|#navi(../)| |CENTER:[[http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst041068.png>企画/ゴルロア聖杯戦争/3期]]| *若白髪の元高校教師・牧瀬貴一 397617 [#p96c11f0] //#listbox3(寝ゆ,server,stay2) //#region(聖杯戦争のマスターの一人だった牧瀬貴一について) |>|>|BGCOLOR(#877654):|c |>|>|[[&color(white){''マスター''};>企画/ゴルロア聖杯戦争/3期]]| |BGCOLOR(#eeddaa):|BGCOLOR(#ffeecc):|BGCOLOR(#ffeecc):|c |BGCOLOR(#ffffff):CENTER:朝っぱらからステーキはねぇよ…&br;&br;&ref(http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst060967.png);&br;&br;[[■全身図>ロダ:059535.png]] [[■下書き>ロダ:059330.jpg]]|ID:|397617| |~|役割:|マスター| |~|年齢:|27| |~|性別:|男| |~|前職:|学者(高校教師)| //|~|理由:|#listbox3(やむをえない事情により,server,reason)| //|~|状態:|#listbox3(寝ゆ,server,stay2)| |~|牧瀬貴一の状態|[[ステータス>ステ:397617]]/[[戦歴>戦歴:397617]]| |~|アーチャーの状態(1体目)|[[ステータス>ステ:397687]]/[[戦歴>戦歴:397687]]| |~|アーチャーの状態(2体目)|[[ステータス>ステ:401195]]/[[戦歴>戦歴:401195]]| |~|>|''【設定等】''&br;高校2年・17歳の頃とある異世界を救った経験のある日本人男性。&br;異世界を救った後は元の世界に帰り、高校教師をやっていた。&br;今回も何らかの力で別世界であるここへ飛ばされてきたようだ。&br;本人は凄く帰りたがっている。&br;噂で耳にした聖杯を手に入れもとの世界へ帰ろうとしていたが……&br;&br;・弟みたいな従兄弟がいる。&br;・そのせいか一人っ子の割に兄貴肌な部分がある&br;・[[令呪はこの世界に来たときからもう二の腕に浮かんでた。>ロダ:060382.gif]]&br;(普段はシャツで隠れている)&br;・たまに癖で自分のことを先生と呼称することがある。&br;&br;▼別の異世界での経験一覧&br;・ナルシストなゲイに言い寄られた。&br;・面倒な女に惚れられた&br;・ゲイは殴って返り討ちにした。&br;・面倒な女は半ばストーカー化した。&br;・面倒な女に昏睡姦された。&br;・昏睡してたのでその事に気づいてない。&br;・最終的に世界を救ったことになった。&br;&br;''【外見】''&br;平均的日本人。若白髪。''CV松岡修造。''&br;&br;''【保有スキル】''&br;・魔術C+&br; -分身魔術&召喚術&br;&br;''【武器】''&br;・複製されし救世の聖剣(ワールドセイブコピー)&br;・複製されし氷の魔導器(初期杖コピー)| |''真名:牧瀬貴一(まきせきいち)''|~|~| |''サーヴァント:[[アーチャー>名簿/397687]]''|~|~| |''属性:''中庸・中立|~|~| //#endregion **それはもう終わった物語 [#nb9eb880] //|#pcomment(とある教師の聖杯戦争,1,above,reply)| //-[[とある教師の&Ruby(プロローグ){参戦経緯};>冒険中/397617#ma0ae1f5]] #region(とある教師の&Ruby(プロローグ){参戦経緯};) ***とある教師の参戦経緯(プロローグ) [#ic2b9a97] -「お世話になりました」~ 「ああ、気をつけてね。故郷に帰れることを祈っているよ」~ ~ 以前と同じく異世界に飛ばされた俺は~ 転移した場所がたまたまとある村の近くだった。~ 人のいい村人がしばらく俺を泊めてくれたおかげで~ 落ち着いて状況を整理することも出来た。~ ここはどうも前に訪れた異世界とはまた別の異世界らしい。~ とはいえ、やることはあの時と一緒だ。~ 元の世界に帰るための方法を探す。~ 結局それが世界を左右するような事件に巻き込まれた原因だったわけだが~ まぁそいつはことの成り行き上、仕方なかった。~ 今回は騒動に巻き込まれたくは無ぇけど…気になるのは~ いつの間にか二の腕に現れてた変な紋様。~ #ref(http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst060382.gif,right,around) まさかこいつが次元転移の原因?~ ちっくしょう、なんかマジめんどくせぇことになったな。~ とりあえず旅しながら調べてみるか。~ ~ そうして町から町を渡り歩き、~ ある日立ち寄った町の酒場で妙な話を聞かされた。~ ~ 「旦那、知ってますかい?聖杯って奴」~ 「聖杯?」~ 「手に入れるとなんでも願いが叶うって話の秘宝でさぁ」~ 「へぇ、そんなものあんのか。でもそういう話には大抵裏があるもんだよな?」~ 「お察しのとおりで…。手に入れるためには戦争に勝たなけりゃならないんですよ」~ ~ 英霊を呼び出し戦わせ、最後まで生き残ったものが聖杯を得る、か。~ 眉唾かと思ったが詳しく調べてみればどうも本物くさいな。~ 過去にも何度か行われたようだし。~ しかも令呪。俺の腕に既にあるこれがそうなんじゃ…~ ~ ってわけで早速魔術を使って英霊を呼び出そうとしたけど~ 上手くいかねぇ。つーかなんか魔力を上手く生み出せねえ。~ なんでだ?~ 魔法陣とか描いて俺のバイオリズムにあわせた時間帯で~ 他にも諸々のめっちゃ過度な補助装飾準備してんのに。~ ~ そうだな、こういうときはいつも生徒に言ってるとおり~ 根本から考え直すべきだ。~ ~ 魔力、魔力の根源はマナ。~ マナ、マナは魔力の源泉。~ しかしあの世界とこの世界は違う。~ 法則が違う。魔術の存在は同質でも扱い方が異なる。~ 理解、そう理解が足りない。~ ~ 必要なのは真理。理解すべきは霊的本質。~ そこだけは一緒のはずなんだがなぁ…~ 考え直したところで何の解決にもならねえ…~ ~ ううん、困った困った。~ そもそも今の俺に召喚できる英霊なんているのか?~ できれば超強力な英霊が欲しいところだが…~ 伝説級となるとフェイクでも流石に無理だろうな。~ ~ 仕方なしにさらに情報を集める。具体的には英霊を呼び出す方法。~ そして初めて知った。~ 英霊を呼び出すには、その英霊に縁のあるキーアイテムが必要らしい。~ 参ったな…そんなもん持ってねえぞ俺。~ ~ 「旦那、首尾は順調で?」~ 「行われる場所はわかった。開始日時も。けどダメだ。肝心の英霊召喚が上手くいかねえ。~ 英霊のキーアイテムがねえんだよ」~ 「そんなこったろうと思いましたぜ。そんな旦那に上手い話があるんでさ」~ 「……まさかあんのか?」~ 「へへ、こいつはなんでもかなり強力な魔物の死体から抜き出された奴らしくてねぇ?」~ 「矢尻、か」~ 「一撃で急所をずどん、ってな具合に突き刺さってたらしいですぜ?」~ 「相当な手練の弓手のものってわけか?」~ 「それだけじゃないんでさぁ。こいつぁちょっと曰く付のモンでしてね…」~ ~ そいつが言うには縁起担ぎで加工され、使われ続けた一品で~ いつの間にか妙な力を得たものらしい。~ 存在年数とその在り方で霊的本質が変異した魔具か…~ ~ そいつを聞いてピンと閃いた。~ ~ 裏返りの魔術―――既に存在する魔力に直接介入しその性質を反転・操作できる俺のオリジナル魔術。~ これをその矢尻の妙な力に応用すればあるいは俺の足りない魔力の補いになり、なおかつ~ その恩恵を受けて強力な英霊が召喚できるかもしれない。~ ~ 問題は俺の制御力。~ こちらの法則に対応して、うまく制御できるだろうか…~ 微妙なところだ。~ ~ しかしとにかく、やってみる価値はある。~ ~ 「いくらだ?」~ 「へへ、旦那は話が早いねぇ」~ ~ 日雇いの仕事でどうにか稼いでた金全部使っちまった。~ 畜生。あのごろつきボリやがって。~ ~ もう絶対失敗できねえ…!~ 誰だか知らんが手錬の弓手…頼むぞ…!!~ ~ ~ #endregion -[[とある教師の&Ruby(サバイバル){聖杯戦争};>とある教師の聖杯戦争]] //-とある教師の&Ruby(アフターデイズ){後日談}; #region(とある教師の&Ruby(アフターデイズ){後日談};); ***とある教師の後日談(アフターデイズ) [#xcbb5c72] -放課後、体育系の部活に所属する生徒達が走り回る学校のグラウンドを、初老の男が目を細めて眺めていた。~ 白く染まった顎鬚を撫でながら、何をするでもなくただそこに佇んでいる。~ そう、佇んでいるだけだ。~ 横にいる男の声などまるで聞こえないかのように、満足そうな笑みを浮かべて生徒達の活動を見守っている。~ 自らが理事長となって作り上げた私立高校、そこに通う生徒達。~ 彼にとっては全てが自身の子供に等しく、その元気な姿を見られることは何より嬉しいのだろう。~ 「理事長、聞いているのですか?」~ 「うむ」~ 「もう三ヶ月になるのですよ?」~ 「うむ」~ 明らかに生返事の声を聞いて、先ほどから声をかけている小太りの男は声を荒げる。~ 「彼にどんな事情があるかは知りませんが、これ以上待つ必要はないでしょう!?」~ 顔を真っ赤にして訴える男は歯がゆくて仕方なかった。~ 彼の役職は校長であり、結局最終的な、特に経営に関する決定権を持っていない。~ いくら教育者として不十分な者がいると判断しても、上が納得しなければ~ その者を辞めさせることすらできないのだ。~ その上、理事長は常にマイペースで相談するにも骨が折れる。~ おかげでストレスが溜まり、歳の影響もあってか妙にイライラしやすくなっていた。~ 最近髪が薄くなってきていることもそれが原因かもしれない。~ 「校長先生、今年はサッカー部に優秀な一年生がいるようだよ」~ 「私の話を聞いているんですか!」~ 「聞いているとも。牧瀬先生のことなら帰ってくるまで待つと決めた…そう伝えたはずだがね?」~ 苛立ちを隠そうともせず衝動に駆られるまま怒鳴る校長をちらり、とつまらなさそうに横目で見やると、~ 理事長はすぐまたグラウンドに目を向ける。~ ~ 視線が向いた先は紅白戦を行っていたサッカー部だった。~ 理事長自身が口にした優秀な一年生が、その小柄な体格を生かしたドリブル技術と並外れたスピードで、~ 次々と上級生のディフェンダーを抜き去っていく。~ 「彼は素晴らしい逸材だな。素人目で見てもずば抜けた技術を持っているのが良く分かる」~ ゴールネットが揺れるのを見ながら、理事長は今年のサッカー部の快進撃を想像して笑みを漏らす。~ 「理事長!いい加減にしてください!生徒の模範となるべき教師が長期無断欠勤をしているのですよ!~ これを見逃すようでは生徒に示しがつきませんし、校内の風紀にも乱れが生じます!~ それに彼の担当するはずだった授業をカバーするために他の教員の負担も大きくなっているのです!」~ 校長は必死に主張するが、理事長はやはり聞いていないのか、視線はサッカー部に釘付けだ。~ 「おお、いい攻めだ。いや、ディフェンダーに読まれていたか」~ クリアされたボールが空に上がる。理事長の視線もボールの動きに合わせて空へと向かう。~ ~ そのとき、不意に銃声の様な音が轟いた。~ 同時に中空を飛んでいたサッカーボールが破裂する。~ その場にいる誰もがすぐに状況を理解できなかっただろう。~ かといって、突如始まった異常事態が理解する時間をわざわざ与えてくれるはずもない。~ 誰の理解も及ばぬまま、さらに状況は加速していく。~ ~ 今までボールが合った空間のさらに上、そこはまるでガラスにひびが入ったような状態になっていた。~ そのひびはみるみるうちに大きくなっていき、ついには一つの穴となる。~ 空間が割れるように開いた穴──明らかに異常なその現象を見て、その場にいる全員は動くことも忘れ、~ ぽかんと口を開けていた。~ 「は…?」~ 誰かがようやくそんな言葉を漏らしたときだろうか。~ その穴から弾き出されるように黒い影が飛び出してきた。~ 影はまるで雪山を滑るが如く土煙を上げながら地面を滑走し、~ 理事長に優秀と評されていたサッカー少年の数メートル手前で止まる。~ 「な、何!?」~ 驚きばかりが先行して、少年の思考は目の前の状況についていくことができなかった。~ ただ目の前の土煙と、その中にいる何かの影を見つめることしかできない。~ 「いってぇ…」~ 土煙の中からそんな声が聞こえてくる。~ その場にいる誰もが凍りついたように足を止め、その影に視線だけが集中していた。~ ~ 徐々に土煙が薄らいでいく。~ 「あ、ああ、あああ……」~ 完全に煙が晴れて少年が見たものは、一人の男だった。~ 金属製のブーツを履き、腕には同じく金属製の小手。そしてそれらとは一線を画す赤いネクタイ。~ 天を突き刺さんとばかりに主張する逆立った髪の毛。~ 少し前まで影としか認識できなかった男、牧瀬貴一はゆっくりと辺りを見回したあと、~ 校舎を見上げて呟く。~ 「帰ってこれた…よし、よしよしよし!」~ 貴一は拳を握って小さく体を震わすと、~ 「俺は帰った、帰れたぞ!アーチャー!!」~ 拳を天へと向かって突き上げ、吼えた。~ その叫びに答えるかのように、その場にいた者達が次々と声を上げる。~ ~ 「あれ牧瀬先生じゃない!?」~ 「うっそ、マッキー生きてたの!?行方不明だって聞いてたからてっきり…」~ 「つーかさ、今空から降ってきただろ!?」~ 「意味わかんねー!一体何がどうなってんだ!?」~ ~ 正体が分かり安心したのか、生徒達が次々と貴一へと駆け寄ってくる。~ そして目の前の少年もまた、貴一の存在を認めると、震える声で問うた。~ 「にーちゃん…にーちゃん、なの……?」~ 貴一はそこでようやく側にいた少年が最愛の従兄弟であることに気付く。~ 「お、おお!?そういうお前は慶二、慶二か!」~ 「そうだよ、慶二だよ…!」~ 頷く慶二の目からはぽろぽろと涙がこぼれていた。~ 貴一がいなかったこの三ヶ月間、彼ほど深く悲しんでいた者はいない。~ 幼少の頃から貴一と共にすごし、共有してきた時間は親よりも長く、また注いで貰っていた愛情も誰より深かったのだ。~ 二人は感動に打ち震え、ただ涙を流して、互いを呼び合う。~ 「にーちゃん!」~ 「慶二!」~ 居ても立ってもいられず、弟は兄へと駆け寄り、兄はそれを両手を広げて抱きとめた。~ 生き別れになっていた兄弟の感動の再会。~ しかし、二人の関係を知らない周囲から見れば、男同士が抱き合っているだけなのだ。~ ぎょっとし、立ち止まる生徒が多数いたのも無理からぬことだろう。~ だが、そんなことを今の二人が気にするはずもない。~ 慶二は兄の胸にその小柄な体を埋め、涙ながらに言葉を搾り出す。~ 「にーちゃんのばか!いきなりいなくなるなんて酷いよ!」~ 「すまん!慶二!でも、また会えて本当に良かった……!!」~ 貴一もまた、弟と同じく涙を流して歓喜に震えていた。~ 「にーちゃん……」~ 「慶二……」~ 二人の世界に浸る兄弟を見て、周囲は完全にドン引きしていた。~ いや、一部の女子は何故かうっとりした目で二人の様子を見つめていたが、~ どちらにしろ誰も邪魔できずにいた。~ ~ いや、誰もが、というのは語弊があった。~ 抱き合ってぽつぽつと言葉を交わす二人に近づく者は確かにいたのだ。~ その者は二人を現実に引き戻すように声を投げかける。~ 「ようやく帰ってきたようだね、牧瀬先生」~ 声の主は理事長だった。それに付き従うように校長も二人の側までやってきている。~ 生徒達は二人の間に割って入るのを躊躇していたと言うのに、簡単にそれを成してしまうのは~ やはり年季の違いか、はたまたそのマイペースな性格ゆえか。~ 「理事長?それに校長先生も…」~ 貴一はゆっくりと慶二の体を離し、理事長に向き直ると、~ 「ご迷惑をおかけしてすみませんでした!」~ 謝罪の言葉と共に頭を下げた。~ 「今まで一体どこにいたんだね君は!」~ 開口一番、怒鳴りつけた校長に貴一はどう説明したものかと曖昧な笑みを浮かべる。~ 「いやぁ、ははは……言っても信じてもらえるかどうか……」~ それでも、腕を組み眉根を寄せながら、貴一は簡単に説明する。~ 「そうですね…一言で言うと神隠しにあっていたんですよ」~ が、そんな説明で納得できる人間もそうはいない。~ 「もう少しマシな言い訳は無いのかね!」~ 予想通りの校長の反応に貴一はため息をつくが、~ 「この目で見たからね、私は信じるとも」~ そう言った理事長を見返して目を丸くする。~ 理事長はからからと笑うと、貴一を労わるように言葉を続ける。~ 「話はまた明日にでも聞こう。今日は帰って家族に顔を見せてあげるといい」~ 「お気遣い、感謝します」~ 貴一はその寛大な対応に感嘆し、もう一度頭を下げた。~ ~ ~ -----~ ~ ~ 実家に帰ると、母は貴一の顔を見るなり泣き崩れた。~ まだ会社で働いていた父は電話越しに「この親不孝息子」と罵りながら声を震わせていた。~ 叔母である慶二の母は胸を撫で下ろして笑顔を見せた。~ 叔父である慶二の父は「良かった…良かった…」と繰り返し呟いていた。~ ~ ~ -----~ ~ ~ 両親に顔を見せたあと、貴一はすぐ戻って来るからと母に言い残し、~ 慶二を伴って自分の暮らしていたアパートに来ていた。~ 久々に戻ってきた自分の部屋をざっと見渡して、貴一は首を捻る。~ 「思ったより汚れてないな。埃が積もっているものとばかり思っていたんだが…」~ 「僕が毎日そーじしておいたからね」~ 「そっか、ありがとうな」~ 良く出来た弟の頭をわしゃわしゃと撫でると、貴一はゆっくりとベッドに倒れこみ、~ はぁと大きく息をつく。~ 疲れてるみたいだね、と貴一の横に座りながら慶二が言うと、~ さも疲れたような顔をして力なく貴一は笑い返した。~ 「それでにーちゃん」~ 「ん?」~ 「今まで何してたの?」~ 「うむ、お前には本当のことを話しておこう。多分信じられないだろうけどな」~ 「にーちゃんの言うことなら信じるよ、僕」~ 「かなりとんでもない話だぞ?」~ 「でも僕も含めてグラウンドにいた人たちは皆信じると思うよ?~ にーちゃんが空から降ってくるところ実際に見ちゃったし」~ 確かに、貴一の帰還の瞬間は非日常すぎた。それを目の当たりにすれば、~ どんなトンデモ話であっても信じる気になるだろう。~ 慶二の場合、信頼する兄の言うことだから尚更だ。~ その上、その非日常は平凡な生活を送っている人間には魅力的な話題過ぎる。~ 慶二は自分の胸の鼓動が高鳴っていることを感じながら貴一の言葉を待っていた。~ その期待が顔にも出ていたのだろう。貴一は少し苦笑して、話し始めた。~ ~ ~ -----~ ~ ~ 「聖杯戦争かぁ……なんか面白そうだなー」~ 粗方の話を聞いた慶二から出た感想はこれだった。~ 貴一はとんでもないと首を横に振りながら殺されそうになったことを思い出す。~ 広場での襲撃、汚染を撒き散らす鬼、赤い髪のライダーとの交戦。~ いつ死んでもおかしくなかった。~ それをなんとか凌いでこれたのもアーチャーの英霊、ミッツ・レーアという相棒がいたからだ。~ 「ミッツが頑張ってくれたおかげでまたお前に会えた…いくら感謝しても足りないな…」~ 貴一はまた弟の頭をくしゃくしゃと撫でながらそんなことを呟いた。~ 「そのミッツって人がアーチャーで…にーちゃんのために凄い弓で空間に穴を開けてくれた人だよね?」~ 頭に手を置かれたまま、慶二はごそごそとポケットに手を突っ込み、何かを取り出す。~ 「これ拾っておいたんだけど、その人が撃った矢なのかな?」~ それは確かにミッツが最後に放った矢だった。~ しかし、矢尻しかない。牧瀬が分身魔術で精製した矢の本体部分は消失していた。~ 魔術理論のないこの世界では牧瀬からの魔力供給を受けることも出来ず、形を維持できなかったのだろう。~ 「ちょっと貸してくれ」~ 慶二が言われるままに渡すと、それを摘み上げて、酷く懐かしそうな目で眺める。~ 「間違いなくあいつのだな。はは、ついさっきまで一緒にいたのに妙に懐かしい……」~ 「もうその人には会えないの?」~ 「ああ」~ 「でもさ、にーちゃん魔術使えるんでしょ?それでこう、パパーッと会いに行ったりできないの?」~ 「残念だがそれは無理なんだ。魔術というのはマナって物質をエネルギー源にしているんだが…」~ 「もしかしてそのマナがこの世界に無い、とか?」~ 「いや、ある。マナはこの世界にも存在する。自然現象に基づいたマナ干渉の法則もある。~ しかし肝心の『人の精神がマナに干渉する』という理論が存在しない」~ 「とゆーことはつまり?」~ 「人間……いや、おそらく生物はこの世界で魔術を使えないってことだよ」~ 「そーなの?でも試してみてほしいなぁ」~ 明らかに期待のこもった眼差しで愛する弟に頼まれれば、兄も嫌とは言えない。~ 「あー、わかったわかった。じゃあ火を起こす魔術をやってみようか」~ そう言って、早速精神を集中し始める。~ ~ 自らに内包される精神物質であるマナ。~ それを感じとるという事は自己対話に近い。内なる精神に語りかけ、その反応を待つ。~ が、予測どおり反応は無い。~ 「やっぱりこの世界じゃ…」~ 貴一がそう言いかけた瞬間、脳髄の奥の奥、精神の内奥でゆらりと小さな炎が揺らめいた。~ 「なっ…!」~ 驚きのあまり、浮かびあげていたイメージを一瞬で崩してしまった。~ 「いや、まさか…そんな…」~ 「どうしたの?やっぱり無理だった?」~ 不思議そうな顔をする慶二に説明する余裕は無かった。~ 今感じ取れた精神世界の炎は、確かに貴一が魔術を扱うときに扱っていた自らのマナそのものだ。~ それが分かる。感じ取れる。それは即ちこの世界でも魔術が使えるということに他ならない。~ この世界の法則が変化しているとでもいうのだろうか。~ 貴一はすぐさま目を閉じて、今度は一度目よりさらに完璧な術式、そのイメージを構築する。~ やはり感じ取れる。~ 自らのマナ、その燻り燃え上がる炎の如き精神を。~ それが魔力となって脈動し、術式として組みあがっていくのを。~ <<'''揺らめく型をここに留めよ───指先に灯る炎(ファグナ)'''>>~ 詠唱と共に指先で魔力が渦巻く。~ やがて、小さな炎の塊が指先に────現れなかった。~ 「あ、あれ?」~ 「にーちゃん?」~ 二度、三度、再び試みてみるが、今度はマナを感じることすらできなかった。~ 「い、いや、やっぱり無理だったみたいだ」~ 取り繕うようにそう言ったものの、胸のざわつきは収まらない。~ さっきのは気のせいだと断じれば簡単だ。~ だが、慣れ親しんだあの感覚は間違えようも無い。~ そしてもしそれが真実で、この世界でも魔術が使えるようになれば~ 再びミッツに会うことも可能かもしれない。~ けれども、その喜びさえも覆い尽くす、言いようの無い不安が貴一の心を掻き乱していた。~ ~ ~ -----~ ~ ~ しかし、胸騒ぎなどなんでもなかったかのように月日は過ぎる。~ 既に牧瀬貴一が元の世界に帰還してから数ヶ月が過ぎていた。~ 季節は夏。~ そして、今日は全ての生徒が待ちに待った夏休みの初日でもある。~ が、生徒が休みだからといって教師の仕事が毎日休みになるわけではない。~ うだるような暑さの中、貴一はクーラーの壊れた職員室で、パタパタと内輪を仰ぎながら~ 汗をだらだら流して書類整理をやっていた。~ 「暑ぃ…」~ 書きかけの文書を放り出して、椅子の背もたれに身を任せる。~ 今年の夏は凄まじいらしい。~ 今日学校に来る前に貴一が見ていたニュースでは、熱中症状で倒れる人が~ 例年の5倍以上にのぼっているという報道があった。~ 実際、温度は例年と変わらないらしいが、それほど患者が出ているということを知るだけで~ 暑さが増してくるような気がしてくる。~ 「氷食いてー」~ 欲望がそのまま口をついて出た。もっとも、誰も聞いてはいない。~ なにしろ、職員室に居るのは彼一人だ。~ 他に来ている教員もいはしたが、部活の顧問として生徒達を見ているので今は職員室にいない。~ 夏の熱気で茹で上がった一人きりの空間。~ おかげで彼の頭も茹だってしまったのだろうか。~ 先日の胸騒ぎも忘れ、つい氷の術式を構築してしまう。~ 「あ゛ー」~ しかし暑さで朦朧とした頭でイメージした術式は曖昧で、~ マナが感じ取れたのかも良く分からない。~ <<'''流れる型をここに結せよ───大気を結ぶ氷(ヒュグリタス)'''>>~ それでも、なんとく詠唱まで済ませてしまう。~ 「………」~ ───何も、起こらない。~ 職員室には蝉の鳴き声ばかりが響いている。~ 「あ゛ー」~ それと響いているのはもう一つ、貴一の気だるい声。~ 「期待はしてなかったけど、な…」~ それは間違いなく嘘だ。もしかしたら、などと裏づけも無いのに思ってしまうのは人の性。~ だが、そう思えるからこそ、人は希望を持って生きていける。~ かつて貴一が黄金の異世界でそうだったように。~ とはいえ、今回に限って言えば期待外れの結果に終わってしまったのも事実だ。~ 魔術理論がないのだから当然だが、希望も何もあったものではない。~ 「やる気出ねぇ……」~ 言葉にすると、余計に気力が減退していくようだった。~ 椅子にもたれかかって、天井を見上げるだけの時間が続く。~ 「そういや、慶二は暑さに負けず頑張ってるのかね…?」~ 夏休み初日でも大体の部活は活動している。慶二の所属するサッカー部も言わずもがなだ。~ グラウンドで仲間と共に走り回っているのだろう。~ 「仲間、か……」~ なんとはなしに、かつての相棒の顔を思い浮かべると、貴一はポケットから思い出の矢尻を取り出した。~ しばらくの間、手の平の上でころころと転がすと、今度はぎゅっと握り締める。~ ミッツは故郷に帰れたのだろうか。貴一は最後に十分な魔力を与えたつもりだったが、~ 結局の所どうなったかなど、知りうる術も無い。~ だから、こうやってたまに矢尻を見返しては後悔する。~ 自分の願いばかり優先してミッツの願いを後回しにしていたことを。~ 「今更、だな…」~ 少しの間だけ目を閉じると、立ち上がって大きく伸びをする。~ 「窓開けりゃ少しは涼しくなるか」~ 言葉どおり実行するが、期待したような涼しげな風は入ってこず、~ 部活中の生徒達の掛け声だけが入ってくる。~ 依然、うだるような暑さはそのままだ。この状況では仕事にならないだろう。~ ため息だけ漏らすと、また内輪を扇ぎはじめる。~ 「あー、皆がんばってるなぁ…」~ 二階にある職員室からはグラウンドを一望できる。~ やる気の出ない貴一とは裏腹に、窓の外では生徒達がグラウンドを駆け回っていた。~ サッカー部のいる辺りに目をやれば、コーナーキックからのセットプレイの練習をしているようだった。~ 慶二はゴール前に位置どっている。ボールが入れば確実にヘディング争いになるような場所だ。~ そんな所に居たところで、彼の小さい体ではやる前から競り負けると誰もが考えるだろう。~ だが、それが間違いであることを貴一は知っていた。~ なにせ、慶二の身体能力は他に類を見ないほど高い。~ ゴール前にボールが入る度、誰よりも高く跳躍し、空中戦を制する。~ 我が弟ながらなんて身体力だと感嘆しながら、貴一はその様子を眺めていた。~ ディフェンダーも必死に飛び上がってボールを奪おうとするが、やはり慶二の高さにはあと一歩届かない。~ そんな状況が繰り返された何度目かのセットプレイで、コーナーキックがゴールポスト寄りに~ 入ってきたときだった。合わせようと飛び上がった慶二の体が、不自然に崩れた。~ 空中で崩れた体勢はバランスを取り戻すことも無く、体はそのままゴールポスト側に倒れていく。~ ごんっと鈍い音と共にポストが揺れた。~ 「慶二ッ!?」~ 慶二は地面に倒れたまま動かない。部員達が一向に起き上がらない慶二の方へ駆け寄っていく。~ 「あ、あああああ!」~ 気づけば貴一は職員室が二階にあることも忘れ、窓から飛び出していた。~ が、その高さをものともせず着地。直後、全力でグラウンドに向かって走っていく。~ 「慶二!!」~ 息を切らしながら集まっていた他の部員達を押しのけた貴一が目にしたのは、~ 地に伏せ、頭から鮮血を流している弟だった。~ 「しっかりしろ慶二!」~ 呼びかけるが反応は無い。明らかに一刻を争う事態だ。~ 「どうしよう、どうしよう牧瀬先生…!」~ マネージャーの女子生徒が涙を流しながらタオルを頭に当てているが、~ それもどんどん赤く染まっていく。~ まるでその代わりと言わんばかりに、その場に居る全員の顔から血の気がなくなって蒼白に染まっていた。~ 貴一は青ざめた顔のまま、慌てて救急車を呼ぼうと携帯を取り出すが、~ 「マッキー!もう電話かけて…は、はい!」~ 震えた声で一人の男子生徒に制止される。既に電話は繋がっているようだった。~ 「救急車5分で来るって!……は、はい……マネージャー!止血!強めに圧迫しないと!」~ 電話をかけている生徒が電話口で言われたことを口早に指示する。~ 「慶二!慶二!く、そ…こんなときこそ魔術が…」~ それはもう、条件反射の行動だった。~ 黄金の異世界で死なないことを第一としたが故に、何度も反復して叩き込んだイメージ。~ 傷を治す癒しの魔術。水の魔術。最初の魔導器の属性を選ぶ決め手となった魔術。~ 貴一はそれを今、魔術の使えないこの世界で使おうとしている。~ 無謀だと分かってはいても試さずにはいられない。~ <<'''我が腕は魂を育み 我が声は心を溶かし 我が力は命を救う'''>>~ 詠唱の開始、それと同時に見守っていた生徒達がぎょっとした顔をする。~ <<'''其が回帰を望むなら 囁き祈り響かせよ 求むるままに生を謡え'''>>~ 貴一は生徒達には目もくれない。ただ必死に集中する。~ <<'''揺蕩う青が 其の魂を結びて辿り 手繰り寄せん!'''>>~ それはもはや詠唱というより祈りだった。~ 願いを込めて、最後の一節を、癒しの術式の名を叫ぶ。~ <<'''深層を癒す水(エクスヒューラ)!!'''>>~ ~ ───マナが、失われた。~ ~ そう、失われたのだ。術式の動力として。願いの対価として。~ 目を閉じ、動かないままの慶二の体が青い光に包まれた。~ 生徒達はそれに目を奪われる。貴一も同じく、目を丸くしてその光景を見守る。~ 段々と癒しの光は慶二の体に吸い込まれるように小さくなっていき、慶二の口から~ 「ん……」~ と小さな呟きが漏れると完全に消失した。~ 「慶二?」~ 半開きの口のまま、貴一が再び呼びかけると、~ それに応えるように、慶二の目がうっすらと開いていく。~ 「にーちゃん……?」~ 慶二はまるで何事もなかったかのように起き上がり、周囲から歓喜の声が沸く。~ 「う、うおおおおお!?」~ 「だっ、大丈夫なのかよケージ!?」~ 「良かった…本当に良かった…」~ 慶二はきょとんとした顔で沸き立つ周囲を見渡し、~ そして真っ赤に染まったタオルと地面を見て驚きの声を上げた。~ 「なにこれ!?」~ その疑問の声には答えず、貴一は状況の掴めない慶二の前髪を手ですくい上げた。~ 慶二は困ったような顔をして兄の目を見やっている。~ 「血は…止まってるな。怪我も消えている…。一安心だ」~ 魔術の効果を改めて確認すると、貴一は慶二を抱きしめた。~ 「にーちゃん、一体なんなの?」~ 「あとで説明する。今はこうさせてくれ…」~ 「う?うん…」~ 慶二は全く理解できていなかったが、首をかしげながらもとりあえず返事をかえす。~ そのとき、目の前に妙なものがあることに気づいてもう一度首をかしげる。~ 「にーちゃん、これ何?」~ 「ん?」~ そこには何か糸の様な妙なものが浮いていた。~ 縦に一本しかなかったそれは、唐突に十字を切るような形でもう一本、横線が浮き出る。~ 「増えた?」~ 慶二の呟きに呼応するかのようにパキィ、と甲高い、金属が割れる様な音が鳴り響いた。~ そしてそれは貴一の背後で次々と、止まることなく連続で鳴り始める。~ 「なんだこの音…?」~ 貴一がようやく振り返ったときには、それは既に糸の形を成していなかった。~ まるでガラスにひびが入ったようにな線の集合になっていて、まるで空間が割れていくように…~ 「ま、さか…」~ その空間のひびは見覚えがあった。~ 一度目は10年以上前。二度目はつい最近。~ 「次元の穴!?」~ 叫ぶと同時、ひびは完全な穴となり、一瞬で二人を包み込むまでに広がると、今度は収束していく。~ 貴一は反射的に慶二の体を押し飛ばして離そうとするが、時既に遅く。~ 「またかよぉおおお!!」~ 「え、えええええ!?」~ 二人の驚きと嘆きをも飲み込んで、次元の穴はきれいさっぱり消えてしまった。~ ~ ~ -----~ ~ ~ 気付くと、牧瀬兄弟は石造りの台座の上に座っていた。~ 貴一は憮然とした表情のまま、ゆっくりと立ち上がる。~ 対して慶二は、訳も分からずただキョロキョロと周囲を見回していた。~ 目に入るのは映画の中でしか見たことの無いようなものばかり。~ 屋内には間違いないようだが、壁も材質も石造りで妙に古めかしく、~ しかし透き通るような清潔感を感じる。~ 「にーちゃん、ここ…」~ 尋ねかけて、台座よりも数段低い位置に、二人の人間が立っているのに気付く。~ 一人は20代くらいの大人女性だった。長い銀髪を持ち、すらりとした長身で~ モデルといって差し支えない美しい容姿をしていた。~ 対して、もう一人の女は見るからに子供だった。体格も小柄で小学生くらいにしか見えない。~ そんな二人が並んで立っているのを見ると、酷くちぐはぐに思えた。~ ただ、そんな二人にも一つだけ共通点がある。~ 耳が長い。~ それはまさにエルフと呼ばれる種族の特長だ。~ その耳を震わせて、長身の女性が声を上げる。~ 「きーち!」~ 「……メビィか?」~ 名前を呼ばれ、貴一は頭をガシガシかきながら眉根を寄せて「あー」と、~ 言葉に詰まったような声を出した。~ メビィと呼ばれた女も同様に、言葉も無く貴一を見つめるだけだったが、~ こちらはどうも感極まって声が出ないだけのようだった。~ 「ここはエリュファーラ、か?」~ 「そう、以前あなたに救われた世界、エリュファーラです」~ 言葉の出ないメビィに代わって、少女が答えを返す。~ 「やっぱりそうか」~ はぁ、と一息つくとしゃがみこみ、まだ座ったままの慶二に立ち上がるよう促す。~ 「慶二。どうも異世界に来ちまったみたいだ」~ 「え?じゃあミッツさんと一緒に聖杯戦争をやったっていう…」~ 「いや、今回はそれとも別の世界だ。とりあえず説明はあとでするから、今はメビィ達の話を聞こう」~ 話しながら、牧瀬兄弟は台座を降り、二人の女に近づいていく。~ 「そういえば自己紹介がまだでしたね」~ 牧瀬兄弟が目の前に来ると、少女は丁寧にお辞儀をした。~ 「初めまして。私が今回の召喚の儀を執り行った巫女です。~ 名をミリィプル・M・セチュレンゼと言います」~ 「セチュレンゼって…」~ セチュレンゼというセカンドネームには覚えがあった。~ 以前、貴一がこの世界を救ったときに一緒に戦った仲間の名前と同じだ。~ 「君はまさかフィシープル・セチュレンゼの娘なのか?」~ 「そうです。そしてあなたの娘でもあります」~ ~ 時が、止まった。~ ~ いや、実際はほんの一瞬、貴一が動きを止めただけだったのだろう。~ 貴一の額から一筋、汗が流れ落ちる。~ 「い、いい、今なんと?」~ 「会えて嬉しいです。お父さん」~ 帰ってきた言葉は違っても、意味はさっきと一緒だった。~ 「良かったわね、ミリィ」~ メビィは優しい笑みを浮かべながら、ほんのり頬を染めたミリィの頭を撫でている。~ 女性二人は本当に嬉しそうだった。~ が、男二人は驚きのあまり声が出ない。~ それでも、貴一は強張る口を無理矢理に動かして否定する。~ 「いいいいいや、そんなはずは…!」~ 「いいえ。紛れも無く、あなたは私の父です」~ 「馬鹿な!俺は子供を作った覚えは無いぞ!」~ 牧瀬貴一には、本当に、全く、身に覚えが無かった。~ ミリィの母親であるフィシープルとは恋仲でもなんでもなかったし、~ 当然、子供ができるような関係を結んだことなどあるはずがない。~ しかし、少女は言うのだ。~ 「私はずっとお父さんに会えるの楽しみにしていたのに……酷い……」~ 打ちひしがれたような顔をするミリィを見て、貴一はあとずさる。~ そして、助けを求めるように慶二の方を見やるが、~ 「にーちゃん、サイテー」~ と、助け舟を出されるどころか、侮蔑の視線を向けられた。~ 弟からそんな視線を受けるなど初めてのことだ。~ 今の状況が信じられず、貴一はポツリと呟く。~ 「嘘だ」~ 「嘘じゃないわよー?ほら、ミリィって目元がきーちにそっくり。髪もちょっとくせっ毛で上向きだし、~ 今はちょっと髪が長いけど、ショートヘアの時は本当に小っちゃいきーちがいるみたいだったのよねー」~ メビィは貴一が今どういう気持ちなのか、全く考えが及んでいなかった。~ まるで止めを差すかのように親子の共通点を次々あげつらえる。~ 「嘘だぁああああああ!!」~ 「だから嘘じゃないって。そんなことよりね、またきーちの力を貸して欲しいのよ。この世界を救うために」~ 「だからッ!なんでお前はッ!マイペースなんだぁあああああああああ!」~ 激情のまま叫ぶ貴一の姿はまるで大人としてなっていない。~ これで教師などおこがましい。~ だが、救世主として彼が求められているのは紛れもない事実だ。~ 「アーチャー……昔みたいに助けてくれ……」~ 否、救世主を求めているのはむしろ貴一の方かもしれなかった。~ しかし、とりあえずこれだけは言える。~ ~ とある教師の戦いは、まだ終わりそうも無い───~ ~ ----- END -----~ #endregion //|[[編集>編集:とある教師の聖杯戦争]]| **共用コメ [#j1a5a940] //|#pcomment(コメント/聖杯/高校教師,1,below,reply)| |[[編集>編集:先生と一緒に豆腐を作ろう]]| |#pcomment(先生と一緒に豆腐を作ろう,1,below,reply)| ~ **勝手に飾られている [#y5c9c0de] -[[■>ロダ:060245.png]]-[[from>名簿/393456]]~ -[[■>ロダ:060967.png]]-[[from>聖杯/狐面]] **聖杯なう [#vcb352f2] #pcomment(聖杯なう,1,below,reply) **こめあう [#jd542961] //■どうでもいいこと //第4シーズンまで残った14組全員分の絵を描こうとしてたが、 //あまりの多さに雑なラフ書いた時点で力尽きた。 //戦争ログをベースに漫画のネーム書いてたがそれもネームだけで力尽きた。 //最悪、そのネームの数コマ使って挿絵だけでもと思ってはいたが、 //思うばかりで筆は進まず、現実は辛く、ついには諦めた。 //結局、全てを成し得たわけじゃない。 //要はアレだ。キャパが足りねえ! //■凄く重要なこと //ご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。 //そして、一緒に遊んでくれた人達皆、ありがとうございました。 //ばいばい。