名簿/485051
- 黄金歴225年 6月 --
- …
(古都アルマス、デュラモ枢機卿の住まう屋敷。) (私財の大部分を研究につぎ込んできたためか、枢機卿の住まいとしてやや質素な造りをした屋敷の広間に、鳥のような翼を生やした神殿騎士が立っている。) (普段はやや煩いほどに元気のいい彼女だが) (今その顔には、疲れと、不安が色濃く出ている) -- 隊長
- 先先月は31号、44号…そして先月は36号か…
一体何者がこの様な事を… (重苦しい雰囲気の中、口を開いたのは2mもある大きな、蒼白色の肌をした大男) 36号は無理心中と言われているが…あいつに限ってそんな事をするタマではない。 恐らくは二人を襲ったのと同じ犯人に… -- 副隊長
- …うく…ひ…
(二人と共に立つ、年若い隊員は、亡くなった仲間達の無念を思い、涙を流し続けている) (一番の年下という事もあり、仲間達からも可愛がられていた分、彼等の死亡報告を聞いた時の取り乱し様は尋常では無く) (事実、枢機卿の警護に就く少し前までは、とてもまともに任務等こなせる状態ではなかった) 殺人犯は…本当に枢機卿を狙ってくるのでしょうか…? (自信なさげに、呟く副隊長へ向け訪ねる犬耳の騎士) -- 隊員1
- ああ、まず間違いなくな…正体はわからんが
俺達の隊員を狙うという事は、敵の目的はデュラモ様とみて間違いないだろう…ご丁寧に 俺達特務隊を潰してから、悠々と暗殺を実行する気でいる ふざけた奴もいたものだ(最後の言葉に、明らかな殺気と怒気ををのせ、男が呟いた) -- 副隊長
- させませんよ(副隊長の言葉に続く様に、先程から黙っていた翼を持つ騎士が断言する)
死んでいった仲間達のためにも、私達の枢機卿様のためにも…賊は、我々で必ずや打ち取ります 31号、36号、44号…彼等の怒りを、悲しみを…犯人には身を持って知って頂き、そして償って貰わねばなりませんからね… 最も、それまでに理性と命が残っていれば、ですが (怒りを隠そうともせず、まだ見ぬ下手人へ憎悪を滾らせながら語る。) -- 隊長
- お前にしては随分と物騒な言い方だな…!
(不意に、3人の騎士が一斉に屋敷の入り口へ視線を向ける。) (突如として現れた、強烈な殺気の塊の様な気配。異形の力を得た自分達ですら一瞬竦ませるほどの) (威圧感を放てる者等、そうはいない…増してそれが、神国アルメナの中枢区、上流貴族や枢機卿クラスの者が住まう区域ともなれば) …来たな…(大男が大剣を構える。それを合図とする様に、犬耳の騎士は長剣、翼を持つ騎士はレイピアを構える) いるのはわかっている、さっさと姿を見せたらどうだ? (ドアの向こうの暗殺者へ、言葉を投げかける、返事は…無言) -- 副隊長
- 「…」(屋敷の扉が開かれ、暗殺者が姿を現す…一見した姿は、他の神国の騎士と余り変わらない、ローブ姿)
(だが、その体には鎖を一つもついておらず、それどころか神国の騎士の、教化された体であれば容易に着こなせる重厚な鎧すら付けていない) 「…きひ」(その姿を注視していた三人を目にするや、暗殺者の男が口を歪ませ、短い笑い声を上げた) お前が…お前が皆を!!(怒りに震える犬耳の騎士が、他の二人に先駆け、憎き相手へと斬りかかる!! --
- あの馬鹿…!!(フォローする様に、蒼白の肌の騎士が)
(暗殺者へと駆け寄る!) ぁぁぁあああああ!!!(犬耳の騎士が放つのは、技術も何もない、ただただ激情を乗せただけの振り下ろし) (だが、それは神殿騎士の膂力により、技など無くとも必殺の一撃たる威力を持って) (暗殺者へと襲いかかる!!そして、その一撃は暗殺者の頭上へと…) 「…」(犬耳の騎士の一撃を、微動だにせず眺める暗殺者、そして、その右足をコンパスの様に、四分の一程ずらすだけで) (回避不可能と言っていい速度で振られた剣の一撃を、何なく避けてみせる) そんな…ぅあっ!(殆ど回避不能な速度で放った、渾身の一撃をあえなく避けられ、衝撃を受ける) (そして、次の瞬間、暗殺者の両腕から繰り出された不可視の一撃が、犬耳の騎士の全身を切り裂く!) ぐ…(全身から血を流し、倒れる犬耳の騎士、辛うじて息があるのは) (神国の魔術により強化されたおかげだろう、常人なら即死は免れない出血量だ) -- 副隊長 &new{2012-08-16 (木) 01:11:47
- (暗殺者が、まだ息のある犬耳の騎士にトドメを刺そうとしたその時、咄嗟に後ろへ跳ね跳ぶ!)
(そして先程まで暗殺者のいた場所を、長大な体験が横薙ぎに通り過ぎる…あのままいれば、その体は容易く両断されていただろう) 大丈夫…では無さそうだな、全く無茶をする(倒れた犬耳の騎士に、息があるのを確認すると、視線を敵へと向け) (フードの奥から、敵意の籠った支援が向けられるのを感じる。だが、蒼白の騎士は、今度は竦むどころか不敵に笑い) いいのか、俺にばかり気を取られていて(まるで、注意する様に暗殺者へ言葉をかける) (それと同時に、突如暗殺者めがけ、天井から放たれる数本の矢!射ったのはあの翼を持つ騎士) (だが、暗殺者もまた並々ならぬ使い手であった、矢を見もせず、振り向きざまに両の手に握った特徴的な曲剣で急所めがけ飛来する矢を全て払いのける!) ふっ!(だが、それすらも布石、全てはこの瞬間のため) (矢を払った暗殺者の頭上へ、レイピアを逆手に持った翼のある騎士が、勢いよく落ちてくる!) -- 隊長
- おおおおお!!!(そしてほぼ同時に、先程の蒼白の騎士がその剣を横に構え、再度暗殺者めがけ、翼の騎士に合わせる様に振るう!)
(その異様に膨れ上がった右腕から放たれた、大剣の薙ぎ払いは、後退したところで到底避けきれるものではない、付け加えるなら、防御など以ての外だ。) (かといって伏せて避ければ、その頭か心の臓に、レイピアで風穴をあけられる…) (それはまさに、避ける事も防ぐ事も出来ない、放たれれば回避不可能な必殺の連携!) くう…(辛うじて致命傷を避けた犬耳の騎士が、目を開ければ、そこには今まさに必殺の連携を完成させんとする隊長と、副隊長の姿) (それを見た犬耳の騎士は勝利を確信する。未だかつて破られた事のないあの連携ならば、あのような異教の暗殺者が防げるはずがない) (そう、いかな剣の達人といえど所詮は人間である以上、あの技を避ける事等できない…できない筈なのだ) (だが、今まさに憎き仲間の仇が倒れんとしている筈なのに、何故か犬耳の騎士の胸には、言いようのない不安が訪れていた…) -- 副隊長
- (そして、二撃が交差する!)
…あ…? …馬鹿、な…
(そこにあった現実は、あり得ない光景。中程から斬られた大剣は、暗殺者の持つ、薄紅色の刀身を持つ刀が、切断たのだろうか) (上空からの一撃は…更に奇怪な事に、暗殺者のローブから生えた、剣を持ったもう一対の腕が、翼の騎士の腹部を刺し貫き、まさに刺さる直前でレイピアの侵攻を阻止している 「…まあ、少しは楽しめた方か…」(背中から生えた腕が、左右に振られれば) (翼の騎士の体は、腹部から真っ二つに斬り開かれ、上半身と下半身が別々の方向へと転がっていく) -- 暗殺者
- あ、ああ…(その光景を、見ていた犬耳の騎士は、余りの光景に信じる事ができず、ただこにならない音を口から漏らす)
き、っさまあああああ!!(激昂した蒼白の騎士が、棍棒の様に肥大化した右腕からのストレートを) (暗殺者へ目がけ振るう!だが) (その一撃はむなしく空を切り、暗殺者は悠然とその横を通る…) (そして暗殺者が通り過ぎたのが合図の様に、蒼白の騎士の体に無数の線が亀裂の様に走り) (まるで積み木を崩すかのように、蒼白の騎士の体は、文字通り崩れ落ちた) -- 隊員1
- (悠然と、枢機卿の寝室へと繋がる廊下へ歩を進める…)
ま、待て…!(声のする方へ振り向けば、そこには瀕死だった犬耳の騎士の姿) (あちこちから血を滴らせながらも、剣を構え暗殺者を睨みつける) よくも、よくも皆を…!!(怒りに燃える形相で、犬耳の騎士が地をかける!) ガァルウアァ!!(袈裟斬り、手首を返しての斬り上げ、合間に暗殺者の反撃の袈裟斬りが襲うも、勢いを利用し、斬撃を回転しながらかわしつつ、横薙ぎの一撃を更に繰り出す!) 死ね、死ね!死ねええええ!!!(まさに憎悪の塊と化した犬耳の騎士は、身に付けた技と、授けられた力の全てを使い、暗殺者へ猛然と攻めかけ、怒涛の連撃を繰り出す) -- 暗殺者
- (だが、それも並の剣の使い手ならば成す術もなく切り刻まれただろうが、相手は彼女よりも数段優れる仲間達を、いとも容易く斬り伏せた剣の達人)
(その連撃の全てを捌かれ、いなされ、ただのかすり傷すら負わせる事は敵わない) 「へえ、結構つええじゃん、なああんた…何なら見逃してやってもいいぜ?」 (それどころか、自分を見逃そうと提案すらしてくる目の前の暗殺者、だが…) ふっざけるなああ!!お前なんかに、お前なんかに!!!(頭に血が上りつつも、先程の様な大きな攻撃はせず、四つの腕から迫る剣を、力と頑強な、祝福された長剣で弾く) (どれ程斬り合い、弾きあっただろうか、それは執念が生んだ奇跡…暗殺者が放った四つ腕の剣閃を、犬耳の騎士が更にそれを上回る速度でその全てを弾く) くっらえぇぇ!!(その一瞬出来た隙を、犬耳の騎士は逃さない。すかさず駆け寄り、すれ違いざまにその胴を左側へ駆け、払い抜ける―) 「そうかい、残念だぜ。戦場に出て鍛えりゃ、いい剣士になれそうだったのによ…」 (いつの間にか、逆手に持った剣が己と、暗殺者の間に割り込んでおり…そして) (その腕が振り上げられれば、犬耳の騎士の体は斜めに割かれ、血が吹き上げる) …(そのまま、最期に何か小さく呟き、犬耳の騎士は自身の血で出来た、血だまりに倒れ込んだ) -- 暗殺者
- --
- 黄金暦225年 3月 --
- 遅いですね…(あれから暫くの時が経った。青年と異形の女騎士は)
(既に恋仲と言っていい程、仲睦まじくなっており、戦が終わった後) (二人でここを離れ、南方、酒場の街と呼ばれる場所で、共に暮らす約束まで交わす程になっていた) -- 隊員3
- (だが、枢機卿直属部隊として、戦場に出る事もなく無事終えられる筈だった最後の戦は)
(ゼナン焦土作戦を機に大きく目論見が崩れる) (そう、ついに自分達にも戦場への出撃命令が出たのだ。) (それだけではない、更に先月、特務隊の仲間が、何者かに惨殺されるという事件まで起こったのだ。) (犯人は相当な剣技の使い手という以外、何一つ手がかりが残っていない。それはつまり、姿形の見えない暗殺者に付き纏われている事と、同じであり) …(そうしたこともあってか、今日、彼女は青年をここへ呼んだのであった。愛する人の顔を見る為に、最後では無く、生き延びる決心のために) -- 隊員3
- 「…」
(そしてついに、待っていた青年がやって来る、だが、その表情は暗い) (待ちわびた想い人の出現に、思わず顔が綻ぶ…だが、その様子は明らかにおかしく) どうしたのですか、何k―― (駆け寄ろうとした所で、不意に、天地が逆さになる。) (最初は何が起きたのか、わからなかった。体を動かそうにも、目の前にある筈の体は、ピクリとも動かない) (それはそうだ、体とは頭脳からの命令があって初めて動くもの、それがこうも離れていては動かしよう等…)
(その瞬間、彼女は、自分の身に何が起こったか、全てを理解した) -- 隊員3
- …、…(何故、どうして?と呟こうとするも、口からはひゅうひゅうと音が漏れるばかり)
(そして彼の方を見れば、そこにはフードを被った、自分もよく知る、アルメナの神聖騎士の姿…) 「よくやってくれた、これは報酬だ」 (神聖騎士の男がそう言って渡すのは、通貨の入った革袋、それの意味する所はつまり…) 「…別に、あんた達のためにやったわけじゃない…」 (言いながらも、報酬を受け取る青年。) -- 隊員3
- (目の前が絶望で真っ暗になる。信じていた全てが足元から崩れ、底の見えない闇に落ちていく)
(いっそのこと、早く死ねれば幸せなのだが、なまじ教化された体は簡単に死ぬ事を許してくれず、首を断たれて尚、その意識は保たれている…否、保たれてしまっていると言った方がいいか) -- 隊員3
- 「しかし、まさかここまでうまくいくとは思わなかったぞ。やはり異形の騎士といえど」
「所詮は女ということか」 (首を失い、倒れ込んだその胴体を神聖騎士が踏みつける、青年がそれを睨むも、神聖騎士は尚もやめようともしない) 「何だその目は、俺はお前の家族の敵討ちを手伝ってやったんだ」 「感謝されこそすれ、睨まれる筋合いはないな」 …(家族、仇…?そこまで聞いて、彼女は思い出す、かつて、自分が初めて…否、二度目に彼と出会う前、彼と初めて出会った日の事を) (アルメナから脱出しようとした、彼の両親を、仲間と共に殺した事を) (その際の司教の命令で、まだ幼い彼の妹を、神聖魔術の素材として奪っていった事を) --
- (青年が口を開く、愛した人の筈の言葉が、今は耳にするのがたまらなく恐ろしい)
「ああ、そうだよ」 ヤメテ
「こいつ等は真実に気づいた僕の両親を虫けらの様に殺し」 ユルシテ
「あげく妹を、あんな恐ろしい魔術の生贄にした、最低の連中だ…!」 ゴメンナサイ ゴメンナサイ
(真実は、全てを失った彼女の心を、容赦なく抉っていく。狂信という強固な鎧を剥ぎ取られた今) (言葉の刃は、死にゆく彼女の心を、ズタズタに切り裂いていく) … … (涙を流しながら、殺してと叫ぶ。声は届かない。そもそも、声にならないのだから届く筈もない) (それでも彼女は何度も、何度も叫ぶ。殺して下さい、お願いします、殺して下さい、と) (やがて訪れる死の瞬間、彼女の心を満たす物は信仰でも、愛でも無く…ただ後悔と悲しみだけであった) --
- 「まあ貴様の事等どうでもいい。重要なのは、この女が始末できた事だからな、さて、後は…」
(すらりと、神聖騎士が剣を抜くと、青年の心の臓を後ろから刺し貫く) 「後始末だけだな」(血のついた剣を、青年に握らせる。恐らくは無理心中でもしたかのように見せるのだろう) (無論、少し異形化しただけの青年が、神殿騎士相手に無理心中などできる筈がない) (だが、その事実すら歪められ、そうした事件があったとされるのだろう…ここは、そういう国だ) 「…後は、あの男が残りを始末してくれるだろう…」(そう言い残し、神聖騎士の男は去っていく) (後に残るのは死体がふたつ) (復讐を遂げんとした悲しき青年と) (絶望の中で息絶えた、哀れな末路を辿った狂信者) (月明かりが二つの亡骸を照らす、青年の遺体の傍には、誰かに渡すつもりだった指輪と、南へ行くための地図が落ちていた) --
- --
- 黄金暦225年 2月 --
- とうとう俺等まで引っ張り出される様な事態になったか…
(ゼナン焦土作戦、あの熾烈を極めた戦いで、神聖騎士団は大幅に人員を減らしてしまった。) (加えてその人員の補充のため、各地で希望者を募ったものの、焦土作戦の作戦の悪評は想像以上に影響があったのか) (神国首都、及び一部の都市以外…それも辺境になればなる程、希望者は少ない。) (そうなると枢機卿といえど、我儘入っていられないらしく、近々起こるとされる戦では) (遂に自分達にも、出撃命令が下されたのだ。) -- 隊員2
- 「ま、待っテ…」(緑の肌を持つ神殿騎士の後ろを追う様に、大柄なローブを纏った騎士がついてくる)
(微かに覗くその顔や腕は、醜い瘤で覆われており、知らぬものであれば何らかの病気を患っている様にも見える) お前は…遅いんだよノロマ!何で俺より歩幅も体力もあって、何度も何度も俺より遅れんだ! (蛇の様な肌の神殿騎士が、大柄な騎士を怒鳴りつける。それは、もう先程から何度も繰り返された光景) う、うぅ…ダ、ダッて、そこで馬車ガ泥濘にハマって… (巨体を縮ませながら、大柄な騎士が謝る様に理由を喋る) -- 隊員4
- お前は…(はぁ、とため息をついて、今回の任務の相方を見やる)
最初は兎が罠にかかってたから、次は爺さんが強盗に襲われていた、それで今回はこれか… いいか、俺等は今、枢機卿様からの大事な任務の最中だ、わかるよな?内容覚えているか? (乱暴な口調ながら、諭す様に相方へ向け話しかける) う、うん…枢機卿様ガ、へんきょーに神殿騎士の素質がアル人がいないか、探してコイって…」 その通り、どうやら枢機卿様からの命令は忘れちゃいないようだな。 なら、俺等特務隊のやる事はわかるだろ?何においてもまず、枢機卿様の命令を遂行する事が、俺達にとって一番大事な事だ。 そうだろ?(同意を促す神殿騎士。実際は特務隊の人数を増やすため、一般人を誘拐し人材を確保しろという指令であったが) (その辺りの事は、恐らく伝えた隊長か副隊長が、意図的に削ったのだろう…この大男の知能なら、単純に忘れている可能性もあるが) -- 隊員2
- うン…で、でも
でもは無しだ、いいな(大男の反論を遮る様に、威圧するように言い放つ。) う、うぅ… (それだけで、大男は何も言い返せなくなってしまう) (その後、幸いというべきか特に何事もなく辺境の集落へ辿りついた彼等は、半ば強制的に希望者を集め終えると、他所でも徴発を行っていた本国への輸送隊に引き渡し、自分達は新たに別の集落へと向かった) -- 隊員4
ふう…ようやく終わったか。これで少しは枢機卿様のお悩みも、解消されるといいんだが… (結局、予定していた村や集落へ全て回った頃には、夜となってしまっていた。) (幾ら神殿騎士の体力といえど流石に今日中に本国に帰るのは困難と判断したのか、宿を取ろうとするも) (最後に回った村が森の奥深くだったためか、宿どころか人家すら碌に見つからない) (故に、その日は仕方なく野宿となった。) -- 隊員2
- 「あ、あノ人達…大丈夫かナ…ちゃんと、変われルと、いいけど
(今回の任務の相棒である、大男が心配そうに口を開く。自身も死ぬか生きるか、ぎりぎりの所で異形化に成功したせいか、他人事とは思えないようだ) それに関しちゃ、俺からは何とも言えねえな…ま、あいつ等の運と、神の御加護次第だ (対して緑の肌の騎士は、あまり興味が無いのか、大男の心配にそっけない返事を返す) しかし、お前はいつまで経っても甘いままだな…そんなだと、戦場に出た時辛いぞ (携帯食を口に放りながら、大男へ彼なりの忠告をする。) (それは、少なからず自身の経験からくる忠告でもあった) -- 隊員4
- あうぅ…
(忠告を受けた大男は、またも縮こまり口をもごもごと動かす。) お前は…まあいい(ちらりと、焚火の方を見る。既に炎の勢いは大分衰え、このままではもう少しすれば燃え尽きるだろう) …まあいい、俺は使えそうな枝が無いか探してくる。お前は妙な奴がいないか、見張っていろ。 (そう言うと、自分はさっさと暗がりへと消えていく) …気をつけて、ネ… (短く、そう呟くと焚火の前に座り込む。その表情は悲しげに俯いたまま) -- 隊員4
- きつく言い過ぎたか…(独りになり、呟く様に喋り始める)
いかんな…敵ならともかく、仲間にまでああいう態度をとっちまうのは。でもなー、俺 隊長や副隊長みたく上手く相手を叱る方法何か知らねえし… (ぶつぶつ呟きながら、使えそうな枯れ枝を拾っていく。) まあでも、あいつも何時かわかるだろ…異教徒相手には優しいだけじゃ勤まらんって事も。 なあ、あんたもそう思わないか? (唐突に、暗闇の中へ声を投げかける。) (夜の闇に覆われた森の中は殊更暗く、人の姿を見つける事は容易ではない。) (だが、彼は気づいたのだ。暗殺者としての経験が、勘が、そして何より、見えない相手の、自分へ叩きつける様な殺意が) (この場に正体不明の襲撃者がいる事を伝えている) -- 隊員2
- (相手からの問いかけへの答えは無い、代わりに、何か剣の様な物を抜く音)
つれねえなあ…まあいいさ、後で語る時間はたっぷりあるんだしなあ…(言いながら、自分も両の手に剣を持ち、逆手に構える) (夜の闇に紛れ、音もなく忍びよる様から、敵は生粋の暗殺者…恐らくは東ローディアの生き残りが、金で雇われたといったところだろうか) (だが、ここまで入念西かけてくるという事は、逆にいえば正面を斬っての戦いは不利だと思ったことの表れか) (ならば、自身にとって一番安全であり、かつ相手にとって一番厄介な状況…二体一の状況を作り出してやればよい) (心配なのは武器に毒が塗られていた場合だが、それも防御に徹すれば、自身の技術と力ならば、余程腕に差が無い限り、気配を悟られる様な相手から一撃を喰らう心配はないだろう) -- 隊員2
- (一先ず防御に徹しつつ一旦後退、その後仲間とと共にこの正体不明の暗殺者を撃退せんと、頭の中で手筈を整えた男は、逆手に剣を持ち、防御の構えを取ったままじりじりと後退する)
どうした、来ないならこのままいかせてもらうぜ? (不意に、殺意爆発する様に膨れ上がる、来る、そう直感した彼は、剣を構え防御を――)
え ?
(気がつけば、自分は宙を舞っていた、防御をしようとした筈の両腕は、変わらず}剣を握ったまま構えたままであった) (スローモーションにかかったかのように、いつまでも宙に浮く浮遊感に、いい様もない不安を覚える) (やけに体が軽い、全身から力が抜ける…と、不意に目の前に赤い、何かの液体が空から降り注ぐ) (それは、自分の血であり、その血が溢れている場所は…自分の、腰から下が無い、胴体から) -- 隊員2
- (どさ、と音を立てて自分が地面に転がる。体を斬られたせいか、まともに背中から落ちたのに、痛みはほとんど感じない)
(不意に、眠気と寒気が襲ってくる…地面に突っ立ったままの自分の下半身は、止まった時間が動き出した過の様に、血を噴き上げ倒れ込む) …謝っとけば、よかったな… (最期に口から出たのは、死を惜しむでもなく、神を称えるでもなく、傷つけてしまった後輩への謝罪の言葉) (その言葉を最後に、緑の肌の騎士は動かなくなった…) -- 隊員2
- さ、31号ー?(しばらくして、あの大男の騎士がやって来る。流石に遅すぎると感じたのか)
(仲間を探しに、森の奥まで捜しに来たようだ) 31号ー、どコ…!あれは… (不意に、木陰からちらりと見えるローブの裾を見つけ、駆け寄る、そこには…) あ、あああ…!! (体を両断され、既に息絶えた仲間の姿がそこにあった…両断された切断面からは、臓物がだらしなく漏れ出てしまっている…) -- 隊員4
- うぅ、うぅ〜…ううー…!!!
(泣きながら、どうしてよいかわからないのか、大男は必死に零れてしまった、仲間…31号と呼ばれた棋士の臓物を、中に戻そうとする) (だが、当然それで男が生き帰るわけもなく、戻した臓物は手を離せばすぐにまた漏れだしてしまう) うぅう…ぅあああああああ…!! (子供の様に泣き叫ぶ、大男…だが、不意に背中に厚い物を感じる、背中に手をやれば、そこには赤い血が) (振り向いたそこには、何者かが立っていた…その手には、剣らしき武器が握られ) お前カ…!オマエがぁぁあああああ!!! (瞬時に、仲間を殺した犯人であると悟った大男が、怒りのままに拳を横薙ぎに振るう!) 「…!」(かなり深く斬ったにもかかわらず、何事もなかったかのように反撃をしてきた敵に、流石の暗殺者も面喰らったのだろう) (辛うじて防御するも、防御ごと勢いよく木に叩きつけられる) -- 隊員4
- 許さなイ…ユルサナイぞオマエ…!!
(腰に下げたメイスを持つと、仲間の仇を睨みつける) 「…」 対して男の方は、無言のまま剣を構えなおす -- 隊員4
- …
… … --
- (その後、帰還の遅い二人を、他の特務隊が捜索したところ、二人の死体を発見した)
(31号と呼ばれた青年は腰から横に真っ二つされ、44号と呼ばれた大男は、最早原型がわからぬ程、細切れにされていた) (強靭な再生力を持つ44号との戦いで、襲撃者も多少負傷したのか、そこには死体から離れる様に点々と血の後が続いているも) (結局それは途中で消えており、犯人の特定となる手掛かりは得られ無かった) (この件を機に、デュラモ枢機卿はますます疑心暗鬼に陥り、身辺の警護の強化) (特務隊以外の、一切の部外者の、自身への訪問を禁ずるようになったという) --
- …それで隊長ときたらですね、「貴方にも飛べる事の楽しさを教えてあげましょう!」って私を持って飛んだはいいのですが…
…聞いていますか?(ここは、アルメナ、城壁の外にある、とある森) (例の一件以来、あの時の青年とはよく戦場で会う様になった。) (最初は直ぐに死ぬだろうと、気にも留めずにいたが、なかなかどうしてしぶとく生き残り続けてきた彼を見る内) (神殿騎士でもない、ただの青年が、なぜこうまで生き残れるのか、彼女の中で日増しに興味は大きく膨らみ) (遂には、規律に反するとわかっていながらも、こうして偶に暇を見つけては、この森で会い、会話を交わす様になっていった) (…本音を言えば、助けた彼を何度も見かけ、話す内に、情が多少移ってしまったのだが) --
- ええ、聞いてますよ(にこにことしながら、青年は半ば怪物と化した、女騎士を相手に相槌を打つ)
…あの、ええと…サロメ、さん(青年が、何か口籠る様に、女騎士へ向かい語りかける) --
- 他にも、仲間の一人が…?何でしょう?
(サロメ…名を聞かれた時、咄嗟についた偽りの名前で呼ばれ、女が3つ目を青年へと向ける) (サロメ…36号と名付けられた、女。だから36女(サロメ)。咄嗟についたにしては、なかなかに綺麗な名前になったと、彼女は内心一人、満足する。) -- 隊員3
- …また、サロメさんは戦場へ行かれるのですよね…これは、最近聞いた話なんですけど…
東の地の蛮族達が、兵を集めて、西を侵略しようとする動きがあるって、聞きました。 …僕達は、大丈夫なのでしょうか…(不安を隠しきれない様子で、青年はサロメへ質問を投げかける) --
- …神の威光は、加護は絶対です。それを疑うというのなら、容赦はしません(背筋を震え上がらせるほどの、冷たい目線が青年を見据える)
(空洞となった両の眼は見開かれ、表情も険しい…だが、それも直ぐに柔らかな元の表情に戻り) 安心なさい、そのための我等神殿騎士です。例えいかな不嬢の輩がやって来ようとも、この身に代えても滅して見せましょう 貴方達はただ、神を信じ、祈りを捧げればよいのです。 (優しく、諭すように語る女騎士。それは揺るがぬ信仰からの言葉だけではなく) (少なからず、目の前の青年を安心させたいという、気持ちも混じっていた) -- サロメ
- (その思いが通じたのか、青年の顔には安堵の表情が灯る、だが、それは直ぐに陰りが浮かび)
でも、俺…例え、勝てなくてもいいから、サロメさんには、生きてて欲しいかな、って… あ…す、すみません!俺、何て事を… (言ってから、自分が再び神を冒涜する様な行為を、不意に口に出してしまった事に気づいたのか、慌てて訂正しようとする。) (二度に及ぶ神の威光を、加護を蔑ろにするかのような発言…普通であればその場で処分されてもおかしくない程の重罪だ) --
- (はあ、とため息をつく。腕の代わりに伸びた触手は、額を押さえる様な動きをして)
貴方には再教育が必要な様ですね…いいでしょう、こんな事では心配で、神の御元にいけません。 必ずや、私が生きている内に貴方を立派な信徒にしてみせましょう (笑いながら語る女騎士、彼女もまた、たった今神を蔑ろにした者を見逃すという、大罪を犯した。) (恐らく自分も、何れは神罰を受けるのだろうという思いが心に圧し掛かる。だが、同時にこれでいいのだという感情も、心のどこかで芽生えていた) -- サロメ
- --
- ふふふ、今回の救済も大成功でした…邪なる異教徒は滅び
正しき教えに目覚めた迷える子羊達は、我等がアルメナの元へと…くふふ デュラモ様もさぞお喜びになられるでしょう…とはいえ、少し夢中になり過ぎました。 早く帰らねば皆も心配しているでしょうし…(一人呟きながら、アルメナへの帰路を急ぐ) (ローブを纏った、ダークエルフの様な姿の騎士。その額には、空洞と化した両の目の代わりとなるかのような、第三の目) -- 隊員3
- それにしても、彼等の言っていた事が気になりますね…大爛、東の野蛮人共が
何やら軍を集めつつあるとか。まあ、仮に蛮人程度、何百人、何千人集まろうが我等アルメナの騎士の敵ではありませんが (くすくすと、笑いながら杖を額の目で眺める) (その笑いは侮蔑や嘲笑では無く、それを心から信じているが故の、狂信からの笑い。) さて、とりあえず…!?(不意に、どこからか感じる視線) (自身の第三の目を開き、気配の主を探す。魔力を使った視界以外の感知も同時に行い、視覚外からの奇襲にも備える) (そして気づいた、木の陰に隠れ、目では捉えられないものの、魔力の波動は) (前方、木の影に何者かが隠れている事を、はっきりと伝える!) そこか!(両の腕の触手を、不意打ちで伸ばし、木の影へ回り込ませる!) くふふ…ただの魔術師と思っていた様ですが…残念でしたね? (触手に触れる人肌の感触、恐らく視線の主は彼だろう) (一瞬でそれを巻き上げると、木陰から引きずり出し、自身の元へ引き寄せる) -- 隊員3
- あ、あああ…(引きずり出されたのは、20になったかならないか程の、若い青年)
(異形とかした部分があるのを見る限り、恐らくアルメナか、スリュヘイムの出身なのだろう) す、すみません…お、俺…戦争になって、怖くて逃げて…お、お願いです、殺さないで… (握っていた剣を投げ捨て、命乞いをする。その様からはとても暗殺者や、盗賊の類とは思えない) --
- ふうむ…(指代わりの触手を顎に当て、思案する。少しの間考え込んだ後)
わかりました、今回はいいですが、次からはきちんと降伏の意思を見せた上で出てこないと、殺されてしまっても文句は言えませんよ。 見たところ、貴方はアルメナかスリュヘイムの者の様ですが…どちらの者ですか? (アルメナの者であれ、スリュヘイムの者であれ恐らくはそう高くない身分の者だろう。) (にも拘らず、女は目の前の青年を、アルメナの民であれば国へ連れて帰ろうとしている。) (彼女は狂信者であるが、その思想はアルメナ教の中ではイル派に近い思想を持っている。) (即ち富める者は貧しき者に施す義務があり、同じように強き者は弱き者を守る義務がある、そのような考えを持っている。) (故に、弱者に助力を請われれば、彼女はその教義への信念故、放っておく事ができないのだ) -- 隊員3
- 俺は…あ、アルメナの人間、です。その、生まれてすぐ…東ローディアに行って…怪我して
こっちに戻ってきたんですけど…(やや俯きながら、異形の騎士へ申し訳なさそうに告げる) その、助けて下さって…ありがとう、ございます…(おずおずと、固い礼をする) --
- 成程…同じアルメナの神に仕える方でしたか…では、共に神の元へ戻るとしましょうか
道中私といれば、いちいち呼びとめられたり面倒な事もないでしょう。 それではいきますよ(それだけ言うと、自分はさっさと歩き出す。) -- 隊員3
- え、あ!?は、はい!(慌てて追いかける青年、その顔には、いつの間にか笑顔が浮かんでいた) --
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