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- '瓦礫城付近―雑貨街 午後三時
- その上空
(ふわふわと、アドバルーンじみた球体が宙に浮かんでいる。) (極めて平和な光景。眼下に広がるのは、人が出歩く時間帯に合わせてそこそこ賑わう雑貨街。) (球体の端に申し訳程度に付いた頭、その更に端の目玉が、道行く人の中に「それ」を見つけるまでは) (気体が噴出すると、一瞬で球体が萎れた押し花のようになり。両手足の錨に引きずられるように落下。) (ひしめく雑貨店三店舗ほどを瓦礫の山にしつつ、エオとキャスターの目の前に現れたのは、風船じみた巨漢だった) 見つけたべや、賞金首ぃ -- ブロント
賞金首?
(キャスターは、エオに問いかけるように目配せした。) (見た目からして明らかに尋常のものではない。そしてこの巨漢から発せられるものは、耄碌した老人でも感じ取れるであろう、鮮やかな、殺気。) (エオ、知り合い?冗談を吹くキャスターも、視線は目の前の巨漢に釘付けになっていた。)
- (両手で本を抱えたまま、ぶんぶんと首を振る)
(さすがにこの巨漢には気圧されるのか、2,3歩後ずさって)……サーヴァント…? (にしては、クラスは一体なんだ…と悠長に考えている暇も無さそうだ。逃走は可能か…と考えるものの逃走すれば被害が広がる可能性もあり) …キャスター、そういえば私まだ貴方の戦ったところ見たことなかったわね… -- エオ
そうだね。つまりは、今がその時、ってことかい。 (エオを庇う姿勢をとりながら一歩後ろに退かせ、キャスターは臨戦態勢をとった。カーキのコートが光りに包まれ、次の瞬間、白い拘束具のような服装へと変わった。)
- ぐげげげげ、ちっこい金髪!(指差す右手)ちっこいピンク!(指差す左手)
間違いねぇべや、この戦争でウチに楯突くさ…さば、さべ、サービスマン? (既にもう蜘蛛の子を散らすように逃げていく街の住民たち。こういうあたり、瓦礫城の人々は荒事慣れしていると言える) まあええべや、しにっさらせ (その予感は全く的中。ごろごろと、球体の身体で更に6店舗を蹂躙しつつ距離を取れば。その口からは、火炎放射が見舞われたのだから) -- ブロント
随分頭の悪そうなサーヴァントね…! 死にそうになったら奥の手使うから私を盾にしても良いわよ…あんまりスペア減らしたくないけど…! (叫びつつ自分も倣って避難する…とはいえどこまで避難すれば安全かもわからない) (頼りなく残った瓦礫の影に隠れながら、借りた本だけは守らねば…と胸に抱えて戦いの行方を見守る) -- エオ
-
盾ならここにあるから、下がってて!
(キャスターが手を掲げると、赤い光がドーム状に広がり、炎をするりと左右に逃した。) (エオが十分に避難したことを確認すると、ドーム状の光は綿毛のように散り、キャスターの中へと戻っていく。)
どう。これが僕の宝具。種も仕掛けも、秘密だけどね。
(キャスターは巨漢に向き直った。巨躯を活かして近距離で戦うタイプか?だとしたら分が悪い。距離を寄せられないよう、足元に細心の注意を払う。)
- ぐぶーっふっふふふ…んごご?!
(肺活量の続く限り、可燃性のガスを吐き出し続ける男が、その光景に目を白黒させる) (金髪のほうが、張った謎の光。炎を消すでもなく、散らし逸らす。威力が死んだわけではない、火の海に包まれる雑貨街を見ればわかる) ぜへー…きゃすたぁ?なんだおめ、手品師か? (ごろり、ごろりと位置を変えつつ。二本の足で歩くことすら放棄した巨体から、また別のガスが放出されていく) んだば…こんなのはどうだべ! (紫に染まる風。撒き散らされたのは…ガス状の神経毒!) -- ブロント
- (紫色の風。鼻先にぴしりと刺激のようなものが走る。これは、毒だ!)
むちゃくちゃやるな、こいつ!
(周囲を見渡す。先ほどの火炎放射で騒ぎになり、散り散りになってはいるが、一般人が大勢いる。) (巻き込むわけにはいかない。どうする。話して通じる相手なら、そもそもこんなところでこんなものを使うはずもない。ならば。) (一か八か、キャスターは背中を晒して路地裏に逃げ込んだ。) (悟られぬよう、にじみ出る表情を噛み殺して、恐怖の表情をつくり、駆ける。)
- んぶぶぶ、なんだぁ、その光、じゃ防げんべしたぁ?
(ごろり、ごろりと家屋を巻き込み、巨体が喜色に塗れて転がっていく) (もちろん狙いはキャスター。獲物を追い詰めることを楽しむように、ガスを小出しに追い立てる…行く先は路地、入り口に引っかかりつつもガリガリと壁を削り進む) 袋のぉー鼠ッ!(ちらりとこちらを振り返った顔に映った表情は恐怖。上機嫌で、大きく息を吸い込む) -- ブロント
- (壁を削り進む怪音に、キャスターは眉をしかめた。)
(どうなってるんだ、アレ。人間じゃないのかな?だとしたら、都合がいいのだけど。) (そうして行き着いた先は、袋小路。キャスターはぴたりと足を止めた。)
ここらへんでいいかな。
(巨漢に背を向けたまま、キャスターは呟いた。) (すると、先ほどまで追いかけっこをしていた道を覆い隠すように、赤い光の壁が現れた。)
さ、これで何も気にせずやれるね。
(そして、キャスターの顔には、先ほどとは打って変わって、笑みが浮かんでいた。)
- ななっ?!(その場で回転。後ろを向いて壁を確認、また一回り)
おめ、こ、小細工を?後ろ塞がったからなんだってんだばーーーーー (ぶおぅ、と炎の竜巻が噴出される。加えて球体に申し訳程度に生えた腕からは目潰し、呼吸阻害用の黒煙までもが) -- ブロント
- (キャスターは向かい来る火を避けもせず、そのまま巨漢に近づいていく。)
(焼けただれた肌は、赤い粒子と共に、瞬く間に元のかたちへと戻ってゆく。)
目がほしいの?いいよ。貸してあげる。 でも、君の目と交換!
(壁を蹴って飛び上がるキャスター。狙うは巨漢のその眼!)
- はぁー?そのまま燃え尽きるがよ…ぶげ!(軽やかな蹴りに、頭蓋骨ごと陥没するのではないかという衝撃。)
(煙も炎もたまらず吹き止まり。蹴り飛ばされたゴムボールのように、巨体は路地裏を跳ねた末に赤い光の壁に止められる。煉瓦造りの街、あちこちが砕けた石に埋まる。) 眼ぇーオラの眼があー!や、やるなんて言ってねぇ〜 (ひとしきり悶絶。したかと思えば、急激に膨張する体積!) どこだ、くそぅ…どこにいても構んねえべ…くそぅ…死ね! (その身体を満たすのは、大気よりも軽い気体。) (キャスターにはわかる。この、ガスを自在に操る、サーヴァント?が次にすることが) (みるみる高度を上げるアドバルーンは、上空からのナパーム・放射…即ち、無差別爆撃を敢行しようと―している) -- ブロント
あはは、そうはさせないよ。
(高度をあげるバルーンを追いかけて、光の足場がドミノ倒しのように螺旋状の足場を作り上げていく。) (キャスターが踏みしめる度、光の足場がキャスター推力を与え、その早さは加速度的に高まっていく。) (そして、キャスターはバルーンを追い越し、その直上に踊り出た。)
ね。キミの身体に穴が開いたら、どうなるのかな。 僕に、見せてよ。
(キャスターが手を掲げると、先刻まで足場となっていた赤い光は無数の刃へと形を変え、ブロントに…降り注いだ。)
- どこだ、どこでもかんけいねぇ〜うひひ、今すぐ焼き払って…
(破滅の足音は、見る間にその高度を追い越して。)
うえっ?! (問いかけにこたえる間もなく、結果は示された) (無数の鏃が風船に穴を空ける。噴出するガスに、無軌道な推力を与えられ空を飛び交う球体。) はばっ…ブ、ブロント、もはやこれまで、だばぁ! (そして最後の刃が、火炎袋を貫いた。引火誘爆大花火、巨大な火球と化して、爆散するグリード) -- ブロント
(ブロントの残した花火を見届けることもなく、キャスターはふわりと街路に着地した。)
エオ、そろそろ大丈夫だよ。
- (本を抱えたままのそのそと物陰から這い出てくる)
(ひとまずの危機は去ったらしい…周囲を見渡し、それから息をついて)…貴方、ちゃんと戦えたのね (今更ながら、初めてマトモに戦うところ見たので感心したように呟いた) -- エオ
- 『お邪魔しまーーす!!』 -- 史楼
- オレまた先日の記憶を辿りに、なんというか… 年季の入った建物へ来ていた。
覚え違いでなければ やっぱりこの辺にいるとは思うのだが… 「おーい、エオ居るかー?話があんだけどーー!」 バカでかい声で呼んでみる、しかし声を張っただけでパラパラとホコリが落ちてくるこの廃屋はやっぱりダメなんじゃ…? 三度目のやりとりである -- 史楼
返事がない。 それから、史楼が声を張り上げること数回。
「あいつなら、今、留守。」
ようやく、返事といえる返事が返ってきた。 …が。声の主は、史楼の知るその人ではなかった。
「あーそうかぁ、じゃあまた来るかぁ… ってあれ?」 想定していたものとは違う返答に、少し戸惑いながら 声がする方をもう一度見返す。 目が慣れれば見えるのか、それとも薄暗い廃屋に住む悪霊なのか。 ってそんなこと考えてたらまたリンゴでも投げられそうだな… -- 史楼
怪訝な表情を浮かべる史楼に、キャスターも訝しげな視線をぶつけ返す。
「なんだよ、じろじろ見て。」 「言ったろ、留守だって。誰、あんた。エオの知り合い?」
ようやっと目がなれて、金髪の少年(?)を見つける。 「悪い、さっきまで明るいとこに居たからよく見えなくてさ。」 「えーっと まぁ知り合いっていうか…あれ、オレら友達でいいんだよな…?いや違うのか…?」 一人でぶつぶつと自問自答して 「うん、そうだ エオの友達。」 「…ところであんたは?」 -- 史楼
「僕?僕は」 キャスターは、そうだな、と顎先に手を当てて少し素振りを見せた。
「エオの同居人。あるいは居候。将亦、同棲者。好きなやつから選んで。」
「…ああ!」 なるほど、と手を打って 「恋人か!エオもやるなぁ…」 しみじみと言う -- 史楼
「一番遠いやつを選んだね。」 「正解は同居人、が一番近いかな。」 「で?用があったら伝えておくけど。」
「あれ、違ったか… おっかしいな、そういう雰囲気だと思ったんだけどなぁ」 少年(?)の淡々としたやり取りに、オレはまた怒らせたのだろうかと少し不安になりながらも 「これ、渡してくれよ。うちでやるカレーパーティーの日程が決まったからさ、持ってきたわけ」 不恰好な厚紙に、日時と申し訳程度にカレーのイラストが描かれたものを渡して 「そうだ、暇だったらあんたも来ていいからな?」 「じゃ、用事はおわり、邪魔したなー。」 鼻歌いながら帰っていった。 -- 史楼
「…名前、聞いてないんだけど。」
- 昼時のカフェテラス
- その老人は、先日とまるで変わらないままだった。
同じ席で同じティーセットを頼み、同じように笑って、金髪のキャスターに笑顔を向ける。
「やぁ、またあったね」
戦争中、敵同士とは思えないほどに朗らかな笑顔。
殺し合いには似つかわしくない。
「今日は君だけかな?」
-- 眉雪のキャスター
あんたは、この間の。口には出していないが、微かに上がった眉がそう語った。
「あのじゃじゃ馬なら、今はよそで買い物。」 「どうしたの?改めて、戦いを挑みに来た?」
- 「まさか。この前いったとおり、私は荒事が苦手でね。世間話をしにきただけさ」
紅茶を啜りながら、目を細め、右手で対面の椅子を示す。
「大食らいの君のマスターがいないならそれはそれで財布に優しい。今日もケーキセットくらいは奢るよ。かけたらどうかね?」 「お互いに、情報交換をしたほうが今後の為にもなるだろう?」 -- 眉雪のキャスター
「と、いっても。僕はケーキと釣り合うような情報は持っていないよ。」 「マスターの3サイズの情報くらいなら、提供できないこともないけど。」
喋りながら、促されるままに椅子に腰掛けた。
- 「何、君自身のことや、それこそ彼女のスリーサイズで構わないさ」
「それこそ、一度死んでもスリーサイズは変わっていないのか……とか、気になるところだしね」
ショートケーキを丁寧にフォークで切り分け、ゆっくりと租借しながら問う。
なんでもないように。 -- 眉雪のキャスター
「冗談だよ。あいつの3サイズなんか知りっこないし、興味ない。」 「面倒だから率直に聞くよ。何が知りたい?」
(キャスターの前に新しく配膳されたケーキの皿に、フォークが触れて、キン、と子気味のいい音が響いた。)
- 「それは残念だ。少し本気にしたのだがね……そして、そういうことなら話が早い」
イチゴにフォークを突き立てながら、目を細める。 イチゴ越しにフォークが皿に触れ、微かな擦過音が響いた。
「あの子が何故死んでも生きているのか。知っているのなら気になるところだ」 「分からないというなら、君の事でもいい」 「君が何故ここにいて、何故サーヴァントなんてやっていて……どんなサーヴァントなのか?」 「教えてくれるなら教えてくれ」 「無論タダでとはいわない。君も私に同じように何か問えばいい」 「できる限りは答えようじゃないか」 -- 眉雪のキャスター
「エオは、死んでも生きているわけじゃない。死んだエオは、ちゃんと死んでいる。」 「僕がサーヴァントをやっているのは、エオに呼び出されたから。」 「サーヴァントのクラスはキャスター。」
(ケーキを口に放りながら、黙々と答えている。)
「以上、ケーキ1つ分の解答終わり。僕の番に移ってもいい?それとも、まだ何かある?」
(眉雪のキャスターの前に、メニュー表が放られた。)
「死んでいる……? つまり……いや、そういうことか」 「そして君もキャスターなのか。私もキャスターだ。そうなると、呼びづらいな」 「質問権はそちらにうつって結構だが、君の事をなんと呼べば適当かも後で教えてくれると嬉しいな」
ケーキを食べ終え、まだ残っている紅茶を楽しみながら、老人は質問を聞く体勢にうつる。 -- 眉雪のキャスター
「じゃあ、まずは僕が一番聞きたいことから聞かせてもらうよ。」 「他のサーヴァントの情報を知りたい。それも、好戦的なやつ。」 「いるのか、いないのか。いたとしたら、どういうサーヴァントなのか。」
- 「いいだろう、お安い御用だ」
そういって、懐から何枚かメモと写真を取り出し、渡す。 交渉材料になりそうな情報は常に持ち歩いているのだろう。 「まず、このヒラ君。つれているサーヴァントはアサシンだ」 「アサシンは通称:ハイエナ。典型的な悪人同士って奴でね、往来で宝具をぶっぱなすことも躊躇わない危険な連中だよ」 「君のマスターを見かけたら、恐らく容赦なくくびり殺すだろうね……先日誰かにされたようにね」 「つづいて、この子。マスターは不明だ。クラスはまぁ多分セイバーだろうな」 「先ほどのヒラ君たちほどではないが、我々キャスターにとって高い対魔力を持つセイバークラスは存在そのものが天敵だ」 「しかも、彼女は勝機があれば見逃すほど寛大ではおそらくない。まだ話し合う予知はあると思うが、交戦的であることにかわりはないね」 「……まぁそれだけの覚悟が彼女にあれば、だがね」 「ひとまず、私の知っている情報で交戦的な連中はそれだけだな」 「まだ戦争初期だ。どこも様子を見ているのが大半だよ」 -- 眉雪のキャスター
- 「セイバークラス。魔力が通じない上に、好戦的なわけか。」
「なる程、厄介の極みだな。」 「オーケー、ありがとう。僕としてはこれで満足。」
(ナフキンで口を拭うと、フォークを皿に置いた。)
「いや、もう一つだけあったな。」 「この関係は、これからも続けていくつもり?もっと突き詰めて言うと、アンタは敵じゃないと思っていいの?」
「無論だ。私は見ての通り好戦的ではないし……君達とは正直、戦うことはないと思っている」 「恐らく、我々が戦うとしたらそれこそ決勝以外ではありえないだろうさ」 「それほどまでに、我々は今の所戦うメリットがない」 「君と君のマスターさえよければ、今後もこの関係は続けていきたいものだね」 紅茶のおかわりを貰いながら、そう答える。 -- 眉雪のキャスター
「そうか。それはこちらにとっても好都合。」 「もちろん、エオの財布にとっても。」 「同盟成立、だね。」
- 「ああ、同盟成立だ」
「では、今日のところはこれでまた……そっちからも、何か美味しい話があったら教えてくれ」 「利があるかぎりはよりこの関係は磐石になるだろうしね……それじゃあね」
立ち上がり、多めに代金を置いて帰って行く。
その後姿に警戒心は微塵もなく、揺れるコートの裾はどこか満足気であった。 -- 眉雪のキャスター
- 僕にとって、本の中に広がっているだけだった、外の世界。
青い空を初めて見た。甘いお菓子を初めて食べた。
この世界は、僕の知らないものに溢れている。
…でも、一つだけ、変わらないことがあった。
返り血と悲鳴に塗れて、戦わなければいけないということ。
カフェで卓を囲んだ者らのように、皆が皆、友好的であればいいのだが。そんな虫のいい話が、あるわけがない。
トランクから出てきた新しいエオは、確かに言った。「死んじゃった」と。
それは、強烈な敵意を持った者が存在するということ。
僕はこれから、戦わなければいけない。僕を呼び出した少女を、守るために。
…でも。できることなら、僕は…。
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