この前火縄銃の授業があった。その銃に、私は懐かしさを覚えた。
- 火縄銃 -
マッチロック式の銃(火縄銃)を持つのはいつ振りぐらいか、…それは確か6、7年ぐらい前の冬だった。
私の店は基本的にフリントロック式の銃を扱っているのだけれども、
ある時、店に中古のマッチロック式の銃がいくつか入ってきた。
母に使い方を教わり、私は早速狩猟に飛び出たのを覚えている。
森で一頭、猪を仕留めたのも覚えている。それはあんまり大きくなかったけれど…
そういえば、その時に枯葉を燻して煙が出たのに気付いてびっくりしたっけ、火縄はとても危ないのだ。
季節も乾燥した冬…、山火事になったら目も当てられない……
これが私とこの銃との最初の出会いだった。
そして時は巡り、私はまた再会した。
ドンッ パンッ ぐえーっ!
グラウンドの空にいくつもの銃声が鳴り響く。
黄金暦212年6月、その日は快晴の空だった。
生徒達が火縄銃の扱いを教えられ、実際に撃っている所だ。
射撃中の生徒を見渡せば、火皿から飛び散る火花に驚いたり、
衝撃で思わず仰け反ったりで、一回で的に命中させている者は少なかった。
そんな銃声が飛び散る最中、私は火縄の先を燻す。
穂先燃ゆるその香りを感じて、私は立ち上がった。
『 ……… 』
何十メートル先にある的を見据え、構える。しっかりと構えてないと衝撃で標準がぶれる。
これがフリントロック式なら撃鉄の先につけられた燧石が、火蓋を掠める時点の衝撃で尚更ぶれる。
『 …… … 』
狙いをつけて、引金を引く。火挟に取り付けられた縄が降り、火薬に引火して火花を散らした。
『 ……! 』
火花が飛び散る瞬間、私は目を瞑る。そしてすぐに銃声が鳴り響いた。
………
……
…
………命中。一発必中。久々に持ったにしては上出来だったと自分を褒める。
なんだか、とても誇らしい瞬間だった。
黒煙で多少顔に煤を落としていたのも気にせず、私は嬉しさに緩む口元のまま火縄の火を消した。
(また使う日が来たのなら、よろしくね)
次、出会う時はどんな時だろうか。少しだけ、その未来に思いを馳せた。
その次の月、農園部で豚と猪を火縄銃で仕留めるクウィエースの姿が…
- end -
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