このページは個人企画/聖杯戦争のランサーペア(カテントラフキン姉妹)のログページです。
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宵闇の魔術師 Edit

  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079485.gif ここではない、どこか。
    • カツン、コツン。
      暗い回廊に足音が響く。

      男がやってきた。
      傷んだ金髪を腰まで伸ばし、ボロボロの風体で歩く厳しい男。
      右手は肩から先が青銀の義手、左手も肘から先が同様。
      右脚は銀色の義足で、顔にも体中にも傷が刻まれていた。
      不具である。
      しかし男は然と、歩いていた。
      右目がない。
      だが笑い、歩いていた。

      「よう」
      ふと、男の行く先に、もう一人の男がいた。
      傷んだ金髪を項のあたりで切り、同様に厳しい男。
      五体満足だが、顔には傷が刻まれ、なによりも。
      いくつものピアスをしている、不良のような男。
      剽悍である。
      しかし男は笑っていた。
      やってきた男もまた、笑った。

      「相棒、だとさ」
      「へェ、竜二以外にそう呼ぶヤツがいるとはな」
      「アイツにも詫びねェとな……だいぶドラゴンハートを借りちまった」
      「まァ、いいさ。神様なンだ、このくらいしてもらわないとだろ?」
      「……で、相棒だとよ」
      「ハ。よほど嬉しかったか?」
      「まァな。あと、アレだ」
      「ン?」
      「おとうさん、だとさ」
      「…………そうかい」
      「嬉しいだろ? わかるぜ」
      「うっせェ、当たり前だろ」

      「手前ェはオレで」
      「ああ、オレは手前ェだ」

      男はともに青い光を灯していた。
      力強い青の光。何ものにも屈せぬ蒼の命の炎。

      待っていた男が、右手を挙げた。
      やってきた男も、右手を挙げた。

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      小気味いい音が響く。

      「アイツらのこと、よろしくな」
      「あァ。……ヴィヴィに、よろしくな」
      「あァ。ンじゃな」
      「おう。ンじゃな」

      男たちは歩き出す。
      男は懐かしい未来へ。
      男は輝かしい未来へ。
      それぞれのままに、歩き出す……。
      -- 2012-06-08 (金) 02:48:44


















    • (街灯の下大きな赤い帽子を被った女が一人佇んでいる)
      (そこはとても冒険者の街によく似ていて……だけど全てが純白の色)

      (どこかから聞こえてくる歌にあわせて、女も小さく口ずさむ)

      手と手つないで 心ひらいて 真昼の光を探しましょう
      声と声重ね 息を合わせて 綺麗な響きを作ったら....


      (そして、誰かの足音が聞こえてきた)
      (女はその足音が待ち人だとすぐに気づいて、彼が声をかける前に振り返る。歌いながら)

      ....私たちの子を守りましょう....


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      ……ふふ、遅かったわね。カテン。
      女の子を待たせるなんて、いけない人ね?

      でもいいわ。娘たちのためだもの。許しちゃう。


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      (ピアスだらけで短い金の髪のカテンに微笑みかけながら、首をかしげる)
      -- ヴィヴィ 2012-06-08 (金) 03:23:26
    • 悪ィな、待たせた。
      (歩いているうち、男の姿は変わっていた)
      (いくつもの傷は消え、けれど彼女と出会った頃のものは消えず)
      (髪は短くなり、けれど彼女と出会った頃と同じように傷んでいて)
      (失われた右目が元通りになり、その双眸に青い輝きが戻る)
      (彼女がいなくなった時にやめたピアスもいつのまにか元通り)
      (葉巻の代わりにタバコを銜えて、いつものように青い炎を灯し)
      本当、遅くなっちまった。いろいろ、寄り道してきたからな。
      (それ以上の言葉は要らないだろう)
      (自分がどんな道を歩んできたか、彼女は十分知っている)
      (いつもそばにいてくれたのだから)
      (そして今、こうして)
      約束通り、
      (約束通りに)
      迎えに来たぜ。
      (彼女の元へと、帰ってこれたのだから)

      そういや、アレだな? その歌。オレも知ってるよ。
      アイツらもよく、唄ってたからな。
      ……あー、いや。そうだな、思い出話はあとにすっか。
      (頭をかいて苦笑いして、タバコを消して、改めて彼女を見つめ)
      ただいま、ヴィヴィ。……長かったけど、これでもう終わりだ。
      これからはお前を離しやしねェよ、ずっとな。……ずっと、ずっとだ。
      (そして両手を広げて、にこりと笑う)
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      おいで。もう、どこにも行かねェからさ。
      -- 2012-06-08 (金) 03:52:49
    • 長い間、娘達と私のために頑張ってくれてありがとう。
      貴方は私の誇りよ。

      ああ、言葉だけでは言い表せないの。やっと会えた…やっと、触れることができる……。
      この日をどんなに待っていたか……。
      ……ずっと側にいたの。あの日から、貴方に抱かれて天使になった日から……。

      傷つく貴方を抱きしめてあげられなくて、辛かった……。
      弱音を吐かないで戦う貴方を見るのが苦しかった。

      ……でも、いくらだって待っていられた。
      いつか、貴方が約束を守って懐かしい未来から帰ってきてくれるって信じていたから。
      いつだって、信じていられたの。

      だって貴方はいつも笑っていたから。
      真っ直ぐに、前を見て。

      ……そんな貴方を信じられないわけないじゃない。ね?


      (手を後ろで組んで、少女のように笑う)
      (彼の一言を待っているだ)

      (おいで。って、呼んでくれるのを)



      (…………そして、待ち望んでいた言葉を彼が囁く)

      (あとはもう、飛び込むだけ)


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      (ハイヒールの靴音を鳴らして、走り出す)

      (その姿は見る間に15歳の少女のものへと変わっていく)
      (赤い帽子が落ちて、髪を結う赤いリボンがなびいた)
      (ふわふわのローブを翻して、少女は走る)

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      おかえりなさい…!!!!カテン…!!!!!

      (両手を広げたカテンの腕に、花のような笑顔で飛び込んだ)
      -- ヴィヴィ 2012-06-08 (金) 04:26:22

小さな奇跡 Edit

  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080167.jpg
    • (アイリスを教会の椅子に寝かせて、銀盃花の咲く草原に戻る)
      (青く茂る草を踏みしめ、楽園の香りに包まれて…金色の月の下を歩く)



      (魔力ももう底を尽く。体の魔力回路が妹の消失でおかしくなっているのか、回復する気配がない)
      ……目の前のサーヴァントを、もう現界させていられなくなる
      本当に、本当に、ひとりぼっちになってしまう

      (戦いを後悔はしていない。妹の意思を尊重したことを、後悔はしていない)
      (でも……胸にぽっかり穴は開いたまま)
      (……歩きながら右手の呪印が目にはいった)
      (……最後に一つ残った、太陽のような模様の印……)


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         姉様。これが呪印というのですね?不思議な形なのです。
         ……これは月かな?この真ん中のは太陽で……このつんつんしてるのは何でしょう?
         ……剣かな?ただの十字架かな?

         ……ああ、槍にも見えますね?


      (まだカテンで出会う前、聖杯に選ばれたことを自覚したばかりの頃、妹が言った言葉)
      (その後カテンに知り合い、彼をサーヴァントとして召喚した時、妹はとてもはしゃいでこう言った)

         姉様、やっぱりこのしるしの十字架は槍だったんですよ!
         出会う前からきっと、先生がサーヴァントになってくれることが決まっていたのです。
         嬉しいな……きっと、これを運命というのですよ。


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      (妹の笑顔が浮かんでは消えていく……消えてしまった、たった一人の愛しい存在)
      (あの子が初めて笑ってくれた時、この子を守ろうと思った。命を懸けてでも)
      (魔法陣の上で妹を喰らった時も、自分の体を妹に捧げるつもりだった)

      (なのに)

      (あたしだけが生き残ってしまった)

      (…運命だと嬉しそうに言ったマルチナ)
      (これも運命なのだろうか……)

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      (妹の思い出と共に歩き……金色の月を背に佇む男のもとにたどり着く)
      (涙で濡れた頬が、吹き抜ける風で冷たい……思えば、彼の前ではよく涙を見せていた)
      (どうしてか、気が緩んでしまって……今もそう。妹の影響だろうか)
      (ただ慕って、信じていた…マルチナの想いの)

      ……ひとりぼっちに、なっちゃった……あたし。

      (微笑みかけて、呟く)
      -- キリル 2012-06-07 (木) 21:40:30
      • ……いや、お前は一人ぼっちなンかじゃねェよ。
        (涙を流す赤毛の女に対し、男は憮然とした様子で答え)
        (葉巻に火をつける。外装が解除され、黒のコートへと変じた)
        たしかにマルチナはお前の肉体から消えてった。だがその魂自体はまだ残ってる。
        マルチナを救うためにはこれが必要だったンだ。聖杯を手に入れたとしてもな。
        (キリルとマルチナの関係は非常に危うい。繊細な均衡の上に成り立っている)
        (そこにむやみに奇跡を挟み込めば、マルチナの蘇生の代償にキリルが死ぬこともありえるのだ)
        (ゆえに、マルチナの魂をキリルから分離させる必要があった)
        (とはいえ、魔術的な儀式では、先の理由からおいそれとそうした事を行うことは出来ない)
        (可能な方法はただひとつ……聖杯の奇跡によって現出した、宝具によって吸い出すことのみ)
        マルチナはここにいる。まだ全ては終わっちゃいない、諦めるな。
        (右目を指さす。そこにはめられた蒼の魔法石は、今なお金色に輝いている)
        ……この間、約束したよな? 「3つ目の令呪の使い道はオレに決めさせてくれ」って。
        (キリルの手に刻まれたままの令呪を示す)それが残っててよかったぜ、うまくいく。
        あとはお前の覚悟次第だ。今更、約束を違うなンて言うなよな。

        (男は渋い顔のまま葉巻をくわえ、煙を吐き出す)
        (約束を違うことはできない、それは自分自身もそうだ。これはマルチナ達との約束のため)
        (……しかし、そのためにキリルには結局、つらい選択をさせることになる)
        悪ィな。(短くそう言って、深呼吸をした)
        こいつ……《小さな奇跡》は、3つまでオレが願った事柄を叶えることができる。
        言うなればちっとばかし都合の効きづらい聖杯だ。
        オレ達の求めていた聖杯が、オレのような……つまり、サーヴァントの魔力を必要とするように、だ。
        こいつも、ヴィヴィや……オレの大切なヤツの力を借りていても、現界がある。
        ストレートに言えば代償が必要なンだよ、マルチナの命と2つ目の令呪の魔力で補ったみてェに。
        こいつにはあと1回、オレの願いを残す力が残されてる……。
        まず遺されたヴィヴィの力を使う。だがそれでもまだ足りねェ、令呪の力が必要だ。
        ……それでもまだ足りない。だから、お前に命じて貰う必要がある。
        (一拍置いて、告げる)

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        令呪を以てオレに命じてくれ。「その命を妹マルチナのために捧げよ」……ってな。
        サーヴァントとしてのオレに残された魔力はもう殆ど空っぽだ。このままだと消える。
        だが……今のオレは、人間だ。
        (その言葉が宝具の発動を示す。《英雄不要論序説(ヒロイック・エフォート)》がランサーの有り様を変える)
        (感じられる気配が変質し、キリルの魔力を奪っていく感触が消える)
        (英霊としての枷と力を失い、人へと還る力。今そこにいるのは、命を持つただの人間だ)
        ……わかるな? 「人間としての」オレの命は、この通りここに在る。
        マルチナの魂が還るべき身体を作り出し、アイツに未来を与えるためには十分なくらいに、な。
        -- ランサー? 2012-06-07 (木) 22:22:08
      • (もう妹には会う事はできないと思ってた)
        (魂は溶けて消失してしまったはずだ。そうなるのだとホムンクルスを生み出した鬼が言ったから)
        (その実感もある……体の一部が、たとえば手や足が一つ消えてしまった様な…そんな感覚が)

        ……でも
        ……ほん、とう…?
        あの子は……消えていないのかい?
        ホムンクルスの魂は人のそれよりも弱く脆い。魔術の重ねがけを繰り返された者が……。

        (体が震える。信じたいけど、信じられなくて)
        (彼の金色の瞳をまともに見つめるのが怖くて………目をそらそうとした、その時、)
        (………見えた気がした)
        (妹が自分を見つめる………真っ直ぐなまなざしを)

        ……そこに…いるの……?
        (手を伸ばして、男の目元に触れる)


        (妹を取り戻す、それには代償があると彼は言った)
        (女は瞳を輝かせて涙を拭い、即答する)
        そんなの、何でもするしなんだって捧げるに決まっている!!
        令呪を使えばいいんだね?そんなのお安い御用さね。
        残り少ない魔力を使い切って、自分の体にかかった魔術を暴走させたって奇跡を……!!
        (呪印に魔力を通して光らせ、彼の言葉を待つ)

        (そう、何もかも犠牲にするって決めていた)
        (だから、迷わないはずなのに…………)



        ……でも



        (……彼の一言で、呪印から魔力が消えて、紅い光も消えて行く……)
        (彼との魔力のつながりも……)

        (目を見開いたまま長い沈黙。強い風が髪を巻き上げる)
        (目の前の大きな男を見つめたまま、銀盃花の花びらが舞う)
        (風が吹きぬけ、静かな空気になるまで、動けなかった)

        (月明かりに、泣き出しそうな顔が照らされる)
        (けれど、女は笑った)

        …………………………………わかった。約束だもんね。
        あんたが約束する時、珍しく歯切れが悪かったから嫌な予感はしてたよ…まったく。
        ……本当に、酷い約束。
        でも……マルチナのためだ。躊躇うわけ、ないだろう?


        ……ああ、でも、ちょっと待って。魔力使い果たして、へとへとだからさ……一服させてよ。
        煙草、頂戴。
        (男のコート、いつも煙草をしまってあるポケットから一本引き抜き)
        ……火、分けて。
        (口にくわえると、背伸びして煙草の先同士を合わせて息を吸う)

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        (青い火が、二つになって、紫煙が月へと昇っていく)


        嘘。躊躇わないなんて嘘
        (何もかも犠牲にするつもりで、外の何でも、きっと迷わなかった)
        (目の前の男は何もしなくても時間がたてば消えて行く……)
        (……わかっているのに)
        (妹のためなのに……ためらってしまう)
        (煙草を吸い尽くすまでは、と、僅かでも先延ばしするくらいに……)


        (でも女は口に出すことはしない。普段はなんだってすぐ言うのに、大事なときには上手く言えなくなってしまう)
        -- キリル 2012-06-08 (金) 00:15:57
      • (嘘だな、と)
        (思ったが、言葉には出さないでおいた)
        (それを言ったところでどうにもならないし)
        (彼女にウソをつかせたのは、自分だからだ)

        (火を分けてやり、キリルがゆっくりと紫煙を呑めば、ふと)
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        (左手を、ぽん、と)
        (キリルの頭に乗せてやった)
        ……悪ィな。
        (言わないでいる彼女の優しさに、詫びるように頭を撫でる)
        本当はもっとうまいやり方が、あったかもしれねェ。
        けど、オレにゃ、これしか浮かばなかったンだ。……悪ィ。
        手前ェが男なら、一発ブン殴ってもらって帳消しにするところだがよ……。
        (ぽん、ぽん、と、二回頭を優しく叩く)
        お前らには世話になったよ。これからも二人ともども、元気でやれよな。
        一番それがラクな道だったのかもしれねェがよ、いつまでも娼婦なンて続けてンなよ?
        いい男の一人や二人捕まえて、玉の輿でも乗ってやれ。お前ならできるさ。
        (いつものように、そんなことを軽口で言う)
        そういや……ホムンクルスの魂がどうとか、って話あるだろ。
        実際な、オレがお前達にああいうことを強いてきたのは、それもあるンだ。

        ホムンクルスってのは作られた命だ。親もなく、家族もなく、故郷さえない。
        だから寄る辺をもたねェ。心がふわふわあっちこっちで、すぐに軽くなっちまう。
        けどよ、手前ェの中に揺るぎないものがひとつあれば、絶対に地に足付けられるンだ。
        (自分の胸を、こつんと叩く)
        ここにな。お前も、マルチナも、しっかりと自分を貫き通した。
        だからお前もあいつも、ホムンクルスなンかじゃねェ。人間だ。ちゃンとした、人間だ。
        ……で、オレ達が親だっつったら、多分嫌な顔するだろ。
        (くつくつと、答えを先読みしたように笑い)
        実際、血も繋がってねェし、お互いの過去だって聞いたとおりにしか知らない。
        けどよ……オレと、そしてヴィヴィにとっちゃ。
        お前も、マルチナも、大事な家族だよ。かけがえのない、家族だ。

        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp021020.jpg
        ……ありがとな。お前達のおかげで、オレは本当の意味で全部を終わらせられた。
        聖杯戦争を勝ち抜くって約束は守れなかったが、願いは叶えてやれる。それが嬉しいよ。
        じゃアな、キリル。また会おうぜ、三千世界の彼方で、いずれ「オレ」とな。
        オレの記憶は「オレ」に受け継がれる。たまにゃ顔見せるだろうが、その時はイヤな顔しねェでやってくれ。
        その時にゃ恋人でも作ってりゃ安心できンだがね……と、小言言ってもいけねェか。
        (笑いながら、男は一歩退いた。その時を、待つように)
        -- ランサー? 2012-06-08 (金) 01:00:16

      • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

             「星たちは生まれてはまた死んで 永遠に同じことを繰り返す
             「次の日も次の世もまた次も 生まれては消えてゆく星たちよ

             「めぐりゆく時の流れに沿って 失った過去の中を生きてる
             「一寸の狂いなき光で 彷徨える旅人を照らすよ....


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        (草原の中銀の髪の女は歌う。低く伸びやかな声を風に乗せて、誰かに届くようにと…………)
        -- キリル

光と闇の戦い(後編) Edit

  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080151.jpg 
      • (しっかりと地に足をつけて少女は立ち尽くす)
        (目の前の敵のマスターのかけてくれた魔法で、倒れないでいられた)
        (…不思議なものだと思った。望んで闇に落ちる少女が助けてくれた事だけでなく)
        (先生のように振舞えば、ただ真っ直ぐであれば、それを見る人間も変わる事が)

        (魔力はカテンへとめどなく流し続けている。すでに底が見えている状態でも。数分と持たなくても)
        (体の感覚が消えて行く。自分の体はもう駄目なのだと実感できる)
        (「マルチナ」を安定させるための銀の腕輪に細かいヒビが入っていく……)
        (恐ろしいと思った。消えたくないと思った)
        (だけど、少女は絶望していない)
        希望(カテン)はいつだって側に居るのだから……!)


        (その少女の気持ちに応える様に…………彼は笑った
        (四肢の内、両腕片足を失っても尚)
        (血反吐を吐いて)
        (濁ったうめき声を上げて)
        (砕けた義肢を地に突き立てて……)
        (……カテンは立ち上がる)

        (少女は振り向いて手を差し伸べることはしなかった)
        (これは彼が意思を示すために必要な事)
        (手助けはしない。ただ信じて待つ)

        (神話の勇猛な英雄のように堂々とした声が、少女の頭上高くから聞こえた)
        ……お父さん…!!
        (叫んで、少女は始めて振り向き、父を支えた。抱きしめるようにして)
        (白いワンピースが彼の血で紅く染まっていく。もう戦える状態ではないのは誰が見ても解る)
        (それでも少女は泣かない。信じる事をやめたりはしない)
        (父を見つめて、彼の言葉をじっと聞いている)
        (彼のもう一つの青い瞳……海のように深く美しい青を見つめて)
        (それは、彼が昔…いつも胸に下げていたもの)

        (懐かしい、青)
        (月蝕と瘴気の闇の中で唯一つ、光る星)

        (希望は今、そこにある)

        ……酷い人ですね、お父さん。
        嘘をついてくれれば、私は夢を見たまま消えていけたのに。

        (少女は幸せな笑顔を浮かべた。咲き乱れていた銀盃花のように、無垢な笑顔)

        ……でも、私は…そんなお父さんが好きです。
        未来から来てくれた「貴方」を、お父さんって呼びたかったの。
        (全てを失っても、約束のためにここへ来てくれた「カテン」は、たったひとり)
        (今ここにいる貴方だけ)

        えへへ、しょうがないですね……私はいい子ですから。お父さんのいうことはちゃんと聞くのですよ。

        (パリンと澄んだ音をたてて銀の腕輪が弾けた)
        (少女をこの世にとどめるための魔法が消える)

        (そして少女は…)
        (残りの数分の時間をすべて魔力に変換しはじめた)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

        …………はい、お父さん。私の残りの命を、全てを貴方に。

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 

        (感覚のもうない腕を彼に回したまま、瞳を閉じる………)
        -- マルチナ 2012-06-05 (火) 23:00:17
      • (全ての魔力を注げるわけでもなければ、本当はそんな余裕も私自身残って居ないのだけれど)
        (バーサーカーに貪られる魔力から比較すれば彼女に注ぐ魔力は微々たるものだけど)
        (あの子がもう少しこの場に立って居られるには……十分な量を注いで)
        (例え、注いだ魔力を彼女が全てカテンへと転換しても 構わない)
        (希望の蒼い炎の槍兵を信じて)
        (死の淵に呑み込まれかけているのに前を向く少女を見て)
        (私は微かに微笑むと共に、揺れる)
         
        (全てを犠牲にしていいのではなかったのか?)
        (全てを踏みにじるつもりじゃなかったのか?)
        (例え私の持ちえるものをかなぐり捨てて)
        (例えそれが自分のカルマを真っ黒に塗りつぶして、自分の首を絞める行いだとしても)
         
        (それでも)
        (私は才能が欲しかった)
        (この戦いで最後まで立って、実力を証明したかった)
        (なのに――……ああ)
         
        (目の前に召喚されたのが矛盾の魔王の眷属なら、本当によかったのに)
        (現実は、それは自分の実の父親だったなんて)
        (常に明るく前を向いている人だったから尚更――……わからない)
        (どうしてパパは矛盾の魔王に呑まれたの?)
        (どうしてパパは矛盾の魔王を受け入れたの?)
        (考えたくない理性と、答えを知りたい本能が渦巻いて、ぐちゃぐちゃになっていく頭は気が狂いそうだった)
         
        (……脳裏に 母の言葉が蘇る)
        "アイリス。お前はどうして黒魔女に自ら進んでなりたいんだ
        あんなもの、自分のカルマを真っ黒に染め上げて、自分の存在を自ら貶める
        高潔な魔術師に成れなかった奴の成れの果てだよ"
         
        "私の跡を継ぐとか、馬鹿な考えなら止めてくれ
        寧ろ継いでくれるなら、私には出来なかったそっちの道を歩んでくれよ……頼むから
        黒魔術の方が威力が凄いとか、そんな程度なら止めてくれ……本当に"

        "いいか?黒魔術ってのはな
        白魔術でヒーリングしてブロックを外して、心の傷を癒してその人が自ら歩けるように、自分で立てる様にして
        何が原因か占いをして、その人の心を紐解いて原因を探っていって
        それで駄目なら術を行って
        本当に本当に本当に本当に
        そこまで手を施して、頑張って諦めないで努力しても報われないで神が自分に力を貸してくれない
        これ以上は本当に何もする手が無い、縋るものも無い
        絶望して心が挫けそうだ。何か希望の光が欲しい、少しでも風向きが変わって欲しい
         
        ……そこまでして、やっと黒魔術の出番なんだよ"
         
        "だからそれまでそんなもの要らない
        だから……お前が本当に、もし……黒魔女になりたいなら
        その前に白魔術師やヒーラーになって
        高潔な魔術師になって
        それでもお前の前に道を塞ぐ壁が、どうしても越えられない時は教えてやるよ"
         
        "だから……それまではお前の才能を大事に育てなさい
        目の前のつまんない願望に囚われないで
        自らその芽を摘まないようにして
        きっと……今ここでお前自身が自分のカルマを真っ黒に染め上げたなら――……
        本当に
        本当に後で、真実を知って絶望するだけだよ"  
         
        (母は、弟子を取らない)
        (何度か尋ねて頭を下げる魔術師を幼い頃から何度か目にしたけれど)
        (皆、冷たい事を言って、酷い事を言って 相手を試す様にして追っ払って来たんだ)
        (だから、私はその延長線上だと思っていた)
        (娘だから、甘いのだと)
        (私は知っている。母が弟子に唯一欲しい人を)
        (そして、その人に拒まれている事も)
        (それ故に、私も……血の繋がりがあるからマイルドな言い方で遠ざけようとしてたとおもっていた)
        (けれど……ああ……)
        (目の前の、惨劇は……何?)
        (あれが、私の行いの業の末路だとでも言うのか?)
        (肯定するかのように、漆黒の魔力と瘴気を纏い、闇で真っ黒に塗り潰された鎧のバーサーカーは……いや、父は)
        (私の将来の姿を重ねて見せられたものを、突き付けられたようだった)
         
        『……お前さ。黒魔女になりたいならさ
        誰かのぬくもりとか愛情とか、パートナーとか諦めろよ』
        (要らない、って思ってた。恋愛にも興味無いし、人になんて興味無いし そんな人作らないって思ってた)
         
        『……その上さ、黒魔女になれば一歩誤ればそいつらに危機が訪れるぞ
        本当の意味で、孤独だぞ』
        (孤独には慣れているから、それの延長線上なんて別にかまわないと思っていた)
        (……けれど。あぁ……)
         
        (ベラちゃんの言葉を思い出す)
        『ねぇ、アイリス……貴方ヴィーラを嫌っているようだけれど
        彼、いい父親じゃない……許せるのなら許してあげなさい』
        『どんなに他が満たされても、根底にある根っこの部分……つまりは【家族】が満たされていないと人は生きていけないの』
        『上にどんなものが乗ろうと……所詮、それは仮初にすぎない』
         
        (家族なんて、どうでも良いと思っていた)
        (日食で召喚する日の天体の配置でも、家族が大きなキーワードになっていて鬱陶しいと思っていたのに)
        (私は……パパがあんな姿になるのを見ていたくない
        (あんなに笑顔で、日々を謳歌して楽しそうだった人なのに……そんな人の末路がどうして!?
         
        うっ……あっ……っ……!
        (揺れる――心が大きく揺れ動く)
        (私は、あの子たちのように、もう バーサーカーを応援できない)
        (迷う――……答えが出ているのに、私はもう 気付かない)
        (令呪ももうないし、私は彼を強化して彼女達を滅す事を命ずる事も出来ないし、する気も無い)
        (……もし、最後の残りの令呪が使えるなら……使うとするなら……) -- アイリス 2012-06-05 (火) 23:39:16
      • (希望と絶望の狭間にあっても、黒騎士は無言)
        (蒼瞳は揺れもしない。口元は曲がりもしない)
        (当然だ)
        (そのような機能など残っていない)
        (そのような心など残っていない)
        (そのような意志など……残っていない)

        (旧友の慟哭にも)
        (少女の決意にも)
        (愛娘の絶望にも)
        (黒騎士は、狂戦士は……ヴィーラ・フィヨルドの亡骸は答えない)
        (よく見てみれば、その黒い残骸はずっとそうしていた)
        (その黒い形骸は、残滓は、成れの果ては)

        (ただ、過去をなぞり、想起し、繰り返していただけ)

        (何も生み出してなどいない。何も願ってなどいない)
        (終わってしまったもの。完成してしまったもの。行き詰ってしまったもの)
        (一つの末路。一つの終焉。一つの最期)
        (これ以上などない。これ以上ない絶望の中で生まれた、これ以上のない力の果て)
        (最早一つの装置と化したそれは、永遠に、永久に、延々とリピートを繰り返していただけ)
        (闘った過去を繰り返して)
        (願った過去を繰り返して)
        (友人と過ごした過去を繰り返して)

        (娘と過ごした過去を繰り返した)

        (また、繰り返す)
        (娘を守るために、娘の願いを守るために、たとえ誤っても共に歩む。たとえ間違っても共に間違える。そして共に答を出す)
        (機械的に。自動的に。無意識的に)
        (そんな過去を繰り返す)

        (敵が目前で喚いている。マスターが後方で嘆いている)
        (ならば取るべき手段はたった一つ。サーヴァントという役割を与えられた亡霊はただ盲目的に結末を判断する)

        (蒼く濁った瞳を伏せて……両手で、魔剣を構える)

        (瘴気が渦巻く。稲妻が吹き荒れる。極濃の黒い魔力の本流が世界を支配する)
        (もし、遠くからこの教会を見ているものがいるなら、恐怖しただろう。あまりに異常な夜の到来に。あまりに不可思議な深淵の蹂躙に)
        (魔剣の銘が輝く。真名が解き放たれる)
        (諦観の果てに至りし極地)
        (終演を超越してなお途切れぬ絶望の闇)
        (全てを廃色に染め上げる――悲劇の顕現)

        (惨めなほどに、痛ましいほどに廃色に染まった魔剣……『諦観せし終演の廃刃(カイゼルブレイド・トラジディ)』)

        (大地が嘆く。草木が叫ぶ。空が哭く)
        (瘴気すら戦慄に震え、稲妻の嘶きも遠退き、闇までも吸い上げられて黒い魔剣を更なる宵闇の漆黒へと染め上げていく)
        (上天の極光を蹂躙する、深淵の極闇)
        (途方もなく巨大に、剣としての形状を認識できないほどに巨大に膨れ上がったそれは……最早、上天におわす神すら貫かんと天を喰らい尽くしたのち……)

        (振り下ろされる)

        (音が消え去る。光が消え去る。絶望が、諦観が、終焉が世界を塗り潰し、廃に染めていく。距離も相手も心も未来も希望も願望も時間も関係ない)
        (因果ごと、根こそぎ喰らう真性の悪性宝具。その男を……ランサーを、カテンを取り巻く運命ごと喰らい潰し、全ての正を負に書き換えて消滅させる)
        (世界から拒絶される存在へと。世界から存在を赦されない存在へと置換して、消し飛ばす)

        (全ての結末を、全ての終演を、全ての末路を……)
        悲劇(トラジディ)へと導く) -- バーサーカー 2012-06-06 (水) 00:38:44
      • (マルチナの願いは、切ないほどに、痛いほどに感じられる)
        (だが、だからこそ、そのために自分を曲げることは出来ない)
        (そんなことをする自分をマルチナは父と呼ぶまい。頑固だからこそ、そんな己を父と仰いでくれたのだ)
        悪ィな……けどよ、オレは所詮、分かれた未来から来た存在だ。
        サーヴァントそのものが奇跡の顕現、ありえざる事象であるように、オレ自身がそうなンだ。
        もしかすると、お前が知ってる「オレ」も、いずれはオレになるのかもしれない。
        でもそれは確定しちゃいねェ。……だから、お前は「オレ」と、アイツを支えてやってくれ。
        (そして見据える。同じ未来からの使者、しかし彼岸へと至ったものを)
        だからこそ。手前ェの存在は許しちゃおけねェ。手前ェもまた、オレと同じいちゃいけねェ未来なのさ。
        娘を泣かせる父親の役目はここまでだぜ、お互いにな。ケリつけて、因果地平の彼方に消えようや。
        (アイリスの慟哭が聞こえる。マルチナの決意が、消えていく命が感じられる)
        (バーサーカーは、あのヴィーラ・フィヨルドの成れの果ては、それ自体がありえてはならないものだ)
        (だから打ち砕く。そして……自分自身もまた、ここで消えねばならない)
        ("それがマルチナの望みを叶えること"なのだ。そのためには、まだ、倒れるわけにはいかない)

        (風がすすり泣く。大地が震え、草木が慄き、壁が、天井が、瓦礫が、この世のすべてが悲しんだ)
        (終わる。すべてが終わる。瘴気に、闇に、無にねじ伏せられ、終焉へと、絶望へと誘われる)
        (形持つ闇が掲げられ、それは間違いなくランサーを、そしてマルチナ達を飲み込むだろう)

        (瞳を伏せる)
        ……悪ィなヴィーラ。手前ェの我儘は聴いてやれねェ。
        (再び、開く)
        (右目に嵌めこまれていた蒼は変わらずにある。だが、それが放つ光は強まっていた)
        (そこに嵌めこまれていたものは、石だ)


        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp015401.jpg

        私のいた国の魔法石なの。貴方の瞳の色に似ているでしょう?
        光に透かすと、中に水が入ってるみたいに見えるから、海の魔法石って呼ばれているの。



        (愛する妻と出会った頃、雪降る聖夜に過ごした記憶そのもの)
        (クリスマスプレゼントのペンダント、その名残。指輪と同じくらいに大事な、二人の想いの結晶)



        ……これも、クリスマスの時にプレゼントしたものよね…私の世界の、海の魔法石……。
        大好きなカテンの瞳の青い色。貴方の炎と同じ色…。



        (妻の死が想起される。最期まで笑顔で、自分のことを想いながら逝った、彼女の姿が)
        (彼女の存在は遠くへ逝った。だがその魂はともにあった。今も、あるのだ)


        ……カテン。私、側でね、待ってる……から。

        (マルチナの命が魔力となって注がれていく。力が漲る、だがそれを賦活には使わない)
        (唱えるべき口訣は、すでに唇に)


        英霊になって、永久に戦いを続けることになっても……


        ……淵より来るは牛の鬼 面影糸を張り十(とお)に一(ひとつ)を乱すもの
        薊に宿るは荒ぶる鬼神 人を騙り、人を謀り、人を食らうもの
        鬼を騙るな、鬼となる 鬼に願うな、地は乱れ炎盛らせ人が狂う


        貴方がきっと、そこを乗り越え、また私を抱きしめてくれるって……信じてる……

        門より来るは蒼目の法師 その者、頭(かしら)は太く金の色
        彼の者龍を従い式となし 蒼き炎を操り鬼を伏す
        祭囃子は遠くに響き 鬼は人を嘲りて 人は鬼を装いて互いに喰らう
        追って追われて 殺し殺され 永劫輪廻の鬼遊び


        私の最後のわがまま…聞いて……いいでしょう?

        我が闘争(みちゆき)の記憶はここにあり 我が信念(にくしみ)は蒼き炎と目の内に
        咲くは鬼薊 下るは紅月(こうげつ) 蒼き月門は今こそ開く 


        愛してるわ………私の……

        …… されど。
        (口訣が、変わる)
        (固有結界《夜闇の魔術師》を発動させるはずの呪文が、終わりを告げた)


        愛してるわ………私のカテン

        蒼き月も、紅き月も我が頭上には必要なし
        我の傍には、愛すべきただ一人の女性(ひと)が在る
        我が過去(おもいで)には、かつて愛したただ一人の女性(ひと)が居る
        我が闘争(たたかい)は憎悪(にくしみ)のためでなく
        我が信念(きぼう)のために 蒼き炎は燃え上がる


        一緒に行きましょう。約束の…懐かしい未来へ………

        我が瞳には遠く近き約束(ちかい)のみが映り続ける
        祈りはここに、願いはそこに 掴むために右手を伸ばす、届け我が想い


        こいつが、オレの最期の切り札だ!
        我が主人の魔力を以て、その力を振るい、希望をもたらせ!
        頼む、力を貸してくれ…… 《小さな奇跡(ヴィヴィアン)》ッ!!!
        (瞳が閉じられ、再び開かれた時には)
        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020987.jpg
        (蒼き魔法石は瞳に変わり、それは気高き金色に燃え上がっていた)
        (彼が愛した女性と、同じ色に)
        (そして最後の宝具が力を齎す。マルチナの魔力によって、ランサーの願いを叶える!)
        (《小さな奇跡》は、神の断片「大いなるもの」だけが持ち得る力)
        (それはいわば聖杯と同一。魔力を代償に、望まれた願いを叶えるもの)
        (ランサーは願う! 神仏でも悪魔でもなく、ただ己が愛した女性の魂に、願う)
        (希望を! 終わりさえも覆す、絶望さえも打ち砕く、無敵の希望を!!)
        (欠けた四肢が再生していく。光り輝く中、男は駆け出し)
        ――――うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!
        (闇へと、突き進んだ)


        (そうして、闇と光がぶつかりあい)
        (晴れ渡った、そこには)

        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020988.jpg
        (ただ一人、男が)
        (絶望の騎士の前に、立っていた)
        -- ランサー? 2012-06-06 (水) 01:12:29
      • (闇に隠れていた月が、姿を見せ始める)
        (白い羽根が舞い、銀盃花の……楽園の香りが世界を包み込む)


        ……ここから先はね、幸せな未来だけなのよ。
        どのカテンももう、英霊になることはない。


        (……誰かの声が響く)

        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020993.jpg 

        (カテンの傍らに天使が舞い降りて、彼に頬擦りをした)
        (金の月の光をその身に纏い、幼い赤毛の少女に、その向こうの黒髪の少女に微笑みかける……)

        (そして)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

             想いは巡り、奇跡を起こす。
             カテンを愛した「大いなるもの」から受け取った想いを
             私がカテンを愛した想いを

             貴方の力で、今こそ奇跡に変えましょう。

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 

        (天使は白い手を小さな少女に差し出す)
        (マルチナはその手を取り……カテンを振り返った)

        (迷いのない瞳。そこには死への恐れはない)
        (怖くはない。だって彼は約束を必ず守るから)

        (だから、彼にかける言葉は別れの言葉ではない)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

             ………頑張って、お父さん…!!

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 



        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020991.jpg 

        (そう言って微笑み、少女は金色の光となり…天使の胸に抱かれた)
        (そして天使の姿もまた、同じ光となって溶けて消え……光は彼の右目に宿る)


        ……先に行って待ってるからね、カテン。

        (愛しげに囁く天使の声が、風に乗り、消えていく………)



        (………後にはその場に座り込む、赤毛の女の姿だけ)
        (瞳から涙を流し、男を見つめる)
        (その眼差しは、少女と同じ)

        (ただ、ただ、戦う彼を信じて神に祈る……………………)
        -- キリル 2012-06-06 (水) 02:41:52
      • (闇が、光が払拭され……丁度月蝕が終わり、満月が夜を照らす)
        (損害比はいつの間にか覆され)
        (黒騎士と、蒼闘士……向かい合ったまま、対峙する)
        (ヴィーラとカテン。歩むべき道は、途中までそれほど変わらないはずだった)
        (しかし、結末が違った)
        (ヴィーラは最期は……1人になった。障害があればその身一つで粉砕する。1人で闘う。人外故に)
        (だが、カテンは最期に……人に頼った。2人で、いいや、大勢で闘った。人間故に)

        (当然の結末で、当然の結論)
        (想いも同じこと。どんな絶望で塗り潰そうと、どんな諦観で染め上げようと、それはつまるところ1人の想い)
        (たった1人の想いなら、こうなる始末は当たり前)
        (そう、この世には……物量に勝る力などないのだ)

        (極光と、極闇、互いに収束したそのとき)

        (黒騎士の魔剣が、諦観が、悲劇が……中ほどからゆっくりと折れて……砕け散り、霧散する)

        (時に悲劇は覆される。思いもよらない機転によって。想像を絶する希望によって)
        (黒騎士がよろめき、膝を突く。大出力の魔力消耗。そして魔力の源泉たる宝具の消失)
        (満身創痍。状況は一変した)
        (絶望は希望の前に膝を降り、無表情のまま視線をカテンへと巡らせる。金色を蒼で見つめて……)

        (それでも、尚、立ち上がる)
        (頭は覚えていない)
        (心は消え去った)
        (意志すら残っていない)

        (それでも、それでも)

        (形骸たるその身体は、覚えている)

        (幾千年の果てに望んだ今を)
        (幾星霜の果てに再び出会えた仲間達と……家族を)
        (無限の寂寥の白夜。その果てに垣間見えた、白昼夢)
        (悪夢でも構わない。幻でも構わない)
        (かつて男はそう望んだ。望んだ果てに全てを失った)
        (その結末の向こう側。そこに奇跡があるのなら)

        (その手もまた、その奇跡へと伸ばす)

        (疾駆する。永い後日談の黒騎士が、左手を伸ばして、疾駆する)
        (宝具を一つ失おうと、戦闘不能になったわけではない)
        (機械であるが故に。そう作られた装置であるが故に。機能が残る限り、駆動することをやめはしない)

        (意志が消えたヴィーラにとって、それが認識できなくても。宛ら夢中にあっても)
        (いや、悪夢に於いても)
        (意志を投げ捨てても)
        (願いを絶望へと塗り替えても)

        (ただ1人で前に出る。いつでも最期はそうしてきたように)

        (されども、今は)

        (マスター)の願いが為に)

        (『その左手は空を切り』) -- バーサーカー 2012-06-06 (水) 03:05:38
      • (揺れ動く心、不安定な精神)
        (どんな事が待ち望んでいたとしても)
        (どんな結果になろうとも……私は全てを踏み台にしてのし上がるつもりではなかったのか?)
        (どんなに絶望の淵に立たされても、上を見上げ続けて希望を仰ぐ少女)
        (自分の信念を貫き、誇りを持ち この戦いと自らの信じて愛する騎士を。サーヴァントから目を離さない彼女と)
        (全ての相手を蝕み自分の糧にすると立てた誓いも)
        (自分の父が理性を失い暴徒になったと知れば脆く崩れ、戦いもサーヴァントも直視できず信じたくない私)
        (……最早、勝敗は着いた)
         
        (あの子は、決意して自分を。カテンを、奇跡をずっと信じていた)
        (私は自分の信念を貫いているつもりになっていただけ)
        (本当に、決意していたのなら……サーヴァントが父だと知った程度で動じてはいけない、心が揺り動かされてはいけない)
        (寧ろ、父であった事を知った今こそ――……私が黒魔女になる為の決意が試されているのだ)
        (私は自分の信念を貫いていたつもりで、結局それは只の自惚れだったのだ)
         
        (『審判』……照応するものは『四大元素:火』『花;ミルトス』『物や場所等:聖書・花壇』)
        (そして……『家庭』
        (花以外にも、教会の庭、死者を復活と試練は聖杯での英霊を召喚して戦って勝ち得る褒美に聖杯をもたらすそれとリンクして……何より足を踏み入れた時から、何処となくタロットの『審判』を思わせる様であったのに)
        (新たに浮かぶキーワードの炎も火の元素であり、戦うサーヴァントも父親同士)
        (全ての要素が絡み合い、こんなにもわかりやすく仄めかしていた事にすら私は気付かなかった)
         
        (神の庭で、魂の裁量を受けるかのようなこの戦いは『最後の審判』に習うなら)
        (新約聖書のヨハネの黙示録における、まるでキリストと半勢力の最終戦争のクライマックスのように)
        (神(カテン)を信じる信者(マルチナ)の勝利が見えて居た筈だ。さしずめ、矛盾の魔王という暴徒化した異教徒の私は、其れを感づいていながらも直視したくなくて目を逸らしたのだろうか)
        (一度はこちらが勝利するかのように見えていた状況も)
        (一度は反勢力に焼かれ、無にされた信者達が再び復活する事を許された劇的なシーンそのものなのだから)
         
        (この札の意味は『復活』であり徳目は『信仰』)
        (『救済される魂』をも表すこの札は、長年の想い、長年の努力が報われる出来事をも示している。過去、そして未来への懸け橋を肯定する札)
        (それまでどんなに夜が長くても。困難な状況や、終焉の殆ど着いた戦い、絶望の淵に立たされても……いつか夜明けは訪れる)
        (そして、信じる強さこそが奇跡を生むのだ)
        (聖書の中のお話のように、古くから伝わる夢物語のような伝承のように)
        (不可能を、可能に変貌せしめてゆく)
         
        (精神性を色濃く象徴する事からも……私達は敗北している)
        (動揺し、身動きが取れなくなったばかりか)
        (自分の存在意義を失い、後悔し、こうして自ら諦めることも)
        (あの子と私では、正位置と逆位置を象徴するかのように こうも違う)
        (まるで合わせ鏡を見ている様)
         
         
        『Surgite ad judicium』
        (ラテン語で、審判に立ち向かえ もしくは 目覚めよ)
        (精神の覚醒を描いた物語のように、私もそうするべきなのだ)
         
         
        (まばゆいばかりに煌く金の輝きに、空は明るく仰ぎ天使の美女が現れた)
        (目と目が合い、微笑まれる。とても綺麗な人)
        (奇跡が奇跡を呼ぶように)
        (天使に出会った少女もまた、天使となって空へと導かれてゆく)
        さようなら……マルチナ……
        (きっと。彼女は空の上の綺麗なところで、幸せになるのだろう)  
         
        (奇跡に感動すら覚えて、私の戦いは終わった)
        (……つもりになっていた)
        (剣が折れても、バーサーカーは立ち上がる)
        (ゾクリと身震いする――……父は。絶望の果ての戦いで、決して倒れることなく戦う為に幾度も立ちあがっていったのか……!)
        (理性の欠如した黒騎士は、止まれない。止まらない)
         
        (人は、反省から悔い改めることもできる)
        (けれど、彼にはそれすら赦されないかのように)
        (闇の深淵で蠢き、茂垣苦しむ事しか出来ないのだ)
        (そこに居るように見えても、彼は悪夢の中から目覚められない)
        (終焉のない幻影の中で、ただひたすらに戦い続けることしか出来ない)
        (左手が――……伸びる)
         
        パパ!!
        (名前を叫んで、令呪を発動させる……間に合いますように間に合いますように間に合いますようにッ……!)
         
        (『その左手は空を切り(エンプティ)』が、カテンに届く前に私はバーサーカーの左手を掴んで握りしめる)
        (繋いだ左手を、離さないように離さないように)
        (バーサーカーの腕に抱きつくように手を絡めて)
         
        もういいっ……!もういいのパパっ……!
        (紅く輝きを放つ令呪が、三度目の願いで消えてゆく)
         
        "お願いっ……!もう、パパ
        戦う事を止めて安らかに眠りについて!"
        お願いだからっ……!
        私の黒い欲望に囚われないでっ……!
         
         
        もう……楽になっていいの
        お願いだから、永遠の眠りについて……安らかに -- アイリス 2012-06-06 (水) 03:41:58
      •  http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 


        強い光が見えたあと、泣いていた

        目が覚めて、俺は泣いていた
        何か、恐ろしい夢を見ていた気がする
        どんな夢だったのかは覚えていない
        でも、その夢が余りに恐ろしかったものだから
        俺は年甲斐もなく伴侶の胸に飛び込んで、ただただ泣きじゃくる

        すると彼女は少し呆れた顔で、鬱陶しそうに俺を殴りつけてベッドから追い出す
        落ちた先の床では白猫が朝食を強請り、息子は少し呆れた様子で手を貸してくれる

        次女が過剰に心配した様子で纏わりついてきて、姉は一瞥だけくれて我関せずといった顔
        まだ小さな三女が可笑しそうに笑って……長女はいつも通り俺を小バカにしながら勝手に居座っている姪と一緒に朝の茶を嗜んでいる

        朝飯をたかりにきた元軍人の親友がリビングに手土産の食材を片手に押しかけてきて
        隣に住んでいる赤髪の同僚が少し溜息をついて肩を竦める

        外を見れば同じ黒髪の奇妙な友人が緑髪の妻を連れて朝の散歩を楽しんでいて
        裏庭ではいつの間にか外に出ていた姉と、猫耳の友人が楽しそうに剣の訓練をしている

        急かされて朝食を作り始めれば、愛妻家の金髪の友人がタバコをふかしながらもうすぐ出勤時間だと注意してくれる

        いつも通りの、日常
        何も変わらない、何一つ変わらず、何一つ欠けていない、日常
        いつも通りのはずなのに、何もおかしなことなんてないはずなのに

        幸福な違和感の中で、また俺は泣き出す
        何故だろう。ありえないような気がする。絶対にこんな風景は見れない気がする
        みんな傍にいたけど誰も傍になんて居ない気がする
        理由は分からない。でも不快ではない。ただただ只管に幸福な違和感
        あえて例えるなら全てまるで、夢のようで、幻のようで
        ただ記憶の幸福な部分だけを刈り取って無理矢理繋ぎ合わせただけのような、張りぼての何かのような気がして、不安になる

        有り余る多幸感と、満ち足り安心感に包まれて、年甲斐もなく泣き出す
        みんなは笑う。おかしな奴だと。娘や同僚などに至っては気持ちが悪いと罵ってくる始末
        いつも通りのことなのに、何を突然畏まっているのかと、嫁にまで叱られ、呆れられる

        あんまりみんなが笑うから、つい俺はムスっとして怒ってみせる
        それでも、何故だか緩んだ口元だけが元に戻らなくて、泣き笑いしながら怒るなんて不器用な表情になってしまう
        そんな妙な顔になれば、当然のようにもっと笑われるわけで
        そこまで笑われれば、もう俺も笑うしかなくて
        涙を浮かべたまま笑って、笑いながら怒鳴り飛ばして

        それ以上はもう、何も疑問に思わなかった

         http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 




        (空を切るはずだった左腕は、透き手になったはずの左手は、果たして握り返される)




        (令呪によってすら容易に止まらないはずのバーサーカーが)
        (重戦車を以ってしても前進を止めることは敵わないバーサーカーが)
        (小さくて、華奢な、黒い少女に抱き留められて、止まる)

        (握り返された手を、感情の篭らない蒼瞳で見返せば……いままで開かれたことのなかった口元が微かに開いて)
        (小さく、吐息が漏れる)

        (直後、柔らかい、ルビーのような深紅の輝き……令呪の光が、バーサーカーの身体を包み込み……)
        (瘴気を、稲妻を、そして魔力をバーサーカーの身体から奪い去っていく)
        (宛ら編細工が解き解されるように、宛ら砂の楼閣が風に攫われていくように)
        (ゆっくりと、バーサーカーの身体が消えていく)
        (そっと、手が伸びる。左手ではなく、最早魔剣も消えて……透き手となった右手が、アイリスの頭上に伸びる)

        ……どうした、アイリス。また泣いているのか?
        (虚ろな声で、呟く。その声は目前のアイリスに贈られた言葉ではない)

        ダメだぞ、お前はおねえちゃんなんだから人前じゃそんなに泣いちゃあダメだ
        (まるで小さな子供をあやすような、柔らかく、そして少し厳しい口調……)

        どうしても泣きたいときは、お姉ちゃんだってことを思い出すんだ。それでだいたいはなんとか我慢できる
        (そう、バーサーカーは最初からそうだった。これは形骸でしかない。残骸でしかない。終わってしまった何かでしかない)

        それでも、どうにもならないときは、声をあげて泣きたくても泣けない時は……
        (故にこれもまた……繰り返しているだけ。遙か昔にあった何かを繰り返しているだけ)

        パパとママに言いなさい、いいね?
        (狂気の彼方、無我の更に果ての中、彼が繰り返し見る夢の向こうでまた、過去を繰り返しているだけ)


        大丈夫、パパも、ママも、いつだってアイリスの味方だよ
        だから、強がらなくていいんだ、頑張り過ぎなくていいんだ
        (壊れたエンドレステープ。意味なんて何もない。ただの言葉の羅列)

        もう少し、肩の力を抜いて生きなさい、大丈夫、アイリスはパパの子なんだから……きっと出来るはずさ

        (それでも、時に機械が限界を越えて稼動するように)
        (時に装置が想定を超える働きで例外を作り出すように)

        (時に……無機物が、感情を持ったかのように動くように……)
        (そっと、成れの果ての残骸はアイリスの頭をなでて)

        (光のない笑顔のまま、消えていく)

        (聖杯の座へと、戻っていく。機能を奪われた機械は、ただ打ち捨てられるのみ)

        (救われることなどない。報われることなどない)
        (何故なら、そのバーサーカーはそういう存在だから)
        (終わってしまったもの。行き着いてしまったもの。先がないからこそ、過去しかないからこそ、英霊は英霊たりえる)

        (終焉の一つの可能性。可能性がないという可能性)
        (その可能性は、最期に幸福な悪夢を垣間見て、また終焉の遙か彼方へと還っていった) -- バーサーカー 2012-06-06 (水) 05:21:24
      • (自らの窮地を、いたいけな少女が、その身体にあふれるほどの勇気で救ってくれたように)
        (痛ましいほどのバーサーカーの今を、終わらせたのは実の娘だった)

        ……あいつはもう、終わってるンだな。
        ここにいるのはあいつじゃねェ。ヴィーラ・フィヨルドであり、その終わった後の亡骸……所詮はただの"出来合い"だ。
        (だが、どうだろう。その、偽りのはずの、空っぽのはずの言葉と笑顔と仕草には)
        (人が迷信のように幻視する、無機物にありえざる魂があるようにも見えて)
        (それがはたして、人間精神が自己満足のためにもたらす幻覚なのか)
        (あるいは、もっと大きな、もっと素晴らしい何かが、ここにほんの少しの奇跡を与えたもうたのか)
        (何者かの作為なのだとすれば、「こンなことで償えると思うなよ」、男はそう吐き捨てるだろう)
        (無聊の慰みにすらならない、垣間見えたその笑顔。浮かべるために積み上げた屍は数えるより諦めるほうが速い)
        ……あばよ、ヴィーラ。これからもなお、終わり続けるモノよ。
        (指を振って、別れを告げる。あれが戻ったところへ、自分が還ることはない。なぜならば……)

        ……終わった、な。
        (左目を閉じて、ため息をつく。金色の光は、戦いが終わってもなお輝いていた)
        -- ランサー? 2012-06-06 (水) 05:38:25
      • (パパの動きが止まる。私の手を、確かに握り返して)
         
        (本来意思疎通なんて出来ないサーヴァントなのに)
        (戦うことだけしか機能を持っていないサーヴァントなのに)
         
        (バーサーカーが、パパが静かに振り返り 蒼穹の瞳には私が映る)
        (独りぼっちで問いかけても、何も答えなかったサーヴァントなのに)
        (息が漏れる。それはまるで、機械に生命の息が吹き込まれたのをみるかのよう)
        (生きている私のパパの姿からはあまりにも儚くて切なさを感じさせるけれど)
        (バーサーカーになったパパのその表情は……何処か暖かで優しいものを感じさせられた)
         
        (深紅のワインを透かした様なルビーの輝きがパパを包む)
        (炎に例えられる不滅の象徴であり、ギリシャ神話における戦いの神マルスの石)
        (そして……蟹座の守護石。パパの太陽と月の星座の石)
        (ルビーは何かを乗り越える為に、不要である迷いや不安、トラウマなどを克服し それらを達成するために、乗り越える為に本当に必要である情熱ややる気などを与えてくれる石であり)
        (『譲れない戦い』のお守りになる石)
        (普段パパは。そして、蟹座の性質が色濃く出る人は優柔不断で他人に押し切られたりすることも多い)
        (蟹座は、自分の家族や帰属する場所や仲間を大切にする性質があり、自分のルーツや何かを守り育てる運命域を示す反面、傷つきやすい性質や、優柔不断なそれも持ち合わせているのだ)
        (美しい薔薇には棘があるように。蟹には鋏があることを時には教える為に必要なことを教えてくれる石なのだ)
        (パパ自身、家庭や自分のテリトリーを大切にする保護者そのものだから)
        (令呪の深紅の輝きは、まるでルビーの意味が秘められて パパを聖杯の戦いへ、パパの守護する私を聖杯の勝利へと導く為に戦っていたかのように私には映ったのだ)
         
        (けれど、それももうお終い)
        (瘴気を、稲妻を、魔力を奪いながら……砂のお城のようにパパの体は儚く消えてゆく)
        (悪い夢から覚めた時のように。終わりの近づいた物語のように)
        (シンデレラも、魔法が解ければドレスを脱いで襤褸を纏うのだ)
        (舞台から降りれば、王女やお姫様を演じていた役者も、只の人間に戻るように)
        (砂の桜閣が風に攫われていくかのように消えていく様子は、まるで砂時計の流れてゆくのを見るかのよう)
        (戦う為の魔剣も消えた右手が、私の頭をそっと撫でる)
        (その温もりが、本当に暖かくて愛おしくて……)
        (令呪を無駄遣いした事を後悔する)
        (もう少し、せめてもう少しだけでいい……この時がほんの一瞬だけでもいいから 少しでも長く続いて欲しかった)
         
         
        (静かに、はたはたと止まらない涙を流しながらパパの言葉を聞く)
        (虚ろな声で、静寂の中で無かったら掻き消されてしまいそうな呟き)
        (けれど、それですら私に贈られている言葉ではない)
         
        (覚えてる。これは、ずっとずっと昔の話)
        (物心つくかつかないか程度の……今はもう、薄れてしまった 忘れかけた記憶の中で聞いていた言葉)
        (色濃く、鮮明に昔が蘇る……記憶の海に埋もれていたけれど、忘れるわけがない)
        (あの時の私達はまだ幼くて。皆我儘だったけれど、3つ子だったからどうしてもおねえちゃんの私の我儘は、ロゼとリコちゃんに続いて最後になるのがお決まりで、初めての反抗をした日だったのだ)
        (おねえちゃんだからって、どうして?私はおねえちゃんで生まれて来たくなかったよ)
        (私も可愛がってもらいたい、我儘を聞いて貰いたいって願望を初めて口にした日)
         
        (あぁ……そうだ)
        (思い出した、私が本当に本当にパパが大嫌いだった理由)
         
        (優しくも少し厳しく諭す様にパパは語ったのだけれど)
        (あの時の私には幼すぎて、意味が理解しきれなかった)
        (昔っからロゼはパパにべったりで、パパを取られた気がして嫌だったんだ)
        (私も甘えたかったのに、ロゼとリコちゃんばかりで)
        (私からすれば、それを話す事は凄く凄く勇気のいる事だったのに……パパのあやすような、柔らかくも厳しさのある口調は)
        (本当は私の事があんまり好きじゃないのを濁すかのように感じて、パパから遠ざかって次第に時を経て大嫌いになっていったんだ)
        (私がママにべったりだったのは、パパのように『お姉ちゃんだから我慢しろ』なんて言わないから)
        (『寂しい思いさせて悪かったね、気付かなかったよ』と言って、抱きしめてくれる温もりが暖かかったから)
         
        "大丈夫、パパも、ママも、いつだってアイリスの味方だよ"
        (壊れたテープのように、感情も想いも無く綴られる言葉なのに)
        (私は呼吸を忘れるほどに、涙が溢れて止まらなかった)
         
         
        (才能を求めていたのは、認められたかったから)
        (認められたかったのは、愛されたかったから)
         
        ……馬鹿ね……私
        最初から……豊かな愛情に満たされていたのに……やっと今。それに気付けたなんて……
        (パパの成れの果ての亡霊が私の頭を優しく撫でるけれど)
        (熱が奪われるように、徐々に暖かさも消えてゆく)
        (残り少なくなった砂時計の砂の落ちる速度は増してゆく)
        (あぁ……もう少しだけ、私はこのぬくもりに浸って居たいのに。それすら許されない)
         
        (顔を上げてパパの顔を見上げて、私はまた涙が溢れて止まらなくなる)
        (私の後ろでカテンが、その終わった後の亡骸……所詮はただの"出来合い"だと言っているのに)
        (光のない笑顔のままで消えてゆくパパは)
        (もう、束縛から解放されたと思っていたのに)
        (全ての決着は着いたと思ったのに……)
        (令呪はパパに安らかな眠りを与えてくれたけれど……それは令呪の効果の及ぶ一瞬の時間の幻影だったのだ)
        (聖杯の座へと吸収されたパパは……これからも、報われる事のない、救われる事のない永久の戦いへとまた身を投じる姿が視えてしまった)
        (親子だから、末路を感じとれたのかもしれない)
        (矛盾の魔王という束縛から許されず、解放されず、過去しかない終焉の中で永遠に生きて戦う運命なのだ)
         
         
        (私に相応しいサーヴァントを……そう願って、顕在したのがバーサーカー)
        (私の真っ黒いカルマを、自ら塗りつぶしてしまったカルマを、父が子を救うかのように犠牲になった末路に 私には見えた)
        (私の願いの末路が。黒き魔女になった未来の末路)
        (これは私の罪の償い)
        (それを、パパは……私の代りに引き受けたのだろうか?)
         
        ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……
         
         
        (パパの姿が消えてからも、私の謝罪は止まらない)
        (終焉の先へと消えてしまったパパのこれからを思うと……私は涙が止まらなかった)
        (涙が枯れて、声が出なくなって、もう……涙すら出なくなったのに)
        (壊れた人形のように私はその場で、気付かないうちに倒れて眠りに着くまで泣き続けた) -- アイリス 2012-06-07 (木) 01:00:52
      • (闇は晴れ、静かな金色の月が、泣き崩れる少女を見下ろしている)
        (銀盃花の花の香りと、草を揺らす風が髪を揺らして、涙に濡れた頬を冷やす)
        (そこでようやく……戦いが終わったのだと気づいた)

        (立ち上がり、謝り続けている少女の背中に手を伸ばそうとして…やめた)
        (ただ風に髪をばら撒いて、立ち尽くす…………)
        (終わったのだと、カテンが言う頃には彼女は泣き疲れて眠っていた)

        ……ああ。
        (一言だけ返事をすると少女を抱き上げる)
        よっと…流石にこの年頃の子は大きいね。重いわ。
        ……マルチナも…何年かしたらこうなっていたのかな。
        (寝顔を見つめて、ふっと笑う)
        (妹がいなくなったのに、消えてしまったのに、意外と冷静な自分に少し驚く)
        (胸にぽっかり穴が開いているのはわかるけれど…これは、マルチナがいた場所なんだろうか)
        (考えながらアイリスを抱きなおして)
        ……ちょっと待ってて、カテン。この子教会の中に寝かせてくる。

        (魔力を使い果たしてふらつく足で少女を運ぶ)



        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079870.jpg 

        (暗い教会の椅子に少女を寝かせると、乱れた髪を整えた。寝顔は妹と同じ、まだあどけない顔)

        「貴女がそこにいるということは………」
        (妹が少女に言おうとした事を囁く。眠っている彼女には聞こえないだろうけれど)

        ……望まれて生まれた証。愛されて生まれた証。
        ……それはね、とても幸せなことなんだよ。
        愛に気づけたあんたは、もう大丈夫だ……だから、ちゃんと帰りなさい。明るい世界へ。

        (手折った銀盃花を少女の枕元に置く。目が覚めて罪悪感にまた苦しむことになっても、今はせめて幸せな夢を)
        (妹にしていたように、頭を撫でて、教会を出た)




        (金色の月を背に立つカテンの所へ、ゆっくりと歩いていく……)
        (月が滲む。雲なんて出ていないのに不思議に思う……いつの間にかまた涙が零れていた事に気づくのは、もう少し後の事だった)
        -- キリル 2012-06-07 (木) 02:29:54

光と闇の戦い(前編) Edit

  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080151.jpg
    • (自分から戦いを仕掛けるのは初めてのことだった。マスターの居場所はシルキィの森しか知らない)
      (できるなら、あの少女と戦うのは先伸ばしにしたかった。自分の命があと少しだとしても)
      (他のマスターの居場所をランサーに聞こうか。夜道を歩きながらそんな事を考えて)
      (彼を召喚した教会の前を通りかかり…立ち止まる。所々崩れた、もう誰も使っていない教会)
      ……先生。いい事を考えたのです。
      誰と戦うか…運命というものに委ねてみましょう。
      (そう言って赤毛の少女は教会の中へ入って行く……)

      (ほどなくして真夜中のスラムに教会の鐘の音が響き渡った)
      (鐘を鳴らし続けるように魔法をかけて、教会の裏の草原へと降り立つ)
      (教会の管理者が植えたのであろう沢山の銀盃花が風に揺れる)
      なんていう花なんでしょう?綺麗ですね先生。満月に光っているみたいなのです。
      (隣にいるカテンの手を握ったまま片手で花に触れて、教会を背に草原の向こうに視線を移した)

      …………さあ、誰が来るでしょうか。
      -- マルチナ 2012-06-04 (月) 22:25:42
      • 運命、ね。当たるも八卦当たらぬも八卦、鬼が出るか蛇が出るか。
        悪くないンじゃねェか? どう転がるも賽の目次第だ。
        (にやりと笑ってマルチナに続く。その意図は凡そ読めていた)

        (リーン、ゴーン……金属質な音が重く、遠雷のようにあたりに響き渡る)
        (吹きすさぶ風の中、葉巻に青い炎を灯して紫色の煙を吐き出した)
        満月、か。キャスターのヤツが来たらさぞかし手強そうだぜ。
        オレが知ってる月は、蒼か朱なンだがな。金色の月は、こっちに来てから慣れたモンだ。
        (空を見上げ、呟く。そして、視線を正面へと戻し)
        ……どうやらご登場のようだ、な(つないだ手を、そっと離した)
        (そしてそのまま手のひらを頭の上に置き、視線を正面から外さないままに言う)
        マルチナ、下がってろ。……釣れたのは大物だ、いろいろな意味でな。
        (黒いコートをはためかせ、一歩。ミルトスの海へと、槍兵が降り立つ)
        (肌に突き刺さるような瘴気の気配を、風とともに感じながら)
        -- ランサー? 2012-06-04 (月) 22:31:51
      • (今夜は月蝕……丁度私が召喚を行ってから、初めての月蝕の日であり)
        (それは、聖杯戦争への想いと決意を込めてバーサーカーを召喚した日からの終焉の日)
        (もう誰も使わない教会に忍び寄り、静かに瞑想をしようと思って足を運んだのだ)
        (教会に限らず、御寺等の宗教関連の建物は皆そうだけれど)
        (信仰が信者の心に落とし込みやすいように、潜在意識を活性化させやすい仕組みが凝らされているから)
        (深く、自分の意識へと潜り、答えを引き出す為にも丁度良い場所と日でもあった)
         
        (鐘を鳴らし続ける魔法の中は、まるで時が止まったかのような感覚に陥りそうになりながら)
        (ミルトスの花の庭園を歩きながら彼らの近くへと歩みより)
        何の花か?……これはね ミルトスっていうの
        【荒れ野に杉やアカシヤを ミルトスやオリーブの木を植え 荒れ地に糸杉、樅、つげの木を共に茂らせる】(イザヤ41:19)
        【その夜、わたしは見た。ひとりの人が赤毛の馬に乗って、谷底のミルトスの林の中に立っているではないか。その後ろには、赤毛の馬、栗毛の馬、白い馬がいた】(ゼカリヤ1:8)
        聖書にも登場し、ギリシャ神話では豊穣神デメテルと愛欲の女神アプロディーテに捧げられた花よ
        ミルトスは切られた後も生命力が強く、枯れにくいところから、干ばつにも耐える強木として、不死の象徴となり、そしてそれゆえ成功・繁栄の象徴ともなったの
        その為、祝い事に使われ、愛や不死、純潔を象徴するの
         
        (そしてもう一つ……)
        (この花は、タロットの審判の照応花である)
        (ウェイトタロットでは新約聖書の黙示録をモチーフにしながらも独自の終末思想をこのアルカナに織り交ぜこんだ)
        (彼のタロット解説書【The Pictorial Key to the Tarot】の原書においてのこの章の題目は【最後の審判/THE LAST JUDEMENT】となっていたのだ)
        (一般的な意味は決断・決断による前進・転機・改革の変化・新しい知恵等)
        (けれど、私には……星の様に咲き誇る銀梅花は、祝福ではなくて)
        (死者の復活と、神が死の裁量をするかのように私達の戦いを裁く場であるかのように見えるのだ)
        (法に基づき物事の筋道を明らかにするではなく。ありのままの生きて来た軌道や姿、精神そのものが審理の対象となる、アルカナの20番を示す様に)
        (ウェイトの解釈の中に『(最後の審判のラッパの音は)心の中で内なる耳でのみ、聴く事が出来る』という)
         
        ……御機嫌よう
        (静かに、月明かりの下で微笑んで)
        貴方達が……この場に居るなんて……まるで神の計らいを思わせるわ
        (運命の輪が回る)
        (神の庭で、私達を裁くかのように) -- アイリス 2012-06-04 (月) 22:57:35
      • (朱い月、蒼い月。たまにそう見えるときがあるけれど、それがいつもなんだろうか)
        (鐘の音を止めて聞き返そうとすると……つないでいた手が離れた)
        (草原に目を向ける。残響も消えて、揺れる草木の音しかしない…とても静かだった)
        (夢の中のような光景の中、頭に置かれた手が、夢じゃないって教えてくれる)

        (小さな人影が見えた。運命の鐘は誰を引き寄せたのか)
        (花の名前を教えてくれるその声は…聞き覚えのある少女の声)
        (白く光る銀盃花の中、闇と同じ色のドレスを風になびかせて、お人形のような少女が歩いてくる)

        ……アイリス、さん……。
        (手折った花を胸に抱いて、少女の名前を呟く)
        (誰が来てももう迷わない。そう心に決めていたはずなのだけれど)
        (彼女が見せた笑顔が浮かんで、胸がずきんと痛んだ)

        ……もう、時間がないのです。
        (花を手に、悲しげに少女を見つめて、幼い声を風に乗せる)
        戦わなくてはいけません。貴女とも、白い森の小さな子とも。

        初めに誰の願いを奪うか……迷いました。
        ……だから、神様にゆだねてみたのです。
        運命の鐘の音に引き寄せられてきた人と、戦おう、そう決めたの。

        アイリスさん……その願いを私の血と肉に。

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

             ………………先生。
             バーサーカーにを。

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 

        (少女の声が、冷たい言葉を口にする)
        (倒せ、とは言わなかった。そんな言葉で命を奪うことを濁してしまいたくなかったから)

        (……月が、欠け始める。月蝕が始まったのだ)
        (泣き出しそうな顔で、月を仰ぐ)
        -- マルチナ 2012-06-04 (月) 23:37:14
      • (姿は見えない。だが瘴気は感じるし、なにより威圧感がその存在を知らせている)
        (皮膚感覚で何者かはわかっていた。現れたのは黒衣の少女、虐殺器官を従える若き魔術師)
        (若きゆえに、その非凡な才と類稀な智慧を以てしても力への渇望は御しがたく)
        (若きゆえに、己の過ちと罪とを認め切れず、ただひたすらに堕ちつづける女)
        (大アルカナの十、運命の車輪が知らせるものは変化と出会い、その点でも審判のそれと一致するだろう)
        (だがひとたびその上下がさかしまに映れば、示すものはすれ違いと悪運の到来)
        (それもまた真理。今ここに現れたのは、現存する聖杯戦争参加者の中で最悪の一である)

        (銜えていた葉巻を花畑へと放り捨てる。蒼い炎が一陣舞い上がり、ミルトスの花弁を燃やした)
        死? マルチナ、そいつは少し違う。
        ヤツは「生きていない」。アイツは……とっくに、ンなモン諦めきってる。
        (いまだ姿を表さない狂戦士がいるであろう虚空へ視線を移し、呟く)
        一度戦ったからこそわかる。ヤツは人間の成れの果て、狂気さえも及びつかぬ諦観に塗れた形骸だ。
        諦めと絶望が人を殺す。ヤツは死してなお止まることを許されず、歩き続けた存在……だろう、な。
        (それは男と対極にある姿だ。男は諦めることをよしとせず、たとえ諦めても再び立ち上がり)
        (誰にも強制されることなく、己の力と意志で歩み続け、今ここにいる。これからも歩いていく)
        気に食わねェんだよな、そういうウジウジしたのはよ。
        (右手を虚空にかざす。個人結界<月衣>から、3m前後の重い長槍が召喚された)
        だから、潰す。……令呪の使い所は考えろ、チャンスは一度だけだ。
        (一歩、踏み出す。青い炎が腕に纏わりつき、スーツを消し飛ばした)
        (義手である箒の青銀が露となる。ぎし、と音を立てて関節が軋む)
        アイリス……前に宣言したとおりだ。オレは、いや、オレ達は、正面から手前ェらをぶっ潰す。
        (さらに一歩。両足を炎が覆い、青銀の具足をあらわとし、その残滓が翻る青い外套に変わる)
        ……行くぜバーサーカー、ここがオレと手前ェの、オレ達と手前ェらの因果を分かつ地平だ!
        (最後に一歩……踏み込みは力強く。105kgの全体重を渾身の力で地面に叩きつける)
        (その重い一挙一動により、周辺のミルトスの花が一斉に「ぶわぁっ!」と、高く高く舞い上がった)
        燃え盛れ、オレの身体さえも焦がす天壌の業火!  《浄化の蒼炎(セルーリアン・フレイムズ)》ッ!!!
        雄雄雄雄雄雄雄雄雄おおおおォオオオッ!!
        (大地が揺れる。風が唸り、天が嘶き、月さえも恐ろしさに顔を隠す)
        (高らかに鳴り響くは勇壮なる戦賦(ウォークライ)。猛るは闘志、貫くは鋭き意志)
        (一足ごとに花の海を蒼炎が舐(ねぶ)る。舞い飛ぶ花びらさえも後に引き)
        ――――ォオオラぁああッ!!
        (乾坤一擲! 超重量の金属柄を十二分に生かし、空間ごと守りを削り取るような壮絶ななぎ払い)
        (アイリスを巻き込むことさえ厭わない。ヤツならば、そう、あの戦機械(ウォーマシン)ならば)
        (この程度の一撃、防ぐか払うか避けるか叩くかするだろう。そういうヤツなのだ)
        (だからこそ忌まわしい。だからこそ愉しい。だからこそ―――倒さねばならない!)
        (蒼き炎を纏う豪槍が敢然と唸りをあげ、前方はおろか左右も含めた270度近い半径を真一文字に切り裂いた!)
        -- ランサー? 2012-06-04 (月) 23:59:44
      • (彼女達のかけた魔法が解けるかのように鐘の音が止まり)
        (闇夜の降ろす静寂の中で、小さくヒールの音を響かせて)
        (無垢であり、幼いながらに聡明で透き通るかのように澄んだ心の持ち主の真紅の少女)
        (咲き誇る銀梅花は、彼女を象徴するかのようにも映る)
        (それは、ミルトスがティファレト……美と調和を司り、ケセド(慈悲)とゲブラー(峻厳)で中高世界を構成する)
        (優しさだけでは軟弱であり、厳しいだけなら独裁の双方のバランスを制御するかのように愛があり、他者に優しさも与えられる彼女の生きざまは美しい)
        (生命を欲す彼女は、生命エネルギーを供給するティファレトと。エデンの園の香りの象徴ともされるミルトスは本当によく似合う)
        (そして、彼女の父性であり、先生である蒼い炎の英霊が 彼女を護るかのように 彼女を導くかのように)
        (まるで私の障害の様に立ち尽くす)
        (ティファレトを支配するのは太陽であり、太陽は父性であり祝福を示す)
        (そして宮の中でも最も強力な獅子宮を支配し、獅子座を象徴するように)
        (彼女の番犬のようでも、勝利へと導き願望を成就し、悪しきを打ち砕き、今にも喰らいかからんばかりの獅子そのものだ)  
        (泣きそうな顔で私の名前を呼ぶ彼女は辛そうだった)
        (けれど、私の表情は……辛うじて以前の 初対面の時に見せた冷たい仮面のそれで)
        ……そう。私もなの
        (淡々と、そっけない返事を返す)
        (表面上は、平静を装っているけれど……もう、私の体力も限界)
        (早めに決着をつけなくては、聖杯を手にする前にバーサーカーに私が魔力と生命を搾り取られて朽ちてしまうのが視えている)
        (今の私は、死の抱擁と共に舞踏を交えているのと等しい)
         
        運命。ね……生憎私にも、運命の歯車が目の前で回っているかのようにみえるのよ
        神様……か(教会という場所だからだろうか 苦笑が漏れる)
        ホムンクルスの貴方が……神の造りし自然の律から外れた存在が……神に、ねぇぇ……
        (きっと。あの子たちには挑発に聞こえるのだろうけれど)
        (人々は神を信じるけれど……信じる人ばかりが救われる訳ではない事を私はよく知っている)
         
        ……丁度いいわ。私まどろっこしい事が嫌いなの
        同時に、仲良しごっこにも愛想が尽きて来たところなのよ……鬱陶しくって仕方がないわ
        (泣きそうになりながら決意して自分のサーヴァントに死をと望む彼女の心が壊れる前に)
        (私は嫌われようと思う。きっと、もし……この戦いが終わった後に彼女が生きることになったら いつかこの時を苛む時が来るだろうから)
        (その時に少しでも苦しまないように)
         
        ……ふぅん、そう……ランサー貴方私のバーサーカーと以前戦っていたのね?
        強かったでしょう?(くすくすと、微笑みながら談笑を楽しむかのように嘲笑う)
        気に喰わない……? 馬鹿ね、そんな感情に囚われては……死に急ぐだけよ
        (真夏の夜なのに何処か冷たい月蝕の下で、バーサーカーを蛇が睨むような眼で捉えて)
        こちらこそ。貴方達に絶望を与えてあげるわ
        (この月の様に、貴方を そしてマスターのマルチナの命を貪り喰らい尽くし蝕むように)
        (燃え盛る炎の様に自身へと襲いかかるランサーに、静かに命令を下す)
         ……バーサーカー……
        戦って、踏みにじって、希望を奪い絶望を与えなさい -- アイリス 2012-06-05 (火) 00:23:44
      • (主の声に導かれるように。主の声に応える様に)
        (虚空よりそれは現れる。音も無く、声も姿もなく。左手から先だけが顕現すれば)

        『その左手は空を切り』(エンプティ)

        (触れた先から蒼炎は闇に喰らわれ、代わりに瘴気と迅雷が周囲を支配する)
        (瘴気が花を蹂躙し、教会の清らかな空気を侵して行く)
        (気付けばもうそこは廃墟そのもの。全てが終わった絶望の庭)
        (石畳に鈍い金属音が響く。さすれば既にそれはそこにいた)
        (右手に漆黒の魔剣を携え、左手から禍々しい黒い魔力を迸らせて……絶望の織手は希望の兆手と向かい合う)

        (フルフェイスの奥の紅瞳が……細まったように見えた) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 00:34:33
      • (チャンスは一度。最後の令呪は彼にあげると約束したから、私の意思で使えるのはあと一つ)
        ……はい!がんばって、先生…!!
        (走る背に精一杯の声を。不安はない。彼が負ける訳がないのだから)
        (ミルトスの花が舞い、青い浄化の炎が燃え上がる。それを飲み込むようにして闇の騎士が現れた)
        (それはさながら神話のような、対称的な二人の戦い)

        (闇が世界を蝕み、美しかった銀盃花が萎れ、枯れていく。色を失っていく世界で、蒼い炎だけが鮮やかに)
        (足元の草原が、ただの乾いた土になった。瘴気のせいだ)
        (それでも赤毛の少女の持つ花は白く輝いたまま。カテンの浄化の炎の力で守られているのだ)
        (花からは楽園の香り。人がまだ穢れのない存在だった頃に、居た場所の)

        それでも…私は、貴女が好きですよ。あのお茶会、とても楽しかったの。
        私、ここに来るまで同じ年頃の子と話をした事すらありませんでしたから。
        (花を抱いて、黒い少女の気持ちを知ってか知らずか、呟く)
        ホムンクルスだって、神を持つのですよ。ふふ。
        (戦いに視線を移す。愛しげに青い炎を見つめて)
        …ここからはもう手は出せない。自分のつたない魔法は役に立たない。「人間や魔物を超越した力を持つ存在」の戦いです。
        …それを私の故郷では神と言うのですよ。


        だから私の神はサーヴァントのあの人。カテン。
        「カテン」とは炎の神の名前。人と神々を繋ぐ存在だと言われています。
        だから、私の祈りはきっと、先生を通じて神様に届く。

        ……希望は捨てません。どんな時も絶望しません。
        真っ直ぐ前を見続けること、それが私の誓いだから…!!
        (そして少女は命を燃やすように、魔力供給を強める)
        -- マルチナ 2012-06-05 (火) 01:36:06
      • (『教会』『大アルカナ20番:審判』『ミルトス』『終焉の月蝕』)
        (そして、今日の太陽のサビアンは『Two angels bringing protection:守護を齎す二人の天使』)
        (主観的な心や感情を犠牲にした人は、必ず心理的に危機が到来するだろう)
        (それはタロットの審判が、復活――……精神の覚醒の物語であるように)
        (天体も変化を促し鍵だと言うように、火星と土星が90度でスクエアを形作る)
        (それはまるで、運命の悪戯を垣間見る程に要素は関連し、絡み合い連動し、何か神託を告げている様にも思わせる……もしかしたら、教会という場所と絡んだキーワードが神聖さや神秘を含んでいるからだろうか?)
         
        (この日の天体は、月が蟹の中盤にあり、火星とコンジャクション――……つまりは重なり、土星と90度のスクエアを形作り、火星は木星と60度と、冥王星と120度で続いている)
        (これは、最近の物事の区切り・整理、決断を促す配置であり、発展を意識したその延長線上にあるもの)
        (日食→月蝕、月蝕→日食を一区切りにするならば)
        (今日の月蝕は私の聖杯の成果を試す時)
        (彼女を乗り越え、番犬であり獅子である勇猛果敢なランサーを倒して乗り越えれば私はきっと聖杯を手に出来る――……必ず)
        (セイバーとは目の前で勝敗を見たけれど……バーサーカーが圧勝した)
        (アサシンというクラスでは、最早私のバーサーカーの足元に及ばないだろう)
        (残る障害は、目の前の一人……ランサーだ)
        (彼は三騎士の一人であり、実力は十分。そして、何より厄介なのが人間臭いサーヴァントという事……)
        (それは、矛盾の魔王の眷属であるサーヴァントであるバーサーカーには天敵に等しい)
        (闇の深淵の魔王の逸話は……いつだって人間には敵わない)
         
        (ランサーを信頼し声をかける少女)
        (聖杯戦争で散りゆくミルトスの花が舞うのは、何処か彼女の儚い命と重なるように見えた……きっと、それはあの子の最期が近い事を告げられたからかもしれないけれど)
        (月が蝕みで隠れ、闇が色濃く深くなる教会の、ミルトスのガーデンの中での争いは 神話の逸話を目の前で見ている様な気分に陥る)
        (私があの子の生命を蝕み汚染するかのように、花は散り、枯れてゆき 教会もみるみる廃墟へと変化していく)
        (その中でも輝きを失わず、蒼い炎を燃やし、彼女の命を灯すかのように戦うサーヴァントが敵ながら頼もしい)
        (それは、まるで私とバーサーカーの闇と瘴気に塗れた心と精神を、炎という神聖で穢れを落とすかのように)
         
        (それでも私の事が好きだと言う彼女に、私は言葉を失って)
        (もう……冷たい言葉も態度も返せなかった)
        馬鹿ね……貴方が例え勝ち得たとして。私を好きだなんて……いつかきっと苦しむでしょうに
        (彼女の芯の強さが垣間見えた気がする……『背負ってゆく』と言っていた決意の深さも)
        ……そう『人間や魔物を超越した力を持つ存在』ね
        (状況のせいか、神と運命は等しいものだと言っているように聞こえると同時に感じる)
        (それは、己の神を信じる少女の存在が……神を信じるものが起こす現象が奇跡であることも)
        (人間や魔物を超越した力を持つ存在も、神の計らいなら運命であることも)
        (言い変えてしまえば、神と運命が等しい事に置き換えられる事も リンクして)
         
        カテン……炎の神の名前、ねインドの伝承の火天……火神。か(ぽつりと呟いて)
        タロットの審判の生命の樹の対応は
        第20の鍵であり、生命の樹のセフィラー『ホド(栄光)』から『マルクト(王国)』に通じるパス、第31番目の小径に相当し、ヘブライ語『シン』であり『歯、火』を意味し、秘教的称号は『原初の炎のスピリット』……つまり元素の火なの
        これは永続的な作用を指すもので永遠の知能であり、太陽と月の様に永久に繰り返される反復運動を生み出すもの……か
        (また一つ。炎というワードが絡み、運命の歯車が、音が聞こえるかのよう)
         
        ……残念なのは、セフィロトの樹の位置的にマルクト(王国)の小径にあること
        ケテル(王冠)言い変えると神の国へ最も遠い場所にあり、届く可能性が奇跡という事かしら
         
        (けれど、どんな絶望の果てにも希望を捨てず望んだ者にこそ奇跡が訪れるのだ)
        (モーゼの様に)
        (彼はたった一人で山へ登り、たった一人で神と会話し、そして「教え」を手に、たった一人で山を下る)
        (彼が自分の民、自分が今まで導いて来た民の元へ戻った時、その全員がすでに彼を裏切っていた)
        (彼は全員を叱り、さらに導いてゆく)
        (調子のいい時は全員彼の言うことを聞くけれど、何か問題が起きれば、すぐに不満不平をもらし、彼の神を疑い始める)
        (それでも彼は神の教えを手に、追っ手から逃れるために海を割る)
        (彼が神を信じて海の前に立つと、その海が二つに割れて彼らのために道を作って)
        (目の前のあの子はそんな聖書のくだりを連想させる)
        (神も、一切疑わず心の底から信じるモーゼに『教え』を教え『奇跡を起こした』のだ)
         
        (信じることは、即ち強さと同一である)
        ……そう だったら最後まで抗うがいいわ
        でもきっと。私は貴方に希望の残らないパンドラの箱をこじ開けさせる役割を全うするまででしょうけれど
        (あの子のサーヴァントも強い、けれど私のバーサーカーは更に強い。格別なのだ)
        (これは、自意識過剰でも自惚れでもない……私を蝕む魔力と瘴気が象徴している)
        (眩暈がしそうになりながらも私も立って戦いを見つめる……勝ち残る為に、聖杯を得る為に、彼を信じているからこそ バーサーカーに私の未来を託して) -- アイリス 2012-06-05 (火) 02:21:48
      • ッ!!(既視感。すべてがムへと消えていく感触)
        (手応えが、己の身体さえも苛む蒼炎が雲散霧消し、侵すように黒の瘴気が滲んだ)
        チィッ!(それを振り払うかのように槍を引き、牽制の三段突き。いずれもが防がれ、後方に跳躍)
        (「ざしゃあっ!」 重々しい着地音に応じ、またも蒼の炎とミルトスの朱が交じり合い舞い散る)
        出やがったな虐殺機械(キリングマシン)……ここでケリ、つけてやる。
        (すぐさま新たな蒼炎が槍を覆っていく。柄を伝い、その浄火は義手に重なり、焦がす)
        (感覚のない腕を焼き割かれる痛みが魂に刻み込まれる。しかし、それもまた慣れ親しんだ痛み)
        (生きているならばこそ得られる痛感は、いまもまだ自分が戦っていることを教えてくれる)
        こいつじゃ軽すぎるか……ならッ!
        (ぐぐっ。上体をひどく後ろ手に捻り、槍を腰だめに構える。弓のごとく大きく腕を引き……)
        ……おォッ!!(「ぶんっ!!」 放たれた弦のごとく、上体が迸った!)
        (全身の膂力を以て腕が振るわれ、金属柄の重長槍がすさまじい勢いで投擲され)
        (地面と並行に、男の体重に匹敵するほどの凶器がバーサーカーへ迫る!)
        (速度は弾丸のごとく。質量それ自体が無視するには巨きすぎる質量だ)
        (ましてやそれは魔を払う青の炎を纏う嚆矢。同時に、投げ抜いた男はその勢いを殺すことなく疾駆)
        おおおおおおおォォオオ!!!(虚空から引きぬいたのは、先の豪槍にそのまま斧を取り付けたようなハルバード)
        小細工は使わねェッ、これと決めたら貫く、押しつぶすッ! せェやッ!
        (浅く跳躍。豪槍のあとに続くように、背中に沿うようにして振り上げたその斧槍を両手で掴み)
        ぶっ潰してやらァッ、おおォラッ!!(正中線を叩き割るようにして、頭上から振り下ろす!)
        (もはやマルチナの命は後わずか。今更魔力を惜しみはしない、斧の刀身もまた青い炎を纏い)
        (迫りくる豪槍と、一瞬後から襲い来る斧撃。絶望の黒騎士でどこまで凌げるか、男の意地がそれを問う)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 00:53:25
      • (袈裟、横薙ぎ、最後は手甲で牽制を受け流し、堂々と蒼炎の担い手を見送る)
        (以前とは違う。以前とは明らかに動きが異なる。バーサーカーのその動きは同じ戦闘機械でも無人機のそれではなく……)
        (さながら、経験を蓄積した熟練手の操るそれ)
        (バーサーカーが魔剣を振るう。ランサーの視線からみれば、それは遠近法で小人に見えるバーサーカーの剣が投擲した槍に触れたように見えたろう)
        (しかし、見えてしまえばそれで終わり。冗談のように、騙し絵のように、目前を先行していた槍は遠近感などまるで無視して切り払われ、後方を跳躍するランサーの障害物として宙を躍り)
        (直後に魔剣が異常に肥大化する。魔力と瘴気を練り上げて、教会の天井にまで届くほどの長大さにまで変貌した魔剣は、重さを感じさせずに刃を返せば)
        (天井を、空を、大地を威圧で切り裂いて、ランサーへと振り下ろされる)
        (間合いなど関係ないといわんがばかりに振り下ろされたそれは矢張り遠近法も物理法則も常識も全て無視して迫ってくる) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 01:20:04
      • (遠近無視の魔技。かつて苦しめられたそれが、再び牽制の一撃を弾いた)
        ("だがそれでいい"。バーサーカーが左手の無ではなく防御を選んだ、その結果こそが重要)
        ぐ、おおォッ!!(「ギィンッ!!」 巨大化長大化した魔剣と、斧槍がせめぎあい)
        (砕け散る。重々しいハルバードが、かつてと同じように青い炎にまみれて千々に乱れる)
        (威力は大きい。咄嗟に魔剣の追撃を義腕で受け止めると、すさまじい衝撃が骨をきしませた)
        ……ッハ、ありがとよ(だが、男は笑う。"だがそれでいい"のだ。おかげで重みがなくなったのだから)
        お……おォッ!!(男が次に取った手段。それは、己の眼前に障害物として飛来した豪槍を)
        (宙に浮かぶ足場として利用し、蹴り上がるという尋常ならざる前進戦略!)
        (男の膂力を上回りかねない重量は、しっかりとランサーの巨体を受け止め)
        (バーサーカーの膂力によって弾かれたその運動量が、槍兵の踏み込みと反発する地面の役割を果たす)
        (空中で跳躍という、物理的にありえない軌道。それは、先のライダーとの戦いで垣間見た戦術の模倣である)
        (そしてさらに、散らばる斧槍の破片。魔剣によって砕かれたそれらは、さながらチャフのように周囲に舞い散っていく)
        (バーサーカーが、機械的な判断でなく、戦場をくぐり抜けた玄人の判断力をも備えているならば)
        (初めからその攻撃は捨て石であり、バーサーカーの認識能力をごまかすための撒き餌とわかるはずだ)
        手前ェのドタマ、踏みつぶしてやるぜッ!  《媒介たる幻燈の箒(ヴィジョナリー・ブルーム)》 ッ!!
        (全身、ことに義肢に光条が走る。たちまち麒麟菊の文様を描いたそれらは肉体へと送られ、返し、賦活されていき)
        (蒼い輝きが全身を包む。意志力の輝き、メディウムの力を以て世界と同調した証!)
        力をよこせよ、ドラゴンハート! 技はライダー、手前ェから借り受ける!
        (右脚が青く輝く。魔力を破壊力に変え、重力と加速力を得て、斧槍の破片を眩ましとし)
        《ブレインクラッシュ》ッ! おおおおぉおラァアアアッ!!
        (今度こそバーサーカーの頭蓋めがけ、右の脚が光芒の如く迫っていく!)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 01:33:59
      • (見事なランサーの機転。仮にバーサーカーが戦士であり、そして理性があったのなら……感嘆の声を漏らし、口端に笑みの一つも浮かべたことだろう)
        (しかし、それは仮の話。最早叶わない空想の果ての戯言)
        (経験者であるからこそ、玄人であるからこそ……そして戦士ではなく怪物であるからこそ)
        (バーサーカーは視線になど頼らない。視界が阻まれれば他の感覚で補うだけのこと)
        (幾種類も備えられた勘、知覚、経験、それらは全て高精度を誇るセンサーそのもの)
        (相手が飛んだなら寧ろ好都合とばかりに全身から放電すれば、斧の破片が、チャフとして虚空に散った金属片全てがバーサーカーの電磁制御によって矛にして盾となり、さながら電磁網となってランサーの身に喰らいつき、さらには電磁力によってその身体の動きを阻害する)
        (無論、それだけでランサーの大質量……そして宝具たる義肢による蹴撃が防げるわけもない)

        (そう、それだけなら)

        (左手が天に伸びる。ランサーの右脚が光芒ならば、その左手は宵闇)
        (光など喰らい尽くせばいい。光など塗り潰せば良い)
        (『その左手は空を切り』、光の圧力も宝具の効力も一瞬消し飛ばす。一瞬。たった一瞬。一瞬の後に元に戻るが……戦いの中では一瞬で十二分)
        (ただの蹴り足ならば掴み取ることなどそれこそ容易)
        (左手でもってランサーの足首をがっしりと掴めば、ランサーの巨躯などものともせずに片手で壁に、地面に、何度もたたきつける)
        (ランサーが暴れようとすればそのたびに力加減を調節し、巧みに空中での姿勢制御を制限する。身体が覚えているとでもいわんがばかりに行う軽々と振るわれる……人外の技) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 01:49:02
      • (大地に喰らいつき、不動の支点から打ち出された「投げ技」は綺麗に決まる)
        (まるで遠投された砲丸か何かのように聴衆席に投げ出され、黒檀の長椅子を砕きながら漸く神像に突き刺さることで止まる)
        (すぐさま起き上がって反撃しようとするが……間に合わない)
        (既に目前は刃で埋め尽くされている。次元ごと塗り潰すかのような高速連続攻撃。光と最早区別がつかないほどの無数の穂先)
        (抉られれば黒鎧は切り裂かれ、チェインメイルは断ち切られ、溶鉄のような深紅の血が中から噴出す)
        (動かない。動けない。其れすら許されない)
        (左手を伸ばそうと無駄だ。一撃消したところでどうにもならない。それを前提にした攻撃。バーサーカーも無意識にそう判断して左手をださない)
        (一際大きくグレイヴが突き出され、脇腹に深く突き刺さったそのとき)
        (狂戦士が動く。肉を抉るグレイヴを断ち切られた肉ごと脇に挟みこみ……)
        (大出力の放電でもってグレイヴの先にいるランサーの身体を焦がす)
        (しかし、そんなものはついで。一際力をこめてグレイヴの制動を掌握すれば、グレイヴごとランサーの身体を上天へと持ち上げ)

        (投げ飛ばす)

        (追撃はしない。出来ない。ゆっくりと立ち上がり、瘴気をその身にまとって幽鬼の如く動き出す)
        (一歩踏みしめれば、傷口は塞がり)
        (もう一歩踏みしめれば、瘴気が周囲を蹂躙し)
        (最後に魔剣を構えて対峙すれば、闘気と殺意に満ち溢れた黒騎士がまたそこにたっていた)
        (諦め、終わり果てた故に立ち止まることすら赦されない……『永い後日談の黒騎士』(エンド・オブ・オーヴァー)――終わりを形にした何かが、そこに立っていた) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 02:43:20
      • (一撃でダメならば十回の攻撃を。それで抑えられならば百の連撃を繰り出す)
        (それでもダメならば千の乱撃を。なおも立ちふさがるならば万の猛撃で押し潰す)
        (男ならばそれができる。一撃を素早く繰り出すことができるならば、二回目を繰り出すことも)
        (三度目を。四度目を、五度目を、何度でも、何度でも何度でも!)
        (その志は、ついにバーサーカーの守りを貫き、鮮血を吹き出させることに成功した)
        もらったァ!!(手応えあり! その傷を以て上体と下半身を切り裂こうとした矢先)
        ……ッ!!(目を見開く。敵は、己の肉を顎(あぎと)のように噛み締めさせ)
        (魔力の雷を通し、己の身体を蝕む!)がぁああああああッ!!
        (ぶすぶす、音を立てて肉体がこげ上がる。目から、口から煙を吐き出し、よろめいた)
        (だが、二の足は地をつかない。柄ごと持ちあげられた巨体がぐらりと浮き)
        がはッ!!(軽々と投げ飛ばされ、壁に叩きつけられ、血を吐き出す)
        (追撃が出来ないバーサーカーと同様、ランサーのダメージもまた重篤)
        (かろうじて宝具の力により機能を「代用」し、よろめくように立ち上がる)
        (そして、己を蝕む絶望さえも喰らい尽くし、満身創痍が嘘のような狂戦士がそこにいる)
        (一方で、男は絶体絶命。立つことさえも朧だ)
        (だが)
        (男は笑う)
        ……は。
        それが矛盾の魔王の力だってか? そりゃアいい……便利なモンだな。
        けどよ、手前ェにゃちィともったいない。痛みを忘れた手前ェにゃア、よ。
        (蒼い光が五体に走る。男の左目が輝く。意思の光、折れることのない)
        (否、折れてさえ、なおも立ち上がる不屈の意思に。炯々と、爛々と片眸が輝く)
        手前ェの終わりを超えてやる……手前ェごときの諦観に、オレのガキを付き合わせるわけにゃいかねェんだよ!
        (衝撃でへし折れたグレイブを投げ捨て、新たな武器を虚空から引きずりだす)
        (現れたのは身の丈にはいささか小さい2mほどのシンプルな長槍)
        (だがそれは男が歩み続けてきた証。細くも確かに繋がってきた糸そのもの)
        (男もまた後日談を歩み、今もなお終わらず、歩き続けるただ一人の戦士) 因果の糸を繋ぎ、さだめを超えて繋ぐ蒼き光……征くぜ、終焉の騎士。
        ―――― 《鬼切りの蒼き刃(イトキリマル)》 ……唸れッ!!
        (槍は何の変哲もない古びた、木の柄を持つ蒼き穂先の槍である)
        (だが、男の無数の転生をくぐり抜けてきた"遺産"の力はまさに宝具)
        (ごく普通の刺突。袈裟斬り、横薙ぎ、三段突き。両足を狙った振り下ろし、石突での殴打)
        (単純なその武技は、無限の繰り返しの中で培われ、今なお進化し続ける男の生き様そのものだ)
        (たとえ防がれ避けられ流され散らされようと、何度でも、何度でも攻撃は繰り返される)
        (己の目指す結果に辿り着くまで。バーサーカーを倒す、その目的へと進むためならば)
        (男は歩むことをやめはしない、闘うことをやめはしない!)
        い、く、ぜ、お、ラ、ァアアアア!!(諦めないことを、やめはしない!)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 03:14:24
      • (諦観の果て、全てを棄てた黒騎士)
        (対して目前に迫る蒼は……信念を貫き、不可能を蹴り上げた英雄)
        (かつて、目前に現れた黒犬とは似て異なる)
        (奴は諦められなかった。諦めることを諦めた故にああ成り果てた。違う形の絶望を身に纏った運命の敗残者)
        (しかし、目前で、血塗れになりながら、傷だらけになりながら迫る男は……)
        (その運命すらも、押し退けて進む)

        (魔剣で打ち払ったはずの槍は横に薙がれている)
        (身を捻って避けたはずの槍は振り下ろされている)
        (どのように避けようと、受けようと、その槍は届く。運命を、諦観を、絶望を弾きのけて何度でも)

        (押されている。傍目にはそう見える)
        (バーサーカーは攻め様にも相手の攻勢が途切れない。反撃する可能性も根こそぎ刈り取られる)
        (条理を覆す無条理。それこそが宝具。それを繰ることを許された超越者こそ英霊。まさに目前の男はそういう存在だった。誰もが認め、誰もが敬う英霊だった)
        (奴が白といえば、黒も白に染まる。理不尽故ではない。世界が許容するが故に)

        (反面、反英雄たるバーサーカーはただ押し潰される。魔王の力を振るうが故に。世界に拒絶されるが故に)
        (左手を伸ばす。届かない。一手でも届けば良い。届けば終わる。しかし届かない。世界が届かせない)
        (諦めたものの手にそれが届くはずもなく)
        (ただ、防戦一方。勝負あったかに見えた) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 03:35:09
      • (無限回の試行は終わらない。たとえ何度折れようと、砕かれようと、止まらない)
        (諦めることもあるだろう。しかし、再び立ち上がることができたならば……)
        おおおおァあああああ!!!(それは不屈の証左となる!)
        (一撃一撃が宝具の必殺。鎧を削ぎ、魔剣を払い、血を飛沫かせる)
        (届いたとしても打ち払う。進む。削る。貫く! だが、ああ、だが……)
        ……ダメか、こいつじゃア届かねェ!
        (それゆえに、《糸切り丸》は、敵を倒すという結果にだけはたどり着けない)
        (その結果には、男だけではたどり着けないのだ。ゆえに、たとえどれだけ攻めようと)
        (バーサーカーを打ち払うには至らない。後一撃、あと一歩が足りないのだ)
        だったら……こォいつで、どォだァアアアア!!
        (轟! 片目から青い炎が吹き出し、とぐろを巻くように身体を覆う)
        (全身を灼きつくす蒼き炎。浄火の蒼炎が、サーヴァントの全身を焦がしていく)
        《浄化の(セルーリアン)ッ!! 蒼炎(フレイムズ)ッ!!》
        その因果の糸を灼き尽くす! おおおおォオらぁあああああああ!!!!
        (全ての力を込め、忌まわしき肉体を焼き尽くそうと……最後の一撃を繰り出した!)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 03:44:05
      • (月が欠けていくのと同じように、少女の命の灯も弱々しくなっていく)
        (魔力を開放しきっている状態のせいだろうか。闇色の騎士の放つ命を蝕む瘴気のせいかもしれない)
        (……それとも月蝕のせい…?古くから月蝕には様々な神話や言い伝えがあった)
        (月は魔術には重要な存在だと、研究所の魔術師達が話していたのを思い出す)
        (……もしかしたら、その全てが重なり合ったせいか。元々「マルチナ」の存在は不安定なものだった)
        (カテンへの魔力の出力が安定しない。意識が時々途切れそうになる)
        (失神とか、そういうのじゃない。自分が消えて行くような、眠るような、言葉に表せない感覚)
        (それはきっと死にゆくものが感じるものと同じ)

        (……怖い

        (でも、少女は笑う。胸に抱いた花のように)
        嘘はつきたくないのです。好きだっていう本当の気持ちから目をそらすことも…。
        だって、私は先生の誇りになりたいから。
        遠い遠い、気の遠くなるほどの未来から、先生は私を助けるという約束を果たしに来てくれたの。
        血のつながりも、何もない。ただ、たまたま彼の生徒になった…それだけの私との約束を守るために……自分で奇跡を起こして。

        私はその気持ちに報いたい。愛しい人に置いていかれても前を見る事をやめなかった先生が
        守ってよかったって誇れる子になりたいのです。
        ……あの人と、同じくらい強い子になりたい。
        そうしたらきっと…私は先生の本当の子供になれると思うんです。

        ホムンクルスが父親を欲して、家族ごっこを求めるなんて、きっと私を作った人は滑稽だと笑うでしょう。
        でも、先生は、出来損ないの人間の私でも子供でいいって、お父さんがわりでいいって言ってくれたの。

        (瘴気の闇の中で、蒼い炎は道しるべ。それを光だと信じて、ただ追いかけて行く)
        (深い信仰心を持つ使徒のように。神の使いの天使のように、ただ彼を愛し、信じて)
        (苦悶の声が聞こえようとも、彼が地に打ち付けられようとも、少女は信じるのだ。(カテン)の起こす奇跡を)

        (だって彼はどんな時も前を見て笑っている。今だって。絶望してもいいはずなのに諦めない)
        (だから、私も諦めない)

        私の希望は…箱の中になんて、ないのです……あの人の中にある。
        (もう、立っていられなくて、ぺたんとその場へ座り込んだ)
        (魅入られるように、戦いを見つめながら)
        (胸に花を抱く様は神に祈りを捧げる信徒そのものだった)

        (途切れる、小さな声で囁く。目の前の少女にだけ、聞こえるような声で)
        ……お父さんがいるって、どんな気持ちなんでしょう。
        お母さんっていうのは、姉様やヴィヴィアンさんみたいにあったかいって聞きました。
        人の子、貴女達人間が私は羨ましい。
        私の欲しいものを生まれたときから持っている。

        私も……戦いに勝って、お父さんが欲しいの。

        (……………………………………………………呪印が光る)
        (体から力が抜けた。体を折り、這い蹲って呪文を唱える)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

        令呪に告げる…!!!聖杯の規律に…従い…
        この者、転生者・カテンに…戒めの法を重ね給え…

        …………負けないで……お父さん…………!!!!


        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 

        (少女の命を奪うように、魔力がカテンに注ぎ込まれる)
        (自殺行為かもしれない。それでも、私の全てをあの人に託して、信じたい……!!)
        -- マルチナ 2012-06-05 (火) 03:37:14
      • (回避も防御も許さない必中の宝具に抉られ、満身創痍のその身体)
        (とどめとばかりに蒼炎がバーサーカーの身体を焼く。瘴気が浄化され、稲妻が飲み込まれ、魔力の胎動が弱まる)
        (当然の結末だった。無限回廊を歩むのはどの英霊も同じこと……故に差が出るとすれば……その回廊へと挑み続ける意志。心)
        (諦めた果ての形骸が、挑み続ける英雄に敵うわけもない)
        (当然の帰結。当然の末路。当然の条理……だが、しかし……)

        (それらは全て)

        (覆されるためにあるが故に)

        (『左手』が、必中、必滅に対して必消の宝具が……蒼炎の向こうからランサーの首へと伸びる)

        (バーサーカーは倒れない。それだけの猛攻を受け、世界から拒絶され、条理から否定され、運命から目を逸らされようと……倒れない)
        (何故ならそれこそが日常であるが故に。それこそが諦観の果てにある当然の理であるが故に)

        (そんなものは蹴り付けて叩き潰して殲滅して進むのが日常)

        (魔力が、バーサーカーの魔力が突如膨れ上がる。規格外なほどに。常識外れなほどに。条理も何も全て蹴飛ばして)
        (同時に……蒼い、蒼い光が灯る。蒼炎の中にあってなお蒼い光がバーサーカーの両目に灯る)
        (狂い猛る憤怒の紅ではなく、悟り諦めた寂寥の蒼)
        (フルフェイスの留め金が外れる。連撃で歪み、炎に炙られたそれがはずれる)
        (煤けた黒髪が、蒼炎の中で黒い焔の如く揺れる。結ばれ、決して開くことの無い口端から吐息が漏れる)
        (はたして、そのフルフェイスの下にあったものは――蒼穹であった)

        (求め果てた先に忘れ果て、忘れ果てた先に憎み果て、憎み果てた先に……諦め果てた、無限の蒼)

        垣間見た先に絶望した……『束の間の蒼穹』(トゥルーサイト)) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 04:08:35
      • (蒼がそこにあった)
        (黒を侵すように燃え盛る蒼が)
        (己の行き着く場所へ向かうため、歩み続ける蒼が)
        (……そして)
        (嗚呼、そして)
        な…………ッ!?
        (絶句。その先にある蒼を見た時、男は言葉を喪った)
        (可能性は予感していた。だが、それが現実として、こうも己の前に立ちはだかったなら)
        (それに抗うすべを持たない時、人は何もかもを忘れてしまう)
        (嘆くことさえ。怒ることさえ。憤ることさえなくし、ただ、呆然として)
        (その左手が、ランサーの首を、掴んだ)
        が、……ウソ、だろ……手前ェ、どういう……ことだ……ッ!!
        (男の巨体が軽々と持ち上げられる。当然だ、先ほどまでボロ雑巾のように扱われていたのだから)
        (ばたばたと足をもがかせ、苦しみながら、ただ問いかける)
        どうしてだ、なンで、手前ェが……手前ェが、手前ェ、が……ッ!!
        (がり、がり。ひび割れた爪が、もはや慈悲を知らぬ黒騎士の左手をひっかく)
        (抗えない。なぜならば、相手もまた、抗うことをやめた存在だから)
        (抗うことをやめ、澄み切った青空のような蒼えと辿り着いたものだから)
        どうして手前ェが……手前ェが、手前ェェエエがァアア……ッ!!
        (しぼり出すような声。首を締める手の拘束は強まるが、言葉を締め付けるものは其れ以上のもの)
        (怒りでもあり。悲しみでもあり。苛立ちでもあり、恐れでもあり)
        ……手前ェが、ンな顔をしていやがる……ヴィーラッ!!
        ヴィーラ・フィヨルド……手前ェが、どうしてッ!!

        ふん……力任せでくるってか……いいぜ、益々持って気に入った……なら、採点してやるよ。

        (そこにいたのは、かつて男が戦い、友誼を結び、同じ学び舎で過ごした者)

        力だけでどうにかなるなら、意地だけでどうにかなるなら人間はオークにはかてねぇよ、オーガーにも勝てなきゃジャイアントなんざ論外だ!

        (黒騎士でありながら明るく、飄々としていながら人を導き、天才でありながら凡才に学ばせる男)

        それでも人間はそれらに時に打ち勝つ、時に打倒する! 何故か!? んなもん決まってる!

        (人の強さを知り、人の弱さを知り、それゆえに人を教え、導き、支えていた男)

        意地を押し通すだけの狡猾さと!

        (人の意思の強さを語り、ぶつけあい、認め、笑った男は)

        意志が支える膂力の両方を!!

        (人の身のしなやかさを知り、競い合い、伸ばし、戦った男は)

        時に人はもちえるからだ!!

        (諦め、歩みを止めていたのだ)


        ……そう、か……そういうことか、よ……。
        (男にはすべて合点がいった。それはifの可能性、男が歩み続けた未来の一つ)
        (人であることを諦め、存在することを諦め、意思持つことを諦めた宇宙の姿)
        (諦観と絶望という救いの終焉(バッドエンド)に身を窶し、機械となった男の末路)
        (自らが愛する人を失い、それでもなお歩み続けた可能性未来の姿であるように)
        (男もまた、ありえざる、しかし在り得るものであり、ここに在るのだ)
        くそったれ、が……くそったれがァあああああああああ!!
        (満身の力で左腕を振り払う。かつてのように、怒りを込めて、その頭部に頭突きを加えた)
        (だが創痍の状態甚だしく、むしろダメージを食らった男は、蹈鞴を踏んで後ずさる)
        こォなくそォオオオ!!
        (皮肉にも、令呪がその身体に力を与える。漲る魔力を宝具《糸切り丸》へと通じさせ)
        因果を切り裂き正しく繋ぐッ!! 手前ェの、その眼を! ブチ貫いてやるッ!!
        《鬼切りの蒼き刃》ッ!! 唸れぇえええ!!
        (蒼炎を纏い、一瞬でも早く、その諦観に満ちた姿を消し去ろうと)
        (己の遺産を振り払い、ヴィーラ・フィヨルドだったものへと突き進んだ。闇雲に、我武者羅に)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 04:28:32
      • (かつて、いつも柔らかく緩んでいた口元は固く結ばれ)
        (かつて、笑みを湛えていた目元は暗く濁っている)
        (永遠の回廊の果て。無限に続く寂寥の地獄の果て。男はたどり着いた。たどり着くはずの無い最期のバッドエンドに)
        (その先、行き着いた可能性の行き詰まり。一つの頂点にして終点。故に英雄たる。故に反英雄たるその男)
        (蒼い瞳が……真名たるその相貌の象徴が顕現することで……その動きに精彩が加えられる)
        (真正面から受けた頭突きに対しては……上体を逸らしつつランサーの身を放り投げ、自分へのインパクトは最小限に抑えつつ後退する)
        (再び繰り出される宝具の一撃に対しては……目、そこが狙いと分かれば反応することは容易い)
        (予想ではなく、反射神経のみで、純粋な俊敏性のみで……左手を突き出して柄を掴み、そのまま大出力……しかも、今回はただのダメージではなく、反射神経を刺激する静電流でランサーの動きを効率的に阻害する)
        (そして、一瞬でもそれによって隙が生まれれば)
        (ジェット推進の如く噴出した瘴気が剣撃を強化し、袈裟懸けにランサーを切りつける)
        (最期におまけとばかりに回し蹴りの連携。弾き飛ばして距離をとり、反撃を許さないつもりなのだろう)

        (身体に宿った研鑽が、悲しみの果てに、無我の果てに完成された終端)
        (バッドエンドという名のハイエンドが、そこにはあった) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 05:25:03
      • (月の蝕みと連動するように、儚く削られてゆく少女の魂の灯火)
        (足りない魔力を更にサーヴァントに喰われ、私のサーヴァントの瘴気にあてられ)
        (何よりも……今日は月蝕)
        (普段の満月とは違うのだ、良くも悪くも魔力にも運命にも強力に作用する反面、不安定で危うい側面もある)&br: (古来から特別視されて数多くの伝承が残された中の多くが不吉を称するかのように)
        (月は潜在意識を司り、感受性や直感力などにも関係する星なので占い師や魔術師はこの星を重視するように)
        (恐らくはあの子自身『無意識に』彼女の隣り合わせになりつつある死を感じとっているのだろう)
        (明らかに悪い顔色と、儚く消えゆくように霞んで薄れてゆく生命エネルギーも)
        (棺桶に足を踏み入れた死の誘惑の香りが色濃く匂い立つように感じるのだ)
         
        (苦しみながらも、恐怖を覚えながらも笑う彼女が痛々しい)
        (それは散っていったミルトスの花と重なって)
        そう……馬鹿ね。時には眼を逸らした方が楽なことだってあるのに
        自分の心の動きから眼を逸らさないのは立派な強さよ。貴方は先生の誇りに成りたいと言うけれど……その前にもっと自分自身を誇りに思いなさい
        死と隣り合わせになっても、カテンの事を信じている貴方自身が既に素晴らしい精神の持ち主だから
        (魔力も、底を付きかけているように思うのに。私と対立して眼を逸らさない)
        奇跡を信じる彼女自身も。自ら約束を守る為に奇跡を起こして英霊になったカテンも……誇り高い敵と私は認めるわ
        ……だからこそ。だからこそ貴方達は最後の私の障害なのよ
        (きっとカテンも同様に、誇らしく思っている事だろう。彼自身が優しくも厳しく 無意味な甘やかしはしないだろうし、甘ったれたお子様なら彼はきっと約束を最初からしなかったと思うから)
         
        …………カテンの本当の子供、か
        (私は、今まで自分の父を疎ましく思っていた)
        (髪の事も、威厳も無くへらへらしてて何処かみっともないところも大嫌いで)
        ……滑稽だとは思わないわ。寧ろ父親を誇らしく思えて羨ましいわ
        馬鹿ね、アイツは口が悪いだけなんだから……貴方自身が出来そこないなんて。自分自身で貶めている様では誇りから遠いわよ……
        (だからこそ。彼女はカテンに娘と。子と。認められたい意識もあって決意して立っているのだろう)
        (自分の心の目標と、信ずるものから眼を逸らさない 疑わない強さは、気高さそのもの)  
        ふふ……そう。どちらにせよ、私があの人を壊してしまうだろうから絶望を与えてしまうのでしょうけれど
        (静かにそんな事を口にしながら、自分も座る)
        (もう、立っていられない……苦しい)
        (薬で誤魔化しているけれど、私はもう立ちあがれないほどに弱っている)
        (同じくミルトスの花の絨毯に腰掛けていても)
        (あの子が纏うのは希望だけれど、私が纏うのは欲望)
        (似ていても質の違う願望が、顕在して戦うようなサーヴァントの争いへ目を向ける)
        (あの子が神の信徒なら、私は黒魔女で神を冒涜するもの)
         
        ……え?
        (お父さんが居るってどんな気持ちかと聞かれて、表情が歪む)
        ……寧ろ私の家の場合、母が主導権握ってて父親に近いから(苦笑交じりに話す。あまり家庭の話なんてしたくなかったから……尚更)
        全ての家庭が暖かい訳でも幸せでもないわっ……!
        羨ましいですって――――……!?
        (そう言って。初めてムキになってマルチナに怒りの色を色濃く見せてぶつける)
         
        (令呪の発動。希望を託す彼女の姿が忌々しい感情に塗り替えられる)
        (『私はね!父の事なんて大っきらいなの!』)
        (『今回の聖杯だって……そう!皆揃って「ヴィーラの娘なのに」と口を揃えて』)
        (『アイツらはパパに思い入れがあって好意を抱いているかもしれないけれど、私は違う』)
        (『貴方は家庭を夢見ているようだけれど……私は――……っ!!』)
         
        (そう……喉まで出かかって)
        (ランサーの宝具、《浄火の蒼炎(セルーリアン・フレイムズ)》が黒い鉄の仮面を打ち壊す)
        (現れる顔、絶望を映す碧眼……『束の間の蒼穹(トゥルーサイト)』を見て)
        (全身に寒気が走る)
        (現実を受け止められなくて、見ていられなくて……)
         
        いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!! -- アイリス 2012-06-05 (火) 04:29:08
      • (空振った。かつての男なら、それを「面白い」と評価して自らぶつかってきたろうに)
        (あっけなく頭突きはスウェーバックされ、巴投げのようにランサーの身体は吹き飛ばされる)
        がはっ! クソが、この……ッ、な、に!? (掴まれた。己の攻撃を読まれ、長柄のリーチさえ覆され)
        (柄を通じ、超電流が全身を駆け抜ける)ッッッ!!!?
        (どくん、と心臓が跳ねる。瞳孔が三大化し、神経という名の電流回路を支配された)
        か……ッ(肺がストを起こし、呼吸をすることが出来ない)
        (そうして、朦朧とした男の眼に飛び込んできたのは)
        (迫る魔剣。黒影を後に引き、その刃は己の肩口を切り裂くように……)

        (ぞぶり。)
        (血の華が咲く)
        (魔力で編まれた鎧など粉砕し、肩口から腰までをざんばらに切り裂いた袈裟懸け)
        (真一直線の傷口から、気が遠くなるような量の血が吹き出し、男は脱力する)
        ぁ、ごぼ……ッ(血を吐く。内臓を裂かれている。代用が追いつかない)
        (駄目押しとばかりに蹴撃が腹部に叩きこまれ、為す術もなくランサーの身体が宙を舞う)
        (がしゃんっ。先のスラムで積み上げられた瓦礫の山に、男の身体が放り込まれ)
        げほ、ぐ、この動き……ッ、がはっ!
        (立ち上がろうとした四肢から力が抜け、膝を崩す)
        …………マジ、にヴィーラかよ……クソッタレ。
        手前ェが……アイリスの父親である手前ェが、バーサーカーだ……?
        お笑い種だぜ、えェおい……ホントによ、悪夢みてェだよ……。
        父親がッ!! ガキに、罪着せて、どうすンだよ……ヴィィイイイラァアアアッッ!!
        (血を吐きながら、否、文字通り血を吐くような声で叫ぶ)
        (怒りのままに、立ち上がる。一度よろけ、体制を立て直し、実際に倒れ、ようやく立ち上がった)
        ……ドラゴンハート、力をよこせ……。
        ドラゴンハァアアアトッ!! オレに力を、よこせェッ!!!
        (麒麟菊の文様が、輝く)
        (全身を余すところ無く蒼い燐光が包み込み) 《媒介たる幻燈の箒(ヴィジョナリー・ブルーム)》 ッ!!
        (残された意志力を限界を超え振るう。もはやその能力は、心技体どこをとってもAランクを遥かに超えている)
        (並のサーヴァントなら、否、超一級のサーヴァントでさえ、その動きを捕らえることは至難)
        (弾丸のように瓦礫を蹴り、己の手足を槍の代わりとしてバーサーカーに迫る)
        《バァアアアアストオォダァアアアアアア》ッッ!!
        (両拳に集まった光が、そのまま破壊力となって叩きつけられる!)
        (バーサーカーが立つ場所を、床や壁毎吹き飛ばす範囲攻撃! すさまじい暴力の嵐が吹き荒れ、瓦礫を彼方へ弾いていく)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 05:38:25
      • (かつての友人。旧友。それでもヴィーラは……否、その残骸たるバーサーカーは……眉一つ動かさずにただ歩み寄る)
        (全ての機能を根こそぎ奪われ)
        (全ての願いも根こそぎ失い)
        (全ての望みを根こそぎ捨て去ったその姿)
        (極限にまで強化されたその身体。ランサーと同じように、バーサーカーもまたほぼ全宝具の解放によって規格外のバケモノへと変貌していた)
        (徒手に対して剣で対応する。それは最早サーヴァント戦においては愚でしかない。刹那の間も縮めて接近してくるサーヴァント相手には視界内での間合いの攻防など無意味に等しい)
        (故に、バーサーカーの取る手もまた一つ)
        (右手の魔剣を一度横薙ぎする。当然瓦礫は巻き上げられるが、これだけでは意味はない。ランサーの破壊の潮流に打ちのめされ、その瓦礫はダメージどころか防壁にすらならない)
        (そう、防壁になりなどしない。ほんの一瞬瓦礫の破片がランサーの視界を隠すのみ。一瞬。本当に一瞬。刹那以下の間)
        (その本来なら撃ちえぬような、精密機械を持ってすら不可能なタイミングにあわせて)
        (左拳による……全てを打ち消す宝具によるカウンター。ストレートを打ち込む)
        (イレギュラーな何かを知覚した僅かに生まれる、極少の間)
        (そらすら今のバーサーカーにとっては打ち込みの機会となりえる) -- バーサーカー 2012-06-05 (火) 06:24:20
      • (決着はあっけないものだった)
        (目も眩むほどの破壊的な蒼光の奔流。風さえも後に置いて迫る英霊)
        (無数の拳と蹴りとが繰り出され、バーサーカーの鎧を粉々に打ち砕く)
        (はず、だった)
        (だが、一瞬が全てを分けたのだ)
        (視界を覆い隠され、瓦礫を砕き)
        (現れたのは左拳。顔面に余さずその宝具が叩き込まれる)
        ぐぶ……ッ!!?(その一撃。たった一撃が、男の体から宝具の力を奪い取った)
        (きりもみ回転を描いて、男が再び瓦礫の山に叩き込まれる。麒麟菊の文様が消える)
        (「代用」によってふさがっていた傷が開き、男の存在そのものを脅かす)
        がはっ、げほ、ごぼ……ぐ、が……ッ!!
        (かろうじて意識を取り戻し、宝具を再賦活。真っ二つに両断された心臓が再び鼓動を重ねる)
        はァッ、はァッ、はぁッ……が、はっ!
        (滝のような血を吐き出す。とっくのとうに限界は超えている。それをむりやりに動かしているのだ)
        (そうして立ち上がろうとして……)

        (ばきん。)

        (何の音だ? 右脚を見る。箒たる義足が、砕けていた)
        (身体が崩れ落ちる。倒れる身体を、両手で支えようとする)

        (ばきん。)
        (右腕が砕けた。ぐらりと崩れたバランスを左手で支えようとする)

        (ばきん。)
        (左腕が砕ける。今度こそ支えるものもなく、どさりとうつ伏せに倒れた)
        ……ぁ……。
        (芋虫のようにもがく。立ち上がれない。意思があっても、もう、手も足も出ないのだ)
        (左目から光が消えていく。意志の光が)
        (不屈の男は、今まさに)
        (諦観という闇に、囚われつつあった)
        (もはや男の心は折れ、何の手段もない)
        (戦いは、終わってしまったのか…………)
        -- ランサー? 2012-06-05 (火) 06:34:15
      • (手の甲の呪印がまた一つ薄くなり、最後の一つが残った)
        (か細く息をして、少しずつ体を起こす。最後まで、見ていないと……意識を失ったら、多分もう、二度と彼に会えない)
        私…が…自分を誇るために、必要なんです……この戦い、全てが。
        命を繋ぐための戦いを、人の願いを潰し英霊の生を奪うこの戦いを、全てが終わった後…その犠牲にみあう命だと自分を誇れるように。
        あの人に、よくやったって、撫でてもらうために……。

        (目の前の少女が、膝をつく)
        (彼女もまた、命を削っているのだと、あのサーヴァントをみて解った)
        (暗がりに潜む魔王の眷属。側にいるだけでその命を削る……かつて魔王の眷属を召喚した少女がそれで命を落としたと聞いた)
        (サーヴァント達の戦いを見つめる。他を圧倒する意思と力。それは神話に出てくる光と闇の戦い)
        (これを乗り越えれば、私達はきっと、聖杯を手にできる…そう思った)
        (彼等以上の敵がいるとは思えない)
        (闇を切り裂くことができるのは光だけ、光を飲み込むことができるのは闇だけだから)

        (人の子を羨ましいと言う自分に、彼女が怒る事が理解できなかった)
        (だって)
        貴女がそこにいるということは………

        (言葉の続きを紡ごうと唇を動かすと……サーヴァントの顔を見た少女が叫んだ)
        (カテンもまた、同じように取り乱している)

        (……どうして?)

        (カテンが黒い騎士の名前を叫んだ)
        (……父親。そうはっきり聞こえた)
        (少女を振り返り、問いただそうとした瞬間、カテンの叫び声と暴風)


        (取り乱し無防備な少女に瓦礫がぶつかりそうになり、とっさに前に飛び出して彼女を庇った)
        (魔力で盾を作ったつもりだった、けれど淡い光が出ただけで、何も遮ることはできなかった)
        (ガツンと鈍い音がして、かざした腕に衝撃が走った)
        (立っているのもやっとだったからそのまま地面に叩きつけられて、白いワンピースが土まみれになってしまった)
        (それでもよろよろと起き上がる。戦いを見届けなくてはいけないから)


        (アイリスに怪我がない事を確かめると、ふっと笑って「よかった…」と小さくため息をついた)
        (考える暇なんてなかった。ただ体が勝手に動いた。敵なんだって言うのは解っているはずなのに)
        (どうして庇ったのか、そんなの自分でもよくわからなかった)
        (ただ、好きな人が傷ついて欲しくない。そう思っただけだったんだと思う)
        ……だめですねぇ、私……矛盾した行動です…。
        でも……こんな怪我で終わりなんて嫌だから…いいや。
        (呟くと、また自分のサーヴァントを見つめる)


        (そして………カテンが倒れた)
        (もう気力すら残っていない体を動かし、もつれる足で、霞む視界の中で、彼の元へと走り出す)


        …せんせい…せんせ……

        (ただ、彼を呼びつづけながら。声はか弱く小さくて、今にも消え入りそうだった)
        -- マルチナ 2012-06-05 (火) 05:04:34
      • (青白く、徐々に虫の息に近くなる)
        (目の前の少女の悪化する体調も、私の合わせ鏡)
        (あの子が悪化するのにつれて、私も体調の悪化を隠せない)
        (お互いに死がすぐ隣り合わせで死神が待ち構えているようだからか)
        ……………
        (返事は出来ない。だって、ランサーも今……目の前で勝敗がつきかけたように見えたから)
        (あの子も、ランサーも……ここでお終い)
        (気休めの安っぽい言葉なんて、必死に運命に足掻いているあの子にかけられない)
         
        (絶望と闇を纏い他者を喰らう私のバーサーカーと)
        (暗い淵の底から希望を持って闇を切り割こうとするランサー)
        (光と闇の戦いは、神と邪神そのものの対決の様に見える)
        (私もこれを超えれば、他に敵は居ない。手にするのは聖杯)
        (揺れる。心が)
        (動揺する。心が)
        (状況は、きっと私の方が有利なのに、こんなに不安で心が描き乱れるのは きっと)
        (いつだってそう……矛盾の魔王の逸話は――……)
         
         
         
        (矛盾の魔王の眷属だと思っていた)
        (けれど、それは誤りで)
        (蒼穹の瞳の黒騎士は、まさしく自分の父そのもの)
        (全身の血が凍るように、私は固まって立ちつくす)
        ……嘘。嘘よ……
         
        (矛盾の魔王と敵対していたのに?)
        (いっつもへらへらしていて情けない癖に、道を誤りそうになる時は正すことだって出来るのに)
        (家の中では立ち場が弱くて、ママやカベルネちゃんに頭が上がらない癖に)
        (家族の中で誰よりも家庭を、家族を大切にして。しっかりと愛情を注いでいたのに)
        (誰かが挫けそうになったときは、いつだって手を差し伸べられる人だったのに……)

        ……なんで……
        なんでパパがバーサーカーなのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!


        (私はただ、その場で項垂れることしか出来なかった)
        (夢に出て来たあの廃虚は、兵舎の成れの果て)
        (紅い茄子科の植物が茂っている時点で、分かればよかった)
        (違う)
        (もっと決定的な証拠があったではないか)
        (ボロボロになって、勲章のように傷が刻まれているあの鎧も)
        (面影は薄れてしまっているけれど、父のものと同じだったのだから)
         
        (ブツンと糸が切れたように目の前が真っ暗になったように感じる)
        (少女の問いも、カテンの叫びも耳に入らず……暴風も、感覚が無いかのように気付かなかった)
        (残酷な真実を突き付けられた私は、壊れた人形のように茫然として瓦礫には気付かない)
         
         
        (ふと。目の前にあの子の赤い髪がなびいた気がして我に戻り、遅れて鈍い音がする)
        (次の瞬間目に入ったのは、白いワンピースを土で汚してまで必死に私を守ってくれた少女)
        (マルチナが私を庇ってくれなかったら、きっと今頃は……)
        あっ…………
        (『ごめんなさい、よそ見をしていたばっかりに』)
        (『ごめんなさい、貴方に痛い思いをさせてしまって』)
        (謝ってお礼を言わないといけないのに……なのに、口が動かない)
        (目が合うと、私に怪我が無いのを見て、あの子は安心した笑顔を見せる)
        ……馬鹿ね
        私があのまま瓦礫の下敷きになっていたら……貴方は……助かっ……
        (この先は、涙で言葉が滲んで声にならなかった)
        (ありがとうって言いたかったのに。あの子の性格も、心に宿すものも知っているのに)
        (私は涙を流しながら、こんな言い方しか返せない)
        (俯いて、静かに涙を流していた)
        (あの子は戦いを見つめるけれど……私はもう。戦いを見たくない、見ていられない)
        (剣と槍の交差する音だけが、残酷なまでに響いて私の心を壊そうとする)
         
         
        (俯いて見ていないからわからないけれど……カテンが倒れたのだろうか?あの子が先生と呼ぶ声が聞こえる)
        (もう、魔力は底を尽きて動けない筈なのに)
        (もつれる足で、上手く歩けてすらいないじゃないか)
        (その場で、静かに泣き崩れながら。あの子のように私はバーサーカーの傍に行けない……行きたくない
        (激しい後悔と父がああなった経路への疑問と、何とも言えない感情が交差しあって壊れそうだった)
        (考えたくない、見ていたくない、信じたくない)
        (けれど……私は立ち上がらければならない)

        (まだあの子に私はお礼すら言っていないのだから)
         
         
        (駆け寄るあの子をよろつきながら歩いて声をかける)……少し、止まって頂戴 マルチナ
        (そして、追いつけば、彼女の背中に手を翳して)
        (6で吸い、12で吐き、2で止める呼吸法を行いながら、私の魔力をあの子に注いで分け与えながら)
        (マルチナには、翳した手の暖かさと、背中から何か優しいものが流れ込むように体内へと入っていき、先程アイリスを庇った腕の痛みが和らいで足の感覚がしっかりと戻ってくる感覚が確かにあった)
        (それは紛れも無いヒーリング……癒しの術が彼女の体を優しく包む)
        ……ありがとう。さっきは瓦礫から守ってくれて……
        (これはそのお返し)
        (魔力を注いであの子がカテンの元に駆け寄れるように)
        (消耗する魔力と生命を。少しでも永く持たせられる為に)
        (この子はもうすぐ語らぬ人形となるだろう……その前に、少しでもあの子がそうなる前にカテンと喋る時間が得られるように) -- アイリス 2012-06-05 (火) 21:09:05
      • (月はもうすぐ、闇に喰らい尽くされる)
        (暗闇の中、よろよろと子供は走った。父親の元へ)

        (ずっと胸に抱いていた花は地に落ち、瘴気によって散っていく)
        (まるで少女の時間が尽きたことを、表すように)

        (……先生は負けるわけない)
        (だけど……戦いは、一方的なものになり)
        (黒い騎士の攻撃で、先生は沢山血を吐いて……)

        (私を力強く支えてくれていた足が 私を撫でてくれた両手が 砕けて)
        (英雄は……地に落ちる)
        (どんな時にも強い輝きを失わなかった男の瞳が……)


        (……初めて翳りを見せた)


        (……その時少女は、失望することも、悲しむこともなく)
        (ただ彼の前に、その場に膝をつき両手を広げた)
        (何も役に立たないと解っているのに。神々の争いに人以下の身で飛び込んでも何にもならないのは解っているのに)
        (真っ直ぐに背筋を伸ばして、漆黒の死神の前に立ちはだかる)

        (それは彼女が見てきた彼の生き様を真似たもの)
        (カテンがただ真っ直ぐであり続けたから、少女もずっとそうしてきた)
        (逃げない。諦めない。全ての道を自分で選び、何もかも背負って前に進む)
        (その彼の姿を今、自分が示す)

        (人は己を写す鏡)
        (少女がが悲しめば、それを見た人もまた悲しい顔をする)
        (少女が笑っていれば、それを見た人もまた笑ってくれる)
        (ならば)
        (少女がただまっすぐに希望を捨てない姿を見せれば……彼もまた)


        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 

        ………………私は…諦めません。先生。

        生きて、全てが終わったら先生の子供にしてもらうんです。
        先生をお父さんって呼んで、一緒に世界を旅して回って、
        先生がもっともっと歳をとってうごくのが大変になったらどこかきれいな場所で暮らすの。
        それで私がお世話をするの。ずーっとずーっと一緒にいるの…!!
        先生が寿命で、人としてヴィヴィアンさんのいる元へ行くまで、ずっと……。


        ……私は…絶対に諦めないよ!!お父さん…!!!!

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 


        (力強く語り、死神の蒼い双眸を睨む)
        (少女の瞳も青い色。けれど冷たく諦め果てた、悲しい青ではない。深い海の……命の青)



        (………月が影に飲み込まれて、あたりは真の暗闇になった)
        -- マルチナ 2012-06-05 (火) 08:37:04

神というもの Edit

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080094.gif バーサーカー戦前。夜の自宅。
(晩餐が終わり、片付けはキリルがしていた。口数は元々そんなに多くないから、黙ったまま)
(洗い物が終わるとティータイム。買ってきておいた薔薇の紅茶で)
……流石に戦いの前に酒はね。
(煙管をふかしながらようやく口を開いた)
(頬杖をついて、顔を眺める。いつか彼の過去を夢見た時と同じように)

……ねえ、さっきの帰り道での話。
あんたの願い、1つ願いはもう叶ってて、2つ目は考えてあるとか言ってたじゃない。
みっつめはまだ決まってないとして…その二つってどんな願いなんだい?
(煙管の火を灰皿に落としながら尋ねる。妹が気にしていたけど、聞きはぐっていた話。自分にも興味があった)
-- キリル 2012-06-04 (月) 02:14:52
(いっぽう、男のほうは蒸留酒を傾けている。もとより酒には強い性分だ)
迎え酒みてェなのもアリではある。西方の蛮人どもはあとより前に「これからの戦いは勝利する」って決めつけて宴会をするそうだ。
ある符咒師は「戦いのあとに酒で憎しみを追い出す」なンて心情を持ってたしな(グラスの液体を嚥下した)
ン? ……あァ、それか(問われれば、こめかみをこりこりと掻いて)
一つ目は「英霊になること」だ。実を言うとな、オレは世界との契約とか、ンな胡散臭いことしてねェんだよ。
(話しながら、自然と右手が眼帯に触れる)2つ目は……ま、じきにわかるだろ。「戦いに勝つこと」かね、あえて言うなら。
どうした、妙なこと聞いてくるな。オレが神頼みの類するのがンな珍しいか?
つっても、オレが祈るのは神様仏様じゃアねェけどな、願いってのは基本手前ェの力で掴むモンだ。
-- ランサー? 2012-06-04 (月) 02:56:33
豪気なもんだ(酒を呑む様を眺めてぽつり)
酒で憎しみを追い出すっていうのはなんだかわかる気がする。酒って良くも悪くもなんか切り替わるからね。
まあ、そうでもない奴もいるんだろうけど。あんたみたいに酒が強いと。
(自分も飲もうかな…そう思って手を伸ばすけれど、やっぱりやめた。マルチナに影響が出ないとも限らないから)
(替わりに葉巻を一つ奪ってくわえる。火はまだつけない)
自分の意思だけで英霊になったっていうことかい?何か別の契約…?
(くわえたままの煙草を揺らしながら、不思議そうに呟く)
……なんていうか、シンプルだね。あんたの願い。
どっちも神様に頼むと言うより、自分への誓いのようなものに聞こえるし。
確かにあんたが神頼みなんて珍しい…というかイメージにない感じ。だからあんまり考えたことなかったんだよね。
妹と願いの話をした時、驚いたんだ。
……神に祈らないのなら、何に祈るんだい?
-- キリル 2012-06-04 (月) 03:20:46
ン? ……ま、そンなとこだな。
(隠し事を嫌う男にしては歯切れの悪い答え。言葉を選ぶように眼帯を撫でる)
まァ、聞け。そもそもよ、神ってのはなンだ? 人間や魔物を超越した力を持つ存在のことか?
勿論そういう連中が神であり、今回の聖杯戦争にも、神性を持つヤツはいた。
けどよ、概念としての「神」ってェのは、ちと違うと思うンだよな。

これは、ある野伏(レンジャー)の言葉なンだがな。「神とははじめから自分の中にいる」らしい。
たとえば、手前ェが言う、オレの主義信条ってモンが神だ。だから、オレが誓うってこた、神に誓うとも言える。
あちこちの宗教で、祈る神てェのは違うが、根っこを掘っていけばそういう意味じゃ同じだ……ってな。
自分自身の「ゆずれないもの」に、どう名前をつけ、どのように捉えるか……それが人ごとに違う、らしい。

つまりだよ。オレが祈るのは、オレにとっちゃ、他の連中にとっての神様仏様に同じくらい大事な存在ってことだ。
そして、そういう誓いや願いってのは、おいそれと口に出すものじゃアねェだろ?
だから(ニヤリと笑い)秘密だ。……近いうちに教えてやるよ、心配すンな。

ところで……キリルよ、一つ約束してほしいことがあンだ。
オレは手前ェの質問に必ず答える、だから(酒を飲み干し、一拍置いて、告げる)
もし3つ目の令呪を使うことになった時、その使い道はオレに決めさせてくれ。
オレが頼ンだ命令を、必ずオレに命じてくれ。……どうだ、約束できるか?
-- ランサー? 2012-06-04 (月) 03:27:03
(神に願う話よりも珍しい、歯切れの悪い返事。きょとんとした顔をするけれどそれ以上は深く聞かない)
(また帰ってきたら妹が聞けばいい。そう思って。彼の事を知りたがっていたのは妹なのだから)

(話を聞きながら、神という存在について考える。故郷ではなまじ実在するものが神扱いだから深く考えた事がなかった)
神の手で作り出された存在は等しく己の中に神を持つ。
人は神から生まれた…つまり神の一部なわけで、だから自分に誓うことは神への誓い、祈りと同じでもある。
…そう言うのが根っこにあるのかねぇ。
(独り言のように呟く)
(…ならば、神様に作られたわけじゃないあたし達は、人に作られた「物」は…自分の中に神はいない)
(そんな事を考え始めてしまって)
…あー頭から煙でそう。こういう話はマルチナが聞くべきだね。あの子考えるの好きだから。
まあ、素直に教えてもらうのを楽しみにしとくよ。あたしはね。

ん、火ー頂戴。青い奴。あれあたしが吸っても青いままなのかな……ん?
(身を乗り出してくわえた煙草を揺らし火をねだると、なんだか改まった話)
(そのままの姿勢でしばらく考える)
……いいよ。
ほしいって言うなら最後の一つはあんたにやるよ。マルチナもそう頷くはずだ。
約束した上で……理由を聞いてもいいかい?
戦うための力を強めるための命令なら、こんな改まって言うはずないと思うからね。
-- キリル 2012-06-04 (月) 04:11:16
ちと違うな。まァ、宗教のなかにゃア、神の似姿であるからこそ、とかそういうのもあるが。
己の血の中に神が宿ると考える宗教もあるにはある。そういうのとは違うンだ。
つまり、あるだろ? 誰にだって、自分にしかないもの、それをして「自分」だって言えるモンがよ。
覚悟でも、意地でも、こだわりでも、あるいは欲望でもいい。なンでもいい。
「それ」に都合よく名前をつけた結果が、神だ……って、考え方なわけだな。
だからオレにも、手前ェにも、意地があるなら誰にだって神は宿ってるってわけさな。

ま、手前ェの言うとおり難しい話は終わりだ。
(身を乗り出し問われれば、瞼を伏せて沈思黙考する。長い静寂)
……アイツを救うため、そして、お前達の誓いを破らないため、だ。
もしかすると、その時お前はオレのことをひとでなしとか、ンな言葉でがなりたてるかもしれねェが……。
ま、容赦してくれ。よろしく頼むぜ、マスター。
(苦笑して言って、指を鳴らすと青い炎が葉巻に灯る)
一服したらそろそろ出るべ。もう時間は、残ってねェしよ。
-- ランサー? 2012-06-04 (月) 04:19:38
…ホムンクルスにも神が宿る?面白い事を言うね。
でも、そうだな、そういうの好きだよ、あたし。人の出来損ないでも、人と同じになれるんだって思える。
あ、自分を卑下してるわけじゃないよ?ただ、同じなんだって思えるのが嬉しいだけ。

(煙草に青い炎が宿った。紫煙を吐き出し、青く光る先端を見つめて瞳を細める)
……あまり嬉しい使い道じゃなさそうだね。
まあいいさ。約束は約束。妹ではなくあたしが背負える物があるのなら喜んで背負おう。
(立ち上がり、白いジャケットを羽織る)
(部屋の明かりを落として、窓に手をかけ…不意に振り向いた)

ねえ。
あたし達の国ではさ、「人間や魔物を超越した力を持つ存在」が神と呼ばれているんだ。
……サーヴァントも故郷では神と呼ばれるに値する存在ってわけ。
昔読んだ本の中に、ある火の神の話があってさ。
伝聞の伝聞、しかも古いもので…異国か異界かすらはっきりしない。そんな場所の火の神の話。
全てを浄化し祈りを神々に届ける、人間と神々の仲介者。世界の守護神の一人。
……まるでサーヴァントのようだよね。
その神の名前が…カテンって言うんだよ。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     あたし達の神は、自分自身。そしてあんただ。カテン。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 


ふふっ、神って言うにはちぃーとばかし俗っぽすぎるかね。

……んじゃ、いこうか?
(そう言って手を差し伸べる……彼を召喚した日に、したように)
-- キリル 2012-06-04 (月) 05:11:02
あいにくだな。
(手を差し伸べられれば、にやりと笑って立ち上がる)

神でもなンでもねェよ、オレはオレだ。
(そのまま手を取る……と思いきや)
(一度取った手を掲げさせ、ハイタッチのようにしてその掌を叩いた)
(パシン! 小気味いい音が響く)
オレとお前はこれでいいだろ。さ、行くぜ、マスター。
(ともに並んで戦うならば、手を引く必要はない。誓いと決意を、掌に込めればいいのだ)
(感覚のない義手に、たしかなハイタッチの感触が宿ったのを感じながら)
(男は、マスターとともに、戦いへと歩みだしたのだった)
-- ランサー? 2012-06-04 (月) 05:19:04

父と子と Edit

  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079485.gif バーサーカー戦前。朝。
    • (シルキィの森から帰ってきた数日後)
      (朝、カーテンを開けながら眩しい朝日を背に、突然マルチナが言った)

      お出かけしましょう先生。市場を見てまわって晩御飯の買出しをするのですよ。
      お昼はどこかで食べたりして…つまり、デートなのです!
      せっかく天気がいいのですし…いいでしょう?先生。

      (まだ娼館は休業中。いつもなら勉強を教わったり偵察に出るカテンを見送るはずなのだけど)
      (勉強をおいて遊びにいきたいと言うのは初めてのことだった)
      (まだ眠そうなカテンを引きずるようにして街へ繰り出す)

      http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 
      http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020918.jpg 
      http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 


      「手を繋いで下さい」

      (満面の笑みで小さな手で彼の義手を握って、並んで歩きながら市場を回る)
      (いつもは買い物は姉から預かった財布を自分で管理するのだけど)
      (今日はカテンに渡して、あれが食べたいとかあの耳飾がほしいとか、ねだって買ってもらう)

      (……色んな事が少しだけ、いつもと違う)

      (繋いだままの手をなるべく放さないようにすごく気をつけているとか)
      (必要のなさそうなものをねだって、叱られてみたりとか)
      (子供っぽい振る舞いを隠さない)
      (かと思えばなんか考え込むように、ぼんやりしたり…………)

      http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079485.gif 

      (お昼を屋台ですませて、デザートにクレープを買ってもらった)
      (気の良さそうなおばさんが、マルチナに言う)
      「今日はお父さんと買い物かい?」
      (これもいつものやり取り。二人で出かけるとそう言われる事が何度もあった)
      (そのたびにマルチナは「お父さんじゃなくて先生なんですよ」と返す)
      (今日もそのはずだったのだけど……)

      ……はい!今日はこれから晩御飯の買出しをして帰るのです!

      (否定することなく元気よく頷く。声は少しだけうわずっていたけれど)
      (真っ赤な顔をしてカテンの横に戻って、手を繋いだ)
      (生クリームたっぷりのクレープを食べながら黙ったまま、人ごみの中をてくてく歩く)

      (……迷惑だろうか、もしかしたら聞いていなかったかもしれない。そんな事を色々考えて)
      (カテンの顔を見る事ができない)
      -- マルチナ 2012-06-02 (土) 23:10:33
      • (あれから数日、わだかまりも解け、平穏無事なごく普通の日々が進んでいた)
        (そうして出し抜けに言われたことに、一度は片目をぽかんと開いてびっくりしたが)
        ……フ、OK、いいぜ。デートかどうかはさておきな。オレも暇してたところだ。
        つってもアレな、昼過ぎからな……ふぁーあ、オレ眠くて……ってオイ!?
        (ベッドに潜ろうとしたところをいきなり引っ張られ、反抗するが力は強く)
        (街に出た頃には観念して、マルチナの手を繋いで歩いていた)

        (そうして始まった買い物は不思議なくらい騒がしく)
        (デートという言葉から案外遠くないような雰囲気で進んでいった)
        あのな、イヤリングなンて手前ェにゃまだ速いだろ。人のピアスつけてっからに……。
        (うんざりした様子で返す。女の買い物とは男にはなかなかつらいものだ)
        とりあえず、アレだ。昼飯は春吉行くぞ春吉。
        ……なンだよ、嬉しそうなツラしやがって。てっきり駄々こねると思ったンだがな。
        (秋の空のようにころころ変わるマルチナの振る舞いに翻弄されながら、屋台へ向かう)

        ほい、こっちチョコクレープな。ありがとさン。
        (マルチナの分を受け取り、手渡してやっていると、ふとそんなことを言われた)
        (普段と違い、マルチナの答えはうれしそうな元気なもの)
        ……フムン(頭をかきつつ、マルチナの手を引っ張ってってやる)
        (しばらくしてから、うつむくマルチナの頭にぽふ、と手が置かれ)
        何おとなしくなってンだ、気にすることねェぞ? オレが怒るとでも思ったか?
        (見上げてみれば、穏やかに笑う男の顔)前言ってたもンな? 寝言でよ。
        別にいいぜ、オレでよけりゃな。父親代わりでもよ。
        ……さて、次は何買うンだっけか? 化粧品?
        -- ランサー? 2012-06-02 (土) 23:20:37
      • (頭に浮かぶ顔は、先生の困った顔ばっかり。何を言ってるんだと笑われるかと思ってた)
        (でも、頭におかれた手も、笑顔も、返って来た言葉も…とても優しいもの)
        (目をまんまるにして、カテンを見上げる)
        (次の行き先を尋ねられても、しばらく真っ赤になったまま口をぱくぱくさせていた)

        (だって、そんな風に優しく笑って、いいよって言ってくれるなんて、想像したこともなくて)

        ………………いいの?
        (ようやく絞り出した声はとても小さい。そして返事が来る前に勢いよく抱きついた)
        ……い、今のすごく勇気がいったのに、ずーっとずーっといつ言おうか考えてたことなのに…先生あっさりすぎます!!
        迷惑じゃないんですね…?そこまで思っても、いいんですね…?
        (泣き出しそうな声でカテンのコートに顔を埋めて、ぱっと顔を上げる)
        (涙のだの浮かんだ瞳でとても嬉しそうに笑って)
        …つ、次は晩御飯の買出しなのです!今日は豪華なの作りますから!!
        い、いきましょう!お、おとうs………先生っ!!
        (まださすがに自分の口で呼ぶのは恥ずかしくて、結局いつも通りの呼び方)

        (はしゃぎながら手を引いて二人、市場の中を食材を買ってまわる)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079876.gif 
        ロダ3:020931.jpg
        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079861.gif 

        (……その姿は誰が見ても仲のいい親子そのものだった)

        http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079485.gif 

        (帰り道)
        (二人で食材の入った袋を抱えて、夕焼け色の空の下を歩く)
        (小さな川沿い。たあいのない話を続けながらぴょんぴょんとはねるように先を歩いて)
        (石造りの橋の上で不意に振り向いた)
        えへへ…今日は楽しかったですね?嬉しいこともいっぱいあったし…
        もう思い残すことないなぁ…生きてやりたかったこと、あこがれてたこと、先生と出会ってから全部できちゃった気がします。
        ……なんて、冗談なのです。 (くすくす笑って、川の流れに視線を移し……しばらく沈黙)
        (さっきまで笑って喋っていたのに、その顔は何か思いつめたような横顔)
        (今日時折ぼんやりしていた所を、彼に呼びかけられるたびに見せていた表情だった)

        ……先生に、話しておかなきゃいけないことがあるんです。
        (夕日で金色に輝く水面を見つめたまま、ぽつりと呟く)
        -- マルチナ 2012-06-03 (日) 00:36:45
      • (予想に反して、男は笑顔を浮かべたまま、マルチナのわがままのような言葉を許した)
        (驚かれると、むしろその反応に驚いたとばかりに肩をすくめて見せ)
        なンだよ、実は嫌だったとかか? ま、お前がイヤってならやめてもいいが。
        (どうする? と金魚のように赤くなるマルチナに小首をかしげて問い返す)
        (そうしてやがて、おずおずと言われれば、笑みを深め)
        当たり前ェだろ。断る理由がねェよ、つか昔は親やってたしな、それきりだが。
        ついでにいや教師やってンだからガキの世話は得意だ、心配すンな。
        (葉巻代わりのラベンダーをくわえつつ)だァから、寝言で言ってたの聞いてるぜ?
        それに……ま、アレだ(顔を隠すマルチナの頭をくしゃくしゃと撫でてやり)
        オレもそろそろ、怖がるのやめねェとな。
        おとうさん、って呼ばれることによ(苦笑して、言った)

        http://notarejini.orz.hm/up3/img/exp020928.jpg
        (そうして態度が一変したマルチナに、たじたじになりながらも買い物は続き)
        (時折、気まぐれのように挟まる提案に、困ったり、同調したり)
        ったく、はしゃぎすぎだぞマルチナ! 転ンでも知らねェからなー?
        (それを恥ずかしがるでもなく、呵々大笑して付き合ってやる)
        (買い物の途中、さっきと同じような質問を商人らからされれば)
        おう、この通りはしゃぎ盛りでな! まったく、父親としちゃ大変だよ!
        (なんて、かるーく答えてみるくらいにノリノリであった)

        (楽しい時間とは早く流れていくもの。あっというまに夕闇時)
        (オレンジ色が道を照らし、二人の影を長く伸ばす)
        (元気なマルチナに引っ張られるように後を行くランサー)
        ほれ、また転ぶぞマルチ……ン?
        (振り向いて、ふと切りだされれば、フムン、と一声出して、話すに任せた)
        (何度も何度も目撃した顔、何かあることは一目瞭然だが、あえては触れずに過ごした1日)
        (ようやく話す気になったか、とため息をつき)
        あァ、わかってるよ。オレも楽しかったぜ、久々にリラックスできた時間だった。
        ンで? なンだ、話って(ポケットに手を突っ込み、問い返す)
        -- ランサー? 2012-06-03 (日) 01:14:59
      • (遠くに沈む夕日に手を伸ばす。すべてが赤い色に染まって、伸ばした手についている銀の腕輪も、赤い色)
        (もう少しで赤い色がなくなって、夜の青に世界が変わる)
        (今日ずっと自分は様子がおかしかったはずだ。だけど先生はそれを聞かないでずっと待っててくれた)

        私…もしかしたらもう、1日か、2日か…それくらいしか生きられないかもしれません。
        今夜から、残っているマスターとサーヴァントを探して、戦って行こうと思います。
        残りの時間をすべて、生きるための戦いの時間に使います。

        (声は震えていた。泣き出しそうになるのを必死にこらえているせいで、声はとても冷たい)

        ……いつも私、朝、この姉様との入れ替わりを制御する腕輪を外すんです。
        あとどのくらい時間が残ってるのか、確かめるために。
        今日もね、朝、先生を起こす前に腕輪をはずしてみたの。
        そうしたら……私はすぐに姉様に変わった。
        私のいられる時間は夜明けからだから、それから多分、2・3時間しかたってない。
        このペースでいけば、残された時間は多分、3日くらい。今日1日使ってしまったから…あと2日かな。
        ……今朝急に時間が短くなったから、もしかしたら2日もないのかも。

        本当は、全部戦いに使うつもりだったけれど、どうしても戦いに行く前に思い出がほしかったから。
        また、こんな風に「お父さん」と一緒に買い物に行くの。
        そう思ったら怖くてもがんばれると思ったから。

        (夕日を見つめたままぽつりぽつりと話して行く)
        ……今日は楽しかったです。そんなことがあったから私変な態度だったでしょう?
        でも聞かないで、ただ付き合ってくれて、話すのまっててくれて、ありがとうございます。
        (そうして、夕日から彼の青い瞳へと視線を移す。全てが赤い世界で、彼の瞳だけが、違う色)
        (涙を浮かべた瞳で大人びた微笑みを浮かべて、呪印のある右手を胸に抱きしめる)

        ……先生がね、お店の人に「父親」だって自分で言ってくれた時、嬉しかった。
        もう死んでもいいやって思うくらい嬉しかったの……!

        だから、もっと生きていたくなった。……新しい夢もできたから…。

        ……先生、お願いがあるんです。
        全てが終わったら……聖杯の力で人間になって、私の、本当のお父さんになってくれませんか?
        人としての寿命が尽きて、ヴィヴィアンさんの元へ行くまで…私を側に置いてください。

        (零れる涙はもう抑えることはできない。祈るように両手を組んで、瞳を閉じる)
        ……お返事は、戦いが終わった後でいいのです。
        今は、夢を見させてください……私、そのために頑張ろうって、思うから…。
        -- マルチナ 2012-06-03 (日) 23:49:40
      • (告げられた事実は、じつのところ予想ができていないわけではなかった)
        (聖杯戦争で、度重なる魔力の消耗。心身への急激なショックも影響しているだろう)
        (戦場において、兵士の最大の敵がほかならぬ心を蝕む恐怖であるように)
        (全てを背負うと覚悟した少女は、相応の負担を抱え、それが命を縮めていったのかもしれない)
        (いずれにしても、時間はもはや残り少ない。刹那とさえ言っていい)
        (それを自らの口で伝えることもまた、己の前で告げた覚悟の一端なのだろう)
        ……そうか。
        (ポケットから葉巻を取り出し、火をつける。話の続きを促すように煙を吐き出した)
        (蒼い瞳は怜悧にマルチナを見返す。過ぎ去る時に対して、慰みなど何の意味もない)
        (ましてや、一番その時間を実感しているのは他ならないマルチナ自身なのだ)
        (聖杯という奇跡によって現界した自分が何を言ったところでいたわりにすらならない)
        ま、それがお前の考えであって、お前の誓いなンだろうからな。
        とりあえず、アレだ(ぽふ、と頭に手をおいてやり、ぐしぐしと撫でる)
        よく言った。キリルに任せることもできたろうによ、上出来だぜマルチナ。
        正直、なンとなくそういう感じはしてたよ。そこから目をそらすために黙ってた、ってわけじゃねェ。
        言っても仕方ないことをわざわざ口に出しても仕方ないからな。お前がどう決めるかを待ってた。
        (いたいけな少女の痛々しいまでの想いを誉めそやしてやり)
        (しかし、マルチナの願いを聞けば、ゆるい笑みがふ、と消える)
        …………夢、ね。
        (頭をかく。答えを返そうとした時、マルチナに制されて、言葉を失ったようにため息をつく)
        わったよ。なら、今は言わないでおく。
        (それ以上は言わない。沈みゆく夕日に向けて歩み寄るように、足を進め)
        (両手を組むマルチナの掌を取ってやり、自宅を目指して歩き出す)
        それじゃ、ほれ、帰るぞ。時間がねェってンなら、いつまでも散歩してるわけにもいかないしな。
        帰ったら晩飯だ。頑張るンなら、飯食ってリキつけないといかンぜ。
        (いつものように言う。たとえ時間が限られていても、だからといって日常を崩すわけではない)
        (むしろ限られているからこそ、普段通りの生活が大事なのだろう。男はそう考えていた)

        (そうして帰途の途中、ふと)
        ……なァマルチナ、令呪がどうして3つまでしかないか、考えたことあるか。
        (そんなことを言い出した)
        実はな、3っていう数字は色々な道において大事なモンだとされてる。
        たとえば演劇の「序破急」だ。物語は序段、破談、急談の3つに別れて構成されてる、って考え方だな。
        芸術武道なンかじゃ、「守破離」って言葉もある。知ってるか?
        まず、師匠の教えを忠実に"守"る。次にわざとそいつを"破"り、最後には教えから"離"れて自分なりのものを掴むってこった。
        人間もおおよそ3つに分けられる。いいヤツ、悪いヤツ、どっちでもねェヤツ。
        断・捨・離の3つの行もそうだし、人間は心技体の3つが重要だ、とも言うだろ?
        で、アレだ。お伽話じゃよく、ランプの魔神が3つまで願いを叶えたりするじゃねェか。
        だから令呪もそうなンだろうな。泣いても笑っても、願いは3つまでしか叶えられないっつう、一種の因果だ。
        お前の願いは、これで3つだ。生き延び、業を背負い、オレと一緒に未来を歩いていく。
        オレもな、1つ願いはもう叶ってて、2つ目は考えてあンだ。
        3つ目の願い、どうすっかなァ、そいつを聖杯に賭けてみるってのも悪くないか。
        ……しっかり考えとかないと、なァ。
        (片手で右目を覆う眼帯を撫でつつ、そう呟いた)
        -- ランサー? 2012-06-04 (月) 00:16:03
      • (きっと、先生はそんな事望んでない。もう一度人としての人生なんて……)
        (そう思っていたから、今は答えは聞きたくなかった)
        (……もしかしたら、そんな夢がかなうかもしれないって思っていたかったから)

        (涙でぐしゃぐしゃになった顔をハンカチで拭いながら、カテンと手を繋ぐ)
        …はい。明日から姉様とごはん食べてあげてくださいね?
        用意もしてあげられなくなってしまうので…姉様のご飯になるのです。
        ああ見えて姉様のご飯は美味しいのですよ?
        あ、でも苦い野菜を避けようとするので突っ込んであげてください。
        (まだ鼻声。でも普段通りに、買い物帰りの他愛のない会話を続けた)
        (時折彼の顔を見上げて、赤くなった瞳を細めて笑いながら)


        (繋いだ手は、あったかい。撫でられた時もそうだった)
        (彼の手は両手とも義手で、温度なんてない)
        (……でも、今日ずっと自分の手と繋いでいたから人と同じ暖かさ)
        (なんでか、そんな小さな事が、涙が出るほど幸せに感じられた)


        (夕日で伸びた親子の影が陽が沈んでいくごとに薄くなり、闇にとけて行く)
        (空に少しずつ星が見えてくる……青い時間)

        (先生の瞳よりも深い青。そんな事を思っていると、ちょっとだけ授業の時間)
        (勉強の本には載っていないこういうお話が、自分は特に好きだったから、真剣に聞く)

        ……そういえば、何でもみっつですね?
        異国の宗教だと、父と子と精霊を表す3の数字が聖なるものだといわれたりしますし。
        さんすくみとか、みつどもえとか…ふふ、三つ子の魂100までは違うかなぁ。
        ……今まで深く考えたことなかったのです。不思議ですね…。
        (思いつくものを並べてみる。まだまだ沢山ある「みっつ」の事)

        ああ、過去・現在・未来も三つの言葉ですね…?
        もしかしたらそれが元なのかな。色んなものが三つな事…。
        (繋いだ手に浮き出ている呪印を眺める。ひとつだけぼんやりと薄くなっていた)

        (先生の願いって何だろう。ヴィヴィアンさんの元へ帰る事…英霊でなくなることだって思っていたけれど)
        (もしかしたら、違うのかな)
        (願いの事を考える横顔を見上げながら、自分も彼の願いについて考える)
        (ふと、眼帯を撫でる仕草。何かを考える時、彼はたまにそんな仕草をする。これは癖なんだって気がついた)

        (ヴィヴィアンさんがいなくなってからの癖だから、知ってるのは私だけかもしれない)
        (「私だけ」、そう思うとなんだかとても嬉しくなって)

        (握った手に少しだけ力を込めて、二人で宵闇の中を歩くのだった)
        -- マルチナ 2012-06-04 (月) 01:34:19
  • http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079485.gif

魔女の願い Edit

  • (はにばにもそろそろ客足が落ち着き始め、閉店1時間前に差しかかった頃)
    (召喚の扉が開き、お客には不釣り合い、娼婦になるタイプにも見えなければそんな雰囲気とはかけ離れた少女が一人尋ねに来る)
    (漆黒の癖っ毛のわかめを思わせるロングヘアと暗いドレスが特徴のバーサーカーのマスター……手には、帽子の箱くらいのサイズのケーキの箱を持って) -- アイリス 2012-05-31 (木) 00:21:34
    • (色とりどりの派手なドレスを纏って、黒いドレスの少女とはまた別の華やかさを持つ娼婦やウェイトレスの中彼女はよく目立った)
      (物珍しげに集まる女達をかきわけて、少女の下へとたどり着く)
      どうしたんですー?そんなとこにたむろしているとお客さんが通れなく……あれっ??
      貴女は……ど、どうしてこんなところに?!
      あっ、わ、私のお客さんです!!皆さんは閉店の準備をお願いしますよ!!(わいわい話しかけてくる娼婦たちにおろおろ答えて)
      あの、ええと…アイリスさん、とりあえずオーナーの事務室へどうぞ!あそこなら静かですし、ふかふかのソファーがあるのです!
      こっち!(手招きしていそいそと店の奥の事務室へと歩いていく)
      -- マルチナ 2012-05-31 (木) 00:36:14
      • (お客に自分達を美しく見せる為の、艶のあるドレスや化粧で飾り立て、まるで花が咲き誇るかのように華やかな少女達の中で)
        (一人喪服に身を包むかのような対照的な沈んだ雰囲気が異質なのか、周囲の娼婦達の目線が自身に注がれれば、鬱陶しく感じる)
        早めに来てくれて助かったわ……見世物ではないのだし、珍しげに集まられて迷惑していたのよ(じろり、と娼婦達を睨みつけて)
        ありがとう……悪いわね、夜遅くに……とはいえ開店時間やお店の賑わう時間はお店への迷惑になりそうだったから(どの時間に尋ねるか考えて、お店が暇そうになった頃合いがいいだろうと考えていたのだが……閉店準備を始めているので少し申し訳なさそうに)
        お邪魔するわ(マルチナに小さく頭を下げて、事務室へと案内されて歩いていく) -- アイリス 2012-05-31 (木) 00:49:38
      • お気になさらず。ここはいつもばたばたしてますから…ほんとに静かな時間なんて早朝くらいなもので。
        ふふ、そういうドレスは姉さま方には珍しいのですよ。悪く思わないであげてくださいね?
        (事務室に招き入れると、会議中の札を出して彼女にふかふかだと定評のある黒い革張りのソファーをすすめる)
        (室内はいかにも事務室らしい作り。珍しいものといえば銀髪の少年と猫耳の少女の写真が壁に飾ってあるくらいで)
        (紅茶のセットを慣れた様子で運んできて、自分も座る)
        …その、先生に御用でしょうか?こないだお話したって言うのを少し聞いたので…あ、今呼びますね?
        (ラーメン屋で冷たい言葉を聞いた以来だったものだから、その後エリーゼさんとお話したりしたこともあって印象は少し変わってるけど)
        (でもやっぱりちょっとだけ怖くて、ザーヴァントを呼ぶ)
        せんせー!カテン先生!!おきゃくさんなのですよー!…偵察に行ってなければ近くにいるとは思うのです。
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 01:01:12
      • (マスターのサーヴァントを呼ぶ声は、一種のテレパシーめいて遠方に届く)
        (やがて、霊体化して用心棒をかいくぐってきたランサーが事務室にのっそりと現れた)
        あ? ……客ってオイオイ、手前ェかよ。のこのこ何のつもりだ? 茶ァしばくのはもう勘弁だぞ。
        (いつぞやの喫茶店での奇妙な時間を思い出し苦々しい顔をしつつ、マスターのそばに寄る)
        さすがにここでバーサーカーを喚ぶってこたねェだろうが、もしそのつもりならやめとけ。その前に手前ェを仕留めるからな。
        (スラムでの虐殺を繰り返すバーサーカーに対する敵意は甚だしい。本来ならばマスターともども害意を以て相対すべきだが)
        (アイリスはまだ、あの荒れ狂う殺戮機械の真の恐ろしさを理解していない。咎がないわけではないが、追求するには自覚が足りないのだ)
        (万が一に備えてやや剣呑な空気を纏いつつ、二人の会話を阻害せぬように傍に立つにとどめた)
        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 01:07:50
      • 繁盛しているものね……お客の数も娼婦の数も多くてびっくりしたわ
        ……そう(返事を返して皮肉を言わないのは、敵対して来た訳ではない表れか。黙ってマルチナの後に続いていく)
        (勧められるソファに腰をかければ、上質な皮張りの感触と座り心地も良く、一度腰を落ち着けたらなかなか立ちたくない程で)
        (壁にある絵を見れば、この街でも最も有名な少年と、ハニーバニーが出来る前から有名だった娼婦の猫の子の写真が目に留まる)
        (紅茶のセットを運んで貰えばお礼を言って、持ってきたケーキを差し出す。中を開ければマルベリーを中心に華やかにベリー系で飾ったショートケーキ)ありがとう……よかったらお茶受けにと思って持ってきたので食べて頂戴
        ……そうね。今日は以前に御馳走して貰ったお茶のお礼にケーキを返しに来たのよ。借りを作っているのは嫌だったからというだけなのだけれど……
        (実体化するランサーに淡々と)
        ……あら?そう……折角美味しいと評判のお店のケーキを買ってきたのだけれど……要らないなら食べて貰わなくても結構よ
        ……悪いけど。貴方達襲うのにどーしてわざわざ娼館にケーキ持って訪れんのよ。襲う気ならもっと別の機会を狙うわ……全く。そんなにゆるいおつむの持ち主とでも思われてんのかしら……
        (マルチナがランサーを呼ぶ判断は正しいとは思う。だって、初対面で敵対心を剥き出しにしていたのだから) -- アイリス 2012-05-31 (木) 01:25:11
      • わ…ケーキ!(彼女の向かい側でケーキのふたを開けるとぱーっと顔を輝かせる。こういう所はやっぱり子供)
        ありがとうございます…!あ、先生。よかった、近くにいたんですね。
        ケーキをいただいたのですよーえへへ…先生にお礼だそうですよ?だからそんなつんつんしたら駄目なのです!
        (頬を膨らませてケーキを切り分けに席を立ち、すぐにいそいそとカットしたケーキのお皿を持ってくる。今度は満面の笑み)
        美味しいものを食べる時は喧嘩は駄目なのですよ。姉様ですらそう言うと気は大人しいのですよ。
        ……私も、アイリスさんに聞きたいことがあったので丁度いいのです。はい、ケーキ一緒に食べましょう?
        ほら、先生も!!(カテンのスーツのすそを引っぱって、ソファーをぽんぽんと叩く)
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 01:38:41
      • ちぇ……(ぼりぼりと頭をかく。アイリスのふてくされたような物言いと、対称的なマルチナの言葉)
        (それらが、「最低限のことはわきまえとけよ」と言外に二人に示した自分の意図を、無視こそしてはいないだろうが「さておけ」とも言われているようで)
        (平たく言えば毒気を抜かれるのだ。二人共、ベクトルは異なるが、未だ成長を続ける子どもという意味では一致する)
        はいはい……わったよ、ま、借り作るのが嫌ってのは共感するぜ、貸し借りはムズムズすっからな。
        で、何、オレも食ったほうがいいのか? これ(どすんと適当な場所に座り込む。茶しばくのはもう……と言った矢先にこれだ)
        (そもそも男は娼館という空間が慣れないのだ。男の欲望のために女達が着飾る場所)
        (生前から妻の用事で踏み込んだことはあるが、女性恐怖症の過去はまだ尾を引いていると見える)
        ……あのよ、春吉ンときも思ったがよ。手前ェらあれか? 甘いものは別腹みてェに、美味いモンは聖杯戦争とは別とか、そういうアレなのけ?
        (体躯に似合わない可愛らしい皿を見下ろしつつ、げっそりした様子でつぶやいた)ま、いいがよ……。
        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 01:49:24
      • (ケーキを見れば嬉しそうに目を輝かせるマルチナを見て、口元が小さく微笑む)
        どういたしまして……お礼ならランサーに言って頂戴。彼が私にケーキを持って来る借りを作ったのだから。お気に召して貰えると良いのだけれど
        (マルチナに聞きたい事があると言われれば頷いて)……いいわ
        お茶を頂いたのだし、その間は聖杯の事を一度忘れて休戦という事にしましょう……ラーメン屋では一方的にまくしたてて出て行ったしね
        (何だか妙に毒気を抜かれて肩すかし喰らった様なランサーに、淡々と)
        ……まぁ。私がどうも貰ったものは良い悪いにしろ返すだけの性質だから……喧嘩だったら今頃高値で買ってバーサーカーで闇打ちしていたわ
        貴方のお返しにと思ったのだけれど。マスターの方が喜んでいるから、食べないのならその分貴方のマスターの食べる量が増えるわね
        (つまりはどちらでも良いらしい。マスターが喜んでいるから遠回しにはランサーのお礼にもなったのだろうと思ったようで)
        っていうか。私食事中にまで戦闘するなんて奴が嫌いなのよ
        それに、食事中くらい会話をする程度の余裕はあっていいのではなくて? -- アイリス 2012-05-31 (木) 02:06:08
      • (カテンが隣にしぶしぶ座る姿を見て満足げにケーキを食べ始める。生クリームの甘さにほわほわ)
        食べないと私が食べてしまうのですよ?ふふふ。おいしいですねぇ。
        …ケーキをもらったのは先生の奥様の薔薇ジャムのタルト以来なのです。あれも美味しかったですね?
        (戦うことになるからあまり仲良くしない方が気持ちが楽、そういうのはわかってはいるのだけど)
        (人に敵意を向けるのは難しい。距離感を保ちつつのお話とか、姉様ならまだしも私には無理)
        ふふ、先生とアイリスさんはちょっと似ているのかもしれませんね。貸し借りとか、そんなに気にしなくてもいいのに。
        (くすくす笑って、またケーキを一口)
        ずっとぴりぴりしていたら戦う前に疲れてしまうのですよ。
        …聞きたいことは、聖杯に関係あることですが、今はケーキと紅茶を楽しみましょうなのです。

        あの……私、アイリスさんの願いを、聞きたいのです。聖杯が手にはいったら、貴女は何を願うのですか?
        (多分とてもぶしつけというか、ストレートな質問。回りくどい会話で聞き出すのは苦手だから)
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 02:31:17
      • フン(鼻を鳴らして、それだけ。居心地悪そうな表情のまま、ケーキをぱくつく)
        (善悪の類なく借りを返すという考え方、食事を尊ぶ俗っぽさ)
        (それらを含めて、やはりヴィーラの娘だと考えさせられる部分があったからだ)
        (正しい形で育っていれば、こうして黒衣の魔女として相対することもなかったのだろうか)
        (……否である。まだアイリスは発展途上なのだ。まだ、学び、育つことが出来る)
        (はたしてそれを、自分がどう示せるか。二人の会話をぼんやりと聴きつつ、そのことだけを考えていた)

        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 02:44:20
      • ありがと、気に入って貰えたようで嬉しいわ(珍しく、彼女にしては微笑みの微かに灯る表情で返す)
        (それは、自分が美味しいと思うものを相手も同様に思ってくれる嬉しさもあって)
        (きめ細かく、甘いのにしつこくない控えめな甘さが上品な生クリームには 酸味がありつつ甘いベリーの果実が非常に良く引き立っていて)
        (また、中身のクリームはスポンジの層ごとに上からラズベリー、ブルーベリー、ブラックベリーを生クリームと混ぜ合わせ、淡く色が見れるところも切った断面が美しく、また微々とした味覚の変化を楽しませてくれる)
        ああ、そうなの……カテンの奥さん料理上手なのね(ふぅん、と頷いて。以前のローズヒップと薔薇の紅茶の話が鮮明に脳裏に思い出されて)
        ……似てる?……面白い事を言う子ね。それに、私はぴりぴりしてんじゃないの、こういう性格だし誰かと仲良くしましょーっていうのが好きじゃないだけ
        一人で居るのが好きだし、そこに生じる誰かの好意とか敵意とかもどーでもいい類の人間なのよ
        (冷たい口調で言い放つ。マルチナには威圧的に感じるかもしれないけれど、以前お茶をした時にそこで敵対意識ではなく会話をしたカテンには彼女の素の性格だと言う事がわかるだろう)
         
        ……そう。願いね……いいわ。けれど私も尋ねていいかしら
        何故貴方は人の願いを聞きたいの? -- アイリス 2012-05-31 (木) 13:05:21
      • (彼女の笑顔に自分もにっこり返して、ケーキをちまちま口に入れる)
        (緊張がほぐされるような優しい甘さ。これなら萎縮せずにちゃんとお話できるかもしれない)
        自分の考えをしっかり持ってて…頑固なとこ。誤解されやすそうなとことか。似てるかなって。
        (彼女の事を良く知っているわけではないけれど、なんとなくそう思った)
        (それはちょっと羨ましい事。迷ってばかりの自分は、カテンの生徒失格のような気がして)
        (孤独を恐れない彼女の方が、はっきりものを言う彼女の方が、生徒の方が先生は嬉しいかな)
        (なんて考えてもしょうがない事を考えて落ち込む)
        (…いけない。しっかりしなきゃ)
        (二人を交互に見つめて、美味しいケーキで勇気をもう一口補給)

        自分の願いを叶える事…私が生きる事は、人の願いや命を踏みにじる事です。
        だから、ちゃんと知っておかないと。自分の命がどんな犠牲の上で成り立つのかを。
        そうじゃないと…卑怯だとおもうのですよ。

        そうしたからって私の血にまみれた命が変わるわけじゃない。それもわかっています。
        でも…戦えない私にできる事は「背負う事」それだけだと思うから…。
        (話しながら、考え事をしているカテンのスーツをぎゅっと握る)
        (何かを言ってほしいわけじゃなくて、自分の気持ちの確認のため)
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 14:55:05
      • (アイリスが父ヴィーラの気性を多少であれ受け継いでいるとしたら、マルチナの指摘は実際に正しいだろう)
        (いつかの闘技場での戦いでは、黒騎士と男は己の意地を全力でぶつけあい、負けた)
        (もしもアイリスがバーサーカーという存在、ひいては聖杯戦争の本質を見つめられる取っ掛かりがあるとすれば、その事実しかあるまい)
        (もっとも、それを自覚させるのは簡単なことではないだろうが……)
        (性分とさえ言える剣呑さに声に出さずにため息をつき、臆することないマルチナに成長を見て取る)
        (あるいはこのきゃぴきゃぴとした雰囲気がなせるものか? 女の摩訶不思議、かくありきと内心ひとりごち)
        ……ま、いつかに手前ェが言った「おままごと」の徹底ってわけだな。実際、こいつはよくやってるよ。
        願いもなく戦うなンざ、狂人でもねェとできやしねェ。それを問うってこた、こいつも手前ェを評価してるってこった。
        (ぶっきらぼうに付け加える。そして思う、ならばセイバーにあのように応えた自分はどうなのか、と)
        (その答えはわからない。もともと、万能の利器に己の望みを託そうなどと、男はそんな他力本願なことにすがったことはないのだ)
        (彼がもし心の底から頼るべき奇跡があるとすれば、それは……。もっとも、それは今はまだ、男以外だれも知らないことだ)
        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 18:39:56
      • ……そう(紅茶を口に運びながら小さく返答を返す)
        (あながち外れではない指摘に幼いながらにも娼館に居るせいか……人間観察の目は鋭そうだと思いつつ)
         
        ふぅん。卑怯……ね(生きることは願いや命を踏みにじる事)
        (以前のラーメン屋で自分が放った言葉と酷似していて。静かに紅茶のカップを置く)
        そう。以前の貴方の印象は、ただ綺麗事を言って自分の行いを
        他者を踏みにじっている事に目を逸らしているだけの甘ったれた子供だと思っていたわ
        丁度他マスターとの仲良しごっこも目の前で始まりかけていたし……ね
        背負う覚悟をキチンと持っているのならいいでしょう。以前の言葉を訂正してあげるわ
         
        私の願いは失われた魔術や奥義・隠された真実を手に入れて、それらを自分の中に咀嚼して落とし込み使役できるようにする事
        ……正直言うと、聖杯が重要なのではない
        私の進みたい先と、引いたサーヴァント……そっちの方が重要なの
        きっと私の願いに同調して出て来たバーサーカーは矛盾の魔王の眷属でしょう(もう既に知れ渡りきっていることだろう。隠している必要も無い)
        魔女の娘として。魔王の端くれの存在を自身でコントロールしきれるのなら
        バーサーカーをこの世に顕在させきれる魔力があるのなら……それだけでも私自身の実力は非常に高いと言う事
        そして、聖杯の……誰かを踏みにじり、血塗れの道を歩むこと自体が私のこれから行く末の道と酷似しているのよ
        だからこそ。自分の行いから目を逸らさずに覚悟を決める為にも
        聖杯戦争を制す事によって自分の力を試す場でもあるの
         
        (ランサーに頷いて)……そうね。今ならおままごとの言葉を撤退するわ
        ……そ、ありがと(短く、表情の籠らないそっけない返事を返す)
        私貴方に嫌われていると思っていたわ。別に私は誰かに嫌われたところで悲しくも無いしいいのだけれど
        ……ただ。そうやって 私を怖いと思いつつも、顔を背けず話をする勇気も立派だと今は褒めるに値する事を認めるわ(ランサーの服の裾を掴みながらも。怯えて竦まずに話す彼女に口元だけ小さく微笑んで) -- アイリス 2012-05-31 (木) 20:05:49
      • (否定される事はあっても、認められることはないだろう。そう思っていたから)
        (彼女の言葉に驚いた顔をして。なかなかありがとうと言う言葉が出ない)
        (冷たい、刺々しいと感じる彼女の話し方は、もしかしたら悪意とかそういうのは篭ってなくて)
        (…ただ、そういう物言いしかできない子なのではと気づいた)

        (そして、彼女の願い)
        (エリーゼは、アイリスは自分を認めてもらうために戦ってると、そう言った)
        (矛盾の魔王の眷属…前の聖杯が出現した時、娼館の主の妹が引き当てたサーヴァント)
        (壁にかかっている写真を見上げて、その話を思い出していた)
        (魔王の眷属に騙され心を奪われたのだと)
        (彼女も、そうなのだろうか……じっと話をする少女の瞳を見つめる)
        (意志の強い瞳。お人形さんみたいな見た目。けれどその瞳が、彼女が作り物ではないと教えてくれる)
        (……騙されているわけでも、弱い心につけこまれてるのでもないのだろうか)

        ……ありがとうございます。素敵な願いとは、お互い言えませんね(そう答えてくすりと笑う)
        (実力を証明するためなら、他に道はある。そう思う)
        (けれど、きっと彼女はこの道でなければ駄目なのだ。私が楽な道を選ばないように)
        (だから…それ以上何もいえなかった)

        えへへ…おままごとも、仲良しごっこも、私には必要なことなんです。だから、そう言われてもいいの。
        仲良くならない方が私にとっては楽な道だから…だって、そのほうが心が痛まないもの。

        だから、アイリスさんとも、仲良くなりたいです。
        嫌ってなんかいないのですよ。きっと言われてもしょうがないことだったから…怖いのは、貴女ではなく私の弱さ。
        アイリスさんの、そうやっていいのもはいいと言ってくれる…私の先生みたいなところ、好きです。
        とてもかっこいいと思うのです。
        (食べ終わったお皿を置いて、はにかむ笑顔を少女に向ける)
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 21:27:23
      • (矛盾の魔王について男が知らぬはずもない。かの概念存在の寓話はあらゆる場所で耳にした)
        (なにより、その闇から千切れとんだ暗雲の成れの果てと、肩を並べて同僚でいたこともあるのだ)
        (……そういえば、ヴィーラも魔王の精髄たる魔剣を持っていたか、と、ふとよぎったのははたして偶然か)
        (いずれにしても、バーサーカーがそうであるというならばあの魔性にも納得がいく……)
        (と、尋常なものならば考えるだろう。「あれは闇の魔王の眷属、ゆえに邪悪なのだ」と)
        (否である)
        (矛盾の魔王は、"矛盾(Paradox)"という、人が生み出した概念の顕現であり、集合体だ)
        (いわば人が望むがゆえに存在し、人が望むがゆえに―――善の人々から見て―――邪悪なのであり)
        (人が望まねばそこにはなにもいない。闇はただ闇であり、魔王もまたおとぎ話の存在でしかない)
        (その眷属であるということは、少なからず矛盾の魔王の性質を受け継いでいるということ)
        (つまり、バーサーカーは望まれているがゆえにサーヴァントとして顕現し、望まれているがゆえに殺戮を行っている)
        (だとすればあの機械的な判断能力はなんだ? あれもまたアイリスの望みの結果だと?)
        (男はそうは思えなかった。目の前の、高慢さを鎧のように纏う黒衣の少女が、そんな短絡的な従者を望むか?)
        (彼女ならば、自らの―――少なくとも彼女自身はそうと信じる―――魔術師としての力量に見合うものを望むだろう)
        (無論、バーサーカーの性が完全に彼女の理を超えているとは言いがたい。領分を超えているとは自信を以て言えるが)
        (だが、何か違う。どちらかといえば、あの機械的な戦い方は、ヤツに染み付いた戦いの日々そのものであり)
        (なによりも、バーサーカー、あるいはかつて別の名で呼ばれていた何者か自身の望みであるように思えたのだ)
        (ではなぜそれがアイリスのもとに現れた? おそらくは人並み外れた魔力を持ち、それゆえに自尊心を抱えるであろう彼女に)
        (バーサーカーというクラスは概して狂化により強大な力と引き換えに狂う。判断能力を失い、暴力装置と化す)
        (しかし、「狂う」ということは、在るものがねじ曲がる結果だ。此度のバーサーカーはそうではない)
        ("ない"のだ。自我、あるいは判断能力というべき、個としての概念が)
        (それは、己を己として任じ、今この時まで貫いてきた男とあらゆる意味で対極に映る)
        (ならばあのバーサーカーが、殲滅粉砕のみを目的とする破滅機械が、願いというエゴの闘争場である聖杯戦争に出現した意味は?)
        …………貸し借りはなし、か。評価されりゃ評価してやる、トコトンあいつのガキらしいぜ。
        (マルチナに返礼のようにそっけない言葉を返すアイリスを見て、またもあの黒騎士の存在がちらついた)
        (以前、フィヨルドの名を聞いた時に抱えた疑念が再び鎌首をもたげる。自らが未来の英霊である以上、可能性はゼロではない)
        (だが、それ以上に確信へ繋がる材料もない。とりとめもない思考をそこで打ち切り、二人の会話に意識を委ねる)
        (バーサーカーが「マスターのために」現れたという、突拍子もない可能性を排除するかのように)
        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 21:54:19
      • (マルチナの驚く表情に、彼女の胸の内を察して……少しだけ気恥ずかしくなる)
        (ありがとうとお礼を言われなかったのは、寧ろ自分には丁度良かったかもしれない……少しばかりでも、頬が紅潮して顔に出そうだったから)
        (彼女の氷の茨を思わせる言葉は、そういう言い方しか出来ないと同時に)
        (彼女の選んでしまった"呪術師"としての道が。自身の依頼人を時折試す為の口調そのものを自然と母から受け継いでしまったからという背景があった)
         
        ……どう致しまして。いいえ"生を望む"のは生物として全うな判断だわ
        人は無意識にも第一に『生存本能』が働くし(苦笑する彼女に、肯定する訳でもないけれど、事実を述べる……そういう意味でも彼女の願いは全うだと思ったから)
        別に。犠牲の上に立って生きたいと願うのは自然だと思うわ
        仮に貴方以外にも、自分の命が明日で終わるとして、他の人の寿命と交換できるのであれば……それを行って生きる人の方が圧倒的に多い筈よ
        生きたいと願う事は悪いことではない……少し貴方から、先程の話といい自信のなさが垣間見えるのだわ
        聖杯戦争に勝つつもりなら……尚更自分に誇りを持ちなさい
        自身を持って、ぶれない事よ……そうしないと、いつか他のサーヴァントに殺される危険もあるでしょうし、もし、貴方が勝ち得たところで今日の悪夢が呪いのように取り付くでしょう
        (ゆっくりとケーキを食べ終えて、適温を超えてぬるくなり始めた紅茶を口にする)
         
        仲良くならない方が楽だとわかりつつも、仲良くなりたい……ね
        (息を漏らすかのような溜息。何を思っているかもそれからは読みとれなかったけれど)
        ……そ、ありがと(また短い返事をして はにかむ笑顔を向けられれば)
        ……私も。自分の心の弱さを自覚しつつもそれに背かず、目を向けられる強さを持った子は好きよ
        ……だから。貴方の事は嫌いではないわ(微かな微笑みを返して)
         
        (マルチナとの会話の横で、一人バーサーカーについて物思いにふける彼が声をかければ)
        さっきも言ったでしょ?……私、魔術師だから"投げかけられた想いを倍返しにする"職業でありそういう人種なの
        悪意や喧嘩を売るなら高値で買って返してやる……けれど。こうして好意を返すならそれを返すだけよ。単純で分かりやすいでしょう -- アイリス 2012-05-31 (木) 22:27:55
      • (他の道を選べとは、彼女も言わない。肩入れするわけでなく、ただ、それでもいいのだと言ってくれる)
        (それはとても優しい距離で、さっき食べたケーキと同じ優しい甘さ)
        誇り…それは難しいですね。私は何もできませんから……でも、誇れるようになるために行動しているつもりです。
        ……先生の自慢の生徒に、自慢のマスターになれるように。
        (隣のカテンを見上げて呟く。心の中でもう一言、先生の子供だって思われるくらいのしっかりした子になりたいと付け加えて)
        それでも、迷うことはやめられないかもしれません。ずっと考え続けることが私に出来ることだから。
        きっと、生きる事ってそういう事。

        (彼女の短い返事と微笑みに、恥ずかしそうに頷いて)
        な、なんだか照れてしまうのです…ありがとう。
        ……ふふ、やっぱりこうやってお話できてよかったのです。
        きっと、何も知らないまま戦っていたら貴女の事を冷たい人間だって思ってしまっていたかもしれない。
        本当の貴女から目を背けて戦うことはやっぱり卑怯だと思うから。
        「誰かの犠牲の上に私達は立っている」…それは生きるなら避けられないこと。ならばせめて、堂々と、顔を上げていられるように。
        犠牲にするであろう人から目をそらして、生き続ける事はしたくないから。
        (ラーメン屋での彼女のこと場を口にして、紅茶を一口)
        ……あ、お話してたらすっかりぬるくなっちゃいましたね?せっかくオーナーのお気に入りの紅茶、くすねてきたのに。ふふっ。

        今度は私がお礼にケーキを持って行きますね?チーズケーキくらいしか作れないんですけど…意外と姉様や先生には好評なのですよ。
        (そして、未来の約束。戦うのが運命だとしても、もうこうやってお話しすることがないかもしれなくても…「約束」をしたかった)
        (今日こうやって話すことができた記念みたいなもの。果たすことが出来たらいいなと願いながら)
        -- マルチナ 2012-05-31 (木) 23:10:28
      • 、ふ(彼女たちの話を聞いていて、思わず零れたものは苦笑だった)
        (彼女たちは生きている。その性質がどうであれ、彼女たちなりの意志を以て、苛烈に)
        (あるものは威風堂々と。あるものは己の道を血塗られたものとしてでも)
        (無論、そこには子供特有の無邪気さや、蛮勇もないわけではないが)
        ("向こう見ず"な男として、好ましいことだった。思わず目を細め、我が子を見るようにマルチナを見、アイリスを見た)
        ……ま、なンでもいいがな。いまさらオレがああだこうだ説教する必要ねェだろうしよ。
        (葉巻に火をつけ、それだけ言って視線を遠くへやる。マルチナの約束は、彼女にとっても残酷な結果をもたらしかねない賭けだ)
        (それを咎める必要はなかった。マスターが、自らの願いに従って口にしたものなのだから)
        -- ランサー? 2012-05-31 (木) 23:16:22
      • そう……誇れるようになる為に行動しているのなら、蛇足だったわね
        (さりげないお話から、彼らの信頼と絆が垣間見える)
        (先生の子供だと思われるくらいの、という所に……カテンへの少なくとも抱いている憧れの様な甘酸っぱい想いが伝わって可愛らしいなと思う)
        迷うと言う事は、それだけしっかり考えて居る事と秤にかけているものが等しく価値があるものだからね……考える事は成長にもなるわ
        (生きる上で、迷わずに生きていける者等は存在しない。思うものが大切であるが故に迷うのだから)
         
        ……いいえ(どういたしまして、というのも何だか妙な感じがして、それだけ返して)
        別に、冷たいままでも構わなかったのに……敵対する時に貴方の良心が痛まなかったでしょうから
        『本当の私』ね……優しい子。敵対する相手に思いやりまで持つのはいつか貴方の首を絞めるかもしれないわ……人間は情を持つと相手に酷い仕打ちは出来ないものだもの
        何を持って顔を上げているかも貴方の判断基準と価値に準ずるでしょうけれど
        貴方はそこに、聖杯戦争の参加者達の想いや生死を価値あるものとして見れる子なのね
        幼いながらに随分としっかりしているじゃない
        ……案外、長話になってしまったわね(彼女に小さく微笑む。初めて見た、口元だけではない微笑み)
         
        ありがとう……私ケーキは舌が肥えているから五月蠅いわよ。楽しみにしているわ
        (小さく微笑む。聖杯戦争を行う間柄だから先の事は約束しきれないけれど)
        (本当は、もっと口を挟むと思っていたし)
        (もしかしたら、ランサーを盾にマルチナとの会話が行われると思っていたけれど)
        (彼が口を挟む必要も、盾になる必要も無い程度には緩やかな空気の中で)
        (彼の説教は、きっと中身は思いやりに溢れた温かいものなのだろうと思って また静かに微笑む)
         
        ……話は、これだけ?
        (去る前に、確認の問いかけを柔らかくマルチナに投げかける) -- アイリス 2012-05-31 (木) 23:47:45
      • (苦笑するカテンに自分はにっこり笑顔で返す)
        (自分で考えてちゃんと答えを出した事なら、彼は認めてくれるのを知っているから)
        (目の前の少女も同じ事を言った)
        ありがとうございます…ふふふ、やっぱり、アイリスさんはちっちゃな先生なのです。似ています。
        (それは自分にとって一番の褒め言葉と同じ。「姉様に似てる」と同じくらい)
        (嬉しい。もっと他の出会い方があったらよかったのに…胸がずきんと痛んだ)
        (でも、こういう形でであったからこそ、本心で話せる。だから後悔はない)

        貴女にも戦いにくい思いをさせてるのかもしれないですが…でもそれでも手を抜かない、迷ったりしない人だと思っています。
        こ、こういう事を戦う相手に言うのは変かなとは思いますが…お互いがんばりましょうね。願いのために。

        えへへ、がんばりますよ、私!先生ときっと貴女とバーサーカーさんを乗り越えてみせます!
        (穏やかな空気のまま、笑顔で堂々と宣戦布告。威圧的なやり方なんて知らないし、素直な気持ちを口にするだけ)
        (彼女と、先生が認めてくれた自分を、少しだけ誇らしく思った)

        (微笑み、最後に問いかけるアイリスに頷いて)
        はい。今度会った時は好きなケーキのお話でも。
        (また、花のような笑顔を見せる)
        -- マルチナ 2012-06-01 (金) 00:21:43
      • (ランサーはただ見守るばかりだ。それはサーヴァント、聖杯戦争のパートナーというよりは)
        (娘の成長を見守る父親のようであり、あるいはアイリスがヴィーラから感じた眼差しに近いものを受けるかもしれない)
        (親とはそういうものだ。時に口やかましく、時に静かに子を見守り、規範を見せ、子を守り、導く)

        ……やりあうときゃ、せめて正々堂々、横槍もなく闘れりゃいいな。
        あばよ。縁がありゃ、またそのうちこういう奇妙な時間もあるだろ。いいことか悪いことかはわかンねェけど。
        (葉巻から吸った煙を吐き出しつつ、無愛想に言った)
        -- ランサー? 2012-06-01 (金) 00:26:47
      • ……そ
        (会話の言葉には、それだけではなく感情が乗って伝わる)
        (口調然り、温かみの伝わる彼女の言葉に、短くも随分と柔らかい返事を返して)
        (柔らかな表情から、彼女の素の一部なのだろう 人懐っこさを感じる)
         
        そんなことないわ、といいたけれど……多少はするかもね
        (基本的に他者には意図的に感情を持たないようにしている)
        (それは、自分の道、行いたい事が……情を持つと、慈しみを持つと、行えない事だから)
        (本来なら、多少喋った程度で心が揺れ動く事も少ないけれど)
        (本音と、想いを乗せた嘘偽りのない交流は、他愛ないお喋りをだらだらと続けて関係を少しづつ重ねる友人関係よりも重みがある) お互いに頑張りましょう……ええ。手加減しないわ
        (微かに口元が微笑んで、自分とバーサーカーを乗り越えると笑顔で宣戦布告する彼女に潔さと清々しさを感じる)
        (威圧感も、緊張感も無い。けれど彼女らしいと思う)
         
        ……当然よ、顔見知りでちょっと親しく会話した程度でなれなれしい態度を取られる方が鬱陶しいわ
        そんなことしたら冷やかな目線で説教するわよ(ふん、と鼻息混じりに言い放つけれど毒は感じられない)
        ……いいんじゃない? 敵対し合うばかりが関わりでは無いわ……
        戦いの合間に休息も必要でしょうし……
        では。失礼して(時計を見ると、思った以上に時間が過ぎていて)
        (閉店時間ギリギリだったのを思い出すと、長居するのは悪いと思ったのか立ち上がり会釈すると彼らとの最後の返事も聞かぬまま帰って行った) -- アイリス 2012-06-01 (金) 01:14:24

トラフキン姉妹の昔話 Edit

某日。真夜中。
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 産声。
子供の頃とか、そういうものはミハイロフ製のホムンクルスには存在しない。
生まれたときあたしは20歳。

人としての生活を送るための知識とか、そういうのは目を開けた時から知ってた。
研究所の職員の顔とか……誰が記憶させたのか「悪趣味な知識」も。


「479413」その数字があたしの名前。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     「おはようなの。気分はどう?」
     研究施設に似つかわしくない銀髪の子供が、薄紅色の水銀のような培養液の中から出て
     まだぼんやりしてるあたしに、笑顔で話しかける。
     「……最悪よ」
     そう言って睨みつけてやった。それがあたしの産声。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 


記憶にある研究員の顔の中に少年は居なかったので、どういう存在なのだろうと不思議に思っていると、
研究員の一人と血の配分がどうとか、耐用年数がどうとか、書類を見て話しはじめた。
会話の内容から考えるに、その子供はどうやらホムンクルス全ての産みの親らしい。

薄紅色の水銀で濡れた体を拭い、自分の髪の色が少年と同じ事に気づく。
……その時抱いた感情は嫌悪感。
……我ながら難儀な性格付けをされたものだと思った。 -- 2012-05-26 (土) 21:54:33
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080094.gif
……っ
(真夜中。目が覚める。ベッドの側のランプがまぶしくて手で顔を覆った)
…あー…駄目だ。つけっぱなしで寝ちゃった…嫌な夢。疲れてるのかね…。
(起き上がるとベッドから降りて、ランプに手を伸ばす)
(ふと、姿見に写る自分が見えて)
(深紅の髪がやけに目立って見えた)

……そういや、この髪は元は違う色だったっけねぇ。マルチナ。

(鏡の中の自分と手を合わせて、妹に語りかけてくすっと笑った)

あー…なんか嫌なことばっか思い出しそうだから、とっとと寝なおそ…。
……おやすみ、マルチナ。


(そしてまた、眠る)
-- キリル 2012-05-26 (土) 22:05:52
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 初仕事。
ホムンクルスとしての性能はいまいちだったあたしは半年もたたずに廃棄されることになった。
……死ぬのは別に怖くなかった。だって、そう作られているから。

廃棄前に無茶な魔術実験に付き合わされることになる。
どうせ処分するなら駄目もとの実験に使ってしまえという合理的な考えだ。

廃棄が決まった日、あたしは初めて男の相手をすることになった。
「悪趣味な知識」…男を悦ばせるための技術が、何故植えつけられていたのかを身をもって知った。
どうせ処分するなら****に使ってしまえという合理的な考えだ。

反吐が出る。


相手の顔は覚えてない。研究員の誰かだったと思うけど。
同じ考えを持つ人間は顔が似るんだろうか。研究所の人間の顔は皆同じに見える。
皆人間なのに、命をなんとも思ってない。
命を弄ぶ行為を続けていれば皆そうなるんだろうか。
研究所は国家機密。研究員の魔術師達も自由はない。
(それでも許可さえ取れば街には出られていたし、あたし達よりはよっぽど自由だったけど)

皆歪んで澱んでいく。

すべての捌け口はあたし達。

結果さえ出せば国も貴族も鬼もそんな事気にしないし、末端の人間の小さな狂気になど気づくわけもないのだ。
……何より、知ったからって実験動物の人権なんか気にするだろうか?



……ようやく男との行為から解放されて、格子の嵌った窓からぼんやり月を眺めていた。
体が痛い。自分の体から別の人間の臭いがする。早くシャワーを浴びたいのに動けない。そんな中、ふと思う。

目を覚ました時に見たあの銀髪の子供も、あいつらと同じなんだろうか。
あの子供の血があたしの基になっていると聞いた。
……せめて人間らしい心を持った奴だったらいいな。あたしの親みたいなものだもの。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     嫌ではなかった。怖くもなかった。途中から自分で求めるほどだった。
     だって、そう作られているから。

     でも……それがとても嫌だったんだ。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 



……これがあたしの娼婦としての初仕事だったと思う。 -- キリル 2012-05-27 (日) 03:11:18
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 実験。
魔力を増大させるために様々な魔物や妖精と合成させられる。
合成と言うより、取り込むと言った方が正しいかもしれない。

……それは合成中の光景を見れば解る。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

まず初めに、巨大な魔法陣の上で、6人の魔術師に囲まれ見守られる中で魔物に体を喰われるのだ。
……もちろん、生きたまま。
痛覚を遮断する能力が具わるまでは痛みと恐怖で泣き叫んでいたけど、それが使えるようになってからは、
ただ自分の体を租借される音を聞いて意識が途切れるのを待つだけになったから、だいぶ楽になった。

そして喰われた後に、魔物の体の中で自分の体を再構築する。
内側から魔物の腹を食い破りながら吸収し、魔法陣の中心であたしは一人、目を覚ます。
生まれたままの姿で、体を魔物の血に染めて……取り込んだ魔物の魔力や能力を手に入れて。

あたし達ホムンクルスの元になった鬼の再生能力を生かした魔術らしい。

自分より小さなものや、攻撃的でないものはこちらから食べて吸収するという方法を取った。
おぞましいものだと血だまりの中思う。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 

あたしはその合成魔術との相性が奇跡的なレベルで良かったらしく、どんな存在を取り込んでも自我を保っていられた。
普通は魔物やらなんやらにのっとられてしまうか、発狂してしまうらしい。
魔力は実験を終えるごとに強くなっていく。

実験が成功し続ける限り、あたしは生きていられる。
次は死ぬかもしれない。そう思い続けながらの日々。

あたしもだいぶ馴れて、どうしたらここで上手く生きていけるか解ってきてたから、
その頃には何人かの研究員と仲良くなって、たまに外へ連れてってもらえるようになっていた。
……逃げ出したら死ぬように魔術の施された首輪つきだったけど。

ホムンクルスに話し相手なんて居ない。全ての個体の部屋は別々で監視つき。それが基本。
実験や誰かの相手をしなくてもいい日は、あたしは本を読んで過ごす。
冒険者の物語が特に好きだった。

恋物語は、よくわからないし。 -- キリル 2012-05-27 (日) 04:01:01
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 妹。
生まれてから1年、あたしは実験に耐え続けてきた。それは奇跡だと研究員達は口々に言った。
そしてその奇跡がどの個体でも起きるようにしなくては、と。
あたしと同じ製造方法でホムンクルスがもう1体作られることになった。


「479955」その数字があの子の名前。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     「妹」ということになるんだろうか。
     お話の中でしか知らない肉親という存在。

     ……どんな子なんだろう。あたしと同じ製造方法なら姿かたちそっくりだよな?
     会ってみたい。声を聞いてみたい。あたしの妹…。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 


彼女が目を覚ました所には流石に居させてもらえなかったけど、
ベッドの中でうんと研究員にサービスして甘えて媚びて、彼女と話をさせてもらえることになった。

食事の時間を同じにしてまだ上手く動けない彼女の世話をすることで二人で話をする時間をもらう。そんな方法で。


……妹は、あたしよりとても小さかった。
理由は不愉快極まりないものだ。
魔物に食べられやすいように、そして自我が保てるギリギリの幼さ。
それが彼女が12歳である理由。

おかっぱにした髪が愛らしい少女が、まだ食器が上手く扱えなくてぽろぽろこぼしてしまうのを拭ってやる。
「…ありがとう」
まだ自分の運命を知らない少女は無邪気に笑ってそう言った。
それが初めてあたしが聞いたあの子の声。
動き始めたばかりだから少し舌っ足らずで、とてもかわいかったのを良く覚えている。


幸せな物語を読んだ時よりも心が温かくなって
嬉しいのに何故か瞳からは涙が溢れてきてしまって、

心配そうに近寄ってきた彼女を、あたしは抱きしめて泣いた。

嬉しくてなく事もあるんだって、初めて実感した日。
……あんたが生まれた日だ。マルチナ。 -- キリル 2012-05-27 (日) 04:40:32
某日。夜明け前。
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 姉妹の名前。
それから、私達はご飯の時間を毎日一緒に過ごして仲良くなっていきました。
私の実験もはじまりました。
酷く怯えると研究員の人が姉様の部屋へ行く事を許してくれたので、私はいつも怯えるふり。
実際本当に怖かったのですが、それ以上に姉様に会えるのが嬉しくて。

魔物に自分の骨が砕かれる音を聞きながら、終わって泣いたら姉様にあえるかななんて考えたりして。

ああ、その頃はまだ「姉様」とは呼んでいなかったのです。お互い製造番号でした。

いつだったか、長くて呼びにくいねって姉様が言い出して
お互いに名前をつけあって、一緒に家名も考えて……同じ家名を名乗ることで私達は本当の姉妹になったのでした。

私が本を読んで、キリル姉様を「姉様」と呼ぶようになるのはもう少し先の話。
その時、姉様が真っ赤になって、にやける顔を必死に手で隠していたのをよく覚えています。 -- マルチナ 2012-05-30 (水) 21:51:31
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 紅蓮の魔獣。
「珍しい魔物が手にはいったんだ」
研究員の、いつも姉様にべたべた触る人が、私達がご飯を食べていると頃に急に入ってきてそう言いました。
私はこの人が嫌いです。
いつもこう言っては気まぐれに姉様を連れてってしまう。
この人は姉様を便利なお人形としか見ていないのです。
私に優しくする姉様を見て「人をまねて姉妹ごっこか」と嫌な笑いを浮かべたり。
ホムンクルスを人間扱いしない人ばかりの施設でしたが、この人は特に悪意すら向けてくる人で。

「食事なんてホムンクルスには本当は必要ないだろう?さあ実験だキリル」


神経質そうな眼鏡の魔術師は、姉様の腕を掴んで実験室へ連れて行きます。
私は必死に止めたの。なんだか嫌な予感がしたから、姉様にしがみついて。
でも、すぐに他の研究員に引き剥がされてしまったの。
せめて側にいたいって泣いてお願いしたら、実験室の隅で見ていていいって言われて、
私は姉様の実験を初めて見ることになったのです。

自分と同じ事をされているのは知っていました。
魔法陣の中心で、魔物に食べられる事。
姉様は怖かったら部屋にいっていていいよと笑ってくれたけど、どうしても……不安で。側にいたかった。

その日は外からミハイロフのおうちの人が来ていて、
その人の魔力があれば魔獣を魔法陣の中へ押さえ込めるとかどうとか、興奮気味にあの人が話していました。
薄紅色の髪の、姉様に少し雰囲気が似た人……後に私と姉様をここから連れ出してくれた、リラさんです。



広い広い地下空間。天然の洞窟をそのまま使った実験室。
そこに描かれた複雑な文様の巨大な魔法陣の真ん中に、いつもより大きな檻がありました。
檻は赤く光る場所がてんてんと。魔物が噛み付くと鉄が熱を持って赤く染まるのです。
中には鮮血と同じ色の毛並みの魔獣。ライオンのような鬣が炎のように燃えていて、瞳は深い海のようなターコイズブルー。
まるで伝説に出てくる生き物みたい。

その眼光も、牙も、咆哮も、とても恐ろしいのに……綺麗な魔獣。



そして、姉様の前で………………………檻が開く。-- マルチナ 2012-05-30 (水) 22:23:19
いつもより多い10人の魔術師が魔法陣を囲む中、彼らの呪文の詠唱をかき消すように、解き放たれた魔獣が叫ぶ。
目の前のあたしを爪で引き裂いて、捕食することなく魔法陣の外の魔術師へと向かっていく……。

……よくある光景。
でも、魔物はその魔法陣から外には出られないから、
体の再生が始まり起き上がるあたしをまた襲い、喰らう。
……そうなるはずだった。いつもなら。

だけど炎の鬣の魔獣は、複雑な魔法陣で組み上げた強固な結界をやすやすと破ってしまった。
悲鳴を上げる魔術師の喉を食い破り、爪で引き裂き、あっというまに半数が死体に変わる。
研究員が死のうと知ったこっちゃない。あたしはそう思ってたはずなのに。
気がついたら彼らを助けようと魔獣に魔術を使っていた。炎の魔獣なら、氷漬けにすればいい。
その頃はまだ氷の魔法が使えたから。
なんとか魔獣を氷に閉じ込めることに成功して、まだ息のある魔術師を外まで運んだ。
大きな氷の柱になった魔獣を前に、心配して駆け寄って来た妹を抱きしめる。


そこから先は、断片的にしか覚えていない。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

氷の割れる音がして振り返ると、あたしは魔獣の爪に弾き飛ばされ妹だけがその場に残る。

倒れた妹の喉から血が溢れて

耳を覆いたくなるような声が自分の悲鳴だと気づいて

魔獣が目の前に迫り………

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 






気がつけば血の海の中、立ち尽くしていた。
いつもの実験の時と同じ…魔物に喰われて、その魔物の中で再生する。

薄紅色の髪の女、リラが魔法陣を強化し5人分の魔術師の仕事をしたおかげであたしは魔獣を取り込むことができた。

ほっとため息をついて、その場にへたり込む。
……地面についた手に、誰かの髪が触れた。
魔術師の死体だろうか。駆け寄ってきたリラに話しながら手元に視線を移す。

「そういえば妹は……マルチナはちゃんと逃げたのかな。なああんた、リラって言ったっけ、あの子はどこに……」



そこには


うつろな瞳で虚空を見つめる、銀髪の少女………マルチナが倒れていた。 -- キリル 2012-05-30 (水) 22:55:10
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080092.gif 合成実験。
ひゅう、ひゅうと喉からかすれた音が聞こえる。
魔獣の牙で開いた喉の穴から、空気が漏れているのだろうか。
銀髪は血で赤く染まり、もう意識もないようだった。
握り締めた手は握り返されることはない。
ホムンクルスの再生能力がこんなときに限ってマルチナには上手く機能していない。

「もしかしたら核が壊れたのか」
「ホムンクルスの治療できる魔術師はさっき魔獣に…!!」
魔術師達が騒ぐ声はなぜか遠くに聞こえる。かき消されるはずの妹の息だけが、よく聞こえてきて。


「……この子は死ぬのか」

別人のように青ざめた妹の顔を見下ろしながら呟く。
妹の笑顔が浮かんだ。
涙は出ない。そんな力残ってない。泣いたら上手く考えられなくなってしまう。
だから泣いてはいけない。
そう思うのにぽたぽたと妹の顔に涙が落ちてしまう。考えろ、考えろ。妹を助ける方法を……!!!


その時、妹の虚ろな瞳が、少しだけ動いてこちらを見た。


http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     「……泣かないで、姉様」

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

声は出ない。でも、唇は確かにそう動いた。
そしてそのまま……かすかに胸が上下していた少女の体は、動かなくなる。



側に付き添って、妹の喉に布を当ててくれている薄紅色の髪の女を見つめて、あたしは言った。

「……リラ、頼みがあるんだ……魔法陣に魔力を通してほしい」

「……それは、どういう…」
問いかけるリラに、妹を抱き上げて、魔法陣の中心へと移動しながら、振り返る。



「合成するのさ、ホムンクルスを」



その時のあたしはもう、正気じゃなかったんだと思う。 -- キリル 2012-05-30 (水) 23:19:14
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080093.gif 空の青。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079871.gif 

     そして
     妹の死体を喰らい…あたし達は一つの体になった。

http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst079869.gif 







妹はあたしの体を取り込むことができなくて、しかし消えることもなかった。
二人にかかった魔術は絡まって溶け合い、昼と夜、違う人間に変身するという予想外の作用を見せたのだ。
変わったことはもう一つあった。
銀色の髪に菫色の瞳のだったあたし達は…魔獣の毛並みと同じ鮮血の色の髪に、ターコイズブルーの瞳に変わっていた。
魔獣を取り込んだ時から変わっていたらしい。しばらく鏡を見るたびに驚いていた。

最早別々の存在に作り直すこともできない。
どうしょうもなく不安定な存在になってしまった私達を、研究者達はもてあましていた。
手放すのは惜しい、でもこれ以上発展させようにもどうなるかわからない。

そこに、滞在していたミハイロフの長女リラが、
ホムンクルスの生みの親の元に連れて行って調べてみたいと。自分の兄なら戻せるかもしれないと言った。
……それはただの方便。リラは知ったのだ。あたしやマルチナと話して、ここが今どういう所になっているのかを。
組織の体質を作り変えることはすぐには難しい。だけど、この二人なら無理なく今助けられる…そう考えての事だった。



北の雪国の研究者達がミハイロフに逆らえるわけがない。
……あたし達は二人で初めて、外へ出ることができた。自由を手に入れたんだ。



リラと一緒に施設の外へ出る。
空が青くて綺麗で、涙が溢れてきた。


その空の色は、カテンの瞳の色と同じ青く透き通った色。一生忘れない。空の青。 -- キリル 2012-05-31 (木) 01:18:58
http://notarejini.orz.hm/up2/file/qst080094.gif 夜明けの晩に。
(目が覚めて、起き上がる。外は薄っすら明るくなってきていた)
……思い出さないように寝たのに、結局思い出しちゃったね。
(呟いて、深紅の髪をかきあげる)
(頬が濡れていることに気がついた……涙だ)

あー……やだね、思い出し、泣き……なんて…

(独り言で強がって笑ってみせる。妹と記憶を共有しているから、泣いたら駄目だ)
(あたしの涙はきっとあの子を苦しめる)
(でも声は震えてしまって)

……ごめん、マルチナ…昔の事、思い出しただけだから…大丈夫だからさ…。

(シーツに落ちる涙。膝を抱えて少しだけ涙を流した)
(静かな家に、押し殺した嗚咽がかすかに響く)


(早く夜が明けるといい)
(……空が見たい)

(カーテンを開けて、ぼんやりと夜明けを待つ)
-- キリル 2012-05-31 (木) 01:52:32

Last-modified: 2012-06-10 Sun 03:02:50 JST (3633d)