「うわーん、プロットとか思い浮かばないし何も書けないよー!」  「おいおいどうしたんだね、騒々しい」  「ひっく、うっぐす!プロットが思いつかなくて書けないんだ」  「はっはっはっは、そんなの簡単さ。こうすればいいんだ」  書きたいなと思う小説とかを引っ張り出す。  読む。  ノートとかにこれはいいと思った部分や構成(ただし章単位で可能な限り乱雑に)を抜き出す。  それとは別にイカス男や捻くれた男やボインちゃんやツルペタを思い浮かべて、  それをノートに書き散らしていく。  小説などから抜き出したものに思い浮かべた人物を当てはめる。  「あとはこれを弄くったり整えたりすれば作品完成さ!」  「パクりは良くないって言うじゃない!」  「違うさ、パクッていない!これは自分のものだ!とぬかしたり、お金を稼ぐのがよくないのさ」  「な、なるほど!つまり……!」  「そう!堂々とパクリ元にパクリました!って言えばいい」  「でも同人誌とかならどうなるのさ!」  「同人誌にしなければいい、ネット上にUPして『〜〜に触発されてパクッたもの』と書けばいいんだよ!」  「同人誌を作りたかったら!?」  「あとがきにちゃんとパクりましたって書いて20〜10部だけ刷って売り逃げろ!」  「……おじさん?」  「なぁにネットでUPされたりP2Pで流れて問題化しても20〜10部くらいなら損害と訴える方が馬鹿を見る」  「……えっと、おじさん?」  「ようは金を儲けなければいいんだよ!だけどあくまでもコピーからはみ出す勢いのパクりならばの話さ」  「……丸パクリじゃないんだね」  「そうさ!丸パクリなんてのは怠けているのと同じさ!」  「デスノートのパクリとか言われたアレは!?」  「ちゃんと『どっかで見た風景だ!』とか『集英社に殺される』とか言えば許してくれたんじゃないのかな!?」  「振っておいてなんだけれど、おじさん凄い勢いで叩かれそうな事言っているね!!   だ、だったらさ!お金稼ぎたいときにパクる時は?」  「そういうときはね!こうするのさ」  上記の通りに書きあげた後に読み直してパクっている部分を修正して整える。  「それって面倒じゃないの?」  「君は賢いから気付いているだろうけれど手間を惜しむ事が創作の一番の敵さ!面倒臭いと思ったらもう終わりだ」  「そ、そうか!刺激を受けてそれを書いて手を加えていけば!作り上げたときにはもう見る影も無くなっているよね!」  「そうだ、完全コピーなんてやろうと思わない限り人間には出来ないんだよ!   ラブコメを描こうとしていたらサイバーなデストピアで主人公のクローン惨殺しまくっているヒロインたちがいたり!   剣客が秘剣や名刀を巡って殺しあう話がご飯を如何に美味しく食べて江戸中の道場に雇ってくれ入門させてくれと行脚する話になっていたり!   書こうと思ったものとはまったく違うようになっているんだよ!」  「そうだね!おじさん!僕頑張るよ!」  「頑張れよ!」  翌日、おじさんは偽札を作っているのがバレて検挙されていた。  それを見て僕はおじさんがとても悪い人だということを理解して、  ちゃんと一から自分のものを書こうと思った。  でもおじさんは一つだけ正しいことを言っていた。  面倒臭い、手間を惜しむ。  これが一番、何かを作るときの敵だという事を。  そう、おじさんは面倒臭いからとハロワに行かず、手間を惜しんで履歴書を書いたり体調を整えたりしなかったのだ。  早寝早起き、歯を磨いて顔を洗いお風呂に入る。  創作だけでなく人生はそこから始まる。  少年はこうして大人になりましたとさ、めでたしめでたし