企画/叙事詩
 
 
 



 


 


 

 

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【神聖ローディア共和国、前線拠点の一つ】

(ところどころ崩れながらも連なるその石壁の列は陣地を構築するのにはうってつけだった。)
(小高い丘の斜面に段々畑をつくるように、古代の石垣の跡が残されいて。)
 (目の前の平原では、共和国軍勢の中を放たれた矢のごとく縦横に駆け回る騎馬、騎獣、そして蟲。)
(鎧に覆われた小山のような軍馬が得意の突撃体勢を取ることもできず。矢に翻弄され、槍を掠められ)
(巨大蠍の挟みに足をもがれていく。)
 (開始から僅かな間も持たず、戦場の趨勢は帝国側に傾きつつあった。)
(丘陵の遺跡地帯に築かれた陣地は唯一、相手の足を封じ互角以上の戦いに持ち込める場所、)
(数少ない残された希望の一つだったが・・・その希望もあっけなく打ち砕かれた。)
 (機動力を戦力とする帝国軍、その中でも最速の部隊。その連なった石垣も、林立する石柱も)
(彼らの足を止めることはできなかった。なぜなら、それは翼をもって空を翔けて来た。)

(生体ユニットは血にまみれ、鎧には煤や元は何であったか知れない焦げがこびりつく。まさしく満身創痍、疲労困憊、そんな状況でさらに天からの贈り物。敵である)
(わざわざ的になりに行く事はない、地上で息を潜めていれば良かったのだが、怪物や兵士たちの前ではそうも行かない。後方と上空、最悪の二正面作戦)
(元々少なかった味方の兵士は次々と倒され、自分も永遠に戦い続けられる訳ではない……となると、道は一つ)
自分だけでも、逃げる……!(身にまとう「鎧」が折りたたまれ、また広がっていく。四足で走るような姿勢をとる少女を、鉄の板が巨大な魚に変えて行った)
……ゴー!(掛け声とともに足元で爆発。その勢いに乗って一気に上空を目指す。敵航空部隊より上に行ければ有利なはずだ) -- フェロミア

(爆撃と急降下による波状攻撃を繰り返していた巨鳥の部隊は拠点を守る義勇軍の軍勢が)
(打ち倒されると、つぎつぎと地面にすれすれに飛び、その背から歩兵達を投下していく。)
(弓矢と投げやりで武装した軽装な歩兵達によって、いよいよ拠点は完全に制圧された。)
(轟音と砂塵を巻き上げ、上空へと飛び出していったフェロミアを上空で旋回していた巨鳥の群れが)
(翼で風をたたきつけるように、舞い上がりながら追った。)
(しかし、上昇力がそもそも違うのか、その鎧のような尾びれに追いつくことができない。)
(このまま逃げ切れるかと思われたその瞬間だ。突風が吹き荒れた。)
(他の巨鳥達が旋回しながら高度を取るその真ん中を、一際大きく、そして蒼く輝く翼が)
(ほとんど垂直に、フェロミアめがけて一直線に駆け上がっていく。) -- 飛爛

よしっ(とりあえずは振り切れそうだ、と少し安心して下を見る。誰がどう見ても完敗だ)
あいつら、次会ったら……(やっつけてやる、とでも呟こうとしたのであろう、その瞬間。バイザーが異変を伝える。このパターンは……「高速移動物体接近中」)
嘘だろおい……(相手のスタミナがそれほど続かない事を祈りつつブーストをかける。炎の武具結晶が使い手の体力を吸い上げ、推力に変えた。命を削って命を繋がんと)
(よりシャープな形に変形しながら魚は空を翔ける。捕食者たる蒼い鳥から逃げおおせるために) -- フェロミア

(追いすがる巨鳥がその羽の生えた肢から何かを落す、やや遅れて地上で爆発が起こった。)
(爆装したまま追いかけっこをしていたのだ、身軽になった巨鳥はさらにその速度を上げていく。)
空を泳いでるみたい面白い…。ココロア!
(背に腹ばいになった少女、飛爛の声に答えて、巨鳥、ココロアは6枚の翼をそれぞれ別々に動かす。)
(空を泳ぐ巨大な鉄の魚など、帝国にだって居るはずはない。それが何故飛べるのか彼女もその相棒)
(も知る由はない。)
(だが、フェロミアの巻き起こした気流の渦をまるで見えているかのように、6枚の翼で捕まえて)
(ぐんぐんと加速していく。) -- 飛爛

(すわ攻撃か、とも思うが狙いは地上の爆撃だ。つまり、重荷を捨ててさらに加速するという事)
(水平に飛んでいては間違いなくすぐに追いつかれる。だが相手は鳥、生き物だ。速度で勝る相手、付け入る隙があるとすればそこしかない)
付いて来い……っ!(機首……魚の頭を上方に向け、さらに上空を目指す。こうなったら我慢比べだ、空気が薄くなっても鳥は飛べるのか試してやる) -- フェロミア

(フェロミアの鱗を掴み損ねた鉤爪が空を切り、鋼鉄の罠が跳ね閉じたような音を立てた。)
(猛烈な勢いで風が耳元を吹きすぎていく上空で、声が届いたかどうかは分からないが、)
(その勝負を受けて立つといわんばかりに激しく、翼を羽ばたかせ巨鳥もまた垂直に空を駆け上がった。)
(壮大な合戦場が遥か下方の点景として遠ざかっていき。遥か上空を流れていた雲はぐんぐん近づいてくる。)
(世界の音が、断崖を遡上する魚のごとく上っていくフェロミアと蒼天色の羽ばたきが巻き起こす風切音)
(だけに置き換わっていった。) -- 飛爛

くっ(迫り来る爪に掴まれるのは避け得たが、反射的に取ってしまった回避行動が加速を若干鈍らせる。次に掴みかかられたら、今度こそ捕らえられてしまうかも知れない)
(未だ到達した事のない高みを目指し、魚と鳥が空を翔けた。競争と言うのも生ぬるいデッドヒート)
(限界間近の極限状態の中、鰭と翼が空気を裂く音だけが二者の意思を伝えあうように響く) -- フェロミア

(高度は上がり続けた、もはや地上は見えない。白く煙った視界に再び青が戻ったとき、ついには雲すらも)
(背後へと落ちていく。深い深い空の下に丸く地平線が弧を引いた。)
(生身でココロアの背にのる飛爛にとって、すでに息苦しいを通り越して生存すら危ぶまれる高さ)
(だったが、そこで止まる気はなかった。少しでも気を抜けば意識が手から零れ落ち、)
(目覚める前に地面にたたきつけられるかもしれないというのに。)
(世界最高峰を積み上げたよりも高く、どこまでも深く広がる深淵なる空の只中を駆け上がる。)
(目の前の敵と己の翼の限界、そして存在しているだけで戦場を翔けるよりも危険な雲の上の世界に)
(挑みかかり、飛爛の心はどこまでも猛々しく舞い上がっていく。) -- 飛爛

(いつしか逃げる獲物と追う捕食者と言う関係性は消えていた。これはもはや対決、どちらがより高く飛べるのか?高高度のさだめたる冷気と空気の薄さにもう声を出す事も叶わない)
(やがて競争者達は機械と魔術で強化された少女とその鎧にも耐えられない環境に到達した。凍結、単純ながら魔力の炎が生み出す熱の力で空を翔けるフェロミアには致命的な現象である)
(上昇速度は目に見えて落ち、冷え切った生体ユニットは思考能力を失っていく。鎧や肌に張り付いた薄氷が撒き散らされ、流星の尾のように輝いていた) -- フェロミア

(遮るものの無い陽光の下で砕けた氷が舞い散り、飛爛の横を通り過ぎていく。)
(彼女の黒い髪も先に雲を通り抜けたときに濡れてその毛先が白く凍った。)
 (フェロミアの推力が弱まるのとほぼ同時に、いくら羽ばたいても高空の薄い大気は巨鳥の羽を)
(すり抜けて、飛び続けるために進化した強靭な肺も酸素を求めてあえぎ始めた。)
(ここが限界・・・飛爛はまだその頭上高くある空を見上げて、最後にもう一度だけココロアの翼を)
(強く羽ばたかせた。最後の上昇、その頂点、ついに横にフェロミアの横へ並び再び鉤爪を繰り出した!) -- 飛爛

(酸素不足で朦朧とする頭をフル回転させて状況を分析する。ほぼ生まれて初めて吐き気を覚える。もはや上っているのか落ちているのかも怪しいが、限界を超えている事だけは明らかだった)
(そんな考えをめぐらせていたせいか、視界の端に蒼を捉えた時にはもう手遅れだった。だが突然鎧を掴まれても意外に驚かないものだな、と思う。機械の補助脳すら今はまともに動作していないのだろうか)
(巨大な鳥とそれに乗る人間。それらの重さを押し付けられてなお空に上がる力など残っていようもなく……目を閉じる。空を翔けていた者達は一塊になってゆっくりと、不思議なほどゆっくりと来た道を戻り始めた) -- フェロミア

(無重力の凪に浮かんだのもつかの間、奇妙な浮遊感を伴って再び風は吹き荒れ始めた。)
(落ちていく、加速していく、今度は逆に空が足早に遠ざかる。)
(フェロミアの鎧をプレス機のような力で掴む鉤爪、がっちりと組み合ったまま一つになって落ちていく。)
そのままよ、ココロア!
(背に乗せた者の言葉に従い、巨鳥は翼を羽ばたかせずに自由落下に身を任せた。)
(鉤爪を突き出したその巨体が空気抵抗を受けてやがてゆっくりと回転をはじめる。地面へと向かいながら)
(掴んだフェロミアと鳥の身体が、互いの周りを回り続ける連星の軌道ように円を描く。)
(まるでダンスでも踊っているかのようで、その間も高度は下がり続ける。) -- 飛爛

(音を立てて軋む鎧、その悲鳴も今のフェロミアには届かない。無理な加速と寒さ、そして酸素不足が生体部分から力を奪っていた。今や柔らかいだけのマネキンにも等しい)
(少女は無抵抗のまま螺旋状の落下に身を任せていた。が、落下によってやがて周囲の空気と気温が許容範囲に戻る。そして頬を打つ風と爪の圧力が刺激となって意識を呼び覚ました)
(補助脳の働きが弱まっているせいか、意識を取り戻したフェロミアにある種の感情と呼べる衝動が起こる。その衝動とは)
っそ……見てろよ……(悔しさとか、怒りとか、そんな風に分類できるかもしれない。掴もうとする。相手の一部なら何でもいい、鳥でも、その上に乗っている人間でも。逆螺旋のロンドの中で、パートナーに必死に手を伸ばす) -- フェロミア

(鉤爪がフェロミアを捕まえ、フェロミアの腕は逆に巨鳥の肢を掴む。速度は上がり続けた。)
(潜り抜けて来た雲へともつれ合って落下し、眼下に戦場の大地が広がった。)
(やがて風の中に熱砂が混じりはじめる、だがお互いに掴みあった状態、どちらかが離さない限り)
(このまま落ち続けていくことになる。高度を競い決着はつかず、そして今、深度を競う。)
(赤茶けた大地が命のリミットとして刻一刻と迫りくる!)
(そんな死と隣り合わせの状況で、間近に組み合ったフェロミアを巨鳥の肩越しに見る少女は)

(笑っていた。獲物を狙う禽獣のような凶暴なそれではなく、飛行帽に隠れた目元は分からないが、確かに、心底楽しそうに笑っていた。) -- 飛爛

(重力の助けを得て両者は加速する。その向きは変わっても戦いである事は変わらない。結局の所我慢比べである)
(最後の力を振り絞って鳥を離さぬ様に握り締めた。こいつをクッションにして生き残る、と自分の中で理屈を付けはするが、ヤケになっているのも確かだ。例え地面にぶつかったって離すものか)
(だが、見てしまった。覚悟も、理屈も吹き飛ぶその表情を。この死に至る状況を、興奮のせいでも絶望のせいでもない、快楽の笑みで受け入れる少女を)
(なぜ?人間ってそうじゃないだろ?理解不能は混乱を、混乱は恐慌を招く。フェロミアが生まれて初めて心の底から浮かべる表情は)
は……(恐怖と、驚愕)離せ、離せよ……!(先に自分の手を離し、無駄と知りつつも鉤爪から逃れようともがく。心を持たない兵器の心が折れる瞬間。ともに地面に激突するか、奇跡的に助かるか。結果がどうであれ、この時点で「敗北」である) -- フェロミア

「姫様が度胸試ししてるぞ!」
「誰とだ、さっき昇って行った奴か!?」
「やばい、やばい・・・二人とも速過ぎる!墜落するぞ!!」
 (遥か下方に取り残され、まっすぐに天へと駆け上がって行った、飛爛とフェロミアを見上げていた)
(カタクァのシャツァル兵達が騒ぐ。まっすぐに空から落ちて来た二人はもう地面のすぐ側まで来ていた。)
(後十数m、赤茶けた岩山がまっさかさまに落ちる二人の頭上に迫ったその瞬間。)
昇って!
(ココロアが蒼く輝く翼を広げ、羽ばたいた。空中で急停止、絡まりあった二つの身体を捉えていた)
(重力加速が一瞬の衝撃となって、突き抜けていく。)
 (巨鳥の翼は再び浮力を取り戻し、フェロミアの身体を地面へ下ろした。)
(誰もが墜落を予想して息を止めていた中を、ココロアの背に乗った飛爛は飛行帽を右手で掴み)
(高く掲げ上げ、その身に風を受けながら旋回した。それはまぎれもなく勝利の宣言。)
(周りで見守っていたカタクァの兵達は一斉に歓喜の雄たけびを空に地上に響かせた。) -- 飛爛



 



 

 

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【黄金暦223年 10月 神聖ローディア共和国 荒野】

(赤と黒の2色になった雲が360度遮るものの無い夕焼けの空の下を流れていく。)
(俄かに強くなった風が荒野に黒々と長い影を落す城壁を吹き抜けていった。そこでほんの数時間前まで)
(戦闘が行われていたとは思えないほど静かで、不意に風の音に緩慢な羽ばたきの音が割り込む。)
(無人となった城壁の上に降り立った巨大な鳥が居た。あまりに巨大すぎて、そいつが止まっている城壁)
(の壁が小枝か何かにみえてスケール感が狂う。)
(鳥はその大きな羽が落した影の下で死んだ兵士の肉を啄ばんでいた。蟹の殻を割るように鎧を爪と嘴で)
(器用に剥き、服を剥ぎ柔らかい腹を噛み裂いては、肉をちぎりながら飲み込んでいった。)
(まだいたるところで煙をあげているその城の中、同じ事があちこちで行われていた。)

(時間を巻き戻して、その城が落城する数時間前、鳥の餌になる兵士達が自分の腹に昼飯を)
(掻きこんでいたくらいの時。)
(ゾルドヴァ周辺を完全に押さえた大爛帝国軍は東ローディア首都、ゾド包囲網を完成させるべく)
(周辺の都市、城砦を次々と攻略にかかっていた。)
(荒野に山のようにそびえたった2重の城壁を持った城塞都市もそのひとつ。)
(規模こそ中堅クラスだが、小高い丘に建てられた城を中心に高い物見塔と無数の銃眼を備えた城壁が)
(二重に張られ、城壁と城壁の間には町と畑、さらに外の城壁の周りに広がる町を囲って延々と空堀が)
(掘られていた。水源は地下水脈からの井戸だと斥候が告げ、ますますもって手の出しにくい城であった。)
(しかもその城を前にしているのは大部隊ではない、本隊から数十kmも先に突出した2000人足らずの)
(軍勢で、巨人の家を前にたたずむ小人の群れといった風情が漂う・・・。そんな彼らが掲げるのは『爛』)
(の文字を染め抜いた軍旗と、青地に真っ赤な太陽を象形した刺繍の入った小さな識別旗。)
(飛爛の率いるカタクァの軍隊だった。)

(さらに、合流する3千の兵)
(蟲と騎兵を中心とした、六稜の兵士達)
(それを率いる将軍、宗爛)
(先日の飛爛の発言を気にして、監視の名目でこの地にきている)
(最前線。戦場を見晴らせる岩山の上で、飛爛と並ぶ)
……地下水路があるのなら、毒は使わずに奪取したいところですな
姉上。攻めるにあたり、何かお考えなどはあるのですか? -- 宗爛

んー・・・
(望遠鏡で敵の城をじっと見ている飛爛。これは東ローディアで手に入れたものだ、カタクァにも)
(望遠鏡はあったが、こっちの方がピントもあわせやすくて気に入っていた。)
(部下である古参のシャツァル兵には、そんなものより自分の目のほうが頼りになりますわい、と笑われたりしたが。)
(先日少しだけ気まずい別れ方をした宗爛と飛爛は何の因果か攻城戦部隊の先発として)
(派遣された。城攻めである、『城を攻める側は、守る側の10倍の兵力と膨大な資材が必要)
(やねんで、ぶっちゃけ正面からいくのはバカやで』と、兵法の偉い人が言ったとおりの事がそのまま)
(この時代の常識でもあった。こちらは多めに数えて5千、対する向こうは兵士だけでおよそ8千人らしい。)
(当然、司令部がこの二人に期待したのも、補給路を断って相手を孤立させる程度の仕事である。)
(ところが、飛爛は周囲にちょうどよさそうな丘を見つけると、さっさとそこに陣取り、出撃するそぶりすら)
(見せなかった。飛行ユニットであり移動速度の速いシャツァルの次くらいに砂漠では早く頼りになる)
(蟲達になにやら大量の荷物を運ばせるよう頼んだあとは、宗爛たちの部隊が本隊から離れて)
(突出する自分達に追いついてくるのを待っていた。)
(そして合流したのがつい先日のことである。その間敵は城から一歩も出てこなかった。完全に篭城の)
(構えである。おそらく首都と連絡しあって迎撃の体制をとろうというのだろう。)

お城頂戴ってお願いしたら、いいよ!って言ってくれないかなー
 (姫様はさらりとアホなことを言い出しなさった。宗爛と再会したあともなんだかずっとこんな調子だ)
(のんきに冗談を言ってみたり、偵察いってくるといっては、一人でココロアの背にのって飛んで行ったり。)
(相手がまったく動かないので、いっそのこと本隊が合流するまで仕事をサボるつもりなのではないかと)
(すら思える。) -- 飛爛

時と場合によりますが、今は難しいでしょうな
(あのような別れ方をしたところで、互いの絆に傷がつくわけでもなく、こちらも普通に接している)
(無論思うところがないわけでは決して無いが……それ以上に姉のことが心配なのである)
言われたとおりの資材は持ってきましたが……これは少し手間が掛かりそうな要塞ですな。あれだけの兵と資材で本当に足りるのですか?
(宗爛にも腹案がないわけではないが、この城攻めの全権を任せられているのは宗爛よりも位階が上の飛爛だ)
(彼女に何か策があるのならそちらがまずは優先である) -- 宗爛

上のほうは無理だろーなーとか思ってるわよねきっと。癪だからいろいろ準備はしたけどね・・・。
(望遠鏡を畳みながら宗爛のほうへ振り返る飛爛。もう10月に入ったというのに暑い日が)
(続いたせいか、毛織のショールは外して、白のワンピースと短いレギンスという格好だった。)
ねぇ、宗はやるとしたらどうやって攻める? -- 飛爛

(無防備な格好の姉から恥ずかしげに目を逸らし、淀みなく答える)
煙攻め
風上は我々が完全に陣取っていますからね。ここで火を焚き、砂塵と煙で要塞を包み込んでやればいい
天教術師に風向きを操作させれば、数日で中にいる兵の半数は窒息死するでしょう
その後は空から姉上の鳥が城壁に炸薬でも落としてくれれば、それで事は済みます
あとは降伏勧告でもしてやればいい -- 宗爛

炙り出しだね!ちょっと柴を調達するのが手間だけど、それが一番よさそう。飛び出してきた敵だけ
迎え撃てばいいし、住人だけ先に逃げてくれるかもしれないしー。やっぱ宗は頭いいねぇ、うん。
(なるべく被害は最小限に抑えたい、当然飛爛もそう考えていた。)
・・・どうしよかな、やっぱ宗の言うとおり燻すだけ燻して、本隊来るの待ってようかな・・・その方が
絶対安全なんだよねぇ・・・。
(味方の大部隊は明日か明後日、遅くとも三日とまたずに来るだろう。)
でも、それじゃあ・・・いつまでも使いっぱしりで終わっちゃうわよね・・・。
 (遠く、敵城砦を見下ろす飛爛の空色の瞳が、獲物を狙う猛禽類のようになっていたかもしれない。)
(幾たびかの戦いを経る内に、雛鳥が綿毛を脱ぎ捨てて翼と爪を得るように、今までの彼女とは別の)
(何かが育ち始めていた。) -- 飛爛

問題ありません。資材なら山ほど持ってきました。それに……足りなくなったらアレを燃やせば良い
(そういって顎で示した先にあるのは味方や敵兵の死体)
骨や灰も風にのせてやれば戦意も殺げることでしょう

まぁそうですな……本隊がくるまで待つのが利口ではありますが……
(姉の目を見ればにやりと微笑む)
確かにそれでは、我々にとって面白い戦果になりそうにはないですな

……打って出ますか。姉上 -- 宗爛

(敵のみならず味方の死体すら道具として使い潰す帝国の戦い。あらゆる恐怖を刃に滴らせながら)
(屈服か死を迫るのだ。)
 (その恐怖を超える衝撃を与えなければならない。飛爛はこの時眼下に城砦を見下ろしながらそう思った。)

私を止めなくていいの?てっきりお目付け役にでも来たのかと思ってたんだけど。
 (冗談っぽく飛爛が笑う。笑いながらも、半分は本気だった、先日宗爛と会った折に本当なら反乱のことまで)
(言うつもりはなかったのだ、というか最後まで隠し通すつもりだった。)
 (だが、飛爛は隠し事や嘘が苦手らしい、あっさりばれてしまった。ばれてしまった以上は・・・)
(味方になって欲しいと思っていた。だから冗談めかしながらまだ敵ではないと思われる彼の心を探る。)
(探りながら、言葉だけではきっと分かって貰えないからと、今一度、ここに至るまで何度もしてきた)
(決意をもう一度、繰り返した。しつこいくらいに何度もしないと気持ちが萎えてしまいそうだったから。)
 (彼女が大爛という恐怖を超えるために、今この地に刻もうとしているのは、恐怖を超える更なる恐怖なのだから。) -- 飛爛

その時がくれば止めますよ。愛する姉に犬死にして欲しくないですから
(さらっと、そう答える)
(あれから何度も姉から探りをいれられているが、その度にかわさず、はぐらかさず、正面から受け止めてそう答えている)
(少なくとも今は敵ではないし、敵になりたくはないと)
(暗に何度もいっているのだ。無謀なことは止めろと)
(未だ機は熟していないと)

(嘘と隠し事と打算だけでここまでのし上がった弟)
(それでも、姉にだけは。この姉にだけは嘘をつきたくない)
(誰に語りもしない、偽らざる本心だった)

それより、どうするんですか?
劇的な戦果をあげるとなると、短気決戦に持ち込んで、本隊が来る前に我々だけでケリをつける必要があります
そうなると煙攻めなんて悠長なことはしていられませんよ。何か策はあるのですか? -- 宗爛

うむ、あの気弱だった宗ちゃんが大変強気に育って私はうれしいです。
(むふぅーと腕組みして息を吐きながら答えた。答えてから今度こそ厳しく口元を結ぶ。)
(策はある、というかこの日のために散々準備されてきたのだ、それこそ何十年も前から。)
あなたに運んで貰った荷物さ、実は新型の武器なんだよね。
私たちが図面を描いて、爛国とローディアの職人に作らせた部品が今ここで形になる。
(高台の麓で、覆いを取られ、梱包を解かれた荷物たちが、運搬する人手に比してあきらかに巨大な)
(それらが、次々に運び下ろされていく。)
半月は落ちないだろうといわれてた城が、たった半日で、真正面から千人足らずに挑まれて崩壊する。
そんな冗談みたいな話が現実に起こったら
・・・私たちにも世界は変えられるんだって、あなたも信じてくれるかな?

(宗爛へ振り返った飛爛の背後、カタクァの兵士たちがちゃくちゃくと準備を進めていた。)
(それは今までシャツァル達が戦場で抱えていたよりも大きく、洗練された形の爆薬であり、巨鳥の鎧に装着)
(される、金属の鏃と羽をもった火薬矢が連ねられた弾帯であり、炎に巻かれて毒香を撒き散らす)
(劇薬と燃料が見事に密閉された皮袋であった。)
(どれもその原型は帝国の中にあり、だがどれ一つとして、今の帝国には無い兵器ばかりであった。)

 (かつて、カタクァの民は南下してきた侵略者の持つ騎馬と武器に抗えず辺境の地へと押し込まれた。)
(彼らは何百年もそのことを忘れずに記録にとどめてきたのだ。そして今シャツァルという天の助けを借り)
(反撃の手段を長い、長い年月をかけて結実させていた。)
(そこに加えて、彼女はもはや城砦すらもその存在は無力であるという非情なる事実を刻みつけようと)
(している。目の前の城の総てを焼き尽くしかねない炎でもって。)
(それはあきらかに、今までの飛爛ではとりえない選択であった。戦に、空とともに生きる民の誇りである)
(シャツァルを使うことすら拒んでいた頃の彼女には。) -- 飛爛

(無数に運び込まれる、見慣れない兵器)
(後の時代を変えるであろう新兵器。いつでも技術によって戦場は変革を続けてきた)
(いま、それを出来る武器と人材が目前にいる。心躍らないといえば、1人の将軍として嘘をついていることになる)
(それでも、溜息をついてこういう)

まだ、信じられませんし、信じませんよ
……とりあえず、結果を見てからじゃないとね

(自分も、姉も既に無垢ではいられなかった)
(姉の姿はかわっていなくても、姉は確かにかわっていた)
(シャツァルを戦に積極的に使う手段を考え、そして実行している姉)
(いや、実行せざるを得ない状況に追い込まれている……姉)
(互いに、生きるためには毒を得なければならなかった)
(それが如実にわかって、少し哀しかった)

(その後は、戦にすらならなかった)
(飛爛の用いた最新兵器と、宗爛の陽動作戦の繰り返しで、敵はあっというまに沈黙し、本当にあっけなく拠点は陥落した)
(そのときは、俺達は2人とも中央から労いの言葉と褒賞を受けたが……のちにこの大戦果が理由で苦労することになるとは、そのときの俺達には知る術もなかった) -- 宗爛

(流れていく雲はますます赤く染まっていった、地上に流された血の染み込んだような色をした夕日が)
(黒々とした地平へ没していく。)
(太陽はこの日流された大量の命と血を吸ったのだ、大地は爆轟と炎に焼かれたのだ。)
 (焼け焦げた匂いがする。無機物有機物、総て等しく本来の用途が分からぬまでに、二重の壁)
(をもった城の中にあったものは総て焼き尽くされた。残っているのは黒こげの石組みばかり。)
 (吐き気のする匂いがする。撒き散らされた毒は、今だにその残り香を大気の中に放っていた。)
(死が山積みとなった城の中で、生きているのは死体を食らう巨大な鳥達の影ばかり。)

 (突風が煤煙も、毒の残滓も吹き飛ばして、城の中庭に一際大きな蒼い巨鳥が降り立った。)
(他の鳥たちは場所を開けて、すでに夜の暗さとなっていたもの陰に後ずさる。その姿は巨大さも)
(あいまって化け物じみていた。血を滴らせる牙付きの嘴と、爬虫類的なギョロ目が暗がりにひしめく。)
 (蒼い巨鳥の背から飛爛がゆっくりと地面に降りた、その足元には折り重なった死体の山。)
(腕がない、頭が割れて中身がこぼれ、あるいは焼け爛れ、腹を割かれて桜色の腸で)
(こんもりと山を作る。戦闘のあとというより、手際が最悪な肉屋の店頭といった様相だった。)
 (実際、大喰らいの猛禽類である、シャツァルにとっては本能に訴えかける絶好の餌場だったのだろう。)
(もはや半年以上にも及ぶ長い行軍で彼らは腹をすかせていた。)

 (飛爛の後に続いて、完全に崩れ落ちた城門からカタクァの兵士達が戸板を担いで入ってきた。)
(10人がかりでもって4畳ほどもある大きな戸板を運び込み、その上に焼け爛れた羽毛に包まれた)
(物体を乗せた。それはシャツァルの死体だった。開戦以来圧倒的な力を見せ付けた巨鳥が)
(この戦いで初めて撃墜されたのだ。)
 (そして、その乗り手はこの死体の山の中のどこかに埋まっているらしかった。)
(啄ばまれた跡のある鳥の死骸が運び出されていく。飛爛は無言でそれを見送ると、死体の山の中を)
(探し始める。煙と、血と、毒の匂いで吐いてしまいそうだった、だけど嘔吐も涙も、)
(もう流すわけにはいかない。必死で堪えた。)
 (崩れかけた城壁に囲まれた城内はますます暗くなる、もう足元に転がっているのが、棒なのか人なのか)
(見分けが付きそうもない。)
明かりを・・・
 (そう、部下につぶやいた後、飛爛は井戸の底から見上げるように狭くて高い、藍色の空を見る。)
(この惨状を巻き起こす直前に、弟の見せた少し哀しそうな表情が浮かんで・・・目の前が滲んだ。)
(それでもまた堪えた。堪えるしかなかった、もう彼女には懺悔をする資格も散っていった者達を)
(嘆く資格もないのだ、総ては自分自身が強いたことなのだから。その掲げた理想が現実の大地に)
(現れるその日までは・・・・・・・・・。) -- 飛爛



 



 

 

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【黄金暦223年8月神聖ローディア共和国ゾルドヴァ古代遺跡群より十数km離れたカタクァ陣地】

(陣地といってもそこは帝国軍に占領された東ローディアの街だ。)
(荒野の中をかろうじてそこが道だと分かる街道がそのまま、背の低い建物の並ぶ街の中央通りに)
(つながっていた。砂漠の中の街だ、まっさらな青い空に白い煉瓦壁がまぶしい。)
(街に翻るのは赤い『爛』の旗、他の都市がそうなったように、ここもまた占領された後そのまま)
(大爛帝国の街となっていた。)
 (その街を麓に見下ろす岩山の上に、風車が回っている。元からそこにあったものではない。)
(風車の近くにある、陣屋の中で巨大な灰蒼色の巨鳥が敷き藁の上に並んで座っていた。)
(飛んでいる時は生物というよりまんま航空機か何かのようにすら見えるのに、羽を畳んで)
(いると間違いなく鳥だ、というかシルエットがすごく鳩に近い。)
 (ここは岩山の上に築かれたカタクァの陣地だ。飛爛が率いるカタクァ軍は街ではなくその郊外に)
(駐屯していた。ゾルドヴァの戦場で捕まったフェロミアが連れてこられたのもここだった。)
(囚われの身といっても、縄を打たれるでも閉じ込められるでもなく、陣の中なら自由に)
(歩くことはできた。ただしその外に出れば周りは身を隠す茂みもない荒野だ。)
(どこへ行ってもすぐに鳥が飛んでいくのだろう。)

(逃げられないな、と思う。拘束していないのはそれを見越してだろうか、それとももはや逃げる気力も失っているのを見抜かれているからだろうか)
(陣地内を何をするでもなく歩いて回るが、何も頭に入ってこない。武具結晶も持たぬ鳥と人間に負けたショックはあまりに大きい、いっそ自爆でもすべきだったかと思わないでもなかった)
(だが一つ、心残りがある。自分を捕まえた鳥に乗っていた女のあの笑顔。なぜあの局面であんな風に笑えるのか?今まで出会った人間も、データとして知っている人間も、あの状況であそこまで楽しそうには笑うまい)
(そうだ。それを知ろう。何をするにしろ、自分より強いものの情報を得てからでも遅くない……歩く。あの女を捜して) -- フェロミア

(フェロミアを見つめる好奇心満天な視線、若い者も居れば壮年の者のいて、女も居れば子供にしか見えない)
(者達もいた。なんだか軍隊の陣地というより、朴訥とした小さな田舎村にでもいるような雰囲気であった。)
(不意にフェロミアの頭上に大きな影を落しながら、風が吹きぬける。見上げれば、それは一際)
(大きな体と、鮮やかな青い羽を持っていて、そいつは岩山に張り出して作られたやぐらの上に降りていく。)
(断崖に張り出した櫓上で翼を広げて夕日を体いっぱいに受けると、いっそうその青い羽が輝く。)
(巨鳥の背の上で、青い羽が巻き起こした風に長い黒髪を遊ばせる少女がいた。)
(足音も軽く、少女が巨鳥の高い背の上から飛び降りると。誰からともなく姫様!と周りに)
(いた者達があつまってきた。少女の姿は駆け寄ってくる誰よりも小さかった。) -- 飛爛

(目標を決めると何だか冷静になれた気がした。そんな気分で周りを見てみると、何かここが普通の戦場では無い様に思えてくる。戦火が届いていないのか、老若男女自然に戦争に参加しているのか)
……いた(探していた相手を見つけた。あの蒼を見ると言い様も無い感覚に囚われる。今すぐここからいなくなりたいような……それが恐怖に近いものだと知るにはまだ少し、経験が足りない)
(姫様、と呼ばれている少女。紛れもなくあの女だ。あの時感じた凄みは今は感じられない、本当にただの少女の様で……今襲い掛かれば倒せるんじゃ?そんな風にさえ感じつつ、少し遠巻きに「姫様」とその周りに集まる人々を眺めていた) -- フェロミア

(出迎えに来た人たちに笑顔で答えながら・・・というか、なでられたり回りに集られたり、もみくちゃにされ)
(ながら帰還を喜ばれる姫様と呼ばれた少女。本当に姫なのだろうか、ペットじゃなかろうか小動物系の。)
あはははっただいまー・・・ちょっ髪がみだれるっみーだーれーるーあははっ!
(本人もまんざらではない様子である。その愛馬ならぬ愛鳥である、蒼い巨鳥もさわられまくってた。)

(少女、飛爛の視線が遠巻きに、様子を伺っていたフェロミアを見つけた。)
あっ居た!ちょっと通してね、あ、ココロアのお世話お願い!
(人垣が割れるよりも早く、飛爛の小さな体が飛び出してくる。)
あなたも無事だったようね、よかった!私は飛爛よ今はここの総司令ね
(ついでに周りの人の言うことには彼らの女王でもあるらしい。姫でもなければペットでもなかった。)
それにしてもあなた・・・
(握手を求めるように手を差し伸べながらじっと飛爛の空色の瞳がフェロミアを見つめている。) -- 飛爛

(見た感じでは完全に愛玩されている。もしかしてあれか?アイドル部隊か何かか?自分もそんな様な部隊の一員だったためすぐに思い当たった。だとしたらそんな奴に負けた自分って一体、とも思う。)
(物思いにふけっていると興味の対象が目前に転がり出てきた。小さな体、跳ねる様な挙動……印象はやはり小動物だ。だが知っている。彼女が命がけの戦闘中に楽しそうな笑顔を見せる女である事に。)
よ、良かったって……(敵だぞ私は。捕虜にしたって生きてさえいればいいはずだろう。何だか本気で心配されているような感じがして、ちょっと戸惑う。あの扱いにこのなりで、総司令で女王だって事も含めて)
(少しためらった後に握手を交わす。)私が、何?どうするの?(瞳の中の空に吸い込まれそうになって少しくらりとする。女の精神構造も気になるが自らの処遇も気にはなった。握手ついでに質問する) -- フェロミア

私よりも小さい人、戦場で初めてだわ!
 (握った手を振りながら。それはそれは、とてもうれしそうな笑顔であった。) -- 飛爛

……そこ!?(思わず気が抜けてがくっと軽くずっこける。緊張感台無しじゃないか)
(結局自分はどうされるのか聞けてないし……まぁ、この分なら殺されそうにはないかな?ちょっと甘い考えをする余裕も出てきた) -- フェロミア


 (その後、飛爛は人払いをさせた。といっても尋問という雰囲気ではない、ただ単に周りに見知らぬ)
(人ばかりではフェロミアが話しづらかろうと思ったらしかった。)
(切り立った岩山の上にへばりつくように設営されたカタクァの陣地の中を抜けていく。岩に器用に固定)
(された皮のテントの中では夕餉の支度がなされているようで、豆を煮る湯気が立ち込めていた。)
 (さらに二人は岩山打ち付けられたほとんど梯子みたいな階段を登っていく。陣地内で一番高い)
(場所にあるそこにも、例の巨鳥達が羽を畳んで休んでいた。)
(普通に考えれば不便な岩山の上に陣を敷いている理由がこれだ、彼らはこの切り立った断崖から)
(飛びたつのだ。)
(夏の長い陽も赤く傾いて、目に見えない大気までも陽の色に染まっているようだった。)
(眼下に赤い荒野が広がる。)
うむー今日もよく晴れてる、こりゃ明日も暑いわねぇ・・・ね、フェロミアはどこの国から来たの?
(供の者も連れず、ほんの数時間前まで本気で殺しあってた相手を前に飛爛は武器すら持っていない。) -- 飛爛

(自分が言うのもなんだが、兵士・軍人の類とは思えない相手を前に捕虜とは思えない扱いを受けている事に違和感を覚える)
(この陣地自体、戦争している感じが微塵もしない。ただ岩山を登るのは骨が折れた、肉体派じゃないのに……と愚痴を言いながらも何とか登っていく)
おー……(眼下に広がる赤い光の海に思わず声を漏らした。飛んでいても中々この高さに到達する必要がある事はないだろう。自分の小ささとともに、人間程度の個人差の大した事のなさを感じられるので大地の雄大さは好きだ)
……ローディア連合。暑いのは、嫌いじゃない(少し話をしてみようと思う。無防備に見えるのがどういう意味を持っているのかも知りたい。素手でも自分の身を守る自信があるのか、こう見えて周りに射手でも潜ませているのか、それともただそこまで考えが及んでいないだけなのか……底が知れない) -- フェロミア

そっか、やっぱり共和国の人とも、なんか違うなって思ってた。
 (断崖の縁に腰掛けて足をプラプラさせてる飛爛、まったく高さを恐れていないようだ。)
特にあの鎧?かなすごいよね!あの魚を使う人は他にもいっぱい居るの?
あとどこまで飛べるのかもすごく気になるっ!シャツァル以外で空を飛ぶ人を見たのも
あんなに高く空を上ったのも初めてだし。 -- 飛爛

正確には、ローディアの人間とも違うけど……(自分の体の詳細は知らない。目覚める前の記憶はないのだ、生まれた理由以外は)
あれは……(言ってもいいものか、少し迷うが知られた所で何が変わる訳でもないと思い直す)あれは、私だけの物……今の世界じゃ作れない、多分(実際の所は分からないがそう答えておく。自分も断崖の淵に足を進め、ただ座らずに立っている)
どこまで、か……それはもう、知ってるだろ(そう、あのチキンレースの時に)私だって鳥に乗る人間は初めて……あんな状態で、楽しそうにしてた奴もな(脳にまで埋め込まれた機械で抑えていた感情が顔を出し始めている。以前の戦場では怒り。この前の戦いでは恐怖。そして今回は、興味。) -- フェロミア

(ふぅむそうなのかぁやっぱ魔法か何かなのかなぁ・・・と考えていたようだが、すぐにやめたようである。)
(きっと考えるより感じるタイプなのだろう。すぐに飛爛の興味はフェロミア自身へと移ったようで、)
(ともすれば無機質で不機嫌そうにも見える、フェロミアを見上げながら楽しそうに笑っていた。)
うん、楽しかったよあれは。
(思い出すように目をとじて、吹き抜けていく風に黒髪を遊ばせる飛爛。)
最初は必死だったけど・・・なんだか途中から、もしかしてうまく飛べればそれで
勝負付けられるかなって思ったら、ものすごく嬉しくなってきちゃって。
あとはもう夢中だったよ。確かに戦ってはいたけど、戦争なんだって事は忘れてた気がする。
・・・んーまぁ、攻め込んできといて勝手なこといいやがってーって思われるかもしれないけどさ
(苦笑い、ただ自嘲や誤魔化しではない、すこし寂しそうな。) -- 飛爛

>(魔法でもあり科学でもあり、武具結晶などと言う妙な物の恩恵さえ受けて飛ぶ鎧、鳥のほうがよほど信頼できそうな気がしてきた)
いや……死ぬかもとか、思わなかった?あんな所まで行ってさ、苦しかったり寒かったり……鳥が嫌がったり、しなかった?(楽しみにしてもデメリットやリスクが多すぎるだろう、と思う。そもそも楽しむという事の重要性を分かっていない機械的な効率重視の思考回路の持ち主である)
そっちは、別に。(戦場以外では自分は鞘にでも納まっておくべき存在とされている。だが刃だって鞘の中で錆付きたい訳ではない、そういう点では感謝している。戦争に、そして敵に。)
まだ、戦争……続けるの?(しゃがみこんで敵の有力者と思しき少女に問う。自分はいつまでその存在意義を認められていられるのか、と) -- フェロミア

戦いはまだまだ続くと思う、終わらせられない理由がありすぎて・・・私にも、私以外の兄弟達にも・・・。
 (そして、もしかして目の前のフェロミアもそうなのかと、思った。)
・・・・・・・・・雲の上はやばかったなー息してるのに全然、息できなくてなんども意識ぶっ飛びかけたし。
(不意に明るい声をだして話をぐいっと急旋回させる飛爛。)
シャツァルはどんな高い山だって越えられるけど、さすがのココロアもかなりビビッてたわねあの時は。
 (飛爛は戦いが好きではない、それよりもただ自由に空を飛べることの方が嬉しい。)
(そして、自分達以外で初めて空を翔ける相手と出会ったのだ、それがたとえ敵であったとしても。)
(近しい気持ちを持つのは無理からぬことであった、ましてや話の通じない相手でもないのだ。) &br
うむ、冷静に考えるとほんと私何やってんだろうって思うことは、よくあるんだけど・・・
こればっかりはしょうがないわね、だって空を飛ぶことが生きることと同じなんだから!
 (だから飛爛はつい今日出会ったばかりの相手にも、自分が飛ぶ空に見えるものを教えたいと思った。)
(自分とは違う空を飛んできた相手にだからこそ、そうおもったのだ。)
じっとしていれば、地面にいるしかない私たちがそれでも、上を目指したのはそういうことだよ、
何かのために飛ぶんじゃない、飛ぶ事はすごく自由だから、それがすごく楽しい。
・・・・・・・・・楽しすぎてたまにやりすぎる、ふひひ -- 飛爛

そっか(個人的には喜ばしい事であるが、どうやら殆どの人間にとっては戦争が続く事は好ましい事ではないらしい。それでも戦わなければならない理由があると言う。聞いて見たくはあるが、今の所詮索はしない事にする)
苦しいよな、あそこまで行くと……(内心ほっとする。空気が薄くても苦しくないとか、苦しいのが好きだとか言われたらまた一つ疑問が生じるところだった)
つまり……(飛ぶ事は生きる事。自分は空を飛べてもそんな風に考えた事はなかった。いや、何の為に生きているのかと言う事を認識はしていても、生きる事がなんなのかなんて事は考えた事もなかった。だから問う)つまり、生きる事は自由でいる事……って事?(自分には自由に生きるなんて選択肢はないと考えていた。飛ぶのも戦う為、与えられた目標を完遂する為の手段に過ぎない。目の前の少女にとってはそうではないらしい、飛ぶこと自体が目的で、人生。そう言っている様に感じる)
(だが一つだけ確かな事がある。自由だろうと姫様だろうと覆せない事。楽しいからといって引き際を見失えば、いつかは)……やりすぎて無茶したら、あの世までとんでっちゃうぞ(言うなれば、これは心配。敵に情が移ってしまったのか、戦いで脳に損傷を受けたのか、なんなのか。この気持ちの理由はまだ自分でも分からない) -- フェロミア

ぶふっ・・・ッ!真顔で冗談いうのは反則だわ・・・!あははっでも、まだもうちょっとだけ、あの世はこまるなー
 (ツボったらしかった。肩をはずませながら笑っていた。)
ねぇフェロミア、よかったらもうちょっとここにいなよ、あなたと話してると何だか今まで気にならなかった
事がすごく不思議ですごいことみたいに思えて面白い。
 (同時に、大爛の快進撃が続く今、彼女を帰してしまえばふたたび出会うときは敵味方に分かれてしまう)
(という思いもあった。)
いろいろ語ってみたけど、実は私もよくわかんないこと多いのよね、生きることとか、自由だってこととか
あとなんで飛ぶのってことも。
でも、ちゃんと分かってなきゃいけないことらしいから、そういうの。
 (飛爛の言葉で多くの人間の生死や幸不幸を分けることになるから、それは重要なことに思えたし。)
(敵として出会って、今こうして並んでいる、この奇妙な友人から見ている世界を知るのは面白そうだと)
(飛爛はおもった。) -- 飛爛

むっ(憮然とする。そりゃまぁ多少は洒落を入れたが真剣に言っているのに。どうせ死ぬのなら手柄になって欲しい、と敵を心配している自分と折り合いをつける)
良かったら、と言われても……(飛爛の隣に陣取って断崖に座る。あぐらをかく様に地べたで足を組むその姿からは軽い諦めが見て取れた)ここからじゃ帰りようないじゃん、あんたが許しても他の兵士が追って来そうだしさ
それに……(率直な思いを言葉に乗せる。今までもそうしてきたように。)面白いのは私も。こんな機会は滅多にないし、もう少し……知りたい
私の知りたい事は、あんたのと違って知ってなきゃいけない事じゃないけどさ(感情なんて判断を鈍らせるだけの無駄な機能だと思ってきた。でも、それを持っている人間たちはこんなにも強く生きている。ローディアの騎士団でも、帝国の陣地でも。だから)あんたと話したりして、色々と知るのも……いいかも知れない -- フェロミア

飛爛だよ、飛でもいい。
 (逃げることなど不可能な状態ながらも、とどまることを決めてくれた相手に、飛爛はにんまりと笑った。)
(本当によく笑う奴であった。)
あとで、みんなも紹介するね!・・・ふふーんっ・・・よかったあなたとは、もっかい飛んでみたいと思ったから。
 (暑く乾いた荒野の大気の尾を引っ張るように、風が地平の向こうへ夕暮れを連れて行こうとしている。)
(頭上にはすでに藍色の帳がおりてこようとしていて、無数の星達がもまたたきはじめていた。) -- 飛爛

飛ぶのは良いけど、もうあれは御免だぞ(あれとはもちろん、命さえ賭けた上空へのチキンレース。飛爛ならまたやりたいと言い出すかもしれないので釘を刺しておく、流石に危険度が高すぎるのだ)
皆に紹介ね……(どんな紹介のされ方をするか分からないが、この辺での敵国人の扱いはどうなのだろう?彼女に比較的友好的に接してるのはそんな不安からくる打算も確かにあった。姫様と仲良くしていれば悪い扱いは受けないだろう、と言う……だがそれよりも、さっきまで敵だった相手を隣においてまるで友人であるかの様に話す彼女のメンタリティが気になっている事の方が大きかった。彼女を理解するために自らも歩み寄る)
……強い明かりがあれば、夜飛ぶのも悪くないよ?(一つの提案をしてみる。独り占めしていた好きな事を共有してみるのも、分かり合うのにいいかも知れない。そんな風に思ったのだった) -- フェロミア

じゃあこれから行ってみますかー!・・・大丈夫雲の上まではいかないし。
 (飛爛は立ち上がって背をぐっと伸ばしながら、空を仰いだ。頭上はもうすっかり夜の色だ。)
(本当に飽きないものである。戦いのためではなく、ただ飛べるというのがよほどうれしいのか。)
(もしかしたらこいつは何も考えてなどいないのかもしれなかった。)
 (ただ、その誰もだませそうにない横顔は無邪気な少女そのもので、フェロミアが不思議に思った)
(ものの総てが、何一つ無理やり押さえ込まれることなく、その内にあった。) -- 飛爛



 



 

 

  〓 〓  

 

【223年 秋 共和国首都首都ゾドからそう遠くない荒野】

(フェロミアが飛爛の元に来てからしばらくが過ぎた。まだ残暑が続いていたが、日に日に空は高さを)
(増しているような気がする、秋がちかづいていた。)
(この時帝国軍は共和国首都ゾド攻略のために周辺の都市や城砦を次々と攻め落としていた。)
(カタクァ軍もその動きに応じて徐々に西へと拠点を移動させていく。もうこの移動も何度目だろうか、)
(新しい拠点は街を見下ろす崖の上だった、これまで、他の帝国軍の近くには拠点を作ろうとしなかった)
(カタクァの軍隊だったが、このときは他にほどよい高低差のある場所がなかったようだ。)
 (移動もすでになれたもので、ちゃくちゃくと、大きな宿泊テント、それよりもでかい巨大な鳥小屋に)
(鳥の発着場などもどんどん作られていき、昼過ぎに始まった作業は日暮れ前にはすでに終わりそうだ。)

うーむ、やっぱり街が目の前にあるとあっちに泊まりたくなるわねぇ・・・
 (飛爛は断崖の上から白い町並みを見下ろしていた、東ローディア特有の白煉瓦の町並みは)
(高いところから一望するとまるで整然と並んだ石切り場のようにも見えた。)
(あちらこちらから立ち上って見える、白い煙は夕餉の支度だろうか。)
 (フェロミアを捕虜とした後、飛爛は他の帝国軍とは違い奴兵として最前線に立たせたり情報を得る)
(ための尋問なども行わなかった。ぼんやりしてろ状態である、戦いを望むフェロミアにしては)
(大いに不満ではあろうが。) -- 飛爛

(設営作業を、それに加わるでもなく眺めている。もう何度も見ている光景、そろそろ見飽きてくる頃だった)
(とはいえ他にやる事もない、飛爛と話したりする以外はまるで一般人のような扱いを受けていた。戦闘行為に関わる事もなければ労働力として何かさせられるわけでもない。期待していた事でもないが、尋問や拷問なんてものとも全くの無縁である)
(平和。もしも自分が人間として生まれ、望まぬ戦闘で捕虜になったのであればこの上なく幸運なのであろうが)
br;あんたの軍隊じゃ無理かもな、地上の物は大体全部ぶっ壊しちゃうんだから
(戦う事に抵抗はない。例え相手がこれまで仕えていた国でもだ。寧ろ武具結晶を三つ持つ国に勝てれば自分の優位性を示す事にも繋がるとさえ感じている)
(なのに戦闘に参加できない、小さな焦りと苛立ちが言葉の端から漏れてきているようだった。)私なら、街の一角くらいはほぼ無傷で確保できるのに(なのに、なぜ自分を使わない?) -- フェロミア

シャツァルで白兵戦できる子はまだ半分くらい、安全にいくには上から爆弾落すしかないからねぇ
 (むふぅーと深い息で、黒い前髪を吹き上げる。フェロミアの言い分はもっともだった。)
(実際、飛欄の部下達からも逃げ出そうとすることもなく、十分な戦力を持っている彼女を戦列に)
(加えるべきだという声もあった、むしろ飛べるのだからシャツァル部隊の小隊長でもいいまで)
(言われていた。ちなみにその言葉の後には別にちっさかわいいから、という訳ではないと)
(付け足されていた。どうやらロリコンが多いようである。)
 (それらの言葉を適当に流しつつ、なんだかんだで一月以上保留し続けてきた飛爛だったが・・・)
んー・・・むしろ聞きたいんだけどね、フェロミア私たちと一緒に戦うってことはさ、今まで味方だった
人とばったり出くわすかもしれないんだよ。
 (刻一刻と変わり続けていく戦況が彼女にそうさせたのか、めずらしく真面目に話す気のようだった。) -- 飛爛

爆弾じゃなくて矢とか射掛けたら、まだ被害もマシかも(ただ当たるかどうかは分からないし、殲滅するつもりなら効率も良くないだろうとは思う)
……なるほど、それはその通りだ(騎士団の仲間を思い出す。普通の戦場で死ぬようなタマでもあるまい、とまだ戦死していない事は確信していた。だが)私は別に構わない、あの子たちには勝たないといけないんだ、私は
それに……ずっと鞘に収まってる方が辛い。自分の意味を見失う(兵器としての自覚は生身の脳にも刷り込まれてしまっていた。今更生き方は変えられない。行く末は戦い続けるか、戦場で朽ちるか、またはより良い兵器に成り代られて捨てられるかだ) -- フェロミア

あはぁーそういうと思った、フェロミアはそういう性格だよね
(うんうん、とうなずく。)
初めて出会ったときも、ボロボロだったけどすごく生き生きしてたしね、あの姿はかっこいいなぁって
思ったのも事実なんだよね。うーん、なんだろうだからかな私も乗せられちゃったっていうか・・・
ああ、わたしも対抗してやろみたいなね?
あのときはやっぱり私も・・・沸き立ってたいうのかな、必死になるのとも、楽しいとも違うんだけど・・・。
・・・だからってやっぱり、すごく危ないことをしてたのは代わりないし、命がかかってることだし。
フェロミアと一騎打ちしてたあの時だけ特別ってんじゃなくて、あれもやっぱり、殺し合いだったわけで・・・。

 (考えがまとまらないのか、考えてることを口に出してしまってるのか、腕組みをしながら)
(あーでもないこーでもない、と長い黒髪を揺らしながらぶつくさなにかいってる。が、不意にうなずき。)
・・・・・・・・・うんっわかった!私はやっぱりね、あの日空を泳いでいるあなたの姿がとても綺麗だと思ったの。
(いったいどんな結論に達したのか皆目検討がつかない。) -- 飛爛

そういう性格なんだよ(大体分かられているのか、それとも分かってるつもりなのか、それは分からないが今のは当たっていた。性格と呼ぶべきかどうかは悩むところではある)
……は?(言っている事は理解できる。言葉だって通じた。が、どうも今までの話とは違う事を話しているような気になってくる。かっこいいとかなんとか、褒められて悪い反応はしないが)
正直に言うと、私は殺す気だった。そこまでは行かなくても、あんたがおっこちて私を追ってこられなくなればいいと思って飛んだ。何の因果か二人とも生きてて、話なんてしてるけど……そっちは、殺す気じゃなかったんだな(生きている事が何よりの証拠。ただ沸き立って……興奮で追いかけてきた相手に殺す気で挑んで負けたのか。はっきりしてしまったのに逆にしょうがないなと言う気になってくるのが不思議だ)
……そっか、それじゃ仕方ないな(分かった、と言う言葉についに結論が聞けるのかと期待したが完全に外された。この少女と話を始めて何度目だろう?いつもならイラつくはずが、何故だかそれはそれで立派な答えになっているような気が、最近はしてきたのだった)初めてだよ、そんな風に言われたのはさ -- フェロミア

お世辞じゃないわ、ほんとよ。小っちゃい時に初めてシャツァルが飛ぶのを見た時と同じくらい
いいなぁって思ったんだから。
 (無邪気に前髪を揺らして笑う飛爛。)
だから、戦うことが一番っていうのが、すこし寂しいかな・・・私ね本当はココロアを・・・シャツァル達の
事を戦争には使いたくなかったんだ・・・。
(それは寂しそうな笑顔だった。) -- 飛爛

いや、そうじゃなくて(お世辞とかそうでないとかではなくどこからそんな話になったのか、と言う事が気になっているのだが)
あれだけ使いこなしといて良く言うよ(事実見事なものだと思う、飼いならして戦地に赴かせ、爆音に驚いて暴れるような個体もいない。兵器として十分に活用しているようにしか過ぎない)でも、私はあの鳥とは違う。戦うために作られたんだ、戦いに行くのに遠慮も哀れみも、要らない -- フェロミア

(痛いところを突かれたなぁ、と飛爛は苦笑いした。彼女は矛盾を抱えていた。)
(武器として使いたくはなかったといいながら、巨鳥を駆り先陣を切るのはいつも彼女だ。)
(戦うこと自体が好きになれないといいながら、誰に強いられるでもなく彼女は進んで兵士を導いた。)
(兵器という自身のあり方をまったく信じて疑わないフェロミアと比べたら、むしろ不安定で)
(まったくおかしな生き方をしてるのは、自分の方なんじゃないかと思えてきた。)
(だから、ずっと迷い続けてる自分の心に不安を感じて。彼女も自分と同じ心の迷路へ)
(道連れにしたいと思ってるのかと、飛爛はちょっと自分で自分が笑えて来た。)
(なんて肝の小さい奴なんだろう、ものすごく大それたことをしようとしているのに。)

(しかし、言い訳になるかもしれないが、迷うことも悪くはないんじゃないかとも思えたから)
(いや、正確にはまだ迷っていられるという今が悪くはないと思えたから。)
・・・・・・・・・違わないよ、私は彼らともあなたとも、こうして言葉を交わすことができるもん
私はこうして話してるとき、ただ言葉が通じてるだけなんて思ってないよ。
だから私は命令はしない、戦うことがフェロミアの一番っていうなら、それでもいい・・・
だけど他の人に止められたって、絶対に譲らないっていう理由を自分で見つけて欲しいと思ってる。 -- 飛爛

理由……(理由、それはそう生まれついたから。その為に作られたから。それだけ)
(それだけだが、そこを疑ってみたらどうなのだろう?本当にそれだけを望まれて作られたのか?それなら意思なんて持たさなくても、人の形をしていなくても良かったのではないか?今までは考えないようにしてきた。自分一人では何をすればいいのか分からなかったから)
(意識に刷り込まれた戦って自分の性能を示すと言う目的に従うのが一番楽で、安心だったから。じゃあその後は?後進にデータを渡して自分は廃棄されるのか?それは嫌だ)
(使い捨てが目的なら、自己の破壊を避ける様にプログラムされているのは何故?壊されるとしたら持ち主にさえ反抗できるのは何故?)
(思考の谷間で迷う。自分の意思と言うものを疑っただけでこんな風になるとは、自分でも予想外だった)
理由は……やっぱり、そう作られたからだけど……(今は機械らしからぬ曖昧な答えしか思いつかなかった)だけど、その先が分からない。戦って、強さを示して、それから私はどうすればいい?もしかしたら、私は……それを知りたくて、まだここにいるのかも(環境を変え、視点を変え、立場をも変え。自分はそうする事で何かが見えると期待したのだろうか?確かに一つ、違うものが見えてきた。それは新たな疑問への入り口だった) -- フェロミア

私もよくわかんないんだよねぇ、どうして私はこんな事してるんだろう、全部終わったらどうなるんだろう・・・。
やらなきゃいけないことも、理由もあるし、納得してるけど、それとは別にずっと、何故?って言い続けてる
私もいる・・・。答えを知りたいのは私も一緒だよ。
 (両手を背中に回して小さな胸に空気を送り込む。ふぅっと息を吐くと長い黒髪の先が跳ねた。)
すっごい、もやもやするけどねー。でも答えは簡単にきめられないし、きめないほうがいいのかもしれない。
正しい答えが一つきりだなんて保障もないわけだし・・・ふふふっ私と一緒に目いっぱい
もやもやしような!
 (意地悪が成功してフェロミアまで同じ思考の迷路へみごと引きづりこむことに成功した。)
(飛爛はこの上なくいい笑顔でにんまりと笑う。夏の残り香を含んだ風はまだ当分やみそうにはなかった。) -- 飛爛



 



 

 

  〓 〓  

 

【223年 12月】

共和国首都ゾドの無血開城の知らせは全土の抵抗勢力から勢いを奪っていった。
戦線をさらに拡大するため、あるいは新たな領土の統治のために大爛帝国の軍はさらに
西の地へと広がっていく。
東ローディアの荒野をつめたい風が吹き抜けていくようになった頃。カタクァの軍も長く
布陣していた岩山を離れて、南部方面軍へと参加することが決まっていた。
「引越しする前に合流できてよかったわ、どう調査の方は?」
 陣屋の中で那岐李と久々に会う飛爛、周りには他クラトをはじめ他数名の部下達も居た。
赤い毛織の絨毯の敷かれた上に置かれた卓上に大陸の地図を広げ、立ったまま覗き込んでいる。 -- 飛爛

えぇ、東ローディアに点在していた遺跡を幾つか調査しましたが…興味深いことが分かりましたよ
(開戦の地となった古代遺跡群をはじめとして、彼は進軍の合間を縫って解放した地域の遺跡等を調べ上げていた)
(調べていた遺跡の位置を幾つか指で指示して口を開く)あなた方カタクァが所持している文献や遺跡にはその歴史の長さを物語るものが幾つもありましたが…此処、東ローディアでその裏付けとなるものを幾つか見つけました
統一王朝以前の遺跡に、幾つか壁画が遺されていましてね。そこに描かれていたのですよ。カタクァと思わしき人々の姿が
(その弁から何時になく高揚しているのが分かるだろう。さも嬉しそうに。ともすれば宝物を見つけた子供のような雰囲気)
…やはりあなた方の歴史は他の民族の群を抜いて深いものがある。此処で発見した遺跡がカタクァの物なのか、それともカタクァを知る者達が遺したのか…それは分かりませんがね -- 那岐李

へーほんとにあったんだ、その昔山を越えて西の海からやってきたって伝説は本当かもしれないわね
 (毎度おなじみの白いワンピースとズボンに最近は冷えるのでマフラーを首元にぐるぐるまいてる飛爛)
(足元の毛皮ブーツもなかなか温そうだ、ブーツのインナーである羊の毛がもこもこで、でかいために)
(長靴を履いた猫状態、あるいは毛長のウサギみたいで小動物感アップである。あざとい。)
(那岐李のもたらした様々な情報を、周りにいる部下達が地図に書き込んだり、手記に写したりしている。)
(彼らは文官で、大爛帝国の文字の他に今では使う者の少なくなったカタクァの文字の読み書きも)
(出来る希少な人材である。)

遺跡ってどの辺にあったの?おっきかった?
 (そして熱心に仕事をする部下以上に、興味津々なのが飛爛のようだった、机に身を乗り出して、)
(というか机の上に両手で乗り上げていた、机が傾くので落ち着いてくださいと、部下に怒られた。) -- 飛爛

(対して那岐李はいつもの恰好に一枚西国制の外套を羽織っただけの簡素な恰好である)
(カタクァの文官には資料の解読の際に非常に世話になった。何しろ今まで見たこともない文字体系だったので)
(基礎の文法から手取り足取り教えてもらったのだから。そのおかげで何とか簡単な文章なら解読出来るようにはなったが、まだまだ彼等の力は必要だ)

…そうですね、地図で言うならこの辺りです。ほぼ砂に埋もれた状態でしたので確認出来たのは一部だけではありましたが…
それでも6枚羽の鳥と、それを従えているように見える人々の図…カタクァの壁画は確認出来ました
(言いながら、地図上を幾つか指さした。彼が見つけたカタクァの壁画は他にも幾つかあった)
(その位置も周りの文官と飛爛に指示しつつ)…恐らく、あなた方が把握しているよりもずっとカタクァの歴史は長い
調べれば調べるだけ新しい発見がありますし…研究者としては嬉しい限りです
(調べれば調べる程カタクァの歴史の深さを思い知る。これだけの歴史があるのであれば、彼らが未だに誇りを失っていないのにも何となく納得できる)
(民族の誇りと言うものは独自の歴史の上に築かれるものだというのは分かっていた)
(だからこそ、自分はカガチ人のルーツを明らかにし、同胞が忘れていた誇りを取り戻したいと願うのだ) -- 那岐李

それは確実にまちがいないわね!しっかし、森の中に遺跡があるのは知ってたけどまさか砂漠にまで
あったなんて、ふぅむ・・・遺跡の近くの町に宗か喬が居ればいいのになぁ、むぅーでも発掘したいから
手伝えとかいったら、この忙しいときに何してんですかとか怒られるか・・・むむむ・・・。
 (腕組みしてふむぅと柳眉のシワを寄せる飛爛、相変わらずちょこまかとよく動く。)
(唸っていたとおもったら、すぐにまた楽しそうな表情で顔をあげた。)
那岐李すごいよね、よくこんなに短期間でいっぱい調べられるよね。ぶっちゃけ私、学者ってのは建前で
ほんとは何か、怖い仕事してる人なんじゃないかって思ってたけど・・・
(悪戯っぽく笑う飛爛。彼に東ローディアを行き来するさいの便宜と同時に、各地の様子を探るようにと)
(密偵紛いの仕事も押し付けたのはむしろ自分自身だというのに。よく言うものである。) -- 飛爛

恐らくではありますが…遺跡が作られた当時はまだここは緑の大地だったんでしょう。それだけの変化が起こってもおかしくないだけの年月ではありますし、ね
確かに…本格的な発掘まで出来れば新しい発見もあるでしょうが…今の帝国に、歴史の重要性を理解する方は少ないですしね
(宝物を粗方奪い尽くされた東ローディアの遺跡ともなれば尚更です、と付け加え)
……いえいえ、私はあくまで学者ですよ。国の庇護を受けられぬ私設の研究組織ですので…荒事への対処の方法は色々と身に着けてはいますがね
(飛爛の言葉に応えるその顔は少し困ったような表情でもあった。彼の言葉は半分事実であり、半分嘘でもあった)
(彼が力を身に着けたのは、自分に宿った異能がカガチ人の固有の物であると信じているからだ)
(他の誰にも出来はしない自分の異能こそ、彼が今現在持つカガチ人の誇りであると信じられる最後の一欠けらだ)
(だからこそそれを振えるだけの力を身に着けておきたかった。この異能に恥じぬだけの確かな実力を)&br(何時からか、それを使って他者をいたぶる事でカガチ人の優位性を示そうとしていることには気づいていたが、見て見ぬふりをしてきていた)
……しかし、突然どうしたのです。何か、調査以外に頼みたいことでも?
(心中に渦巻く複雑な想いを隠しながら問いかける。自分に各地の調査を命じた以上、自分の能力を彼女は最初から利用するつもりだったのだろう)
(それを今更このような言い方をするのには、何か理由があるはずだ) -- 那岐李

ん?別になんもないよ、ただ、えらいなーって思っただけ。
(さらっと雰囲気台無しである。)
爛の人ってさー、なんていうのかなぁ・・・即物主義?儲かるかなんか得がないと、動かないじゃない
でもね、私はこういう古い歴史を調べて伝えたり、学問をする人を大事にするのって重要だと思うのよね
だから那岐李がほんとにちゃんと仕事してくれて嬉しいなぁって思って。
(飛爛が戦場に出るようになって、だいぶ経つ、だが相変わらずその笑顔は子供っぽく裏も表もなかった。)

 (姫様、彼に課した別任務も大変重要なことなので、お忘れなく・・・そう、背景と一体化していた)
(クラトに釘をさされる飛爛、大丈夫かこの姫様。)
・・・大丈夫、覚えてるから、ほんとに
 (横からせっつくクラトを手で制止しつつ、頷く。)
(飛爛が那岐李に頼んだのは変動を余儀なくされる東ローディア各都市を行き交う交易品、)
(貴重な宝石や輝石といった魔術用具、そして食料に、とりわけ貴重な軍事的資源である鉄が)
(どこから来てどう流れていくか、その詳細なルートと取り扱い業者の明細を作ることだった。)
 (そして同時に、それらの資源を扱い加工する職人達がどこに多くいるのか、材料の仕入れから)
(仕事の請負まで、およそ産業に関する情報の現状を調べさせていた。) -- 飛爛

…良くも悪くも帝国民は今を、前だけを見て生きていますからね
過去を調べ、歴史を知ったところで今現在役に立つわけでもないですから…
私の場合は単に目的があって調べているだけですよ。それがたまたま、貴方がたカタクァの歴史を調べることと同義だった…というだけです
(飛爛の言葉に薄く笑いながら返す。この少女の裏表のない言葉に、時折どう返答したものか困ることがあった)
(余りにも真っ直ぐな言葉と瞳に、自分が塗り重ねた虚栄を見透かされているのではないかと思うことがある程だ)
(だからだろうか、最近は少しずつ本当のことも話すようにはなっていた。だからといって、彼の全てが推し量れる程の言葉ではないが)

…別件の任務のことですかね。それでしたら―
(クラトの言葉が耳に入った。ふぅ、と小さく息を吐いてからそちらの調査結果を話し始める)
(脇に抱えていた書類から件の物を幾つか机の上に広げ、交易ルートや各物品の流れ、職人たちのリストと各々の出来ることなど)
(頼まれていたことをほぼ網羅したものを次々と説明していく)
―…と、こんな所ですね。あとは直接依頼したり、交易ルートへ介入してみないことには… -- 那岐李

おわっ細かッ!うむぅ、これだけしっかり調べてあれば計画立てるのは困らないかな。
 (提出された資料の細かさと漏れのない完璧さに驚く飛爛、どっちかというとそれらの資料を)
(ふむふむと、よく読みこんでいるのはクラトの方だ。)
私たちがこれから向かう南部で、必要な物と人を滞りなく運ぶには、他の誰よりもうまく東ローディアの
商人達に協力してもらわないといけない・・・うん、直接交渉したりするときもよろしくね。
 (反攻への準備はちゃくちゃくとすすんでいた。激動のうちに始まったこの年も終わろうとしていて、)
(彼らが後戻りができなくなる日も近かった。) -- 飛爛

えぇ。直接あなた方が交渉に赴けば本国に動きを気取られることもあるでしょうしね
…西方にはもとから付きあいのある商人も居ます。その方面を当ってみますよ
(いよいよ西側との本格的な戦闘が迫ってきている。このまま両国が泥沼にはまっていく中で)
(彼女たちは如何にしてその身を泥沼の中から羽ばたかせるのか)
(それを見届けるために、そして自分自身の目的のため)
(今しばらく彼等の力になったままでいようと思う那岐李であった―) -- 那岐李



 



 



 



 



 



Last-modified: 2012-10-10 Wed 00:41:21 JST (3271d)