V/学園退魔録
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- Chapter.2 放課後の罠
- 二人の退魔師が仇の本願を遂げて数日、かつてありえた平穏は日常となって日々を過ごしていた
少女は学生であることを忘れないように勉学に励み、女はそれを助け教職として生徒に経験と見聞を広める 二人の人生は順風を送ろうとしていた。…が、二人はまだ知らない いや少女は知らなかった。義姉が受けた戦いの後遺症を────
▽ 放課後のある繁華街、少女は思慕する姉と共に帰路へとついていた 「…もー! 信じられない、今日もまた補修なんて!」 リスのように頬を膨らませて拗ねる少女、姉と一緒の帰りなのも彼女が補修を命じてそれに付き添っていたからである -- マリア
- 「駄目よマリア、今日も補修なのはこれまでの遅れを取り戻すため。…このままだと貴方、進級できない可能性だってあったのよ?」
仇を追っての退魔業、時には夜遅くや学校を休学してまでも続けた戦いの日々 それは二人を日常から遠ざけ、生徒と教師がそれぞれ担う勉強と授業の遅れを取り戻そうとしていた -- ユーリア
- 「だからって毎日することないじゃない。この学校で友達が出来なかったらどうするのよー…」
そんな軽口めいた冗談を言えるようになったのも仇を討てたからこそ、これまでは仇を追って各地を転々としていた 「こうなったら今日のユリ姉のご飯には期待しないとね! 早く帰ろっ」 屈託なく笑う少女、学生服のスカートを翻す姿に年相応の眩しさがあった -- マリア
- 「ふふ。そうね、帰ったら今日は貴方の好きなパスタで ───── !?」
突然、ユーリアの身がびくりと体が震える。まるで悪寒でも走ったかようだった だが顔は青褪めるよりも頬は紅潮し、息に熱が帯びる 「…くっ、ふぅ……。マリア、先に…帰って……」 -- ユーリア
- 義姉の突然の体調不良、よろめき壁に枝垂れかかる姿を見れば思わず肩を貸す
「ちょっと!? ユリ姉、大丈夫…?」 -- ユーリア
- 大丈夫といって肩を貸すマリアの手を握ろうとする。その掌は体温が高いのかじんわりとした温かさがあった
「ちょっと、授業の遅れを取り戻そうとして頑張りすぎたみたい…。近くで休んでいくから貴方は先に帰ってて……」 生徒からも人気の高いユーリアの微笑み、しかし力無く表情に不安を覚えなくもないと -- ユーリア
- 大丈夫と義姉がいえばそれに従うしかなく、頑なに先に帰ってと頼まれれば以上は水掛論になるとマリアも察してしまう。
「…なら先に帰るけど、きちんと休んでから帰ってきてね。そんな調子で明日学校で倒れられても困るし …夕ご飯、私が用意して待ってるから」 後ろ髪を引かれる思いで姉よりも先に帰宅の路につく。…それが姉の運命を分けるとも知らずに -- マリア
- 「……」
ユーリアは通りの向こうへと消えていくマリアを見送ると、人目を忍ぶように裏路地へと入っていく おおよそ休息を取るには似つかわしくない場所の選択、だが彼女は誰もいない場所を目指して奥へと進む 裏路地の生ゴミの匂い饐えたカビ臭さ、それらが鼻腔を通り抜けていくと思わず喉が鳴る やがて裏路地に誘われるがままに彼女が辿りついたのは建物同士がせめぎあい、死角となった裏路地の空き地だった 僅かにあいた四方形の空、夕暮れとなりつつある今となっては僅かな光源のようなもの 人目を憚るかの場所にてユーリアは壁へと枝垂れかかり、たまらず自分の身を両手で抱きしめてしまう 「くぅ…ん、ふ……熱い、体が……熱いの……」 -- ユーリア
- 息遣いも荒く、色めいた吐息が初夏だというのに白付く
「…こんな姿、ぅ…ん。マリアにも見せられないわね……」 教職のスーツ、それをはだけるように肩で脱げば下に着込んだ退魔師スーツが露わとなる 緑色のレオタード、その下のボディインナーは妖魔の瘴気を防いでくれるが今は彼女の汗を閉じ込める檻である 汗ばんだ体からはうっすらと蒸気がのぼり、くすぐったそうにユーリアは身を捩る 「は、ぁ…っ ふ、ぅ…スーツが、こすれて…熱い……」 ユーリアは体温の維持、いや湧き上がる性感のコントロールが出来なくなっていた -- ユーリア
- 体の芯から火照り悶える。あの戦いより数日、一日に一回はこの衝動が襲ってくるようになっていた
その理由、退魔師であるユーリアはおおよその見当がついている 「…あのときに、受けた瘴気の影響がまだつづ…くぅ……っ」 妖魔、人を襲い喰らい犯して慰み者とする。この世の摂理から外れたその種族は周囲に瘴気を振り撒き汚染させる ギエンの瘴気が芒野を枯らしたように動植物に影響を及ぼし、彼の体液や精を受けてしまったユーリアはその瘴気の影響に苦しんでいた いかに退魔師スーツが瘴気を遮断できるように作られていようと、体に直接流しこまれては防ぎようがない 妖魔に犯された者は程度はあれ瘴気から生じる性感に苦しむ事となる これを治療する手段や数日にわたる静養と薬物、もしくは治療の術式をかけ続けることである ユーリアは自らが受けた屈辱である以上、自分で始末をつけなければならないと退魔師スーツを着て内側の瘴気を出さないようにし 退魔グローブの宝珠の力を借りて治療へと自ら励む。だが妖魔の汚染は想像以上であった 「く、あぁ…! だ、駄目…集中が……」 宝珠が淡く光るも明暗し、彼女自身が霊力を練れなくなっていることを示していた かわりに身を抱く手指に力を込めてしまい、擦れる肌に悶えての声をあげる -- ユーリア
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- Chapter.1 終わりの始まり
- 夜が嘶く。
木々が身を捩るように葉を擦り合わせ、風が悲鳴のように空気を裂く。 芒原は吹き荒れる嵐の中にあった。 月夜を覆い隠すような曇天の下、その場所で相対する両の赤がある。 一つは獣の如き赤き眼、血走るその瞳は狂気に濡れている。 それに向かい合うように立つは炎、憤怒を瞳に宿した少女が炎を身に纏っていた。
- 少女の名はマリア、彼女は燃え滾るような炎の中で肌どころか髪を焦がすことなく立っていた
だが少女を焦がすのはもっと別の意思、それは仇敵を目の前にしたことによる激情だった 「見つけたわよ、…“美食のギエン”! 父さんと母さんのこと…忘れたとは言わせないわ!」 -- マリア
- ギエンと呼ばれたもの、人あらざる姿でくつくつと笑うも掠れるような声は耳障りであった
「知らんな。…君はいちいち、食材の名前を覚えたりするのかね? それよりも私の食事を邪魔してくれたことに対しての釈明が欲しいところなのだが」 2m近い巨躯は芒原では覆い隠せず、頬まで裂けた口がにたりと笑うのが見えた -- 美食のギエン
- 少女の両親はこの化物の手に掛かって殺されていた。ギエンの笑みが幼き頃の記憶と重なる。
「覚えてないですって ─── 」 その言葉が油となって激情を燃え上がらすのには十分な理由であった 「お前が! お前が! 全てを、パパもママもお兄ちゃんも殺して… それで人を食材だって言うの!?」 許さないと怒りで歯を剥き、身を震わせる だがそれを諌める声が不意に背後から投げ掛けられた -- マリア
- 「─── 待ちなさいマリア!」
少女の名を呼ぶ声、だがその一声は制止の意味を込めてであった) マリアの背後、彼女を追うよう飛び出した影があった 長い髪を揺らし、荒れる息を抑えようと深呼吸する。実際豊満な胸は呼吸と共に弾んで揺れる 「貴方ではまだギエンには勝てない…。やめなさい、マリア!」 -- ユーリア
- だが少女は制止の声を振り切り、向かい合う化物に対して一歩踏み出る
「なんでよユリ姉! ギエンを見つけたのよ、何でパパやママ…お兄ちゃんの仇を取っちゃいけないっていうの!」 今にも討って出ようとする少女、しかし思慕する義姉の言葉が最後の一線となっている あるいは妖魔の出方を伺っているのか、それは激情の最中にあってどちらと断言することは出来ない -- マリア
- 「…ほう、そちらのお譲さんの方には見覚えがあるな
あのときの退魔師の遺児といったところかね。…くく、生半可なものでは覚える価値もありませんが 君の家族は素晴らしい味でしたよ。ええ、私に覚えて貰えるとは実に運がいい」 その言葉にマリアの眉間に険が走り、湧き上がる憤怒が毛を逆立たせる 「そちらのお譲さんも頂こうと思っていたが、思わぬ邪魔が入ってしまって喰えず終いだったところだ これならば逃した食事よりも君たちの方がそそられる。…そちらの君もほどよく育ってくれたことだしね」 -- ギエン
- 「黙りなさい! 私の家族を奪って、それでいい味でしたって ────
ふざけないで! 絶対、絶対に許さないんだから…!」 -- マリア
- くつくつとした笑みが化物から込上げる。それは嘲笑するかのような人を小馬鹿にしたものだ
「何をどう許さないというんだ? その炎、あのときも君の親が纏っていたものだが… 所詮は負け犬の遺児。私を領地から追いやった退魔師どもと比べても貧弱… 君たち家族は時代の敗北者。君の両親、ああそしてあの男も私の前では食材にしか過ぎないのだよ それとも食材が抵抗したから処理したのを恨む? 君は魚が跳ねたからといってそれで諦めるのかね」 人間を食材、物としてか見ない言動。身も心も悪魔と成り果てたからこそ生まれる傲慢であった -- ギエン
- その言葉が引き金となり少女の躊躇いを突き崩す
「取り消しなさいよ…! パパとママだって立派な退魔師だったわ! それを侮辱することは私が…許さない…!」 後ろからやめなさいという声が掛けられるが戦いは最早避けられない、火蓋が切って落とされる 手にした両親の形見の剣で斬り掛かる、その剣筋は真っ直ぐなもの -- マリア
- だがその攻撃はギエンの両の鉤爪によって防がれる。交差するように結ばれた爪、その合間に振り下ろされた剣を挟む
「何が炎だ、吹けば飛ぶような火ではないか! これでは主采に程遠い、…な!」 巨躯からは想像のできない器用さで剣を弾き返す。獣のような風体でありながら人としての技量を持つ それこそがユーリアの危惧したギエンの凄みである。かつて退魔師に敗れたとはいえ、その実力は折り紙付きだ -- ギエン
- 「きゃあ!」
(剣を弾かれたマリアが態勢を崩す。このまま態勢を崩せば追撃を許してしまうと不覚を取った) (だがその失敗は柔らかな感触によってフォローされる事となった。先ほどまで背後に立っていたユーリアが詰め寄り、その背を支えたのだ) -- マリア
- 「本当にいつまでも立っても向こう見ずね。それだと勝てるものも勝てないわ」
思慕する義姉の支え、それに声をあげるマリアに対してユーリアは慰めではなく叱咤するように言い放つ 「立ちなさいマリア、戦いを始めたならそれに付き合うのがパートナーの役目…そして貴方の義姉(あね)としての勤め それにここで貴方を見捨てたりしたら天国のフィアースに怒られるわ。それにあの人のことを悪く言われて腹が立ったのは私も同じ…!」 グローブの指を握り締めるとぎちぎちとした音が鳴り、手甲の宝玉が意思を示すように淡く光る 「──── 美食の…いえ悪食のギエン! 亡きフィアースに代わって、私が貴方を討ちます!」 -- ユーリア
- 「こともあろうに人を悪食呼ばわりとは…、つくづく度し難い。ならばその遺志をスパイスとして添えてみせよう!」
妖魔が吼えるとその身体からは瘴気が噴出し、周囲の芒はその毒気に当てられて次々と枯れていく この瘴気は人が触れれば快楽へと誘い、たちまちに身を捩って悶えてしまうもの 毒気を振り撒く瘴気は二人の姉妹を包み込もうと迫るのである -- ギエン
- 義姉に支えられ身を起こしたマリアからは激情の色が薄れ、代わりに安堵を覚えることによって冷静さを取り戻していた
「…そうだよね。私は一人で戦ってるんじゃない、いつも隣にはユリ姉がいたんだもの だから私はもう一人で走らない。ユリ姉と一緒に仇を討つわ!」 決意と共に身に纏っていた炎の勢いも強まる。その瘴気とは対照的に周囲の芒は焼かず、逆に瘴気を焼いていくのだ 「こんな瘴気にやられる私たちじゃないわ!」 焔が剣へと伝播し横薙ぎに振るえば瘴気が熱風によって祓われる 父から受け継いだ熱き力、母から受け継いだ眼差し。兄が身を挺して守った意思をもってマリアが再び立ち向かう -- マリア
- 「マリア、私がギエンを抑えるから貴方はその隙に攻撃を!」
退魔の力を備えた宝珠の力を借り、マリアが呪文を唱えればギエンの足元に白色に輝く魔法陣が現われる 暖かさすら感じる色の魔法陣は悪しきものにとっては力となり、円より伸びた白色の帯がギエンを拘束する縛りとなった -- ユーリア
- 「な、ぐあ! 何だこの光は、邪魔だ! 失せろ!」
身より噴き上げる瘴気によって魔法陣をかき消そうとするもその攻防は一進一退、だからこその隙も生まれる -- ギエン
- 「はぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ギエンの頭上、白の光とは対照的な赤色の輝きがあった その正体はマリア、背に生やした炎の翼を推進として跳んだ姿だった 炎を剣に纏わせ、唐竹割りで上段から振り下ろす 先ほどの一撃とは比べ物にならない太刀筋が朱の線を引いた -- マリア
- それに気付いたギエンが同様に爪を交差させて受け止めようとする。だがギエンは慢心していた、先ほどと同様の攻撃と思っていたからだ
傲慢を打ち砕くかのような一撃は爪を折り、ギエンの肩から胴にかけてをなで斬りにするのだった 「があああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 どす黒い粘液のような血を噴き上げるギエン、致命傷となった一撃は巨躯を揺らがせどすんとした響きと共にその身が横たわる -- ギエン
- 着地と共に周囲に炎の風が凪ぐ。それはギエンの瘴気を祓い、枯れた植物を灰として地へと返していく
「はぁ、…はぁ……や、やったの?」 全力の攻撃による疲弊はあるがあっけなく斃してしまったことに呆けた 仇として追っていた相手の最後、それを遂げた一時。それは油断ともいっていい 「は、はは。やったよユリ姉! ついに、ついにギエンを斃したんだ!」 -- マリア
- ユーリアもまた仇の最後に呆けるが、マリアよりも冷静であった為にその兆候を逃さなかった
「油断しないでマリア、ちゃんと浄化までしないと ──── …!? どきなさいマリア!」 呪文の手を止めてまで前傾姿勢で跳ぶ。それは義妹を助けるため、マリアを突き飛ばす動きだった -- ユーリア
- ユーリアがマリアを突き飛ばしたと同時、横たわっていたギエンがバネ仕掛けのような動きで跳ね起きる
本来はマリアを狙ったものだったがユーリアの身を折れた鉤爪の指で掴み、口から血の塊を吐きながら高らかに笑うのだった 「剣を捨てろ! ぐ、ぶあぁ・・・はは! 形勢逆転だなあ、なあ退魔師!」 みしりとユーリアを掴む指に力がこもり、握られたユーリアが苦悶の声を漏らす -- ギエン
- 突き飛ばされたマリアは地面を転がり、一瞬の油断がこれを招いたと態勢をすぐに立て直す
「ゆ、ユリ姉!? …くっ、ユリ姉を離しなさいよ!」 -- マリア
- 「く、クク…。主導権がどちらにあると思っている? なあ!」
ユーリアを掴む指に力が加わると骨が軋む音と共に彼女の表情が苦悶に染まる 「おっと動くな、動けばこの女の命はない。 …だがこちらも傷を負った、食事を取って回復せねばな」 ギエンの背がむくりと膨れ上がる。灰色の皮膚から生まれ出る軟体の管、先端が口となって開いた触手の群れだった 磯巾着のように何本もの触手が生まれ、それらは一斉に牙を剥いてユーリアの柔肌へと喰らい付く -- ギエン
- 「く、ぐうぅ ─── !」
退魔スーツの上から喰らいつき、牙はスーツを貫通して皮肉へと突き刺さる 首筋や腕、胴や太股と体中に噛み付いた触手に痛みが走る。だが痛みと共に体に虚脱感が生まれる 「…は、ぅ……ぅ! 血が……」 喰らい付いた触手の牙から、触手の管を通じてマリアの体を流れる血が吸われていく ごくりと喉を鳴らして吸い上げる触手、マリアの顔が青褪めていく -- ユーリア
- 「…い、いや…やめて……やめなさいよ!!」
だがマリアとて今動けばユーリアが手折られ殺されてしまうと察することはできる 勝利の余韻から絶望へと落ちてくマリアの感情、それこそが美食だとギエンの表情が狂喜に満ちる -- マリア
- ユーリアの血は朝露のように透き通るような味わいだとし、マリアのぐしゃぐしゃに歪んでいく表情が最高のスパイスとなって身を癒す
肩口から斬られた傷は瞬く間に塞がるが、浄化の力によって斬られた傷は完全には癒えず皮膚が爛れたままであった 「素晴らしい味わいだ…! ああ、これこそどんなに熟成されたワインでも出せない芳醇な味わい…。 古来より生き血に対する信奉がなぜあるか、それを今説かれるかのような気分だ」 血を吸われ、苦痛に身を捩るユーリアとは対照的に恍惚へと浸っていくギエン 余情ともいえる興奮が彼の逸物を起こすには十全たるもの、人間の腕ほどもある性器が歓喜で上下に振れていた -- ギエン
- 「ふぅ……う…ぅ……くっ」
耐え忍ぶも血を抜かれる速度が速く、意識がまどろむように遠退いていく だが妖魔の体液が牙より浸透し、血を抜かれて行く感触がぼんやりとした性感を与え始めているのだ 蚊や蛭が痛みを与えずその傷口を麻痺らせるように、ギエンの吸血はユーリアの背筋に性感を走らせる だがそれに飽き足らず、彼の欲望は留まることを知らずとして逸物がユーリアの股座へと頬擦りをするのであった -- ユーリア
- 「やめて、お願いだからやめて…! 傷付けた私の方が憎いんでしょ、なら私を狙いなさいよ!
ユリ姉に、ユリ姉に酷いことしないで! 汚いものを近づけないでよ!」 マリアの手からは既に剣が握られてはおらず、直視できないと後ろ髪を揺らして目を覆っていた -- マリア
- 「確かに私を傷付けたお前が憎いさ。だからこそお前自身を傷付けるのではなく、この女を犠牲とさせて貰うよ
…ところで今、汚いものと言ったがどれのことを指したか教えてくれるかね」 いきり立った逸物はスーツに覆われたユーリアの秘裂を狙い定め、生物めいた亀頭が餌を前にしカウパーの涎を垂らしてお預けをえていた 「君は本当に失言が多いな。人を苛立たせるには十分なほどに ──── だから私がテーブルマナーを教えてあげよう。君の義姉を手本としてね」 ユーリアを掴んだ手が彼女を弄ぶように、みちみちとスーツの繊維を破りながら押し込み強盗ともいえる挿入が行われる -- ギエン
- 退魔師としての矜持、誇りともいえるスーツが逸物によって裂かれていく。それは彼女の自尊心が破られる音であったのかもしれない
「ひ、いや゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」 ユーリアは生娘ではない、婚約者と夜を通して愛を確かめ合ったこともある お互いにぎこちない動作に苦笑いをしつつ、痛みを思い出として覚えている だが今の彼女が得ている痛みは暴力的なまでのもの。女を従わせ、物のように扱い、蹂躙していく抽送運動 血が失われてぼんやりとしていた意識も呼び起こす痛烈な目覚め、ユーリアは歯を食いしばりそれに耐える -- ユーリア
- 心が軋む。自分のせいで家族が陵辱されていく
「やめて、やめて、やめて…! お願いだからやめてーーー!!」 代われるものなら今すぐ代わりたい、そんな心の痛みが頬から大粒の涙を伝わせる -- マリア
- 「げ、ひ、ひゃひゃは! 目を背けずに見ないと君の義姉はもっと酷い目にあっていくぞ、なあ!」
ユーリアの意思など無視した暴力的な接合、等身大のオナホールだといわんばかりに腕のみを振るう 妖魔もその野獣めいた欲望を隠しきれず、下品な笑いが叫びとなって木霊する 「ほぅら、よく見るといい。お前の大事な義姉は犯されて喜び始めているぞ」 -- ギエン
- ユーリアに否定できるだけの体力もなく、紅潮した頬と息遣いが裏付けするかのように現実として広がる
血から生気を得て快気した妖魔はその身に瘴気を再び滾らせ、血を吸う牙や接合する性器を伝ってユーリアの身体を冒す 脳裏を桃色に染めあげ痛みを快楽に変換し、ユーリアの性感は加速度的に引き上げられていく 「ひ、あ…あぁ……ふ、ぅ…ん……くぅ……」 出来ればこの姿をマリアには見ないでいて欲しい。退魔師であれど人間ならば逃れられぬ瘴気汚染 それに冒されていきあまつさえ強姦されて感じ始める姿など、ユーリアにとっても耐え難い心の痛みであった -- ユーリア
- 「ぎひ、きしし。そろそろ血を抜きすぎて死ぬかもしれないなあ
…だがそうなると人質の価値もない。だから私のを分けてあげようじゃないか ──── もっと血ではなく私の精液のデキャンタージュでだがね」 抽送運動が早まり、握り締められているユーリアの髪が上下になびく 込上げる劣情、妖魔の睾丸から空の子宮に満たされる邪悪なデキャンタージュ そのテイスティングに試されるのは他ならぬユーリアであった -- ギエン
- ギエンの逸物がその熱を高めていく、膣壁から伝わる躍動がその到来を予感させる
「いや、せめて膣外に…外に……い、やぁあああああああああああああああああ!!」 蛇が玉子でも吐き出すかのような塊での射精。どぷっとした粘りつく音がマリアとユーリアの耳に残る 聖職者であるユーリアの子宮が汚れた精で満たされていく。だが瘴気の塊でもあるその精は人間にとっては劇薬そのもの 「か…あぁ…は、はぁ…あ………」 精が子宮内で波打つたびにユーリアの意識が裏返る 彼女がただの人であったならば、訓練を積んでいなければこの衝撃でショック死もありえたことだ -- ユーリア
- マリアが膝から崩れ落ちる。愛する義姉の陵辱された姿、自分のせいで膣出しまでされてしまったこと
あのとき油断していなければという後悔がぐるぐると頭を巡る もう終わりかもしれないと諦めかけたとき、手繰る希望の糸を見出した -- マリア
- 「初物でないのが残念でしたが、だからこその味わいというものもある
もっと、もっと君の義姉を犯して孕ませた子を食すというのも──── 」 妖魔が自らの欲望を吐き捨てようとしたとき、体がやけに滾るのを感じる ユーリアの血から得られる生気が、魔力が濃さを増しているのだ なんだと視線を落とせば彼女のグローブ、宝珠が埋め込まれ手甲が輝きを強めている -- ギエン
- ユーリアは最後の賭けに出ていた。射精するときの油断、またそのときに注がれるギエンの魔力を糧とした切り札に
ユーリアはマリアほどに力が強くないために霊力をこめた宝珠を媒介とした術を使う その宝珠を意図的に暴走させ、駄目押しでギエンの魔力も利用した 結果として宝珠は今にも暴発しそうな状態に陥り、ユーリアも暴走状態にある宝珠の力に喘いでいた 「く、ぅ…どうせ死ぬなら、道連れに……」 -- ユーリア
- 「糞女(クソ)が〜〜〜〜〜〜〜!!」
これでは今にも破裂しそうな爆弾を抱えてるようなものだとし、ギエンはその表情を強張らせてユーリアを投げ捨てる ──── その瞬間だった -- ギエン
- 「──── クソはアンタよ! 地獄に落ちなさい!」
マリアは落としていた剣を拾い上げると炎を纏わせ、それを大きく振りかぶって投じる 切っ先を真っ直ぐにして飛ぶ剣、いやこうなれば炎の投槍だろうか ユーリアの決死を無駄にせず、破れかぶれの一撃はギエンの眉間を貫いた 剣から燃え広がる炎は悪しきものを焼き、瞬くまにその炎は全身へと広がっていく -- マリア
- 妖魔は自らが燃え盛るの悲鳴の叫びをあげ、自らがローストされていく瞬間を味わう事となる
マリアとユーリアの姉妹に対しての呪怨めいた断末魔、それが最後となってその身が崩れ落ちた 火種はギエンが冒した罪の重さの分だけ燃え盛り、死してもなお消える気配はみせずにいた 一瞬の出来事、それは全てを分ける。それはマリアとユーリアだけでなくギエンに対しても無情の教えとなってその煙をあげるのだった
- 今度こそ仇を討つことができたとして安堵しそうになるが、それどころではないと投げ捨てられ横たわるユーリアへと駆け寄る
「ユリ姉! ユリ姉、お願い起きて! 無事でいて!」 宝珠を暴走させるという無茶な賭け、それは装着者であるユーリアを蝕むには十分であった だがユーリアは無事である。呼吸は確かにあり、マリアの応答に対しても微笑むだけの余裕がある -- マリア
- 暴走状態にあった宝珠も小康状態へと戻り、力なくとも年長者としての技量の高さに救われるのだった
「大丈夫よ、マリア…。貴方をおいて逝ったりなんかしないわ…… だって貴方はフィアースが残してくれた私の家族だもの。ずっと一緒よ ──── 」 その言葉にマリアが大粒の雫をこぼす。だが先ほどみせた悲しみではなく嬉しさとして マリアにとってユーリアもこの世に残った最後の家族、たとえ血は繋がらずとも心繋がる支えなのだ 陵辱の影響もあってか眠るように目を閉じて意識を失うユーリア、それを抱きかかえてマリアは走る 街までいけば診療所がある。義姉と共に奪われた人生を明日からやり直すのだと 走る道すがら、曇天であった闇夜が晴れて月灯りが差し込む 暗い夜は終わったのだと ──── -- ユーリア
▽
だが月夜は二人の道筋を照らしたのではなかった。それは二人に気取られることなく、戦いを傍観していたものを炙り出したのだ 光沢のあるエナメルの輝き、豊満な体つきを隠すことなく強調した痴女めいたコスチューム だがその女がただの愚者でないことは、マリアとユーリアどころかギエンに気取られることなく潜んでいたことが証明してくれる 「本当に素晴らしいですわね、あの二人。肉親以上の絆で結ばれていますわ」 ギエンと同じような上品な口調、しかしその言動から垣間見える欲望は彼の比ではない 「だからこそ堕ちたときが楽しみですわね。──── ああ、魂の堕落こそが最高の美味ですというのに」 女が未だ燃え盛るギエンの亡骸に手をかざすと、その掌より黒き泥が生じて亡骸ごと炎を飲み込む 浄化の炎をものともせず咀嚼するように犇く黒き塊、粘性のような表皮は波打って光沢を輝かせる その光景を女は口端を歪めてにやりと笑い、──── 雲に隠れた月が新たな夜の到来を告げていた -- グロリア
【...to be Continue】
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Last-modified: 2015-06-01 Mon 11:20:33 JST (3224d)