冒険日記 黄金暦87年9月 はじめての冒険 コボルドさんたちと戦いました。 ぴりぴりして緊張する……! こういうの待ってたんですよっ! 黄金暦87年10月 狼討伐依頼 とても質の悪いフレイル貰いました。 でも斧の方が慣れてるからこっちつかおっ! 黄金暦87年11月 人型の怪物討伐依頼 一緒に冒険してた人、3人も亡くなってしまいました。 こういう緊張感、楽しみにしてたはずなのに。 なんだか、涙が止まらない。 黄金暦87年12月 狼討伐依頼 酒場で見た人と一緒の冒険でした。 金の鎧を着込んだ、イッキ?さん。 罠から皆を守ってくれました。 皆を守る、かぁ。そっちの方が、もしかして。 黄金暦88年1月 地下鉱脈捜索依頼 鉱脈はなんかつまらない、って思ったんですけど、 同じくらい、ホッとしました。 それでも、何が起こるかわかりません。 みんなを、守るんだ。そう思うと、気が引き締まってきました。 結局鉱石は見つかりませんでしたが、なんだか大切なものを見つけた気がします。 黄金暦88年2月上旬 友達捜索 思い切ってルルフェットさんに声をかけてみました。 甘味同盟に入れてもらえるみたいです! 次の依頼から帰ったら、もっといろんな人に声をかけてみよう。 黄金暦88年2月 鉱脈探索依頼 蝙蝠さん、オークさん、ゴブリンさんと、戦闘がそれなりにありました。 手ごたえはいまいちだったので、やっぱり退屈でしたが。 黄金暦88年2月下旬 友達捜索 吸血鬼の先輩方や今まで会った方たちに声をかけて回りました。 バレンタインってこともあって、チョコにだいぶ助けられました。イッキ?さんにもあげてきましたし! おかげで、今まで会ってなかった人たちとも仲良くできました。 吸血鬼のヴラドさんには、お説教食らっちゃいました。 吸血鬼としての自覚が足りないって。 確かに他の吸血鬼さん、落ち着いててかっこいいです。 私もあんな風になれるかな? 黄金暦88年3月 鉱脈捜索依頼 今月も鉱脈でした。 仲間の人が足場から落ちたとき助けられませんでしたし、 罠からは助けてもらっちゃいました。 まだまだ私は助けられる側みたいです。 鉄鉱は、見つかりませんでした。 黄金暦88年3月下旬 どうしようもないもの、討伐依頼 冒険から帰って、サマエスタさんのところに行きました。 ご結婚なさったということで、私、無責任に祝福の言葉を…… こんなのってないです。絶対何かの間違いです。 帰ってくるはずです、そうじゃなきゃおかしいんです! 誰かが死ぬのは、もういやなんです…… 黄金暦88年4月上旬 みつからないもの、捜索依頼 考えさせられることがありました。 私にできること、するべきこと、またするべきでないことがなんなのか、 だんだんわからなくなってきます。 黄金暦88年4月 鉱脈捜索依頼 今回は、オークさんとの戦闘、ゴブリンさんとの戦闘に加え、アクシデントが多い冒険でした。 仲間の剣士さんが崖から落ちてしまって、大怪我をしてしまったり、扉から矢が飛んできてしまったり。 大げさなのかもしれませんが、それでも、全員無事に帰ることができたのが凄く嬉しいです。 これが討伐依頼だったら、どうなっていたんだろう。考えると、また涙がでそうになって。 多分、次はないんです。今度誰かが亡くなったとき、そのときは、私はどうすればいいんだろう。 黄金暦88年4月下旬 討伐成功 アチャーさんが凄いことになってました。じゃなくて エドさんが帰ってきました! やっと、おめでとうって言えます。 お二人は絶対に、幸せになるべきなんです。 涙は嫌いです。流れる水は、苦手なんです。 黄金暦88年5月 珍しい茸捜索依頼 インプの群れの不意打ちで、嫌な予感はしていました。 広場に入ったとき、急に大きな音が鳴り響いたんです。 その途端、狼男の集団が現れて、私たちパーティに襲い掛かって。 4人の冒険者さんたちが、あっという間に…… 私はまた、そこから逃げ出しました。もしかしたら、まだ間に合ったかもしれないのに。 最近、狼男につけられた傷には吸血鬼の治癒力が働かないと聞きました。 深く抉られました、確かに消えそうにないです。きっと、私が滅びるまで残ると思います。 強く、なりたいです。 黄金暦88年5月下旬 とても嫌な欲望、討伐依頼 ナッツさんが、帰って来ません。 たくさんの人を助けて、お金もとらず、いつも笑って、水ばかり飲んでいたナッツさん。 密かに、私の目標にしていました。 私は弱いです。逃げ出してばかりいます。お墓からも、逃げてしまいました。 私には、死を遠ざける手段があります。 でも、それはきっと、使っちゃいけないんです。 使えば、その人をずっと苦しめることになります。 それに、命が軽くなってしまうんです。 ナッツさんに帰ってほしくて、でもできなくて、 どうしようもなくなって、逃げたんです。 でも、レオさんやランスロット・マスクさんが亡くなって、 それでも強くあるカタリナさんを見ていたら、 私も強くならなくちゃいけないと、思いました。 ちゃんと、お墓参りに行こうと思います。 黄金暦88年6月 鉱脈捜索依頼 初めて、罠をみつけて回避することができました。 私は戦闘ではあまり役に立てませんから、少しでも助けになれて、凄く嬉しいです。 黄金暦88年7月 鉱脈捜索依頼 狼が出たこと以外、特に何事もなく鉄鉱がみつかりました。 危険なことはないに越したことはないですが、 ちょっと拍子抜けしてしまいました 黄金暦88年7月下旬 笑顔の裏側、捜索依頼 嬉しいです、とてもとても嬉しいです ナッツさんが帰ってきていたんです! でも、冒険に出る少し前のように、笑顔に力がないんです。 理由は別のものだと思うんですが、何かを悩んでいるんでしょうか。 黄金暦88年7月番外 甘い怪物討伐依頼? お父さんが訪ねてきました。NAGOYAで冒険してきたそうです。 怪物の写真も撮ってきたみたいですが、なんか不気味で強そうです。 オーカーゼリーやブラックプディングが強いって聞いたことあるんですけど、 甘い怪物はみんな強いってことでしょうか? 遭難したみたいですけど、無事帰ってこれたようで何よりです。 お土産も持ってきてくれました。こっちの方が怪物っぽい? でも食べたら美味しかったので、おすそわけしてこようと思いますっ 黄金暦88年8月 鉱脈捜索依頼 また、やられました。罠にかかった瞬間の、突然のあの音、あの声、あの姿に、 情けないことに、私はもう、半分泣き出していました。 狼男に完全に囲まれて、簡単に逃げられるような状況ではありません。 全員で斬りかかり、隙を見てなんとか逃げ出しましたが、 結果、3人の冒険者さんたちが亡くなってしまいました。 この命は、亡くなった人たちに助けられたものなんです。 死ぬわけにはいきません。 戦って、戦って、戦い抜いて、 逃げて、逃げて、逃げ延びてやるんです。 生きられる人は、全員連れて。 十字になったこの傷に亡くなった人たちを思い出して、 私はこれからも生きていかなきゃ、いけないんです。 黄金暦88年8月下旬 笑顔の裏側捜索依頼 2 ナッツさんの笑顔が、ちゃんと戻ったように感じました。 私も、笑わなきゃ。 黄金暦88年9月 珍しい茸捜索依頼 罠をみつけて、回避できました。 罠は怖いです。あの音は、できればもう聞きたくないです。 黄金暦88年9月下旬 寂しさ、甘え、討伐依頼 ヴラドさんにはいつも、吸血鬼としての自覚が足りないって言われてました。 先月、そんなヴラドさんが、私はこのままでいるのがいいって、言ってくれたんです。 その言葉が、なんだか凄く嬉しかったことを覚えています。 でも、冒険から帰ると、そのヴラドさんは、永い眠りについていました。 100年は眠るって話です。正直、長くて、凄く寂しいです。 そんなとき、お父さんが水着を送ってくれました。 同封されていた手紙によると、涙に溺れないための水着、だそうです。 今までも乗り越えてきたみたいだし、もう必要ないかな、とも書いてありました。 お父さん、勝手に日記を読んだらしいです……。 ヴラドさんがこの水着を見たら、また自覚が足りないって言われるんでしょうね。 でも、今は着たいです。涙なんかに負けずに、もっと強くなって、 100年後に会った時には、褒めてもらいたいんです。 黄金暦88年10月 鉱脈探索依頼 罠はありませんでしたが、戦闘がわりと多い依頼でした。 鉄鉱も金貨も見つけましたし、何より全員無事でよかったです。 黄金暦88年10月下旬 明るい未来、捜索依頼 アルカディアさんまで眠りについてしまいました。 お婿さんのことは、100年後に持ち越しになるようです。 そういえば、ちゃんと探して駄目だったら、ヴラドさんが……ってことを言っていましたし、 ひょっとしたら、目が覚めたあとには素敵な展開があるかもしれません。 そんな光景を見届けられる日を想像して、その時を待つことにします。 黄金暦88年11月 鉱脈探索依頼 オークとの戦闘があっただけで、すぐに鉄鉱が見つかりました。 こんな依頼ばかりなら、平和なんですけどね。 黄金暦88年11月下旬 不安、恐怖、討伐依頼 お兄さんが眠りについたそうです。 ヴラドさん、アルカディアさんと、周りの吸血鬼さんたちが、 次々と眠りについていきます。 でも今月は、吸血鬼さんの血を引いた人たちと 知り合うことができました。 今月はエドさん、セリザワさんが倒れましたが、 お墓参りに行ったらペンギンさんがいたり、 液体の入ったカプセルに入っていたり。 あの人たちはもしかしたら、吸血鬼より丈夫なのかもしれません。 次の依頼は狼討伐です。 一年近く討伐依頼なんてしていないので、不安でいっぱいです。 狼だけで済めばいいんですけど……下手すると、滅んでしまうかもしれません。 全力で、行ってこようと思います。 無事に帰ってこれたら、マスターさんにあのこと、頼んでみようかな。 黄金暦88年12月 狼討伐依頼 あの音が、響きました。 ここで死ぬのかと思いましたが、でてきたのは狼の群れ。 討伐対象も獣型の狼で、狼男は出ませんでした。 恐れていたことが起きず、全員無事に生きて帰れて、安心しました。 黄金暦88年12月下旬 前を向く勇気、捜索依頼 カタリナさんが亡くなりました。 どんな時でもたくさんの人に笑顔を振りまき、 どんな小さなことにもよく気がつく、 とてもとても、大きな力を持った人でした。 私も、たくさんの力を貰いました。どうか、安らかに。 ……例のこと、向こうで怒ってたら、ごめんなさい ティルアさん、あなたの笑顔、しっかりと心に刻んであります。 私が生きている限り、絶対に忘れません。 OGURAトースト、美味しかったです。 いつか、来世のティルアさんと出会えたら、またパンを焼いてもらえたらいいな。 私も、もっとおいしいお菓子を作れるように頑張ってみます。 黄金暦89年1月 人型の怪物討伐依頼 狼男が出ました。 と思ったら、なんだか違うみたいです。あまり強くないし、 傷からも、あの時のような嫌な感覚がそれほど感じられませんでした。 戦闘後に聞いてみると、下っ端のコボルドだったらしいです。 ……まぁ、区切りとしてはちょうどいい相手だったと思います。 冒険後、一人前の顔になったって、仲間の人に言ってもらえました。 この依頼でそういってもらえると、とても嬉しいです。 黄金暦89年1月下旬 これからの生き方、捜索依頼 ジャックさんが亡くなりました。 とても優しい人でした。私の顔の形のクッキーを貰ったときは、凄く嬉しかったです。 カボチャのジャックさんとは、向こうでもいいパートナーでいてください。 私は、ひとまず冒険者を引退することにします。 なので、少しの間は酒場でバニーをすることに。こんな感じなんですね 明日、これからのことを、マスターさんに話してみます。 このまま雇ってもらえれば、嬉しいな。 この冒険日記は、ここで終わります。 ひとつの区切りとして、これからは別の日記帳で、別の冒険を始めます。 いままでの冒険を通して、たくさんのことを学びました。皆さん、ありがとうございます。 これからの冒険でも、たくさんたくさん学びたいと思います。皆さん、よろしくお願いします。 シィラ・レィザ