:さよならを教えて
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15回の死を噛み締める
1度目より2度目の方が、2度目より3度目の方が味わい深く、途中不意になくなった『味』に驚くが
それでも、充分すぎるほどに腹は満ちた
次いで、飲み込んだ人間の心を噛み砕く
そこには純粋な好奇心と、希望とか期待とか夢とかそんなものしか無くて
つまりそんなものの為にこの個体は15度の死を迎えたのか、と
それは少女にとって理解するに難しかった 悪意がなくてもこんなことが出来るのか、感心こそしたが…気に入らない
気に入らないけれど これを裁くに相応しいのは自分ではなく、きっとこの固体か 彼らと同じ人間だろう
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15回の死を噛み締める
1度目より2度目の方が、2度目より3度目の方が味わい深く、途中不意になくなった『味』に驚くが
それでも、充分すぎるほどに腹は満ちた
次いで、飲み込んだ人間の心を噛み砕く
そこには純粋な好奇心と、希望とか期待とか夢とかそんなものしか無くて
つまりそんなものの為にこの個体は15度の死を迎えたのか、と
それは少女にとって理解するに難しかった 悪意がなくてもこんなことが出来るのか、感心こそしたが…気に入らない
気に入らないけれど これを裁くに相応しいのは自分ではなく、きっとこの固体か 彼らと同じ人間だろう
指の先に少し力をいれれば砕けてしまいそうなそれ
僅かにこびり付いていた蒼色の髪が指先に絡まって煩わしい。
けれど、それのお陰で手の中のこれは、人間の頭部だということがわかった。
「……んー?」
わかったけれど、本当にこれがかつて肉を纏って動いていたのか…確信が持てなく首を傾げる。
これからは何も伝わらない
死の間際の恐怖も後悔も、悲しいだとか嬉しいだとか悔しいだとか
そう言う感情の残滓も感じられない。
こんなものは生き物だと認められない。
人間だというよりは、人形と言われたほうがしっくり来る。
良く出来た贋作 例えば演劇に使ったりするような
彼女にとって人間であるか人間でないかの判別は、一緒にいて空腹が満たされるか満たされないか
例え僅かでも感情の動きがあるなら、それは彼女にとって人間だ
それが死体であったとしても、死の間際まで持っていた感情ぐらいは読み取れる
それが全くもって、どれほど読み取ろうと試みても感じられないのなら…これは人間のものではない。
骨を置く。
辺りを見渡せば、同じようなそれは幾つも転がっていた。
きっとそのどれもが、いつかは足だったり腕だったりしたのだろう。今はただの白い塊だとしても。
次に手に取ったそれからは、僅かに感情が読み取れた
「……?………んー」
しかし、薄い
気のせいだったのか、と思わせるほどに薄いその感情の残滓。
骨を置く。
3つめは大きな感情の動きが読み取れて、少し安心した。
なるほど、これは人間だ と
そして漸くわかった
ここにある骨は
一つ残らず全部
同じ個体の骨だ
「は…」
笑えてくる
望もうと望むまいと、それに触れただけでこんなに空腹が満たされる自分に
所詮自分はそういう生き物だと強烈に思い知らされて
指から落ちた骨は床に軽い音を立てて落ちる。
一つ また一つ、骨を拾い上げるたびに伝わる感情
積もる埃の量と、その脆さに比例するように大きくなっていく
やり場の無い謝罪、求められず受け入れられないのに叫ぶ無様さ
逃避できない痛みが脳髄を焼く苦痛
喉を震わせる悲鳴が自分の物かすらもう分からない
悲鳴より先に切れる意識、終わったという安堵
そしてまた来る目覚めは次に待つ死の為に
すりきれる すりきれていく 心の柔らかい部分から
「……あー」
空腹が急激に満たされていく。
望もうと、望むまいと
『ここ』は静かだ
虫の一匹すら残らず、皆逃げ出した
皆察知したのだろう
『怖いもの』が来ると
…その怖いもの、というのが 彼であるのか 自分であるのか
そこまでは分からないけれど
濁っていく意識、澄んでいく感覚
…あといくらもしない内に、きっと彼が来る
その前に少しだけ、仕事をしないと
Last-modified: 2011-11-15 Tue 03:23:40 JST (4517d)