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* ブレイネル家出身 アリサ・ブレイネル 457972 [#w5607192]
|ID:|457972|
|名前:|アリサ・ブレイネル|
|出身家:|ブレイネル|
|年齢:|15|
|性別:|#listbox3(女,server,sex)|
|前職:|#listbox3(猟師,server,job)|
|理由:|#listbox3(故郷に錦を飾りたくて,server,reason)|
|状態:|#listbox3(冒険中,server,state)|
//////////
|方針:|#listbox3(特になし,server,type)|
|難易度:|#listbox3(安全第一,server,diff)|
|信頼性:|#listbox3(気にする,server,conf)|
|その他:|[[ステータス>ステ:457972]]/[[戦歴>戦歴:457972]]|
//
// ※ ご注意「//////////」より上は変更可能個所以外はそのままにして下さい。
// タイトルの「家出身」の記述も含まれます。
[[名簿/457709>名簿/457709]]

*(とても読めない汚い字で書かれた手記) [#l6644dbf]
**1冊目 [#i5e14faf]
…………………………………………………………
//私の両親は優しかった。と、言うよりも私に甘かった。
//私が欲しいと言ったものは何でも買ってくれたし、連れて行って欲しいと言ったところには何処へでも連れて行ってくれた。
//しかし、私は両親に何でもかんでもねだったりはしなかった。
//母が教えてくれる投擲術が何よりも好きだったから。
//的の中心へ目掛けダーツを投げたり、池へ平たい石を投げ込んで水切りさせたり、公園の遠くまでフリスビーを投げて追いかけたり。
//物を遠くまで飛ばすという行為は私に得も言われぬ快感を与えてくれた。
//的を射るという行為は達成感と充実感を得るのに十二分に刺激的だった。
//母は物を投げたり撃ち抜いたりすることにかけては右に出る者がいないほどの腕前を持っていた。
//私はそれを真似し、いつか母のように投擲と射撃の名手になろうと夢見ていた。
//ただ、母は私に投擲術を教えるのを渋っていたけれど。
**2冊目 [#gf849e89]
…………………………………………………………
//それは私が物心ついたばかりの頃、およそ三歳ぐらいのことだった。
//表で父と遊んでいた所に、母が血相を変えて帰ってきた。
//曰く、祖父がやってくるから急いで隠れろ、とのことだった。
//その時の私には一体それの何が危険なことなのか理解できなかったが、
//息を切らすほど慌てて帰って来た母と青くなった父に連れられて寝室のクローゼットへと押し込まれてしまった。
//それからほどなくして、ドアをこじ開けるような音の後、父と母の声と、しゃがれた声の口論が聞こえてきた。
//そのしゃがれた声の主こそ祖父だった。恐らくは母を付け家へとやってきたのだろう。
//「お前のような腑抜けは必要ない」「だからってあの子を連れて行くの」「逃げ出したお前に何かを言う権利はない、もらっていくぞ」
//……口論は大体その様な内容だったと覚えている。
//何がなんだかわからないままに狭くて暗いクローゼットへと押し込まれた幼い私は、口論のやかましさとじっとしていられない性分からストレスを溜め込んでしまい
//遂には不満に任せてクローゼットの扉を叩き大きな音を出してしまった。
//幼かったとはいえなんと迂闊なことをしてしまったのだろう。
//物音に気づいた祖父が猛然と寝室へと上がりこみ、止めに入る父と母も構わず物音の所在を探って回った。
//そして遂にクローゼットの扉が開かれ、私は祖父と相見えた。
//鬼の形相とはこういう物を表すと言わん程に強張った表情と、生気に欠け、おぞましく光る鈍色の瞳。
//その恐ろしさに私は怯えることしか出来ず、なすがままに祖父に抱きかかえられ攫われてしまった。
//
//暗殺者の後継者として育て上げるために。
**3冊目 [#f96793c5]
…………………………………………………………
//母の家系は代々暗殺者の家系だった。
//一切の物音を立てず、殺されたことすら気づかせず遠方から射殺す投擲術。
//黄金歴以前より続く無音の暗殺術は猛威を振るい、闇の社会に一大勢力を築くほどであった。
//……しかしその暗殺者ギルドも黄金歴が80年を回る頃を境に衰えを見せ始めた。
//『冒険者』の台頭、それこそが暗殺者の家系を衰退に追い込んだ。
//数多くの魔物を切り伏せる戦士、巨大な怪物さえ打ち倒す魔術師。
//いずれも後に『英雄』にまで上り詰めるような実力の持ち主達。
//それのみならず、この街界隈には幻想のような、あるいは悪夢のような者たちが集まりだした。
//各地で排斥を受けるような亜人、異能を獲得した超越者、数えきれないほどの資産を持つ王侯貴族、
//次元や異世界の壁を打ち破り現れる者、果ては正体を推察することすら叶わない者……
//『冒険』の名の元にこの地に集った者たちに対し、投擲・射撃しか武器を持たない暗殺者はあまりにも無力だった。
//暗殺の依頼ですら遅れを取り、ターゲットの護衛に冒険者がいれば返り討ちに合うことも少なくない。
//時代はそんな暗殺者達に『時代遅れの無能』の烙印を押した。
//
//祖父にはそれが許せなかったのだろう。
//皆が離れていき、残されたのは自分と娘一人。絶滅寸前の血筋を絶やしてはならない。
//そんな祖父の思いとは裏腹に、心優しい母は人を殺すことに嫌気が刺し、
//遂には街で技師を営んでいた父と駆け落ちを果たし去っていった。
//もはや断絶は免れないと、そう思っていただろう。
//そんな折に、私が生まれたということを聞きつけたらしい。
//今度こそは殺害に対する嫌悪を植えつけず、完璧な後継者を育て上げる。
//その最後の好機とばかりに母を探し当て、まんまと私を誘拐することに成功した、ということだ。
//
//攫われた私は何処とも付かない山奥の小屋へと連れてこられた。
//ここから悪夢の日々、地獄のような暗殺者の訓練が始まった。
**4冊目 [#fc7732a3]
…………………………………………………………
//祖父は当時三歳の私にも一切の手加減容赦なく厳しい訓練を課した。
//投擲で的を外せば叱責の嵐、平手が飛んで来ることも少なくなかった。
//それでもまだ投擲は好きになれた。その当時から的を当てる快感には魅了されていた。
//外さないようにすれば祖父は怒らない、だから必死になって的を当てる。
//そうすれば少なくとも苦しい思いはせず、好きな投擲をやっていられた。
//私の心を蝕んだのはもう一つの課題、無音の行動だった。
//訓練中に限らず常の生活においても僅かでも音を立てるような事があれば罵声が飛んで来る。
//口答えをしようと声を出せば殴られる。
//呻き声を上げれば締め上げられる。
//今も昔も大人しくしているのが苦手な私はとにかく音を控える事ができず、罰として食事を抜かれることも常態となっていた。
//
//必死に、ただ自分の身を守るために口をつぐんだ。
//僅かな音を漏らすことにすら怯え、息を吸い吐くことにさえ崖を歩くように慎重に行った。
//そうして訓練と我慢を重ねるうちに次第に音は消え、走ろうとも一切の音を立てることはなくなった。
//……その頃には、私の喉は声を発する事が出来なくなっていた。
//隠れて必死に声を上げようとしても音もせず息が漏れるだけという事実に気づいた時には、一切の音も立てず泣き叫んだ。
//祖父の仕打ちは効果を挙げ、私の決死の努力は皮肉にも祖父の思惑通り暗殺者としての道を歩む礎となってしまった。
**5冊目 [#c3a4f7d6]
…………………………………………………………
//順調、少なくとも祖父の目からそう見えていた訓練に陰りが見え始めてきたのは
//私が声を失って一月か二月たった頃だった。
//祖父が次第に射撃の目標距離を伸ばしていくが、それについていけない。
//どんなに叱られても、灸を据えられても中心を捉える事ができない。
//私の目は遠ざかった目標を捉えられなかったのだ。とはいっても、私の目が悪い訳ではない。
//決して眼鏡をかけなければいけないほど当時の私も視力が劣っていた訳ではない。
//祖父の置いた目標が余りにも遠すぎたからだ。
//スコープの類も一切無く、300メートルと言う長距離の狙撃。
//狙撃兵ですら裸眼ではギリギリ可能かどうかという距離。
//しかし、それは祖父からすれば当然乗り越えられる中間地点でしかなかった。
//「鷹の目」と呼ばれた超長距離をも捉え射ぬく視力。
//それこそが祖父が血筋に拘り、私と言う最後の一粒種を求めた理由だった。
//しかしその視力も父の血が混じったせいか、凡庸な、とても狙撃に向かないものとなってしまった。
//
//そのことに気づいた祖父の次の行動は一切のためらいがなかった。
//まがりなりにも 孫娘に対して。
//荒縄を取り出し、私の手足をきつく きつく縛り上げ、
//鈍く光るダガーナイフをゆっくりと突き出し、私の顔まで近づけると
//
//
//
//
//
//わたしの ひだりめを えぐ った
//
//
//   いたい     やめて   なんで
//      ごめんなさい   いたいよう            
//          おじいちゃん     やめてよ
//
//
//どんなに声を上げようと口を開き、喉を枯らせても声になる事はなかった。
//どれほど苦悶の表情を見せても、祖父は動じることもなく私の目を抉り続けた。
//地獄のような痛みと苦しみに悶絶してもなお終わりが見えないほど長く感じられた。
//片目を潰し、残る目に全てを補わせることで強引に視力を上げる非道な施術。
//その惨さから行われた例も少なく、成功例は更に極僅かという外法中の外法。
//祖父にとってはそれを孫娘に課すことに何ら異議を挟む余地はなかった。
//最高の暗殺者を育て上げるためなら。
//
//鈍色の刃がゆっくりと迫るおぞましい光景が私の左目に写った最後の映像となってしまった。
//不幸中の幸いか、生き抜こうとした意思が導いたのか、私の右目は次第に視力を高めていき、「鷹の目」の称号を得るに足りうる物となった。
//……その代償となったものは、何よりも大きかったけれど。
**6冊目 [#nbd7a819]
…………………………………………………………
//左目を潰されてから何ヶ月が経っただろう。
//その頃にはもはや私は自分の意思を殺し、ただ祖父に言われたとおりに訓練をこなすだけの機械になっていた。
//余計なことを考えるから苦しいんだ。言うとおりにしていれば痛い目を見ないんだ。
//毒を使うことになったって、人を殺すことになったって、おじいちゃんがやれって言ったんだから仕方ない。
//……そんな思考停止を行なうことで、私は自分の心を必死に守っていた。
//感情を持たない殺人マシーン。このまま育てばまさに祖父が目指す暗殺者そのものになる、そんな状況だった。
//そうはいっても、体の方はまだ3、4歳。無理な訓練についてこれず、倒れる日もあった。
//そういう時ばかりは祖父も無理を押さず、休ませてくれた。
//……最後の一粒種を潰すような真似をするほど、祖父も狂っていなかった。
//
//祖父が食料を取りに行っている間、小屋で横になっていた所に物音が聞こえた。
//野生動物が茂みを歩いてるのかと最初は気にしなかったが、その音は次第に小屋に近づいてきた。
//その物音こそ私が待ち望んでいた希望、父と母の足音であった。
//小屋の戸が開き、父と母の顔を見た時、私は遂に押し込めていた感情が溢れ出した。
//父と母もきっと祖父に見つからないうちに私を連れ出すつもりだったのだろう。……だけど
//ぼろぼろになった私の姿を見て、
//声にならない助けを求める声を上げる私を見て、
//無残に抉れた私の左目を見て、
//母の怒りは爆発した。
//
//温厚で優しく、やや抜けた所があり、怒りとは無縁に思えた母のあれほど怖い顔はあれからも一度も見たことがなかった。
//怒りに駆られた母は私を父の腕に任せ武器を抜き、怒声を上げて祖父を探しに出てしまった。
//呆気にとられた父は私を抱えたまま母を追って山を駆けて回った。
//何刻か探しまわっただろうか。祖父と母の闘いの跡であろう飛び道具の跡を追いかけて林を進んだところには
//母の投げたチャクラムによって首を切り飛ばされた祖父の姿があった。
//
//いくら私に酷い仕打ちを仕掛けた人だと言っても、目の前で死ぬ光景を見せられるのはショックでしかなかった。
//祖父を討ち果たしようやく冷静になった母は泣き崩れ、父から私を抱き渡されると強く抱きしめてくれた。
//血濡れの母の手は、それでも暖かかった。
//殺人を犯してでも、私を守ってくれたと理解していたから。
//一年以上の時を経て、ようやく私は温もりを取り戻した。
**7冊目 [#y2a7303e]
…………………………………………………………
//囚われていた山奥の小屋から街へと戻ってきたとき、ちょうど私の五歳の誕生日が終わりかける頃だった。
//父も母もへとへとになるほど駆け回っていたにもかかわらず、ギリギリで開いていた菓子屋に駆け込み、
//ケーキを買って私の誕生日を祝ってくれた。
//久しく忘れていた愛情、何よりも暖かく嬉しかった。ようやく元の生活に戻れたんだ、と実感した。
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//それからというもの、両親は私に対し徹底的に優しく、守ってくれた。
//傷ついた左目を隠すために髪型を工夫してくれたり、
//喋れないことに苦労することが無いようボディランゲージのやり方を教えてくれた。
//幼馴染や近所に到るまで悲惨な過去が漏れないよう配慮してくれたし、
//投擲をキチンと学びたいと言えば、渋りつつも祖父に学んだ続きを教えてくれた。
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//両親は私に対して優しかった。と、いうよりもむしろ過保護だった。
//私が可哀想な子だから。左目が見えない、喋れない、何をやっても無表情、生きるにも苦労する不憫な子だから。
//守らなければいけない、と。これ以上傷ついて、可哀想な目にあうことがあってはいけない、と。
//それでは駄目だ。それでは私は両親によっかかって、抱えられて生きているに過ぎない。
//そう思っている所に、幼馴染達が一斉に冒険に出る計画を立てている事を聞きつけた。
//噂によれば遠方に出ていた幼馴染も帰ってきて冒険に出るほどだと聞いた。
//これほどの好機は他にない。冒険に出る理由付けとしてこれ以上無いものだった。
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//両親に頼らず、自立を果たすために、
//母の技術は決して人殺しの為のものではないと証明するために、
//私はもう、可哀想な子なんかではないと胸を張って生きて行くために、
//私は、冒険に出ることを決意した。