V/学園退魔録




 

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  • Chapter.2 放課後の罠
    • 二人の退魔師が仇の本願を遂げて数日、かつてありえた平穏は日常となって日々を過ごしていた
      少女は学生であることを忘れないように勉学に励み、女はそれを助け教職として生徒に経験と見聞を広める
      二人の人生は順風を送ろうとしていた。…が、二人はまだ知らない
      いや少女は知らなかった。義姉が受けた戦いの後遺症を────

      •      ▽
             
        放課後のある繁華街、少女は思慕する姉と共に帰路へとついていた
        「…もー! 信じられない、今日もまた補修なんて!」
        リスのように頬を膨らませて拗ねる少女、姉と一緒の帰りなのも彼女が補修を命じてそれに付き添っていたからである -- マリア
      • 「駄目よマリア、今日も補修なのはこれまでの遅れを取り戻すため。…このままだと貴方、進級できない可能性だってあったのよ?」
        仇を追っての退魔業、時には夜遅くや学校を休学してまでも続けた戦いの日々
        それは二人を日常から遠ざけ、生徒と教師がそれぞれ担う勉強と授業の遅れを取り戻そうとしていた -- ユーリア
      • 「だからって毎日することないじゃない。この学校で友達が出来なかったらどうするのよー…」
        そんな軽口めいた冗談を言えるようになったのも仇を討てたからこそ、これまでは仇を追って各地を転々としていた
        「こうなったら今日のユリ姉のご飯には期待しないとね! 早く帰ろっ」
        屈託なく笑う少女、学生服のスカートを翻す姿に年相応の眩しさがあった -- マリア
      • 「ふふ。そうね、帰ったら今日は貴方の好きなパスタで ───── !?」
        突然、ユーリアの身がびくりと体が震える。まるで悪寒でも走ったかようだった
        だが顔は青褪めるよりも頬は紅潮し、息に熱が帯びる
        「…くっ、ふぅ……。マリア、先に…帰って……」 -- ユーリア
      • 義姉の突然の体調不良、よろめき壁に枝垂れかかる姿を見れば思わず肩を貸す
        「ちょっと!? ユリ姉、大丈夫…?」 -- ユーリア
      • 大丈夫といって肩を貸すマリアの手を握ろうとする。その掌は体温が高いのかじんわりとした温かさがあった
        「ちょっと、授業の遅れを取り戻そうとして頑張りすぎたみたい…。近くで休んでいくから貴方は先に帰ってて……」
        生徒からも人気の高いユーリアの微笑み、しかし力無く表情に不安を覚えなくもないと -- ユーリア
      • 大丈夫と義姉がいえばそれに従うしかなく、頑なに先に帰ってと頼まれれば以上は水掛論になるとマリアも察してしまう。
        「…なら先に帰るけど、きちんと休んでから帰ってきてね。そんな調子で明日学校で倒れられても困るし
         …夕ご飯、私が用意して待ってるから」
        後ろ髪を引かれる思いで姉よりも先に帰宅の路につく。…それが姉の運命を分けるとも知らずに -- マリア
      • 「……」
        ユーリアは通りの向こうへと消えていくマリアを見送ると、人目を忍ぶように裏路地へと入っていく
        おおよそ休息を取るには似つかわしくない場所の選択、だが彼女は誰もいない場所を目指して奥へと進む
        裏路地の生ゴミの匂い饐えたカビ臭さ、それらが鼻腔を通り抜けていくと思わず喉が鳴る
        やがて裏路地に誘われるがままに彼女が辿りついたのは建物同士がせめぎあい、死角となった裏路地の空き地だった
        僅かにあいた四方形の空、夕暮れとなりつつある今となっては僅かな光源のようなもの
        人目を憚るかの場所にてユーリアは壁へと枝垂れかかり、たまらず自分の身を両手で抱きしめてしまう
        「くぅ…ん、ふ……熱い、体が……熱いの……」 -- ユーリア
      • 息遣いも荒く、色めいた吐息が初夏だというのに白付く
        「…こんな姿、ぅ…ん。マリアにも見せられないわね……」
        教職のスーツ、それをはだけるように肩で脱げば下に着込んだ退魔師スーツが露わとなる
        緑色のレオタード、その下のボディインナーは妖魔の瘴気を防いでくれるが今は彼女の汗を閉じ込める檻である
        汗ばんだ体からはうっすらと蒸気がのぼり、くすぐったそうにユーリアは身を捩る
        「は、ぁ…っ ふ、ぅ…スーツが、こすれて…熱い……」
        ユーリアは体温の維持、いや湧き上がる性感のコントロールが出来なくなっていた -- ユーリア
      • 体の芯から火照り悶える。あの戦いより数日、一日に一回はこの衝動が襲ってくるようになっていた
        その理由、退魔師であるユーリアはおおよその見当がついている
        「…あのときに、受けた瘴気の影響がまだつづ…くぅ……っ」
        妖魔、人を襲い喰らい犯して慰み者とする。この世の摂理から外れたその種族は周囲に瘴気を振り撒き汚染させる
        ギエンの瘴気が芒野を枯らしたように動植物に影響を及ぼし、彼の体液や精を受けてしまったユーリアはその瘴気の影響に苦しんでいた
        いかに退魔師スーツが瘴気を遮断できるように作られていようと、体に直接流しこまれては防ぎようがない
        妖魔に犯された者は程度はあれ瘴気から生じる性感に苦しむ事となる
        これを治療する手段や数日にわたる静養と薬物、もしくは治療の術式をかけ続けることである
        ユーリアは自らが受けた屈辱である以上、自分で始末をつけなければならないと退魔師スーツを着て内側の瘴気を出さないようにし
        退魔グローブの宝珠の力を借りて治療へと自ら励む。だが妖魔の汚染は想像以上であった
        「く、あぁ…! だ、駄目…集中が……」
        宝珠が淡く光るも明暗し、彼女自身が霊力を練れなくなっていることを示していた
        かわりに身を抱く手指に力を込めてしまい、擦れる肌に悶えての声をあげる -- ユーリア

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Last-modified: 2015-06-01 Mon 11:20:33 JST (3224d)