[[名簿/498186]]

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-&color(darkgreen){この都市に来る前のこと。 &br;カミル・オロヤクは父の背中を見て育った。 &br;広く大きい、純人間の父の背中。 &br;父は豪放磊落で力強く、男らしくて、自分には持っていないものを全て持っているように思えた。 &br;カミルが「はやく大人になって、お父さんみたいになりたい」というと、父はこういうのだ。 &br;「お前の時間は俺より長いが、焦ることはない。ゆっくり育て」 &br;幼いカミルは待ち遠しくて、長く伸ばした首が痛かった。 &br;「僕が父のようになれる日は、いつ来るのだろう?」}; --  &new{2013-05-21 (火) 01:53:34};
--&color(darkgreen){この都市に来てからのこと。 &br;上級生はもちろん、同級生も、個性的な人ばかりだったけど、 &br;みんな自分よりしっかりしていて、カミルは困ってしまった。 &br;そのような中、カミルは異能に目覚めた。 &br;幼き日に聞いた言葉を映すような、感覚強化の異能に。 &br;それをもって何が出来るか考えた末、カミルは探偵部に入部した。 &br;迷い犬や迷い猫などを探したり、浮気調査で昇りたくもない階段を昇って、1年と半分。 &br;探偵仕事が少しは板についてきた頃、カミルは帰省を決めた。 &br; &br;父と同じようにはまだまだなれない。 &br;カミルはカミル自身の、目の前の未来を探さなければいけないのだと思った。 &br; &br;そのためには、一度過去を振り返らなくては。}; --  &new{2013-05-21 (火) 01:57:07};
---&color(darkgreen){&br; &br;そして、先月。黄金歴248年8月のこと。 &br;僕、カミル・オロヤクは父に会った。 &br; &br;2年前より少しだけ老けた父に、学校のことや探偵部のことを話すと、父は昔と同じように笑った。 &br;そして、己のこれからのことを相談すると、父はこう答えた。 &br;「ゆっくり育て、カミル。一足飛びに大人にはなれん」 &br;父はその大きな手で、カミルの頭をくしゃりと撫でた。 &br;「その赤毛の先輩が言う信念や、その番長とかいうのがいう『道』を、お前はもう持っているはずだ」 &br; &br;カミルは、帰ってきてから気付いた。自分は今の探偵という仕事が楽しいのだ。 &br;何か困っている人を、それが例え小さなことでも、手を取って助けられる身近な探偵になりたい。 &br;なので、今はそのために頑張ることにした。焦らずに、ゆっくりと、残された1年半を。}; --  &new{2013-05-21 (火) 01:59:14};