[[名簿/485758]]

-バルバラの地を発った兵力、その数凡そ３０００人余り。&br;ミルカの次期長とされる麗句のチャルトス、殺した魔物の数は一万とも二万とも囃される、血獄のモルゴ。&br;皮剥ぎダナンに、大脳喰らいのカレント。鉄脚のボルナッタ。&br;老いて尚盛んと評される、敗北知らずのガルガは不在ではあったが、彼の息子、ガルメの姿もあった。&br;ゴラの戦士であるバルカを含め、名立たるメンバーが揃い踏みしており、これに連邦の戦士団や魔術師等も加わっている。&br;まさに数的不利をも覆す、圧倒的戦力。彼らは個々が精強なる戦士であり、呪者であり、術者なのだ。 --  &new{2012-07-22 (日) 04:22:22};
--しかしその彼らも、爛国の兵法に押されつつある。爛国は毒を用い、策を用いた。&br;一度として味わったことの無い戦乱の複雑怪奇さに、一人また一人と、異国の地に倒れていった。&br;彼らにとって爛国の脅威は何よりも、毒や火薬などの科学兵器である。&br;人は知識の内に無いものに、本能的な脅威を、必要以上に抱いてしまうのだ。 --  &new{2012-07-22 (日) 04:25:21};
---原因不明の様態を引き起こす毒素については、特に深刻であった。&br;いつ攻撃されたのかもわからぬ間に、身体の自由を奪われてしまうのだ。これ程恐ろしいこともない。&br;士気の高さに定評のあるバルバラの民でさえも、抗い難いものだった。 --  &new{2012-07-22 (日) 04:32:41};
---事態を重く見た知識層は、毒の解明や対策を見出すために、様々な議論を行った。&br;やがて、爛国に滞在経験のある者の協力を仰ぐことができ、原因を特定することができた。&br;されど未だ根本的な解決には程遠く、具体的な案は皆無といった状況であったとされる。 --  &new{2012-07-22 (日) 04:36:45};
-賊めいた男達は、エルフの女を積雪の上に放り投げると、次々に覆い被さっていった。&br;彼女は助けを求めてか細い声を絞り出す。繰り返し呼ぶのは恋人の名。だがしかし、反応が返ってくることはない。&br;それもそのはずだ。彼女に隣り合うような形で打ち捨てられているのは、恋人の首なのである。 --  &new{2012-07-20 (金) 18:30:52};
--二人は近隣の集落を経ち、聖地で婚姻の儀式を執り行うはずであった。&br;女の名前はニルス。白銀の長髪を靡かせた、理知的な佇まいを持ち合わせている。&br;男の名前はガルナ。背は小さいが、鉱物の扱いに掛けては集落一。すなわち彼はドワーフなのだ。 --  &new{2012-07-20 (金) 18:36:03};
---　
---彼らが住まう集落では、古い仕来りがあった。&br;婚姻の際は二人の力を合わせて、白峰の頂に存在する岩にそれぞれの名を刻み付ける必要がある。&br;それがいつからの風習なのか、何のためなのか、彼らは疑問に思ったこともなければ、当たり前のように受け入れている。&br;先祖代々語り継がれてきた慣わしであり、きっと彼らの子も、このルールに沿って生きていくことだろう。&br;彼ら自身も、そう思っていた。賊の群れに襲われるまでは。 --  &new{2012-07-20 (金) 18:38:03};
---　
---突如放たれた弓の一斉射！刺し子めいた風貌で、ガルナはもんどり打って地面へと転がる。&br;そこへ走り込むリザードマンの戦士！ ニルスが悲鳴を上げるよりも先に、恋人の首は刎ね飛んだ。&br;大鉈をちろちろと舐め上げながら、リザードマンの戦士は欲望的な視線を彼女に差し向ける。それが合図だった。&br;賊めいた男達は、ニルスを積雪の上に放り投げると、次々に覆い被さっていった。&br;彼女は助けを求めてか細い声を絞り出す。繰り返し呼ぶのは恋人の名。だがしかし、反応が返ってくることはない。&br;ガルナの首を横目に、リザードマンの戦士は細長い舌をちろちろと、ニルスの耳を執拗に嫐る。 --  &new{2012-07-20 (金) 18:43:40};
---男達は次々に、屹立した陰部を曝け出す。こうなれば抵抗の甲斐も無い。ニルスは所詮、エルフで女だ。&br;腕力が支配するこの場に置いて、できることと言えば限られている。心を砕いて身を任せるか、延々と呪詛を吐き続けるかだ。&br;賊めいた男が白銀の髪を掴み上げ、陰部を彼女に押し付ける。咥内を支配し己を満たそうとした、まさにその時！&br;一陣の風が吹き抜けて、男の頭は無花果のように吹き飛んだ！ --  &new{2012-07-20 (金) 18:58:45};
---頭部の無い男を抱えて、別の賊めいた男が辺りを見回す。雪風に晒された彼方を見据えた、まさにその時！&br;一陣の風が吹き抜けて、男の頭は無花果のように吹き飛んだ！&br;浮き足立つ面々。死骸二つを見捨てるように、また別の賊めいた男が一目散に逃げ出した、まさにその時！&br;一陣の風が吹き抜けて、男の頭は無花果のように吹き飛んだ！ --  &new{2012-07-20 (金) 19:04:23};
---賊めいた男達は、次々に屠られていく！残すはリザードマンの戦士だけだ！&br;一陣の風は幾度と無く、リザードマンの戦士に襲い掛かってゆく！&br;それらを器用にも大鉈で打ち払うと、剛直と形容すべき矢が、深々と木々や積雪に突き立った。&br;「姿を現せ、臆病者！」いきり立つリザードマンの戦士の前に、二人の男が姿を現す。&br;「私はジャル・グ。宣教師をやっている。彼はバルカ。ゴラの戦士だ。」&br;ひょろ長いリザードマンの宣教師は、端的に述べる。その横に立つのは巨塊とも言える鎧に身を包んだ、屈強なる戦士。&br;大弓と大斧を携えて、彼は無骨漢めいた佇まい。語らずの立場を崩さない。 --  &new{2012-07-20 (金) 19:15:45};
---「大災害から、君達のような痴れ者が幅を利かせている。」「ああ！最高だァ、最高。」&br;「邪魔さえなけりゃ、もっと最高だ。女は後、先にバラしてやる。」「……これは救えないな。」&br;「ア？見下すんじゃねェェッ！」リザードマンの戦士は速い！大鉈を振るうべく疾駆！&br;「バルカ、君に一任しよう。私の術は彼女を巻き込んでしまう。」問題無さげに身を引くジャル・グ。&br;大鉈と大斧の衝突！頷く代わりに前へと出たバルカは、リザードマンの戦士と切り結ぶ。&br;互いに技の競い合いなど無い、純粋な暴力の応酬だ！ --  &new{2012-07-20 (金) 19:22:12};
---   ニルスは腰を抜かしたまま、這うようにして最寄の木々へと寄りかかった。&br;彼女の目の前では、壮絶な光景が繰り広げられている。賊めいた男達の死骸で出来たオブジェ。精気を失った恋人の首。&br;今も得物を打ち合い続ける、二人の戦士。指先の震えは、凍土に投げ出されただけではない。&br;日常と隣り合わせの非日常が、彼女を抱擁し放さないのだ。白魚めいた手で、自身の肩をぎゅっと抱き締める。&br;「寒い……怖い……。」ぼろぼろと涙を溢すニルスに、幾何学模様のハンカチが差し出された。ジャル・グだ。&br;「災害による難民の増大。秩序の崩壊。堅苦しい言葉で濁すには、あまりにも辛すぎますな。」　&br;「今はお泣きなさい。歩みを止めるのも良いでしょう。されど、忘れてくださるな。困難は踏破すべきもの。」&br;「我々人には、その力があるのです。」宣教師特有の文句を耳にしながら、彼女はただ涙を拭う。&br;「シャァッ！　死ねッ！」二人に響くのは、勝ち鬨めいた叫び声！ --  &new{2012-07-20 (金) 19:33:32};
---リザードマンの戦士が致命的な一打を振るう！何たる速度！非戦闘員ならば、ボトルキャップめいて首が両断されていただろう。&br;先のガルナのように。「ガアアアアアアッ！」竜鱗で覆われた兜の奥底から、奈落より響くような咆哮が轟く！バルカも速い！&br;強固なガントレットを、大鉈に打ち据える！よろめくリザードマンの戦士！大鉈の刃先がぼろりと零れる。&br;強固なガントレットを、大鉈に打ち据える！よろめくリザードマンの戦士！大鉈の刃先が歪み、亀裂が走る。&br;強固なガントレットを、大鉈に打ち据える！よろめくリザードマンの戦士！大鉈の刃先は砕け、武器としての命が潰える。&br;大鉈を落とした腕に掴みかかり、バルカはリザードマンの戦士に殴り掛かる！上がる血飛沫！踏み付けるような前蹴りが続く！&br;倒れ込むリザードマンの戦士の頭上に、巨大な影が覆い被さった。白光を受けて大斧は、ぎらりと重く煌く。&br;「やっ　止め……っ」「駄目だ。」耳にするだけで圧殺されそうな、重苦しい声。バルカの喉は、そう一言だけ発した。&br;干物めいて、リザードマンの戦士は両断された。断末魔の雄叫びも響かない。 --  &new{2012-07-20 (金) 20:40:27};
---　
---ニルスを集落まで送り届け、二人は再び雪原へと歩み出した。&br;「大災害から此方、異変続きで身の休まる日は無い。見たまえ、モモンガも遠くを見つめ、怯えている。」&br;「これは実際、良く無い事が起きるやもしれんな。遥か遠方の地で、何やらか。」&br;深刻そうな友を尻目に、バルカは黙々と雪を踏む。彼は蛮人。秩序の徒でもなければ、政治屋でも無い。&br;ただ、バルバラの民らしく。この時はまだ、それだけで十分であった。 --  &new{2012-07-20 (金) 21:13:19};