名簿/475384
- 依頼が終わり、一人部屋で思考に耽る。考えることは一つ。自分に指示された最後の仕事。
無事に終わらせることができればレオは晴れて自由の身。しかし、それをこなす為には五人。五人、誰かと戦う事が必要だ。 「刺客って、なぁ……」 なんだそりゃ……と一人呟く。まるで現実味のない言葉。そもそもそれは仕事と呼べるものじゃないだろう。 目的がまるで見えてこない。わざわざ自分から刺客を差し向けて、それを撃退するよう指示する。それのどこが仕事なのか。 もともとおかしな奴だとは思っていた。だけど今回のこの内容は特におかしく、理解しがたい。思惑がないわけではないのだろう。それを、読み取るには情報が足りてない。 そして、その思惑は自分になんらかの影響を及ぼす。予感めいたものを感じていた。 ソファーに寝転がり、そんなことを思っていると部屋の扉がノックされる。 突然の来客に思考は中断される。どちらにしろ考えたところで情報は足りてない。溜息交じりで寝転がっていたソファーから立ち上がり、玄関へと向かい扉を開ける 「はーい、どちらさんですか、と」 -- レオ
- 「よお、ちっこい兄ちゃん。確認なんだが、あんた、レオ・ネームレスで合ってるかい?」
長いローブをまとい、右目には眼帯をした、男がそこに立っていた。年の程は、見た目だけで言えばレオとそう大差がないように見えるだろう。 -- ???
- 「合ってるけど……誰だ、お前は」
なにかの勧誘かなにかだろうか。どう断ったものかな、と訝しげな視線を男に向けながら答える。 -- レオ
- 「俺はエドワード・L・ドレハー。覚えなくていいぜ、どうせ偽名だし」
右手で腰元の何かを取り出してレオの目の前に突き付ける。 「ここでお前は終わりだしな」 黒く光るその塊は、銃というには禍々しい気配を発していて、先程までは確かにこんなものは存在していなかった。 目の前の光景をそう捉えるくらい、レオの主観時間はゆっくり凝縮される。 この目の前の襲撃に対抗する手段を思考。 防御。ありえない。ヘカトンケイルで防げる様な威力ではない。ただの直感ではあるけれどそう感じる。 ならば回避。そもそも相手はトリガーを引くだけでいいのだ。それだけの動作で終わる程の隙を見せてしまっている。 ならば―――ーと、思考する前に手甲は姿を変えて、その能力を発動させていた。 『ガン』 直後、レオとエドワードと名乗る男、その足元の床は撃ち抜かれ、瞬間。照準はずれて、レオ自身も足場が崩れ落下し、体勢が崩れるように身を捩り銃口から避けようとする。 そして、トリガーが引かれる。 ただの銃弾であれば避けれていたかもしれない。しかし――― 「ぐぅぅぅううううっっ!?」 叫びを上げながら階下に落下する。何とか着地はしたものの、その右肩。避けきれず受けたその銃撃は、右肩を大きく抉り、皮一枚で腕が繋がっているような状態だ。 --
- 光をかざして --
- 「レオ君、今日は君に一つ朗報があるよ」
そんな言葉と共に部屋に訪れたのはレオの雇用主である男。笑顔をその顔に貼り付け、彼はレオの前に現れた。 -- ???
- ふーん。いつ死んでくれるんだ?葬式くらいには参加するぜ?
その男の言葉に棘のある言葉で返す。彼は自分の妹を救った男だというのに、依然と態度はまるで変わらない。変わることはない。 この男にだけは油断してはいけない。それがこの男に対する彼の見解。それゆえの態度だ。 -- レオ
- 「残念ながら、それはこれから先も未定さ。予定が決まったら誰よりも先に教えてあげるよ」
「さてさて、君の働きもそれなりのものなんだけど……おめでとう。今回持ってきた仕事をこなせば君は晴れて自由の身だ」 それは、朗報という言葉としてこれ以上ない内容だった。それは、両者にとって。 -- ???
- ………どうせ断れないんだから、詳細だけでもちゃんと教えろ。
いつもみたいにはぐらかすのだけはやめろよ。あれだけの金額だっつーのに、半分以下の仕事しかしてきてない。にも関わらず今回で最後だ? こう言っちゃなんだが、胡散臭すぎるぜ? 何をさせる気だ……? -- レオ
- 「中々の信用されっぷりに僕も嬉しい限りだ。とりあえずやってもらうことは、これから僕から君に刺客を放つ。それをすべて撃退する事。それが最後の仕事だ」
平然とそう言い放つ。なんら表情は変わらず、相変わらず笑顔を浮かべて。 -- ???
- ………はぁ? なんだそれ……刺客って、誰かからじゃなく、お前から?
ふざけているのか? という目線を目の前の男に送るが、ふざけているつもりはないようで、そのまま説明は続く。 -- レオ
- 「そ、言わば最終テストというものさ。ヘカトンケイルがどこまで成長しているか、と、同時に使い手である君がどこまで強くなっているのか」
「正直、時間がかかり過ぎている。だけどここまでかけた以上戻すこともできない。だから最終テスト。この状況下にきてまだ僕の予想を下回る強さしか見せれないならそこで終了だ。君は死に、ヘカトンケイルはその場で破壊」 「逆の成果であるのなら、もちろん君は晴れて自由の身。ヘカトンケイルの成長次第ではようやく量産もできるだろう」 つまり、こういうことだ。いい加減見切りをつける。 -- ???
- 命の係った最後の仕事か……全くもって勝手な話だ……
それでも、なんとはなしに予感はあった。このままでは進退が窮まっていくだろうことも。自分は、この男に対してなにかを期待されていて、それにいつかなんらかの形で応えざるえないことを。 そして、その時が来たのだと。おぼろげに理解する。 -- レオ
- 「人数は五人。時間は特に指定はない。だが、いきなり強襲されることもないよ。5人がかりということもない」
「集団戦を見たいのではなく、あくまでも対人、それも1対1の戦いを僕は見たい」 「勝敗の基準は生死。もしくは君たちが決めるルールで構わないが、それを良しとするかどうかは内容次第だな。少なくとも、死闘を演じてもらうことだけは絶対だ」 「逃げることは許さない。戦わないことを許さない。助けを求めることも許さない。君はヘカトンケイルを用いて、一人で、生き残るために戦え」 「一つでも破れば君の妹がどうなるかしれたものじゃないということだけは、頭の隅にでも置いておくといい。なに、僕みたいな男の下に預けたんだ。想像できないことではなかっただろう?」 -- ???
- ああ、想像できない事じゃなかった。想像したくはなかったけどな。信用してたわけじゃねぇけど、なるほど。俺は今若干ショックな状態のようだな。それが一番ショックだけど。
時間はともかく。時期はわからないのかよいつ何時って言っても期間がわからないのは最悪だ。そこも込みでというなら仕方がないけどな (いつかはこうなるかもしれない。妹を人質にされてなにかを要求される。この目の前の男はやりかねない。わかっていた。だけど、やらないで欲しかった。恩人であってほしかったという思い。それもまた、レオの中にあった甘さだった) -- レオ
- 「1年。今日からの1年間でこの仕事は必ず終わる。死ぬまでが期間だ、みたいな意地悪なことは言わない。仕事だし、なにより僕自身に関与することだ。ここで嘘は吐かない」
「彼らとの戦いが君に何をもたらしてくれるのか、今から楽しみだ。成功させろよな?レオ・ネームレス。僕は君に期待している。」 最後にそう言い残して男は変わらない笑みを浮かべたまま部屋を出て行った -- ???
- ………最後の仕事か、どう思うよ、ヘカテ
「何かある、そう判断します」 だよなぁ……だけど、やるしかないんだよな。 「ええ、私たちは挑んでくる相手をことごとく倒す。それだけです」 頼もしい相棒だよお前は。(コツン、と手甲を叩いた) -- レオ
- さってと、養成校も卒業して……本格的に冒険者か……(どさり、と室内のソファーに腰掛け天井を仰ぐ)
(脳裏に過る様々な出来事。どうにも忘れがたくて、温かくて……そういうものから少しだけ離れてしまうのだと思うと、寂しくて)いやいや、そういう風に思ってるわけにもいかねぇだろ俺。さっさと仕事して、妹と一緒に暮らすんだ。最重要目的はそれだろうが(頬を両手でパンパンと打ち気合いを入れる、と同時に玄関の扉が開いた) -- レオ
- 「やぁレオ君。ご卒業おめでとう、と言ったところかな」(やたら芝居がかった声とともに、胡散臭い風体の男が室内にやってきた)
「さて、前口上は終わったし、それ。見せてくれるかい?」(そう言って指差したのはレオの持つ手甲。) -- ???
- 前口上短すぎるだろ、もっと練ってから入ってこいよ(手甲を外して男に放り投げる)
ったく、連絡も入れてないのによくわかるな。本当気味が悪いよ、お前は(友にかける言葉とは違う、棘のある声。視線は訝しげで、彼に対して信用していないというのが目に見えてわかるだろう) -- レオ
- 「いつもどおりのご挨拶だね。目上の人間なんだから、もう少し気遣ったっていいんだぜ? というより気遣ってよ」(投げられた手甲を受け取ると、勝手知ったる、とでも言うように部屋のど真ん中で荷物をおろし、その中にある不思議な形をした工具を取り出して手甲の修理にかかる)
「この前のメンテが1年前だというのに、それまでの3年間以上にダメージが大きいねこれ。どんな1年間だったんだか知らないけど、とてもいい傾向みたいで嬉しいよ」(視線は手甲にくぎ付けだが、口元は嬉しそうに歪む) 「なぁに、君はいつだって監視されていると思ってくれて構わないんだよ? おいおい怖い顔するなよ。当然だろ? どれだけの給料を前払いしてると思ってるんだ。一般家庭が3代は遊んで暮らせる額だぜ?」(君もこいつももっと酷使してもらわないと、困るんだけどね。と付け足す) 「しかしこれじゃあもう修理というよりは改造に近くなるな。主要なパーツは全とっかえで、どうせだ、新しい機能も付けてあげよう。無料でな。どうだい? 優しい雇い主だろう?」 -- ???
- お前に気遣う必要なんてないだろ、俺達は友達じゃないんだからな。
わかってるさ。だから逃げるとかそんなことしねぇよ。そもそも、逃げれるかどうかも怪しいんだからな(ぼそり、と呟いて) (優しい? どこが。心の中で笑う)勝手にしろよ。俺はお前の言うとおりにやるだけだ。俺のやれる範囲でだがな。ただ、ヘカテはそのままで構わないだろう? -- レオ
- 「そうだねェ、でも、仲良くやった方がお互いいいと思うけどね。摩擦のない関係こそを望むよ」(室内では幾何学模様の魔方陣がいくつも展開していく。魔術を必要とする際に起きる光景だ)
「逃げてくれても一向に構わないけどね。僕個人としては困ることはない。君一人の始末をしたところで、大して影響はないよ。なんなら、君の妹さんにこの仕事を引き継いでもらったって構わないんだからね」 「この子は替えがないからね。君への負担を最大限まで引き上げていいならそれもよしだけど。効率を考えたら外す選択はありえないね。だから、そんなに気にしなくてもいいよ。君がもっと強くなってからそういう事を考えてくれ」 -- ???
- 摩擦しない距離で干渉すればいいだけの話だ。それ以上は望んでない。
わかってる。そう言ったはずだろう……?(剣呑な気配がレオから発せられる。)あいつは巻き込むな、俺がちゃんとやるって言ってんだ。 そいつは悪かったな……(それ以上はもはや言葉を紡がず、ただ黙って時は過ぎていった) -- レオ
- 「まったく、つれない限りだね。もう少し雇い主をもてなす気持ちってものが欲しいものだよ」
「知ってる知ってる、これには巻き込まないよ。これは君と僕との契約だからね。」(意味深な笑みを浮かべて、レオに笑いかける) (一時間近くの時間が流れただろうか、やがて部屋中にあった魔方陣は消えて、修理が完了する)「さて、これで修理は完了だ。もはや改造という形だったけどね。主に追加された機能は二つ。魔力凶化とアビリティチェンジ。詳しい説明はヘカテに聞くといい。僕がいると君は途端に愛嬌をなくすからね。よくないよ?」 「ああ、それと、妹さんだけどねぇ。彼女、どうやら完治したそうだ。いやぁ、よかったねぇ。これで安心して僕の依頼をこなせるだろう?」 -- ???
- 俺に愛嬌があるかなんて知んないけど、お前に振りまくものではないと思ってるよ、俺は。気持ち悪い事言ってんじゃねェ(渡された手甲を再度嵌める。)
(完治した、その言葉を聞いた瞬間。重く淀んだような表情は消え、驚愕と喜びの入り混じった表情が浮かぶ)ラスが……治ったのか……?! 本当に!? -- レオ
- 「嘘を言っても仕方がないからね。確かに彼女は完治した。今は君に逢いたいと言っているそうだよ? 兄として冥利に尽きるだろう?」
「君の望みはこうして叶った。だけど、叶ったからには尚更君は僕の依頼をこなさなければならない。わかるよね。それじゃあ、君が戦禍に巻き込まれてくれることを期待するよ。それじゃあね、レオ」(始終芝居がかった様子のまま、男は去っていった) -- ???
- (男が去った後も、半ば茫然としたまま突っ立ったままで……どれくらい時間が経ってからか、その場に座り込む)……ラス………! (名前を呟き、ただただ溢れる涙をこらえることはできなかった)
(絶望したあの日から今まで、願い続けてきた奇跡がかなった。ゆえに当然の反応) (しかしまだ気づいていない。彼が望んだ奇跡は、限りなく醜く、ぐちゃぐちゃに、歪められてしまっていたということに。まだ、気づいていない) -- レオ
なればこそ、もはや奇跡の出番はない。これから彼に訪れるのは、地獄のような現実のみ。 縋ったものは、一生の後悔ですら足りえないほど最低であった事を、彼は思い知ることになる。 --
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