名簿/488262
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- 誰かの喜びの為に
誰かの幸せの為に 誰かの笑顔の為に これが【Sacred rose witch】の、私の方針 人に幸せや、心の癒しを、人生をよりよく行きやすくしたりする手伝いをするのが シアラ・コンスタンス 私の使命である -- シアラ
- アイディアを膨らませて、デザインを思考錯誤して、糸を紡ぐ
それはとても運命を紡ぐのと似ている たかが服だと言われるかもしれないけれど、私の作るお洋服は紛れもない私の子供の様なもので ……特に、量産している類のものではなくて、気紛れに作ったサンプル品が売れる時等は想う 服もまた、着る人を選ぶかの様に 或いは、主人を選ぶかの様に それは とても――――に 似ている――――………… -- シアラ
- 没頭しすぎるといつもそうなのだけれど
集中を通り越して、意識の境界線が曖昧で 過労死寸前になるまで一心に服を縫う途中に 『甘いもの、食べて』 ……と ハインデルが囁いて、黒魔女の持ってきたタルトタタンに舌鼓をして居た時に ルシードの姿が見えて、お茶をしながら依頼を受けていた最中 ……私が休憩中で気を使ったのか それとも来客が居たからか 黒魔女はまるで、影と同化するかのように、お店の隅に静かに居座って時間の流れる様子を砂時計を見て過ごしていた 時計は土星の司るもの 土星の状態が良い場合の職は 科学と学究の人である。神学者、哲学者、数学者、財務担当者、彫刻家、建築家、鉱山技術者 土星の状態が可もなく不可もない場合 農業家、冶金家、陶芸家や煉瓦職人、製革工、僧侶、隠遁者 「土星の状態がよくない場合 魔術師、カイロプラクター、物乞い、すべての薄汚れた仕事、死刑執行人とし また、その状態は 土星の状態がいい場合 高い地位、政治にかかわる地位、物質的におおいに恵まれる 土星の状態が悪い場合 失脚、貧困、隷属状態、事業における失敗や不運、秘密の敵 不名誉、入獄、追放、みじめな終焉……としている 彼女が砂時計を弄る姿は、とある占星術師かつ数学者の言葉を思い起こさせた -- シアラ
彼との秘密に近しい依頼を受けながらのティータイムが終わりを告げて ルシードがお店の扉の向こうへと姿を消すと魔女は囁いた 「……値段あげても良いんじゃないか?」 あまりに、突然だったので、驚いて魔女の方を見る 深いアメシストの瞳が交差すると、溜息交じりに魔女は答えた 何だ、お前。言いたい事が分からないのか?――……そう、言いたそうな顔で 「シアラ、お前魔女だよな? ……いや、魔女見習いのが正しいのか……? お前は魔女として、いや 魔術師でも良いが何処までの腕かね? もしくは、魔術の知識がどのくらいあるかね? ……その上で、値段設定を考えた事はあるかね? ……私はね。可愛い子や見目麗しい子には甘いよ? 甘さを承知しているうえで聞いている。答えろ ……別に答えなくてもいい。それすらもお前自身に委ねるがね」 -- シアラ
- 「ええっと……」
問いに詰まる。きっと、今の私はとても困惑した表情を浮かべているのだろう この魔女は、何処か 異質な怖さを秘めている 滲み出ている、という方が正しいのか……いや、秘める気もないのか 陰鬱で重苦しい闇色のアメシストは、衝動的に人の業を見透かされるかのような苦痛を感じる アメシストは人の狂気をいさめる石の筈なのに 彼女の業が、天命がそうさせるのか…… 「……私が服作りを元から好きだったと言うのもあるけれど 出来るなら高価で手が出にくいお洋服よりも、色んな人の手に渡って喜んで貰いたかったのが根本にあるから、です 纏われない服に価値は無い 私は常にそう思います。箪笥の肥やしにされて、持ち主が大事にしている錯覚を覚える服なんて、結局はがらくたと同意義です 大切に扱われて、着る人を綺麗に着飾らせてこそ意味がある ……高い服だとどうしても袖を通して汚すと躊躇してしまうのもありますから それに、私が作った服で笑顔になって貰えるのが何より嬉しいですから」 -- シアラ
- 「……ふぅん そうか
つまるところ、お前は服屋な訳だな」 「……?」 いや、元々服屋ではないか 確かに魔術用品も扱っては居るけれど。メインはブティックなのだから 「……失礼した 服屋に対してなら随分な小言だったね、礼を詫びよう」 そういうと、魔女は口元だけ微笑んで 私も怖さと言いたい事が分からなくて、濁ったような曖昧な笑顔だけ返した 「……だから! お前は魔術師じゃねぇのかってのを聞いてんだよ お嬢さん」 「あうっっ!」 小さく頭を小突かれる。加減されているのはわかるけれど、痛いものは痛い -- シアラ
- 「いいか小娘、私も只の服屋のおねーちゃんならこんな事言わないの
ただ、な? 一応仮初にも恐らくは友人と言って良い繋がりの奴の弟子してて んでもって、誰かいい魔術師か魔女の師匠欲しいなーって思っているよ―な子だから言ってんの! その上で何が言いたいかって訊ねているの」 「あんたの志は立派だよ? てめぇがボロボロになるまで人様に奉仕するように服作って その挙句、人が喜んでくれるから服作って 誰かの笑顔が見たい為に体酷使して あたしゃそんな真似できないししようとは思わないけれど そしてあんたがちょっとでも魔術師を名乗り出たいなら 今の体制はちょっと考えなおした方がいいんじゃねぇか? ……私はね。そういうお話をしに来たんですよ、お嬢さん」 つまるところ、この魔女は心配してくれていたのか 私の頭にそっと、黒魔女の冷たい手が乗る 氷のように冷たくて、細すぎて枯れ枝を思わせる様な手の筈なのに 暖かさを感じるのは、きっと………… -- シアラ
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「お前、魔女としてはどうなりたいんだ? 白、黒、灰色、どれに進むんだ?」 「わかりません。ただ……結局白黒で分けているだけで、魔術の根本は知れば知るほどどちらも同じだし 区切って、片方から目を逸らすのはどうかと思って居るだけです ……ただ、そうですねー 人を喜ばせたいってところは白よりなのかも?と思ってヒーリングして白から入って今に至る……という状況ではありますね 黒はしても、やっぱり人呪ったり殺したりとか。あたしは出来ないって思いました」 「白派だねぇ…… まぁいいや。どちらにしろ師匠の当てはあるのかい?」 -- シアラ
- 「ありません……そして、正に今どれに適性があるのか迷っています
結局、やっている事は。根本は同じなのだからと独学で学んでいましたけれど……そろそろどの方面へ行こうか 自分と向き合いたいなと思っているのですよね」 「ふむ……そうか もし自分の適性なり天命なりを知りたいなら私の妹の所へ行くがいい 占いの腕なら私よりアイツの方が優れているからな」 そんな事を話して、まだ私の石の師匠が帰っていない事を確認すると魔女は踵を返して――…… 「あのっ、ちょっと待って下さい お店の、というかお値段の、というか――……初めに言いかけていたお話をよければ聞かせて行きたいのですが」 とっさに、お店を出て行こうとする魔女のローブへと手を伸ばして引き止める 何を言いたかったのだろう? 聞きたかった。それは何を意味していたのかもあるのだけれど あの魔女の高慢な、棘のある言い方は随分とわかりにくくて誤解を十分に生じるもので 故に人が離れて行くのだろうけれど ……私の頭にそっと乗せられた手は暖かで、優しかったから -- シアラ
- 私の方へと眼だけ向けて魔女は答える
「……その続きは方向性が決まってからでいいだろう その上で、お前が何を想い、何を目指し、何を志すか それを聞いてからだな」 そっと私の手を除けて、するりと扉に手をかけて姿を消していった 私はこれから何をしたいのだろう 選ぶのは適性で?天命で?自分が何を行いたいか、の意思で? 私が目指すものは何? 私の墓標に刻みたい言葉は何? -- シアラ
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