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その娘の名前は白鷺・夜雨子 酒場から遥か東、海を渡り歩いた地に住まう農民の娘。 そこでは鬼族と人間が手を取り合い生活していると謂う、少し変わった村だった。 皆が助け合い、笑い合い。そして、時には泣き合い。 裕福ではなかったが、とても愛に溢れていた村だった。 そんな、ありふれた、いつも通りの日常がいつまでも続くと思っていた。 ───── ある日、夜雨子が川で洗濯をしていたとき、ふと上流から違う色の液体が流れてくるのに気づいた。 赤い、赤い液体。 水と混ざり合ってもなお赤みが消えない程の大量の赤い液体。血。 上流にあるのは、皆の笑顔が溢れる、私達の村。 夜雨子はおぼつかない足で駆け出した。 ───── 千切れそうなほどか細く、絶え絶えな息でひたすら走る 「何かの間違いであって欲しい」と、道中さまざまな予想を走り巡らせるが、どうしても嫌な結末が頭に浮かび、離れない。 草履の鼻緒は既に千切れ、裸足で駆ける。 息が上がり、頬に張り付く髪も払うことなく。 そして、丁度日が暮れなずむ黄昏時、彼女は視てしまった 夕焼けと同じように赤く燃える、愛する村「だったもの」を 蛇についばまれているように腹から腸をはみ出した、さっきまで笑っていた、人「だったもの」を。 その人々の中に、最愛の人の姿を見つけ… 記憶に残っているのはそこまで それから先のことは良く覚えていない 思い出したくないだけなのかもしれない いまの私に出来ること、それは事件の張本人を見つけ、完膚なきまでに殺すこと。 そのためだけに私はいま、生きている。