「ねぇあなた……生きてる意味あるの?」

俺には生きてる価値も無い……
だが……死ぬ価値も無い……

生まれつき背が高かった。生まれつき力が強かった
生まれつき孤独だった。生まれつきこの腐った街で生き抜かされた

「兄貴、後はロイドの奴らをぶっ潰せば」

「……」

「此処で文句を言ってくる奴らは居ないッスね」

「……今から行く」

「今からッスか!?」
「まだ怪我治ってない奴もいますし第一兄貴自身の怪我が……」

「大丈夫だ……」
「さっさと終わらせてくる……」
「……一人で良い」

「あ、兄貴……」

俺達は子供だ。身寄りも無い奴らがこそこそ裏で生きている
まるでドブネズミがゴミ箱を漁る様に浅ましく、醜く、不快だ
だが生きる為には仕方が無い。持ってる奴らから奪うしかない

「何だてめぇは」

他の奴らの縄張りに向かう。別に慣れ合うつもりも群れるつもりも無かった

「見かけない顔だな。何の用だ」

勝手について来ただけの奴ら。強い奴に従ってるだけの奴ら

「おい、こいつ隣町のあいつだよ!」

強い? 決して自分の事はそう思わない

「や、やめろ!」

ただ

「がああっ!」

飯が

「ひいいいぃ!ロイドさんを呼んで来い」

食えれば

「ぐおっ!?ぐうっ……」

──それで良かった

「おい、やめろ」
「うちの兄弟達に手を出すんじゃねぇ」

生きる意味など

「ロイドさん! 助けてくれ!」

「お前らほんと頼りにならねぇな」
「ファコンだっけか。何の用だ?」
「ここを潰しに来たのか。一人で?」
「おい、どうにか言ってみたら──」

考えた事も無かった。考える必要も無かった

「ぎゃあああああああっ!!」
「は、離しやがれ!」
「だから目的はなんだよ! 俺はここらの奴らとは……」

「……食いものだ」

「は?」

「ぎいいいいいいっ!!」

「ロイドさん!?」

「構わねぇ、俺らでもやれる! あいつは今手負いだぞ!」

……悲鳴がうるさかった

そうこうしている内に良くわからない大人達から仕事を貰った
見せ物だ。向こうが用意した奴と喧嘩して買った方に金が貰える
相手は様々でその喧嘩を大人達が見物する。ついてきた奴らも見物する
今日で何回目だったか……覚えていない

「お集まりの皆様! 見物料は払いましたか?」

「今日のカードは齢15にしてこの巨漢、ファコン・キルシヴァス!」
「そして最近脱走したばかりの訳あり、ファコンをも超える超巨漢」
「マイザー・ヴェッタ!」

手に鎖をつけて囚人服。足にも鎖をつけた大男が現れた
息が荒く、興奮している

「どちらも無口であまり言葉を話しません」

「ヴォオオオオオッ!」

「おや、マイザーの方は話せたみたいですね」

「兄貴ー! やっちまえ! そんで俺達ファミリーの名前を──」

「始めろ」

上に居る大人達が合図した。すぐさま相手が突進してくる
身体に似合わないスピードで
拳同士がぶつかる

「げはぁ……お前ぇ……やるじゃねぇか」

「……喋れたのか」

「お前ぇこそ」

それから何度か拳を貰った
返した
貰った
何度繰り返したか覚えていない

「お前ぇ……わかるぜぇ……」
「俺は金の為にここに居る。お前だってそうかと思ったら」

「そのつもりだ」

「違うな。お前は俺と違う目をしてる」
「まるで獣だ。化けもんだ」

……べらべら喋るから隙だらけだった

拳が相手の目を抉った

「ぐあああああっ!? 目がああっ!!」
「てめぇ! ぶっ殺してやる!」

狂ったような高い声で襲いかかって来た

「死ね! 死ね! とっとと死んじまえ!」

化け物か

「なんでだ!? 死ねよ!」

俺はそうなのか

「お、おい止めろ! 俺が悪かった! ここのルールは知ってんだろ!?」

俺は……

「ぐいいいいいいっ!ぎゅうううぅっ!」
「ふしゅう ふしゅう」
「ひゅう ひゅう」

「お、おい……あれ……」
「……助かるのかあれ……?」

「死んでねぇか!?」
「きゃあああああああっ!!」
「お、おいあいつやっちまったぞ!!」
「ひいいいいいいっ!! ひいいっ!」
「逃げろ! 俺達はもう関係ねぇ!」

──手が滑った

「君の様な人間を待っていたのだよ」

──俺は

「チャチな見世物など辞めて私の元に来ないか?」

──人間

「躊躇無く人を殺せる人間がもうこの街には居なくてね」

──俺は人間

「君の生活は保証しよう。その代わり、しっかり働いて貰うよ」

──俺は人間が嫌いだ