[[名簿/498112]]


-──「ただの通りすがりだ」
--「だが貴様らは殺す」
---&br;　&br;　&br;「子供一人がいい気になって！貴様は死ね！」&br;（一人、先をして駆ける！頭目が止める間もなく！）&br;　&br;「ハァーッ！」&br;（ウカツ！カウンターの回し蹴りが剣士の首に炸裂！千切れ飛びゆく頭！キックオフだ！）&br;　&br;「何をしている！かかれ！」&br;（続く乱入者に平静が切れたか、頭目は部下を一斉に向かわせる！飛び上がる暗黒騎士と、駆ける暗黒騎士、天地同時攻撃！）&br;　&br;「雷・鳥！」&br;（しかしライトニングはひるまず！飛び上がる暗黒騎士に向かってスローイングダガーを投擲！ツバメめいて飛ぶエレクトロダートが刺さった暗黒騎士は内部から雷撃を受けて爆裂四散！）&br;　&br;「雷・蛇！」&br;（同時にスローイングダガーを地へ投擲！稲妻の軌道を描き暗黒騎士に迫り、足から食い破る！當に稲妻の蛇！爆裂四散！）&br;（6体ずつ、計12体は跡形来なく爆発！残るは頭目のみ！）
---&br;　&br;「ぬぅ…おのれ…！ならばこの術をもって貴様ごと食らうのみ！」&br;（頭目は術を唱え始め、力場を発生させ自らの肉体を変容させていく！）&br;（しかしその隙を逃すライトニングではない！瞬時に右手を電流化！これぞ奥義！）&br;　&br;「ライトニングスマッシュ！」&br;（貫き手！力場ごと貫き頭目の体、いや貫通してあの結界ごと貫き焼いていく！）&br;　&br;「グアアアアア！」&br;（内側から雷撃に焼かれ即死！）&br;　&br;「成敗！」&br;（結界ごと爆発！ここに立つものなし！彼以外は！）
---&br;　&br;──そう、彼女は倒れたまま。光も腕も、足も満足になく&br;ただ何が起きたかわからずただ、倒れている。&br;　&br;少年は彼女を担ぎ、崩れた宿屋の壁に背を預けさせると…意識を集中するかのように&br;彼女の正面で正座した。
---&br;　&br;白い　白い空間に彼女は漂っていた。&br;自分がどこかにいるかわからず、体の感覚もない。&br;どうしようもない、自分が自分でない感覚&br;　&br;　&br;そこへ、少年が下りる。声が、彼女へ&br;　&br;──自分を思い出すんだ&br;　&br;どうやって？何を？&br;　&br;──君は空っぽじゃない。思い出すんだ、君と関わった人のことを。&br;&br;みんな…？&br;　&br;──君はそこにいる。君は、その人たちといるから、その人たちによって今いるんだ。&br;&br;みんな…&br;　&br;（浮かぶ、父、母、妹。そして学園の…同級生、友達、部員…彼女たちと、過ごした時間）&br;（そこにいるのは………私）
---&br;　&br;次に彼女が目覚めたとき。戻った両の手足と、視力。&br;そして…目の前にいる少年について知ることとなる。　&br;　&br;　&br;つづく
-──それは圧倒的だった。
--光が闇を討滅するというのは、こういうことを
---表すのだろうと
---&br;　&br;槍に切り裂かれた帝国の間者がまた一人、光となって消えた。&br;彼らが呼び出した魔獣も同じ。&br;光になって消えていく。&br;恐るべき光の力。剣を振るえば、光と化して、二度と戻らぬ塵となる。
---&br;　&br;「何をしている！呼び出せ！」&br;　&br;（そして呼び出されたのは家屋を内側から破壊してその巨体を表す獣）　&br;　&br;（いや、肉塊である。この街の住民を生贄としたグロテスクな肉の波が、彼女ごと飲み込んで雪崩となって街を飲み込んでいく）　&br;　　&br;（こうなれば終わりである。人も、鬼も、悪魔でさえも御して消える秘術の一つ。死んだという事実さえ暗に残ればよい）　&br;　　&br;（小娘一人がここまでとは思わなかったが、と）
---　&br;　　&br;（しかしかの男の安堵の息は消える）　&br;　　&br;（その肉の波の方々から結晶のようなものが生える。生え続けて…全てその結晶となったとき）　&br;　　&br;（砕けて、光の塵となって、彼女が表れた。）　&br;　　&br;（光の中から、当然のごとく）
---　&br;　　&br;（ここに来てようやく理解した。これは恐怖。あれは人間ではない、何かの体現者）　&br;　　&br;（触れざる者に触れてしまった…そんな、恐怖がある。神聖なものか？邪悪なものか？いや、これは…）
---　&br;　　&br;しかし　&br;　　&br;その強大すぎる力は、人の身にはあまりに重い。　&br;　　&br;光と同化であれば、光とまた同じくしてなる。　&br;　　&br;光はまたこの世界に溢れるものである。どこにでもあるのなら　&br;　　&br;その身もまた。光と消える代償があるのだ。　&br;　　&br;一時的であることを彼女は理解していたが、それでもこの場に置いては　&br;　　&br;付け入る隙となる。　&br;　　&br;例えば、光の中から出てきたときにあるべくしてあったものがないとか　&br;　　&br;左腕がなく、袖だけはためき　&br;　　&br;右足がなく、袴がよって揺れている事など　&br;　　&br;そして何より、大きく削がれた視力が　&br;　　&br;鈍らせてしまった
---　&br;　　&br;（勝機！）　&br;　　&br;（まさしくそれは勝機であった。魔力で生み出した鎖を生き残った部下と共に投げ、その残った右腕と左足、また首に投げる）　&br;　　&br;（それは見事にかかった）　&br;　　&br;（だが安心はできぬ。そう今この時もあの女は光を繰り出し、鎖を掻き消した）　&br;　　&br;（しかしそれは、最後のあがき。残りは既に闇雲に振るう姿が見える。）　&br;　　&br;（焦点の合わぬ目か、膝をついている）　&br;　　&br;（その一瞬さえあれば十分）　&br;　　&br;（帝国の者らは、最後の秘術を使う。）　&br;　　&br;（光も何もない、世界へと変える境界の魔術）　&br;　　&br;（天井は星のないドーム。暗闇の棺桶）　&br;　　&br;（外界から隔絶された概念の檻）　&br;　　&br;（闇の檻）　&br;　　&br;（そして彼女の瞳からも、また光は消え去った）
---　&br;　　&br;（方々の闇の鎖が彼女を拘束する）　&br;　　&br;（もう力は使えない。無力、非力ではなく…無力）　&br;　　&br;（おそらく後は彼らに連れて行かれ…そして…）
---　&br;　　&br;（思い出す。過ごした時間を、今ここで）　&br;　　&br;（死や、消えゆく未来が、実感と変わったとき。）　&br;　　&br;──千尋、ナナモ、鈴蘭、シア、パッカー、温羅、サニア、ジリアン、カオル、キエル、ジロー&br;──ヴィル、キョウコ、リリル、ルベライト&br;　&br;（みんな、ごめん　と）&br;（なにがそうなのか、わからないまま、つぶやいた）
---&br;「手がかかりましたな」&br;　&br;「そのようなものではない。枢機卿猊下は捕縛を望んでおられるが…」&br;「やはりこのまま始末するべきでしょう」&br;「生かしておけば、後の憂いに繋がります」&br;「そして必ずや災いとなる」&br;「然り。だが猊下に伺うべきでもある。圧縮隔絶した後、帰投することとする」&br;「了解」
---&br;（彼らがその術式を行使しようとした時。リーダーの男が振り返る。）&br;（つられて部下も振り返り、その存在を確認する。）&br;　&br;「貴様…この街で生きている、生き残りではないな」&br;（かの男の声に警戒色が浮かぶ。その視線の先には…）&br;　&br;「相談は終わったか？だがそれは必要などない。貴様らはここで死ぬ」　&br;&br;（澄んだ声。しかし邪悪なる闇のものにとってそれは裁定者の如き声）&br;（その少年の声には、確かに姿以上に力があった）&br;（黒と対し風に靡く灰色のロングジャケット、長襟を立てた面頬）&br;　&br;「貴様！何者だ！」&br;　&br;　&br;「ドーモ、ライトニングです。挨拶せよ、それが礼儀だ外道共。」&br;　&br;　&br;「子供が何の用だ、マルグリットの連れか」　&br;&br;「ただの通りすがりだ」&br;　&br;「だが貴様らは殺す」
-──話を少し戻そう。そう、彼女についての話を。
--彼女は裕福な家庭…いや、政治的に言えば領主の家の人間である。華族にて、華やかな世界の一貴族である。
---そんな彼女は、４年間を１つの区切りとして自分の進路を決めるように洋上学園都市に送られた。&br;その中で、自分の目指すべきものがあれば選べばよいと。父も、母も、妹も見送ってくれた。&br;しかし彼女は選ばない。それが貴族であると、自分がその中にいる、名を継ぐものの義務であることを内にて理解している。
---家を継ぎ、また跡取りとして夫を迎え、社交界に出て…華やかなる世界に、厳しくも美しい世界に身を置くことを決めていた。&br;故に、４年間自由に過ごし。コミックでみたような、夢のような学生生活をおくろうとし、そして成した。
---異能にも目覚めず、華やかな、賑やかな生活だった。彼女はそして、国に帰り。&br;家を継ぎ、義務を果たし、華やかに生きるのだろう。それが望んだ人生であり、与えられた人生。
---&br;──話を少し、横に向けようか。そう、彼女の家について。&br;彼女の家は国境一体を納める領主である。外交政治にて有力な貴族の一人である。&br;彼らは、彼は。いや彼らの国はここ数年大きな懸念材料をかけていた。&br;　&br;──隣国の侵攻。まだいくつかの諸国を経てあったある帝国がその勢力を拡大せんと剣を掲げ始めた。&br;瞬く間に周辺の国は侵略併合され、かの国のいくつか手前まで来ていたのだ。&br;度重なる外交努力と、さらなる周辺諸国からの援助や圧力もあってそれは押し留められた。&br;それが４年前。彼女が洋上学園都市に送られる切っ掛けともなった。&br;４年間、それなら大丈夫だろうと。万が一…再びかの国の侵攻があっても。&br;遠くの国にいる彼女が無事ならば、と。父と母と、彼女の妹は送り出したのだ。
---&br;──また少し話を横に向けよう。&br;かの帝国は熱心な一神教である。それは神との契約である。&br;自らが信じる神以外は神と認めず、それは邪神であると。熱心に、掲げる。&br;故に穏やかな気候にて多神教と、多く緩やかに暮らすかの国は邪神の徒の国であり&br;どうしても攻め込みたくて仕方がなかった。&br;　&br;故に。そのかの国の、外交を強くもつ領主の一人娘が。&br;かの国を離れて一人暮らしているのであれば。&br;&br;当然その命と身柄を狙うものである。
---&br;　&br;───そして今、4月。故郷の国へ彼女が戻る道中の事&br;　&br;馬車が立ち寄った中継点の宿泊街は地獄と化していた。
---&br;　&br;「然り。マルグリッド殿。我々と来ていただきたく。」&br;（黒衣の男が語る。これは、偽装のためであると。）&br;（表向きは貴方だけを狙ったものではなく、野党の狂言と殺戮の一端であると）&br;（故に静かに来ていただきたいと。）&br;　&br;（彼女は静かに理解した。これらの者がかの帝国の手のものであると。故に、このような手段に出たのだと）
---&br;　&br;「お話は伺っております。異能などという虚妄に取りつかれずにお過ごしになられていたようで」&br;　&br;「その御身、ご無事なまま、来ていただきたく思います。」&br;　&br;（そう。彼女は異能という力には目覚めなかった。目覚めなかったし、一度も使わなかった。）&br;（しかし、無力でも非力でもない。）&br;　&br;（──なぜなら彼女は）&br;（4年前洋上学園に入学する前のあの日、同じ宿泊街で老婆を看取ったことにより）&br;（別の力を得ていたのだから）
---「貴方達には屈しません。」&br;　&br;（愚かな。嘲りの声が漏れる）&br;　&br;「私には…この輝きがある」&br;　&br;（偽装光学迷彩が剥がれ、今この場に機械的なフォルムにより生成された槍剣が2本出現する）&br;（いや、まだだ。4本…6本…8本…まだ増える。その数24！）&br;　&br;（バカな、と不足の事態に対する驚き。いや剣がどうした、と）&br;　&br;（そのうち2本を手にとり、彼女は高らかに謳う）&br;　&br;「光が、闇を滅ぼす。その邪悪、消え去りなさい！」&br;　&br;（彼女の力は光。彼女は光　汝は光なりて…闇を切り裂く）&br;（その輝きを以って、光となし、また汝の輝きはいずこかへ消えらむ）