春を魔剣と知りながら手にとったんだ。 -- 小村一朗太
- 目の前に落ちてきた妖刀を手にとった時、それが惜春という名前だということ。
そして、概念を斬れる魔剣だということを瞬時に理解した。 --
- 僕はずっと日常を壊したかったんだ。誰も彼も憎くて、嫌いだったから。
そして僕は最初に、この学校の関係者の逃げる、という概念を斬った。 -- 小村一朗太
- 学校に閉じ込められた全員を一人一人、斬り殺す。悲鳴、命乞い、絶叫、惨劇の音。 --
- そして僕は最初に、『学校の関係者』として学校から逃げるという概念を自分の分も斬っていたことに気付く。
もう家には帰れない。 そして魔剣を使いすぎた影響で僕の輪郭はぼやけていた。
惜春の使い手は、世界の理を斬った分だけ世界から隔絶していくんだ。
(掃除道具入れに無造作に置かれていた、鞘に収まった妖刀惜春を手に取る) -- 小村一朗太
- もうどうしようもない。どこにも行けない。僕は今、それを思い出していた。 --
- でも僕は謝らない!! 後悔しない!! -- 小村一朗太
- 放送室に駆け出していく。電源を入れると、息を切らせたまま叫んだ。 --
- お前らが死んだのは!! お前らが悪いんだ!!
お前らが僕をいじめたから!! お前らが僕をいないものとして扱ったから!! お前らが死んだのは自業自得だ!! お前らを殺したのは正当な復讐だ!! -- 小村一朗太
- ハウリングする放送室の中で、荒い呼吸をしながら妖刀惜春を抜いた。 --
- そしてこれは………僕自身の『自業自得』だ。 -- 小村一朗太
- 僕は惜春で目の前の空間を斬った。
惜春は寸分違わず、僕自身を袈裟懸けに斬っていた。 --
- 畜生………やっぱり、痛いな…………いじめられていた時と、おんなじだ…
(倒れ込むと、出血で死ぬより早く惜春の使いすぎによる反作用で自分の存在が消えていった)
みんな……みんな死んで……死んでしまえ…………(そのか細い声が放送から僅かに聞こえた直後)
(妖刀惜春だけが放送室に残された) -- 小村一朗太
- 誰もいなくなった学校で、妖刀は今もそこに転がっている。 --
- 乾いた血の痕跡も生々しい学び舎に、今日も放送が鳴る。 --
- 皆さん、こんにちは。お昼の放送の時間です。
すっかり蒸し暑くなってきて、校外に出る時は汗ばんでいます。 死んでしまったら、涼しいのでしょうか。それは今の僕にはわかりません。 あの事件から先の記憶以外、曖昧で申し訳ありませんが。皆さんのご冥福をお祈りします。 それでは本日の音楽はPeace and Quietです。 -- 校内放送
- 12時ちょうど。誰もいない高校にて。
惨劇の痕跡残る学び舎に、昼の放送が鳴り響く。 --
- 皆さん、こんにちは。お昼の放送の時間です。
ゴールデンウィークが近いため、例年なら大掃除の後にゴミの搬入に間に合わせるように校庭の隅にゴミ袋を集める時期です。 しかし皆さんはもうゴミを出すことはないので、関係ありませんね。 学校は今日もとても静かです。学校の皆さんを殺した妖刀・惜春に関する情報をお待ちしております。 それでは本日の音楽はベートーヴェンの田園です。 -- 校内放送
|