ビービィセンシ家出身 真紅主・ザイコ・ウヒョー 81005 †
深い森の片隅で、陰が一つ片ひざを付いて横たわっている。
傍にあった鎧らしきものは、もはやその形を成さぬほど酷く歪み、砕かれていた。 その持ち主…陰が消え映し出された姿は人というには異質過ぎるものであった。 彼に外傷はなかった…というよりも、その体は微かだが薄く消えかけているように見える。 ふと、彼の手が微かに動いた。 「流石にこの体も限界みたいね 8年なら、よく持ったほうか…」 彼が微かに横を見ると、いつそこにいたのか、少女が眠るように肩にもたれ掛っている。 彼の目覚めに反応するように、彼女もまた眼を開けた。 頭を上げると、彼女は相手に向き直り、憂いと慈しみを込めてうっすらと微笑んだ。 「……時間が、来ましたか…? 長い間、お疲れ様でした…真紅主さん」 彼女の言葉に返すように、彼も微かに微笑んだ。 「こんなミーに付き合ってもらって、すまなかったね…イモリン」 その言葉を聞き、彼女はゆっくりと首を振る。顔以外は黒いボディスーツのようなその体も、彼と同じように半ば透けていた。 「何を言っているんですか。 私が感謝することこそあれ、謝られる覚えなんて、これっぽっちもありませんよ。 それに…これから先も、ずっと…でしょう?」 そう言って、彼女はいたずらっぽく笑った。 「…そうね、ミー達は一緒。 世界の果てまで……一緒ね……」 互いに微笑み、薄れゆく体は僅かだが光を放っているように見える。 徐々に強くなる光に包まれながら、彼女は彼に手をさしのべる。 「ええ…。嫌だと言っても、ついて行っちゃいますから。真紅主さんと一緒なら、どこまででも…」 その手を強く握り返す。 「…ありがとう、イモリン。 これからも、ずっと………」 「はい。ずっと一緒です…ずっと愛しています…あなた……」 そして完全に彼らを包んだ光は、静かに空に昇って行く。 ふと、青い鳥が光を包むように回り、飛び去る。 光は鳥に導かれるかのように、遥か天の彼方に消えていく。 そして、もはや主のいない鎧の残骸の傍、黒い外套を羽織る影が、その光を静かに見守っていた…。 過去トップ絵 †
もくじ †
過去の出来事 †
黄金暦87年 12月 †
黄金暦88年 1月 †
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黄金暦88年 10月 †
黄金暦88年 11月 †
黄金暦89年 4月 †
黄金暦91年 4月 †
黄金暦92年 3月 †
黄金暦92年 7月 †
黄金暦93年 2月 †
黄金暦93年 3月 †
黄金暦93年 8月 †
もらいもの †
───真紅主とイモリンの荷物?はすべてポヘミアンの倉庫に眠っている───
めっせぃじ †
イモリンとの二人きりの思い出 †
リバーサイドにて †
チンピラ家出身 鉄機騎士リ・プラス 146722 †
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