[[白昼夢。楽しいが現実離れしている空想。>MI/0017]]

-  --  &new{2021-10-27 (水) 20:41:51};
-&br;(17年前)&br;&br;''うへぇ…あちらさん今日も随分ハデにやりやがったなあ、こんなド田舎くんだりまでご苦労さんだ。''&br;&br;''ゴミはゴミ捨て場ー…ってか?フザけんのもいい加減にしやがれってんだ!''&br;&br;''ボヤいてても始まらんさ、さっさと片付け…ん?''&br;&br;(黄昏の世界、ヒノモトの某所、『御山』は深山幽谷に拓かれた法師たちの修行地。)&br;(俗世からあぶれた厄介者たちの吹き溜まりであると同時に、僻地であるのを良い事に行き場のないヒノモト中のゴミの『不法投棄』が公然と行われていた。)&br;(この日もどこかから捨てられた大量のゴミを発見した見回りの法師たちが、やり場のない怒りと共に後片付けをしていたのだが…)&br;(大量のゴミの中、一際目を引く物体。『中身入りの培養層』が発見されたのだ。) --  &new{2021-10-24 (日) 23:40:50};
--&br;&br;(それから10年後、現在から7年前)&br;(正座をさせられ、御山の寺院の一室にて強面の老人と相対している少年の姿。)&br;(少年は瘦せ型、モーヴシルバー寄りの髪に碧眼。東洋人か西洋人かでいえば西洋人寄り。)&br;(老人はたいそう立腹している様子だが、少年はどこ吹く風といった態度。)&br;&br;&COLOR(#855896){何か御用ですか?伐折羅さま。};&br;&br;''「御用もおはようもごきげんようもないわい!またやらかしおったな、『魁』!」''&br;&br;&COLOR(#855896){ハハハ!バレてしまいましたか…で、ドレのことでしょう?心当たりが多すぎて…};&br;&br;''「何!?サボりに倉荒らし、無断外出ときてこの上まだ何かやっとるのか!?」''&br;&br;&COLOR(#855896){おっと。口が滑ってしまいましたね、ナイショですよ?};&br;&br;''「フーム…まったく、とんだ悪小僧に育ったモンじゃて…」''&br;&br;&COLOR(#855896){子は親に似る。というでしょう?};&br;&br;''「フン!子だ親だ言うなら孝行のひとつでもして見せるんじゃなっ!」''&br;&br;&COLOR(#855896){フーム…難しい注文ですね。…うまくできるまで、その時まで…長生きしてくださいよ?};&br;&br;''「当たり前じゃあっ!お前のような…ゴホッ…ガフッ…お前のような、天邪鬼を、放って…逝ける、ものか…」''&br;&br;(強面の老人は『御山』に捨てられた子供たちの親代わり、全ての法師たちの師でもある御山の座主、伐折羅。)&br;(病床に臥せってからも御山のこれからを案じていたが、それから間もなくこの世を去った。)&br;(少年もゴミ同然に捨てられた身であり、『魁の星となれ。』と願いを込めて魁星の『カイ』と伐折羅に名付けられた孤児である。)&br;(その期待通り才能を示し、法師として腕を上げていったものの、慇懃無礼、傲慢で不遜、無軌道な行動を取る問題児でもあった。)&br;(結果として期待を裏切り、伐折羅の心労を増やし、寿命を縮めるような行いをし続けたととしてカイは御山でも孤立していた。)&br;(カイなりの甘え方、愛情表現はその対象である伐折羅以外に伝わることは無かったからだ。)&br;&br;&COLOR(#855896){潮時かな…};&br;&br;(カイは御山という場所には執着もない、育ての親で、恩人である伐折羅が亡くなったのであればさっさと外に出ることを考えていた。)&br;(葬式でも涙ひとつ流せなかったのに、染み付いた思い出がここにいる間ずっと、もう二度と会えない人の事を思い出させて胸を締め付ける不快感から逃げたかった。)&br;(そんなある日だった、ひときわ鈍臭い何の見込みもない落ちこぼれ…しかし不思議と放っておけない少年『コウ』と出会ったのは。)&br;&br;&COLOR(#855896){伐折羅さま、いまなら貴方の気持ちが少しだけ…解ったかもしれません。};&br;&br;(自分の受けた愛情を今度は他の誰かに返す、そんな当たり前な事を教えてくれたコウに徐々に惹かれていくカイ。)&br;(そして、あの日…)&br;(闇に飲まれかけたカイを照らす光。)&br;(夜の闇を切り裂く紅蓮の炎、日輪の如き輝き、抱き上げられたときに感じた暖かさ…)&br;(その美しさに…)&br; --  &new{2021-10-24 (日) 23:44:50};
---&br;&br;&COLOR(#855896){…はっ!?…コウ…コウは?!ボクは…いったい…?};&br;&br;(カイが眼を覚ました時には、全てが終わっていた。)&br;(重傷、ほとんど致命傷と言って良い傷を受けたはずだが命を長らえていたのだ。)&br;(傷を受けてからの処置が速く、またそれを可能にした『僻地では考えられない充実した医療設備』と『熟練の医療スタッフ』によるものだった。)&br;(御山はもとより過酷な修行で知られ、生死の境を彷徨うような重傷が日常茶飯事であったことから医術を修める者もまた多く。)&br;(ヒノモト中から無尽蔵に、種類を問わず不法投棄されるあらゆる物品のリサイクル技術にも長けていた。吹き溜まりであるからこそ為せる業である。)&br;(だが…襲撃からカイを護り切り、迅速に医療施設に運び込み、あまつさえ『輸血用の血液の提供』まで買って出たというコウの姿はどこにもなかった。)&br;(紅き鬼、『コウキゴンゲン』の力を不完全ながらも目覚めさせたことでコウは還俗させられ。)&br;(一刻も早く当主候補としての修行を行うため、カイに何も告げることなく御山を降りたのだ。)&br;&br;&COLOR(#855896){…また、ボクだけ…};&br;&br;(『捨てられた。』どうして、愛した人だけが、愛してくれた人だけが離れていく?)&br;(『取り残された。』どうして、こうなる?なぜ、こうなった…?)&br;&br;&COLOR(#855896){……誰だ?ボクを、呼ぶのは…};&br;&br;(以前のふてぶてしさが鳴りを潜め、まるで別人のように塞ぎ込んでいたカイはある夜、『声』を聴いた。)&br;(不法投棄場であること以外にも、ヒノモトの火薬庫、ヤクいブツの最終廃棄場、流れ着く末路とも言われる御山には曰く付きの物品が数多く存在する。)&br;(それらをまとめて放り込み厳に封印された倉からは、そんな物品が夜な夜な煩悩ある者に語り掛け、封印を解くように仕向け、憑りつかれた者はそのまま操られて…)&br;(よくある作り話の類だとタカをくくっていたそれがとうとう聞こえたともなれば、『面白い』と自嘲めいた笑みを浮かべて倉に忍び込むことにした。) --  &new{2021-10-24 (日) 23:51:52};
---&br;&br;&COLOR(#855896){念の入ったことだ…};&br;&br;(そこはおよそ『倉』というイメージではない、『核シェルター』を連想させる洞窟を利用した施設。)&br;(見張りの法師たちにバレないよう軽く小突いて気絶させることなど造作もない、問題はどう扉や封印を解除するかだが…)&br;(すべて『開いている』、声で呼び込むだけあってあとは来てもらうだけにしておいたとでもいうのか。サービスのよさにまたもや笑いが漏れる。)&br;&br;&COLOR(#855896){いいだろう、ボクの全てをくれてやる…だから、楽しませてくれ。};&br;&br; http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst089629.jpg &br;&br;(声に誘われるまま倉庫の奥底、空間すら歪みはじめたそこにたどり着く。)&br;(不可思議な力によって封印は解かれ、あとは手を伸ばすだけとばかりに[[『拳銃』の形をしたアイテム>http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst089537.png]]が手近な距離に浮遊している。)&br;(ここまで来ればもう迷うこともない、その拳銃を手に取った瞬間に、カイの意識が、世界が『黒』に染まる…)&br;&br;&br;&COLOR(#855896){''うぅ…あぁあぁあっ!!''};&br;&br;(このまま黒く塗りつぶされるのも一興、全てを諦めて力無く笑うその身体から真紅の『炎』があふれ出す感覚。)&br;(自分自身ですら捨てる気でいた命を救うために燃え盛る炎、この『血』が沸騰するような熱感。カイは以前にもそれを感じた事を思い出す。)&br;&br;&COLOR(#855896){…コウ…なのか?……ああ…!!};&br;&br;(あのとき命を繋いだコウの血が、再び命を繋いでくれた…そう直感し自らの身体を抱くようにして蹲る。)&br;(炎の中、それを待ち構えていたかのように蹲るカイのもとへ走る影。どこから走ってきたのか先日の黒い獣にも似た『金色の獣』が光と共に体当たり。カイの身体を包みこむ…)&br;(眩い光が途切れ、その場に立っていたのは[[芝居がかった装束と仮面を身に着けたカイの姿。>http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst034555.jpg]])&br;&br;&COLOR(red){『…もー…し…もしもーし。呼びつけといて早速で悪いんだけどさ、さっさとこっから出してくんない?』};&br;&br;&COLOR(#a3a300){『マジで!来たの!?呼んでも誰もこねーし放置1000年は喰らってたもんなあ…あーし様も早く出たーい。』};  &br;&br;&COLOR(blue){『ふああむ… おはよう ござい まーす。』};&br;&br;&COLOR(#855896){やれやれ、賑やかなことだ…余韻も何もあったものじゃないね?};&br;&br;(炎と血との快感に恍惚としていたところに拳銃…『R.E.D.S.』から聞こえる声。その声の正体も、R.E.D.S.の使い方をも『知っている』という奇妙な感覚。)&br;(黒く塗りつぶされる感覚に身を任せる際に、『何者かから必要な情報を上書きされた』こともカイには実感、事実として認識できた。)&br;(そのまま塗りつぶされるに任せ続ければ、噂話のように操り人形と化していたのかもしれない)&br;(それを炎に阻まれ、仮面によって防がれた事で『カイの意識も残っていれば、身体の自由もある』という状況になったことも。)&br;&br;''そこを動くなッ!''&br;&br;''貴様…カイか?!自分が何をしているのか解っているのか!?''&br;&br;(騒ぎを聞きつけた法師たちが大挙して押し寄せる、カイを取り囲み捕えんがために距離を詰めるものの…)&br;&br;&COLOR(#855896){いいえ、今の私はガラン…いや、D.D.…どうぞお見知りおきを。};&br;&br;(短く告げると、手にしたR.E.D.S.の引き金を引く。次の瞬間赤い光と共に歪んだ空間の天井を一直線に焼き貫く、炎の柱…逃走経路の確保にしてはハデなものだ、封じられた者からすれば1000年分の鬱憤が溜まっていたのだろう。)&br;&br;&COLOR(#855896){「熒惑召来」…頼んだよ、エメリー。};&br;&br;&COLOR(red){『カシコマリーッ!トップレスで失礼するわっ!』};&br;&br;(追い縋る法師たちを後目に一足先に羽ばたき飛翔するエメリーの足につかまって、空中ブランコのような軽やかさで、明け方の空に飛び出していくカイ…いや、D.D.) --  &new{2021-10-25 (月) 00:05:39};
---&br;&br;(そして現在 ハワイ島・マウナケア山 深夜)&br;&br;&COLOR(#855896){死なずに済んだだけで人生、どんな面白いことが起こるか…解らないものだ。&br;生きているだけで丸儲け、捨てたものではないね?};&br;&br;(短く、ささやかな半生を振り返ったうさんくさい仮面は夜空を見上げた。)&br;(万能のデウスエクスマキナでもなければ、面白おかしく物語を紡ぐ作家でもない、ただの道化。)&br;(道化芝居の行きつく先とは?それは…道化自身にも解らない。) --  &new{2021-10-25 (月) 00:10:38};
-&br;(黄昏の世界、某所、某時刻。)&br;(御簾の向こう側からもったいぶって話す人物、ふたり、女の声…喋り方こそ古風だがハリのある少女…とまではいかないものの、老婆のものではない若い女の声だ。)&br;&br;''【手ぬるい!…いや、これはもはや背信行為でおじゃ!彼奴は上級異魔呪…それも司祭級ぞ!こう何度も取り逃すのはたるんでおる証拠でおじゃろう!】'' &br;&br;''《まあまあ。宗家のご当主…いやさ『若』はまだ未熟であるゆえ、そういうこともあるゾヨ。のう?》''&br;&br;(一方が責め、一方がなだめるフリをして嫌味を垂れる…[[『若』と呼ばれた少年>http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst087648.png]]に対する圧迫面接めいた場。)&br;&br;''【だいたい弓月の!オノレが途中で放り投げた遺伝子細工がしでかした事でおじゃろう!潔く腹を斬れ!むしろワラワが介錯してやるでおじゃ!】''&br;&br;''《それを言うなら諏紗の…わちきが放り投げた遺伝子細工ひとつ潰せぬヌシの犬どもの無能と怠慢を恥ずべきゾヨ?若は不甲斐ないヌシらのケツぬぐいを買って出ておるのだから…》''&br;&br;''【黙りゃァ!何をヌケヌケと…オノレの肝煎りの隠形鬼どもも纏めて彼奴らに生ゴミにされておったではないか!?ケツぬぐいが聞いて呆れるわ!】''&br;''【それもこれも!放り投げた先の山猿どもが彼奴に余計な小細工を仕込んだ挙句、厳に封じておった『アレ』をまんまと奪い取られたせいでおじゃろう!?ケツをぬぐってやっておるのはワラワ達ぞ!】''&br;&br;''《ならば全ての責任はどこぞの田舎に住まう山猿どもにあるのではないかのう?…それにしても、出日のは今日もフケおったか…完全にわちき達をナメ腐っとるゾヨ。》''&br;&br;''【ナメ腐られとるのはオノレだけじゃ弓月の!やーい万年二位ー!!】''&br;&br;''《ではヌシは万年三位のアウトオブ眼中ゾヨ?諏紗の。》''&br;&br;&COLOR(green){あのー…もう帰ってもいいですか?};&br;&br;(少年をよそにお互いのディスりあいに発展する両者、『御三家』の『弓月』と『諏紗』の長老。)&br;(御簾から飛び出て乱闘しかねないような勢いだが…その両者より格上らしい『出日』の長老は例によって不在であった。)&br;&br;(場面は変わって。)&br;(黄昏の世界の国家ヒノモト、首都日輪京、ビル街が林立する近未来感のある都市、とあるビルの屋上。)&br;(時刻は夜、都会の夜の光は星空を覆い隠すように…)&br;&br;&COLOR(green){『カイ』…いったいキミは、何をしたいんだ…?};&br;&br;(地上に届かぬ星の光の下、紅の瞳の少年こと『出日陽牙』の回想が始まる。)&br; --  &new{2021-10-24 (日) 00:52:25};
--&br;(陽牙10歳のころ、かつて『天狐のイザヨイ』が『七曜の土』を撃退したことでしばらく姿を見せなかった『イマージュ』が活動を再開。)&br;(母方の実家、冒険者の街のはずれ『フシミ神社』で母や姉、祖母と生活していた陽牙は黒い円盤型のイマージュの襲撃を受ける。)&br;(その際に陽牙の中に眠る『鬼』の力『コウキゴンゲン』が不完全ながらも目覚め、見事イマージュを撃退したことから事態は動き出す。)&br;(鬼の力を使えるが、鬼そのものではない、あくまで鬼に変ずる力を持たない角無き鬼『ツナキ』である陽牙の力の目覚めに父方の『フシミ権現・地流』は紛糾。)&br;(一方で陽牙を無用の争いに巻き込むまいと母方が地流との絶縁を考え始めたころ。)&br;(戦いの危険、死の恐怖を感じるよりも『僕が中途半端だから家庭が上手くいかない』ことに責任を感じた陽牙は地流の本拠地、東方の国家『ヒノモト』での修行を決意。)&br;(しかしツナキである陽牙に地流の奥義を授けることに難色を示した地流のトップ『御三家』の長老たちは、妥協案として鬼を補佐する『法師』の修行地である『御山』へ陽牙を送り込んだ。)&br;(鬼として完全に目覚めれば地流宗家、当主候補として引き抜き…目覚めなければそこで飼い殺しにするために。)&br;&br;&COLOR(green){はあ…はあ…ぐえっ!};&br;&br;(実家もたいがい山の中だったとはいえ、せいぜい10歳の少年にとって深山幽谷に拓かれた修行地での生活は過酷を極めた。)&br;(大の大人でも3日も行えば音を上げるような修行の数々、法師の装束に身を包んでいるとはいえ大人に混じって10歳そこらの少年少女たちまでもがそれを行う異常な光景。)&br;(…みな、行き場を無くした『ツナキ』や俗世に居場所のない者たち…死に物狂いで喰らい付く者に道を示すのが御山の理念である。大人も子供も例外なく。)&br;(陽牙、いや…御山に入山し俗世の名前を捨てた紅の瞳の少年『コウ』はこの日も無様に転び、地べたにはいつくばっていた。)&br;(何もかもうまくいかない、あの日あの時確かに発現したコウキゴンゲンもあの日以来一度も呼び出せない…情けなさで目に涙を浮かべるコウ。)&br;&br;&COLOR(#855896){もう。またかい?だらしないなあコウは…};&br;&br;&COLOR(green){ぐすっ…『カイ』が強すぎるんだよ…同い年でカイに勝てる子なんて…いないし…};&br;&br;&COLOR(#855896){ハハハ!同い年だけじゃないよ?少なくとも今の御山のメンツには後れを取った覚えはないからね…コウだけが特別おちこぼれというわけではないから安心するといい。};&br;&br;&COLOR(green){そこまで言わなくても!?…じゃ…じゃあ、もう一回!やろう!};&br;&br;(組手で自分を負かした相手に手を差し伸べられる、情けなさもここまでくると涙も出ないと顔を伏せたコウ。)&br;(それを察してかふてぶてしく、生意気で、滑稽なセリフでコウの萎えた気を取り戻させて、伸ばしたコウの手を取る組手の相手。)&br;(同い年の『カイ』はコウよりやや高い背丈、瘦せ型、モーヴシルバー寄りの髪に碧眼、中性的な雰囲気と、飄々とした態度。)&br;(要領よく、悪く言えば小狡い…コウとは対照的に器用に立ち回るが決して優等生でもない問題児。)&br;(だが気まぐれなのか、落ちこぼれのコウにあれこれと世話を焼くことが多く…コウもそんなカイとの付き合いに支えられていた。)&br;(そんなある日…) --  &new{2021-10-24 (日) 01:13:44};
---&br;&br;&COLOR(green){カイ!こんな夜中に勝手に出歩いて…どこいくのさ?};&br;&br;&COLOR(#855896){いいところだよ、きっとコウも気に入るさ。};&br;&br;(声を潜め、気配を消して、忍び足、深夜に連れ立って山中を行くふたり。)&br;(怖気づくコウの手を引いて、しーっと口に指をやっていたずらっぽく笑うカイ。)&br;&br;&COLOR(green){わあ…きれい!};&br;&br;&COLOR(#855896){とっておきの場所なんだ、招待したのは、キミがはじめて…};&br;&br;&COLOR(green){ありがとう、カイ!};&br;&br;&COLOR(#855896){どういたしまして。…この気配…!?};&br;&br;(俗世と隔絶された修行地は文明の光のない、原始の星空から光が注ぐ)&br;(満天の星空、ふたりっきり…特別な時間に…なるはずだった。)&br;(だがそこに、星を塗りつぶす黒、全てを飲み込む闇…殺意と悪意の塊に晒されて。)&br;(修行地の結界の外、うかつにも外に出た獲物を襲う『黒い獣』)&br;&br;&COLOR(#855896){ぐっ!?…逃げて…コウ…キミだけでも…};&br;&br;(力の差は歴然、コウを庇い獣の鋭い爪と牙に襲われ、必死の抵抗も空しく全身を斬りつけられ鮮血に染まっていくカイ。)&br;(もはやこれまでとコウを逃がすために最後の力を振り絞って声を出すが…)&br;&br;&COLOR(green){''イヤだッ!…カイは…ボクが護る!!''};&br;&br;(闇に飲まれかけたカイを照らす光、立ちはだかったコウの拳は炎を纏い迫りくる黒い獣を爆裂四散させる…)&br;(夜の闇を切り裂く紅蓮の炎、日輪の如き輝き、倒れたカイを抱き上げるコウの傍らには揺らめく炎と『鬼』のヴィジョンが重なる。)&br;(己に何の利も、打算もない、『誰かを護る』という意思でコウキゴンゲンの力を呼び出すことを体得した瞬間である。)&br;&br; http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst089621.jpg &br;&br;(そして、現在。)&br;(黄昏の世界の国家ヒノモト、首都日輪京、ビル街が林立する近未来感のある都市、とあるビルの屋上。)&br;(時刻は夜、都会の夜の光は星空を覆い隠すように…)&br;&br;&COLOR(green){あのあとすぐ、キミとは離れ離れになって…やっと、会えたのに…};&br;&br;(その日からコウキゴンゲンの力を行使できるようになったコウは『当主候補』として御山から引き抜かれ還俗。)&br;(再び『出日陽牙』として地流の奥義を会得するべく試練に挑んでいくことになる。)&br;(あまりに急なことで、手当をされたもののまだ意識が戻っていなかったカイに別れを告げられず、そのまま月日が流れ陽牙が15歳になるころ。)&br;(『ツナキ』から『半人前の鬼』扱いになっていた陽牙は同じく修行を積んでいた姉、『出日紗陽莉』と『イマージュ狩り』としてコンビを組み様々な場所を巡っていた。)&br;(そんな時に『D.D.』と名乗って立ちはだかる仮面の怪人と何度か遭遇、対決し…その正体が行方不明になっていたカイであることを知ったのだ。)&br;&br;&COLOR(green){僕は…どうしたらいい…?};&br;&br;(包帯の巻かれた掌に視線を落として、拳を握り…星空を見上げた。) --  &new{2021-10-24 (日) 01:35:36};
-  --  &new{2021-10-14 (木) 20:36:59};
-''わあ…きれい!''&br;&br;&COLOR(#855896){とっておきの場所なんだ、招待したのは、キミがはじめて…};&br;&br;''ありがとう、カイ!''&br;&br;&COLOR(#855896){どういたしまして。};&br;&br;満天の星空、ふたりっきり…特別な時間に…なるはずだった。&br;だがそこに、星を塗りつぶす黒、全てを飲み込む闇…殺意と悪意の塊に晒されて。&br;&br;&COLOR(#855896){逃げて…コウ…};&br;&br;''イヤだッ!…カイは…ボクが守る!!''&br;&br;闇に飲まれかけたボクを照らす光。&br;夜の闇を切り裂く紅蓮の炎、日輪の如き輝き、抱き上げられたときに感じた暖かさ…&br;その美しさに…ボクは…&br; --  &new{2021-10-10 (日) 12:45:50};
--&br;&COLOR(#855896){…まるであの時のようだ、でもキミはここにいない…};&br;&br;深夜の吉峰山山頂付近、星空を見上げ一人呟く…芝居がかった仮装の仮面、D.D.&br;周囲に散乱するのは雑怪、屍食み、不浄鬼といったザコや原型すら定かではない怪異の残骸と…『骨』。それも一本や二本ではない。&br;とある目的で片っ端から『骨』をかき集め、さらにその『骨』を求めて集まった『骨』を持つ怪異を狩り…そんなことを繰り返すうちに溜まっていったものだ。&br;一か所に集まろうとしているなら『骨』をエサにするのが最適ということだ、怪異を強める効果があるのなら怪異も自然とそれを求めるのだから。&br;&br;&COLOR(red){ねえ、いつまでこんなチビチビやんのよ?場末の火葬場だってもうちょっとハデにお焚き上げしてさしあげるってのにさあ?};&br;&br;さっきまで怪異だった真っ黒焦げの炭を蹴飛ばして砕く、D.D.の手下一号エメリー。&br;燃やして骨を集めてでは火葬場で死体燃やすのと何が違うんだと不満げ。&br;&br;&COLOR(#855896){プロの判断さ。『皆の嫌がる事を率先してやる』…この国ではそれが美徳だというよ。(そっちの意味に取っちゃった系のカン違いボケをして。)&br;せんり君を選んだ理由も見えてきた、あとは彼らがなんとかするだろう。(動機は家族、だったら家族を見捨てて自分だけ助かろうという手もあった…それをしないということは使いやすいのだろう。)&br;…それに裏方も退屈しないさ、飛び入りのお客様もいらっしゃったようだからね?};&br;&br;音も無く、最初からそこにいたかのように並ぶ虚無僧たち…6人。&br;全員一斉に念仏を唱え始めると周囲が隔絶された結界に封じられる…これで邪魔は入らない、退路を塞ぐつもりだ。&br;そんな状況で虚無僧へ向けて声をかけるD.D.はようこそウェルカムと口角を釣り上げて笑うエメリーを手で制す。&br;よしよしどうどう。&br;&br;「「「「「「伽藍、御山の命によりその命…貰い受ける。」」」」」」 --  &new{2021-10-10 (日) 12:51:29};
---&br;&COLOR(#855896){御山の命だって?確かに彼らは過激だったが…たかが裏切り者相手に外法を使うほどではなかったよ。&br;…『弓月』の隠形鬼だろう?匂いで解る…すぐに始めよう、退屈で死にそうなんだ。};&br;&br;「「「「「「ならばそのママ…シネエッ!!」」」」」」&br;&br;虚無僧の姿から正体を現す隠形鬼たち、全身を黒い装甲に覆われ、顔面には無貌のマスク、黒子めいた姿。&br;人型を保ってはいるが身長は3メートルほど、異形のそれが6体同時に…ガランと呼ばれたD.D.に飛び掛かる!&br;&br;&COLOR(red){ああ〜ん、もうガマンできなぁ〜い!まとめて丸焼きだオラッ!!};&br;&br;同時にかかったのがアダになったか、阻むように突撃したエメリーの炎を纏った体当たりで吹っ飛ばされる隠形鬼たち。&br;しかし間一髪すり抜けた1体がD.D.に向けて腕を振り下ろした瞬間!その腕が斬り飛ばされ宙を舞う。&br;&br;&COLOR(#855896){「填星招来。」};&br;&br;D.D.の手にした拳銃型のアイテムの引き金を引くと、紫色の光を伴い現れるのは硬質の素材で出来た『円盤』。&br;円盤に刻まれた幾何学模様に沿って刀状に変形するとD.D.の手の中へ。&br;『黒曜石』のような光沢を放つそれは硬質なことはもちろん、鋭利に研ぎあげられているようだ。&br;拳を斬り飛ばした返す刀で飛び掛かり袈裟懸けにバッサリ、まずは…一体。体を維持できないほどのダメージを受ければ勝手に消え去るようだ。&br;結界の中に閉じ込めたことはかえって遠慮することなく暴れられるということで… --  &new{2021-10-10 (日) 12:56:07};
---&br;&COLOR(#855896){「歳星招来。」};&br;&br;続けて引き金を引けば緑色の光と共に『植物の種』が呼び出され…着地。&br;瞬時に根を伸ばし急成長していき、エメリーに体当たりされてもたついていた隠形鬼たちをまとめて絡め取ると…その成長力で全身を圧し折り養分を吸収!&br;…勢いそのままにD.D.やエメリーをも根で絡め取り『捕食』しようとするのだが…&br;&br;''『ウオオオオッ!!』''&br;&br;外から結界をブチ抜き、今まさに二人を襲おうとしていた根を焼き払う炎の塊。&br;その姿は隠形鬼たちと同じ[[鬼>http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst013206.jpg]]…炎を連想させる紅に染まっている。 --  &new{2021-10-10 (日) 13:02:08};
---&br;&COLOR(#855896){…フフフ、久しぶりだね?『コウ』…解るよ、鬼に変わり果ててもキミの事は…その炎の輝きは…!};&br;&br;''『『カイ』…!今度はここで、何をしようっていうんだ…?!』''&br;&br;&COLOR(#855896){善意のボランティア。と言ったら信じるかい?};&br;&br;&COLOR(red){あー…感動の再会のところ悪いんだけどぉ…};&br;&br;植物が焼き尽くされたことで命からがら脱出した隠形鬼のうちの一体が、苦し紛れに周囲に散らばった『骨』を何個か身体に取り込んだ&br;取り込むと同時に身体が10mほどに膨れ上がり、力任せに手足を振るい暴れ始める。&br;言い争いする前にさっさとアレ倒した方がよくない?と言いたいらしいエメリー。&br;さっき紅の鬼が結界を破壊したため、このまま放置すれば外に飛び出して被害が出る可能性もある。 --  &new{2021-10-10 (日) 13:04:02};
---&br;''『話は後だ、いくよ『カイ』!』''&br;&br;&COLOR(#855896){いいとも、久しぶりに連携といこうか『コウ』。};&br;&br;『骨』によって強化された隠形鬼が乱暴に振り回した腕の一撃を合図に左右に飛びのく紅の鬼とD.D.&br;D.D.が手にした黒曜刀によって隠形鬼の脚を斬り付け、体勢を崩したところに顔面への飛び蹴りを叩き込む紅の鬼。&br;&br;&COLOR(#855896){この高揚感…ずっと、こうしていられたら…いや…詮無い事だね。};&br;&br;&COLOR(red){そんなに好きなら、あっちに戻るか一思いに殺すかすりゃいいの…よっ!!};&br;&br;蹴りを受け隠形鬼が転倒したところに指を鳴らすD.D.それを合図にエメリーの追い打ち、炎と羽ばたきの組み合わせで火炎旋風を吹きつける。&br;全身を炎に包まれ、転がり続けた隠形鬼がやっと立ち上がろうと身を起こしたところに…&br;&br;''『鬼穿ッ!!』''&br;&br;掌打に近い形でモノを『えぐり出す』ような指の形を取った紅の鬼の一撃、『鬼穿』によって隠形鬼の心臓から『骨』をまとめて抉り出し&br;そのままの勢いで紅の鬼は隠形鬼の身体を貫通、撃剣興行めいて背を向けたまま着地と同時に隠形鬼は爆発四散、これにてひとまずの脅威は去った… --  &new{2021-10-10 (日) 13:09:38};
---&br;''『…ただの隠形鬼とはケタ違いの強さだった…この『骨』のせい、なのか…?』''&br;&br;紅の鬼が掌の上の『骨』に視線を落としたその一瞬、『骨』がかすめ取られる。&br;&br;&COLOR(#855896){悪いね、この骨…『人助け』のために必要なんだ。};&br;&br;&COLOR(red){それじゃあお先でーす♪チャオ?};&br;&br;飛翔するエメリーの片足には散らばった骨をキープ、D.D.自身もさきほど紅の鬼からかすめ取った骨を手に、エメリーのもう片方の脚に手を伸ばし空中ブランコのようにしてぶら下がる。&br;&br;''『待て!『カイ』!……人助け、だって…?』''&br;&br;一瞬のうちに飛び去ったD.D.&br;その姿を見上げて取り残される紅の鬼…いや。&br;&br;''もし、キミが戻って来てくれるなら、僕は…''&br;&br;思わせぶりな言葉を残した旧友『カイ』への未練を断ち切れぬまま&br;薄明の空に視線を向ける紅の瞳の少年『コウ』が、そこには立っていた。 --  &new{2021-10-10 (日) 13:15:28};