「黄金暦88年6月某日 冒険者たちが集う酒場」 夜。煌々と灯りがともる酒場 財宝を手にし意気揚々と帰還してくる者 死んだ友を悼み酒を酌み交わす者 巨大な怪物を討った話を誇張交じりにする者 何故かたくさんいるバニー 飯を食い酒を飲み仲間たちと談笑する者 1人で静かに食事を摂る者 戦死者報の前に力なく崩れる者 胸の大きさをめぐって大乱闘する者 流れ椅子が直撃し、卒倒する通りすがり 暗闇に蠢く何故か楽しそうな半透明達 逞しい腕をした女に絞め殺されそうになる男 ツケを払わない冒険者に皿洗いをさせるマスター 人間もそうでない者も 思い思いに過ごす酒場のいつもの風景 その喧騒の中に、大きな眼をした人型と褐色肌の女はいた 互いの無事を喜び、冒険の話をし合う2人 半刻余りもそうしただろうか 2人は手をとりあって階段を上る 酒場の2階より上は宿になっており、女はここの片隅の一室を借りている たまに吹き飛んだりするので安心できないのが困りもの、らしい 人型は女の部屋に入るといつも 語らい、身を寄せて甘え、そして日付も変わらないうちに 酒場の地下にある広い空間に帰る しかし、今夜は少し違った 女は愛しい人型に体を許した 男として生を受けた彼女の身体は、腕の良い医師と 高名な魔術師によって完全に女になっていた また、人型の生みの親である博士はこの人型に 人間の男と遜色のない機能を与えたらしい 身体を清めた後、女は一糸纏わぬ姿のまま人型の前に現れた そして、一瞬停止し、顔を赤くしてのぼせ上がる人型に変わらぬ愛を告げ 共に寝台に入る やがて女の悦びの声があがり、寝台が軋む音が廊下にも伝わるが 奥まった部屋だったためか、野次馬を集めるには至らない 初めて同士、そして異種族間の手探りの行為は明け方まで続いた 「黄金暦88年6月某日の次の日 1階酒場」 徐々に陽が差し込む酒場内 酔い潰れて突っ伏す者達 夜通し語り合っていた者達 酒場を掃除するバニー 熟睡するバニー 仮眠から起き出し、料理の仕込をするマスター いずれ次の月の依頼書が配られ、その準備に忙しくなる冒険者達 この繰り返しが酒場の日常なのだろう 2階の1室で幸せそうに抱き合って眠る2人もその流れの中に生きている 後日、あの日のねえちゃん、歩き方が変だったな と、ある冒険者はニヤけながら語ったとか ---------------------------------------------------------- 登場人物  大きな眼をした人型   バブルマン・カプコム(ID:19025)  褐色肌の女   シマシマ・パンツァ(ID:30791) 執筆  シマシマ・パンツァ(ID:30791)