[[企画/誅殺部隊カタコンベ]]
#Menu(empty)
-街から半日ほど歩いた、手付かずの森を一望する小高い丘の上。 &br;草木は漸く新芽を出し始めたばかりで、溶け残った雪が白粉めいて地肌を隠している。 &br;大きな楡の古木の陰に、慎ましやかな墓がひとつ立っていた。 &br;そこに歩み来る男が一人。右手には白い薔薇の花束を提げている。 &br;墓の汚れを丁寧に布で拭うと、花束を供えて淡く笑った。男が他の誰にも見せたことのない、どこまでも優しく綻んだ笑みだった。 &br;「今年は遅くなってすまない、アウリ」 &br;墓に眠っているのは、男のかつての想い人。女の名前を呼ぶ声を微風が散らしていく。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:04:00};
--「お前の妹が……カティヤが、会いに来たよ。俺を恨んで……当然だ、あんなことをしたのだから。 &br;彼女と殺しあうことになっても、お前は俺に『生きて』と言うだろうか」 &br;答えは無い。あるはずが無い。男の問いは、曇天の空に空しく響くだけ。 &br;「……いや、お前はもういないのだから、自分で決めなくてはな」 &br;冷えた空気に、嘆息が白く染まる。男の答えはもう出ていた。白薔薇の花言葉に曰く、「約束を守る」。 &br;「俺は生きるよ。お前との約束通りに。仲間とも新しく約束したんだ。俺は諦めない」 &br;言い終えた直後、辺りが異質な冷気に包まれる。 &br;男が気配に振り向くと、吹雪を纏う銀色の狼を伴って、琥珀金の髪の少女が立っていた。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:04:57};
---「来たか、カティヤ」 &br;硬い表情で、その名を呼んだ。愛した女性の妹の名前を。 &br;女が口を開くと、氷のような冷たく澄んだ声がこぼれ出る。 &br;「姉さんは、そこなのね。……そう殺気を飛ばさなくても、姉さんの前で争う気は無いわ」 &br;少女の蒼い瞳が細められ、射貫くような視線が男に向けられた。 &br;「教えて。姉さんはどうして死んだのか」 &br;男は語る。愛した女性の死に様を。 &br;流行り病に伏せって、ある冬の寒い日に、花が枯れるように死んでいったと。 &br;「そう……儚いものね」 &br;一瞬だけ瞳が伏せられて、だが次の瞬間には、限りなく冷たい怒りが点っている。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:09:05};
---「貴方にも聞かせてあげる。里がどんな風に滅んだか。 &br;貴方が神獣を殺して、姉さんを連れて逃げてから、里の皆は怯えたわ。 &br;銀の狼の怒りを買えば、私たちは生きてゆけない。だから追手を出した。里で最も優れた狩人たち。 &br;誰一人帰ってこなかったけれど。第四深度を使う貴方には、貴方のお父様も敵わなかったのね。 &br;ある日、狼の遠吠えとともに、たくさんの魔獣が村を襲った。 &br;皆剣を取って戦ったけど、上位の魔獣に勝てる狩人は一人も残っていなかった。みんな貴方が殺したから。 &br;炎が村を包んで、あちこちで断末魔の叫びがあがった。みんな、みんな喰われて死んだわ。 &br;私のお母様も、隣のヘルカも。覚えているでしょう?アーモンドみたいな目をした、可愛い赤ちゃん。 &br;あの子も魔獣の牙に噛み砕かれた。私は目の前で見ていたわ。結局、あの惨劇で生き残ったのは私だけ」 &br;ウルガンにとっては、覚悟していたこと、想像していたことだ。だが事実として知らされれば、背筋は冷え鼓動は早まる。 &br;胸の悪くなるような、まさに地獄のような光景を、彼女は余さず目にしたのだ。 &br;そしてその原因を作ったのは、間違いなく自分だった。その罪の重さに圧し潰されそうになりながら、ウルガンは抱いた疑問を口にする。 &br;「お前は、どうして」 &br;どうして、生き残ることができたのかと。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:12:47};
---「私は選ばれたの。銀色の狼に。貴方たちを追うための依り代、案内役として」 &br;それは――その狼に、操られているということか? &br;男のその疑問を見抜いて、女は酷薄な笑みを浮かべた。 &br;「私が操られているって思ったでしょう?この狼を殺せば私が正気に返るとか、そんな淡い期待を抱いた?」 &br;静やかな空気に、女の哄笑が響き渡った。 &br;「まったく、どこまでも甘いのね。貴方を殺し、姉さんの魂を喰らう。それがこの狼の役目。 &br;この狼、神獣は魔獣の森の輪廻の管理者、魂を森に還す者。その邪魔をした貴方を狼は許さない。 &br;私は貴方に復讐する。自分勝手な行動で里を滅ぼした貴方を、里のみんなを、姉さんを、平穏な日々を奪った貴方を、私は赦さない。 &br;姉さんの魂は取りこぼしてしまった。でも貴方は逃がさない。私の復讐のために。 &br;貴方を殺す。そのために、私たちは此処に来た。私が狼を憑れてきた。 &br;そんなに甘いから、悪人相手の暗殺なんかで帳尻合わせを考えるのよ。自分が一番の悪人のくせに、それなら自殺でもすればいいじゃない」 &br;女は挑発めいた笑いを浮かべる。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:18:28};
---挑発だと分かっていても、ウルガンは言い返さずにはいられなかった。 &br;「俺は必要なことと信じて、今の生き方を選んだ。それを帳尻合わせなどと言わせはしない。 &br;アウリは俺に生きろと言った!その思いをお前に否定させはしない!」 &br;ウルガンの怒気を孕んだ言葉にも、カティヤは気圧される気配すら見せない。 &br;「悪人殺しの是非を論じるつもりはないわ。貴方が悪なのは変えようのない事実だし。 &br;姉さんも甘いわね。惚れた弱み? 自分の命を助けてくれたのですものね。甘くもなるわ。 &br;……貴方を苦しめるには、どうすればいいかしら。 &br;大事な人を一人一人殺す? でも、暗殺者なんかに団結されると手間が増えるわ。 &br;それに私はそんな悪趣味なことはしない。貴方と違ってたくさん殺す趣味は無いから。もちろん、邪魔をされれば別だけれど」 --  &new{2017-11-11 (土) 00:22:04};
---カティヤは首を捻ると、ウルガンの瞳を見据えて何かに気付き、悪戯に笑った。 &br;「いいことを教えてあげる。ウルガン、貴方は、お父様たちとの戦いで、そしてそのくだらない人殺しの仕事で、獣血励起をどれだけ使った? &br;今の私には分かるわ。貴方は獣血励起をもう殆ど使えない――貴方の命は尽きかけている。 &br;薄々気付いていたでしょうけど、もっと具体的にしてあげる。貴方の命は、何もしなくてもあと一年。 &br;もちろん獣血励起を使うほど短くなる。第四深度なんて使ったら、すぐにも燃え尽きるでしょうね。 &br;貴方には未来なんてもう無いのだから、無駄に足掻かないことをお勧めするわ」 &br;女は狼とともに踵を返した。もう用は済んだとばかりに。 &br;「それじゃあね。次に会う時が貴方の最期よ。心残りの無いようにしておくのね」 &br;愛する人の墓の前で告げられた死の宣告に、男は呆然と立ち尽くした。 --  &new{2017-11-11 (土) 00:24:42};

-''仕事先''
--''舞台ではない、どこか''
---まぁ………こんなところでございましょう…。(山羊の頭蓋骨を模した仮面の奥、老婆の様な声を絞り出す)&br;(情報収集の合間、一人でこなせる暗殺はリハビリも兼ねて積極的に行うようにしていた。今は…動ける人間が動かねばならない)&br;(殺した相手の一部を戦利品として蒐集、保存することが趣味の異常殺人者。それが今回の標的だった)&br;(ホルマリン漬けの人体標本やミイラ化した四肢が展示される…悪趣味なその部屋の主は、既に全身から血を溢れさせカーペットを赤に染めていた)&br;(彼に突き立った、闇の魔力で形成された刃。その最後の一本が消失するのを確認すると、あえてドアを開けたまま目に付くようにしてその隠れ家を後にする) -- [[ミスチーフ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:17:27};
---(そこまではよかった。しかしこの日は何かが違った…見られている、というよりも尾行されている。)&br;(これを撒いてからでなければ戻ることもままならない。路地をすり抜け、影に潜り痕跡を消し、それでも気配は後方から追ってくる。)&br;……少々、悪戯をしなければ…なりません、でしょうか…。(細い一本道の先、曲がり角を右折してすぐの場所で足を止める…いわゆる角待ちだ)&br;(足音は近づいてこないが、気配が近づいているのは確かで。それが一層不気味さを加速させたが、右手の指先に魔力を集中させ…黒い刃を形作る…) -- [[ミスチーフ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:20:12};
---(気配はすぐ近く、目と鼻の先。角から覗き込もうとした瞬間を突く…そう決意を固め、構えを取ろうとした直後だ)&br;「そんなに怖い顔をして、一体何から逃げてきたのかな。まるで誰かに追われているみたいだったね。」&br;(追ってきた張本人、水色の髪をした少女が後ろから声をかけてきた。回り込むには相当な距離を迂回せねばならない筈…)&br;師匠………いえ、江美…さん………!? どうして…貴方が、ここに……。&br;(かつてリーディエが闇魔法の教えを請い、その使い方ゆえに彼女を破門とした。その少女が当時と変わらぬ姿のままでそこにいたのだ。) -- [[ミスチーフ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:28:18};
---それに…酷い声だよ、暫く会わない内に変わってしまったね…リーディエは。お婆さんのような声じゃないか…。&br;それが君の、あっちでの「顔」という事なのかな。私は警告した筈だよ…?その力を、人を殺めるために使わないで欲しいと。&br;(リーディエと同じく闇色のローブを纏った…それでいて彼女より大分背の低い少女は、とても残念そうな表情を浮かべ)&br;多分君はやめないのだろうね、復讐を果たすまでは何があっても。それが見るに忍びないんでね、手を貸しに来たんだ。 -- [[江美>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:32:33};
---(声について指摘されると、仮面と首につけた防具を静かに外した。もはや街中でこの扮装のままいる方が危険だろう。)&br;すみません……その、もはや…見放されたかと……ずっと、そう…思っておりましたの……。&br;貴方を師と仰ぐことも………それすらおこがましい、不出来な…弟子にございます…それでも尚……こうして声をかけて下さった事…。&br;…たいへん、嬉しく思います…。ですが……手を貸す、とは……どういった意味なので…しょうか…?&br;(目の前の少女に、カタコンベの理念は到底相容れるものではないことは承知している。ならば仲間に加わるという意味ではないのだろう…) -- [[リーディエ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:36:33};
---…その目。(包帯で隠された下に、強い魔力を感じ取り目を細める)あれほど手を出すなと言った、禁呪まで使ったのかい…?&br;君はその代償がどれほど高くつくのか、知っていて…敢えてやったって…そう言うの?そこまで君を、変えてしまったのか。あの事件は…。&br;私は君や、君の仲間の殺しに手を染めるつもりは無いよ。これ以上余計な血で、君が手を染める前に…復讐だけを終わらせて欲しい。&br;そうしたら…あとは全てを忘れて、どこか静かなところで余生を過ごすんだ。私は、残りの人生を無駄にして欲しくない…。&br;そうしてくれるなら、私は…君が復讐すべき相手について、知っていることを全部話そう(沈痛そうな面持ちで、残った右目と視線を合わせる) -- [[江美>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:42:13};
---えぇ……私は変わりました…私の……残された時間は、全て…復讐に費やしても…構わないと、そう考えております…。&br;ですが…師匠、いえ……江美さんが…そう提案して下さるのなら、私……約束いたしましょう…。&br;心の平穏を得…静かに生きるのも、きっと…良いものでしょう。(考えないようにはしていたが、復讐の先にあるものを期待しなかった訳ではない。)&br;あの事件の日……護衛依頼を受けていた、全員が…シロでした……あの中の、誰が彼を……? -- [[リーディエ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:47:18};
---(首を横に振って否定した)理由は分からないけれど事件の…数日前に依頼を急にキャンセルしたやつが一人いるんだ。&br;「影武者メルヴィ」そう呼ばれてる女さ。変化の魔術を使って、依頼主に化け…襲ってきた相手を返り討ちにするボディーガード…。&br;あの事件から不自然に排除されていて、今も生きているとなれば…何か事情は知っているはずだろうと思うよ。&br;だけど、一筋縄でいく相手じゃなさそうだし、素直に何か話してくれるとは思えないね…気をつけた方がいいよ。&br;これ以上は、自分で調べてみて…私も深く首を突っ込みたくはないよ。それじゃあ、元気で…(足音一つ立てずに、踵を返していった) -- [[江美>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:51:51};
---ありがとう…ございます…。それだけ、分かれば……十二分に、事は済みます…でしょう。(深く一礼してかつての師を見送った)&br;&br;&br;ですが……約束は守れそうに、ございません…嘘をついてしまい、申し訳…ございません…。&br;(復讐の後に果たすべきは贖罪。自分ひとりが静かに生きる道は選べないと決めていたのだから…) -- [[リーディエ>FA/0053]] &new{2017-11-07 (火) 21:55:44};