名簿/222480
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* アングレイブ家出身 ロレンス 229473 [#z4f122f8] |ID:|229473| |名前:|ロレンス| |出身家:|アングレイブ| |年齢:|30| |性別:|#listbox3(男,server,sex)| |前職:|#listbox3(上級兵士,server,job)| |理由:|#listbox3(立身出世を目論んで,server,reason)| |状態:|#listbox3(野垂れ死に,server,state)| ////////// |その他:| [[ステータス>http://gold.ash.jp/main/?chrid=229473]]/[[戦歴>http://gold.ash.jp/main/advlog.cgi?chrid=229473]]| // // ※ ご注意「//////////」より上は変更可能個所以外はそのままにして下さい。 // タイトルの「家出身」の記述も含まれます。 |テーマソング:|[[RONE STAR>http://jp.youtube.com/watch?v=_jI9yZ1eet0]] [[Nymphetamine>http://jp.youtube.com/watch?v=6dW6aNAZGTM]]| ~ http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst035603.jpg~ //深い森の中の洞穴深く。 //出口より入る光もとうに届かない闇の底。 //黒色に塗りつぶされた空間に、仄かに二つ、赤い光が灯った。 //種としてヒトの視る青空の下の草原と同じかそれよりも親しみのある真っ暗闇を舐めるように確かめ、状況の把握に努める。 //どれ程の時間が経ったのだろうか、恥ずかしながら意識を失ってしまう直前まで辺りを儚くも照らしていた松明は倒れ臥すヒトの血に濡れて長さを残したままその務めを放棄していた。 // //「…………」 //手ひどい傷を受けたものだと、寝起きのぼんやりした頭で思考した。 //すんと鼻を鳴らす。そこらから香る濃い血の匂いは容赦なく食欲を刺激してくる。 //それは即ち、血が乾いてしまう程の時を寝て過ごしたわけではないと言うこと。 //「……? いや、こいつは……」 //否。 //臭い達は皆知らないモノだった。 //恐らくは、依頼に失敗した己の班に代わってきた者達の、その末路。 //引き際を違えたのだろう、統率力に欠けるヒトの集まりなど一歩間違えればこんなものだ。 //逆に知った臭いが無い事から自分の班は自分以外まんまと逃げ果せたであろう事が伺えた。 //「クソッ、薄情な奴らだ」 //吐き棄て、足に力を入れ岩壁に寄りかかっていた体を立たせる。血が足りず傷の癒えていない体が喧しいまでの苦情を痛覚に変換し脳に申し立てるが、それは無視する。 //幸か不幸か周囲には文字通り腐る程の血がある。 //幸とはすぐさま摂取すべき血に困らない事、不幸とは吸血鬼である己が落としモノから拾い食いなどという卑しい真似をしなければならない事であるのだが、この際贅沢は言っていられない。傷は浅くはないのだから。 //腹を壊したら誰に文句をつけてやろうか、と思った所で視界に入った奥に続く虚をふと見据えた。 //「……あぁ、いたな。文句つけるべき相手」 //依頼の化け物はこの場所を塒としているなら恐らく外に出てはいるまい、傷を癒やしてから軽くお礼参りに行ってやろう。 //そうしてたらまたきっとこの場所に冒険者が怪物討伐の名目でやってくるだろうから食ってやろうか。あの街にいたようなうら若き乙女がいないとも限らないし。 //しかしそれは希望的観測が過ぎるというヤツだろう。来るのはきっと髭面の汗臭い醜物かよくて類人猿寄りのヒト。 //そも女冒険者自体が割りかし貴重な生物なのだ。そして女がみな乙女である程世界は優しくないし、だからこそ乙女に価値がある。美人ならば尚更に。 //いい事を思いついた。バケモノ退治が済んだら報酬を貰いに依頼者のいる村に寄るとしよう。 //報酬とは即ち、血。街からは程よく離れた場所にあるあの田舎村ならスレてない素朴な獲物がいるだろうし、そうした獲物は押し並べて血が美味いという道理がある。 //ヒトの言う栄養に乏しくとも、その精神性は血の味に素晴らしい彩りを添えてくれるのだ。 //「痛ッ」 //思考は脇道に逸れ、獣道をずんずか進み、新たな地平の開拓を始めた辺りで身体の苦情により強制的に中断された。 //「皮算用より先ず現状の打開、か……ったく、何が悲しくて野郎の死体の血なんか吸わなきゃならねえんだ」 //口内に溜まった涎を嚥下して、腹をさすりながらせめてもとマシな落としモノにかじりつく。 //甚だ不本意極まりないのだが、背に腹は代えられない。 // //「はあ……この屈辱は忘れないでおこう」 //汚れた袖で口元を拭い、一息。余りの情けなさになんだか泣きたくなる。 //こんな不味い血はさっさと傷を癒やすのに使ってしまおうとその場に座り込み食休みに務めていると、暇な事もあってつかぬ妄想が脳を駆け巡り始めた。 //血は新鮮なら新鮮な程よく、やはり生き血を所望したい。また女のものでありそれが見目麗しく美しい心を持つならば文句なし。 //見た目については、まあ、好みだが。 //その点で言うとつくづく彼女を失ったのが悔やまれた。気が強く御しがたかったが、実に良い女だった。 //もっとも易々と御せてはそれはそれでつまらないのだが、しかしそれにしても厄介な女だった。 //頭を下げた事もある。諸手を挙げた事もある。顔色を見た事もある。……と言うか、これはいつもだった気もする。 //言うことを聞かせる手立てはそれこそ幾つもあると言うのに、それがなかなか出来ない。 //それはまるで、ヒトの言う惚れた弱みというヤツのようだった。 //「あれ」 //そこで、思い至る。 //「まさか……マジ惚れ……なのか、俺」 //声に出して改めて確認してみる。 //確認とは、確と認めると言う事だ。 //つまり己の中に既に存在している価値観や視点を認め直すということ。 //だがそれは彼女と出会う前には無かった価値観のはずだ。 //自分にとってヒトは飽くまで食糧。良くて所有物であり、対等な立場になどありはしない。 //愛しているだの大好きだのと言った事は確かに何度もある。口に出した数まで当てる自信がある程に、覚えている。無論本気だ。 //しかしそれは軽いと自認していた自分の性分から出る千万程の女を喜ばせる言葉だったと。 //そう思っていた。 //「そっか。特別……だったんだな」 //余りにも今更な話だが、思い知らされた。 //先程飲んだ血が活発に働いているからかわからないがかっと顔が熱くなる錯覚に囚われ、思わず頬を押さえる。 //同時に、洞窟の最奥へと続く虚ろな暗闇が、今の自分の心の有り様にも思えた。 //「……はっ、女の子かっつーの」 //自嘲の笑みを浮かべて馬鹿げた考えを振り落とす。 //そう、こんなのは全く馬鹿げたことだ。 // //傷の治癒は程なくして終わった。なんとなくその場を立ち上が、なんとなく歩き回り始めた。 //しかしぐるぐると歩き回るだけで、その場から立ち去る事はしない。端から見ればさぞかし間抜けだろうな、と思ってしまう。 //目に入るのは転がる石ころや死体だけで、散漫な意識はその対象を次々と変えていく。 //脳裡にあるのはこれからどうするかと言う事、それだけだった。 //前々からうっすらと頭の中にあったあの街から離れるという考えを実行するいい機会なのではないかと、そう思った。 //傷心したが故の断行だとか思われるかも知れないと思うと少しばかり癪ではあったが、そんなものは勝手に思わせておけばいいのだし、気にするだけ無駄だ。 //部屋はしばらく放っておけば宿の主が片付けてくれると聞くし、あの街での最期が野垂れ死にならそれはそれで洒落の効いた別れだろう。 //未練が無いと言えば嘘になるが、もとより自分がいなくなった所で困る奴などいないだろうし、むしろそういう扱いは気楽だとも言える。 //そうして挙がってくる考察材料のことごとくが根城を変える事を勧めてくるものだから、もしかしたら自分はあそこから離れたがってるのかとも思わされる。 //それなら傷心が原因と言うのも強ち否定出来ないじゃないか、とまた一つ自嘲の笑みが沸いて出た。 //「よし決めた。頃合いだな、うん」 //ウダウダと考えるのは性分ではない。結論が出たのならスパッと決断した方が正解だ。 //半ば思考を打ち切るようにそう決めて、今度こそと立ち上がる。 //すると唐突に、腹にびりびりと響く重低音の利いた号音が顔にぶつかってきた。 //声の方向を向き、その源を確かめる。例うならば、大熊かそれよりデカい巨大熊。成る程ヒトも退治しあぐねるワケだろう。 //声から察するに先方はどうやら不機嫌なご様子だ。もっとも、ストレスならばこちらも相当に溜まっているのだが。 //「メシの種のお出ましか……そんじゃあ食後の運動といこうか」 //知らず、口の端が歪み、牙が露わになっていた。 //女の子の前以外での荒事は面倒なので好かなかった筈なのだが、にしても心と血が躍る。 //これもきっと彼女に感化された内の一つなんだと、とりあえず責任転嫁しておく。 //我ながら、ケンカ好きの男だなんて、酷くスマートさに欠けていると思うから。 //「おっと悪ィね、ちょっくら考え事をさ」 //無視するなとばかりに喚き立てる洞穴の主をどうどうと手で制し、反対の手を硬く硬く握り込む。 //一歩踏み込むその先には、尚も暗い闇が続いている。 //背後から、懐かしい香りの風が吹いた気がした。 // //日没を待ち、外に出た。雲は無く、微風が頬を撫で、もはや官能すら覚える程美しい三日月が蒼く灯っている。 //口に出すまでもなく、いい夜だ。 //「むう、やっぱ気のせいだったかな……確かにアイツの匂いだった気がしたのに」 //香りの残滓はとうに無く、むせるような濃さの草木と苔の匂いが辺りを支配していた。 //もういない女に引っ張られるなんてつくづく自分らしくないと、被りを振ってそんな弱気を追い払う。 //「……ま、そういう訳だ。寂しかったらいつでも出戻り歓迎だぜ? 何てったって俺は器のデカい男だからな! うはははは!」 //別れの言葉を風に乗せたら、深く息を吸って、吐き出す。それだけでスイッチの切り替えは終わる。 //世界はこんなに広いのだ。いい女は星の数ほどいて、その全てが自分という運命との邂逅を待ち焦がれている。 //足を止めればその無駄になってしまった時間たるやもはや大災害とも言えてしまう次元だろう。 //善は急げ。時は金なり。命短し恋せよ乙女。ヒトの言う事には時々感心させられる。 「さあ行くか。まだ見ぬハーレムが俺を待ってる」 // //胸躍る旅は、ここに新たな始まりを告げる。 //何処か遠く、新天地に一大ハーレムを築いた吸血鬼がいると言う噂が民草の間を駆けるがそれはまた別のおはなし。 ~ //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016810.jpg //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016997.jpg //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016935.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst021310.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst019919.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016497.jpg //*酒場の薄暗い一角。もしくはカーテンの閉まった部屋 [#d2eadd0f] //#pcomment(,5,below,reply) *蟠る [#c6a45571] //ロレンスさん……長い間、お疲れ様です…っ //旦那様がこんなに強い方で、彼女も誇らしいことでしょう //ロレンスさんには本当に、本当に大大大感謝です…っ デディア中野 //こっちこそ構ってもらってホント感謝してる //風の噂に聞いたけど、霊圧が落ちてて話せなくって申し訳ない…… //多分忘れない、そんだけいい女だったから //それじゃあデディアによろしく、また機会があったら - ロ //……耳がいいのも良し悪しだな - ロ //(理由がいくつか思い当たって土下座) //どなたさまだ - ロ //……まだ見てるかわかんねーけど、まぁ一応な - ロ //最新で見かけて、しばらく息するの忘れました //土下座してました、デディの中野です //まだ見てます。mhtファイルにしてコメントは何度も見返してます //ホントこの、ロレンスさんのその後のこと、読んで、 //ロレンスさんが思っててくれたことも、ロレンスさんが幸せにやっててくれたことも、 //ロレンスさんが喋るのをまた聞けたっていうことも、 //嬉しくて泣けてきて、頭ストップして何書いていいのか分かりませんが… //ロレンスさんにもデディにも、本当に本当に、ありがとうございます…っ!! //あなた方のことが大好きだ!! //デディは上で、狩りの合間合間によく眺めておいでですから、 //わざわざ伝えたら「知っていてよ」と一蹴されそうなのでやめておきますが; // //今までゴルロアしてきた中で、ロレンスさんが一番神だったと言い切れます //ありがとうございました、本当に //またどこかで、お会いできたらな…などと思いつつ……失礼いたします //ああやっぱりもう一回 ありがとうございます! //はは、神だなんて照れるぜ //期せずしてゴルロアから離れる事になって、その前に見たデディんとこの下の奴がどうにも頭から離れないもんだから暇を見繕っては書き募ってしまったぜ //名簿が凍結になってたからすわ手遅れかと思ったがどうにも止められなかった。ちょっと心配だったんだが、見てもらえて正直安心だ、サンキュな //ん、縁があったらまたどっかで誰かと誰かが出会うだろうさ。そん時はヨロシク頼む //中野とデディに、ステキな時間をありがとうと言わせてもらう。感謝してるぜ - ロ //うん、なんか結果的に閉じてよかったかなーみたいな、ね。そんな感じ //ありがとう //違うよなぁ //気のせいだよなぁー… - ロ //こちらの名簿でもお礼を…本当にありがとうございました!(デディ中野 //ああ、こっちこそ……ありがとう
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* アングレイブ家出身 ロレンス 229473 [#z4f122f8] |ID:|229473| |名前:|ロレンス| |出身家:|アングレイブ| |年齢:|30| |性別:|#listbox3(男,server,sex)| |前職:|#listbox3(上級兵士,server,job)| |理由:|#listbox3(立身出世を目論んで,server,reason)| |状態:|#listbox3(野垂れ死に,server,state)| ////////// |その他:| [[ステータス>http://gold.ash.jp/main/?chrid=229473]]/[[戦歴>http://gold.ash.jp/main/advlog.cgi?chrid=229473]]| // // ※ ご注意「//////////」より上は変更可能個所以外はそのままにして下さい。 // タイトルの「家出身」の記述も含まれます。 |テーマソング:|[[RONE STAR>http://jp.youtube.com/watch?v=_jI9yZ1eet0]] [[Nymphetamine>http://jp.youtube.com/watch?v=6dW6aNAZGTM]]| ~ http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst035603.jpg~ //深い森の中の洞穴深く。 //出口より入る光もとうに届かない闇の底。 //黒色に塗りつぶされた空間に、仄かに二つ、赤い光が灯った。 //種としてヒトの視る青空の下の草原と同じかそれよりも親しみのある真っ暗闇を舐めるように確かめ、状況の把握に努める。 //どれ程の時間が経ったのだろうか、恥ずかしながら意識を失ってしまう直前まで辺りを儚くも照らしていた松明は倒れ臥すヒトの血に濡れて長さを残したままその務めを放棄していた。 // //「…………」 //手ひどい傷を受けたものだと、寝起きのぼんやりした頭で思考した。 //すんと鼻を鳴らす。そこらから香る濃い血の匂いは容赦なく食欲を刺激してくる。 //それは即ち、血が乾いてしまう程の時を寝て過ごしたわけではないと言うこと。 //「……? いや、こいつは……」 //否。 //臭い達は皆知らないモノだった。 //恐らくは、依頼に失敗した己の班に代わってきた者達の、その末路。 //引き際を違えたのだろう、統率力に欠けるヒトの集まりなど一歩間違えればこんなものだ。 //逆に知った臭いが無い事から自分の班は自分以外まんまと逃げ果せたであろう事が伺えた。 //「クソッ、薄情な奴らだ」 //吐き棄て、足に力を入れ岩壁に寄りかかっていた体を立たせる。血が足りず傷の癒えていない体が喧しいまでの苦情を痛覚に変換し脳に申し立てるが、それは無視する。 //幸か不幸か周囲には文字通り腐る程の血がある。 //幸とはすぐさま摂取すべき血に困らない事、不幸とは吸血鬼である己が落としモノから拾い食いなどという卑しい真似をしなければならない事であるのだが、この際贅沢は言っていられない。傷は浅くはないのだから。 //腹を壊したら誰に文句をつけてやろうか、と思った所で視界に入った奥に続く虚をふと見据えた。 //「……あぁ、いたな。文句つけるべき相手」 //依頼の化け物はこの場所を塒としているなら恐らく外に出てはいるまい、傷を癒やしてから軽くお礼参りに行ってやろう。 //そうしてたらまたきっとこの場所に冒険者が怪物討伐の名目でやってくるだろうから食ってやろうか。あの街にいたようなうら若き乙女がいないとも限らないし。 //しかしそれは希望的観測が過ぎるというヤツだろう。来るのはきっと髭面の汗臭い醜物かよくて類人猿寄りのヒト。 //そも女冒険者自体が割りかし貴重な生物なのだ。そして女がみな乙女である程世界は優しくないし、だからこそ乙女に価値がある。美人ならば尚更に。 //いい事を思いついた。バケモノ退治が済んだら報酬を貰いに依頼者のいる村に寄るとしよう。 //報酬とは即ち、血。街からは程よく離れた場所にあるあの田舎村ならスレてない素朴な獲物がいるだろうし、そうした獲物は押し並べて血が美味いという道理がある。 //ヒトの言う栄養に乏しくとも、その精神性は血の味に素晴らしい彩りを添えてくれるのだ。 //「痛ッ」 //思考は脇道に逸れ、獣道をずんずか進み、新たな地平の開拓を始めた辺りで身体の苦情により強制的に中断された。 //「皮算用より先ず現状の打開、か……ったく、何が悲しくて野郎の死体の血なんか吸わなきゃならねえんだ」 //口内に溜まった涎を嚥下して、腹をさすりながらせめてもとマシな落としモノにかじりつく。 //甚だ不本意極まりないのだが、背に腹は代えられない。 // //「はあ……この屈辱は忘れないでおこう」 //汚れた袖で口元を拭い、一息。余りの情けなさになんだか泣きたくなる。 //こんな不味い血はさっさと傷を癒やすのに使ってしまおうとその場に座り込み食休みに務めていると、暇な事もあってつかぬ妄想が脳を駆け巡り始めた。 //血は新鮮なら新鮮な程よく、やはり生き血を所望したい。また女のものでありそれが見目麗しく美しい心を持つならば文句なし。 //見た目については、まあ、好みだが。 //その点で言うとつくづく彼女を失ったのが悔やまれた。気が強く御しがたかったが、実に良い女だった。 //もっとも易々と御せてはそれはそれでつまらないのだが、しかしそれにしても厄介な女だった。 //頭を下げた事もある。諸手を挙げた事もある。顔色を見た事もある。……と言うか、これはいつもだった気もする。 //言うことを聞かせる手立てはそれこそ幾つもあると言うのに、それがなかなか出来ない。 //それはまるで、ヒトの言う惚れた弱みというヤツのようだった。 //「あれ」 //そこで、思い至る。 //「まさか……マジ惚れ……なのか、俺」 //声に出して改めて確認してみる。 //確認とは、確と認めると言う事だ。 //つまり己の中に既に存在している価値観や視点を認め直すということ。 //だがそれは彼女と出会う前には無かった価値観のはずだ。 //自分にとってヒトは飽くまで食糧。良くて所有物であり、対等な立場になどありはしない。 //愛しているだの大好きだのと言った事は確かに何度もある。口に出した数まで当てる自信がある程に、覚えている。無論本気だ。 //しかしそれは軽いと自認していた自分の性分から出る千万程の女を喜ばせる言葉だったと。 //そう思っていた。 //「そっか。特別……だったんだな」 //余りにも今更な話だが、思い知らされた。 //先程飲んだ血が活発に働いているからかわからないがかっと顔が熱くなる錯覚に囚われ、思わず頬を押さえる。 //同時に、洞窟の最奥へと続く虚ろな暗闇が、今の自分の心の有り様にも思えた。 //「……はっ、女の子かっつーの」 //自嘲の笑みを浮かべて馬鹿げた考えを振り落とす。 //そう、こんなのは全く馬鹿げたことだ。 // //傷の治癒は程なくして終わった。なんとなくその場を立ち上が、なんとなく歩き回り始めた。 //しかしぐるぐると歩き回るだけで、その場から立ち去る事はしない。端から見ればさぞかし間抜けだろうな、と思ってしまう。 //目に入るのは転がる石ころや死体だけで、散漫な意識はその対象を次々と変えていく。 //脳裡にあるのはこれからどうするかと言う事、それだけだった。 //前々からうっすらと頭の中にあったあの街から離れるという考えを実行するいい機会なのではないかと、そう思った。 //傷心したが故の断行だとか思われるかも知れないと思うと少しばかり癪ではあったが、そんなものは勝手に思わせておけばいいのだし、気にするだけ無駄だ。 //部屋はしばらく放っておけば宿の主が片付けてくれると聞くし、あの街での最期が野垂れ死にならそれはそれで洒落の効いた別れだろう。 //未練が無いと言えば嘘になるが、もとより自分がいなくなった所で困る奴などいないだろうし、むしろそういう扱いは気楽だとも言える。 //そうして挙がってくる考察材料のことごとくが根城を変える事を勧めてくるものだから、もしかしたら自分はあそこから離れたがってるのかとも思わされる。 //それなら傷心が原因と言うのも強ち否定出来ないじゃないか、とまた一つ自嘲の笑みが沸いて出た。 //「よし決めた。頃合いだな、うん」 //ウダウダと考えるのは性分ではない。結論が出たのならスパッと決断した方が正解だ。 //半ば思考を打ち切るようにそう決めて、今度こそと立ち上がる。 //すると唐突に、腹にびりびりと響く重低音の利いた号音が顔にぶつかってきた。 //声の方向を向き、その源を確かめる。例うならば、大熊かそれよりデカい巨大熊。成る程ヒトも退治しあぐねるワケだろう。 //声から察するに先方はどうやら不機嫌なご様子だ。もっとも、ストレスならばこちらも相当に溜まっているのだが。 //「メシの種のお出ましか……そんじゃあ食後の運動といこうか」 //知らず、口の端が歪み、牙が露わになっていた。 //女の子の前以外での荒事は面倒なので好かなかった筈なのだが、にしても心と血が躍る。 //これもきっと彼女に感化された内の一つなんだと、とりあえず責任転嫁しておく。 //我ながら、ケンカ好きの男だなんて、酷くスマートさに欠けていると思うから。 //「おっと悪ィね、ちょっくら考え事をさ」 //無視するなとばかりに喚き立てる洞穴の主をどうどうと手で制し、反対の手を硬く硬く握り込む。 //一歩踏み込むその先には、尚も暗い闇が続いている。 //背後から、懐かしい香りの風が吹いた気がした。 // //日没を待ち、外に出た。雲は無く、微風が頬を撫で、もはや官能すら覚える程美しい三日月が蒼く灯っている。 //口に出すまでもなく、いい夜だ。 //「むう、やっぱ気のせいだったかな……確かにアイツの匂いだった気がしたのに」 //香りの残滓はとうに無く、むせるような濃さの草木と苔の匂いが辺りを支配していた。 //もういない女に引っ張られるなんてつくづく自分らしくないと、被りを振ってそんな弱気を追い払う。 //「……ま、そういう訳だ。寂しかったらいつでも出戻り歓迎だぜ? 何てったって俺は器のデカい男だからな! うはははは!」 //別れの言葉を風に乗せたら、深く息を吸って、吐き出す。それだけでスイッチの切り替えは終わる。 //世界はこんなに広いのだ。いい女は星の数ほどいて、その全てが自分という運命との邂逅を待ち焦がれている。 //足を止めればその無駄になってしまった時間たるやもはや大災害とも言えてしまう次元だろう。 //善は急げ。時は金なり。命短し恋せよ乙女。ヒトの言う事には時々感心させられる。 「さあ行くか。まだ見ぬハーレムが俺を待ってる」 // //胸躍る旅は、ここに新たな始まりを告げる。 //何処か遠く、新天地に一大ハーレムを築いた吸血鬼がいると言う噂が民草の間を駆けるがそれはまた別のおはなし。 ~ //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016810.jpg //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016997.jpg //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016935.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst021310.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst019919.png //http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst016497.jpg //*酒場の薄暗い一角。もしくはカーテンの閉まった部屋 [#d2eadd0f] //#pcomment(,5,below,reply) *蟠る [#c6a45571] //ロレンスさん……長い間、お疲れ様です…っ //旦那様がこんなに強い方で、彼女も誇らしいことでしょう //ロレンスさんには本当に、本当に大大大感謝です…っ デディア中野 //こっちこそ構ってもらってホント感謝してる //風の噂に聞いたけど、霊圧が落ちてて話せなくって申し訳ない…… //多分忘れない、そんだけいい女だったから //それじゃあデディアによろしく、また機会があったら - ロ //……耳がいいのも良し悪しだな - ロ //(理由がいくつか思い当たって土下座) //どなたさまだ - ロ //……まだ見てるかわかんねーけど、まぁ一応な - ロ //最新で見かけて、しばらく息するの忘れました //土下座してました、デディの中野です //まだ見てます。mhtファイルにしてコメントは何度も見返してます //ホントこの、ロレンスさんのその後のこと、読んで、 //ロレンスさんが思っててくれたことも、ロレンスさんが幸せにやっててくれたことも、 //ロレンスさんが喋るのをまた聞けたっていうことも、 //嬉しくて泣けてきて、頭ストップして何書いていいのか分かりませんが… //ロレンスさんにもデディにも、本当に本当に、ありがとうございます…っ!! //あなた方のことが大好きだ!! //デディは上で、狩りの合間合間によく眺めておいでですから、 //わざわざ伝えたら「知っていてよ」と一蹴されそうなのでやめておきますが; // //今までゴルロアしてきた中で、ロレンスさんが一番神だったと言い切れます //ありがとうございました、本当に //またどこかで、お会いできたらな…などと思いつつ……失礼いたします //ああやっぱりもう一回 ありがとうございます! //はは、神だなんて照れるぜ //期せずしてゴルロアから離れる事になって、その前に見たデディんとこの下の奴がどうにも頭から離れないもんだから暇を見繕っては書き募ってしまったぜ //名簿が凍結になってたからすわ手遅れかと思ったがどうにも止められなかった。ちょっと心配だったんだが、見てもらえて正直安心だ、サンキュな //ん、縁があったらまたどっかで誰かと誰かが出会うだろうさ。そん時はヨロシク頼む //中野とデディに、ステキな時間をありがとうと言わせてもらう。感謝してるぜ - ロ //うん、なんか結果的に閉じてよかったかなーみたいな、ね。そんな感じ //ありがとう //違うよなぁ //気のせいだよなぁー… - ロ //こちらの名簿でもお礼を…本当にありがとうございました!(デディ中野 //ああ、こっちこそ……ありがとう
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