![[PukiWiki]](image/pukiwiki.png "[PukiWiki]")
[[http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst077126.png>設定/ケモノの隠れ地下街]]~ [[書き手はこっち>設定/ケモノの隠れ地下街]]~ ~ ''Q.何ココ？''~ ''A.テスト企画。養成校終了後に予定（あくまで予定です）している積層都市企画の、世界観を固める為の極めて独り善がりなＳＳぺぇじです''~ '' 暇潰しにでもどうぞ''~ ~ ~ ''更新履歴＆他に何かあれば''~ #pcomment(積層都市,1,below,reply) ~ ~ http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst077001.png~ ~ #region(&size(18){''ACT.0''};) ~ &size(55){''ACT.0''}; ~ ~ 何時からこんな積み木の様な世界になったのか、今では誰も覚えちゃいない~ 無遠慮な都市開発は人類の生活圏を広げ続け、今では空までが都市構造物で覆われていた~ その結果、国家間の区切りは消失し、何処からが街で何処からがそうでないかなど、行政区の連中でさえ分からない~ ~ 連中はまるで其処が世界の全てと言う様に、行政区（これは富裕層が暮らす高層区にある）に引き篭もり~ 奴等の足元におわす低所得市民には目もくれず、守ってもくれやしない~ 実に呆れた事だが、連中は富裕層と自らの保身の為にしか動きゃしないのだ~ 警察だって高層区にしかありゃしない。下層は犯罪者のメッカ、或いはユートピアと言った所だ~ ~ だから中層区から下層区、最下層のスラムまでは俺達アウトロー、賞金稼ぎの管轄となる~ 今更行政が口出しして来たって、誰も好きにはさせやしない~ ~ 俺達は仕事を放棄したポリスに代わって制定された、民間のシステムに則って仕事をする~ 犯罪の度合い、凶悪さや頻度…その他諸々によって定められた賞金、その値札を首からぶら提げた賞金首を追って~ この無間地獄…「シティ」を飛び回る~ （この街に名前なんか存在しない。唯ひたすらに広大な「シティ」だ）~ ~ この時代、軽〜重の度合いこそあれど、犯罪者に人権は無い。あるのは高いか安いか？ それだけだ~ 生死を問わず、その身柄を然るべき機関に届ければ、俺達の懐は暖まるという訳~ 実にシンプル！ シンプルイズベスト、だ~ ~ 引き渡された後の末路など知った事じゃない。知りたくも無い~ 以前、生きたまま罪人を引渡し、そいつが施設の奥へと消えた時、地獄の底から響く様な悲鳴を聞いた事がある~ その次に聞こえて来たのは歯医者でお馴染み、あの胸糞悪い掘削機の軽快な回転音~ ヤツがどうなったかなど、想像だにしたくない~ 引渡し先（通称"ミートポスト"！ 中々皮肉が利いてるだろ？）の周辺に~ 今時珍しい、本物の肉を使ったファストフード店が目立つのはきっと何かの冗談だろう~ ~ ~ さて、今日も胸糞悪いクソ仕事の時間がやって来る~ せめて気分だけでもマシにしようと空を…~ 中層区から上層区……肥え太った金持ち共の住処を仰ぎ見れば、構造物の隙間からくすんだ色の空が見える~ 澄み渡った青い空さえ、今では富裕層が独り占めする有様だ~ ~ 結果、気分は晴れず。何時も通り、自宅の窓から天へと唾を吐き掛け、上天にまします富裕層共の住処に中指を突き立て~ Fu○k you! 盛大に吐き捨てる~ ~ 富裕層区の床下を突き破り、青空へと神々しく聳え立つファックサイン！~ 俺の脳裏をそんな妄想が通り抜けて行く。悪くない気分だ~ ~ ~ お気に入りの深緑のコートを引っ掛け、俺は街へと繰り出す~ 俺は賞金稼ぎ。明日をも知れぬアウトロー~ そして…中層区に住む人畜無害な一市民だ~ ~ ~ #endregion #region(&size(18){''ACT.1''};) ~ &size(55){''ACT.1''}; ~ ~ 別に神に用がある訳じゃない。だが俺は今、教会に来ている~ 場所は中層区と下層区の境目辺り。神に縋りたい連中なら五万といるエリアだ~ ~ 今日は丁度日曜日だったらしい~ 何時もは閑散としたこの教会も、この時代まで生き残った希少種、敬虔なクリスチャン達で溢れ返っている~ 俺はその子羊達の群れに身を投じ、隅の席を宛がわれて、耳が馬鹿になりそうな聖歌の合唱に閉口していた~ ご丁寧に俺にまで歌詞カードが配られたが、周りが歌に夢中になっている間に、隅っこに投げ捨てた~ 別に神など信じちゃいない俺には不必要な代物だ。それに、欲しい物は別にある~ ~ 子羊達の歌に合わせて、捨てた筈の歌詞カードの詞と聖人達のホログラフが頭上を飛び交う~ 名前も聞いた事も無い聖人が混じっているのは、長い年月の間に脚色が進んだからだろう~ 中にはサイボーグの聖人の姿すら見受けられる。キリストの復活は随分と身近な時代の出来事だったらしい~ ~ 彼等は一様に皆を見回し、気味が悪い程温和な笑みを浮かべる。何時でも皆を見守っている、などとでも言いた気に~ だが、真に彼等の助けと見守りを受けたい者達には、その微笑は届かないのだろう~ 本当に苦しい奴は、こんな所で暢気に歌っていられる場合じゃあない筈だ~ ~ そんな事などお構い無しに、ホログラムは気味の悪い笑みを続け、やがて皆にキリストの肉…パンを振舞い始める~ 勿論、パンもホログラムだ。誰も触れられないのだが、皆有り難がって、それを受け取る仕草。無神論者には酷く滑稽な光景だろう~ やがて俺の番。馬小屋生まれの長髪優男は、その細い腕を俺に差し出す。俺は笑顔でそれを払い除ける~ 勿論、触れる事などできないのだが…俺が欲しいのはソレじゃないんだ、兄ィちゃん~ ~ ~ 歌、牧師の談話、そしてもう一度歌と酷く退屈な時間を過ごし、子羊達は散り散りに帰路へとついて行く~ 処でようやく俺の時間がやって来た~ ~ 俺は人も疎らとなった堂内を進み、奥の懺悔室の扉を開く~ まるでトイレの個室だ。出す物も大体似通っている。だが今出すのは俺じゃなく神父の方だ~ 扉を閉め、大便器…もとい、唯一の調度である椅子に腰掛け、教会の主がやって来るのを待つ~ 暫くして誰かが反対側の個室に入り、俺に促す。子羊よ、汝の罪をなんとかかんとか。お定まりの文句だ~ ~ 「そうだな…火、貸してくれ」~ カタリ、音がして、個室同士を区切る壁に設けられた小窓が開く~ 小窓越しに、白髪の初老の男が、煙草を咥えた俺を覗き込んだ~ ~ 「お前か」~ 小窓が閉じられて、その向こうから凡そ神父らしくない言葉。どちらかといえば、この態度の方が神父の本来か~ ~ 「何が欲しい。手短にな」~ 「情報。それから、火」~ 二度目の要求にようやく（些か乱暴ではあるが）ライターが投げ込まれ、ついで、小窓から端子付きのコードが垂れ下がった~ 俺はそれを引っ掴み、首筋のジャックへと差し込む~ このご時世、そして仕事柄珍しく、体の殆どが生身の俺だが、脳だけは弄らざるを得なかった。昨今、電脳が使えなくては少々生き辛い~ ~ 視界に僅かにノイズが走り、続いて接続確認中の文字~ 咥えた煙草には、視界がデジタルの海に没する前に火を付けた~ ~ ~ この神父は神の家を預かる者であると同時に、いわゆる「情報屋」を兼ねている~ 彼の元には、子羊達からの様々な悩み事や相談が殺到するが、その中から選り分けて、賞金稼ぎに必要そうな情報を売っている訳~ 彼曰く、賞金稼ぎ達にも道を指し示してやっている、のだそうだ~ ~ 「王剤、と言う物を知っているか？」~ 神父が垂れ流す情報を整理し、脳の記憶領域に必要な情報を保存して行く~ 殆どが興味を引かない、或いは仕事に直接関係の無さそうな情報だった為に、右から左へと聞き流していたが、その単語だけはどうにも引っかかった~ ~ 「洗剤がどうしたって？」~ 気が付くと、咥えていた煙草が酷く短くなっている。慌ててそいつを指で揉み消す~ ~ 「ワン剤だ。ワンは異国語でキングの意味だ。そういう薬がある。 ヤクザ者の間で高価で取引される幻の薬だそうだ」~ 「薬か。宜しくないねぇ」~ 二本目の煙草を咥え、火を付けながら、俺は興味なさ気に呟いた~ ~ 「お前の"栄養剤"も大概だと思うがね」~ 「神父様らしくお説教かい？」~ 神父の言う栄養剤とは、俺が常用する一種の増強剤の事だ。通称「ホットロード」~ 一度打てば筋肉に作用し、筋密度と強度を瞬間的に増強する薬だ~ 義体化せず、生身でこの仕事を行う俺には、銃以上の必需品。故に、報酬の大半はコイツを仕入れる為に消えて行く~ ~ 「悪いがその薬は聞いた事も見た事も無いね。入用なのか？」~ 「神に仕える私がか？」~ 小窓越しに聞こえる苦笑。確かに、素面で神の声を聞く神父には必要の無い代物か~ ジャックを引き抜き、接続を解除すると、小窓の淵に丸めた紙片を一束置く。今回の情報ならこの程度の額が妥当だろう~ ~ 「どーも。ご馳走さん」~ 我ながら、まるでレストランでランチでも済ませたかの様な台詞~ それに対して、神の加護あれ、と、あくまで神父としての返答。生真面目な奴だ~ ~ 受け取った情報を脳内で再び整理しながら教会を後にする~ 情報と賞金首リストとを照らし合わせ、ターゲットを絞り込む~ 目星を付けた所で、背後から午後を知らせる教会の鐘の音が響く。何でもかんでもデジタルな時代にあって、酷くアナログで確かな音色~ ~ 今頃、午後の祈りが始まる頃合だが、賞金首に対する祈りは無い~ ~ 俺は足早に下層区を目指す。闇が近付く~ 僅かばかりの日の光も届かない下層区では、切れかけた街灯が激しく明滅していた~ 明滅の中を這い回る生気を失った住人達は、まるでストップモーションアニメーションの様~ ~ 古びたコマ撮りアニメの世界に足を踏み入れた俺は、さながら冒険活劇の主人公だ~ コマごとに切り取られながら、層の先を目指す。此処はクリミナルの香りで満ちている…~ ~ #endregion #region(&size(18){''ACT.2''};) ~ &size(55){''ACT.2''}; ~ ~ 俺は何をしてたんだっけ？~ 目を回しそうな強烈な悪臭に目を覚ます。俺はゴミの山に身を横たえている~ 正面には拳を打ち合わせながら向かって来る、まるでブリキの樵見たいな、古式ゆかしいサイボーグ~ 一体全体、何がどうなってこうなった？ はっきりしない頭を振るい、アイ・リメンバー~ 俺は確か、賞金首を捜して……~ ~ ~ ~ 最下層のスラムに足を踏み入れると、懐かしいすえた匂いが俺を出迎える~ 故郷の忌々しい芳香。吐き気を催す~ ~ 俺は此処で産まれ、そして捨てられた。覚えちゃいないが、そういう事らしい~ ~ 捨てられ、ゴミ山の中で泣き通しの俺を拾ったのは、なんと、オツムのイカレた介護ロボットだ~ イカレたサーキットは、乳幼児の俺を要介護の御高齢と勘違いしたらしい~ そいつがジャンクになり果て、俺が気紛れな児童養護施設に引き取られるまでの間、あらゆる物から俺を守り続けてくれた訳だ~ 正常な判断を下せないそいつが、ナニを食わせて俺を生かせ続けたのかは知りたくも無いが~ ~ その話を聞いて以来、電化製品には優しくする事に決めている~ 調子が悪くなったって殴ったりしない。本当だ~ ~ ~ 胸の悪くなる郷愁をかなぐり捨て、先へと進む。此処の複雑さと言ったら迷宮並みだ~ 中層区、高層区だってかなりの入り組み具合だが、此処はそれ以上の複雑さと深みを持っている~ その複雑さを産んでいるのが、都市構造物に腫れ物の様に張り付いているバラックだ~ 下層区は家を持てない住人が殆どであるから、殆どの住人が壁伝いに｢巣」を作り上げている計算になる~ それが本来の都市構造にない複雑さを産み、一種のダンジョンを形成している…多くの魔物（賞金首がそれに当たる）が住まうダンジョンだ~ さながら俺はドラゴンを探すスレイヤー。松明片手にダンジョンに挑み、ドラゴンを前にこう叫ぶのだ~ ~ ドラゴンよ、姫を返せ！~ ~ ~ さて、此処からが面倒な仕事だ。教会から得た情報を引き出しながら、迷宮を彷徨う~ 唯でさえ入り組んだこの地下迷宮から、特定の賞金首を探し出す事は並大抵の苦労ではない~ 恐ろしく骨の折れる作業。出来る事ならパスしたい所だ~ しかしそうも言っていられない。何しろこっちも生活が掛かっている~ 見付けられなきゃ、明日にもこのダンジョンの複雑さに手を貸す事になるだろう~ ~ ~ しかしまぁ、今回は運が良かった様だ。或いは、珍しく日曜に教会に行ったお陰か？~ 運良く、現行犯にお目に掛かれた~ ~ 複雑なバラックの合間を抜け、路地から路地へと渡り歩く最中、くぐもった声が、一等暗い路地から聞こえた気がした~ 足を止め、通り過ぎかけた路地へとバックし、覗き込む。何かが蠢く…ドラゴンだ~ ~ 不恰好なブリキのドラゴンは、半脱ぎ（いや、唯でさえ襤褸切れの様な服を更に引き裂かれて全裸と言って良い）の姫に覆い被さり、今、正に腰を振らんとしていた~ まぁ、誰がどう見たってレイプだな~ ~ 可哀想に、姫のツラには2、3発殴られたらしい痕がある。ブリキの拳はさぞ痛かったろう~ そして彼女の股座には、赤黒く汚らしい肉棒が押し付けられている~ 野郎、其処だけは生身のままらしい。ブリキの体に生身のマイ・サン。笑えるぜ~ ~ 「もしもし。御取り込み中申し訳ありませんが」~ 壁に手をつき、体を凭せながら、至極丁寧な口調で声をかけた~ 同時に電脳にアクセスし、ブリキっ面と賞金首リストを照らし合わせる~ ビンゴ。殺人強盗強姦と、中々バラエティに富んだ成績。そこそこの獲物。今夜のディナーに決定だ~ ~ ブリキっ面は酷く間抜けな姿勢で俺を見上げる。同時に、ヤツの下に組み敷かれた姫も俺を見上げる~ 殴られた際の内出血で赤くなった瞳と視線が合う。自身の下着で口を塞がれてはいたものの、涙の滲んだ瞳は、口よりも雄弁に語りかけて来る~ 助けて、と~ ~ 意外にも真っ先に逃げ出したのはブリキの方だった~ ヤツの形からは信じられない程の身軽さで姫から飛び降りると、一目散に路地の奥へと駆けて行く~ 少々気が引けたが、姫を置いたまま俺も後に続く~ 走りながら銃を抜き、セフティを解除する。大分古いモデルの４５口径、オートマチック~ サイバネ野郎の闊歩するこの時代には、少しばかり不安の残る代物だ~ 近代の優秀な銃は幾らでもあるが、俺は何故かコイツを気に入っていた。何時だってポケットの中に忍ばせている~ ~ ~ ブリキ野郎はバラックをその身で粉砕しながら強引に進んで行く~ 俺も負けじと後を追う。追う俺の頭に、ヤツが粉砕したバラックの破片が降り注ぐ~ ~ 狭い路地、バラックの集った集落。そして壁を走る無数の配管が、視界の隅を流れて行く…と、ヤツが突然つんのめった~ 派手にすっ転び、数ｍは転がっただろう。どうやら配管に足を引っ掛けたらしい~ 俺は銃を片手に、地面に転がったヤツにゆっくりと近付き…~ ~ 「観念しなブリキ頭。脳味噌が零れるぜ」~ ヤツのドタマを照準しながら一言。最高に決まったと思ったね~ ~ 飛び起きながらの右フック。泡食って半身を引いたのが功を奏した。ヤツのブリキの拳が俺の顎を掠める~ お陰で大分照準がずれたが、1、2発と発砲~ 弾はヤツの胸に二発とも命中したが、コキンと情け無い音を立てて弾け飛ぶ~ ~ 続けて発砲するより早く、ヤツのトーキックが俺の腹を捕らえた。引き金は引いたが、弾はあらぬ方向にすっ飛んで行く。ついでに俺自身も~ ~ 吐瀉物をぶち撒けながら、ヤツがすっ転んだのと同じ距離を蹴り飛ばされ、ゴミの山にホール・イン・ワン~ 間抜けなブリキっ面でもサイボーグはサイボーグ。力は常人の数倍だ。幸い、内蔵も骨もやられていない様だが、一瞬気を失った~ ~ ~ ……で、この情況な訳だ。ようやく意識がはっきりした~ ヤツは拳を打ち鳴らしながら向かって来る。ゆっくりと~ ~ 「今更、罪の一つ増えた所で大して変わりゃしねぇよなぁ？」~ 同意を求める様に、やや電子音声混じりの声で言う。どうやら発声器もポンコツらしい~ ~ バカタレ、二つだ。今さっきレイプ寸前だったろうが~ 内心毒付きながら、ふと、さっきの姫を思い出す。あの格好じゃあ別のヤツに犯されててもおかしくは無いが…上手く逃げられたろうか？~ ~ 他人を思うのも一瞬の事。今は自分自身が大ピンチだ。ゴミに身を凭せたまま、俺はコートのポケットを弄る~ 余計な物ばかりが指先に触れ、その都度、そいつを何処かに寄せる~ 煙草…こいつは違う。ライター？ こいつも違う。こいつは…来る途中でポケットにねじ込まれたピンクチラシ。用は無い~ そしてこいつは…あった。コレだ~ ~ 指先に触れたのは、テープを巻いたマガジン一つと簡易注射器の束一つ。先ずは注射器一つを束から毟って引っ張り出した~ ~ そいつを適当な所に叩き付ける様に刺し込む。鋭い痛み~ 刺し込むと同時に、注射器の腹にあるボタンを押し込んだ。内包された液体が一気に注入される~ ~ 途端、ビキビキ、ミシミシと音が聞えそうな程の勢いで筋肉が強張る。急激にマッシヴになって行く感覚~ 尤も、外見に特別な変化は見られないのだが…実際は薬の影響で、皮膚の下で急激に筋肉が増強されている筈~ 「ホットロード」。高価な"栄養剤"の作用は急激だ~ ~ 気分はコミックのミュータントヒーロー！ 女性を助け、悪を挫く~ ~ 体の準備が整えば、続いてマガジンに施されたテープを毟る。このマガジンも特別製だ~ 残弾があるのも構わずに、マガジンを放り捨て、チャンバーからも弾を追い出す。続いてポケットから出したマガジンを装填し、スライドを引いた~ ~ 特別製の弾がチャンバーに送り込まれ、早く貫いて、とその尻をくねらす~ 逸る弾を宥めながら、俺はブリキ野郎を照準する。ベイビィ、今くれてやるぜ~ ~ 引き金が落ち、撃鉄が弾の尻を叩く。スパンキング好みのビッチは一発で昇天し、馬鹿でかいマズルフラッシュを放ち、爆発的な勢いでブリキ野郎へと突っ込んで行く~ ビッチの重いストロークを、増強した筋力で押さえ込むと、どうにか弾道は逸れずに済んだ~ ブリキ野郎の頭の辺りで、ゴキン、とすさまじい音と共に膨大な火花が散った~ ~ 最初の数発とは比べ物にならない威力。貫通こそしなかったものの、哀れ、ブリキ頭は醜く凹んでいた~ ~ このビッチはいわゆる強装弾と言うヤツだ。炸薬を大幅に増量し、殺傷力を高めた代物。射撃手は元より、銃本体への負荷も大きいからお勧めできる装備じゃあない~ ~ 頭部を凹まされたブリキはよろけながら、信じられない、とでも言う様な表情（尤も、ヤツのツラに表情が作れたら、だが）を浮かべた。その間抜け面に、歩きながら続けて数発~ ~ 今度はボディにヒットした。胸部がベコベコに凹み、ショートしたパーツが火花を散らす。後一息~ ~ 至近距離から頭に一発。流石に貫通した。弾痕から派手な黒煙を吹き上げ、ブリキは仰向けにぶっ倒れる~ ~ 意外と頑丈だったらしい。もう一度ヤツは起き上がったが、今度はその顎を、銃を握ったままの手でぶん殴ってやった。もう起きては来ない。見事なTKO勝ち。判定を待つまでも無い~ ~ ~ 俺が近場に落ちていた鉄パイプと、まだ効いている増強効果を駆使してヤツの首（賞金首を持って帰らにゃ意味が無い）と格闘している時、さっきの姫はやって来た~ ~ 生身のハンターにハナっから期待なんざしていなかったんだろう~ 俺の死体でもあると思ったか、酷く怯えながら、恐る恐る試合が行われたリングを覗き込む~ ~ 「よぉ、お姫さん」~ 俺はヤツの体をバラしながら陽気に声をかける。ミシリ、ヤツの首がようやく外れた~ ~ 「ドラゴンはもういない」~ 外したブリキ頭をぶら提げて、額の汗を拭いながら言う。ゴミ臭さ、ついでにコイツの油の匂いで最悪だ~ だが、救世の騎士の台詞としちゃ上出来だ~ ~ ~ ~ ~ ブリキ頭をミートポストに引渡し、ようやく一息付く事ができた~ 俺は受け取ったばかりの紙の束をポケットに捻じ込み、近場のファストフード店へと足を運ぶ~ ホットロードには副作用があって、酷い筋肉痛、そして運動による過剰なカロリー消費とがある…つまり、物凄ぇ腹が減る訳だ~ ~ 筋肉痛できしみ始めた体を引き摺りながら、テイクアウトしたハンバーガーに道すがら齧り付く~ 熱々のミートパテから、口から溢れ出んばかりの肉汁が染み出る。口じゅうに広がる、合成でない、本物の肉の濃厚な風味~ この際何の肉だって構わねぇ。この瞬間が全てだ~ 噛む度に溢れ出る肉汁を、パンと一緒に飲み下す~ ~ 疲れた体に染み渡る栄養素が、一種の幻覚作用を齎す~ 俺の視覚は上層区をぶち抜け、厚い科学スモッグを掻き別けて、青空へ…。今なら、あの馬小屋生まれの優男だって信じられる気がした~ ~ あぁ、世に平穏のあらん事を！~ ~ 流行の新興宗教の連中が口々に呟く一説を思い出し、ぽつり、呟いてみた~ ~ ~ #endregion #region(&size(18){''ACT.3''};) ~ &size(55){''ACT.3''}; ~ ~ 誰しも不幸になる為に産まれて来るんじゃない~ だが、大抵は生れ落ちた瞬間、何処に生れ落ちたかで、そいつの人生がどんな物になるか想像がついちまう~ 稀に其処から這い上がる奴もいるが、大抵は産み落とされた場所で一生を終える~ どれだけ足掻こうが、途方も無い長い年月の間に作り出された身分の隔たり、そいつを越える事は容易じゃない。位の高い連中がそれを許さないからだ~ この「シティ」では、その隔たりが階層という尤も顕著な形で現れる~ ~ 古いトイレと同じだ~ 一番上が清浄で、後は何処かしらクソ塗れ。流れ落ちるソレに押されて、登る事はできやしない~ 清浄な空気の中、至福のツラでデカいのをやる一番上の連中は、そいつがどんな臭いか知らないだろう~ まして、最後にクソが淀む最下層の臭いなんぞ~ ~ ~ そんなクソ溜まりの中の生活は、自ずと決まって来る訳だ~ 少しでも綺麗な物を持ってる奴から奪い取る。ソレが当たり前~ 多くは上手い事誤魔化して罪を逃れるが…稀にやり過ぎて首にタグが付いちまう奴もいる~ 生粋の犯罪者って訳じゃねえ。唯、少しばかり良い暮らしを夢見ただけだ~ そういう連中を狩るのは流石に気が引けるが…運悪く、俺の目の前にいるソイツは、正しくそういう手合いだった~ ~ ~ ~ ソイツを見付けるのに、大して手間は要らなかった。適当にスラムをうろついていた時、向こうが勝手に逃げ出したのだ~ こいつは何かあると追いかけて、路地の隅へと追い詰める。先は無い~ デッドエンド。行き止まりだ~ ~ 追い詰められて、息を荒げ、なよやかにへたり込むその女は、どう見ても十代後半、普通ならまだ学生って所だった~ ツラを見て、電脳にアクセスし、リストと照会する。アタリ。窃盗や強盗の常習犯だ~ ~ 「えーと？ 観念するしか無さそうだぜ？」~ 何時もの調子で軽口を一つ。俺はどんな形だろうが年齢だろうが、賞金首には容赦しない~ 抜くまでも無さそうだったが、下手すりゃクソ溜まりで生まれたミュータントって事もありうる（生憎冗談じゃない。稀にいるんだ、こいつが）~ 念の為にと愛用の45を抜き放ち、女を照準してゆっくりと近付く~ と、側まで行って、俺はようやくソレに気付いた~ ~ 地面に転々と続く赤い染み。そいつは道しるべの様に、女の足元へと続いている。見れば、抑えた横っ腹から夥しい出血~ 多分、銃創だ~ ~ 「撃たれたのか？」~ 銃を構えたまま、女の顔色を窺う。涙すら浮かべちゃいない。女は俺を睨み返す~ ~ 「アンタのお仲間にね」~ 息を荒げながら、怒気を孕んだ一言。おっかねぇ女だ~ ~ 「悪いが治療はしてやれない。言い残す事はあるか？」~ 女の迫力にちびりそうなのを我慢して（冗談だ、本気にするなよ？）、せめてもの情けを一欠けら~ 都市構造物に飲まれちまったTOUYOUじゃ、BUSHIのNASAKEっていうんだっけな？~ ~ 女が口を開き掛けた時、俺の背後で何かが蠢いた~ くるり、振り返り様、銃口をそいつ向ける。背が低い…~ ~ 其処にいたのは、まだ12〜13って所のガキンチョだった。大分走って来たんだろう。息を切らせている~ 口元にはボロ雑巾見たいなマフラーを巻き、後は有り合せのボロ服を重ね着して防寒している~ 日の届かない最下層のスラムは、例え真夏だってかなり冷える~ ~ 「やめろ！乱暴するな!」~ ガキは口元のマフラーをずらし、ハスキーな声でがなり立て、俺の足へと食ってかかる~ が、生憎、欠片も動じない。俺は身動ぎもせずに困った表情を浮かべるしか無かった~ ~ 「お前の子か？」~ 困り果てて女に振る。女はいよいよ苦しそうに呻き~ 「弟」~ とだけ答えた。困る理由がまた増えた。身内の前でバラしちまう訳にも行かない~ ~ 「ねぇ…見逃してくんない？」~ 女は苦しげに身を揺すり、俺を見上げながら言う~ …が、残念ながらそいつは出来ない相談だ。それに例え見逃しても、女の傷じゃ、後１時間も持ちそうに無かった~ ~ 「悪いが…」~ ガキをどうしたモンかと悩んであしらいつつ、それだけ答える。今の所、どっちも脅威にゃなりそうにないから、銃は下げていた~ ~ 「あたしがいなくなったら、弟は一人になっちまう~ 此処でガキが一人で生きるってのがどんな事か、分からない訳じゃないだろ？」~ ああ、良く知ってるとも。一応俺も此処の生まれだからな。だが、答えはノー~ 恐らくはこのガキの為に窃盗を繰り返していたんだろう。こんな所でガキ二人生活するには仕方ない、と言えば仕方ない~ だが似た様な境遇、似た様な賞金首は五万といる。そいつら全員を一々見逃してたら、何時かは俺が同じ立場になっちまう~ ~ 俺の心情を察したか、女は一度口篭る。だが、直ぐに俺の顔を見上げ~ ~ 「…分かった。けど、弟を…弟をお願い~ あたしの代わりに、弟を守って。お願いだよ…」~ そいつは無理だと言いかけて、女に振り返る。視線が触れ合う。青い瞳~ まるで上層区の上に広がる本物の青空の様。こんな地の底で、空を見る機会があるとは~ 俺の信念が揺らぐ~ ~ 「お願いだよ…」~ 息も絶え絶え、もう彼女に残された時間は少ない。その最後の時間を、唯ひたすら、弟を生かす為だけに使っていた~ 俺は瞳を閉じる。数秒置き、再び開く。また、俺の目に空が映る~ ~ 「……分かった」~ 俺は初めて、出来もしない約束をした~ ~ ~ ~ 女の希望通りガキを一度遠ざけると、俺は女の眉間に銃を付き付ける~ 覚悟は良いか？ そう問い掛けるが返事は無い。唯、間隔の長い呼吸が聞えて来るだけだ~ 多分、俺の声ももう届いていないだろう。時間が近い~ 俺は少しでも早く苦しみが終わる様、手伝ってやるだけだ~ ~ 声が届かないなら、と、指を三本立て、女の顔の前へ。一呼吸置いて二本に。もう一呼吸置いて一本に…~ 女は静かに瞳を閉じる。高らかに銃声が響く~ ~ 一瞬、青空に鳥が飛び立つ様が見えた気がした~ ~ ~ ~ ~ 女の亡骸を中層区のミートポストに引渡し、幾許かの報酬をポケットに、施設の外へ出る~ 余り良い気分じゃ無いが、この仕事はそういうモンさ、そう自分を納得させ、施設前の階段を下る~ と、見覚えのある背中が段差の隅に座っていた。あの女の弟だ~ ~ 「付いて来たのか？」~ その背中に声をかけるが、返事は返って来ない。唯其処に座ったままだ~ 当然か。そう一人ごちながら、俺はその隣に腰掛けた~ ~ 「姉ちゃんを届けて来たの？」~ ~ ストレートな言葉が、思いの他突き刺さる。賞金首であれ、ガキの身内を奪った事に変わりは無い~ そして、女との約束も守るつもりが無いだけに、余計に胸が痛んだ~ ~ 「ああ。これが君の姉ちゃんだ」~ 報酬を引っ張り出し、枚数を数え、半分と少し、ガキのポケットに捻じ込んだ~ ~ 「大事に使え。それから、何かあったら此処を頼れ。保障はできんが、何とかしてくれる」~ 約束を守れない罪悪感か？ 俺はあの教会のアドレスを書いてガキに手渡す~ 情報屋なんてらしくない事もしているが、一応、神の家だ。迷える子羊には何かしてくれる筈~ ~ じゃあ、元気でな。そう言い残し、ガキの隣から立ち去る。これ以上の深入りは、きっと俺自身にも良くないだろう~ 俺は明日をも知れぬアウトロー。賞金首には容赦しないバウンティハンター。それで良いじゃないか~ ~ ~ やや後髪を引かれながらも先へ進み、そろそろガキも見えなくなるかと言う頃合で、一発、銃声が響いた~ 驚いて振り向く。遠目に、スローモーションの様にガキが倒れて行くのが見えた~ その直ぐ側を、ガキとそう歳も変わらなさそうな誰かが、硝煙を燻らす銃と紙束を手に走り去る~ 強盗殺人の現行犯。そう遠くない内にアイツもリストに載る事になるだろう~ その時狩るのは俺か？ 別の誰かか？~ ~ あえて追う事もせず、俺は倒れたガキの側へと歩み寄った~ ガキは即死の様だった。夥しい血が、階段を一段、また一段と降りて行く~ 俺は結局、約束も、そして僅かばかりの罪滅ぼしさえできなかった~ 見開かれた青い…あの女と同じ青い瞳が、俺を責める様に見詰めている~ 俺はその瞳の中の空に、上層区を突き抜けて聳え立つ天国への階段を見た気がした~ ~ 階段を登るガキ。その側を、一羽の白い鳥がやかましく喚きたてながら付いて行く…~ ~ まぁ、こっちよりは暮らし易いと思うぜ？~ ガキの瞳を手でそっと閉じながら、そう呟く~ ~ 不意に教会の鐘が鳴る。午後の祈りの時間~ やっぱり賞金首への祈りは無い。無いが…今回だけは特別だ~ ~ 俺は産まれて初めて手を合わせる。祈りの言葉に自信は無いが…~ ~ ~ もしこいつらに次があるなら、少しでも日の当たる所に…~ ~ ~ #endregion #region(&size(18){''ACT.4''};) ~ &size(55){''ACT.4''}; ~ ~ 食事。こいつはあらゆる生物にとって尤も重要な行為だ~ どんな単細胞生物だって、何かしらを食って生きている~ 食う為に生き、生きる為に食う。自然の摂理って奴だ~ 唯食うだけなら犬猫にでも。たが人間様はそいつにも一つオマケして楽しむ事ができる~ ~ 調理して味付けを変えたり、或いはちょっとした余興と一緒に、なんてのもオツなモンだ~ まぁ、何が言いたいかっていうと、食事の時間ってのは幸福でなきゃあならないって事だ~ 分かるよな？~ ~ くっだらねぇ話を飯の間延々聞かされたり、余計な騒ぎに巻き込まれて台無しにされたり…たまったモンじゃねえ~ ~ そう言った意味では、この日の昼食は完全に大失敗だった~ ~ ~ ~ 都市構造物の軒下、僅かなスペースにぎっしりと人々が犇く~ 此処は街のバザールだ~ 野暮ったい屋台の下、食料品からサイボーグのパーツ、弾薬から火器その物まで、ありとあらゆる物を扱っている~ 犇く無数の屋台の中には、調理した料理を振舞う飯屋があるのも当然の事だ~ 俺はその内の一つ、チャイニーズフード店の隅の席に陣取っていた~ ~ 心許ないプラスチック製丸型テーブルを前に、これまたプラスチック製の椅子に腰掛けて、注文した料理が届くのを待つ~ 待ちながら周囲を見渡せば、全席満員御礼。ごった返す人の熱気で、じっとりと汗ばむ~ 店側としちゃこれ以上無い位の掻き入れ時だろう~ ~ たった一人しかいないウェイトレスと、たった一人しかいないシェフがてんてこ舞いで注文を捌いているのが、人ごみの中から時折見える~ こりゃ、俺の番まで暫く掛かりそうだ~ ~ 空腹を堪えながら、バザールの隣の広間に目をやる~ こっちはバザールとうって変わって閑散としているが、広場の中央から聳える4ｍ程の支柱~ そいつから生えた芽キャベツみたいなモニタとスピーカーが、何かをがなり立てていた~ モニタには見慣れない光景が映し出されている…高層ビル群と、燃え盛るビルだった物。遠目にだが、俺にはそう見えた~ ~ この芽キャベツモニタは街の至る所に、まるで雑草か何かの様に生えている~ 主だった番組内容はニュースで、時折有名企業のＣＭ。そして時には賞金首情報も~ 一番後者は有り難い事だが、前者二つは別段どうでも良い事だった~ 何しろ、ニュースでやたら喚き散らすのは、高層区の出来事が主だからだ~ 中層から下層に暮らす俺達には何の関係も無い所か、軽く怒りすら覚える。お前らの事なんざ、知ったこっちゃねぇんだよ~ ~ この日のニュースも案の定、くっだらねぇ高層区の出来事だった~ ~ 「また高層区で何かあったのかね…」~ ようやく俺の元に届いた熱々の塩粥と、合成肉、合成植物を油で炒めた料理に唾液を湧かせながら呟く~ 中々美味そうだ（断っておくが、別に金が無くて質素なメニューを選んだ訳じゃない。節約の為だ。節約の為）~ ~ ついでに、運んで来たウェイトレスの胸元が汗で薄っすら透けていたのも実に良い~ 彼女がブラをしない主義だったのも含めてだ。丸い稜線の先の自己主張が実に食欲を誘う~ 食ってもいないが、ご馳走サン。俺は軽く手を合わせ、使い慣れない箸を取る~ ~ 「そいつぁテロだよ、兄ぃちゃん」~ 合成肉、合成野菜とを粥に載せ、ふうふうと冷ましていた時、俺の呟きに返答があった~ 側で飯を食っていた爺様だ。大皿に盛られた肉料理をぱく付きながら、人懐っこい笑みを俺に向けている~ こいつ…俺より良い物食ってやがる~ ~ 「テロ？ そいつは物騒な」~ 冷えた頃合を見計らって、粥を口内にかきこむ。中まではまだ冷めていなかったらしい~ 畜生、舌が焼ける様だ。熱々の粥の蒸気が喉奥を刺激する~ 俺は咽こみながら、何とか答えた~ しかしまぁ、胸のすく話ではある。普段偉そうにしてやがる、高層区の連中の泣きっ面が目に見える様だ~ ~ 「そうそう。中層区のヤクザもんがかち込み掛けてるってぇ話だよ」~ 今度は背後からの声。粥を啜りながら振り返ると、前歯の抜け落ちた別の爺様が、その隙間から粥を流し込みながら俺を見ている~ どっちを向いても干乾びた爺ばかり。水気の欠片も無い~ まるでサンドイッチだ。パサパサのパンに挟まれるハムの気持ちが良く分かる~ ~ 「そりゃなんでまた？」~ 粥を口に含み、合成肉を放り込んで噛み締める。薄味の粥に、やや濃い味付けの炒め物が良く合う~ ~ 「なんて言ったっけな？ 何でも〜…なんとかっちゅうクスリを奪いあっとるとか」~ ~ 歯抜けの爺さんの言葉に、一瞬どきりとした~ メモリに放り込んですっかり忘れていたワードが、電子の水底から浮上して来る~ クスリ。ヤクザ者が奪い合う。全てのキーワードが、以前教会で得た情報と一致する~ ワードは海面にまで上がると、自然と口から出ていった~ ~ 「王剤…」~ ワン剤。王の薬。ヤクザ者が高価で取引するらしい稀少薬品~ あの後、自分なりに幾らか調べてみたが、結局それ以上の事は分からずじまいだった~ ハンティングする上で何かの役に立つのでは、と思っての事だったが…結局は無駄骨。それで、再びメモリの奥底にしまっていたのだ~ そいつが初めて、俺の前に姿を現す。何者か同士が奪い合っている、という事実と共にだ~ しかも、その舞台が高層区にまで及んでるってのはただ事じゃあない~ ~ 「此処までして奪い合うってなぁ、一体、どんなすげえ薬なんだろうな？」~ 俺の心中を、歯抜けの爺さんが笑顔で代弁する~ 稀少だからってだけじゃあ、流石に此処までの騒ぎには至らないだろう~ とすると、具合が良いのか、はたまたそれ以上の理由が…？~ ~ 涅槃が見える、なんて謳った薬は五万とあったが、そのどいつも対した代物じゃあなかったし（昔は俺も馬鹿やったモンだ）~ 具合が良いってだけでも、奪い合う理由には弱過ぎる~ ~ ~ がしゃりと音がして、俺の思案は地面に無残に散った粥と共に中断された~ どっかの馬鹿が、テーブルごと倒しやがったのだ~ 俺の周囲が一瞬ざわめく~ ~ 箸だけ持って唖然とする俺を他所に、俺の目の前で痴話喧嘩をする男女一組~ 体の所々を機械化した斑サイボーグ野郎と、今時な若い女一人~ 露出が多いのは結構だが、台無しにされた俺の昼食とは吊り合わない~ 野郎の方は問題外だ。むしろマイナス。視界に入るごとに慰謝料払って貰いたい位だ~ ~ 「だから！ アンタはお呼びじゃないってば！」~ 「何がお呼びじゃねぇ？ 彼方此方声かけて回ってたろうが。そういう事なんだろ、え？」~ 拒絶する女と、それに食い下がるブ男。どうやら女の方が野郎に言い寄られて困っているらしい~ 喧嘩しようが殺し合おうが勝手だが、頼む、他所でやってくれ~ 行き場の無い箸を放り投げ、胸中で毒づく~ ~ 「なぁ嬢ちゃん。俺がどういう奴か知ってるだろ？ 悪いこた言わねぇ、言う事聞いておきな」~ ブ男が女の胸倉を掴み、拳骨を握る。機械化され、通常より誇張された拳は、生身の人間にはそれだけで凶器だ~ 野郎は掴んだ胸倉の先、シャツを引っ張られて露になった、胸元のＹ字を下卑た笑みを浮かべながら見詰めている~ ~ 昼食を台無しにされた上、目の前でのくだらねぇやり取り。流石に頭に来た~ 俺はゆっくりと席を立つ~ ~ 「そうね…下品で不細工。それから継ぎ接ぎで…あぁ！ 髪の毛が無いって所かしら？」~ ブ男の質問に、女に代わって、極力女の声色を真似て答えてやる~ ブ男が俺に振り返った。正面から見ると、また更に違った不細工さを発見できた~ ~ 「あんだてめえ。ふざけてんのか？」~ 精一杯のドスを聞かせた野郎の声。おっかなくて小便ちびりそうだ。もうちょっと迫力があったらな~ ~ 「大真面目だ。鏡見た事無いのか？」~ 言い返しながら電脳にアクセスし、賞金首リストから野郎のツラを探す~ 賞金首を追っていない時でもついやっちまう癖だ。職業病という奴~ このハゲた継ぎ接ぎ不細工野郎の面は、残念ながら賞金首リストには載っていなかった~ 代わりに、バウンティハンター登録の方で同じ面を見る事ができた。つまりは同業者って訳だ~ 成績は中の下。大したハンターじゃない~ ~ 「…てめえ、痛い目見なきゃ分からねぇか？」~ 俺の言葉に女が噴出す。野郎はハゲ頭に青筋浮かべ、握り拳を俺に向ける~ 真っ赤になって筋を浮かべる野郎のハゲ頭はまるで男の…いや、止めとこう~ ~ 俺はポケットの中で簡易注射器を使う。仕事以外で使うのは主義じゃないが、昼食を台無しにしてくれた代償は必要だ~ ~ 体が強張り、筋力が増強されて行く感覚。俺はミュータント・ヒーロー。サイボーグだって殴り倒す~ ~ 「俺様の拳骨は痛ぇぞ？ なんてったって、俺はハンターの…」~ 野郎が粋がって何かを言い掛けた時、俺の右拳が奴の頬にめり込んだ~ 野郎の醜い面が更に醜く歪む~ そのまま振り抜くと、ホームラン、機械化で100�圓榔曚┐討い襪任△蹐μ醢困梁里蓮�2〜3ｍは転がって行った~ ~ 「ミスター・ベースボールヘッド？ 打たれるのがお仕事か」~ 起き上がる気配は無いが、幸い殺しちゃいない様だ~ こんな事で俺自身が賞金首にされちゃたまったモンじゃない~ ~ 「良いパンチね。プロボクサー？」~ ぱちぱち、と小さな拍手。あのブ男に恫喝されていた女が俺に言う~ 野郎に引っ張られてよれたシャツとジャケット~ ギリギリまでズリ下げた小さめのホットパンツが中々にセクシーだが、全体的に子供っぽさが残る印象。多分俺よりずっと若いだろう~ ~ 「いいや。運動は苦手でね」~ 「ありがとう、ミスタ？ 何かお礼をしたいんだけど…」~ そう言って言葉を詰まらせる女に、俺は肩を竦め、倒壊したテーブルと、無残に散らばった昼食の殺害現場を示した~ 「昼飯を返してくれ」~ ~ 「あぁ…ごめんなさい。あの人、周り見てなかったのよね」~ 「奴とはどういう関係だ？」~ 「見ての通り。絡まれたの」~ 「確かにベースボールと君じゃ釣り合わないな…失礼」~ 騒ぎを聞いて駆けつけた例のウェイトレスに事情を話し、幾らか多めに代金を支払う~ 破壊されたテーブルと、割れた食器の分…それから彼女の素敵な胸元への敬意だ~ 支払いの際、もう一度見させて戴いた…幸い、彼女は視線に気付きもしなかった~ ~ 「ねぇ。もし良かったら、今夜の夕食、奢らせて貰えない？ 昼食のお詫び」~ 支払いを終えて立ち去ろうとする俺を、さっきの女が誘う。まぁ、悪い話でもないが…~ ~ 「構わないが…大した額じゃない」~ 「ファイトマネーも兼ねて、ならどう？ 良いわね、決まり！~ 18時にダブステップ・アベニューに来て！ 私まだ忙しいからこれで」~ 「あ、おい、ちょっと…」~ 半ば一方的に約束を押し付けられ、困惑気味の俺を他所に、女はひらひら手を振って、風に乗った凧みたいにさっさと歩き去る~ 去り際、まだ寝っ転がったままのハゲに一蹴り入れて行く。中々アグレッシヴな女だ。嫌いじゃない~ ~ ~ ~ 約束の18時。ダブステップ・アベニューで再会した俺達は、ここいらじゃ割と高級な部類の店で食事をした~ 彼女は若い女にありがちな、媚びた態度で高級品を奢らせたり…なんてマネはしない~ 余りに高価な食事だった為に、若い女の財布にゃ厳しかろうと半分払おうとした俺を制し~ ぽんと丸々二人分、レジに付き付けた様は、宛ら救済の手を差し伸べる女神の様。勿論、俺の財布への救済だが~ ~ その後は夜の市街を適当にぶらついて、そのまま流れでホテルへとしけ込んだ~ まぁ、良くある話だ。流石にホテルまでスイートとは行かず、ボロい安ホテルの手狭な部屋だったが、何、ベッドが一つあれば足りる話だ~ ~ 俺達はそこで一晩明かす。詳細を知ろうってのは野暮な話だ。その時の仔細は想像に任せる~ ~ 明方、腕枕で横になる彼女に、俺がバウンティーハンターである事を明かすと、彼女は面白い話を聞かせてくれた~ ~ 「…都合の良い話だな」~ ベッドから半身を起こし、煙草に火を付ける。数度吹かすと灰がベッドの上に落ちたが、安ホテルの安っちいシーツだ。気にしない~ ~ 「ごめんなさい」~ ベッドに横になってシーツを被ったままの彼女が、しおらしく謝罪する~ 俺は彼女の髪に触れ、上から下へと指先を滑らす。若い艶の有る頭髪は、指通りと手触りが良い~ ~ 「君の事じゃない。上の連中だ…普段はゴミ屑以下の扱いの癖に、こういう時だけは俺達を頼るんだな」~ 俺は彼女に聞かされた話を反芻する。中々驚くべき内容だった~ 要約すると、高層区の連中が、俺達、中〜下層区のハンターに依頼を出したと言うのだ~ その内容は、昨今、高層区で多発するテロに対する警戒と、警備の増員。そして可能ならば、テロリストの全面排除…との事らしい~ 彼女はその依頼を伝える先遣隊の一人で、ハンターへ情報を提供するミートポストへ向かう前に、一人で勧誘して回っていたらしい~ その途上で、あのハゲ頭のサイボーグに絡まれたという訳だ~ ~ そしてもう一つ…彼女が中層区生まれで高層区に暮らしているというのも驚いた事の一つだ~ 普通は中々無い話だ。高層区の連中は、比較的身分の近い中層区の人間ですら、蛇蝎の如く嫌っている~ 故に高層区と中層区を隔てる壁は硬く閉じられ、普段は行き来する事すら許されない~ 稀に、賞金首を追ったハンターが入区を許される事もあるが…特例中の特例だ~ ~ 「けど、悪い話じゃないでしょ？ 勿論、報酬だって出るわ」~ 煙草を燻らせながら、俺は暫し悩む。確かに悪い話じゃないのだが…~ 何か、裏がある様に思えて仕方なかった~ ~ 考え込む俺の視界に、半開きになったカーテンの隙間から、朝日ならぬ朝の照明の光が差し込んで来る~ 中層区は所々本物の空が見えるが、朝日が差し込むのはほんの一部だけの話だ~ 殆どは都市構造物に阻まれて、雲すらお目にかかる事が出来ない~ こいつが暫くの間、本物の朝日になるって言うのも悪くない~ ~ 「…分かったよ。だけど君同伴だ。良いな？ …名前は？」~ 「勿論！ 案内してあげる。私はアンジー。暫くの間、宜しくね」~ 快諾…とは言い難かったが、依頼を引き受けた俺の頬に、アンジーの唇が触れた~ 俺も安い男だな…内心苦笑し、煙草を灰皿に押し付ける~ 歪んだ煙草と崩れた灰。こいつがこの先の未来を予見していない事を祈りつつ、ベッドから降りてカーテンを開ける~ 良い天気…もとい、良い照明だ~ 気の早い住民達が、既に忙しなく働き始めているのが見える。ご苦労なこった~ ~ ~ アンジー同伴の高層区旅行。何泊になるか分からんが、中々エキサイティングな日々を過ごせそうだ~ ~ ~ ~ #endregion #region(&size(18){''ACT.5''};) ~ ~ &size(55){''ACT.5''}; ~ ~ 空に焦がれるのは特別な事じゃない~ この「シティ」に、中層から下層区に暮らす人間なら誰しも、分厚い都市構造物の先に広がっているだろう空に憧れを持つ~ 特に、最下層のスラムに住む連中の思いはひとしおだろう。彼等は事によっては一生涯、空を見る事は無いのだから~ ~ 幸い、幼少期の俺は、スラム生まれにして、早い段階で空に出会う事ができた~ 例の介護ロボットに守られた俺を、児童養護施設の職員が見付け、引き取ってからの事だ~ 施設は中層区の外れにあった~ ~ 俺は毎日、唯一人、庭で遊ぶ~ 友達なんて一人もいない。俺は何時だって孤独だった~ 親のいない孤独は皆一緒だったが、俺はどうにも施設に馴染めなかったのだ~ 物心付く前とはいえ、後から入った新入りだったからなのかも知れない~ 或いはこの時既に、アウトローに生きる運命でも背負っていたのか…なんてのは格好付け過ぎか~ ~ ある時、俺は施設の庭を抜け出す。何時だって一人の俺に注意を向ける者など誰もいない~ 脱走は容易だった。初めての冒険に胸が躍る~ ~ まだ午前の照明が輝く明るい時間。施設を背に、誰も使わない裏路地を、キャットウォークを渡って行く~ 気分はインディアナ・ジョーンズ。古い映画のテーマソングが胸に響く~ ~ 短い冒険を経て、冒険者がたどり着いたのは奇妙な空間だった~ 誰も使わない古い区画だけに、殆どの照明は最低限で薄暗い。それなのに、其処だけはまるでスポットライトが当たっているかの様に明るかった~ ~ 奇妙な明かりに照らされる其処には、古びた機械と配管が、まるで玉座の様に鎮座していた~ 玉座はその身を侵食する植物に覆われ、降り注ぐ光に、緑色に輝いている。幻想的と言える光景だ~ その緑の玉座に恐る恐る腰掛けた俺は、光の正体を確かめるべく、ゆっくりと見上げる~ ~ 其処にあったのは、都市構造物で四角く切り取られた青。鮮烈な青色だった~ ~ きっと酷く間抜けな表情をしていたんだろうな、俺は~ その間抜けっ面を浮かべたまま、俺は届く筈の内青に、生まれて初めて見る空に手を伸ばす…~ ~ 途端、遠くの空を何かが横切る。遠目にだがはっきり分かる。白く、大きな鳥だ~ 鳥はその羽を都市構造物の隙間にできた井戸に落とす~ 羽はひらひらと、ゆっくり時間をかけて舞い降り…空を掴もうと井戸の底で四苦八苦する俺の掌に~ ~ 初めて手にした、本物の鳥の羽~ 幼い俺には、それがまるで、空への道標か、或いは鍵の様に思え…遠い空に透かして、何時までも眺めていた…~ ~ ~ ~ ~ 「おはよう！ 何時まで寝てるの？」~ 若い、元気な声が、ベッドの中でまどろむ俺を揺り起こす。夢を見ていたらしい~ 随分と昔の頃の夢だ。ガキの頃の俺が施設を抜け出し、人生最初の冒険をする夢だ~ そういや目が覚める寸前、何かを掴んだっけ~ 俺はベッドから右手を突き出し、掌を眺める。当然だが、何も握っちゃいない~ ~ 「何か見えるの？」~ 起こしに来たアンジーが隣に寝転び、天井に突き出した掌を不思議そうに眺める~ ~ 「見えるさ。此処が生命線だろ、そんでこっちが…」~ 俺は寝たまま、聞きかじった東洋の神秘の一つ、手相をレクチャーする~ 掌の皺一つで運命が分かっちまうってんだから驚きだ~ しかしアンジーはそんな事には興味無さ気に、俺の隣からさっさと起き上がると、カーテンを全開にする~ 眩しい朝日が、薄暗い部屋の中に満ちて行く~ ~ そう、朝日だ。照明じゃなく、正真正銘、本物の朝日~ ~ 「神秘のレクチャーはあとあと！ 朝ご飯にしましょ？」~ 陽光を背に受け、シルエットになったアンジーが微笑む~ 彼女がその場を退くと、広大に広がった青空と、無数の高層ビル群。そしてその足元を這い回るハイウェイが見えた~ 宛ら、記録映像で見た20〜21世紀辺りの大都市の様。或いはあえてそうしたのか？~ 隙間無く建築物が立ち並んではいるが、中層、下層区程の窮屈さはまるでない~ やはり空の存在が大きい所為か~ ~ 「…あのチケット。とうとう使っちまったらしい」~ 窓越しに空を眺めながら呟く。無意味に握っては開いていた右手から、白い羽が零れ落ちた気がした~ ~ 俺は今、アンジーと共に、この世で尤も空に近い高層区の一角にいる…件の依頼の為に~ ~ ~ 俺とアンジー、その他数十名の依頼を引き受けたハンター達は、中層区から高層区行きの貨物に紛れ、すし詰め状態で搬入された~ まともに入区するルートが使えなかった為だ。どうやら高層区の連中、俺達を雇ったってのは非公式の事らしい~ 下層の手を借りるのは表沙汰にはしたくないってか。何処までも癪に障る連中だ~ ~ ともあれ、どうにか入区した俺達は、隅のうらぶれたホテルに押し込まれ、仕事ができるまでの間、暫しの自由期間を与えられた~ ~ ~ 俺とアンジーは、ベランダのテラスでやや遅めの軽い朝食を取る。朝日が眩しい~ メニューはトースト、ハムエッグ、焙ったソーセージにサラダと果物が少々~ そして忘れちゃならない、食後の珈琲を一杯~ 中層区とそう大差無い質素な朝食だが、澄み渡った青空の下だと段違いだ。こんなに旨い珈琲を飲んだのは生まれて初めてだろう~ カップを掲げ、青空に乾杯。何してるの？ とアンジーに笑われた~ ~ それから俺達は、高層区の街並みを散策した~ 嘗ては地上に…今でいう最下層のスラム辺りにあっただろう、21世紀前後の街並み~ 多分、ニューヨークと呼ばれていた大都市が尤も近い~ その前時代的な街並みを歩きながら、辺りを物珍しげにキョロ付く俺を、まるで子供みたいだとアンジーは笑う~ その通り、俺は答える~ 目に映る全てが真新しく、輝かしい。まるで初めて世界を目にした赤ん坊の頃の様に~ 高層区に来てからの数日間、俺は完全に幼心を取り戻していた~ ~ 幼き日に夢見た世界が、こうして目の前に広がっている…胸躍らない筈はない~ こんな特例でもなきゃ、覗き見る事だってできやしないんだ。少しばかり童心に帰ったって構わんだろう~ 時折街で出会う、明らかに異質な連中…同じ中層、下層区のハンター達も同様に、目を輝かせながら物珍しげに徘徊していたのが印象に残る~ 驚いたぜ。連中にも童心って物が残ってたらしい~ ~ ~ 俺達の雇い主から連絡があったのは、それから二日程過ぎた頃だった~ ~ ~ 対テロ屋って事だったが、驚いた事に、俺達を呼び付けたのは軍隊に相当する組織ではなかった~ 中層区、下層区での仕事を放棄したポリ公共、それが俺達の依頼主~ 警察にもテロ屋に対応する為の部署ってモンがあってもおかしくは無かったが…どうやらそういう手合いとも違う様だった~ ~ いけ好かねぇポリのお偉いさんに、分署の裏手に呼び出された俺達は、形ばかりの長々とした訓辞に辟易してる~ どうしてこう、お偉いさんってのは長話が好きなんだ？ そうは思っても口には出せない~ 唯黙って聞いてるフリ。話が終わるまでは人形の気持ちだ~ ~ 長ったらしく有り難みの欠片も無いクソ話がようやく終わり、やっとの事で仕事の話~ 仕事の前に倒れる奴が出なかったのは不幸中の幸いだな~ ~ ~ ~ #endregion //#region(&size(18){''ACT. ''};) //~ //&size(55){''ACT. ''}; //#endregion RIGHT:http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst077005.png ~ ~ |BGM|[[''Disturbia - Mass Effect''>つべ:DRU-IFx-7yQ]]&br;[[''Noisia ft. Phace - Unveil''>つべ:zrmU_eR6t8s]]|[[''Phace & Noisia - Sore Point''>つべ:uZZhfTM-pas]]&br;[[''Phace - Teufelswerk''>つべ:Mh9LO90oFXo]]|[[''Signs (DNB version NZ GPERS)''>つべ:s1x8zN1t97I&feature]]&br;[[''Garbage - Push It''>つべ:z-CHEnJ7gnc]]|