ねえ †
ねえ、あんた覚えてる?
初めて会った時のこと
始末屋なんて通り名を受けて、今の名前で呼ばれるようになって、
内からも外からも一線を引かれて、あたし正直疲れてたの。
ねえ、あんた知ってた?
ぶち模様の髪をしたあんたが子犬みたいに懐いてきてくれて
あたし、本当に救われたのよ?
ねえ、あたしはね、実は結構信心深いの
占いなんて気にしないなんて言ったりもするけど
偶然の物事に必然を感じたりするの。
だから左目を失くして、ついに応報の時が来たと思ったのよね。
命を奪い続けた代償を支払う時が来たんだと。
実際、あたしを狙ったものじゃないけど港に爆弾が仕掛けられてたりもしたのよね。
ねえ、あんたはそんなあたしの諦めすらも蹴っ飛ばしてしまったのよ。
ありがとう、ラリィ。
空港の前、何本目かになる煙草に火をつけ、煙を吐く。
遅くない?あの子。
寄りたいところがあるから先に行っててって言うから先に空港に来て待っていたけれど、
搭乗時間までもう幾許も無い。
隣に立つ鉄面皮も焦燥で汗をかいているような気がする。
次の便への振り替えできるかしら?
ため息をつき、手帳を開くと同時に綺麗に染められた髪の毛がこちらに向かってくるのが見える。
この調子でいくとあたしは向こうでどんだけ苦労させられるんでしょうね。
遅刻犯の色とりどりのの髪の房をぐしゃぐしゃとかき交ぜ空港のロビーへ背中を押し出す。
街を振り返り、目を細める。
じゃあ、またね。
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