名簿/457758/archive02
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IAL/帝国学園ロートガルデ・生徒会室
IAL/キャラリスト
IAL/0003
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年齢順
更新日順
前職
ワープゲート
冒険中ゲート
更新順ダム
チャット部長
ガイドマップ
ASH課金マネージャー
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名簿/457758
†
↑
Round 0 『予感の先行き』
†
+
『予感の先行き』
Round 0
─────────────
『予感の先行き』
───────────────────────────────────────────────────
明確な起点は無くて
予感の続きから
何もかもが始まっていて
──────────────────────────────
(午前の陽光がカーテンの隙間から差し込む。8月の日差しは午前中からでも強く、うだるような熱気を室内に篭らせている)
(……尤も、この熱気は夏の気候だけでは無いのだが。ベッドの上、向かい合うような姿勢で俺の腰に乗った身体を、尻からのばねで突き上げると甘く、切ない響きの嬌声があがる)
(リズミカルに跳ねて視覚を楽しませる胸に顔を埋め、絶頂に向け対面座位で繋がった互いの腰を動かす。胸元に押さえ付けるように強く抱き締められたのと同時、強い締め付けを性器に感じて、俺は欲望を解き放っていた)
--
春真
2011-12-21 (水) 23:53:28
(むせ返るような汗の臭い混じりの熱気。射精の余韻に浸りつつ、この後の彼女の予定を思い返すとあまり長くはこうして居られないな、とも思う)
(未だ小刻みに痙攣している彼女の胸元を顔から引き剥がし、ベッドに寝かせるようにしつつ、裡から分身を引き抜く。精液の溜まった避妊具を外すと、口を縛ってゴミ箱へ投げ込んだ)
--
春真
2011-12-21 (水) 23:57:37
(残滓を拭ってパンツを履いていると、ベッドに身を起こして不満気……というか、余韻を中断させられて少し拗ねた風にこちらを見ているリリィリアと目が合った。隣に座ると肩を抱き寄せ、宥めるように。)
昼から実家戻るんだろ? 身支度しっかりしてかねーと。
(尚も頬を膨らませて可愛らしくこっちを睨むリリィリアの仕草が、その、何だ。情事の後の艶っぽさとのギャップがたまらなくいじましい。額にキスして撫でてやるとやっと表情を綻ばせて、身支度の為にシャワーを浴びに浴室へと向かった)
--
春真
2011-12-22 (木) 00:04:47
○ ● ○
--
2011-12-22 (木) 00:09:01
(身支度を終え、アパートの出口で見送りに来てくれていた春真さんに振り向いて。実家からお呼びがかかった時から何度か繰り返した質問を投げかけます)
やっぱり両親に挨拶しに来ませんか、春真さん? その……今後どうなるかはわかんないですけど。
それでもやっぱり、一緒に暮らすならそういう事も視野に入れたいし、それなら一度きちんと紹介もしておきたいんですけど……
--
リリィ
2011-12-22 (木) 00:13:25
いやー……うんまぁ。
(歯切れ悪いなぁと自分でも思いつつ、踏ん切りがつかないのは確かであって。咥えた煙草を吹かしながら頭を掻いて)
……とりあえず定職就くまではなー……親御さんの覚えも悪いだろ。身寄りも何もない元冒険者のごろつき相手じゃなー……
--
春真
2011-12-22 (木) 00:16:16
(そんなの気にしないのに。私は。両親はどうか知らん)
その時はその時で説き伏せれば良いと思うんですよぅ……
(ともあれ、約束していた時間が近い事に気付いて、私は慌てて駆け出そうとして……)わわっ!?
(……よろけた所を抱き留められていました。赤面して見上げると、しょうがないなと言わんばかりの眉尻を下げた笑みが。そのまま、軽く触れるようなキスをされて)
--
リリィ
2011-12-22 (木) 00:21:27
久しぶりの実家だろ。ゆっくりして来いよ
…いや寂しくとかねーって。ねーから。何だその笑みは!
--
春真
2011-12-22 (木) 00:24:10
(くすくすと笑い、今度はこちらから啄むようにキスをします。いつかこの人を両親に紹介しよう、そう胸に思いながら)
じゃあ……行ってきますっ!
(そう言って、私は久しぶりとなる実家への道を駆け出しました。大好きな人に見送られて……)
(……この時は)
(…………この時は、私は。こんな幸せな日常が、ずっと続いていくと。そう信じていました。)
(ずっと、愛しい人の隣で笑っていられると。少女のように、信じていたんです……)
--
リリィ
2011-12-22 (木) 00:33:43
(妙な予感は在ったし、事前に気付くことも充分可能だったんだろう。止められなかった、は言い訳だ)
(水面下で起きていた事態の余波を注意深く観察していれば、少なくとも彼女だけは守り通せた筈だったんだ)
(……しかし、リリィリアが実家からアパートに戻って来たその日、最早事態は決定的な局面に在ったのだ)
--
春真
2011-12-22 (木) 10:18:41
(魔導工学の物品を取り扱っていたサントーレ商会の経営が破綻し、リリィリアの父親に当たる人物が多額の借金を背負う事になったのは後から知った事だ)
(全く身に覚えの無い事ではないので、その境遇事態には同情はしよう。だが……)
(あの日、あの時。見知らぬ……否、黒服ども、それも俺のよく知る臭い、路地裏の饐えた臭いを強く感じさせる連中は、既に彼女の部屋から荷物を運び出し始めていて)
(魔導二輪を停めた俺が怪訝な表情で人の動きを見ていると、不意に後ろに気配を感じた)
--
春真
2011-12-22 (木) 10:24:51
春真さん
--
リリィ
2011-12-22 (木) 10:25:13
(その声はあまりにも震えていて)
(その目尻にはどうしようもない程涙が溜まっていて)
(その笑顔は、全てを笑顔で覆い隠そうとしていて)
(何もかもが、一週間前に彼女を送り出した時と違っていた。頭が真っ白になって、伸ばしたその手は、届かなくて)
--
春真
2011-12-22 (木) 10:27:19
……さよなら
--
リリィ
2011-12-22 (木) 10:27:40
(待てよ、とか。行くな、とか。そう言ってしまえれば。)
(その手を伸ばすのではなくかっさらい、どこか遠くに二人で行くことが出来れば)
(こんなことにはならなかったのかも知れない)
(……あの日以来、俺はリリィリアに会っていない)
(事実として分かっているのは、彼女が「売られた」と言うこと。街の闇は未だ深く、溜まったツケは何時だって弱い者が払う事になる)
(何も変わっちゃいないのだ。10年前、俺があの事務所で血反吐を吐いた時から、何も)
--
春真
2011-12-22 (木) 10:33:46
(だが、世界が何も変わっていなくても)
それでも、それでもなぁ…!
(手にしたものが指の間からすり抜けていくのは、もう耐えられないんだよ)
だから、さ
(『人買い』業者の顧客向け事務所。会員制のバーの一室を会合場所として使っている事は分かっている)
(果たして、此処が当たりかどうかなど分かりはしない。それならそれで、虱潰しに行くまでだ)
(入り口に詰めていた黒服が、店の前で佇むこちらに声をかけるべく近寄ってきた。上等だ。上等だよ)
(八つ当たり位付き合えよ、なぁ?)
--
春真
2011-12-22 (木) 10:44:33
↑
1st stage 『遠きの問いかけ』
†
+
『遠きの問いかけ』
1st Stage
─────────────
『遠きの問いかけ』
───────────────────────────────────────────────────
君を求め
しかし届かず
──────────────────────────────
(男は疑問していた。何でこんなことに?と。麻袋を頭から被せられ、椅子に座った状態で縛り付けられている)
(『商談』の最中、出入りか何かがあったらしく廊下が騒がしくなったのは覚えている。だが其処からの記憶がすっぽりと抜け落ちていた。気がついたらこうしていて、時間の感覚も無い)
(そう言えば喉が渇いた、と思った矢先、いきなり被せられていた麻袋を外される) --
2011-12-24 (土) 01:30:57
……!?
(天井の魔導ランプは切れかけているようで、光量は決して多い訳ではなかったが暗闇に慣れた目には異様に眩しく感じた。何処かの廃ビルの一室だろうか、打ちっぱなしの壁には罅が入っており、部屋自体にも湿った空気が漂っている)
(ともあれこの状況をなんとかするには辺りを見回し、現状を把握することが肝要だと判断した男は首を回そうとして……首の後ろで金属音を聞いた)
(直後、後頭部に押し当てられた冷たい感触。ああ、よく知っている。陳腐な脅しだ。)
(跳ね上がる心拍数を宥めすかしながら、余裕を装い背後の誰かに声をかける)
おいおい、なぁ、何処のチンピラか知らねえがいきなり拉致ってチャカ突きつけてくれるとは大層な自信じゃねえか、えぇ、おい?
こんなことしてどうなるか分かって─── --
2011-12-24 (土) 01:39:02
(背後に動く気配。直後、男の視界に何かが転がって来た。バレーボール程の大きさのそれは鈍い音を立て、男の縛られた椅子の斜め前方に転がり)
……ッ!?
(虚ろな、硝子玉のような目と視線が合った。否、それは錯覚だ。その頭部は最早生命活動を止めて久しい。半開きになった口からは、恐らくは背後の人物にされたのであろう、滅茶苦茶な乱杭歯にされてしまっているのが見えた)
……、
(虚ろな表情のその顔。見覚えがある。……この街を縄張りとする人身売買組織、その上役組織の幹部であった男の顔と、目の前の生首は恐らく、同一人物のもので) --
2011-12-24 (土) 01:47:05
「問屋には現場の事は分からんから現場の者に聞け、だってさ。小売も大変だな」
(後ろからの声。若い。が、異常に乾いている)
(なんだというのだ、こいつは。こんな事をすれば)
テメェ……何処の組のモンだか知らねえが、この街で生きて行けねえぞ。こんな事やらかして俺らが黙ってる訳ねえからな、今に
(言葉の最中、目の前に写真が掲げられた。黒髪の、平和ボケした緩そうな面の女だった。そうだ、どこぞのお嬢さんだとか言うこの女、上客向けの商品として……)
「どうでもいいさ。なぁ、この子知ってるか? 知ってるなら答えてな。3秒」
(知っている。だが『商品』の行き先は他言無用だ。一瞬躊躇し、次の瞬間生木が折れるような音を体内から聞いた) --
2011-12-24 (土) 01:57:41
い、あぁァァァァァァァァ!!!?
(思わず喉の奥から叫びが漏れた。畜生、左の、小指が、)
「飲み込み悪ィな。そいつが生首になってる時点で色々想像しろよ。質問でェす。この子知ってる? 知ってるならハイ、知らないならイイエ。OK?」
(クソが、殺してやる。だが言った事がバレたら俺が殺される。このガキの拷問なんぞよりよっぽどおぞましい方法で、だ。だから首を横に振る。必死に。痛ぇ、畜生)
「へぇ、そっか。じゃあの借金取りデマカセ言ったって事になるのな。じゃ、もーっかーい確認するぜ? サントーレ商会のご息女を貴方は知っていますか?」
(知らねえ。畜生。聞いてねえ。いつも通り仕込みまでやったが、こんな事になるなんて聞いてねえ。クソが、殺す。殺してやる。首を振る。横に、横に)
(次は右の五指が一遍に逆側に曲げられた) --
2011-12-24 (土) 02:05:52
し、知ってる!! クソが、知ってる!! 『仕込み』を済ませて出荷までした!!
(耐え切れず、男は叫ぶ。激痛と怒りの中でもこの男は冷静だった。望む情報を与えつつも身を危うくする情報を隠せば、まだ何とかなる。そう判断出来るだけの冷静さはあった)
「素直でよろしい。じゃ、ちゃんと教えてくれたからご褒美だな」
(不意に、両手からの灼けるような痛みが収まったのを感じる。恐らくは治療用の鎮痛符か何かを貼ったのだろう。馬鹿がと内心吐き捨て、これからの『交渉』の戦略を胸の内で練り始める)
「んじゃ次の質問……と、あと気になる点が一点有ったからそっちも一緒に聞きますかね
彼女はどこのルートに売られた? それと……『仕込み』って?」
(予想通りだ。若造が、場数が違う。用意しておいた答えを、出来る限り平静を装って口にする)
……何処に売られたかは知らねえ。『運送業者』は別系統だからな。芋づる式にしょっ引かれちゃたまらねえ
(現場はな、と内心で続ける。勿論、その辺りを取り仕切っていた自分は知っていたが)……仕込み、ってのはまぁアレだ。
(痛みが緩くなったからか、口調にも余裕が出てきた。イケる)上物だったからな。『商品』向きの仕込みだよ。分かるだろ? 初物じゃあ無かったが逆にそれならそれで先だって…… --
2011-12-24 (土) 02:25:26
(気が付いた時には椅子が倒れていた。右肩側から床に倒れこんで居て、冷たさを感じる。どういう事だ? と首を回す。後ろ手に縛られて居た筈なのに、気づけば左側がフリーになっている。さては信じたか? 馬鹿が)
(思考がそこまで辿り着いた瞬間、鮮血が吹き出した。切断され、断面を晒した左肩の動脈から赤黒い血がホースのように噴出する)
(未だに痛みを感じない事に、男は現実感を喪失している)
「どこに売られた?」
(繰り返される質問。だからさっき答えただろうが。……さっき?)
(男は気付く。血溜まりに沈みつつある身体が何故倒れたのか……簡単だ。人体は両腕でバランスを取っており、片側が断たれればバランスを崩す。認識出来ていなければ尚更だ。結果、身は転倒する)
(男は絶叫した。) --
2011-12-24 (土) 02:34:16
●
--
2011-12-24 (土) 02:37:26
(一人、部屋に残った血痕と拷問に使った諸処の道具を片付ける。バッテリー直結のプラグと医療符は役に立った)
(残骸は、廃ビルの地下フロア底面をブチ抜いた大穴に放り込んである。当面露見することは無いであろう)
……。
(片付けの手を止め、血に濡れた手を拭う。血臭には慣れた。煙草を取り出し、咥える)
……。
(先ほど聞き出した情報とともに、ポケットから引っ張り出した紙片を眺める)
……北方か。
--
春真
2011-12-24 (土) 03:12:07
(紫煙を吐き出し、天井を見上げて思い返す。彼女の両親の事を)
……全くの善人だったなぁ、おい
(彼らは何も知らない。それらしい言葉に騙され、それらしい方向に仕向けられただけなのだ。無責任だとは思うが、平和の中に暮らしていたというのはそういう事なのかも知れない)
(だとすれば、彼女は知っていたのか? 分かりはしない。……そう、分かりはしない。ただ彼女は)
守る為に、自らを犠牲に……
(納得などは出来ない。ならば、)
奪いに行く。
--
春真
2011-12-24 (土) 03:21:33
(何からかは分からない。彼女自身から、なのかも知れない)
……行こう。
(これからの自分に、彼女の隣に立つ資格など無いのかも知れない。それでも、最早諦めを得る事は出来ないから)
……だから、行こう
--
春真
2011-12-24 (土) 03:25:48
↑
2nd stage 『急ぎの用事』
†
+
『急ぎの用事』
2nd Stage
──────────────
『急ぎの用事』
─────────────────────────────────────────────────
待たせているのだからと急いでも
意外と気にはされていない
──────────────────────────────
シラ・ムーンストナは現在魔導二輪のタンデムシートに座り、周囲の風景を眺めていた。
北方帝国領内、今なお動乱の続く紛争地帯の中でも、この辺りは戦火から遠い。比較的安定した……とは言っても、平和とは程遠い地域であった。
「……。」
前席で運転している男は先程から無言のままで、それがシラにはどうにも座りが悪い。周りの針葉樹林も見ていて楽しいものではなく、内心ため息をつく
案内役として派遣されたのは良いが、こう直線道路が続くとナビのしようもなく……ぶっちゃけ暇と言っても良い --
2011-12-27 (火) 19:53:11
黄金歴205年12月。夏には永久凍土が融けて緑を見せるツンドラも、この寒さ厳しい時期にあっては雪の白さ以外何も無く。只この白い世界において色彩と呼べるのは、この魔導二輪のみである
前席のヘルメットからはみ出た赤毛が風になびき、頬にかかるのを手指で払いつつ、長い前髪に隠れた銀の目を伏せてシラは回想する。殿下もまぁ、思い切った人選をするものだなぁ、と。
シラは
長寿族
(
エルフ
)
である。耳も長い。元々は森の奥深くの氏族集落に暮らしていた。
集落は旧態依然としたエルフの長老たちが支配しており、外界に興味を抱いた所でそれは海に棲む魚が陸を想うが如くの行為であると嘲笑される。そんな共同体で育った。
転機となったのは、一人の若いエルフがかなり強引な手段で集落を飛び出した時だろうか。穢れた技術の産物として、それ故安置されていた古式銃を持ち出し出来損ないと言われた彼女は集落を飛び出した。それ以来、集落の若いエルフは外界に興味を持ち始める事が多くなった。
勿論肺も脚も無い魚が陸に上がった所で息が出来ずに死ぬだけだ、と長老たちはそう諭した。しかし彼女はエルフで、別に森の外に出た所で人の中でも暮らしていける存在であった。要は思い切りだ。
氏族を捨て、外界へと飛び出した彼女は……紆余曲折の後にとある人間の下で兵隊をやっている。楽しいだけの生活では無いが、それでも長い生を森の中に引き篭っているだけで費やすより格段に有意義だとシラは思っている --
2011-12-27 (火) 20:09:24
防寒帽の下で曲げた長耳を僅かに動かして時折血行を確かめながらシラは前の男を見る。この赤毛の青年は、シラが王と仰ぐ人間の誘いを一度は蹴り、しかし今再びその下に馳せ参じようと言う。
何があったのかは知らない。訳有りの人間はいくらでも居るし、わざわざ聞くのも野暮だと判断している。だが、しかし。
(余裕無いなーこの人……)
エルフは万物に宿る精霊と対話する力を持っており、その中でもシラは、周りの精霊の感情を色として見る力を持っていた。
今、眼前の背中を取り巻く風の精霊の感情は、色は紫がかった蒼白の光として見える。怯えを含んだ色だ。
精霊とは周りに影響されやすい存在であり、そんな彼らが怯えると言う事は。
「憤り……かな」
我知らず呟いた言葉は、風に巻かれて消える。 --
2011-12-27 (火) 20:19:33
彼が何に憤っているのかは知らない。だが、常にたゆたい楽観的ですらある風の精霊が怯える怒りは静かに、そして深い憤りである事が多い。
張り詰めている。そう言っても良いのかも知れない。同時に強い指向性も感じて、シラは再び内心の嘆息を得る。
ふと、頬に感じる風の身を切るような冷たさが落ち着いて来た事に気付く。魔導二輪のスピードが下がってきているのだ
「……?」
首を傾げると、男は振り向いた --
2011-12-27 (火) 20:26:18
「前方見えるか。検問みたいなんだが」
ヘルメット越しの言葉にふむ、と鼻息を漏らして前方へ視線を向ける。確かに、言葉通りに土塁が積まれ、武装した兵士によって監視が敷かれている。
「統治者不在だろう、この辺りは。となると……」
青年の言葉を継いで、シラは口を開く。
「ええ、大体ご想像通りだと思いますよ。彼らは恐らくこの辺りで幅をきかせてる民兵ですねぇ
『自分たちが戦火から守ってやっているのだから、出すもの出せ』って所でしょうかねー」
極めて気楽な口調で言う。魔導二輪が止まり、
「……検問っつーか、通行料ふんだくる為の関所か」
--
2011-12-27 (火) 20:31:54
この辺りではよく見る光景ではある。だがまぁ、一々通行料を払っていたら路銀など幾ら有っても足りないし、
「そもそも民兵と言ってもやってることは略奪・陵辱何でもアリアリな連中ですから。山賊と変わりませんねぇ」
のほほんと口にしつつ、シラは思う。さてこの男、どうするつもりか、と。
「こいつの性能なら突破出来っかね。アンタの協力も必要だが。……銃使えるんだっけ」
返って来た答えに、シラは内心口角を吊り上げる。この男やる気だ。ならば
「ええ、自分用のは今持って来てないですけど……大抵のは」
自分もやる気を示すべきだろう。そう思い、答えると、ヘルメットで顔を隠した男の肩が上下した。笑ったらしい。
「横のハードポイントのケースにライフルが一挺とショットガンが一挺。ライフルの方は5.56のオート。マガジンもそっちに入ってる。
後ろから援護、頼むぜ。」
--
2011-12-27 (火) 20:40:46
火力ちょっと足りなくないかな、と思った矢先、男は前部ハードポイントからごつい金属製の何かを取り出した。円筒形の砲身と、その下部のフォアエンドをポンプアクション。セミ・オートマチックグレネードランチャー。
「……また、何というか。何処で仕入れたんですかぁ、そういうの」
半ば呆れを含んだ口調でシラが問う。答える青年の口調は皮肉げな笑みを帯びていて
「俺の街には何でも揃う猫のお店が有ってね。
──さて。こいつでカマした後全速で突破する。後ろ向いて、ハーネスで身体固定して援護、OK?」
簡単極まりない作戦。軍師採用なのにこれで大丈夫なのか、と一抹の不安を覚えない事も無いが……
「……まぁ、今のシチュエーションだとこんなものですか」
真価を発揮するのはまだ先でしょう、とシラは結論づけ、ハーネスでシートに身を固定し……直後、しゅぽん、と言う少々間の抜けた擲弾の発射音を聞いた。それが合図。
(……さ、お手並み拝見ですかねー、と)
--
2011-12-27 (火) 21:37:39
↑
3rd stage 『銃火の行く先』
†
+
『銃火の行く先』
3rd Stage
───────────────
『銃火の行き先』
───────────────────────────────────────────────────
心の音はスタッカート
意を引き金に祭りを踊れ
──────────────────────────────
航空艦『ウラディーミル』。雲海を往き最大3000人規模の兵員を収容可能なこの艦は、しかし自動人形による操艦・制御を導入している為人員は最低限で賄える代物であった。
空の海原を雲を蹴立てて往く巨影、その腹中のミーティングルームにて、複数の人間が顔を突き合わせていた --
2011-12-28 (水) 22:09:36
……いやまさか、こんな代物持ってるとは思わなかった。
考えてみりゃ当たり前か……この手の兵力が無きゃ覇道なんて夢でしか無ェわな
(紙コップに入ったコーヒーを啜りつつ、目の前の疵面の女にそんな言葉を投げかけると、女はフフン、と誇るように笑う。……というかこれは玩具を褒められて自慢気な表情だ)
--
春真
2011-12-28 (水) 22:16:16
調達は苦労したがな? 拠点としては申し分無いであろうよ。
(今は濃い朱色の兵服に身を包み、豊満な胸を張る)
ともあれ長旅ご苦労だ、春真・モッキンバード。こちらに到着し一週間だそうだが、どうだ? 空の旅と言うのも悪くなかろう?
--
エカテリーナ
2011-12-28 (水) 22:22:32
喫煙所が少ねーのが不満と言えば不満か。それ以外は別に……
(コーヒーの苦味を感じつつ首を傾げ)……シラちゃんが常に俺に付いてるのが若干窮屈だってのはどうよ?
--
春真
2011-12-28 (水) 22:25:44
(ブリーフィングルームに座っている長耳の長寿族を一瞥し、苦笑)……まぁ、そう言うな。
来る者拒まずと言うのはリスクコントロールも中々どうして面倒でな? 信用とは自らの言動によって勝ち取るもの故に、お前が信に足る働きをすれば正当な評価もしようと言う所だ
(視線を卓上の地図へと移す。其処に描かれているのは周りを城塞で囲まれた都市の概略図)
では始めるとしようか。作戦概要を頼むぞ、ルサールカ
(呼びかけると、卓上にマナで編まれた立体映像が表示される。侍女服姿の女性……この艦の統括管理を行う自動人形の出先端末であった)
--
エカテリーナ
2011-12-28 (水) 22:46:40
『──了解致しました。
本艦はこれより城塞都市メチドーヴェリ上空に向けて航行、一三〇〇にて都市上空に強襲降下致します。
各員は降下鞘にて第三番区へと降下し、二隊に別れて兵舎と行政庁舎を制圧、占拠。
その結果を以て市長を「説得」する…と言う流れになっております。────以上。 』--
ルサールカ
2011-12-28 (水) 23:49:37
(ふむ、と腕を組んだ前髪枠エルフが鼻を鳴らし)
降下鞘での強襲制圧ですか。いつも通りではありますけどー……
(ちらりと春真に視線を移し)
--
シラ
2011-12-29 (木) 00:08:21
馬鹿正直に近づいてってズドン食らうよりは良いけどよ。いくら街の上に直付けするっつっても対空火砲食らうんじゃねえのか?
(と、地図と数枚の偵察写真を見渡し)…いや、そうか。こっちが把握してる対空砲は射角が内側に向かねえ。一気に降下して……
(顔を上げて、ルサールカに視線をやり)制空権は確保出来んのかよ?
--
春真
2011-12-29 (木) 00:15:27
(春真の方を見ず、地図上のラインをなぞりながら)魔女隊二隊を回す。
飛竜騎士や天馬騎士が出てきたとしても引けは取らぬさ。采配は……
(ふむ、と嘆息し、春真に笑みを向ける。泰然自若の、王者の笑みを)お前に一任しようではないか、うん?
市長兼軍司令のプロファイリングは渡してあるだろう? 結果を期待するさ。
--
エカテリーナ
2011-12-29 (木) 00:25:30
(そう、渡されていた。既に作戦プランも練っており、こちらの軍師と顔突き合わせて相談もした、が)
……リアルタイムで采配すんのはそっちの軍師に任せてる。制空権に関しては改めてプランを提出するけどな、降下の頭数に俺も入ってんだが
(指で地図をなぞる。兵舎の方を指さして)こっちに用が在る。制圧した後にな。
下手打たれる前に確かめたい事がある。
(いいな?とブリーフィングルーム内を見回し)
--
春真
2011-12-29 (木) 00:49:53
一任すると言った。
(笑みを崩さず、そう返す。好きにしろ、とそういう事だ。)
--
エカテリーナ
2011-12-29 (木) 00:56:46
『──それでは、一三〇〇の降下開始まで皆様どうぞご寛ぎ下さいませ。────以上。』 --
ルサールカ
2011-12-29 (木) 00:58:07
●
(白昼の強襲は滞り無く作戦プラン通り進む。降下した兵士たちは街路の市民など眼中に無いと言わんばかりに疾走。また、市民の側も兵士たちを歓迎するような雰囲気さえ有った)
(その理由は──)
成程、こいつは酷ぇ。
(突撃銃の弾倉を交換しつつ、今しがた倒した兵士の居た場所を一瞥する。兵舎近くの民家、こちらを見る親子の母親は硬い表情だが、乱れた衣服を直した年頃の娘はこちらへと一礼を送っている)
(事前情報として、この城塞都市メチドーヴェリを治める市長は数年前にこの街を占拠した軍閥の長だということだった。紛争下であるのを良い事に、武力で以てこの街の市民を恣にする一軍。そこからの解放ともなれば)
……まぁ、襲撃者とは言え歓迎ムードにゃなるのかねぇ……
(そう呟き、視線を街路の向こうへと。すでに兵舎へ300mと言った位置だ)
--
春真
2011-12-29 (木) 21:38:04
(第三打撃工兵小隊行くぞ、と言う野太い声を聞き、一歩を踏み出す。声の主は俺の編入された小隊を預かる四十絡みのおっさんだ)
(建物の隙間を縫うように行軍しつつ、路地から頭上を見上げる。『ウラディーミル』の巨大な腹の影と、時折瞬く術式光が遠く見えた。魔女隊は上手くやっているようだ)
(安堵を得つつ、既に目前となった門扉を見る。警戒する兵士の数が多くなってきている)……。
(予想の内だ。小隊は、打ち合わせ通りのルートを進む。衛兵の監視の目が途切れる防壁、その一点を目指して)
--
春真
2011-12-29 (木) 21:45:38
『こちら狙撃班、突入地点をクリア。以降は周辺監視入りますー、オーバー』
(襟内の通信符から狙撃班であるシラの声が伝えられ、見れば前方遥かな位置で監視の兵士が二人、血溜まりに沈んでいる)
(隊長の応えを聞き、皆が顔を見合わせて頷きを一つ。隠れていた建物の影から飛び出し、各員がバックパックに入れた爆薬を取り出し、石壁にセット。有線式の信管をセットしその場を退避したのを全員が確認して)
──爆破!
(轟音、と言うには押さえ気味の爆発音と共に、石壁の一角が崩れる。砂埃と爆煙の向こう、兵舎の連なりが見えた。情報通りだ)
(隊長の号令一下、突撃銃を構えて侵入を開始。後続の連中の合流を待たずに行動を開始した)
--
春真
2011-12-29 (木) 21:57:06
(俺たち打撃工兵部隊に与えられた任務は、兵舎への突入路の確保と兵舎内に併設された武器庫ならびに対空車両の爆破。前者は先ほど終わらせた。じきに後続部隊が突入し、兵舎を制圧する手はずになっている)
(残る後者の内、魔導砲撃の可能な対空車両を出されてはさしもの『ウラディーミル』と言えども危険であるので、こちらの動きを把握し反撃を受ける前に終わらせておきたい任務ではあったが)
流石にそう易々とは行かねえよなぁ
(倉庫の陰、こちらに射撃してくる兵士を見つつそう呟くと分隊員が肩を竦めた。簡単な戦闘なんてねーさ、と言う彼に苦笑で同意して、返礼の銃声を響かせる)
--
春真
2011-12-29 (木) 22:09:24
(こちらに向けられる殺意を無力化しながらも、何をやってるんだかな、と内心の思いを得た。自分は元冒険者で、魔物相手の戦闘ならばそこそこ経験しているが、戦争に参加するなんて事は勿論なかったというのに。)
(弾倉を交換し倉庫の陰を移って、仲間の移動をカバーする為銃口を周囲に向けつつも思考は止まらない。何をやっているんだ、と。引退し、爛れた生活を経て、しかしそれでも幸福を求めていたのでは無いのか。それがどうして北の果てまで来て人間同士の撃ち合いに参加しているのだ)
(トリガーを引く。5.56mm弾は敵の兵士の鼻の横から頭部に飛び込んで、中にある脳髄をグチャグチャにして反対側へ抜けていったのだろう。血の華がぱっと咲いた。何をやっているのだ、と。そう頭は疑問しつつ、身体は動く。人も魔物も変わらず、殺せば死ぬ。)
何を──
--
春真
2011-12-29 (木) 22:17:19
(あの人買いは、北方の軍閥向けの需要があるのだ、と言った。兵隊の慰安の為に、格安で抱ける娼婦を用立てるのがこの辺りでのトレンドらしい)
(初物なら個人向けで金になったが、そうでなく器量が良いならば稼ぐ見込みが出る所に売るのだ、と。成程。)
(引き金を引き、倉庫を警備していた兵士が倒れる。対空車両が収まっている倉庫。爆薬を仕掛ける)
(流石にあちらと直接商売してる訳じゃなく、業者に引き渡した、と聞いた。電流を流し始めて5分程だったか)
(繋がる糸は途切れそうな程に細く。ならば、と覇を為し軍閥を平らげようとしている者に縋った。だが……)
--
春真
2011-12-29 (木) 22:25:59
(爆音。昼の空に火炎は映えないな、とぼんやりと思いながら、次へと引き金を引く)
(何をやっているのだ。こんなのは俺のキャラでは無いのではないか)
(あの女は、相談もすること無く。ただ自分が消えれば何もかもが解決すると、俺に別れを告げて)
(忘れて平穏に身を浸すべきだったのでは無いか。自分には誰かを救う力など無いと。他人を殺してまで、誰かを求めるのは分不相応だと)
(武器庫に爆薬を仕掛け、充分に距離を取った事を確認する。轟音と共に、昼間の空に炎と煙が立ち上った)
(戦場の音を聞きながら心に問う。そうして思い浮かんだのは、別れ際の笑顔。揺れて、崩れて、覆い隠した笑顔)
(彼女の隣に居たいとそう思ったのに)
(彼女とずっと笑っていられるとそう信じていたのに)
(俺は、どうして)
--
春真
2011-12-30 (金) 00:16:26
『兵舎の制圧が完了したらしいな。ご苦労だ、諸君。
これより市長との交渉に入る。馬鹿をしないようにちゃあんと見張っておくが良いぞ?』
(アッパー入ったエカテリーナからの通信。あっちは行政庁舎攻略に出ているらしい。一軍の将が中々にご苦労な事だ)
おい。
(降伏し、大人しくしている手近な兵士に声をかけ、尋ねる。宛てがわれた娼婦は何処か、と。下衆の勘繰りをやらかしたそいつを、腰に佩いた太刀の鍔鳴りで黙らせ案内させて)
(……なぁリリィ。きっとこれから俺は戦場を渡っていく。君を探して、彷徨っていく)
(もしもう一度逢えたなら……もしもう一度、君に逢えたなら。)
(君は俺の隣に、居てくれるのだろうかな……)
--
春真
2011-12-30 (金) 00:35:54
↑
4th stage 『思い出の嘆くところ』
†
+
『想い出の嘆くところ』
4th Stage
───────────────
『思い出の嘆くところ』
───────────────────────────────────────────────────
あなたがいないの
──────────────────────────────
●
(がくがくと/ゆらゆらと。世界が揺れる。否、揺れているのは私? わからないし、どうでもいいのでしょう)
(揺れる意識を手放し掴まえ、呆っと視界は中空に。切れかけた魔導ランプのオレンジの光が、揺れる私と世界を照らして、覆いかぶさる影を作るの)
(こうしている時の私は人形。ただあるがままに求めと期待の下で揺れる人形。自分から何かを求める事はしないし、してはいけないのです)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 00:30:22
(いつも影は、私に叩きつけてくる。意味は分からない、けれど何が言いたいのかは大体分かるそんな言葉と、不満を直接、痛みとして。あと、排泄行為としての性交。人形の私は、甘んじて受けるのです)
(今日もまた私の上で、影が呻く。内側で爆ぜる欲望の発露は、私を見下ろす目と同じで妙にギラついて感じます)
(それら全てを他人事のように感じつつ、顔を背けて中空に視線を饐えたままの私を見下ろして、影は言葉を投げかけました)
(今のは、多分悪態。)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 00:43:42
(はした金とも言えるお金をベッドサイドに叩きつけて。私に覆いかぶさっていた影は、乱暴に扉を開け、出て行きました。いつもの事。今日は平手が無かったから、良かったのかも)
(暫くベッドの上で大の字になって、魔導ランプの吊るされた天井を見上げます。宛てがわれた部屋は最低限の生活を保証するだけで、何処もかしこも薄汚くて)
(まるで今の自分のようだなぁ、なんて思って、思わず乾いた笑いが浮かびました。ゆらゆらと起き上がって、行為の残滓を拭って。次の影が来るまでは、身支度と自分一人だけの自由な時間)
(いつもの事。時間感覚が希薄になっている自覚があります。此処は寒く、外は白く銀世界で)
(ふと、ベッドサイドにお金と違う色彩を見止めて、私はソレを手に取ります)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 00:57:51
(紙箱。くしゃくしゃになった煙草の箱でした。銘柄は)
Lucky Strike……?
(見覚えのあるパッケージ、そうだ、これは。……これは。)
(あの人が吸っていた紙巻煙草。懐かしくなった私は、吸いもしないのにマッチを擦って、取り出した一本に火を点けます)
(備え付けられた灰皿の上で赤々と点いた火から、煙が天井に立ち上る。それを、見るでは無しに見る。)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:02:54
(匂いは、駄目です。色々な事を、否応無く思い出させるから。)
(あの饐えた地下室での事も、お仕事が終わった後身支度をしている時不意に覚える匂いで思い出してしまいます。最初は、思い出す度に泣いていました。今は、胸の奥に澱となって重い物が溜まります)
(今だって、この煙草の匂いが、あの日々を思い出させるの。どうしようもなくて、どうにかしようと思って、別れてしまったあの幸せな日々を)
(髪と、服に染み付いた、ちょっと沈んだような煙草の葉の匂い。鮮やかな赤い長髪と、抱きしめてくれた腕の中の温もりと、無遠慮で不器用で、なのに優しい唇の感触と……)
(彼のくれた温もりを覚えています/忘れるつもりだったのに。)
(彼のくれた優しさを覚えています/決別するつもりだったのに。)
(彼のことを、覚えています……/忘れられない、それは、大切な……)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:15:35
どうして……
(彼の匂いが此処には在るのに、彼の不在がどうしようもなく、自覚させられるの。思い出すつもりなんて無かったのに。ずっと忘れているつもりだったのに)
どうして……?
(ちり、と首元のチェーンが小さく音を立てたのを聞きました。これは、そう。いつか二人で街に出て、何か思い出が欲しいって我儘を言って困らせて)
(それでもその我儘と、思い出の為に彼が選んでくれたリングのネックレス。これだけは手放そうとしても、駄目で。)
(どうして、と問いかけても、答えはずっと前に出したことなのに)
どうして……!
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:23:53
(手を伸ばして)
(もがくように)
(求めているのに)
会いたいよ……
(いつしか紙巻煙草は灰になり、煙の残滓のみが空間に残りました。涸れたはずの涙が止め処なく溢れ出し、頬を濡らしているのも構わずに手を伸ばして)
会いたいよぉ……!!
(赤子のように、思い出の彼に手を伸ばすの。でも、その背中は届かなくて、届かなくて……)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:28:28
春真さん……はるま、さぁん……
此処は、厭だよ……
あなたと居たいよ……
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:30:42
(枕を濡らす涙は、この北国では寒すぎるの……)
--
リリィ
2011-12-31 (土) 01:32:03
↑
5th stage 『阿修羅のごとく』
†
+
『阿修羅のごとく』
5th Stage
───────────────
『阿修羅のごとく』
───────────────────────────────────────────────────
行けよ突っ走れ互いの前へ
砕きの音と鋼の色彩
相対の先にただ会えよと──
──────────────────────────────
●
(砲声と怒号、術式の風切り音と刃を打ち合わせる金属音。戦場では数多の音が連なり、一個のオーケストラのように響き渡る)
(自分とてその一つのプレイヤーだ。引き金を絞り、進軍を阻止せんとする兵士を打ち倒して前へと進む)
分隊、生きてるかァおい!
(通信術式符の有効時間は既に切れている。予備を出すのももどかしく、後ろに声をかけるとバディのグレゴリーが応え、次いでアリョーシャとアレックスのコンビからも返事が、砲声に負けじと返ってくる。うちの分隊は全員無事のようだ)
(後方2キロメートル地点から、敵陣後ろへと魔導砲撃が着弾、白色の光爆が見えた。『ウラディーミル』からの支援砲撃だ。眼前、慌てた動きの軍勢が動いて突破口が開く)
見えたぜ、目標対空砲座。他の連中もそろそろ辿り着いてる頃だ、ちゃっちゃと無力化して──
(頭上に影。即座に身を捻って地面に伏せると、風切り音とほぼ同時に先ほどまで自分の居た地面が土埃を上げて爆ぜた)
──飛竜騎士!
(吼えつつ、突撃銃を空へ向けて発砲。が、甲冑を纏った重装飛竜騎士は乗騎であるワイバーンを操り、羽ばたきの一つでこちらの銃撃を避けた。舌打ちで身を飛ばし、次の銃撃を積まれた土嚢に隠れてやり過ごす)
--
春真
2012-01-03 (火) 20:27:06
(視線を目だけで巡らせば、他の分隊員も必死で飛竜騎士の長銃を避け遮蔽を取っている。だが上空の空いたこの場においてはほぼ役に立たない)
(舌打ち混じりに制空権を確保出来なかった魔女隊に悪態をつくグレゴリーに苦笑を向け、今度こそ懐から通信符を抜き、襟元の術符ケースへと差し込み)
狙撃班!ポイントC-15付近の奴、飛竜騎士を狙えるか!?
(叫ぶように呼びかけると、すぐに返答が来た。シラの声だ)
『あー……5秒足止めして貰えるなら。この距離なら多分、抜けます。オーバー』
(この期に及んでイマイチ緊張感の足りない声に苦笑いを濃くしつつ、了解を返す。分隊員に散開後5秒間全力射撃を指示し、)
──行けッ!!(隠れていた物陰から一挙に飛び出す。旋回し今にも射撃を敢行しようとしていた飛竜騎士が一瞬迷うような素振りを見せ、直後に続く射撃に上へと飛び上がる)
5……(走りながらフルオートで射撃)
4……(照準がぶれつつも回避機動を取ろうとする飛竜騎士の肩部装甲に火花が散った。アリョーシャの射撃だ)
3……、(彼女に銃口を向ける敵へ射撃を重ねる。残り二発、)
2……ッ(一瞬迷ってこちらに銃口が向いたのと弾倉の弾が尽きたのは同時。銃把を離し懐のコンパクトオートを引き抜き)
1……!(マズルファイア。横合いからの射撃が長銃を掠り、際どい所で狙いが逸れた。にやりと笑みを向けるアレックスと目が合った。ナイスだ)
……0だッ!
--
春真
2012-01-03 (火) 20:46:47
(視線の先、砕きの音とともに飛竜騎士の身が折れ曲がる。シラの大口径狙撃ライフルから撃ち込まれた銃弾が横腹に突き刺さり、腹腔内でその運動エネルギーを解放したのだ。装甲の破片を血と臓物とともに撒き散らしながら、乗騎から地に落ちる騎士。あの分だと即死だろう)
…いい仕事だぜ。こっちも仕事だ!
(応、と返る声と共に遮蔽を取りつつ、上空を飛ぶ魔女隊へと対空砲火を送る銃座へ走る。仲間の銃弾が周囲で警戒していた警備兵を無力化し、砲手がこちらに慌てて向き直った時にはもう遅い。コンパクトオートから放たれた四十五口径弾は、砲手の胸に二発、頭部に二発正確に撃ち込まれる。痙攣と、噴き出す血が対空砲を染める)
--
春真
2012-01-03 (火) 21:02:13
(兵士の死体をそのままに、対空砲に爆薬を設置。退避の後、襟内の通信符へと呼びかける)
『打撃工兵第三小隊、ブラヴォー分隊より各隊へ。C-14の対空砲を黙らせる。花火を期待しろよ? オーバー』
(言葉と共に点火。直後、一際大きな爆発音が響き散々航空戦力を苦しませた対空砲が、ただのガラクタへと姿を変えた)
っし、あとは脱出して通常部隊に任せよう。脱出路は事前の打ち合わせ通り────
(視線を巡らせた先、三人の分隊員は空を見上げている。何だ?と問おうとして)
(口を開き)
(直後、先の爆発音など比にならぬ轟音がその場を支配した)
--
春真
2012-01-03 (火) 21:36:23
(瞬時に巻き起こった砂礫の爆発が、視界を奪う。何だ、と声を上げた筈だが自身に聞こえる事はなかった)
(辛うじて、上空から何かが落ちてきたのは分かった。そう、何かが、だ。4m程の、巨大な────)
(砂埃の向こうに、赤い光が見える。それは双眸。……横並びの二つの赤い光を、何故かそう判断する)
(やがて、砂埃が晴れた時……其処には、異形の影。四腕のそれぞれに巨大な刃を持った、異形)
(流線型の装甲の各部に一瞬、青白い光が紋様のように瞬く。総てが赤いその装甲の中にあって、内側の左腕のみが銀色なのが異様に目に映る)
魔導鎧、だと……!?
--
春真
2012-01-03 (火) 21:44:36
(呆然と、その異形の魔導鎧を見ていたグレゴリーが掠れた声で呟く。「クロウ・クルワッハ」と。こいつは……)
(恐らくそれは僥倖だったのだろう。一瞬の動きで後方へと倒れこむように飛ぶ。声を発する余裕すら無い)
(直後、自身の上半身の有った位置を鋼板としか言い用のない刃が通過していた。衝撃波が生まれる程の斬撃の速度。吹き飛ばされるように転がり、派手に壁にぶち当たり血反吐混じりの呼気を吐いて)
か……は、!
(そうして、俺は見た。逃げ遅れた分隊員が胴体から断ち割られ、ちぎれ飛んだ上半身が血を撒き散らしながらくるくると宙を飛ぶのを)
(クロウ・クルワッハの視覚素子の光が細まる。笑うように、こちらを見て、その刃の切っ先をこちらに向ける)
--
春真
2012-01-03 (火) 21:54:48
(ああ、死んだな。と、そう思った。突撃銃が手を離れているとかではない。単純に魔導鎧が強いとかでもない。根本的に、自分はこの相手に太刀打ちが出来ない)
(その赤い巨体は、むき出しの暴力なのだ、と。竜巻に人の身で抗えぬように、こんなものを相手して生き残れるように人間は出来ていない。時間は粘つくように、やけにゆっくりと進んでいるように思えた)
(だが何故俺は、腰の太刀に手を掛けているのか。何故、敵わぬと分かっているのに抗おうとしているのか。)
(……何故、俺は死を良しとしていないのか。)
(赤の魔導鎧の向こうに陽炎が立ち上る。恐らく、魔導斥力発生装置のチャージ。これからヤツは、許容も慈悲も無く手にした刃で俺をミンチにするのだろう)
(だが何故俺は、太刀の唾を鳴らし、白刃を抜いて──)
--
春真
2012-01-03 (火) 22:01:27
モッキンバード!!
(凛とした声とともに、重い衝撃音が響く。白刃を頼りなげに構えた春真の前、突如飛び出して来たのは真紅の鎧に長い金髪を流した女)
(両手で長剣を構えたエカテリーナは、真正面から魔導鎧の突きを受け止めている)
馬鹿者が……魔導鎧相手に太刀を抜いて何とかしようとする奴が居るか、うん? もっと命を大事にするが良い!!
(言葉に抗するように、正面からの圧が増す。レガースの踵が石畳に突き刺さり、罅割れが広がりつつも詰めた眉根で長剣を振り、斬撃を跳ね飛ばす)
--
エカテリーナ
2012-01-03 (火) 22:06:22
(全く説得力の無い言葉を聞きつつ、呆然と眼前の光景を見る。跳ね飛ばされたと言っても四剣の内一本、即座に残りの三剣をぶち込んで来るクロウ・クルワッハをの懐に一歩を踏み込み、エカテリーナは肘へとかち上げるように長剣の切っ先をぶつける)
(信じ難い事に、その一撃で異形の四腕は外側へと跳ね散らされた。どんな膂力だ)
(だが、魔導鎧は動揺も見せずに次の斬撃を叩きこもうとした刹那)
--
春真
2012-01-03 (火) 22:16:15
征け、ナターリア。
--
エカテリーナ
2012-01-03 (火) 22:16:48
(黒刀一閃……否、十六閃。異形の魔導鎧の胴へと大小様々な黒の色が叩きこまれた)
承りました、我があるじ。
(続けざまに腕を振る。四腕を上回る手数で振るわれるリボンの黒刀を、しかしクロウ・クルワッハはそれを凌駕する速度で叩き落す)
我が刃はあるじの敵を断つ為に。
(異能同士の剣戟。余人には近寄る事すら出来ぬ斬撃に、赤の王女が跳びかかり、加勢する)
--
ナターリア
2012-01-03 (火) 22:22:11
『いいね、こういうのは。』
(剣戟の最中、不意に異形の魔導鎧が呟く。烈風のような戦いぶりとは裏腹に、その声は若く、静かな口調で)
『戦いに身を置いて強者を叩き潰す時だけ、僕は僕で在れるんだよ。だから、僕は……』
(楽しんでいるようにも、苦悩を漏らしているようにも聞こえる口調で異形の魔導鎧は語る)
(異能者同士の戦い。戦争とは別次元の闘争に、目の前の光景の現実感が褪せていく。此処は、一体何だ、と。)
--
春真
2012-01-03 (火) 22:31:24
(右外側の一刀を束ねられた黒刀が弾く。反撃として、内側の一刀で侍女を突き)
『さぁ、理解し合おうじゃあ無いか!!』
(左の二刀は長剣一本に受け止められている。力任せに剣を引き、引っ掛けるように吹っ飛ばす)
『この下らない世界で何が大事に思えるかをさぁ!』
(魔力障壁を反転、一帯を衝撃波で跳ね飛ばしつつその巨体を侍女へとチャージ)
『敵よ、敵よ!! 僕に世界の価値を見せてくれよ!!!』
--
クロウ
2012-01-03 (火) 22:40:36
(衝撃波に跳ね飛ばされつつも飛び、侍女の前へと躍り出る。巨体の衝撃を受け止め、長剣が軋む。が、耐えた)
ふん、大事な物を他者に示して貰わねば、世界を楽しく出来ぬとはな。つまらん奴だなぁ、貴様は。
(とは言え、加護で以てこの相手と切り結ぶのも限界がある。ナターリアとて同様だ)
(この場において戦力に成り得るのはあと一人しか居ない)
(視線を送る。呆然としているのか。だがお前は、まだ)
(まだ生きる意志を失っていないのだろう……!)
立て、春真・モッキンバード!!
--
エカテリーナ
2012-01-03 (火) 22:53:55
(意志の強い声。意識がアジャストされ、生きる為の意志が賦活され)
……ッシラ!頭部だ!全弾ブチ込め!!
(襟内の通信符に叫び、応えを待たずに飛び出す。直後、頭部に着弾……否、魔力障壁で大口径弾が止められている)
(何ほどのものでもない、と言わんばかりに、左右からそれぞれ二刀が叩き込まれる。触れれば即座に肉片確定の斬撃、だが…)
(青の侍女と赤の王女が割り込み、道を開ける。刃鳴のサラウンドに耳が割れそうになる、が)
懐が空いたぜ……!!
(抜いた白刃を顔面素子へと叩きつけ…その動きを手放して。左右の腰に付けた爆薬を手に)
……おォッ!!
(怒り肩のシルエット、その内側へと4つの爆薬を投げつけ、起爆)
(その結果も見ず、股間の間をスライディングで抜け)
……『ルサールカ!』
--
春真
2012-01-03 (火) 23:32:04
(爆炎、そして直後の白光。『ウラディーミル』からの魔導砲撃だ。後方の爆圧につんのめるように姿勢が崩れ、天地が逆転して10メートルは離れた壁に叩きつけられる)
(主ですら巻き込まれれば無事では済まないかも知れない砲撃を敢行したのは信頼か、それともこの敵への脅威度が自動人形の中で優先されたのか)
(そんな想いを得ながらも背中から地面に叩きつけられて、首を上げて魔導鎧を見る。どうなった、と……)
--
春真
2012-01-03 (火) 23:49:11
(焔の中、屹立する四腕のシルエット。その様は東洋の闘争の神、阿修羅を思い起こさせ)
『いやぁ……流石に、今のは危なかった……。危なかったよ、全く』
(阿修羅は嗤う。装甲の幾らかが剥がれ落ち、がらん、と音を立てるが……それが一層凄絶な印象を演出して)
『頭部狙いに、爆発による目眩ましからの艦砲射撃指示……良い手じゃあないかな。通用しないと言う訳ではないけれどね……』
(倒れこみ、こちらに視線を送っている赤毛の青年へと刃を向ける。荒削りな戦術ながら、中々どうして面白いが……然し、戦場だ。届かねば死ぬ。その法則に則り、止めを刺そうとして)
(赤い阿修羅はふと、天を仰ぐような仕草を取る。ふむ、と小さな吐息が外部出力から漏れ)
『……残念、時間切れだね。矢張り独りで出来る事は限られてるよなぁ、全くさ……。
次は僕に手を届かせてくれよ。なぁ?』
(言葉とは裏腹に、喜の感情を滲ませながら……尻の魔導斥力発生装置を吹かし、クロウ・クルワッハは天へとその身を踊らせる)
(轟音と焔を残し、異形は暮れ始めた朱の空へと消えた)
--
クロウ
2012-01-04 (水) 00:04:07
(膝を立て、空を見上げる。亡骸となった部隊の仲間が視界へと入り、敗北感と無力感が押し寄せてきて)
……クソ、ッ……!!
(届かない。また、届かない。)
--
春真
2012-01-04 (水) 00:10:29
死ぬかと思った……全く、無茶をやるものだな
……ん?
--
エカテリーナ
2012-01-04 (水) 00:12:16
いえ我があるじ。乱暴ながら今のは他に選択肢がありませんでした。
まぁ我があるじに生命の危機を感じさせるなど許されざる暴挙ではありますが。
……モッキンバード様?
--
ナターリア
2012-01-04 (水) 00:13:36
(青年は項垂れる。今のは命拾いでしかない。俺は一体、何度負ければ)
(手を伸ばして、届かず敗北を重ねる度に。求めていたものが遠ざかる気がして)
(小さく恋人の名を呟いて、青年の意識は闇の底へと落ちて行く)
--
春真
2012-01-04 (水) 00:15:31
↑
6th stage 『伏臥の夕暮れ』
†
+
『伏臥の夕暮れ』
6th Stage
───────────────
『伏臥の夕暮れ』
───────────────────────────────────────────────────
倒れて
泣いて
どうするの?
──────────────────────────────
●
(夢を見ていた。幸福な夢だ。過去の一点を切り取った夢)
(ロケーションは何処だったか。日差しが柔らかく、真綿に包まれているように心地良い感覚に浸っているような。腕の中に、長い黒髪の女が居る)
(俺は何と言ったのだろう。彼女は腕の中でおかしそうに笑い、はにかんだ表情で視線をこちらに向けて)
(霞がかかったように判然としない風景の中、ただ彼女の桜色の唇が動くのが確かに見えた)
(愛おしくて、手を伸ばして、抱き締めようとした刹那。不意にその感触は温度を失い)
あぁ……
(もはや何者をも抱いていない腕を祈るように掲げ、声を上げる)
あぁ……!!
(気づけば辺りの風景は闇に堕ち、自らの叫びすら耳に入らず)
(ただ、彼女の声を聞いた気がする)
「ずっと一緒に、隣に居ましょうね……」
--
春真
2012-01-05 (木) 19:31:59
--
2012-01-05 (木) 19:33:09
(夢から醒めてみると、白の部屋で身を起こしていた。じっとりと流れる脂汗が全身を流れ、不快を得て)
クソ……
(包帯だらけの身体。先の戦いで全身打撲を負ったが、傷は最早治っている。解けた赤毛が顔にかかるのが鬱陶しい。ぐしゃりと前髪を掻き上げると頬に濡れた跡が触れた)
……クソ。
(二度目の悪態をついてふと前を見ると、小柄な影が目に入った)
--
春真
2012-01-05 (木) 19:48:31
やぁ、調子はどうかねモッキンバード君。そろそろ打撲は治って来ているのではないかな?
さて私が君を起こしたのは招集がかかっているので行ってこいというつもりであってね、別に君が泣きながら魘されているのを不憫に思っての事ではないのだけれど良ければ信頼して欲しいのだが如何かね?
そうかね…駄目かね……。 --
白衣の女
2012-01-05 (木) 19:54:54
(このやたら台詞の長い女、元は北方帝国の白蓮騎士団とか言う女ばかりの騎士団に所属していた軍医だという。腕は良いのだがどうにも小煩いのが玉に瑕であった)
感謝はするけど、余計なお世話だ先生。
(吐き捨てるように言って、シーツで顔を拭う。後で顔を洗って行かねばと思い、ベッドから身を下ろして)
行ってくるわ先生。ブリーフィングルームだな
(何だか落胆した様子の軍医に確認の問いかけを投げると、頷きが返って来た。その辺に引っ掛けてあった兵服を肩に引っ掛け、肩越しに手を振って医務室を後にする)
(『ウラディーミル』艦内、航空艦特有の微妙な振動にも慣れたものだ。身体の調子を確かめるように腕を回しながら、ブリーフィングルームへと続く狭い廊下を行く)
--
春真
2012-01-05 (木) 20:01:41
(ドアを開けると既に主要なメンバーは揃っていた。遅いぞ、と言う声に詫びながら空いた席に腰をかけると、上座に座ったエカテリーナと目が合った)
(一瞬意味ありげな表情をその疵面に浮かべるも、すぐにその表情を消して)
--
春真
2012-01-05 (木) 20:13:06
さて……揃ったようだな。始めようか諸君。
悪い知らせと良い知らせ、どちらから聞きたいと言うベタな質問は無しにして悪い方から行くぞ。
(デスクに肘を預け、傍らのナターリアに幾枚かの写真を掲示させる。どよめきの声を上げる一同に視線を巡らせて)
この間の戦闘状況に介入してきた魔導鎧……通称『クロウ・クルワッハ』。四腕の魔導鎧の傭兵だな。
(椅子の背もたれに体重を預け、長い息を吐いて)
恐らくは、動きを起こした我々にぶつける為に雇われたと思われる
(並行して復数の写真と、矢印の書きこまれた地図を表示させる)
実力は確かだが、手段を選ばん傭兵どもで舞台を編成している動きが見える。
……まぁ、傭った目的に関しては推測の域を出ないがね。
--
エカテリーナ
2012-01-05 (木) 20:30:32
(椅子から立ち上がり、地図を掲示したボードの前で思案するような素振りを見せ)
で、だ。その連中が振り向けられた先が……
(一旦部屋の中を見回し、一同に顔を向けたまま地図の一点をこつこつと叩いて)
要塞都市フョードグラード。
反乱制圧の為に派遣される部隊の最大の駐留地でもあり……
我々の当面における、最大の攻略目標だ
--
エカテリーナ
2012-01-05 (木) 20:49:37
(緊張の色を浮かべる一同に泰然とした笑みで応える。疵面の王女は深く頷き)
此処を落とせば、帝国も後には引けなくなる。最早以前のように反乱分子を各個撃破出来る段階ではない、と思い知るだろうからな。
無論諸君らも知っての通り、フョードグラードに配された兵士は精強無比。加えて先の傭兵団だ、苦戦は必至であろうな。
だが今までの戦いで我らに賛同し、共に国造りを行うとする者も多い
最早我らは少数の蜂起軍などではなく、北方帝国の強力な牙城を崩しうる破城槌としての役割を担う事となった。負け戦などにはせぬさ
(希望と決意を滲ませ、しかし勝てるのか、という不安を未だ抱いた将兵達を前に、王女は言葉を続ける)
そして良い知らせは賛同者……新たな仲間についてだ。
先日、派遣していた者が交渉が完遂させた。一週間後、我らは傭兵団シュクヴァールと合流する。
(笑みで告げられた言葉に、将兵達がおお、とどよめき立つ)
--
エカテリーナ
2012-01-05 (木) 22:33:06
彼らと合流後、改めて部隊の再編成を行う。
一騎当千の魔人揃いと聞く彼らに負けぬよう、諸君らにも励んで欲しいものだな、うん? 何しろ我が旗の元に集った兵は皆蛮勇スレスレの勇者ばかりであるからな、ははは
(意気めく将兵に冗談めかした笑いを向けて)
では、私からの報告は以上だ。各員持ち場に戻れ。
(慌ただしくブリーフィングルームを出ていく将兵たち、その内、包帯の巻かれた上に兵服を羽織ったのみの赤毛の青年の後ろ姿を見止め)
モッキンバード、少し話がある。着いて来るが良い
--
エカテリーナ
2012-01-05 (木) 22:46:05
(甲板上、風巻く最中で動く影二つ。片側の影は周りの風など意に介さぬとばかりに激しく立ち回り、もう片側は風に逆らわず揺れる柳枝の如く剣風を受け流す)
(刃鳴は風に乗り、剣風は上空の大気を切り裂いて何度も何度も打ち合わされ、鋼の音楽となり、響き渡る) --
2012-01-06 (金) 03:23:31
(轟剣と呼ぶに相応しいエカテリーナの斬撃。涼しい顔で打ち込まれるそれをある時は太刀の峰で受け、またある時は左手に抜いたカランビットで流しつつも攻撃後の隙を突かんと一閃を叩きこむが、新たな風を作る程の足運びで以てそれを避けられる)
(一体幾合打ち合ったのか、包帯を巻いた上に新たな血の筋が滲み、今や風に赤い帯を靡かせて)
話があるんじゃ、ねーのかよ!
(袈裟に斬り込む長剣を峰を立てた太刀で打ち払い、反対側に僅かに足を運ぶ事で斬撃の勢いを殺さずエカテリーナの側面へと回りこみながら言葉を投げる)
--
春真
2012-01-06 (金) 03:32:13
(直後の反撃を身を沈める事でかわしながら刃を返し、春真の廻り込んだ先へと切っ先を送りつつもその表情は普段のそれと変わらず。泰然自若の笑みのまま、赤毛の青年の言葉に返す)
すっきりしないようなのでな。王の稽古だぞ? くく、もっと真剣にやって頭の中を真っ白にするが良い……!
(頬に血の筋を残しながらもギリギリの見極めによって致命にはならず回避された刺突に笑みを深くしつつ、ぐるりと身を回して今度は横一閃。鋼の打ち合う音が今一度甲高く響く)
とりあえず全力で打って来ぬか……! 首を飛ばすぞこの赤毛!!
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 03:41:49
てっめ、どんな煽り文句だよこの脳筋王女!
(防ぐや否や切り返される再度の横一閃を左のカランビットで流す。再び際どいタイミングでの回避となり、肩口に薄く裂傷が走る)
すっきりとか、何の事だよ……!
(カランビットを長剣の上を滑らせるように一歩を踏み出し、身体の影で逆手に持ち替えた太刀を振るう。武器を押さえ込んだ上での逆胴一閃)
--
春真
2012-01-06 (金) 03:53:19
(刃をレールにして踏み込んでくる長身。火花が散り、風に飛ぶのにも表情は崩れない)
(胴を断つかに見えた逆手の一刀は、しかし無手の左掌で止める。薄っすらと赤いミミズ腫れが走るが)
だがこの程度、私にとっては脅威にならぬわ、戯け……!
(刃を握りこむようにして親指を弾くと、握った太刀が空を飛ぶ。親指一本で跳ね上げたのだ)
秘技・王のありがたい説教打撃……!!
(長剣を手放して拳を握ると、跳ね上がった右手の痛みに顰められた赤毛の顔面を思いっきり殴打する。甲板上を吹っ飛んでいく春真をドヤ顔で見送る王女であった)
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 03:54:51
(風切り音を残しつつ甲板の端の壁にブチ当たり、仰向けに倒れる)
……。
(倒れこんだまま、空を見る。痛む頬を右手で抑え、雲が近いな、と思った)
(また、負けたのか。妙に乾いた心で空を見上げながらそう小さく呟く)
(と、不意に影が来た。赤の兵服に覆われた下乳が見え、次いでこちらを見下ろす碧眼と目が合う)
--
春真
2012-01-06 (金) 04:17:37
全く……惚けすぎだぞ、うん? と言うか20代後半で思春期のような。
(腰に手を当てて胸を張り、出来の悪い生徒を叱るように声をかける)
大体集中が足りておらぬ。実戦時でそれでは殺してくれと言っているようなものだという事はお前も理解できていると思うのだがな、うん?
異能を持つ相手など珍しくも無いのだから、いかなる時も油断を捨てて掛からねばならんと普段から将兵に言っている立場の人間がだな……
(くどくどと説教を重ねても、青年は虚ろに空を見上げたままで)
(ふぅ、とため息を吐くと、春真の形に凹んだ壁に背を預けて膝を抱え、甲板に座る。傍らの顔に一度視線を落とし、雲の近い空を見上げて)
なぁ、モッキンバード。
先の戦闘は戦略上は勝利を収めたんだ。確かにグレゴリーとアレックス、アリョーシャを失いはしたが……お前の敗北と言う訳ではないさ。
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 04:30:32
(慰められても呆っと空を見上げたままで)
……それでも、な。いつまで負け続ければ……
(手を伸ばす。空が近くとも、雲には届かない)
負け続けて、手を伸ばして、……それでも届かない。
(声が震える。情けないな、という思いはあった。だが……)
……届かねえんだよ…、手を伸ばしても、手を伸ばしても……ッ!
(大の男が、と思わないでは無かった。だが抑え続けてきた感情の発露は最早止まらず)
(喘ぐように、ぽつりと恋人の名を呟いた)
--
春真
2012-01-06 (金) 04:44:52
(傍らの抑えた嗚咽を聞き、しかしそちらを見ず空を見上げる)
(大体の事情は聞いていた。珍しい事では無いし、一々その全てを救ってやる事は出来ない。王道を歩む者としてその事を歯がゆくも思いはする)
(風の音と喘ぐような嗚咽だけが響く。初夏とは言え此処は北の果てで、さらには上空だ。風は冷たい。頬にかかる冷たい風を感じつつ、傍らに手を突き出し)
煙草を一本寄越してくれ。たまには良いだろう
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 04:56:45
(ズボンのポケットから煙草とライターを取り出し、エカテリーナの手に載せる)
--
春真
2012-01-06 (金) 05:00:56
(何度か点火部を擦り、悪戦苦闘しつつ煙草に火を点けて)
げほ、げほ……
(思いっきりむせた。風に乗った副流煙が目に染み、涙目になりながら傍らの空へ視線を向ける)
(眼下遠くに見える山の稜線に太陽が沈み、気づけば空は赤とも紫ともつかぬ夕暮れの色で染まっていて)
全く、夕暮れがいかんのだ。こんな風景の時には感傷的になるのも已む無しと言うものだろう、うん?
そう、感傷だ。(煙を吐き、涙目になりながらもそう口の端に載せ)
王は感傷を得ていては立ち行かぬ……だからこれは、夕暮れの風景の美しさについうっかり漏れ出た一人の女の感傷だ。その上で言うぞモッキンバード
お前はそれでも、手を伸ばす事を止めないじゃないか、ってね
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 05:09:29
(煙の風味にも慣れてきて、しかし深く吸うのはおっかないので吹かしながらエカテリーナは独白のように言う)
こんな所まで追いかけて、もう一度出逢うまでは死ねないと敵わぬ相手に刃を抜いて……諦める事を良しとせず、何度でも手を伸ばしているじゃないか。
だからな。
(顔を、青年へと向ける)
そうまで想って、焦がれて……みっともなくても手を伸ばして、這いずってでも進むお前はいい男だよ
(外見相応の少女のように、笑みを浮かべて)
それに、其処まで一人の男に想って貰える女と言うのも、羨ましいさ。
(感傷に酔う一人の女としてね、と続け煙を吐いた)
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 05:24:17
(他人事だからそう言えるのだろうが……そう思いはするが、今の自分にとってその言葉は有難く)
……慰めが下手だな、アンタは。
(身を起こし、煙草に火を点ける。一気に吸って煙を肺に入れ、夕暮れ空に盛大に吐き出して)
迷って転んで、泣いてそれでも起き上がって……ったく、情けねえよな
(いつかのように笑えているかは分からない。それでも顔の表情を動かす)
……ありがとよ、大将。
(「アンタのお陰で諦めずに済みそうだ」とは、心の中でだけ。)
--
春真
2012-01-06 (金) 05:29:58
(その感謝には、いつもの笑みを返す)
大将ではない王将だ王将。
ふん、ノセるのも王の役割ぞ? お前は精々盛り上がってより良き道を我が前に示すが良い……
(太陽は沈む。闇は否応無く降りてきて、今日より明日が良いなんて誰も保証はしてくれない)
(だが、それでも朝日は昇るのだ。今日より明日はましになれと願い、求めれば。昇る朝日に笑う事も出来るのだろう)
--
エカテリーナ
2012-01-06 (金) 05:34:47
↑
7th stage 『再起の朝焼け』
†
+
『再起の朝焼け』
7th Stage
───────────────
『再起の朝焼け』
───────────────────────────────────────────────────
立ち上がれ己よ
──────────────────────────────
●
合流は未明に行われた。黎明の靄の中、協力関係にある都市の航空艦用陸港にて停泊した『ウラディーミル』の前。
隊伍を組んで整列する軍勢の先頭、エカテリーナと向かい合うのは彼女とよく似た顔をした女。
エカテリーナ軍の兵士も種々様々な種族・人種の混合軍ではあるが……彼らが向かい合う相手はさらに異様であった。
巨大な義腕を身に付けた者がいる。硬質化した骨がプロテクターのように身を覆った者がいる。両目を包帯で巻き眼帯替わりとした少女などはとても戦場に出るとは思えぬ装いである。
彼らこそ、倫理を失った人体実験の被害者であり、自らの同胞を増やさぬと決意した不退転の兵……傭兵団『シュクヴァール』であった
先頭の金髪の女が一歩を前に進み、エカテリーナに一礼する。 --
2012-01-07 (土) 13:36:24
"フリッカー"以下、傭兵団『シュクヴァール』。エカテリーナ殿下の麾下に入ります
(頭領の女……"フリッカー"は極めて簡潔な言葉と動作で、これからの自身らの立ち位置を示す。直後、彼女の後方に居た兵たちが一斉に敬礼した)
--
”フリッカー”
2012-01-07 (土) 14:22:45
(よく似た顔。疵面と表情が無ければそっくりと言っても良い相手の一礼を受け、堂々たる笑みで敬礼を返す)
ご苦労、"フリッカー"。武勇に期待するぞ、うん?
(いつもの調子を織り交ぜならも、こちらも簡潔に答礼。無数の敬礼が向かい合い、衣擦れと整列の足踏みが揃った音を響かせた後には、一瞬の静寂)
--
エカテリーナ
2012-01-07 (土) 14:48:09
(澄んだ払暁に張り詰めた静寂を切り裂くように、眼帯の侍女が一歩を歩み、一同を見渡して)
それでは各員、部隊の再編成と出港準備を開始して下さいませ。出港予定時刻は一三○○です。
補給部隊はリストの再確認を急ぎ行なって下さい。シュクヴァールの皆様の分の計上を忘れぬようお願いいたします
(一礼で締めくくられた言葉を皮切りに、あちこちで大声と忙しげな足音が響き始めた)
--
ナターリア
2012-01-09 (月) 23:46:09
●
--
2012-01-09 (月) 23:50:25
(……で、まぁ俺はと言えばシュクヴァール側の人員との混成遊撃隊に配され、分隊員との面通しを済ませた所で艦が出港した)
(以来数時間、今度は与えられた部屋(何故か士官待遇らしく個室だった)で戦術担当官として煙草片手に書類と地図を広げうんうん唸っている)
(書類にはシュクヴァール側部隊とこちら側の部隊の詳細なデータ、それにフョードグラード側の軍のデータに予測布陣とが記されている。ああでもないこうでもないと白地図上で駒を並べたり進行ルートのラインをペンで記したりしている内に、地図上はたちまち真っ黒になって)
……軍議までにある程度のプランは示しとかにゃならんとは言え……柄じゃねーなー……
(椅子に深く腰掛けて背伸びをする。気がつけば部屋が煙で曇るほどの量の煙草を吸っていたらしい。視界が白く煙い)
--
春真
2012-01-10 (火) 00:02:47
(戦場に出なくても兵隊にはやることが山程ある。訓練をこなし、戦術論を学び、装備の点検や種々の交渉を行なって空いた時間は寄港地ごとに情報屋に赴いてリリィの情報を集める)
(その繰り返しにより、見えない部分での疲労は相当に溜まっている。ニコチンとカフェインでは誤魔化せない睡魔が襲って来て)
……ぁ、やべ……寝そう……
(ぐらぐら来る視界に目をつぶり、目頭を解しながら時計を見ると夕餉の時間などとうに過ぎていた。厨房に行って何か軽く作ろうと思い立ち、席を立つ)
(そこから本当に簡素な夕飯を作ってもそもそと食堂で食べていた所までは記憶がある)
--
春真
2012-01-10 (火) 00:14:09
(気が付いた時には頬に妙に硬い感触を覚えていた。冷たい。目を開いてみると、壁が目の前にあった。次いで自分が横たわっている事に気付く)
……?
(ぼんやりとした意識のまま床に手をついて立ち上がると、其処が艦内の狭い廊下だという事が分かった。部屋のすぐ近くだ)
(どうやら食堂から歩いてくる最中、疲労が限界に達して意識を手放していたらしい。変な姿勢で寝ていたからか体中が痛い)
……今、(何時だ、と呟いて腕時計を見ると、時刻は既に早朝と言っても差し支えの無い時間帯である。薄暗い廊下の中、首を振る。何時間寝ていたんだ、俺は)
……甲板にでも出ますかね……
(風に当たって意識をはっきりさせようとぼやけた意識で考えて、甲板へ繋がる階段へと足を進めた)
--
春真
2012-01-10 (火) 00:42:55
(空気の流れの完全遮断は難しく、またそうなった場合艦を制御する『ルサールカ』が艦外の状況を正確に把握する事が難しい)
(そういう訳で甲板部分に対しては遮断ではなく鑑賞術式で以て空気圧や風速などの調節を行なっている。……とは言え、航行中の甲板上に出るとそれなりに冷たい風を感じ、ぼやけていた意識がはっきりとしてくるのが分かった)
(周囲の状況を暗視鏡で偵察している兵士に軽く手を挙げ挨拶して、煙草に火を点け煙を吐く。徐々に白みゆく空へ、紫煙が流れていった)
(『ウラディーミル』はこの後、フョードグラード周辺の補給線を断っていく予定であった。地上の別働隊と協働し、物流を担う都市を落としていく。)
(盛夏の時期に補給線を断ち、帝国側に渡る兵糧などを制限しておく必要があった。この辺の知識は全くの門外漢であったが、いつしか俺でもある程度の見通しは立てられるようになってしまった)
……秋の収穫の時期合わせで……(フョードグラードを叩く。その予定だが、どうにも)
あちこちキナ臭ぇよな。
(そう言って脳裏に浮かべるのは、先日エカテリーナが話題に出した傭兵達で構成された非正規部隊。別働隊や、エカテリーナに帰順した少国家の都市に対する損害が馬鹿に出来ないものになっている、と言う報は聞いていた)
……最悪、秋を過ぎて12月って事にもなりかねねぇよな……
--
春真
2012-01-10 (火) 01:07:38
(その予想とて、今の状況が次善で収拾出来た場合、と言う条件が付く。何が起こるかなど分かりはしない)
(気が急いている。リリィの情報は少しずつだが集まってきていた。情報屋から仕入れる女衒屋の金の流れ、捕虜とした兵士から引き出した情報、密偵からの細々とした報告の中にある些細な事柄。一つ一つの点を繋ぎ合わせ、足りない部分はある程度の想像で補強して……)
(……そして其処から推測される彼女の位置は、正にフョードグラードであった。本音を言えば今すぐに向かって彼女と会いたい位だが)
(焦ってその地に赴き交渉した所で、軍付娼婦を易々と解放などはしないだろうし、俺の面も割れている。捕らえられて無駄死するのがオチだ。……だから)
(とにかく、フョードグラード侵攻を成功させ、そこを足がかりに彼女を探す)
(思い描いたプランを再び頭の中で再確認し、肺に溜まった煙を吐く。つと視線を上げると、山の稜線からは朝陽が顔を出し始めていた)
(夜は明ける。朝陽を臨んで、そうして)
何度でも手を伸ばすさ……
(眩しい光に手を翳して一人、そう呟いた)
--
春真
2012-01-10 (火) 01:30:15
↑
8th stage 『奪いの継続』
†
+
『奪いの継続』
8th Stage
───────────────
『奪いの継続』
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拒絶に意味が無いのならば
これ以上奪われるものがあるのだろうか
──────────────────────────────
●
北方帝国の短い夏が終わろうとする頃。動植物は早くも冬のための準備を始め、終わりゆく夏を惜しむかのように生を謳歌する季節。
しかし、ここ要塞都市フョードグラードにおいてはそのような情緒とは無縁の者ばかりがひしめき合っていた。鉄と軍靴、硝煙と返り血。各地で北方帝国に対しての団結した抵抗運動の機運が高まる中、それらを鎮圧する部隊が駐留する中では最大のこの土地に置いて、帰還した部隊の漂わせるそれらの雰囲気は絶えることは無い。
……尤も、正規兵の詰める基地から少しばかり離れたベースキャンプはその中でも些か異彩を放っていた。
整然とした正規兵達に比べ、こちらの兵士達は兵服をだらしなく着崩し、緩んだ雰囲気を醸し出しているが……その割にどの兵も眼光鋭く、尖った気配がある。
彼らは反乱軍主力にぶつける為に集められた手段も倫理も問わぬ傭兵たち。『野良犬』と蔑まれつつも戦に研がれた牙は鋭く、畢竟するに精鋭と言っても過言ではない兵力が集結していた --
2012-01-11 (水) 00:37:42
そんな彼らの詰めるキャンプの一棟、粗末な木組みの小屋の一室には、狭苦しい割に人間がひしめき合い、異様な熱気を放っている。
日が落ちて尚独特の熱を感じさせるこの一棟の中に響くは水音と嬌声、肌のぶつかり合う音と男の下卑た笑い声。
室内に視線を転ずれば、其処では一人の女を数人の男が囲んで居た。 --
2012-01-11 (水) 01:03:21
その様は蟻が蜜に群がるようにも、獣が獲物を取り合っているようにも見える。黒髪の女……リリィリアは、抽送の度にがくがくと揺らされ、人形じみた生気のない瞳が魔導ランプの光を映していた。
一体幾度男の欲望を受け止めたのだろう。滑らかな黒髪にも、動きに合わせ揺れる豊かな双丘にも、その他彼女の身体のありとあらゆる所が白濁した液体で汚れ、今も尚怒張したペニスを押し付けられ、貫かれ、咥えさせられている。
「もっと舌使え舌ァ! おらやりゃ出来んだろうが!」
まるで自慰の道具のように髪を掴んで口を犯していた男が怒声を上げると、その下で性器から溢れる残滓も気にせず抽送していた男が低く呻き、膣内に欲望の証をぶちまけ、口を開く。
「お、おぉ……やっべまだ萎えねえ。マグロかと思ったけど締まりは良いし、共有便所としちゃ良い買い物だったかもなぁこいつ」
ペニスを抜き取り鈴口の残り汁をリリィリアの髪で拭いながら言う男の言葉に、違えねえ、と傭兵たちが笑う。 --
2012-01-11 (水) 05:06:22
「だけどよー、何か足んねえよなぁ」
陰毛に鼻が突っ込む程に腰を打ち付け、喉の奥に射精した男が未だ口腔内の感触を味わいつつ言う。
「何かって何だよ」「いや、刺激がさ……お、おぉそうだよ残ったのも全部吸うんだよ」
「……ぅ、じゅ……は、ちゅ、じゅ……」
男達の身勝手な言葉に従いながらも、リリィリアは自分の意識が此処では無い何処かにあるかのように錯覚する。自分の周りで語られる言葉が、遠い所で喋っているように判然としない。
「ずっと同じ女ってのも飽きねえかよお前ら? そりゃあ『戦利品』攫ってくるのは手間だが」
「しょうがねえだろ、俺らは対王女様専用だぜ? ンの代わり、事が起きたら連中の主力にゃナニしても構わねえって言われてんだろ。王女様含みでよ
知ってっか、あの王女の胸スイカみてえだぜ? ボッコボコにしてファックしながら揉みまくりてー」
後ろからリリィリアにのしかかり、菊門に肉棒を挿入していた男は代わりとばかりに白濁液に塗れた彼女の胸を揉みしだく。おめーよくンな臭ぇ乳揉めるなと言いながらも、先ほど「刺激が足りない」と言った男は思案顔で言葉を作り。
「精々こいつら長持ちさせねーとってのは分かるけどよ……アレ使っても良いんじゃねえ? あんだろ色々。」 --
2012-01-11 (水) 05:22:47
男の言葉にその場に居た全員が疑問を浮かべ、次いであぁ、と納得の吐息を零す。
「前テメーに任せたら分量間違えて3日で廃人にしただろうが」「うるせえな……人間は失敗から学ぶ生き物っつーだろ?もう持ってきてあんだってホラ」
そう言って、男は部屋の隅に置いてあった鞄から金属製のケースを取り出し、慣れた様子で中身の準備にかかった。いくつかのピルケースとアンプルをテーブルに置き、注射器にアンプルの中身を収めて
「おいおいマジでやんの? 勘弁しろよこいつオキニなんだからさぁ……」
新たにヴァギナに挿入していた男が言うが、その口調は軽い。あくまで愛着のある回数制の消耗品に対するような態度で
「心配すんなって……おら」
注射器を手にした男が、リリィリアの腕を取る。表面の汚れを拭き取り、腕の内側に注射針を差し込んで中の薬物を注入して
「効果は一分ぐらいで出ると思うぜ。今回結構薄めてあるから静注でも問題ねえだろ」 --
2012-01-11 (水) 05:32:51
「
────っ!?
か、あ…ッ!? ぁ、ひぐ……ん、ぁ、やぁ────っ!!」
一分後、リリィリアの意識は突如穏やかな水中から地上に引き上げられたかのような変化を得ていた。局部から感じる感覚が、異常な程鋭敏に感じられる。
不自然な高揚を感じて困惑する意識も、与えられる快楽に塗りつぶされて行く。人形のように犯されているというのに、多幸感が脳内を支配して
「お、ぉあ……急に、絞めつけて……ッ!」「おほ、こっちも良いねぇ。ホラホラもっとケツ穴締めろよ」
口々に変化した反応を楽しむ男達に、注射した傭兵がしたり顔で笑う。
「な? 刺激大事だろ? ……おぉ、こいつ自分で腰振り始めたぜ。
リリィちゃーん? 気持ちいいですかー? マワされて感じちゃってるトコ正直に言ってみなー?」
猫撫で声で言う様に、周りを取り囲んでいた男たちが笑う。が、中心のリリィリアの意識はハイの絶頂にあった。
一突きされるごとに快感が電気となって頭の天辺から指の先まで駆け巡るのを感じる。気づけば口は勝手に開いていた。
「きもちい、きもちいい……です…っ! なに、これ…ひゃ、は、ぎ……っ!! こんな、あたまおかしくなって……やぁぁっ!!」
--
2012-01-11 (水) 05:44:14
「おーおー気持ちいいかー……あーやっぱ薬使ってハイなってる女たまんねーわ。ちょっと胸貸せよ」
質問した男はそう言ってリリィリアに近づき、乳房の間に肉棒を挟み押しつぶすように圧迫しながら猛然と腰を使い始める。
その刺激だけで数度の絶頂に達した彼女の身体が、最早意志とは無関係に男の精を絞りとるように動く。
「っぉ、出すぞ!」「は、こっちもケツにたっぷり出してやんよオラッ」
秘処とアヌスを犯していた男達が、ほぼ同時に絶頂を迎えて膣内と直腸に滾った欲望を流し込む。胎内に爆ぜる熱を感じ、卑語を恥も外聞もなく口走りながら、リリィリアの意識は白く塗り潰されていく。
(……ごめんね、
はるまさん
……)
千々に乱れた思考で最後に覚えているのは、誰よりも愛しかった筈の人の顔を思い浮かべ、以前何度も繰り返した謝罪の言葉を呟いたという事だけ。
総てが、白の帳に覆い尽くされる。 --
2012-01-11 (水) 05:57:23
●
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2012-01-11 (水) 05:58:05
陵辱の輪から離れ、一人遠巻きにその様を見つめている青年が居た。興味なさ気な表情は一瞬、哀れみを感じたかのように動く。
「……。」
こういう悲劇は何度繰り返しみても反吐が出そうになる癖に、ありふれている。あまりにありふれ過ぎている。ため息を吐くと左目の下の古い疵を無意識に撫で、小屋の出口に向かう青年に傭兵の一人が声をかけた。
「クロウ、テメェも抱けよ。親睦深めようぜぇ?」
ひひひ、と言う下衆な笑い声と共に投げかけられた言葉に肩を竦め、クロウと呼ばれた青年は億劫そうに口を開いた。
「……コミュニケーション苦手な僕としては、お金払って娼館に行った方が安心出来るんだよ。男のケツ見ながら女を抱くのも嫌だしね」
飄々とした態度でベースキャンプを後にすると、人の絶えた深夜の城塞都市でぽつりと呟く。
「世界はこんなにも醜くて、残酷で、どうしようも無いっていうのに……何故、僕はまだ生きて此処に立っているのかな。
──いよいよもって、君の剣の理からすれば許せぬ者になり果てているよ、僕は。」
夜空を見上げ、笑みすら浮かべながら。
今では
”銀の腕を殺す者”
(
クロウ・クルワッハ
)
と呼ばれる青年は、かつての友の名を呟いた。 --
2012-01-11 (水) 06:16:59
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9th stage 『見下しの失速』
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Last-modified: 2012-01-17 Tue 18:30:50 JST (4481d)