[[HMK/春惜しむ歌]]

-''放送室に向かう途中、あちこちにこびりついた血痕を見ながら思う。&br;どうして僕だけ惜春の使い手に殺されなかったのだろう、と。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:04:43};
--&color(#000099){………何か、忘れている気がする………なんで僕だけ、輪郭がぼやけたという結果だけ残っているんだろう。}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:05:25};
---''脳裏に響く、同級生の罵声。笑いながらの暴力。それが心底嫌だった、緑ヶ丘高校の日常。'' -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:06:20};
---&color(#000099){そうか、僕はいじめられていたんだ。誰もが僕を見て見ぬ振りした。&br;僕をいないこととして扱った。だから……(一番奥の掃除道具入れを開く)&br;&br;あの日、天井を突き破って落ちてきた惜春を魔剣と知りながら手にとったんだ。}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:08:12};
---''目の前に落ちてきた妖刀を手にとった時、それが惜春という名前だということ。&br;そして、概念を斬れる魔剣だということを瞬時に理解した。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:09:15};
---&color(#000099){僕はずっと日常を壊したかったんだ。誰も彼も憎くて、嫌いだったから。&br;そして僕は最初に、この学校の関係者の逃げる、という概念を斬った。}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:10:40};
---''学校に閉じ込められた全員を一人一人、斬り殺す。悲鳴、命乞い、絶叫、惨劇の音。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:11:42};
---&color(#000099){そして僕は最初に、『学校の関係者』として逃げるという概念を自分の分も斬っていたことに気付く。&br;もう家には帰れない。&br;そして魔剣を使いすぎた影響で僕の輪郭はぼやけていた。&br;&br;惜春の使い手は、世界の理を斬った分だけ世界から隔絶していくんだ。&br;&br;(掃除道具入れに無造作に置かれていた、鞘に収まった妖刀惜春を手に取る)}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:13:49};
---''もうどうしようもない。どこにも行けない。僕は今、それを思い出していた。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:14:30};
---&color(#000099){でも僕は謝らない!! 後悔しない!!}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:14:59};
---''放送室に駆け出していく。電源を入れると、息を切らせたまま叫んだ。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:15:33};
---&color(#000099){お前らが死んだのは!! お前らが悪いんだ!!&br;お前らが僕をいじめたから!!&br;お前らが僕をいないものとして扱ったから!!&br;お前らが死んだのは自業自得だ!! お前らを殺したのは正当な復讐だ!!}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:16:25};
---''ハウリングする放送室の中で、荒い呼吸をしながら妖刀惜春を抜いた。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:17:18};
---&color(#000099){そしてこれは………僕自身の『自業自得』だ。}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:18:08};
---''僕は惜春で目の前の空間を斬った。&br;惜春は寸分違わず、僕自身を袈裟懸けに斬っていた。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:20:14};
---&color(#000099){畜生………やっぱり、痛いな…………いじめられていた時と、おんなじだ…&br;(倒れ込むと、出血で死ぬより早く惜春の使いすぎによる反作用で自分の存在が消えていった)&br;&br;みんな……みんな死んで……死んでしまえ…………(そのか細い声が放送から僅かに聞こえた直後)&br;&br;(妖刀惜春だけが放送室に残された)}; -- [[小村一朗太>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-05 (水) 21:22:10};
---''誰もいなくなった学校で、妖刀は今もそこに転がっている。'' --  &new{2021-05-05 (水) 21:22:48};
-''乾いた血の痕跡も生々しい学び舎に、今日も放送が鳴る。'' --  &new{2021-05-03 (月) 20:28:08};
--&color(#000099){皆さん、こんにちは。お昼の放送の時間です。&br;すっかり蒸し暑くなってきて、校外に出る時は汗ばんでいます。&br;死んでしまったら、涼しいのでしょうか。それは今の僕にはわかりません。&br;あの事件から先の記憶以外、曖昧で申し訳ありませんが。皆さんのご冥福をお祈りします。&br;それでは本日の音楽は[[Peace and Quiet>つべ:BSgLbN9vats]]です。}; -- [[校内放送>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-03 (月) 20:32:16};
-''12時ちょうど。誰もいない高校にて。&br;惨劇の痕跡残る学び舎に、昼の放送が鳴り響く。'' --  &new{2021-05-01 (土) 20:26:32};
--&color(#000099){皆さん、こんにちは。お昼の放送の時間です。&br;ゴールデンウィークが近いため、例年なら大掃除の後にゴミの搬入に間に合わせるように校庭の隅にゴミ袋を集める時期です。&br;しかし皆さんはもうゴミを出すことはないので、関係ありませんね。&br;学校は今日もとても静かです。学校の皆さんを殺した妖刀・惜春に関する情報をお待ちしております。&br;それでは本日の音楽はベートーヴェンの[[田園>つべ:v7efJEm6pQM]]です。}; -- [[校内放送>HMK/春惜しむ歌]] &new{2021-05-01 (土) 20:31:02};