91年6月 理由が理由だけに、同じ種類の依頼ばかりとなれば書くことも尽きる 今回は護符を見つけることが出来たが、俺の手には回らなかった 呪術の類は縁遠いから良いのだが 6月は梅雨の季節。雨の降るを楽しむが良い この辺りは紫陽花が咲いていただろうか ふと見たくなった 91年7月 茸狩り名人とは……なんともいえぬ称号をもらったものだ それだけの経験をつんだと思えば悪くないが…… 捜索組みとなった以上、不可避ではあるか 九尾はここの所忙しいようだが、人の都合はどうにもならん 別に俺を宿木と考えても構わぬことは構わない しかし時を共有できれば、それはとても良いことよな 91年8月 度々思うことではあるが、瑣末な問題 しかしあえて考えてみよう 罠や扉があるのになぜ今更鉱脈を探させる ついでに化生退治させられたと考えるのが妥当なところか 夏の盛りに夜風に当たるは、なんとも気分のいいものだ 縁側で月を見ながら風に当たりつつ、風鈴と虫の音を肴に酒を呑む こちらに来てからはそうそう出来ぬことだ 91年9月 報酬こそもらえてその点は満足するが 怪我こそ負っても仕留めることは無かったというのが残念だ 怪我すら負わなければ、楽な仕事と思えたものを 季節は間もなく秋となる 残暑も引く頃となれば、随分過ごしやすくなるだろう 出歩いてみるのも悪くあるまい 91年10月 いよいよもって更に上位の依頼へ回されるようになったか とはいえ銀鉱に飛ばされていたわけではない コボルド共とはいえ、精鋭と呼べるほどになっていた そして手に入れたのは、この見るからに上質な長弓 あいにく、弓の扱いはそれ程上手くないのだが……一応教わったことはある、試してみるか そして小金持ちと呼ばれるようになった。割と稼いだものだな 秋も深まり、再び紅葉の季節が巡ってきた 九尾よ、お前は何を思う 91年11月 父と月同じく逝ったか 91年12月 弓矢の使い心地も、存外悪くは無い だがやはり、俺は剣術の方が性に合っているようだ また年が明ける だが隣にあいつは居ない されど一月も経ったならば、思い出としよう また1人で新年を迎えるのも、あるいは悪くないかもしれんさ 92年1月 道中良さそうな剣を見つけたが、俺の手には回ってこなかった 代わりということも無かろうが、インプ十体殺しなどと呼ばれるようになった 奴らはよく出くわす、そう呼ばれるようになるのも無理からぬことか とはいえ、ものが見つからねばなんともならん…… 新春……今年は何をして過ごすということも無い 天照大神も黄泉降りされて久しく、あいつも居ない アヤメめはどうしているだろうか よもや、いまだにメソメソしていることも無かろうが…… 俺はよい、もう過ぎたことだ、さて…… 92年2月 近頃、剣を振ってもいまひとつ興が乗らぬ しばしの間、弓術にかまけてみるか 思いの外、上手く扱えておるようだしな 時は2月、節分の頃 豆を撒かれる覚えも無ければ、豆を撒く相手も無い 詰まる話特にすることはなさそうだ 92年3月 弓術も続けていけば、案外悪いものではない 慣れてきてみれば、思いのほか使いこなせている俺が居た 長弓そのものの出来もあるのだろうがな 春の日和の訪れは早く、もう綿入りの世話になることもなかろう 毛皮の生え変わりも間もなく終わり、少しは落ち着けるか 雛祭りは俺とは縁遠い祭りだからな 92年4月 今までに無く敵の多い仕事であった どれもが今までに無く強く、白熱していたといって良いだろう ものを見つけることは出来なかったが、財宝はたんまりと見つかった 金貨1万枚を越える。なれば不満はない 4月、桜の咲きそろう時期となれば大分良い 花見の季節は色々と楽しむことが出来る 一人で見るのも、悪くは無かろうさ そういえば天照大神が黄泉より帰られているらしい 気付かなんだ 92年5月 刀を差していないと、随分腰が軽い だがそれだけに落ち着かなくもある それはともかくとして、今月は先月の残りでしのぐことになりそうだ アンジェリカは無事に敵を討ち果たしたようだな じきにあの刀もこの腰帯に戻ってくるだろう ほんの一時、家を追われるまでの短い間に武士であった頃の、名残 29……か