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周は、遥か東域、一天万乗の天子が君臨する大帝国の辺土に生を受ける。 生家は下級役人を生業とし、父は老齢ながら学問を志すこと篤く、長男たる周を高級官僚にすることを目指し、自ら学んだことを毎日のように教授した。 故に、幼年の周は博学才穎の名高く、故郷では無双の天才と持て囃され、周も自らの才を恃み、官僚登用試験に合格し、進士となって立身出世することを疑わなかった。 燃え上がる野心のままに、いずれ宰相まで上り詰め、天下の政を恣にする夢に胸踊らせる日々を送る。 冠礼を終えれば即座に京師へと上り、未来の高級官僚への道を拓くための官僚登用試験に臨むものの、及第に至らず落第。成績は非常に悪いものであった。 自らを天才と自負し臨んだ故に、落第の事実に非常に落胆するも、元より一度で受かるような試験ではないと父親に金子を遅らせながら、試験及第のために京都に留まり続ける。 されど、京師の辺土にない誘惑の多さに惑って享楽に耽り、更には自らの才能を信じ、必死に勉学に励むこともなく、堕落した日々を送った。 京師での生活は二年、三年と過ぎたが官僚登用試験に合格すること能わず、遂に父親からの金子も滞り始め、ここに至って周は必死に試験に臨む。 結果は振るわず、落第を続け、父親からは故郷に戻るようにとの文が毎日のように届き、周を追い詰めた。既に実家の財政は限界に達しようとしていた。 周はようやく、自らが辺土の小さな村で猿山の大将に祭り上げられていたただの凡才であったことに気づいたのであった。 天賦の才がなければ努力する他ないが、それを行うには遅すぎるほどの年月が経っていた。 自らの真実に気づいたとき、周は一時的に精神に変調をきたし、京師を出奔。故郷の生家に帰ることもなく、彷徨の日々を送り始めた。 かつての友人の家に転がり込んでは学問の無意味さ、立身出世の虚しさを説き、無為自然の道を称賛した。 それらは全て自らの劣等感の裏返しであり、自らが失敗したものを否定することで自らを保とうとしたのであった。 しかし友人は耳を貸さず、あろうことかその友人は官僚登用試験に及第し、出世の道を歩き始め、完全に明暗は分かたれた。 友人宅を出奔した周は、ひたすらに神仙趣味に走り、俗世から離れ隠遁の士となり登仙するのだと自らに言い聞かせ、神仙の術や薬を求めて西域へと旅した。 様々な術法や霊物、仙薬を試すものの効果はなく、遂に国を跨ぎ、流れ流れて最早祖国へと戻る方法すらもわからなくなった。 そうしたときに、イムルトン王国の話を小耳に挟み、捨てたはずの野心、否、未練が鎌首をもたげ始め、周は王国へと向かった。 出来たばかりの新興国であれば、官僚として登用されることも夢ではない。 遂に自らの才を発揮する時が来た。これは天助である── こうして、周はイムルトン王国に腰を落ち着けたのであった。 立身出世と神仙への憧れ、その間で揺れながら周の王国での日々が幕を開けた──
野心篤く、夢は壮大なれどもそのための努力を厭うた男。 かつては周囲の人間を見下し、自らを天下の英才と自負したものの、その自信は既に打ち砕かれている。 現在は卑屈で、自らが成功するためならば正道に外れたこともやってのけるという思いはあるものの、さりとて邪道に手を染めるような思い切りの良さもない。 初対面の人間には基本的に紳士的に対応し、栄華や名誉などには興味がなく、隠遁のためにこの国にやってきたと嘯く。 曰く、祖国での煩わしい人間関係から逃れるためと──その実は異なるのだが。 隠遁者・神仙家を気取り、神仙の術の研究を行っているが、それはこの国の人々を欺かんとしているためである。 この国で権力と権勢を得ようとしていることを隠すためである。 しかし、その野心が漏れ出ることはあるであろうし、真実を知った者には本性のままに対応するだろう。 地道に開拓に協力し名を挙げるという発想は持っておらず、国家の大事が発生した場合にそれを解決などし、名を挙げることを画策しいる。 力仕事などには関わりたがらないが、一応の体面を保つために道士の真似事として薬を煎じて販売し、農作業などに協力する姿は時折見られるだろう。 現在は隠遁者を演出するための草庵を建て、居住している。 神仙への憧れは、最初は劣等感の裏返しであったが、天下の霊物などの収集は半ばライフワークと化しており、草庵の中には様々な鏡や祭祀用の剣、呪符などが置かれている。 ただし、当然ながら本物と呼べるものはほとんど所持していない。 もしこの世で立身出世が叶わないのであれば、仙境に入ることを目指すというのも、周の真実の思いの一つである。 かつて学んだ経書の類についての記憶は、長い彷徨の間に忘れ去ってしまっており、かつての辺土の英才の面影はない。 名誉栄誉への未練などは未だ残っているものの、既に祖国にてそれを成すことには拘っていない。 ただ、郷里に残してきた老父母のことは心残りとする。 しかし、最早帰る術も、文を送る手段も周は持ち合わせていない。
体躯は中肉中背、容姿も取り立てていうべきところがない男である。 黒を基調とする道袍を纏う。