被験者使命:合歓木エリカ 性別:女性 年齢:14歳 来歴:千葉県八街市に生誕。    両親ともに潜在的異能者であり、両者の特性を受け継いだ模様。    両親がその異能を発現しないまま一生を終えたのに対し    エリカは10歳の時分に異能を発現した。    これに目を付けた両親は、エリカをご神体とする新興宗教「愛神教」を興した。    現世利益のあるこの宗教は八街市を中心に信者を増やし、    エリカは「神の子」「聖女」と称えられ、勢力を拡げたが    同時にエリカの異能、「願いを叶える力」の情報も拡散した。    (異能者ならぬ両親には秘匿という概念もなかった)    この結果、エリカを巡り幾度も抗争が勃発した。    国内外を問わず、様々な権力者、富豪、マフィア、更には妖異までもが    エリカを誘拐せんと時に買収を持ち掛け、時には暴力に訴えたが    その悉くを公安警察特殊一課の凄腕達が退けた。    睡眠中に見た夢を元とする妖異も、この凄腕達が片付けた。    しかしそんな日々も長くは続かなかった。    閉鎖的な施設で、身体を、異能を使われるだけの毎日に    耐えきれなくなったエリカが愛神教を出奔。    そのまま鉄道を使い茨城県に逃れ、そこである男に出会った。    男は福島県大熊町の生まれの農民であり、    原子力発電所のために立ち退きを余儀なくされ、原発を憎む人間だった。    互いに他人の都合に利用され、振り回される人生を送ってきたためか、意気投合。    男とエリカは惹かれあい、手に手をとって逃避行を開始した。    それがいけなかった。    この時点で2ndステージに達していたエリカの異能は    男の願い、世界滅亡を現実のものとしようと働き    東日本大震災を引き起こした。    男が具体的に最も憎む原発は津波により破壊され    巻き添えで太平洋沿いの一帯も多大な被害を被った。    (規模が日本の半分程度で済んだのは、エリカの想気不足だと推測される)    この災害が異能由来だと察知した公安警察は、日本国政府に報告。    政府は秘密閣議を開き、合歓木エリカの暗殺を決定した。    暗殺を決行したのは公安警察特殊一課の凄腕達…    嘗てはエリカの護衛の任に着いていたチームであった。    なお、エリカと懇意になった農夫の男は大震災で命を落とし    エリカを利用し、追い詰めた両親や愛神教幹部はエリカ同様暗殺された。    こうして合歓木エリカは故人となったものの    大震災の傷跡はいまだ消えず、エリカの遺伝子とこのデータは    ここ埒外能力研究所にて保管される運びとなった。    次にその異能について記す。 異能名:<夢現>(ユメウツツ) 概要:他者の夢を現実にするという力 他者の願望や欲望としての夢(※特性β) もしくは睡眠中に見る夢の一部を現実に顕現するという(※特性α) 二重の特性を発揮する。 しかし基本的には睡眠中に自動発動するため 実質制御不能であり、万能ながら危険性も高い。 1stステージ:「夢は夢」 ・特性α:睡眠中の夢に現れたものを妖異として顕現させる。      この妖異は夢か幻の様な希薄な存在であり      現実のものに物理干渉する事は出来ない。 ・特性β:またこの妖異の傍でのみ、      他者が欲しがるものを顕現させられるが      これもまた幻に等しい。 2ndステージ:「夢は現」 ・特性α:基本的には1stと同じだが      出現した妖異は現に物理干渉が可能となる。      また、想気を知覚出来ない者にも認識される。 ・特性β:他者の肉体的、物質的な願いも現実に出来る。      ただし異能保有者との肉体的な接触が必要であり      それは深ければ深いほど効果も強くなる。      具体的に言えば性交渉が一番強まるのだが      この事に気付いたのがエリカの父親であった事は記さざるを得ない。      そしてこの特性ゆえ、エリカは新興宗教から逃げ出すに至った事も。 3rdステージ:「現は夢」 ・特性α:夢や妄想が現実の側を変容させる、と推測される。      すなわち夢に登場した人物を、      夢の中に登場した姿・能力で妖異化してしまう。      更に言えば、妖異にならなかった部分は夢と消え果てる。 ・特性β:想気さえ足りるならば、どんな願いを叶える事も出来るし      実際に起きた事を夢に変え、消し去る事も出来るだろう。      現での接触が必要であるという条件は変わらないと思われる。 埒外能力研究所所長:異能忠敬