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- 黄金暦224年 4月 ローディア連合王国国境線 バルトリア平原 --
- (追い詰められている。端的に言えば、そんな状態であった)
(毎度のことながら既に公国より率いてきた部隊とは分断、これまた毎度のことながら既に指揮官を置いて撤退を開始しているはず) (更に言えば。戦線は後退の極み、今正に中央は伸びきり食い破られんとしていたその戦場の片隅で) (矢衾の騎士は一人追い詰められていた) -- レーヴェンフック
- っそが!!(毒づきながらも帝国兵を一人、また一人と斬っていき…気づけばレーヴェンフックの近くへ)
あぁ?(そして視界に入った、重装の騎士。元々スリュヘイムの出身であった男は、アンデッド兵は見慣れたものであった) あ?何でこんなとこでアンデッド兵が…頭でも潰された、わけじゃなさそうだし… (そう言ってる間に近づく帝国兵を二人、後ろの両腕がそれぞれに持った刀で、腰から水平に両断する) -- 胡久美
- ?!援軍、というわけでは無いか、しかし助かった!(一瞥した男もまた、余裕が有るようには見えない上に単騎である。)
(だが、囲まれているも同然の状況では頼もしい味方であることに違いない…多少の、異形であっても。)修羅よ!後退も限界である 儂の槍で活路を開く…前方へ撤退のち反転して背面を撃つ、付き合ってくれるか?!(言いつつ、一足で登れるほどに騎馬の姿勢を低く。決死の突撃、その一瞬前) -- レーヴェンフック
- うわあああ喋ったぁぁああああ!!?(その時悪鬼に電流走る)
(アンデッド兵とは意思を持たない物である、その大前提を根元からくずされれば、さしもの男も仰天する) (それはともかく、自身も知る異国の闘神の名で呼ばれれば、少し気分もよくなり) 何やらかすかわからんが…まあ何もしねえで死ぬよりゃマシか…いいぜ、付き合ってやる (男から放たれたふざけた空気は、一瞬にして殺意の塊とも言える凶悪な闘気に変わる) -- 胡久美
- 喋るがどうした!騎士の声に聴き惚れるのは後で良い(ともあれ交渉成立。暁號の後ろに、仁王立ちする胡久美を乗せて突撃を敢行する一騎!)
(男の役割は、おのずと知れた。雲霞のごとく振りかかる敵、敵、敵。馬上のマスケット銃一挺、兼槍だけではとても捌ききれるものではない) (この分厚い敵軍を、突き破り後背を突く―出来るのだろうか、そんな事が) -- レーヴェンフック
- ぉぉおおおおお!!はは、すっげぇなあ騎士様よォ!(見た事もない、重装の騎馬に、意思のあるアンデッド兵)
(それら全て、男を驚かすには十分であったが…何よりも、それ以上に男を滾らせるのは、雲海の如き敵の群) 任せな…見せてやるぜ、修羅の戦いっぷりをよぉ!!! (笑いながら、男は剣を振るう。右腕の一振りで帝国兵の首が飛ぶ、左腕の一刺しで敵の喉に穴があく) (右後ろの腕が刀を振るえば、背後より飛びかかった兵の体が袈裟に両断され、左後ろ腕は、逆手に持った刀で矢の一撃を斬り払う) ひゃははは!!いいなあ、サイッコーだぜ騎士様!(四本の腕が踊る、敵を刻む死神の鎌として、全てを防ぐ刃の盾として。) どうよ、そろそろ突破できそうか?何なら寄り道してもいいぜぇ!!(心の底から楽しんでいるのだろう、男の声は、多少興奮で上ずっていた) -- 胡久美
- むう…見事な技よ(修羅。その名に恥じぬ剣風の傘は、転がる大岩のように虫と兵を潰し進む)
特急である、曲がることは出来ぬと知れ!あと…二層!(行けるのではないか。そう思わせるに充分の働き、自然手綱にも力が入る) (英雄譚に事欠かぬ統一王朝の騎士団にあっても、成し遂げれば新たな詩になる―そんな気さえした) -- レーヴェンフック
- ははははあ!!(一振りごとに尚増すその速度は、もはやただの雑兵程度には捉える事すら難しく、宛らカマイタチを思わせ)
ぐぅ…!(だが、後少しの所で急激に、その刃の閃きが鈍る) こんな時にっ…!(前々から感じていた体の違和感が、ここへ来て痛みとなり男の体を蝕む。即座に気合で持ち直すも、その動きは徐々に、精彩を欠いていく…) -- 胡久美
- ぬおお?!(前面より突き出される槍が増える。原因は―)限界、かッ!
(幸いにして、重甲冑と馬にまで守られた前方は蹴散らし傷を減らす事は出来ても、側面、後方から押し寄せる敵は増えるばかり。ついには、押し潰され―) 修羅よ、踏ん張り時ぞ…!(諦めの悪さは一級品。しかし、そんな心ごと覆う影は、高き山のように布陣する敵兵か?) (もはやこれまで、と覚悟が一瞬頭を掠める。伸びる影は、視界を黒く染め―しかし、死の嵐は帝国へ向けて吹き荒れる)
大きな―大きな影が、二人と一頭を見つめていた 屍肉と鎧で組み上げられた巨人 頭部と思しき大盾の向こうに知性の光は見えずとも 力が、腕が「敵陣」を潰せば理解は及ぶ あれは、味方だ -- レーヴェンフック
- っぐぅ…(馬から降りつつ、襲い来る帝国兵を二人程斬る)
おうよ…こんなとこで死ねるか…俺はまだ、斬り足りねえんだ…この戦場を、血の花火で満開にさせてえんだ… (左後ろ腕に受けた矢を引き抜き、続け様に斬りかかる敵の目玉へ突き刺す) (だが、正直な所体の方は限界が近付いている、水銀に侵された体は腕を振るだけで悲鳴を上げ) (死ぬ気は無い、無いが…こればかりは覚悟を決めねばならないか、そう思いながら、黒い津波の様に押し寄せる敵を睨み…) (次の瞬間、巨大な何かが、黒い津波を蹂躙する。丁度、子供が無邪気に蟻の群を踏み潰す様に) …おい、騎士様。ありゃお仲間か?(屍肉の巨人を見上げた男が、思わず呟いた) -- 胡久美
- 知らぬ…知らぬがしかし(統一王朝の騎士は狼狽えない。とはいえ、あまりにも急な戦場の変化に、見上げるばかり)
あの姿、あの意思…東夷の妖術にあらず!(敵の動きも素早きもの、巨人騎士に抗する陣形を組み…こちらは、手薄になる) 好機だ!このまま抜けるぞ!(丸太か破城槌か、とにかく巨大な杭をもって敵陣を掻き混ぜる巨大な影。その下を縫うように、馬は進む) -- レーヴェンフック
- スリュヘイムの開発したもんだとばかり思ってたぜ…連中がらくた弄りは得意だし(巨人を見上げる、幾百幾千の屍が編み上げた歪な巨人は、ただひたすらに帝国軍を、その巨躯を武器にして殲滅する)
…はは、死して尚、か。その執念は見習いたいもんだ(青年は、騎士は築いただろうか、彼の持つ紅色の刀身を持った妖刀が、まるで屍の巨人に共鳴する様に、微かに金切り声の様な音を発してしているのを) っておいおい!くっそ、俺怪我人だっての…!(軽業師の様に馬の装甲を掴むと、器用に元いた場所へと乗り込み) ってまぁた来たぞ、しっつけえな!(とはいえ先程よりも遥かに手薄になった敵は、痛む体でも何とか抑えきれそうだ) -- 胡久美
- 公国の手によるもの、であれば…もう少し、制御の手段を講じおるさ
(それは骸を運用するにあたって、不確定要素を排除する公国軍の体質的なものと言える。最も、あの巨大な兵は敵兵だけを殺す以上制御できてると言えなくもないが…) !三時の方角、撤退中の軍より殿が反転してきておる!跳ねるぞ、掴まれ! (丁度、背に巨人を連れるような形。一緒くたに追われているようにも見えるが、これで後背を突かれる心配はない) 修羅よ、名を聞いておこう!この統一王朝の騎士!エルネスト・フォン・レーヴェンフックが英雄譚に、残すためにな! (言いつつ馬が大きく跳ねる。タイミングを合わせたかのように丸太が目前の殿軍を押し潰し、交錯するように頭上を飛ぶ) -- レーヴェンフック
- あんま詳しくねえけど、そういうもんかね…てなるとありゃあ野良ゾンビってわけだ
あそこまででけえのは、冒険してた時でも見た事ねえけどぉ!!?(言い終わるより前に、突然重力が無くなったかのような浮遊感、見ればあの鉄塊を乗せた、金属の馬が冗談の様な跳躍を見せ) めちゃくちゃだなあんた…あ?俺?胡久美、胡久美・逆剥だよ。 エルネスト…統一…どっかで聞いた様な…(唸りながら考え込む、その背後では屍臭漂わせる巨人が、その大きな体でも抑えきれぬ程の憎悪を、帝国軍に叩きつけている) -- 胡久美
- 心強き兵を2名以上得た儂に不可能は無い!(着地、蹂躪。その総重量に甲羅をかち割られた大蠍を足蹴に)
コクミ・サッハーギ、包囲網の切れ目だ!(手綱を離し、マスケットを構え…トドメとばかりに、直前の敵を撃ち抜く離れ業) 修羅の技振るい散らす時は今ではあるまい。かの蛮勇、暴威に今は華を持たせるべきぞ (包囲を抜けた先で。向こうには撤退してゆく帝国軍、振り返れば殿を叩き潰し、なお敵を見据える巨人―それも、複数の) -- レーヴェンフック
- (背後に見える巨人は、いつの間にか複数体現れ、しかもその全てが帝国軍を攻撃している)
…いやあ、アレが敵じゃなくてよかったわ…死人様様ってなあ、ああそれで思い出した、助かったぜ騎士様(命の恩人に、物のついでの様に礼を述べる、悪気では無くそういう性分なのだろう) は、言われなくてもこの剣の腕、まだまだ錆びつかせる気もねえし、夢の途中でくたばる気もねえよ(ここへ来て、ようやく年相応の笑い顔を見せる) 見てな、何れ東中のつえー奴も、あのデカブツも、竜も、皆斬ってみせてやるよ さて、それじゃ(馬から降りると、首を鳴らし)ここらでお別れだ騎士様、また会ったらそん時はよろしくな -- 胡久美
- 助かったのは我々である…助けたのは、アレであろう(一瞥する。散々に戦場をかき乱し、今や形勢を逆転させた、怨念の騎士を)
華やかなるは剣の冴え、しかし向ける敵を間違えるでないぞ? (紹介状、という程ではないが。公国印と信任の入った軍票を一枚、投げ渡す)駐屯地にて儂の名を出せば多少の支援も受けられよう 修羅よ、また戦場で!(剣士と別れ、騎馬は駆ける。辛うじて抜けた死線、予想外の援軍…しかしまだ暗雲は晴れたわけではない) (自陣へ戻り、体制を立て直す 戦争はまだまだ続くのだ…これが後に「柱の騎士と統一王朝の騎士」という講談、戯曲に記される事になる一幕…その始まりであった) -- レーヴェンフック
- (軍票を受け取ると、疲れた様な、軽薄な笑いを浮かべ)心配ありがとよ(と心にもない礼を言う)
(その後軍票とエルネストの名が実際に効果があった事に驚きつつも) (治療を受けて一旦傭兵仲間達の元へ帰還した) -- 胡久美
- (それは。混沌としながらも帝国優勢に進んでいた戦場に――突如現れた)
(地より呪術により這い出た怨嗟が渦を巻き芯を作り出し、そこに死人の腐肉が群がる) (遠目に見て、ようやく人形と分かる程度に形づくられた異形) (足元でそれを見ていた帝国兵は、自らが相対している物が何かすら、理解が及ばなかっただろう) (理解が及ばなかったからこそ。攻撃としては緩慢であるが重鈍なる怒涛の如き一撃が大地を揺るがした時には、その身を四方に飛び散らせていた) (恐怖は伝播する。未知の怪物の出現に、帝国兵たちは声も出せないまま浮き足立った) --
- 『待て暁翼、いかん…なんだあれは…!?』
(切り込み隊を指揮し、敵陣に斬り込んでいた暁翼の視界に現れた) ……っ……なんだ…!? (地震と見間違う大地の揺らぎ、自分に劣らず勇猛である切り込み隊の面々すら凍りついた) (そして、数瞬の間に吹き飛ぶ味方の兵達。無論、その中には自分の隊の兵も…) 退け! 退いて距離を取るんだよ! 誰も近づくな…俺が前に出る、その間に撤退して宗爛の指示を仰げ! (最初に硬直から解かれた暁翼が、そう告げながら、馬を走らせ水銀槍を…) ッ!!(投擲する。巨兵の頭へと正確に向かった両手槍。常人の頭なら貫く以前に破砕するほどの威力はあるが…結果は期待しない) -- 暁翼
- (途中はまでは明らかに、圧倒的にこちらの優勢であった)
(だというのに何故か拭えない不安、足元から駆け登ってくる怖気、何かが恐ろしいものが来る) (その予感だけはあるのに、どうにも言い出せない) (ただの杞憂であるかもしれない…、たとえそうでなくても今更どうして撤退など提案できようか) (後戻りは出来ぬ、進むしか無いと言ったのは自分であるのに) (…そうして、今こうしてコトが起こった後、なりふり構わずソレを提言すべきだったのだ、と後悔した) なんだあれは… 西が造った木偶か…? (そもアレは人の手で作れるような物なのか、あまりにおぞましい姿に圧倒的な戦力) (見る間に散らされていく兵士達、突然の出来事に退却の準備すらままなっていない) …あの化け物に意思など無きように見えるが… 注意をこちらに向けてなるたけ時間を稼ぐぞ暁翼…!このような場所で兵どもの命を無駄に散らす事断じてあってはならぬ! (両手槍の行方とその結果など見るだけ無駄だ、アレに効くはずがない) -- 爛煌
- 退却!退却だっ!!いくら奴兵でも、対処できる奴と出来ない奴が居るっての……っ(喇叭の音を響かせる 其れに助けを得、帝国本隊を守るように下がる奴兵大隊)
(しかし、その横を抜けていく兵達を見れば、)暁翼の……おいっ!?お前らぁっ!隊長はどうしたぁっ ……っ!?(捕まえた傭兵の言葉を聞き、腕を振りかぶる巨人の方を見た)あの馬鹿野郎……っ!?(気付けば、自分も飛び出していた 馬を駆けさせ、逆走はじめる) 命令は続行!俺は友軍を支援に行く!!貴様等は本隊を守って退け!!(自分の部隊の小隊長達に次々伝令を回せば、剣を抜いて) 駆けろ剣閃、穿てよ巨像っ!槍に併せろ!魔神剣ッ!!(暁翼の槍に併せ、剣気を飛ばす!) -- アベル
- (唸りを上げて飛来する暁翼の水銀槍はアベルの剣気を纏った上で裂帛の勢いを以って巨兵の頭へと突き刺さり――突き刺さっただけだった)
(普通の人間であれば爆ぜ割れ、千々に千切れていてもおかしくはないその攻撃も、存在と存在を呪と魔によって繋がれた異形は大きく揺らぎはしなかった) (勢いは人の骨と肉を継ぎ合わせた歪な構造によって首を僅かに傾げるような動作で殺され、剣気と衝撃で千切れた肉片だけがビシャビシャと降り注ぐ) (なまじ、それが人の手や足、眼の形を保っていたからこそ、暁翼の声に反応仕切れなかった雑兵をも恐怖によって足をもつれさせながらも退却を始める)
(――ズン。と一歩目が、その退却の距離を一瞬で縮める。意志も、意思も、理由すら存在しないかの如く) (そうすることが当たり前であるかのような動作で思い切り地面に着きそうなほど垂れ下がった巨腕を、全力で逃げる兵に向けて振り下ろした) --
- 『…屍兵だな。ただ、こんなものは見た事がない。しかし歪だが人の手は感じぬ…まさか天然に生まれてきたのかこやつら…!』
(「お前にも分からないってのは相当だな…いや、こりゃべぇな。竜ほどじゃないけど」) (『…む。アベル殿も来たようだ…とはいえ、危機的状況には変わりないが』) (「なんでまた来たんだあいつは…お節介な奴め」ニヤリと笑いながら) 注意を向けさせるだけなんてちっちゃい事言わないで倒しにいくぞ爛煌、それくらいでいかないとやべぇ 地脈の方はどうだ!? 今まで使ってなかった分ありったけ頼むぞ。次の動きが終わってから! (相方である魔剣に叫び、あの巨体へ突撃する)
(攻撃は威力として全く効果を為さなかった。それはよい、だが…) 注意も引けてねえかよ…蟻と象ってかおい!? (踏み込んで着たせいで、一瞬で間合いが詰まった。馬から飛び降りて逃がし、巨腕が振り降ろされるその刹那に飛んだ) (暁翼の身体が宙に舞う。だが、打ち降ろしを食らったわけではない) (振り降ろし終わった腕に着地し、人間であれば肘であろう、その内側に魔剣を振るい、傷口を開ける。微々たるダメージでしかないが…) 切れる事は斬れる…ならこれでどうだ!? (ダメージとして生半可な傷口に爆薬を押し込んだ所で、巨兵の腕が振り上げられた。堪らずに飛び跳ね着地…) (同時に、爆発音) -- 暁翼
- 申し分無いが兵がまだ逃げ終わって居らぬ、注意せよ
あの肉クズに味方が巻き込まれて負傷しては元も子も無いぞ!! (驚き惑う西の面々を見るに、彼らにとっても予期せぬ存在であったようだ) (だがしかし、徹底して攻撃の手をこちらにしか向けぬ辺り) 怨念の塊であるな… (呟くと同時に赤い刀身が光る) 痛みも感じないのであろうな、物事を考えているかすら疑問であるぞ (暁翼の肩を蹴るようにして姿を現す骨仮面を被った少女) 効いておったとしてもどうせ動きは止まらんであろう!他の標的を見つける前に動くぞ! (一層輝きを増す刀身、比例するように暁翼に力が流れる) -- 爛煌
- ち、近くで見ると改めて……でっけぇえええ…… しかも、この臭いは(顔を顰めて、マントの首布に顔を埋める)死臭だ 嗅ぎ慣れても、まだ臭う、こいつは……
シャオ!(暁翼の身体が地から跳ねるのを見て、思わず声を挙げる しかし、その後の動き、爆発を見れば目を丸くして)アイツぁ……戦が終わっても、軽業師で食っていけるよ、まったく って、おおっ!?誰だぁアレぁ!!(暁翼の肩を蹴って飛び出した人影を見れば目を丸くした)驚いてばっかだな俺……っと おら、お前らさっさと逃げやがれぇっ!名を惜しむな、命を惜しめ!!これから続く戦の為に!!生きて戻れ!その足で母国に立つために! (剣を采配代わりに、逃走する兵達を促す 普段奴兵を侮蔑の的にしている正規兵達も居た だが、構いはしない)行けっ、此処は俺達が食い止めるっ!(その背に庇い、剣を構える) シャオ!どうだ、行けるかぁっ!!(暁翼とすれ違うように馬を走らせながら、右手を伸ばす)人の足じゃ足りない!!後ろに乗れ、回り込むぞっ!! -- アベル
- (腕を駆け登る暁翼の行動にも緩慢な反応しか返さない。僅かに上げられた腕の内側に魔剣の刃が入る)
(肉の腐った匂いと汚汁をまき散らしながら僅かな傷が入れられ、そこから怨嗟の呪怨が黒々とトグロを巻く) (見るものが見ればその根源を呪術と魔力によって構築された、人肉を素材と見なした人工動物であることが分かるだろう) (と、暁翼によって押し込められた爆薬は腐肉の奥深くに埋まり込み、異物を取り除こうと腕を振り上げたところで)
(爆発音が響く)
(肉と髪の焼け焦げる異臭と共に、右腕の半ばから反転したように腕が垂れ下がり、びちゃびちゃと地面に肉片が跳ねる) (その一つ一つが、与えられた仮初の生命に苦悶と無念の表情を浮かべながら、最後の生命の灯火を燃やして這いずり、暁翼を目指して、事切れる) (ただの死体へと戻った赤黒い死体が周囲に解け、構成していた魔力が宙に霧散して消えていく) (退陣を命ずるアベルの声が功を奏したのか、巨体の瞳なき視線は逃げゆく帝国兵ではなく、赤く輝く刀身と乗馬を行う幾人の影を目印に定める) (攻撃は、正確に側方から来る) (人肉のゴーレムは横薙ぎに、無傷の左腕を力任せに振り回す。地面を擦れる勢いで肉片が地面で剥げ散り飛ぶが、構わずその攻撃は暴風の勢いで襲いかかる) (その勢いで半ばからもげかけていた右腕が遥か後方に千切れ飛んだが、そもそも痛みの概念すら存在しないのか、横殴りの一撃の勢いは全く衰えない) --
- 「後退! 後退!! 総員撤退だ! 本隊はゾドまで後退する! 諸君等も急がれたし!」 -- 六稜兵
- 怨念の塊か…しかも恨み節はこっちにだけってね
『凄まじいまでの怨嗟の声が私にはよく聞こえるよ。並の精神で直接に聞いたら恐慌を起こすだろうな…』 逃げ遅れてる奴が多いな、足止めするには足を潰すしかねえか…! (魔剣の輝きと共に、心身に力が増す。いつもよりは調子がいいが…) わぁーってる! 今日はお前に配慮してられないから今のうちに謝っておくぜ!
……この匂い。髪の焦げるの匂い…西の兵の死体を固めて出来てやがるのか!
シャオシャオうっせーな! 聞こえてるよお節介! とっとと兵連れて下がってりゃいいのによ! (軽口は止まらない。そうでもしないとやっていられない戦場で生きていると主張する為に) (よし、とアベルの手を掴もうとした所で…) 『暁翼! 馬の速度では逃げ切れん!』 (そこに、容赦の無い横薙ぎの腕が来る!) (このままでは、2人ともやられる…逃げ遅れ倒れた兵も…ならば。魔剣を両手で構え) ギ…… (地面から盛り上がる砂礫にぶつかりながら横殴りの腕に剣を合わせ…)
ああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!
(地脈の加護と、壮絶な剣技の融合は、4mの巨体の振り抜く剛腕を僅かに上に逸らした) (だが、巨体故に僅かな角度だけで十分。暁翼と爛煌、そして馬上のアベルの頭上すれすれを、腕が乗り越え、突風が吹きぬけ…) づっぅ…!!! (人間の限界を超えた所業に、両腕の所々が裂け、血が噴き出した。呻き声だけが響く) -- 暁翼
- (持ち手の声に応えるように刀身の輝きは増し、人の身では決して叶わぬ所業を可能にした。)
(腕が弾けずそこについている、そしてあの巨体の攻撃を僅かでも逸らすことができた) (だが、それだけだ) (それ以上の奇跡を起こしはしなかった。) (暁翼の呻き声に少女の荒い息が混じる。見れば、誰かがそれを見ることが出来れば仮面に亀裂が生じていることが判るだろう) う… (先ほどまでは好調子であると思っていた、だがしかし所詮この程度か) (自分が痛めつけられ辱められ、使役することが出来るようになった力はこの程度で限界を迎えるものであったのか) (割れて落ちる破片を霞んだ視界が捉える) (そこに撤退の命が響いた) ……アベルといったか 聞こえたであろう、撤退である… (怯えて暴れる馬の上、赤毛の女へ語りかける) 暁翼と私諸共ここに捨て行き逃げよ、荷物を抱えては逃げ切れまい -- 爛煌
- (長い髪ごと首を引き抜かれるかと思うような、豪腕の風 数瞬後、生きてると気付く どっと背筋が冷たくなった 生きてる どうして?)
……ッ、の、なにやってんだ!!無理ィしやがって!?(棹立ちになる馬の手綱を握りながら、壮絶な赤に染まる暁翼を見る 守られたのだ 自分は 唇を噛む) (そこに、少女の声がした 割れた仮面の少女を見下ろせば、噛み締めた唇から血が流れた ああ、怖い、怖いが それでも、だ)また、残して逃げろってか、馬鹿野郎! 聞こえねえよ、お嬢ちゃん!!悪いが、俺は紅原奴兵隊の長だ 仕事は、帝国兵の盾になる事!! ……傭兵としては、仕事を果たすってのが、一つのプライドなのさ(剣を両手で握れば、眼前に構え) だから、そっちも生き延びる事を考えろ!二人で勝手に諦めるなっ!!(女を中心に風が巻き起こる 魔法とも、竜脈とも違う超常の力) 俺が、守ってやるっ!生きて帰るぞッ!!(剣を振り上げる 練り上げた気を剣に込める 髪が、服が、風で広がる) 立てよ白壁、魔を祓え 害成す者を押し止めよ!!守護、方陣ぃぃぃぃいいいいいいんっ!!(振るった剣が眼前地を抉る そこから吹き出すのは、輝く光の壁!) (巨人の前には薄壁かもしれないが、それでも、託す己の意思 一瞬でも、足掻きでも!)今度こそ、守るんだぁああああああっ!! -- アベル
- (振りぬいた手にぶち当たる暁翼の身体の感触にも、一切の感慨すらないように、茫洋と巨人は立ち尽くす。まるで柱のような荘厳さで、立つその姿は、遠目に見てなお威圧感があった)
(全力で振りぬいた腕に当たったことで、腕の一部が弾け、表面で死霊と化した死骸が蠢く)
(全て、毀す) (その動作の全てが、帝国の民を殺すというたった一つのシンプルな概念で行われる) (憎い) (憎い、憎い憎い憎い) (帝国に味方する全てが) (この戦争を起こした暴虐が) (志半ばに死ななくてはならない理由が)
(――殺す) (殺意が弾ける) (地面を抉り飛ばすが如く下から突き上げるように放たれたその一撃は、今までの拳のどれより重く) (――なる、前に) (地面に設地した瞬間、何かに引っかかるように一度勢いを殺された) (肘の辺り。――死骸と共に取り込まれた黄色の盾が、地面と腕を結ぶように、一瞬だけ偶然にも突き立ったが故に起こった、減速だった)
(それでも、人の体を砕くのに充分な勢いで射出された左の拳は、アベルの創りだした光の壁を跳ね返されつつも易々と打ち砕き) (意識を完全に刈り取ると共に、その身体を並行に跳ねさせる勢いで弾き飛ばした) (その壁に逸らされた拳が、暁翼のいる場所の横の地面を、捲り上げる程に抉っていった) --
- 『…腕が不味いな。特に左腕は骨が折れた。右腕も長くは動かせんぞ…撤退命令に従うべきだろう』
(「不味いな。せめて剣だけでもアベルに渡して…それからだ、逃げるのは」) ちっ、爛煌までダメージが行ったか? どういう… 仕方ねえな、最後まで付き合って貰うぞ。アベルが逃げるまで…っておい!? (光の壁が発生する。どんな技法かは謎だが…それが自分達を護るための物である事は見てとれた) 何してやがる! 今のうちに逃げておけよ………!!
アベルッッ!!!
(憎悪。殺意。怨嗟。慟哭。全てに塗れた拳は、目の前で自分と爛煌を庇った女をこの葉の様に吹き飛ばした) ……どうなった(冷静な。しかし何かの感情を抑えた声で呟き) 『生死は分からん…が。恐らくまだ生きているだろう…やる気か?』 (「借りを返さないでおめおめ逃げて行くのは御免だろ」) 爛煌。もう一度だけでいい。ありったけ、気脈から力を…邪魔な木偶を切り倒して、あいつを連れて帰る…爛煌! (応えてくれるはずだ。そんな妙な確信と共に、右手だけで魔剣を握る) -- 暁翼
- (めまいがした)
今必要なのは盾ではなかろう…?防いだとてどうする…? お前が死ねばお前の部下がどのような思いをするか分からぬか…?…貴様に生きよと託した人間の思い無駄にする気か!!! (成る程決して仲間を見捨てぬといえば聞こえは良い) (だがもしここで死んだとして、残された部下はどうなる。二人の隊長を失った隊の士気がどれだけ下がるか) (そも勝手に諦めていると決めつける姿勢が気に入らぬ、まったくもって信頼されていない。初対面故当然ではあるが) (ふつふつと怒りが沸く、どいつもこいつも、と。) (呼びかけにも応えず、魔剣は死んだかと思うほど静かであった。俯いたまま微塵も動かぬまま) (やがて、僅かに唇が動く) もう一度で良い?ありったけ?力を? おまえらは… おまえらは…っ 阿呆、かぁぁあああああ!!!!!!! (それで完膚なきまでに仮面が割れた。可憐な顔に相応しからぬ怒号に戦場の空気が震える) おいこの糞平民!!!日頃偉そうな事言ってる割にこのザマではないか!!! 何がありったけだ!何が気脈だ!!バーカ!!!邪魔な木偶を斬り殺すだ?!今この時に何を言っておる!! 撤退命令が出たろうが!!!あの女を連れて逃げるならわかるが倒す…倒すって… ほんに、おまえら…おまえら…隊長などやめてしまえー!ばーか!!!ばーーーーか!!!! (大凡反応は想像とは違ったやもしれぬが、暁翼の手に再び懐かしき氣が流れこむ) ここから脱出したら新しい持ち手を探すからなこの平民!!!! (叫ぶ少女の瞳は鳶色ではなく、金色に染まって…いるように見えたが怒りも露わなまま姿を消してしまった) (だがしかし腕の痛みは今や感じないであろう。先ほどまで確かに裂けていた腕は何事もなかったかのようにそこにある) -- 爛煌
- (のそりと腕を引く。地面を削り戻しながら引きちぎれた腕は、その場にあった帝国兵の死骸をも飲み込んでいく)
(異なる理念の遺志が混ざり合い、喰らい合い、それでも元となった西方の骸の遺志が巨体を巨体たらしめている) (蠢く怨嗟が、戦争の歪を形としたような残酷な暴で以って拳を振り上げ)
(帝国に味方する者に) (帝国に名を連ねる爛に) (制裁と嗜虐を与えんが為に、初撃とは比べ物にならない明確な殺意を感じさせる怒涛の勢いで) (大地よ割れよという音無き叫びすら聞こえかねない勢いで――暁翼に向けて叩きつけられる) --
- あー、もう五月蠅ぇな。目の前のアレをそのままにしてアベルを抱えて逃げ切れるわけねえだろうが。馬だってもう居ねえんだぞ
(爛煌は状況が見えてない。怒りの矛先も見当違いだがまぁいい、貰うべき物は貰った) (何より、軽口がぼやいて言えるようにして貰ったのだ。多少の事は多めに見るという物だ) だが十分だ、これで何とかならぁ (魔剣を構える。そこから流れる力が、暁翼の瞳が黄金の龍の気を纏わせた事を、この時点では梟以外には誰も知らなかった) ッ!! (真っ直ぐ伸びて来る拳が、腕が縦に、割く様に切り取られる) (その勢いのまま止まらず、巨兵の肩に昇った暁翼が大きく剣を振り上げ) ─────斬! (斜めに、胴を断ち割った。その勢いのまま地面に着地、一瞬で飛ばされたアベルの下に辿り着くと意識の無い体を拾い上げ) ここまでだ、行くぜ (気の力に支えられているうちに、真っ直ぐに逃走を開始した) -- 暁翼
- (巨体が、二つに割れる。轟音と波濤のような血肉を溢れさせ、大地を腐らせんばかりの勢いで広がっていく)
(その場で死んだ者の死体や怨念すらも飲み込み、生まれた時と同じように音もなく地面に広がっていく)
(そして、胎動も早かった) (悪い予感という物は総じて当たるようにできている) (崩れたその身体を再び構築するかのごとく。否、怨念が止めどなく増殖していくかのごとく) (次々と戦場に同型の巨人が姿を現す) (もはや、それは戦争ではなく、蹂躙に変わっていた) (一方的に征服する側であった帝国は、意志も持たぬ遺志だけの同じ征服するだけの存在によって……奇しくも退けられたのであった) --
- (混沌は泉が熱に溢れ沸くがこの如く現れる。大地より生まれし柱が方々で隆起する)
(呪、怨、悲、憎、怒…あらゆるドス黒いものが湧き出し柱となる) (柱に群がる人か、人を集めた柱か。鉄と血が混ざり合い生まれた異形) (帝国兵も連合兵も恐怖した。見知らぬ巨大な怪異に。おぞましい力を感じて) (振り上げられる暴力の嵐が吹きすさべば悲鳴と恐怖が帝国兵に伝染し) (連合兵はその暴力が、正義の連鎖だと、正しき怒りだと思い歓喜の声を挙げた) (連合兵にとって絶望的な状況からの逆転であり) (帝国兵からみれば勝利へ目前とのところで巻き返された逆風) (戦場の風向きが変わった) --
- 呑気なモンだぁーなー。西の連中はよぉー
(戦場と言う場所にはおよそ馴染まぬ異様な風体の仮面の男は、先ほど刈り取った西側の兵士の首を投げ捨て、これもまた呑気な声で言って、後ろの部下達を振り向く) (西南の地を故郷に持つ彼らにとって慣れぬ戦場、されどその士気は精強。……そう評された小越奴兵隊の兵士達は、しかし評判とは似つかぬ様子で異形の肉塊と無貌の仮面を見比べる) ビビってんじゃねぇーの。っつーかありゃどーにもなんねぇし オラ、弓兵前出して牽制しながら逃げんぞぉ。側面からの奇襲に気ィつけろ。俺ならそぉーするからな。 で、殿は俺がやっからよぉー。 (張りのあるバリトンと間延びした口調が咬み合って居ないが、少なくとも常の調子を維持して指示を出す隊長に勇気づけられたか、奴兵達は指示通り、撤退の動きを始める。満足げに頷くと、銀髪の男は柱の異形へと向き直った)
そんじゃま。一丁ずらかる前にどんなモンだか情報を稼いでみよぉーかね (怨嗟の暴風を前に、阮焔は笑っていた。じっとりと湧き出す脂汗すら心地良い、戦場を支配する暴風に。) (両の手甲で拳を作り、片膝を上げて構えを取る。視界を埋め尽くさんとする醜悪な怪異との対比は、正しく蟻と象のそれに他ならないが) -- 阮焔
- (まさに圧倒的だった腕を振るえば木の葉の如く小隊が舞い、血肉の風となる)
(戦場の風をより一層血生臭くするその暴力が渦巻く戦場の一角に奴兵の男がいる) (暴力の渦中にありながら涼しくしなやかに流れる風、しかしその風もまた暴力!) (大小あれどここに怨嗟の暴力と流麗な拳刃の旋風が交わった!) (見上げれば柱の騎士、手には人か、鉄か。交じり合った槍状の何かが確かにあり、それは絶対的な武器となる…) (噴くは暴力、滲むは憎悪!土砂や先ほどまで生きていた人肉を巻き込みながら来る横薙ぎの払いが解き放たれた!) (轟と響けば命を貪る力が大気を揺らす!) --
- (捻くれ曲がった歪な武器。冗談のように巨大な得物に、ひゃは、と笑いすら零して)
(一瞬の後、暴風が来た。血煙と瓦礫を巻き上げ叩き付けられる颶風に対し、全身のばねを十全に活かした跳躍。風に舞う木の葉の如く、暴威に対して身を晒し) っとぉー、っはは! すっげぇな。コイツ、こっち側にも居たら最高じゃねぇー? ……弓兵隊!! (軽口の後には風鳴りの連射。後退しつつも弓兵隊が放った水銀矢は、増された比重に従って振り下ろされた柱の腕と思しき部分に驟雨の如く降り注ぎ……) Da,Da,Da,HoU,Ha!!! (矢の突き刺さった腕を足場に再度跳躍。怪鳥のような雄叫びと共に、恐らく顔であろう部分へと両手で直突きを繰り出し、両の手甲の牙を食い込ませんとする!) -- 阮焔
- (空振りに終わった巨大な獲物は地を、岩を、石を土を彫り上げ撒き散らし)
(その飛礫は周囲の兵士に刺さり抉り砲弾のごとく降りかかる) (かくして飛鳥のごとく、それは城攻めのごとく。火砲を掻い潜り、足場を作り、切り込む…) (まさに動く城壁のこの巨体にとって立ち向かうならばそれが定法といえよう) (有効打にもなりえる。事実頭部らしきところにめり込んだ手甲即ち牙は肉を千切り) (骨を砕き血飛沫をあげ、何とも付かぬドス黒いものを撒き散らす) (しかし) (それは、ただ肉の壁が迫ってきたらの話で) (ことこれに至っては集合体、憎悪により集う魂の群れ) (感触ありと感じたその瞬間、表面を無数の手が蠢き走り阮焔に向かう) (手には剣、短剣、斧、矢、なんでも持っていた) (殺すためになんでも手にしたという有様で) (その間にも再び巨体は動き巨大な手を、獲物を振り上げ木っ端の如く周囲の兵隊をただただ塵殺していく) --
- Ha,ッ……!!
(尋常の魔獣や、人間相手であれば取ったと思える手応え。しかし。)
(手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が、手が。)
(数多の憎悪と悲哀と殺意と怨嗟と赫怒が、思い思いの武器を手に、統一された負の感情で以て仮面の男を襲う)
(悪夢のような光景であった。肉と鉄で作られた醜怪なオブジェの表面から、無数の凶器が溢れ出て、自分たちを襲う。しかもそれは一体ではないのだ……) (撤退を続ける小越奴兵隊の兵たちは、自らの頭が百の刃で貫かれる所を幻視した)
(……だが。)
Ahaaaaa,Da,Da,Da,Ahaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!
(足裏の獣骨爪と、両手の牙を縦横無尽に扱って、男は晒した素肌を切り裂かれつつ、なんとか致命の一撃を防ぎ切る)
How,ha!!
(最後の一合を蹴りつけ、後方へと大きく跳躍しつつ群れ出る手から逃れ、宙返りして地に降り立つ。着地の衝撃を膝でしっかりと殺すと、無貌の仮面を巨体へ向ける) ……全く通じてる雰囲気じゃぁーねぇ。何なんだコイツ。大爛に対する恨みが化けて出たか?
(蹴散らされる帝国兵達を見て首を回しつつ、思わずそう呟く。疑問した所で応える者など誰も居ない。再び構えを取り、全神経を研ぎ澄まして眼前の巨体の動きに集中する)
(自身の部隊のことは気に掛かるが、そちらに視線をやる余裕などは無い。気を抜いた時点で、自分は死ぬと言うことが手に取るように分かった。それでも尚、阮焔は)
面白ぇ
(嗤う。) -- 阮焔
- (手が、手だけが 無数の手だけが散って舞い落ちる。それは異常な光景だった)
(いやそもそもその柱の騎士事態が異常ではあったのだが…湧き出すように金属がヘルムを造り) (溢れるように肉片が頭を作る。滲み出した血潮がフルヘルムの穴という穴から染み出した) (それはまるで) (今も淡々と) (剣を打ち、練り上げているようで) (形は形をより明確に、痛ましいまでのグロテスクさを滲ませながら鍛造されていく) (それはまるで) (熱を帯びた群集が) (自らが誇る郷土のために立ち上がる決起のように) (周囲の死体が続々と集まり、歪で醜悪なレジスタンスのように結成されていく) 『殺せ!殺せ!返せ!返せ!死ね!死ね!死ね!砕け!砕け!砕け!』 (呪詛、怨嗟、狂気 混沌の坩堝が方々で生まれていた) (左手に刺さった水銀矢は著しく毒と化して人々を蝕むものであるが) (今この場ではなんの解決にもならず、しかもこの死体らはもとから毒受けていたもので) (その効果といえば矢傷を受けたというもので、腐り落ちるかのように矢と共に肉片が滴る) (左手には槍ともつかぬ剣を、右腕には鎧と肉とが繋がった鎖が、腕を振るうたび死の暴風を生む) 『許さんぞ!許さんぞ!皆殺しだ!皆殺しだ!目に付く爛はすべて殺せ!蛮族め!蛮族め!』 (フルヘルムから流れる血は涙か、暴れる血肉の柱は確かに怒り狂い怨嗟の声を風切りの鳴りで響かせる) --
- (目の前の光景に目を奪われる。戦闘の為の研ぎ澄まされた感覚ですら、その異常には没入を妨げられた)
(これは死者の、死者による、死者の為の騎士だ。鎮魂され得ぬ無念の魂が寄り集まった醜怪なる、そして)
哀しい騎士だぁ。
(事此処に至り、大欄の兵士を殺戮する為に顕現した異形は暴威の完成を見た。先ほどから、悲鳴混じりに撤退の指示も聞こえてくる。単騎で立ち向かうのも此処らが限界であろうか。)
……ッ!(可能な限りの力で後方へと跳躍すると、そのままくるりと振り返り、一足目から全速での逃走を開始する) ……っははぁ、恨みと怨嗟の騎士か。
我が国にもあれ程の執念が在れば、敗者となることは無かったのかねぇー……
(恐るべき脚力で部下の奴兵たちの背中を捉えて、ぽつりと呟く)
(ふと後ろを振り返れば、怨嗟の騎士がその狂える怒りを未だ存分に撒き散らしている)
(怒号と悲鳴に回想から引き戻された仮面の男は、今後の戦がさらなる困難に満ちている事にため息と、そして胸の内に若干の昂りを感じていた……) -- 阮焔
- 前線後方 帝国軍 前線陣幕 --
- がはっ! ごほっ……! がっ……! ゲェホ……ッ!(小高い丘。大山羊から突然転げおちた皇子は、仮面を脱ぎ捨てて激しく嘔吐を繰り返していた)
なんだ……なんだ、あれは……なんなんだアレは……! (それは、本当に唐突に、突然現れた) (夥しい憎悪を、夥しい無念を、夥しい怨嗟を引き連れて、それは現れた) 殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ (無数の声が、無数の悲鳴が直接頭に響いてくる) 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね (頭が、心が、他者の殺意と敵意で埋め尽くされる) 啼いて……いるのか……くくく、そうか、それほどまでに帝国が……憎いか……! (彼らは囁いている。断末魔の叫びを囁いて、血涙を流しながらその豪腕を振るっている) (声が、響いてくる。聞こえてくる。強引に心にしみこんでくる) 憎い……憎い……帝国が憎い 故郷を焼いた帝国が憎い 息子、娘を、妻を、夫を、……俺を私を僕を殺した帝国が憎い
返せ
返せ。返せ。返せ返せ返せ返せ カエセ カエセ カエセ カエセ カエセ……
くくく、はははは……ははははははは!! そうか、そうか、お前たちも、そんなに帝国が!! 爛の旗が憎いか!! ははは、はははははは!! はーっはっはっはっは!! -- 宗爛
- 「で、殿下! いかがしますか!?」
「お早い決断を!」 -- 六稜兵
- (ゆらりと立ち上がり、血の混じった吐瀉物を吐き捨てながら仮面をつけなおす)
……決まっているだろう 直ちに撤退だ 流れは変わった。これ以上この場にとどまっていても被害が拡大するだけだ 各部隊に通達!! 全軍撤退! ゾドまで後退する! 遅れをとるな! あのデカブツには火砲をぶつけろ。ただの死体だ。死体を構成する以上の質量をぶつければアレとて無傷ではすむまい 投石器も太矢もありったけ撃ち尽くせ。攻城兵器などの重量物は破棄してかまわん 俺も陣頭指揮を執る。遅れるな! (黒山羊に跨り、指示をとばせば、自らも駆け出す)
……ふん、帝国が、皇帝が憎いか。西の死者ども。西の怨霊共
奇遇だな。それにだけは俺も心底同意してやる -- 宗爛
- (何処から湧いてきたのだ? 後方に位置していた筈の我が隊の側面に喰いつかれた。見る見るうちに夥しい数の死者を出していく、惨状!
ああ、メルセフォーネの予知はこのことを言っていたのか。負の憎念渦巻き、屍の異形群現る およそ90名の薬士率いる男は、宗爛の撤退命令を即座に実行し、蟲や山羊を反転させて戦線を離脱 撤退際、後に「柱の騎士」と称されることになるそれらに、強酸や火炎瓶、び爛性のガスを詰めた容器を放り込むが、効果はいまひとつであった) -- 薄荷
- (その時、帝国軍本陣の後ろから馬の足音が響いてきた。それも伝令の時のように一頭の馬の足音ではない
指揮官として軍を動かす宗爛ならば、それが丁度中隊規模の騎馬隊の足音だと気付けるだろうか?) 帝国軍の撤退を支援しろ!戌徒部隊、玄骸副隊長を先頭に突撃せよ!! (殿として馳せ参じた戌徒部隊隊長の将義は前方へ刀を向けて指揮を執る。帝国の不利を知った後方からの増援部隊だった) -- マサヨシ
- ハハハハハハ。なんだあれは。反則じゃねぇの。何もかも台無しだ、ありゃあ。
(愉しそうに笑うと馬上で刀を抜き)俺の隊のやり方はわかってンだろうなぁ…… 突撃だ!! あのバケモン連中にラブコールだ、相手の気を引いて撤退支援といくぜぇぇぇぇ!!! (玄骸の率いる部隊が敵に向けて突撃、遅滞戦術を試みる) -- 玄骸
- 薄荷! 御苦労! 重量薬物は全て使いきってかまわん、ありったけ吐き出していけ!
(指示を忠実に実行する薬士隊の活躍と撤退を見送ってから……それが近付いてくることに気付く) ……バカな、この局面で撤退支援だと、死ぬ気か? まさか…… (そのすがたは、いつか見た倭州の男……) ……将義……! 遠州予備隊……戌徒隊か……! -- 宗爛
- …もとより、奴兵とは捨て駒として存在すると聞き及びます宗爛将軍 (宗爛の隣で馬を止め、突撃する玄骸を見送りながら語る)
既にこの戦場は手柄を競える状況ではない、との後方司令部の判断で御座る。しかし…あの巨大な敵は一体? デイダラボッチのような…しかし、それにしても剣呑過ぎまする。まるで――黄泉の使いの如き凶気… (その声は聞こえずとも、死地に愛された男の魂はソレの本質に感づいていた) -- マサヨシ
- (将義と宗爛の会話を他所に玄骸が率いる部隊は敵に果敢に攻撃を仕掛ける)
(途端に騎馬兵たちは吹き飛ばされ、肉片が空を舞うが玄骸の狂気の瞳は曇りはしない) オラオラ、バケモンンンンッ!! 手前ぇらの相手はこの俺だぁぁぁぁぁ!!! (その狂気が伝染するかのように彼が率いる部隊は絶望的な戦いに身を投じていく) -- 玄骸
- ;……わからん。完全に謎の敵だ。わかっていることは二つだけ
奴等は帝国を心の底から憎んでいて、帝国軍にだけ攻撃を続ける敵対勢力であるということだけ 捨て駒といえど、その命を散すに相応しい戦場とそうではない戦場がある ……今は後者だ。必ず生きて戻り、本隊にあの怨念共の情報を持ち帰れ 武運を祈る (玄骸の突撃と陽動を確認すれば、)
(その後方で今正に腕を振り下ろさんとしていた巨人の両手が吹き飛び、転倒して行動不能になる) -- 宗爛
- 「殿下! やりました! 火砲! 炸裂弾と祈祷師の地術は通用するようです! 連中足場が弱いです!」
-- 六稜兵
- よし、残弾全て打ち込んだら撤退だ
玄骸、将義……後は任せたぞ 撤退する(それだけいって、前線を離れていく) -- 宗爛
- 人の想念が渦巻く代物ならば、荒魂と比べれば何とかなる筈…いや、するのが拙者の務めで御座るな
心配ありがたく存じます。我らは踏んで倒れるような素直な轍ではないので…今は逸早い撤退を (そして前方で無闇に突っ込んでいる者達に檄を飛ばす) お前達!玄骸に釣られるな!三馬身後方で良い!! 玄骸、貴殿の剣には「攻め」しかないのか…!! (呆れたように言って刀を側面で真っ直ぐ構え――) 宗爛将軍! 援護感謝致す!! 我の身は門也。如何なる敵をも跳ね除ける仁王の剣を振るおう! (そのまま突撃し、玄骸の助勢に加わる) 己と玄骸以外の者は撹乱に徹せよ! 帝国軍本隊の後退まで時間を稼げばそれで良い!! -- マサヨシ
- 邪魔すんな将義!!(闘争の狂乱にあって助けに入った将義を邪魔者扱いし)
俺が求める戦争はなァ……そんな生温いもんじゃねぇんだよォ!!(二人の馬身が並ぶと舌打ちを一ツ) 足だけは引っ張るなよ!!(怪物相手の遅滞戦闘はさらに激しさを増していき) -- 玄骸
- 己が邪魔ならば斬ればよかろう。……その余力が、この状況で生じるならば…なっ!
(言霊を込めた刀によって、力強く敵を振り払う太刀筋にて巨人の力に対抗する。だが腕へかかる負担は相当なモノ…) ふっ お互い、未熟も良いところだ……総員!馬だけは傷つけるな! 撤退できなくなるぞ!! (後方の本隊を確認する。大軍の姿は既に米粒程度で、間も無く自分達も逃げれる頃合だった) なんとか、今回も生き延びれそうか…… 総員!今しばらく耐えよ!! (その後戌徒部隊は大きな被害を出しながらも命からがら撤退をしたという…) -- マサヨシ
- ────彼女が最前線に着いた頃、眼前に広がっていた光景は・・・・・・伝え聞いていた状況とは、まるで異なるものであった
「・・・・・・あれは・・・・・・・・・・・・?」 周辺に蔓延する死の匂い───しかしそれは、通常の戦場の「それ」とは明らかに違っていた あの巨大な塊は・・・・・・屍と、鉄と、魔術と、怨嗟と───戦場に転がる、あらゆる負の物質の集合体とも言うべきもの、だろうか しかし彼女には・・・何故か酷く親しみ深く、そして・・・儚きものに感じられた。それは恐らく、己と同じくアルメナの禁術から生まれたものに他ならぬと直感的に理解した為か そして、そうであるならば・・・・・・己の行く末を暗示した姿であろうと思われるが為か・・・・・・
零れ落ちる雫を拭い、動き出す。・・・何かを振り切るように、鋭く -- エルサ
- 左様。あれこそ神の見せた奇跡。そして、我等神殿騎士の行先の姿だ
(いつのまにか、それは背後にまで迫っていた) (チェインメイルの上からフードを目深に被った一団……戦場において今は味方であるはずの……神殿騎士団) ははは、まさかこんなところで出会えるとは思っていなかったぞ。神殿騎士エルサ これも神の導きだな -- カルロ
- 久しく耳にしていなかった・・・いや、聞きたくもない声が聴覚に押し付けられる。この高笑い・・・・・・かつての同僚、ブレンゴーラ家の嫡男である
西方諸国の連合軍であるという事は、当然アルメナからも増援が来ているであろうとは思っていた。しかし・・・よりによってこのカルロだとは────
「・・・・・・このような所で目掛りするとは、何の因果かな・・・司教殿」 -- エルサ
- 知れたこと。神は未だお前の罪を許していないということだ……神殿騎士の面汚しめ
(吐き捨てるように言い放ち、傷のついた額の三眼を細める) 分かっているとはおもうが、お前に出ている出頭命令は未だに生きている 戦局も決した。大人しく同行してもらおうか -- カルロ
- ・・・我が主は、アルメナに非ず。そして今の私には最早アルメナに戻る意義も、意味も、意志もない。(無表情のまま、淡々と言い放つ)
さらに、私は現在「汚染公」の客将としてスリュヘイムに身を置いている・・・我が身を如何したくば、然るべき筋を通してからにして頂きたい。 ・・・最も、「打ち切られてはいない」程度の出頭命令で国が動かせれば、の話だが。 (元々、秘儀が継続できなければ死に至る神殿騎士には、生きてアルメナから出ることなど法に想定されていない・・・なればこそ、これまで追手も掛からずに居れたのだ) -- エルサ
- はっはっは、流石は元神学校主席。口と頭は良く回るようだ
確かに、しかるべき筋を通すのならば君の言うとおりかもしれないが……此処は戦場で、しかも乱戦地だ (手に手にメイスを持った神殿騎士の一団が、包囲網を縮める) 友軍の、しかも何時死んでも可笑しくないはぐれ神殿騎士が1人いなくなったところで……誰も不思議には思わない (いやらしい薄ら笑いを浮かべて、柔らかい口調で司教は語る) 元同僚としての最後の警告だ。同行しろエルサ……我々はこの場で異端審問会を開くことも辞さないぞ? -- カルロ
- (一触即発の空気…対峙する神殿騎士と神殿騎士のその間に)
(図らずも割って入る、これまた騎士…タイミングが良いのかどうか。少なくとも天運には恵まれていたようだ) グレヴィリウス卿か!貴殿も一時撤、退…(カルロらの方を向くと)軍議中だったかな? -- レーヴェンフック
- ・・・・・・同じ事を二度言わせるな。戯れに弄くられ、狂わされ、飼い潰される余生など金輪際御免被る。
(「ひとでなし」の身体から必殺の気合が溢れ出す。雑魚は物の数ではないが、カルロの存在だけは少し厄介ではあった)
(・・・・・・その時、見知った姿と声が現れる!) レーヴェンフック卿、御無事で真に重畳・・・です。(どうする、か・・・?手負いの彼を危険に晒す訳にはいかない・・・) -- エルサ
- 一度は神の御威光に触れたというのに……その言い様、嘆かわしいな
やはり……お前は連れ帰って「再教化」する必要があるようだ (いよいよ神殿騎士達がメイスを構え始め、いよいよ神殿騎士同士の殺し合いが始まろうとしたそのとき……) む……? 貴様は……あの、レーヴェンフックだと? (そのタイミングで統一王朝の騎士を名乗る異形が現れる) (チッ……流れ者のエルサはまだ機密保持を名目に書類上任意同行させることも可能だが……スリュヘイム正規軍の前でそれをするわけにはいかないな) (そう損得勘定を瞬時に済ませれば、作り笑いを浮かべ、) はっはっは、まぁ、そんなところです 同じ統一王朝の属領騎士として、少しお話をね……さて、エルサ「さん」 教会はともかくとして……枢機卿はまだ貴女に会いたがっています 近いうちにまた会いましょう。それではまた (流石に広告塔のレーヴェンフックまで口封じしてしまえば当局からの言及を免れる事はできない) (小さく舌打ちを残し、そうエルサに言い残して撤退を始めた) -- カルロ
- 如何にも統一王朝の騎士!ふむ…?(矢衾に炎の跡、返り血まで塗られているが元気は衰えず)
(過去の諸々、流れた経緯まで知っているわけでは無いにせよ 古巣らしきが教化領であることに考えが至り) 「公国へ」撤退命令である、軍議を割って申し訳ないが…乗るかね?グレヴィリウス卿 (去っていくカルロらを見送り、騎馬の後ろを指さす) -- レーヴェンフック
- カルロが見えぬ程に離脱したのを確認し、戦闘態勢を解く。
(流石に、名の知れた統一王朝の騎士をも消しにかかる愚行までは犯さなかった、か。) 内心、有難いと思う自分が居た。神殿騎士同士の戦いは生命を大きく削る・・・・・・無益な戦は、出来得る限り避けたいところだったからだ
「・・・・・・かたじけない、レーヴェンフック卿。よしなにお願い致します」 (馬の後方に跨り、騎士鎧にしっかり掴まる。・・・・・・暴れ続ける亡者の塔を眺めながら、自らの行く末を案じたが・・・詮無き事と思い直し、考えるのを止めた) -- エルサ
- 命脈が繋がったとはいえ…戦力の低下は著しいのだ(嘶き一つ、騎馬はゆく)
卿、先走るでないぞ(果たして、その忠告は普段の戦い方に対するものだけか?) (図らずも争いを止めた統一王朝の騎士の胸中は、まだわからなかった) -- レーヴェンフック
- (バルトリア平原南方。神国アルメナ側の小高い丘から見える)
(ちょうど帝国の前線後方が臨めるところかと、そんな場所に一団はいた。) (そこらに向けて兵を横槍として入れようとしていたのだから…) (本来はここいらで茶々を入れようとしたのだが、それは柱の騎士出現を新たな機転とし) (ゼナンから出でた神聖騎士団の遊撃部隊はそれにかこつけて突撃していった。) (残されたのは外様の黒山羊傭兵団とフリストフォンであり…) (その戦場の有様を見た傭兵団長は、声を挙げて笑い始めた。) -- ヴァイド
- (その横、声を上げずに路石に座り、肩を震わせる。まるで演劇を見ているかのように優雅に口の端を歪め)
(視線の先では暴がより理不尽な暴によって蹂躙され、轢き潰され、惨劇の様相を呈している) 全く、今ばかりは全てを見通すことが出来る慧眼を、この両の目に与えてくれなかった神に感謝をしたいな。 よもや、この戦場と戦況はあの場にいる誰にも読めるまい。 (足を組み替え、哄笑するヴァイドに語りかける)或いはこれはお前の方が近しい技術だ。 本当にこの悲劇と喜劇の本質を理解しているお前のほうが、よりこの劇を愉しめるのかと思うと、 久々に他人を羨むことをせねばなるまいな。 (路石の一つに腕を置き、両手を広げてこの一連の幕間に敬意を評した) -- フリストフォン
- (フリストフォンの観衆が如く振舞うその姿がまた、引き立てる)
(愉快で、美しく、醜く、雑多な群像の奇跡と…憎悪の妄執) 酒をもってこい (はい、と短く了解した副官に持ってこさせたワインの瓶とグラスが二つ) (1つはこの劇を楽しむ者へ、もう1つは自分へ) (栓を開ければ注ぎながら応える) あぁ、そうだ。あれは俺に近いというより俺側の術だな。 似たようなことをフロフレック領でやって遊んだ。 無論、あの宗爛と暁翼がいたときに使った俺の術も同じようなものだ。 あれはな…いわば混沌だ。方向性をを持った混沌。 見たところ素材は死肉と魂。肉は物質ゆえにいかようにこね回せるためあんな醜悪なものだ。 アルメナやスリュヘイム、バルバラの術も関わっているか…だがそこは重要じゃない。 大事なのは魂だ、心だよ心。人の心。 魂が肉体と質を違えるというのはわかるだろう?人の楽苦はそれこそ人の数だけだ。肉体がいくら1つになろうと 魂がバラバラでは到底あのようにはなりえない…群集と同じだ。日々生きる群衆と同じ、自分達のために生きてるからな。 だがそれらでも1つになるときがある…なぁ、フォン。お前ならわかるだろう? それらが1つになるときがどういうときか。 魂をかき混ぜ、1つに流す…そのかき混ぜる棒が何なのか… (互いの手には赤き酒で満たされたグラスがあり、瞳に映るように揺らす) -- ヴァイド
- ……成る程。この繋ぎにも素材にも材料に困らぬ時代だ、在る意味ではこの義も亡き戦場には相応しい存在であるやもしれんな。
(喉奥で嗤う)それにしてもかくも醜悪たる技術を良くも戦場に出せるまで練り上げた物だな。 私にはあれを動かす亡き戦士の怨念より尚、それを練り上げたる者の執念のほうが甘美に舌を刺激するがな。 (怨嗟の嘆きが音無き声にて聞こえるかのごとく、その戦場の悲鳴は指の間で酒盃の酒を甘くする) (血のように赤いグラスを片手で傾けて掻き混ぜながらヴァイドを見る) そういえば、見ろヴァイド。あれが私の言っていた、手駒ではない駒に他ならない。 金貨一枚、兵士一人すら失わず、結果だけを簒奪できる、最高の駒だ。 ……こういう視点も、あるいは悪くはないだろう? (眼下では、帝国の兵が無残に蹂躙され、取り込まれていく) (互いに意志の違う魂が喰らい合い、その凄惨で悲痛な叫びが耳に届き、静かに目を閉じる) (戦場は既に、その腐肉の巨人によって制圧されつつある) -- フリストフォン
- ハハハハハ!当然だ、人間なぞいつの世も考えることなど同じよ
それが困極まれば尚更。表に出るのがいつかの違い、おかしくもあるまい。 だがな、それが今現れた。いかなるものの気まぐれかしらんが生まれたのは大きい。 実に大きいぞ、楽しいぞ。(赤いグラスから香る匂いも) (戦場に流れる憎悪も、甘く舌を溶かすような) 金貨一枚、兵士一人失わず結果を生み出す最高の駒、実にいい。 フォン、お前にとって手駒でない手駒は…そう、この最高の手駒は… 誰もが欲しがるだろう。 窮地という舞台に現れれば、邪悪な敵を、侵略者をなぎ払う神の奇跡 人々の渇望した勝利への鍵。希望の御旗。 (赤い赤い雫を舐める) その素晴しい英雄の騎士を (腐肉の巨人が。憎悪の塊が帝国兵を肉片に変えれば湧き上がる歓声) (立ち上る激。沸き立つは連合兵) -- ヴァイド
- では、感謝せねばな。思惑通りに行く事と、思惑通りに行かぬ事を。
私はその何方でも構わない、どちらでも愉しめるという自己の在り様を今日ほど誇らしく思う日はない。 予想と予測が不可能であることが、喜劇の第一条件であるのだとしたら、この舞台は。 ――私にとっては最高に甘美だ。(深く視線を落とし、醜悪なる戦場を見ながら嗤う) (酒盃を回し、中身を静かに呷った)
驚かされる。 彼岸の不幸という美酒は――ここまで甘い味がする物なのだな。 知っていたか……? ヴァイド。 (口の端を持ち上げる笑みを以って、この戦場に於いて自らの腹心たる男に……同じ愉悦を解する者に、尋ねた) -- フリストフォン
- それだそれ、いい。それはすごくいいぞ。
どちらでもいいというのは、人より倍楽しめるということだ。 退屈王なぞとんでもない…愉楽の王になれるぞ…ククク、アハハハハ! 続く第二の条件は。演目を動かすのが何も知らぬ群集が演じることではないかな。 役者が役者としらず、道化を演じているのは、ハハ ハハハハハ!(杯を空にすれば) あぁそうだ、そうだとも だがなフォン、これはな クセになるぞ? (グラスを逆さまにし 最後の一滴を舌へ落とす) (甘い甘い病み付きになる味を…同じ愉悦を味わう友へ…戒めとも誘いとも取れぬ言葉で応えた) (舞台を愉しみ酒を呷る宴は続く) -- ヴァイド
- 黄金暦223年 8月 神聖ローディア共和国 首都圏 --
- (一通り前線部隊を掃除し、前線を確保して数日)
……アンデッドといったか。死体をそのまま操る技術は脅威ではあったが……タネが割れてしまえばどうということはなかったな (術師を攻撃、もしくは焼き払ってしまえばいいとわかればそれほど苦戦はしていなかった) (先日の戦闘で情報収集を優先したため、それが後に生きたのだ) -- 宗爛
- (重甲冑により逃げ遅れたか、もしくは他の諸侯が連れてきた兵か…炭化したアンデッドと、鎧が積み重なった戦場のそのまた隅で、蠢く影ひとつ)
むう…迷った。後方とも連絡がつかぬ…いや、戦線が押し込まれている…?(凹み放題の鎧騎士と騎馬、単騎で彷徨うその途中) となれば…もしや…此処、敵中、では…?(いつぞやと同じく、煙に視界は悪い。嫌な予感が大きくなってきた頃合いに) あっ(目が合った、合ってしまった) -- レーヴェンフック
- (六つ目の異形面が、騎士の異形面をとらえる)
……アンデッド部隊の指揮官か。生き残っていたとはな 奴等の情報が欲しい。捕らえろ -- 宗爛
- 「御意!」
(宗爛が命令すれば、大蠍に乗った騎兵達がレーヴェンフックへと押し寄せてくる) (砂上における多脚機動の速度は尋常ではない) -- 六稜兵
- 侵略者め出よったかァーッ!(あっという間に囲まれて、じりじりと包囲を狭められる中)
我が名はエルネスト・フォン・レーヴェンフック!統一王朝の騎士なるぞ! (今度の名乗りは短めにした成果か、幸いにして言い切った) ハイ・ヨー暁號!(その騎馬は、蹄鉄の脚音がしない。代わりに、駆ける度に全身を擦れる金属の音…甲殻類の、ように) (目前の大蠍に挑みかかるのは、馬の形をした粉砕機に等しい) -- レーヴェンフック
- 「!? 今度はなんだ!?」
「て、鉄の馬? ごぅれむとかいう奴か?」 「ええい、うろたえるな! 敵は一騎だ! 散開!」 (バッと散開し、四方八方から弓を射りつつ、援護を受けつつ四方から突撃した大蠍騎兵が水銀槍を振るう) -- 六稜兵
- この距離で騎士の鎧を突き通せると思うでないわ!
(長槍―マスケット銃だったもの―を振り回して幾らか弾きつつも。四方からの同時攻撃、その槍を絡めとる!腕、首、そして槍。止められた騎兵は、その桁外れの膂力を感じ取れただろうか?) (一瞬後には、まとめて投げ飛ばされながらも) -- レーヴェンフック
- 「ばあぁ!?」
「かあああ?!」 「なああぁあうあうああああ!?」 (一瞬で騎乗から引き摺りおろされ、砂上に叩きつけられる帝国兵) 「な、なんという膂力……!」 「囲め!! 囲んで一気に……」 -- 六稜兵
- しかし、騒然とした戦場に突如一矢が投げ込まれる
砂塵の風圧を受けたその弓は正しく疾風の如き速度でレーヴェンフックへと迫る) (……穂先に火薬の括りつけられた炸裂矢だ) --
- ガハハハハ!雑兵め、将たるを止められるは将のみぞ(やはり名乗りを上げてこそ身も入るというもの。やっと調子が戻ってきた、ところで相対する兵らの装備に気付く)
そうとわかれば正々堂々と一騎打ちにて…うむ?(先日一瞬だけ見るや昏倒した具足―卑怯にも、一騎駆けに雨のように矢を射りかけた―) 貴様ら、先日のッ
(騎士兜に直撃し、途端に爆風と炎を撒き散らす矢!) -- レーヴェンフック
- (弓の軌道の先にいたのは、弓を構えた六つ目の鬼)
……なるほど、確かに将の攻撃なら脚を止めるに足るようだな 何をしている。蜘蛛糸を飛ばせ。動きさえ封じてしまえばどうとでもなる (継矢を構えながらも、部下に指示を飛ばす) (そして、放った継矢と共にレーヴェンフックに襲い掛かったのは大蜘蛛からとった糸で作った縄) (鋼鉄以上の硬度を誇る蜘蛛糸が四方八方からレーヴェンフックへと放たれる) -- 宗爛
- (不死兵が炎に弱い。それは、このひと月の間に得られた情報であり、実際正しい。)
(ヒトは炎に巻かれれば窒息する。それもまた正しい、ただでさえ通気の悪い鎧であれば尚更) (爆炎が泥と油まみれの鎧を彩り、馬上にはさながら漁火が出現したようで) (だが、何事にも例外は―前提の大枠からの、例外は存在する) 名乗りはどうしたァ!(燃え盛る熱が、その身に詰められた瓦斯を活性化させ!絡む蜘蛛糸を引く兵に獣ごと引き摺り、一歩一歩近づいてくる…) -- レーヴェンフック
- 「な、ば、バケモノ!!」
「殿下! お引きください!! こやつ、尋常の兵では……!」 -- 六稜兵
- 名乗りあげ……か。いいだろう。その蛮勇に敬意を表し、この忌み名を語ってやる
(しかし、怯まずに前に一歩でれば、再び矢を番えて叫ぶ) 字は宗 号は六道 名は爛 我が名は大爛帝国第72皇子 宗爛 極西の狂奔よ! これで満足か! -- 宗爛
- リクドー・ソラン…儂を策に嵌め、儂の兵らを退けさせたる働き、蛮将にして天晴!(弓の届く距離。一歩一歩近づいてくる)
しかし戦には貴賎があるのだ…(銃の届く距離。一歩一歩、踏みしめてくる) その不明、冥土で先王に教えを請えいッ!(そして槍の届く距離へと、一足飛びに踏込もうと―した瞬間) (死体で埋まった戦場のメタンガス濃度が、ある一定に達した。それは、未だ熱される鎧へと射掛けられた炸薬を、最後の引火点にして―) -- レーヴェンフック
- 戦に貴賎だと? 笑止
戦に、争いに……大切な何かを奪い合う醜い殺し合いにそんなものはない 殺し合いの本質を美化の果てに歪めるお前たちこそ……偉大なる統一王朝の祖とやらに教えを請うがいい (はき捨てるように、炸薬矢をもう一矢放てば充満した可燃性ガスが一瞬で燃え上がり) (業火がレーヴェンフックをのみこみ、さすれば……大地が陥没し、その流砂の中へとかの騎士を誘っていく) (術師の呪いにより、この近辺の地層は既に探っていたのだ)
……西の連中はそれを理解しないが故に、負けるのだ。我等帝国に。鏖殺の果てに国を築いた狂気の民に -- 宗爛
- ぬわぁぁあああああアアアアアアッ!!?(紅蓮の圧力が、骸の地面を一瞬で剥ぎ取る)
(砂に呑まれ、遥か地下の果てへ…騎士と愛馬は、またもや策に嵌まったのだ)
獣が……理ぞ…!………再…(絶叫は遠く響いていた…) -- レーヴェンフック
- 「お、おおお! 殿下が! 殿下がバケモノをやったぞ!」
「殿下、お怪我はありませんか!?」 -- 六稜兵
- 大事無い……(出来れば生け捕りにして情報を吐かせたかったのだが……まぁ致し方あるまい)
……引き上げるぞ。前線の掃除はすんだ。あとは本隊の仕事だ (それだけ指示を出して、撤退していく) (このとき、彼の物の死体を……否、残骸の行方を確認しなかった事を後に宗爛は後悔する事となるのだが……この時の彼に、それを知る術があるはずもなかった) -- 宗爛
- 黄金暦223年 10月 神聖ローディア共和国 荒野
(赤と黒の2色になった雲が360度遮るものの無い夕焼けの空の下を流れていく。) (俄かに強くなった風が荒野に黒々と長い影を落す城壁を吹き抜けていった。そこでほんの数時間前まで) (戦闘が行われていたとは思えないほど静かで、不意に風の音に緩慢な羽ばたきの音が割り込む。) (無人となった城壁の上に降り立った巨大な鳥が居た。あまりに巨大すぎて、そいつが止まっている城壁) (の壁が小枝か何かにみえてスケール感が狂う。) (鳥はその大きな羽が落した影の下で死んだ兵士の肉を啄ばんでいた。蟹の殻を割るように鎧を爪と嘴で) (器用に剥き、服を裂いて柔らかい腹を噛み裂いては、肉をちぎりながら飲み込んでいった。) (まだいたるところで煙をあげているその城の中、同じ事があちこちで行われていた。)
(時間を巻き戻して、その城が落城する数時間前、鳥の餌になる兵士達が自分の腹に昼飯を) (掻きこんでいたくらいの時。) (ゾルドヴァ周辺を完全に押さえた大爛帝国軍は東ローディア首都、ゾド包囲網を完成させるべく) (周辺の都市、城砦を次々と攻略にかかっていた。) (荒野に山のようにそびえたった2重の城壁を持った城塞都市もそのひとつ。) (規模こそ中堅クラスだが、小高い丘に建てられた城を中心に高い物見塔と無数の銃眼を備えた城壁が) (二重に張られ、城壁と城壁の間には町と畑、さらに外の城壁の周りに広がる町を囲って延々と空堀が) (掘られていた。水源は地下水脈からの井戸だと斥候が告げ、ますますもって手の出しにくい城であった。) (しかもその城を前にしているのは大部隊ではない、本隊から数十kmも先に突出した2000人足らずの) (軍勢で、巨人の家を前にたたずむ小人の群れといった風情が漂う・・・。そんな彼らが掲げるのは『爛』) (の文字を染め抜いた軍旗と、青地に真っ赤な太陽を象形した刺繍の入った小さな識別旗。) (飛爛の率いるカタクァの軍隊だった。) --
- (さらに、合流する3千の兵)
(蟲と騎兵を中心とした、六稜の兵士達) (それを率いる将軍、宗爛) (先日の飛爛の発言を気にして、監視の名目でこの地にきている) (最前線。戦場を見晴らせる岩山の上で、飛爛と並ぶ) ……地下水路があるのなら、毒は使わずに奪取したいところですな 姉上。攻めるにあたり、何かお考えなどはあるのですか? -- 宗爛
- んー・・・
(望遠鏡で敵の城をじっと見ている飛爛。これは東ローディアで手に入れたものだ、カタクァにも) (望遠鏡はあったが、こっちの方がピントもあわせやすくて気に入っていた。) (部下である古参のシャツァル兵は、そんなものより自分の目のほうが頼りになりますわい、と笑われたりしたが。) (先日少しだけ気まずい別れ方をした宗爛と飛爛は何の因果か攻城戦部隊の先発として) (派遣された。城攻めである、『城を攻める側は、守る側の10倍の兵力と膨大な資材が必要) (やねんで、ぶっちゃけ正面からいくのはバカやで』と、兵法の偉い人が言ったとおりの事がそのまま) (この時代の常識でもあった。こちらは多めに数えて5千、対する向こうは兵士だけでおよそ8千人らしい。) (当然、司令部がこの二人に期待したのも、補給路を断って相手を孤立させる程度の仕事である。) (ところが、飛爛は周囲にちょうどよさそうな丘を見つけると、さっさとそこに陣取り、出撃するそぶりすら) (見せなかった。飛行ユニットであり移動速度の速いシャツァルの次くらいに砂漠では早く頼りになる) (蟲達になにやら大量の荷物を運ばせるよう頼んだあとは、宗爛たちの部隊が本隊から離れて) (突出する自分達に追いついてくるのを待っていた。) (そして合流したのがつい先日のことである。その間敵は城から一歩も出てこなかった。完全に篭城の) (構えである。おそらく首都と連絡しあって迎撃の体制をとろうというのだろう。)
お城頂戴ってお願いしたら、いいよ!って言ってくれないかなー (姫様はさらりとアホなことを言い出しなさった。宗爛と再会したあともなんだかずっとこんな調子だ) (のんきに冗談を言ってみたり、偵察いってくるといっては、一人でココロアの背にのって飛んで行ったり。) (相手がまったく動かないので、いっそのこと本隊が合流するまで仕事をサボるつもりなのではないかと) (すら思える。) -- 飛爛
- 時と場合によりますが、今は難しいでしょうな
(あのような別れ方をしたところで、互いの絆に傷がつくわけでもなく、こちらも普通に接している) (無論思うところがないわけでは決して無いが……それ以上に姉のことが心配なのである) 言われたとおりの資材は持ってきましたが……これは少し手間が掛かりそうな要塞ですな。あれだけの兵と資材で本当に足りるのですか? (宗爛にも腹案がないわけではないが、この城攻めの全権を任せられているのは宗爛よりも位階が上の飛爛だ) (彼女に何か策があるのならそちらがまずは優先である) -- 宗爛
- 上のほうは無理だろーなーとか思ってるわよねきっと。癪だからいろいろ準備はしたけどね・・・。
(望遠鏡を畳みながら宗爛のほうへ振り返る飛爛。もう10月に入ったというのに暑い日が) (続いたせいか、毛織のショールは外して、白のワンピースと短いレギンスという格好だった。) ねぇ、宗はやるとしたらどうやって攻める? -- 飛爛
- (無防備な格好の姉から恥ずかしげに目を逸らし、淀みなく答える)
煙攻め 風上は我々が完全に陣取っていますからね。ここで火を焚き、砂塵と煙で要塞を包み込んでやればいい 天教術師に風向きを操作させれば、数日で中にいる兵の半数は窒息死するでしょう その後は空から姉上の鳥が城壁に炸薬でも落としてくれれば、それで事は済みます あとは降伏勧告でもしてやればいい -- 宗爛
- 炙り出しだね!ちょっと柴を調達するのが手間だけど、それが一番よさそう。飛び出してきた敵だけ
迎え撃てばいいし、住人だけ先に逃げてくれるかもしれないしー。やっぱ宗は頭いいねぇ、うん。 (なるべく被害は最小限に抑えたい、当然飛爛もそう考えていた。) ・・・どうしよかな、やっぱ宗の言うとおり燻すだけ燻して、本隊来るの待ってようかな・・・その方が 絶対安全なんだよねぇ・・・。 (味方の大部隊は明日か明後日、遅くとも三日とまたずに来るだろう。) でも、それじゃあ・・・いつまでも使いっぱしりで終わっちゃうわよね・・・。 (遠く、敵城砦を見下ろす飛爛の空色の瞳が、獲物を狙う猛禽類のようになっていたかもしれない。) (幾たびかの戦いを経る内に、雛鳥が綿毛を脱ぎ捨てて翼と爪を得るように、今までの彼女とは別の) (何かが育ち始めていた。) -- 飛爛
- 問題ありません。資材なら山ほど持ってきました。それに……足りなくなったらアレを燃やせば良い
(そういって顎で示した先にあるのは味方や敵兵の死体) 骨や灰も風にのせてやれば戦意も殺げることでしょう
まぁそうですな……本隊がくるまで待つのが利口ではありますが…… (姉の目を見ればにやりと微笑む) 確かにそれでは、我々にとって面白い戦果になりそうにはないですな
……打って出ますか。姉上 -- 宗爛
- 黄金歴223年 7月 神聖ローディア共和国 ゾルドヴァ古代遺跡群 --
- 混乱の最前線 --
- (入り組んだ古代遺跡。砂塵が視界を奪い、街道沿いの街からの報―耳も、塞がれ気味のある一角)
(スリュヘイム汚染公領より義に駆られ僅か一部隊で加勢に来た、鎧まみれのアンデッド軍が陣取る一角) (敵影確認、と塔番が言うがはやいか、部隊指揮官たる全身真鍮色の騎士が同じく鎧に固められた馬に跨り一騎にて突出するや言い放つ) ゴァハハハ!やあやあ我こそは統一王朝が騎士にしてスリュヘイム公が信任を受けたる将、エルネスト・フォン・レー… -- レーヴェンフック
- (砂塵の彼方より、迫り来る異形の騎兵)
(あるものは蠍を駆り、あるものは大山羊を駆り、またあるものは恐ろしく早い馬を駆る) (名乗りあげをするレーヴェンフック。それに対する彼らの第一答は) (遠距離からの合成弓による乱射であった) (同時に突撃してきた大山羊の強靭な前足がレーヴェンフックを踏みしだいていく) -- 六稜兵
- ヴェンッ(雨のように山なりに降りしきる矢は、勿論一帯ごと鎧騎士を捉えた。)
(冗談めいた装甲厚に阻まれ、貫通こそしなかったが ご丁寧にも後ろ足で立ち、崩しやすい姿勢であったのが災いした) い、いざ尋常に!(言いかけた辺りで先駆けの大山羊に愛馬ごと蹴り転がされ) 勝…ブッ(あとは散々に踏み抜かれ、後方の本隊へ襲い掛かる敵に踏み台か何かと勘違いされる始末)
(一方、指揮官であるはずの騎士があっという間に見えなくなった公国軍704戦術試験部隊はその間に迎撃の用意を整えていた) (副官の指揮ゆえか?レーヴェンフックはお飾りに過ぎないためか?それとも他の要因が…?) (ともあれ、殺到してくる騎兵軍に対し これまた冗談めいた重甲冑の戦列歩兵が遺跡の端々に並び、マスケット銃の一斉射が浴びせられる) -- レーヴェンフック
- (十分に敵をひきつけてからの銃撃の一斉射撃。果たしてこの時代にその有用性を知るものが居たか否かは不明だが……後の歴史が語る通りの劇的な戦果が即座に齎される)
(巨大な的といって差し支えない騎兵に対しては、精度の雑なマスケットでも十二分な威力を発揮するのである) (山羊、馬は無論一撃で即死、または混乱して暴獣と化し、帝国軍前線を混乱させるに十二分な働きをする) (蠍や百足の装甲ですら至近距離からの一斉射撃を防ぐ事は叶わない。未知の痛撃に暴れだしたそれらが公国軍前線にいたる前に帝国軍前線をかき乱す) -- 六稜兵
- 「な、なんだアレは!? 短筒か!?」
「わからんが……だめだ、これではいい的だ」 「爆薬を投げ込め! 煙幕を焚けば連中も無闇に飛び道具は使えん!」 -- 六稜兵
- (即座にダイナマイトに似た筒状の爆薬が投げ込まれ、公国軍前方にて炸裂)
(爆風と砂塵の煙幕に紛れ、騎兵達が水銀槍を構えて突撃してくる) -- 六稜兵
- (予め行動入力された文字通りの木偶ではあるが、こと防衛戦に特化された公国軍に限って最大火力を有するのはこの戦列歩兵だ)
(黙々と銃撃を続けるその優先標的は…「ヒトより大きく、向かってくるもの」 甚だ乱戦には向かないが、正面切った会戦に置いてこれ以上の命令は必要ない) (視界―正確には、遠見役と術師の視覚だが―が塞がれようと、その命令は書き換えられない、銃撃は止まらない) (しかしだから。目視から銃撃までの反応速度が、煙より突然出る騎兵に追いつかなくなる)
(六稜騎兵と公国歩兵、白兵戦にて激突。マスケット銃の制圧力を殺され、歩行もままならない甲冑のアンデッドらは水銀槍の餌食かと思われたが) (「硬い」のだ。魔導製鉄に裏打ちされた、機動力を完全に度外視した厚いだけの重甲冑。槍を弾くその姿は置物か何かのようで) (同等以上の質量で潰すか…焼くか、捨て置くか 一言も喋らず、死臭を漂わせるこの不気味な兵士達に対した前線兵はその判断を迫られる) -- 704試験部隊・戦列歩兵群第6ブロック
- (突貫し、煙幕より飛び出した重装騎兵が前線の歩兵を物量と質量でもって蹴散らし、人馬一体となった槍により時には文字通り一刀両断するが)
「!? こ、こいつら……怯まな……」 「バカな、どうして上半身だけでも驚きもせずに……!」 (行動不能と判断された前線を公国軍後方はただの囮として利用する。帝国軍は戦に強い。だが、その強さは恐怖という情報を混みでの話だ) (恐怖も、生気も、そもそも感情そのものがない死体相手の話ではない) -- 六稜兵
- (後方より、その様を見つめる影が1つ。6つ目の仮面を被り、巨大な黒い大山羊にのったその男は静かに呟く)
……酷い有様だな。今、どれだけ残っている? -- 宗爛
- 「で、殿下! このような前線にまで……はっ! 3個中隊ほどはまだ後方より弓で支援している状態です! 増援として突撃させますか?」 -- 六稜兵
- いや、いい。火砲を使え。ないなら弩砲で構わん
一斉射しろ その後に撤退する -- 宗爛
- 「は!? し、しかしそれでは前線の部隊も巻き込まれて……」 -- 六稜兵
- 後方部隊まで追撃されて全滅するよりはマシだ
正体の分からない敵と戦うことは得策ではない。最後に火砲と弩砲が通じるかどうかだけ確かめて引き上げるぞ 幸いにも連中には馬がない。火砲で暴走した蟲と馬を使えば十二分な足止めになる できれば敵の装備を鹵獲したいが……まぁ面倒事は狗面あたりに任せればいい ……とにかく、天教術師を使ってすぐに全部隊に伝えろ。いいな? (それだけ言い放ち、後方へと下がっていく) -- 宗爛
- 「ぎょ、御意に……」 -- 六稜兵
- (直後、後方より直接大質量の炸裂弾と太矢による一斉射撃が前線を蹂躙する)
(絨毯爆撃さながらの凶行に巻き込まれ、前線の帝国兵、六稜兵の多くもまた戦死したが……) (果たして、はじめから死んでいる死者達にはどの程度通用したのか) -- 六稜兵
- (一方こちらは別の意味で置物と見紛う有様の騎士である。散々に踏み荒らされて半ば地面に埋まった状態で目を覚ました)
ぬおお!おのれ卑怯なり東夷どもめら!(がばりと起き上がるその姿は、ベコベコに凹んでいるとはいえ人型を保つ鎧のまま) ええい儂の名乗りが半端に終わった怨み、今こ…そ… (その場に轟く、着弾の音 帝国の砲と弩が、遺跡と味方ごと後方の歩兵らを吹き飛ばしたのだ) ぬおおおお?!(立ち上がる愛馬が、主人を突き上げ背に乗せると走り出す ここいらも主戦場を離れているとは言え、充分に射程内) ええいどこへゆく暁!我が隊が!兵らが!(屈辱的な撤退―騎士の緒戦は、それでもツイていた方であったようだ)
(余談ではあるが。前線が白兵戦状態に陥った時点で後方馬車に待機していた術師ら、「人材」は早々に撤退していた) (前線に残ったのは杭のような矢に半身を潰された歩兵。直撃弾を喰らい関節から千切れた歩兵。延焼に巻き込まれ、鎧だけ残して燃え尽きた歩兵。) (惨憺たる有様であったが、銃撃の規模から比して明らかに少ない死体の数は その耐久力をある程度推察させたことだろう) (その無闇に分厚い甲冑は、ヒトが纏うには重すぎる。使い道に問題はあれど、戦利品には違いない) (ただし、構造的に脆弱なマスケット銃は残らず破壊され、あるいは「死体の手により」曲げ潰されていたが) -- レーヴェンフック
- (その遙か後方から、炎が上がるのとほとんど同時に、なにか人のような蛾のようなものが飛び去ったのを、東側は目撃したかもしれない) --
- 「…クライネ・リーゼン224が行方不明?」(馬車の中、遠見役から報告を受ける最中。追いつけぬ敗残兵に土中、水中への撤退と機密の保持を命ずる術師の隣で)
「…放っておけば、そのうち帰還するでしょう、アレなら」(とはいえ、壊滅的な共和国軍の被害に感じるものはある。今回、騎士の生存を保証するものは何も無いのだ。地の利すらも) 「彼は、高いのだから―そうでなければ、困ります」(戦術試験には格好の状況―そう、感じたのだった) -- 704試験部隊・連絡官
- 神聖ローディア側 後方陣地 --
- (地平線の向こうから土煙を上げて帝国の大群が押し寄せてくる)
(此方の最前線では騎士達が次々と名乗りを上げようと前に出ては、その都度惨たらしく殺されていく) (その様子を苦い顔で見つめている) ……やっぱー…こうなるよなー……えーっとー。今やられたの誰だー…? …あー……あの統一王朝だの何だの言ってる騎士かー……? -- リコ
- うわあ……(戦線は惨憺たるものだった。先日リコと話していた通りの光景が、そこには広がっていた)
(勇壮たる騎士の名乗り上げも、帝国兵にとってはただの隙そのものと化していたのだ。蠍、山羊、駿馬と西側陣営の戦力にない生物が次々と武功ある騎士たちを薙ぎ倒していく) ふ、踏まれとる……ありゃ助からんかな……お、おぉっ!?(瞬間、マスケットの弾ける音! 完全に劣勢と思われていた西側の抵抗に目を見張って)やるときゃやるじゃん! -- ヨノ
- 実際に見るとー…やっぱえげつねーなー……戦いに関するー…そもそもの考え方が違うなー…
(うへぇ、と声を上げながらもペンを握る手に力が篭る。ここまで東と西で常識に差があるとは思っていなかった) (帝国が西ローディアと事を構える前に、何としても出来るだけ多くの情報を中央へ送っておかなければ―) やー…でも、あの「マスケット」…だっけ?あれ持ってんのー…あいつらぐらいだぞー あいつらが突破されたらー…いよいよやべーなーこれー… -- リコ
- ああ……明らかに向こうは「勝てば官軍」を軸にしてる。名誉なんざ全く気にしてねえ。もっと早くこの情報が伝わっていればな……(ぎり、と奥歯を噛み締める。今は護衛故助太刀することが出来ない。それが歯痒かったのだ)
えっ、あいつらだけなの? もっと配備すりゃいいのに……あああ、爆発物か!? こりゃ……ん、いや…… (聞いてはいた。スリュヘイムでは死者が甲冑を身に纏い戦線に出ていると。もしあれがそうならば……) ……この勝負、わからないかもねえ(盾を構えながら、成行きを見守る) -- ヨノ
- ……アンデッドかー…。そうかそうか、帝国の奴らはーアンデッドとか知らねーんだなー…
(ふむ、と何事か考えてペンを走らせる。未知が怖いのはあちらも同じだ。此方では常識となっているが、相手には有効な何かがあるのではないか) やー…でもなー。何か雲行き怪しくねーかなー…たかだかアンデッドだけでー…足止め出来る程優しくもないんじゃねー……? -- リコ
- 帝国こそ、アンデッドとか使ってきそうな印象はあるんだけどな……スリュヘイムはあたいもよくわかんねー得体の知れんとこだからなあ
それもそうだ――!?(刹那。ヨノの真っ赤な複眼に幾重もの矢が飛んでくるのが見えた!) リコッ!!(リコに伏せるよう指示してから、最大火力で炎の壁を作り出す!! 全てを灰燼へと帰さす業火が、流れ弾を燃やし尽くした) ――ッ、やっぱこれ、しんどっ……!(はぁ、はぁと一回の使用で信じられない疲労が身体を蝕む) -- ヨノ
- まだまだなー…情報が足りねーわー…お互い様なんだろうけd―へっ!?
(唐突に伏せろと言われ、慌ててヨノの後ろに隠れるように蹲る) わっ、わわわっ!!ちょ、な、なんだー!?もえ、燃えてるぞー!?ぎゃーーー!! (ヨノに背を向けてうずくまったので、何が起こったのかさっぱり分からない。突如燃え上がる業火に悲鳴をあげるだけだ) あ、あわわ…!!だだ、だいじょうぶ…なのかー…?なんだー…な、なにが…起こったー…? (炎が収まり、そろそろと辺りを見渡しながら身体を起こす。突然の出来事に半泣きである) -- リコ
- 落ち着けっ、火はあたいのが出したやつだ! ほらっ、ここももう安全じゃねえ、帰るぞ!
(半泣き状態のリコを半ば無理やり――しかし姫を抱くような態勢で――抱き上げ、空を飛んでいった。普通の人間ではまず味わえない上空を、途中飛んでくる矢を燃やしながら進んで帰っていった) -- ヨノ
- 帝国・後続部隊 --
- (戦場に従軍中の術師の姿、未だ後方に控えたまま)
…数頼みの腑甲斐ない輩相手に、先鋒は思いの外手間取って? (…西側から帝国へと移った身としては兵法の、圧倒的な格差を思い知っただけに、意外に感じるが) (遠見で前戦を見やれば共和国以外に汚染公領の旗印も見えるが) (薬毒で鈍らず…怯まぬ不死兵の抵抗に気勢を削がれたか、立て直しを計る様子を見て取る) 嗚呼、しかし…憎きアルメナの輩もいれば、少しはこの憂さも晴れように……! (苛立たしげに白いレースの手袋を歯咬みして、引き続けて戦況の推移を見守る) -- 白の妖婦
- (手勢を引き連れて、後方に下がり、一息ついたところでその女を見つける)
(確か……西から亡命してきた魔女ときいていたが……) ……女。前線は崩壊した ここに居ては危険だぞ -- 宗爛
- (通りすがりに後退を促す声の主を女は怒気から一転して気だるげな様子で見やり…)
ご厚意に感謝を… (怒号飛び交う場に似付かわしくない悠長な礼を返して、宗爛へと笑む) 此方彼方の老いも若きも。雄と雌も、尊きも卑しきも。等しく人死にする場… それを愛でるが戦の花、とはいえ…この手で手折りたい花は今此処にはないだけに、 ご忠告通りにするのが善いのでしょうね…… (これも縁とご一緒させてくださいまし、と。如何にも厄介そうな気狂い女が後に続き) -- 白の妖婦
- (まるで鈴蘭のように……毒花のように微笑む女を見て眉を顰める)
(危険な女だ。一目で理解する。恐らく俺でなくても理解する) (……それくらいに、この女の所作は戦場において異質であり、同時にそれ以上に帝国において異質であった) ……好きにするといい。友軍ならてとめはしない (それだけいって、女をつれてかえる) (……その時はまだ、俺は本当の意味で知らなかったのだ) (その女の狂気の形を) -- 宗爛
- 神聖ローディア共和国、前線拠点の一つ
(ところどころ崩れながらも連なるその石壁の列は陣地を構築するのにはうってつけだった。) (小高い丘の斜面に段々畑をつくるように、古代の石垣の跡が残されていた。) (目の前の平原では、共和国軍勢の中を放たれた矢のごとく縦横に駆け回る騎馬、騎獣、そして蟲。) (鎧に覆われた小山のような軍馬が得意の突撃体勢を取ることもできず。矢に翻弄され、槍を掠められ) (巨大蠍の挟みに足をもがれていく。) (開始から僅かな間も持たず、戦場の趨勢は帝国側に傾きつつあった。) (丘陵の遺跡地帯に築かれた陣地は唯一、相手の足を封じ互角以上の戦いに持ち込める場所、) (数少ない残された希望の一つだったが・・・その希望もあっけなく打ち砕かれた。) (機動力を戦力とする帝国軍、その中でも最速の部隊。その連なった石垣も、林立する石柱も) (彼らの足を止めることはできなかった。なぜなら、それは翼をもって空を翔けて来た。) --
- (生体ユニットは血にまみれ、鎧には煤や元は何であったか知れない焦げがこびりつく。まさしく満身創痍、疲労困憊、そんな状況でさらに天からの贈り物。敵である)
(わざわざ的になりに行く事はない、地上で息を潜めていれば良かったのだが、怪物や兵士たちの前ではそうも行かない。後方と上空、最悪の二正面作戦) (元々少なかった味方の兵士は次々と倒され、自分も永遠に戦い続けられる訳ではない……となると、道は一つ) 自分だけでも、逃げる……!(身にまとう「鎧」が折りたたまれ、また広がっていく。四足で走るような姿勢をとる少女を、鉄の板が巨大な魚に変えて行った) ……ゴー!(掛け声とともに足元で爆発。その勢いに乗って一気に上空を目指す。敵航空部隊より上に行ければ有利なはずだ) -- フェロミア
- (爆撃と急降下による波状攻撃を繰り返していた巨鳥の部隊は拠点を守る義勇軍の軍勢が)
(打ち倒されると、つぎつぎと地面にすれすれに飛び、その背から歩兵達を投下していく。) (弓矢と投げやりで武装した軽装な歩兵達によって、いよいよ拠点は完全に制圧された。) (轟音と砂塵を巻き上げ、上空へと飛び出していったフェロミアを上空で旋回していた巨鳥の群れが) (翼で風をたたきつけるように、舞い上がりながら追った。) (しかし、上昇力がそもそも違うのか、その鎧のような尾びれに追いつくことができない。) (このまま逃げ切れるかと思われたその瞬間だ。突風が吹き荒れた。) (他の巨鳥達が旋回しながら高度を取るその真ん中を、一際大きく、そして蒼く輝く翼が) (ほとんど垂直に、フェロミアめがけて一直線に駆け上がっていく。) -- 飛爛
- よしっ(とりあえずは振り切れそうだ、と少し安心して下を見る。誰がどう見ても完敗だ)
あいつら、次会ったら……(やっつけてやる、とでも呟こうとしたのであろう、その瞬間。バイザーが異変を伝える。このパターンは……「高速移動物体接近中」) 嘘だろおい……(相手のスタミナがそれほど続かない事を祈りつつブーストをかける。炎の武具結晶が使い手の体力を吸い上げ、推力に変えた。命を削って命を繋がんと) (よりシャープな形に変形しながら魚は空を翔ける。捕食者たる蒼い鳥から逃げおおせるために) -- フェロミア
- (追いすがる巨鳥がその羽の生えた肢から何かを落す、やや遅れて地上で爆発が起こった。)
(爆装したまま追いかけっこをしていたのだ、身軽になった巨鳥はさらにその速度を上げていく。) 空を泳いでるみたい面白い…。ココロア! (背に腹ばいになった少女、飛爛の声に答えて、巨鳥、ココロアは6枚の翼をそれぞれ別々に動かす。) (空を泳ぐ巨大な鉄の魚など、帝国にだって居るはずはない。それが何故飛べるのか彼女もその相棒) (も知る由はない。) (だが、フェロミアの巻き起こした気流の渦をまるで見えているかのように、6枚の翼で捕まえて) (ぐんぐんと加速していく。) -- 飛爛
- (すわ攻撃か、とも思うが狙いは地上の爆撃だ。つまり、重荷を捨ててさらに加速するという事)
(水平に飛んでいては間違いなくすぐに追いつかれる。だが相手は鳥、生き物だ。速度で勝る相手、付け入る隙があるとすればそこしかない) 付いて来い……っ!(機首……魚の頭を上方に向け、さらに上空を目指す。こうなったら我慢比べだ、空気が薄くなっても鳥は飛べるのか試してやる) -- フェロミア
- (フェロミアの鱗を掴み損ねた鉤爪が空を切り、鋼鉄の罠が跳ね閉じたような音を立てた。)
(猛烈な勢いで風が耳元を吹きすぎていく上空で、声が届いたかどうかは分からないが、) (その勝負を受けて立つといわんばかりに激しく、翼を羽ばたかせ巨鳥もまた垂直に空を駆け上がった。) (壮大な合戦上が遥か下方の点景として遠ざかっていき。遥か上空を流れていた雲はぐんぐん近づいてくる。) (世界の音が、断崖を遡上する魚のごとく上っていくフェロミアと蒼天色の羽ばたきが巻き起こす風切音) (だけに置き換わっていった。) -- 飛爛
- くっ(迫り来る爪に掴まれるのは避け得たが、反射的に取ってしまった回避行動が加速を若干鈍らせる。次に掴みかかられたら、今度こそ捕らえられてしまうかも知れない)
(未だ到達した事のない高みを目指し、魚と鳥が空を翔けた。競争と言うのも生ぬるいデッドヒート) (限界間近の極限状態の中、鰭と翼が空気を裂く音だけが二者の意思を伝えあうように響く) -- フェロミア
- (高度は上がり続けた、もはや地上は見えない。白く煙った視界に再び青が戻ったとき、ついには雲すらも)
(背後へと落ちていく。深い深い空の下に丸く地平線が弧を引いた。) (生身でココロアの背にのる飛爛にとって、すでに息苦しいを通り越して生存すら危ぶまれる高さ) (だったが、そこで止まる気はなかった。少しでも気を抜けば意識が手から零れ落ち、) (目覚める前に地面にたたきつけられるかもしれないというのに。) (世界最高峰を積み上げたよりも高く、どこまでも深く広がる深淵なる空の只中を駆け上がる。) (目の前の敵と己の翼の限界、そして存在しているだけで戦場を翔けるよりも危険な雲の上の世界に) (挑みかかり、飛爛の心はどこまでも猛々しく舞い上がっていく。) -- 飛爛
- (いつしか逃げる獲物と追う捕食者と言う関係性は消えていた。これはもはや対決、どちらがより高く飛べるのか?高高度のさだめたる冷気と空気の薄さにもう声を出す事も叶わない)
(やがて競争者達は機械と魔術で強化された少女とその鎧にも耐えられない環境に到達した。凍結、単純ながら魔力の炎が生み出す熱の力で空を翔けるフェロミアには致命的な現象である) (上昇速度は目に見えて落ち、冷え切った生体ユニットは思考能力を失っていく。鎧や肌に張り付いた薄氷が撒き散らされ、流星の尾のように輝いていた) -- フェロミア
- (遮るものの無い陽光の下で砕けた氷が舞い散り、飛爛の横を通り過ぎていく。)
(彼女の黒い髪も先に雲を通り抜けたときに濡れてその毛先が白く凍った。) (フェロミアの推力が弱まるのとほぼ同時に、いくら羽ばたいても高空の薄い大気は巨鳥の羽を) (すり抜けて、飛び続けるために進化した強靭な肺も酸素を求めてあえぎ始めた。) (ここが限界・・・飛爛はまだその頭上高くある空を見上げて、最後にもう一度だけココロアの翼を) (強く羽ばたかせた。最後の上昇、その頂点、ついに横にフェロミアの横へ並び再び鉤爪を繰り出した!) -- 飛爛
- (酸素不足で朦朧とする頭をフル回転させて状況を分析する。ほぼ生まれて初めて吐き気を覚える。もはや上っているのか落ちているのかも怪しいが、限界を超えている事だけは明らかだった)
(そんな考えをめぐらせていたせいか、視界の端に蒼を捉えた時にはもう手遅れだった。だが突然鎧を掴まれても意外に驚かないものだな、と思う。機械の補助脳すら今はまともに動作していないのだろうか) (巨大な鳥とそれに乗る人間。それらの重さを押し付けられてなお空に上がる力など残っていようもなく……目を閉じる。空を翔けていた者達は一塊になってゆっくりと、不思議なほどゆっくりと来た道を戻り始めた) -- フェロミア
- (無重力の凪に浮かんだのもつかの間、奇妙な浮遊感を伴って再び風は吹き荒れ始めた。)
(落ちていく、加速していく、今度は逆に空が足早に遠ざかる。) (フェロミアの鎧をプレス機のような力で掴む鉤爪、がっちりと組み合ったまま一つになって落ちていく。) そのままよ、ココロア! (背に乗せた者の言葉に従い、巨鳥は翼を羽ばたかせずに自由落下に身を任せた。) (鉤爪を突き出したその巨体が空気抵抗を受けてやがてゆっくりと回転をはじめる。地面へと向かいながら) (掴んだフェロミアと鳥の身体が、互いの周りを回り続ける連星の軌道ように円を描く。) (まるでダンスでも踊っているかのようで、その間も高度は下がり続ける。) -- 飛爛
- (音を立てて軋む鎧、その悲鳴も今のフェロミアには届かない。無理な加速と寒さ、そして酸素不足が生体部分から力を奪っていた。今や柔らかいだけのマネキンにも等しい)&br:(少女は無抵抗のまま螺旋状の落下に身を任せていた。が、落下によってやがて周囲の空気と気温が許容範囲に戻る。そして頬を打つ風と爪の圧力が刺激となって意識を呼び覚ました)
(補助脳の働きが弱まっているせいか、意識を取り戻したフェロミアにある種の感情と呼べる衝動が起こる。その衝動とは) っそ……見てろよ……(悔しさとか、怒りとか、そんな風に分類できるかもしれない。掴もうとする。相手の一部なら何でもいい、鳥でも、その上に乗っている人間でも。逆螺旋のロンドの中で、パートナーに必死に手を伸ばす) -- フェロミア
- (鉤爪がフェロミアを捕まえ、フェロミアの腕は逆に巨鳥の肢を掴む。速度は上がり続けた。)
(潜り抜けて来た雲へともつれ合って落下し、眼下に戦場の大地が広がった。) (やがて風の中に熱砂が混じりはじめる、だがお互いに掴みあった状態、どちらかが離さない限り) (このまま落ち続けていくことになる。高度を競い決着はつかず、そして今、深度を競う。) (赤茶けた大地が命のリミットとして刻一刻と迫りくる!) (そんな死と隣り合わせの状況で、間近に組み合ったフェロミアを巨鳥の肩越しに見る少女は) (笑っていた。獲物を狙う禽獣のような凶暴なそれではなく、飛行帽に隠れた目元は分からないが、確かに、心底楽しそうに笑っていた。) -- 飛爛
- (重力の助けを得て両者は加速する。その向きは変わっても戦いである事は変わらない。結局の所我慢比べである)
(最後の力を振り絞って鳥を離さぬ様に握り締めた。こいつをクッションにして生き残る、と自分の中で理屈を付けはするが、ヤケになっているのも確かだ。例え地面にぶつかったって離すものか) (だが、見てしまった。覚悟も、理屈も吹き飛ぶその表情を。この死に至る状況を、興奮のせいでも絶望のせいでもない、快楽の笑みで受け入れる少女を) (なぜ?人間ってそうじゃないだろ?理解不能は混乱を、混乱は恐慌を招く。フェロミアが生まれて初めて心の底から浮かべる表情は) は……(恐怖と、驚愕)離せ、離せよ……!(先に自分の手を離し、無駄と知りつつも鉤爪から逃れようともがく。心を持たない兵器の心が折れる瞬間。ともに地面に激突するか、奇跡的に助かるか。結果がどうであれ、この時点で「敗北」である) -- フェロミア
- 「姫様が度胸試ししてるぞ!」
「誰とだ、さっき昇って行った奴か!?」 「やばい、やばい・・・二人とも速過ぎる!墜落するぞ!!」 (遥か下方に取り残され、まっすぐに天へと駆け上がって行った、飛爛とフェロミアを見上げていた) (カタクァのシャツァル兵達が騒ぐ。まっすぐに空から落ちて来た二人はもう地面のすぐ側まで来ていた。) (後十数m、赤茶けた岩山がまっさかさまに落ちる二人の頭上に迫ったその瞬間。) 昇って! (ココロアが蒼く輝く翼を広げ、羽ばたいた。空中で急停止、絡まりあった二つの身体を捉えていた) (重力加速が一瞬の衝撃となって、突き抜けていく。) (巨鳥の翼は再び浮力を取り戻し、フェロミアの身体を地面へ下ろした。) (誰もが墜落を予想して息を止めていた中を、ココロアの背に乗った飛爛は飛行帽を右手で掴み) (高く掲げ上げ、その身に風を受けながら旋回した。それはまぎれもなく勝利の宣言。) (周りで見守っていたカタクァの兵達は一斉に歓喜の雄たけびを空に地上に響かせた。) -- 飛爛
- 黄金暦223年 6月 神聖ローディア共和国 極東 国境沿い --
- 地平線を埋め尽くし、迫り来る、異国の軍勢
馬を駆り、獣骨を装具として纏った集団が掲げる字は……「欄」 --
- 殿下。前線部隊が、異国の軍隊らしき者達と接触したそうです
なんでも、鉄製の装具を纏っていたと…… -- 六稜兵
- そうか。こんな辺境に既に部隊を配しているとは……素直に関心する(黒い大山羊に乗ったまま、六つ目の仮面をつけた指揮官がそう呟く)
規模はどの程度だ? -- 宗爛
- せいぜい中隊規模程度の小勢です。抵抗の意志を示したので、反撃しました
現在交戦中ですが、此方が有利なようです なんでも、向こうはキシドーがどうだのこうだの、わけのわからない事を喚くばかりらしく…… -- 六稜兵
- 中隊規模程度? 国境守備にしてはずいぶんと頼りないな……まぁいい。いずれにせよ、抵抗するのなら生かす理由はない
指揮官以外は殺せ。指揮官は口が利ける程度の状態で生かしておけ。手足は切り落として構わん -- 宗爛
- 御意に(馬を走らせ、前線へと戻っていく) -- 六稜兵
- (自分の馬に乗り、基本的に六稜兵と同じ物を装備している暁翼)
(ただの一つ、腰の紅い魔剣だけが異彩を放っていた) (肝心の居場所と言えば…) …キシドーとか言って悠長に名乗り上げてっから腕に自信があんのかと思えば…西の連中って阿呆か (既に先行した部隊の中で、水銀槍を振り回して異国の兵を打ち払って進む) -- 暁翼
- 文化の違いだろう。豊かな地にすめば心も豊かになるということだ
尤も、それが戦で生きるとは限らないだけでな (士気高揚のため、前線で陣頭指揮を執りつつ、水銀槍を同じように振りつつ暁翼の隣を駆ける) どうやら、この連中は現地人ではないらしいな。略奪の真っ最中だったようだ。ハッ。どこもかわらんな まぁいい。お陰で現地人は我等帝国軍を迎合している 侵略に来たつもりが解放軍呼ばわりとは、お笑い種だな -- 宗爛
- なるほど。飢えてなきゃ必死になる事もねえか
(前線に出てきた宗爛の指揮に従いつつ、槍を縦横無尽に振るう。働きを見せておかねばなるまい) こっちの侵略を喜ぶ民ねえ…そいつは……攻め落とした後が楽そうだな。ま、恨まれるよりは得が多いしそれならはりきりますかね(戯言を言いながら、更に前へ。言葉を交わす余裕があるという事だ) さてと。剣使う機会が欲しいが…なぁ(腰に語りかける。馬上で用いるならやはり槍だと今まで抜かなかったのだが) -- 暁翼
- (宋爛と暁翼の会合する前線へ、数騎の騎馬が現れる その旗には「爛の文字) -- バトゥア
- はー… 久々の空は広いな… 自在に空を飛べたらさぞ楽しかろうなぁ…
その辺りどうなのだ梟 (腰に結わえられた剣は、戦場で持ち手が槍を奮っているにも関わらずそんな気の抜けた返事を返す) なぁ、と言われても私は嫌だが… 嫌ではあるが、拒んだ所で振り回されれば抵抗する手立てはない 好きにすれば良い… -- 爛煌
- (突出しすぎる愚は犯さず、馬の様子も見て少し下がると、器用に合成弓を構える)
…ん? 帝国軍だが六稜兵じゃねえな(目ざとく見つけた、他の将の指揮下にある味方を見つけ報告) (『大空は良いぞ…だが少し妙な予感がするな。何か他に飛ぶ物が来るやもしれん』) (フクロウは呑気な爛煌にそう答え) 嫌なのかよ、そろそろ慣れろよお前…ま、お前振るう程の相手はまだいねえからいいさ (魔剣にそう呟くと…逃げる敵兵に容赦なく矢を放った。見事に頭を貫く) -- 暁翼
- (後方でにわかに大きな羽ばたきの音、次の瞬間、暁翼達の頭上が日を遮られて暗くなる。)
(すぐに明るさを取り戻す空、そこを鵬と見間違いようのない蒼い巨鳥の一団が) (飛び去っていった。突風を引きつれながら、あっという間に敵の一団も飛び越えて) (見る見る小さくなる編隊の後姿が再び高く舞い上がっていく。) -- 飛爛
- (空が暗くなる、上を見る隙は与えないが、すぐに通り過ぎた何かが視界に入れば)
うおっと……鵬か…? ってでけぇ!? (『…鵬ではないな。首と後足にも翼が生えていたように見えた。むう……』)(「お前も知らない鳥って珍しいな…と。物見に来たんじゃなかった」) (槍を構え直す。自分にせよ、爛煌にせよ。利用価値が無くなれば切り捨てられ易い立場だ。相方は余り意識してなさそうだが) 派手にやるとすっか (戦功をあげる為に、一気に突撃をかける。初陣だというのにその動きに一切澱みはなかった) -- 暁翼
- (バトゥアの騎兵の他、空を翔る怪鳥を見て、仮面の奥で笑う)
……どいつもこいつも、本土でじっとしていられる性質ではないようだな -- 宗爛
- 殿下。概ね制圧は完了しました。他の諸侯の部隊の活躍のお陰で、損害は極めて軽微です -- 六稜兵
- 御苦労
町は幾つ落とせた? -- 宗爛
- 侵攻経路上にある町全てです
抵抗はありましたが……西の奴らは弱すぎます。これではまるで御遊戯です 蟲、羊、馬共に損耗もありません。都市の支援を受ければ本隊からの補給を待たずに進軍を続ける事も可能です -- 六稜兵
- 見たところ、西では殺す事よりも生け捕りにすることが主流のようだな……殺すよりも難しいことをしている割にはどうにも温い
まぁいい。部隊を分けて制圧済みの都市の支配者を抑えろ。恭順するなら佳し。難色を示すようなら斬首して晒せ 皇帝陛下に逆らったものの末路を知らしめる必要がある -- 宗爛
- はっ! 了解しました! 殿下も、一度後方に退かれたほうが…… -- 六稜兵
- 戦場の空気は戦場に居なければ感じられん。趨勢が完全に決するまでは此処で陣頭指揮を執る
案ずるな。そのために近衛に暁翼をつれてきたのだ 前線ではいまだ狗面も駈けずりまわっている。問題ない -- 宗爛
- 左様でありましたか……それでは、私はこれで(駿馬を駆り、瞬く間に消えていく) -- 六稜兵
- (兵士が去った事を確認してから、小高く、周囲を見渡せる丘から戦場を見下ろし、上がる煙を見ながら深くため息をつく)
……我等だけでは飽き足らず、西の無辜の民をも自分と同じ目にあわせなければ気に食わぬか、父よ ……だとしたら、もう願いは叶っている。最早この地も我等が故郷と同じだ 等しく死と野望が渦巻いている ……どこに行っても同じだ -- 宗爛
- (去りゆく駿馬と入れ替わりに、丘に上がって来る。独りごとは聞いていたやら居ないやら)
ちっと歯ごたえ無さ過ぎて不気味だな。大抵、勝負ってのは勝ちすぎると後が怖いんだが…戦争ってこういうもんなのか、大将 -- 暁翼
- (振り向きもせず、眼下に広がる地獄をみつめたまま呟く)
さぁな。西との戦争は今回が初めてだ。俺にもわからん ただ、仮にこれが東での戦争だったとしたら…… 結局このまま勝っているほうが勝つ。戦争は勢いと地力だ 勝ってる奴が勝つ。番狂わせも面白みもない……戦争は実数だ -- 宗爛
- こっちは右翼が特に強兵だし、遠くじゃ空飛ぶ巨鳥が火薬落としまくって奇襲。
指揮官を捕まえてきてやろうと思ったんだがこの調子じゃ難しそうだぜ…(宗爛の話を聞きながらぼやき) 勢いはこっちにあるな。地力は…西の地力ね、調べてみたいもんだが…もう戦争になっちまった以上難しいか 実数ね。個人でどうこうってんじゃないは実感できたよ(丘から眼下を見降ろし)…ま、面白見はなくても視野は広がったな。旅してるだけじゃこれは見れねえ -- 暁翼
- 情報を鵜呑みにするなら、西に地力はない。恐らく真実だ。あんな狭い土地を取り合っているようではその辺りはたかが知れている
(まるで見てきたように答える。草や影に色々と調べさせたらしい) 他の部隊が健闘しているなら、俺達が無理をする必要もない ……(一通り状況を俯瞰した後) 趨勢は決した。一度退く お前は好きにしろ (それだけ短く告げて、前線を後にした) -- 宗爛
- (大爛征西軍右翼 大多数が騎乗兵で構成されたバトゥアの陣
一個師団に及ぶ軍勢は全て同じ一族を祖にもつもの達だ 若者が目立つが、皆厳めしく強い意思を感じさせる目付きである) -- バトゥア
- (全線での小競り合いは当然バトゥアの耳にも入っていた
男は石像のような無表情さで報告を聞くと、馬へとまたがった) -- バトゥア
- (陣幕の中に集められた人数は200あまり、皆同じような格好をしているが、その肩掛けやあるいはツナギ)
(のような服の色はそれぞれ皆個性的でカラフルなため、その場は南国の花畑か極彩色のペルシャ絨毯) (が敷き詰められているような景観だった。年齢も体格もみなバラバラで、男女入り混じっている。) (だが、全員一様に厳しく引き締まった顔をしていた。) 目的地はここですよ、国境から一番近くにあって、もっとも大きな都市。 (指示棒でキャンバスの上に広げられた大きな筆書きの地図を指し示す男はクラト、飛爛の側近だ。) 敵の頭上で失速すれば、周囲数km離陸に適した地形はないので。必ず高度は高く取るように。 国境沿いにすでに大部隊が展開していますがぁ…ま、アテにはできないでしょうね。 我々は彼らの頭上を飛び越し、遥かに敵地の奥へと食い込むので。しかし、すでに2度実戦を経験 した勇士諸君にとって、今回の作戦は敵地に爆弾投げ込んでくるだけの簡単なお仕事に終わるでしょう。 では、姫様。 (一見少年のようにも見えてしまう、年齢不詳の男クラトが説明を終えると、一礼し、横で座っていた) (飛爛へと場所を譲る。) (白くて短いワンピースにズボン、そして毛皮のブーツという姿はいつもどおり。だけど普段のような肩掛け) (の代わりに金で編まれたショールを身に付けて居た、その胸元で紅いルビーがいくつも連なって揺れている。) (巨鳥や天に住まうとされる星々の神を象形した造形に飾られたその金のショールは豪奢である以前に) (どこか神聖さをその輝きの中に見せていた。それはカタクァの祭事の折に王が見につける装身具だった。) 私達はついにここまで来た、でもここからが本当の始まり。 (ゆっくりと青い瞳を開きながら、この場に集った全員へ向けて飛爛は語りかける。) 空に抱かれて生きる地上に支配者なんて居ない。だけど彼らは多くを殺し、多くを奪った。 (飛爛の語る彼らは…ローディアの国々のことではない。) 羽を休める足場があれば人は生きていけるのだということを、私達がかつて同じ空の兄弟であった彼ら にも思い出させなくてはならない。そうでなければ、この地上はいつまでも悲しいままだから…。 臥した翼を広げよ!これより我らは空を翔る! (陣幕の中に大きな歓声が巻き起こった。その歓喜の声を小さな身体で受け止める飛爛の横顔が) (泣き出しそうなことに気付いた者は少ない。) --
- (少女の声に唸りを上げるかのように揺れる陣幕)
(部隊の士気が熱狂とも言える渦の中にあるというのに、一人。この男は普段と変わらぬ冷徹な瞳で飛爛を見つめて居た) ……随分と、大層な文句だな。指導者としては立派なものだが…正視に耐えん (年端もいかぬ少女の外見とは似つかわしくない彼女の言葉に、ニタリと口元をゆがませる) …だが、良い余興だよ。一度地に臥した鳥がどこまで飛べるのか、観察するのも悪くは無い …これが巨鳥の再生の羽ばたきだというのなら。今はその羽が巻き起こす風に身を任せるとしようか
(爆撃部隊が離陸の準備を進める中、歩兵部隊の一員として、切り伏せるべき敵に視線を移すのだった) -- 那岐李
- (山の斜面に翼を広げ、灰蒼色の風となって巨鳥が駆け下りていく。やがて翼に風を纏わりつかせ空へと舞い上がった。)
(地上に投げかけられていた巨大な影が見る見る小さくなっていく。) (すでに頭上は旋回しながら高度を上げていくシャツァルが群れていた。その数およそ90羽。) (地上戦力の輸送を任された者は一足先に目的地へと飛び立っていく。やがて空の上に残ったのは) (その巨大な鉤爪で取って付きの五右衛門風呂のようなものを抱えた30羽のみ。) (地上でその取っ手付き五右衛門風呂…投下爆薬を用意していた人々の頭上を一際巨大な影が) (飛びすぎていく。それは飛爛の乗るシャツァル、ココロアの姿。) (鮮やかに蒼く煌くココロアが一直線、駆け上がるように空へ昇る、空で待機していた者たちは) (彼女を頂点にくの字の編隊となってまっすぐに飛び出して行った。) --
- (時に時速100kmを超えることもあるシャツァルの翼は重荷を持っていても、風のように飛んでいく)
(駱駝を連れた隊商の頭上を飛び越え。小高い丘の上に居た羊の群れを驚かせ。追い風を捕まえて) (ついに標的を眼下に捉えた。) (手信号で飛爛が合図を送る、編隊は一糸乱れぬ動きで高度を下げながら旋回し投下地点へと近づいていく。) 見つけた!………落せぇッ!!! (突然飛来した巨大な鳥の群れに、住人達が驚いて空を見上げる中、一際大きな壁と敷地を持つ) (建物があった、中から弓矢を持った兵士達が飛び出して来る。) (その矢が飛び出すよりも早く、シャツァル達が肢に抱えていた物を落した。) (空中に投げ出されると、先ずパンッと乾いた音を立てて荷物を支えていた2本の柄が弾け飛んだ。) (それは導火線に火が付いた合図。大きな塊が地面に鈍い音を立てて落ち跳ねながら転がった瞬間。) (一際大きな爆発音が響く。次々に乾いた炸裂音が鼓膜を揺さぶり、あっという間にあたり一面が) (黒い霧に包まれていく。建物の壁が割れ、砕けた城壁のレンガが地面を叩いた。) (火薬の上げる爆煙がのろしのようにいくつも風にたなびいて昇っていった。仲間を求めて) (建物からも煙が噴出し交じり合っていく。そこへさらに後続の鳥が落した爆弾が吸い込まれる様に) (落ちて行き…激しい火柱が立ち上った。) -- 飛爛
- (立ち上る炎を見てそれまで地に伏せて隠れていたカタクァの歩兵たちも進撃を開始した。)
(弓と極めて短い投槍で武装した軽装の歩兵達が火災に見舞われた敵拠点へと殺到していく。) (逃げ出そうとする者、消火しようとする者、前線とはいえかなり後方に位置していたその基地は) (突然の奇襲にたった数分で大混乱に陥っていた。) (そこへ500ばかりの身軽なカタクァ兵達が乱入し弓矢を浴びせかける。) (頭上には炎の上を悠々と飛び回る巨鳥の群れ、そして突然の侵入者達、混乱はさらに加速していく。) --
- (炎と煙に包まれた乱戦の頭上で、爆撃を終えたシャツァルの部隊が旋回している。)
(飛爛の横を飛んでいたクラトが、すぐに後方へと引くよう飛爛に合図を送る。) (この作戦は奇襲だ、長いは無用。だが、合図を送られた彼女はじっと地上を見つめている。) (熱く焼けた空気、目と喉を焼く黒煙。空の上にまで地上で巻き起こる悲鳴が届いてくる。) ・・・・・・・・・私に続け!! (完全な奇襲であってもこちらは寡兵、地上での戦いの不利は否めない。現に混乱の最中にも) (騎馬を持ち出し、反撃の力を強めている共和国兵の姿があった。) (猛々しい嘶きと供に前足を振り上げてカタクァの歩兵を踏み潰さんとしている。)
(翼を畳んだココロアが急降下を始めた。炎と煙を突き破り。敵地の真っ只中で大きく翼を広げる。) (空から振り落とされた巨大な鉤爪が兜諸共騎馬兵の頭蓋を粉砕した。) (首を肩にめり込ませながら絶命した兵士を踏み台にココロアは再び高く舞い上がっていく。) -- 飛爛
- (あーあー…と困ったように飛行帽を被った頭を振るクラト。)
(姫様のご活躍で地上も空の部隊もすっかり興奮して舞い上がっていた。駄洒落ではない。) (数騎の熟練なシャツァル兵だけについてくるよう指示を出し。彼もまた愛鳥を駆って急降下を開始した。) -- クラト
- (矢を構える暇すら与えられない混乱と、地上と空両方からの襲撃に、その基地を守っていた総ての)
(兵達が僅かに焼け残った建物の中へ逃げ込もうとするようになるのは時間の問題だった。) --
- (それはいつもの様に順調に終わる筈だった、戦に紛れ村々を破壊し、人を殺し、女を犯し金品を略奪する)
(単調過ぎて退屈さすら感じる程の、いつも通りに進む日常…だが、それは突如現れた大爛の者達により、終焉を告げる) あいつらマジでこっちまで来やがったのか…!! (襲い来る大爛の者達を切り捨て、一先ずは売り物…奴隷達を商人に引かせて、一刻も早くこの場から逃げ出せようとする) -- 胡久美
- (後方より迫り来る大爛の軍勢を一人、二人と切り捨てて胡久美が逃げ出そうと身をひるがえしたその時であった)
(先に逃がした筈の奴隷商の断末魔が響く。崩れ落ちる奴隷商の死体を踏み越え、一人の男が胡久美を見据えている) (本隊に先行して陣地を撹乱する役目をおったカタクァの尖兵である) …奴隷商か。下らん…西方の愚図共の倫理は帝国よりよほど愚劣であるらしいな (そう吐き捨てると、手にした曲刀についた血を振り払いながら胡久美の方へと歩を進めた) -- 那岐李
- あーあ…(別段悲しむ様子もなく、奴隷商へは目もくれず、那岐李へ目を移す)
どうしてくれんだよ、まだそいつから報酬も貰ってねえってのによ…(やれやれと大袈裟にため息をつき、顔を手で抑える。だが、指の隙間から見えるその口元は、喜びに釣り上がり) …ま、いっか。楽しめそうな奴が代わりに来てくれたしな。 (両の手に持った刀を、那岐李へ向け構える。その二本の内、右手の赤い刀身の刀からは、明らかに危険な気配を漂わせている…恐らく、何らかの曰くつきの武器だろう) -- 胡久美
- …中々興味深い物を持っているな。貴様如き下郎には勿体ないのではないかな?
(胡久美が手にした赤い刀から発する異様な気配に口元が更に吊り上る) その刀…報酬代わりに頂いて行く―ッ!! (言うが早いか、身を低くしたまま地を蹴り、まるで這うかの如く距離を詰める) (そこから振るわれる一閃は胡久美の左膝から右わき腹を両断せんとしたものだ) (速さに任せた乱雑とも言える一撃。そして足を切り裂き、相手の動きを封じるためとも言える一撃だ) -- 那岐李
- オカマ野郎には勿体ない位立派だ…ろっ!!
(悪態をつきつつ、襲い来る一撃は後退し何なく避ける…が、その一撃は予想よりも素早かったのか、甲冑の繋ぎ目、膝の辺りからは一筋の血が流れる。) (だが、その顔はますます邪悪に歪み) いい根性してるじゃねえか…いきなり足狙いたあ、てめえもまともな兵士じゃ無さそうだな…(言いながら、背中のもう一対の腕に、短刀を握らせる。) 今度はこっちからいくぜ!(何の変哲もない、単なる右の剣による突き放つ。特別工夫もない…それどころか、手を抜いた様にすら感じられる一撃。) (だがそれはフェイク、本命は背中のもう一対の腕から繰り出される、短刀による一撃。それは異形体のみが放てる技) (放つ事即ち勝利を意味する、邪道の一撃…否、二撃必殺の型) -- 胡久美
- …フン、戦場を荒し私欲を満たす人以下の屑よりは真っ当なつもりだがな
(微かな手ごたえと、胡久美の膝から流れ出る少量の血に愉悦の色を深めていく) 大層な事を言う割には、単調な一撃だn―っ!? (この身に宿る異形の力が警鐘を鳴らす。この一撃を受け止めてはいけないと) (野生の勘にも似た判断で、右方向に飛びのいて距離を取る) (が、咄嗟の判断故に体勢を崩してしまう。放たれたフェイクの突きに胸元を切り裂かれながらも無様に飛びのいた) -- 那岐李
- なっ・・・!(驚いたのはこちらも同じ。その性格から完全に見切り、反撃に転じると思った筈が)
(後退され、目論見は崩れる。そして、一瞬の後、那岐李の直感を裏付けるかのように、複腕による横薙ぎが、丁度那岐李の首のあったであろう場所を通過する。あのまま反撃に転じていたら…) (四本の腕を持つ異形の戦士は、短刀を刀へ、四本の刀を持つと那岐李へ訝しむ様な表情を向ける) どうしてわかった?テメエからは完全に死角だった筈なんだが… (周囲では、胡久美の仲間と大乱の兵士が互角の戦いを繰り広げている、とはいえ数で負けているせいか、徐々に胡久美の側が押されつつある) -- 胡久美
- ……っ、随分と…奇妙な身体をしているな。西方の化け物というわけか…
(切り裂かれた胸元から流れる血を拳で拭い、歯噛みする。先ほどまでの愉悦は消え、苛立ちと殺気に満ちた瞳で胡久美を見据えた) …なに、異形なのは貴様だけでは無いということだ。この身体に満ちる血を流させたこと、公開させてくれる… (周囲の状況を考えれば、このまま行けば数で押し切れる。全滅するまで粘る程この男も愚かではないはずだ) (再び身を低くし、弓を引くかの如き姿勢で剣を構えれば、胸の傷から沁み出した血が、霧のように那岐李の身体に纏わりつく) ―その奇怪な腕、切り落としてくれよう (再び地を蹴るもその速度は先程よりも更に上がっている) (獣の如き速さから繰り出されるその突きの先端から、まとわりついた黒い霧が蛇の如き咢を成して胡久美の左後腕に迫る) -- 那岐李
- おいおい、化物たぁ言ひでえ言い草だな…ま、否定はしねえけど
(先程よりも更なる勢いで迫る那岐李に、青年は4本の刀を構え迎撃の体勢を取る) (迫りくる疾風の如き刺突を、紙一重で避けようとして)っくそが! (迫りくる蛇に狙われた左後ろの腕を、咄嗟に大きく逸らす。それでも避けきれなかったのか、蛇はその腕に巻きつくや、深々と牙を食いこませる) やってくれんじゃねえか…!!(痛みにより怒りに燃えた表情は、さながら鬼の如く。避けた後ろの腕を除いた、両の手の刀を、交差させるようにそれぞれ袈裟切りに斬りかかる!) け、ちゃちな手品見せやがって!とっととくたばりな!(言いつつも、ちらりと周りを見回せば、劣勢に追い込まれているのはこちら。とっとと逃げたい所だが、目の前の敵はそうやすやすと逃がしてくれるほど甘くは無い) -- 胡久美
- …ふん、どうやら貴様の血は我が蛇神の舌には合わんようだな?
(一撃で腕を食いちぎる算段だったが、胡久美の咄嗟の判断で攻撃を逸らされたことへの皮肉を語れば、再び口元が吊り上る) それは此方の、台詞だ―ッ!!(左右の肩口を切り裂かんと振り下ろされる二本の刀) (正直に刀で受ければ、後ろに隠された残りの腕からの攻撃がこの身を両断するだろう。単純明快ながら、その効果は絶大だ) さ、せるかッ!!(単純に避けるだけでも残った腕が即座に追撃をかける筈。それを封じるには後の先を取るしかない) (右手に持った曲刀を横一文字に構え、胡久美が振り下ろした二本の刀を受ける寸前でその身を胡久身の背後へ回り込むように右へと滑らせる) (が、相手もまた異形の力を宿した尋常ならざる使い手であった。振り下ろされた刀を交わしきれずに、左腕が大きく切り裂かれる) ぐ、ぬぅぅぅぁぁぁぁっ!!(苦悶の表情を浮かべながらも、渾身の力で残った右手の曲刀を叩きつけるように胡久美の背後へと振るう―!) (//叙事詩なうの方でちょっと相談がー!) -- 那岐李
- (本隊から離れて胡久美達と競り合いをしていた 那岐李とカタクァ歩兵達の部隊の上に突然)
(大きな鳥の影が落ちた。空より急降下で降りてきた6枚羽の猛禽類、シャツァルの巨大な鉤爪が) (カタクァ兵を刺し貫こうとしていた敵兵を空へと持ち上げて放り上げた。遠くでドチャッだのメメタァッだの) (何か嫌な音がした。) 那岐李!よく敵兵をひきつけて置いてくれた、撤収だ!奴らはもうおしまいですよ! (低空を旋回するクラトが弓で指し示す方向、街の中から大きな煙がもうもうと立ち上っていた。) -- クラト
- っがぁああ!!(右後ろ腕の刀を酒場に持ち、寸での所で叩き斬られるのを避ける。技術も何もない力任せの防御は、その痩身からは想像もつかない力で容易く刀を撓ませる)
(不意に聞こえた声に視線を移せば、そこには巨鳥に跨る増援の姿) ち…こりゃあ…潮時だな、おい!(仲間に合図すると、奴隷を捉えていた折を青年の仲間が断ち切る、すると) (捉えられていた者達が一斉に、我先にと逃げ出し、大爛の者に助けと感謝の言葉を見舞う) 勝負はお預けだ、また会おうぜ…(最後に、邪悪な笑みを残すと胡久美と名乗った青年は、仲間と共にその場から逃げだす、追おうにも解放された奴隷が邪魔で、思う様に追跡できない…諦めるしかないだろう) (//遅くまでごめん、ありがとー!) -- 胡久美
- ―ッ!!!(全力で振り抜いた筈の一撃が、激しい音を打ち鳴らして防がれた)
(反動でバランスを崩し、後ろへとたたらを踏んだ時、上空より一羽の巨鳥が飛来した) …っ、く…おの、れ…っ!(切り裂かれた左腕を抑えながら、撤退していく胡久美を見逃すしかなかった) (どの道これ以上の戦闘は那岐李にも不可能だった。左腕を失い、渾身の一撃を防がれて体勢を崩していた) (クラトの乱入が無ければ間違いなくやられていたのだ) …っは、ぁ…はぁ…助かりましたよ。まさか、此処までの傷を負うとは… 次は…必ず、仕留める……! (流れ出る血液でふらつく意識を何とか保ったまま、撤退する一団の中にその身を紛れ込ませるのだった―) -- 那岐李
- ひっ! ひっ! な、なんなんだあいつ等……! 名乗りあげも無しに突然襲い掛かってきやがって……これだから蛮族共は!
神殿騎士A「隊長! 逃げましょう! 物量差がありすぎます!」 バカいえ! 今逃げたら丸損だ! 最低でも活きの良い女2,3人はつれてかえるぞ! -- カルロ
- (巨大な蠍や山羊に乗った弓騎兵達によって機動性を生かして滅多撃ちにされ、最後に爆薬による一撃が加えられる)
(爆風は殺傷力よりも戦意を喪失させることが目的のようだ) --
- 神殿騎士A「ひ、ひぃいい! もう追いつかれ……かこまれた!?」
神殿騎士B「た、隊長やつらどこからか火砲まで持ってきてますよ! 逃げましょうよぉ!」 火砲があんな手軽に連射できてたまるか! 火薬をそのまま投げつけているだけだ、おちつけ、おちつかんか!!(いくら喚いてそれ以上の音量の爆風に負ける声が出せるわけもない) (支持が適切に飛ばされることはなく、虚しく声が空へと消えていく) -- カルロ
- (カルロの声が吸い込まれていく空から逆にけたたましい羽ばたきの音が聞こえる。)
(6枚羽の巨大な鳥の影が数十の群れとなって頭上を飛び越えていった。その後に突風が吹き荒れる。) (そしてさらに、飛び去っていった一団の後から、十数羽の編隊が空を滑り降りるように近づいてくる。) --
- 神殿騎士A「ろ、ロック鳥!?」
神殿騎士B「違う、大きい!」 神殿騎士C「隊長! どどd、どうします!?」 ええい、うろたえるなアホ共! 交戦にきまってるだろうが! 逃げようにも相手の足をとめねばしょうがない! 全員武器を持て!(そういってハルバードを握り締め、一歩前にでる) やぁやぁ、我こそは神国が神殿騎士! カルロ・ブレンゴーラ! 貴殿ら、何者だ! 誰の許しを得て我等が神の祝福された土地を侵す!? -- カルロ
- (名乗りに答える声は無かった。この時の飛爛はたった今まで殺し合いの最中に居て。)
(全身の血が逆流するような鼓動と風切音を聞きながら、空色の瞳を氷のように冷たく光らせて) (獲物を探す猛禽のように猛っていた。だから答える声は無く。) ギィィィィィィィィィィィィィッッッッッ (血と硝煙の匂いを張り付かせた神殿騎士達の前に壁のような巨大な翼を広げて巨鳥が) (ガラスをこすり合わせたような凄まじい咆哮を放った。その鉤爪と皮の鎧に覆われた腹は) (ドス黒く返り血に染まっている。) -- 飛爛
- 神殿騎士A「ひひいい、ひぃいい!」
神殿騎士B「あ、悪魔! 悪魔だ!」 ぐっ……ええい、言葉を交わす礼すら持ち合わせておらんか、蛮族共め! クソ! 落ちろぉ!(半ば半狂乱になりつつ、ハルバードを大空を舞う巨鳥に対して投擲する) -- カルロ
- (重砲の一撃のごとくほとんど一直線に投げ出されたハルバード、その切っ先めがけて飛び込む巨鳥が)
(翼を畳んで空中で一回転した。腹と背を天地逆にした巨鳥の背の上に小柄な人影。) (ハルバードが掠めて吹き飛ばされた皮の飛行帽子とゴーグルの下はまだ年端もいかないような) (黒髪の少女の顔で。金細工のショールを身に着けた少女の蒼い瞳が冷たく眼下の敵兵達をにらんでいた。)
(再び巨鳥が大きく翼を広げる、空中で宙返りを打ち、鉤爪を突き出して敵の真っ只中へ突撃していく。) -- 飛爛
- なっ!? 女……?(一瞬、その姿に看取れたが、それがいけなかった)
ああ、っぐあああ!?(滑空し、突撃してきた巨鳥に額の三目をやられ、もんどりうって倒れる。神殿騎士の恐ろしいタフネスにより、即死は免れたが、目に見える重傷だ) 神殿騎士A「た、隊長!」 神殿騎士B「カルロ様がやられた! かついて運べ! 退くぞ!」 あああああああ! 見えないぃ、みえない見えないぃいいい! くそ、くっそ、くっそぉおおおおお! 殺してやる殺してやるぞ蛮族共!! 1人残らず挽肉にして枢機卿の玩具にしてやる! させてやる! 壊してやる、殺してやる、殺してやるからなぁああああああ! (呪詛をはきながら、撤退していく) -- カルロ
- (飛爛のシャツァルを追って飛んできた編隊が低く神殿騎士達の頭上を掠めて飛んでいく。)
(彼らは再び一つの編隊へと戻ると迫ってきていた大爛の部隊のさらに向こう側へと飛び去っていった。) -- 飛爛
- 黄金暦223年 4月 --
- (東方辺境。西ローディア東端にて……教化救済の名の元、今も略奪が平然と行われていた)
他愛ない。所詮は未開人の治める辺境か まぁ、この程度で滅ぼされるのなら遅かれ早かれ滅びていたのだ。なら一度浄化され、我等が神の楽土として生まれ変わったほうが領民も土地も幸せというものよ。ははははは! -- カルロ
- (其処に伝令がやってくる カルロに伝えられるのは小さな厄介事 どうやら、同行した傭兵隊と、カルロの率いる兵の小隊が諍いを起こしているとの事だ)
(名を聞く 赤毛の異国人が率いる新参の傭兵隊であるとの事だ 基本、兵内の厄介事は直属の指揮官が治めるが、外部隊との事なのでカルロが出た方が良い様だ) --
- もう制圧もおわったのかい? んぅ? 違う? 何揉め事?
ったく……これから美味しいところだというのに面倒な わかった、すぐに行く (血に染まったハルバードを担ぎ、これまた返り血で染まったマントを翻してそちらの向かう) あー、どうしたどうした、何があった -- カルロ
- (隊と隊がにらみ合う中、小隊の長の二人が顔をつき合わせていた 赤毛の傭兵の後ろには、この土地の若い娘が一人)
(どうやら、その娘に乱暴を働こうとした小隊長を赤毛の傭兵が殴りつけたらしい カルロの方を見た小隊長の左頬に殴られた痕) おう、騎士さんかい?(じろっと視線をやる傭兵 小柄で風貌は汚れた旅人といった程度だが)アンタ、こいつ等を止めないのか?此処での戦は終わったのに、好き放題やってるぜ? -- アベル
- (むしろそれを聞けば逆に苦笑し)
止めるも何も、その娘は邪教の娘だ ならば、これより我々神殿騎士の『洗礼』によって浄化するのはいたって真っ当なことだろう? わかったらさっさと下がれ田舎者。救済の邪魔だ -- カルロ
- 邪教ぅ〜?(片眉をあげれば、鼻を鳴らした 汚れたなりだが、カルロの言葉に引かずに)じゃあ、後で俺達も『洗礼』するのかい?
(カルロの言葉に勢いづいた小隊長が女に手を伸ばす 次の瞬間に、背の剣を鞘ごと抜いて、その横っ面を張り飛ばす赤毛の傭兵 色めき立つ小隊に、傭兵隊が身構える) そんなだから、アンタの威を狩る狐が増えるんだ なぁ、捕らえた捕虜や異教徒は、後で人数分で買い取ってくれるんだよな?(傭兵隊は出来高制だ 判り易いのは捕虜の数その取り決めだったが) 俺達の『獲物』を、アンタの名前を出して掻っ攫おうとしたんだぜ?コイツ(気絶している小隊長を顎で示す そいつは貴族の5男坊で、下品な男だった) -- アベル
- ふむ、なるほど……お前、そんなことしようとしたのか
(ギロリと、カルロがその三目で部下を見つめる。下品なその男はカエルが鳴くような声をあげたが……カルロの袖の下に免罪符……事実上のアルメナ紙幣……をすべりこませれば、それに対してカルロはにこりと微笑み) それは関心だな。このような下賎の輩に未来の信徒が穢されないようにするために、捕虜を自主的に浄化しようとしたわけだ! ああ、なんて素晴らしい信仰心! なんて気高い篤信! 対してこの傭兵共のなんと醜いことか! 人の親切心を悪意でもって疑い……その上我等が神聖騎士団に口答えまでするとは…… おい、お前、名はなんという? まぁ、名前なんてなんでもいい。ほら。これでももってさっさと帰ったらどうだ (そういって、いくらかの免罪符のつまった袋でアベルの頬を叩く) それがほしかったんだろう? それを本国に持ち帰って換金すればそれなりの金になるぞ 『洗礼』を受けるつもりがないなら帰ったらどうだ?(下卑た笑いを浮かべる) -- カルロ
- (へえ、ちゃんと叱るつもりか、と片眉をあげた 其れで済むならそれでまぁ良い、と思っていたが 次の瞬間唖然と口を開けた)
こいつぁ……腐ってやがる おかしいな、俺はがめつい商人と交渉してるんじゃなくて、気高い神殿騎士様と話してたつもりだったんだが! ……アベル アベル・レッドフィールド レッドフィールド傭兵団の長をやっている(はっきりと名乗り、侮蔑交じりの視線をあげた 其処に、頬に軽い衝撃) ……(其れを見て顔色を変えた騎士達が、主の恥を濯ごうと剣に手を掛けた しかし、其れを片手で止め)……『洗礼』とやらを受ける気はないぜ ああ、少なくとも、金が沈んで腐った油を頭に掛けられるつもりはない (カルロを見上げる緑の眼 侮蔑を向けるカルロの目をまっすぐに見つめる緑の眼)一つ聞きたい 貴殿は小金で動くような人間であるのか その汚れた札を滑り込ませた懐に、金以外の物は必要がないのか 貴殿の考えや言動は、この下卑た男の安い金で変わるものであるのか(鼻を鳴らす そして、その金袋を片手で払った 地面に落ちる金袋) 勝ち取った土地に生きる者は、其れは既に勝者が治めるべき民である!その民を民ではなく、奴隷や家畜と同じように使うのが、貴殿の騎士道か! -- アベル
- (終始ニヤニヤと笑いながらアベルの言葉を聞き続け。最後にアベルが啖呵を切れば)
ぷっ…… くくく……はははははは アーッハッハッハッハッハ!! (背後に控えさせた神殿騎士たちと共に大声で笑い出す) 何をいっているのかよくわからないが、異教徒は豚家畜と同義だ。生かすも殺すも我々次第 つまりその小金以下の価値しかこいつらには無いんだよ そんなお安い異教徒の命やら主張など無価値に等しいものだ……第一、何を憤っているのやら知らんがな、小僧 家畜に神はいない! そういうことだ、はははははは! さぁて、傭兵共。わかったらさっさとどけ。次は説法料を取るぞ? -- カルロ
- (哄笑と神殿騎士の言葉に、傭兵の後ろで女が息を呑んだ 顔色は真っ白になり、震えていた 其れは、恐怖でも悲しみでもなく、強い強い、怒り)
(傭兵団の中から声が上がる 捕虜からの激昂 其れを押し留める様に騎士達が動く 響き渡る笑い声の中、カルロの顔をじっとその眼で見つめた剣士は、女に振り返る) 君もあちらに戻れ 悪いが、生まれ育った土地は諦めてもらう……(その言葉に目を剥く女 下卑た小隊長が舌なめずりをする 最初から素直に引き渡しておけば、と……) 君達の命は、こんな汚れた金では買わせない(傭兵の一人が女を匿う 乱暴さは無く、正当な捕虜として 赤毛の傭兵は綺麗な敬礼をカルロにしてみせる) この戦線を以って、レッドフィールド傭兵団は契約を満了 戦線を離脱させていただく 元より、成功報酬出来高制で戦ってやったんだ 金を払わず楽が出来たんだ、文句は無いだろう? (そう言って傭兵団に声をかける 抜きかけた剣を収める音 赤毛の傭兵も背を向けて歩き出す) -- アベル
- はっ! たかだか家畜数匹の為にタダ働きするってか!?
はっはっはっは! コイツは面白い! まぁいい。我々も経費が浮いて有難い限りだ なら、日が沈むまでには失せろ。それ以降も滞在するなら敵対勢力とみなし、全力を持って排除する 文句はないな? アベル君(にやにやと三つの目を緩ませて笑い続ける) -- カルロ
- その警告は有難く受け取っておくよ(馬に跨り号令で傭兵団を動かす、まだ年端も行かない剣士)
(しかし、振り返り、最後にカルロに目を向けた)そうして自分の腹ばかりを満たした結果、出っ張った腹を家畜に掻き切られない様に気をつけてくれよ? (手綱を取る 騎士達の哄笑を背に受けながら、しかし凛と背筋を伸ばして去る傭兵団であった) -- アベル
- ふん……負け惜しみを(対して舌打ちで見送り、こちらも町へと戻っていく)
(以後、いくつかの町が併呑されたが、西側の記述ではそれらは解放、教化と記された) (内容については一切、触れられることもなく……) -- カルロ
- ……ふーん(陣地よりその様子を伺いつつ、報告書にペンを走らせる)
やっぱなー…ふつーの人間と神国の人間がかち合えばこーなるわなー 予想通りとはいえなー……上手く行くんかなーこれでー ま、知ったこっちゃないけどさー(と、欠伸を押し殺しつつなおもペンを走らせるのであった) -- リコ
- 黄金暦223年 2月 --
- 黄金暦223年 2月 --
- 第十三次ローディア大戦末期 とある前線にて --
- 最初にまず、鳥が逃げた
次にまず、戦馬が怯えた そして最後に……大気を揺らしてそれが上天を舞った時 やっと、全ての者が逃げ出した 遙か北方の山脈より飛来したグリーンドラゴン。巨体が大地に降り立ち、吠えれば 大地が裂けた 空が軋んだ 草木が萎縮した 西側全土における恐怖の共通認識……竜害が、人の世の些事など全て吹き飛ばした --
- 神殿騎士A「隊長ぉ! ど、どどドラゴンです!」
バカ野郎そんなのみりゃあわかるってんだよ!!! 前線にはまだ何人残ってる!? 神殿騎士B「1個中隊丸々です! 救出に向かいますか?」 バカいえ見捨てるに決まってるだろう! もう手遅れだ!! 全軍転身! 傭兵部隊を殿に回せ! 友軍より捕虜を優先しろ、そいつらを金にかえなきゃ今回の遠征はまるきり無駄骨だ! 神殿騎士C「こんな状況でも金の心配するとか隊長マジ拝金主義者」 -- カルロ
- 神殿騎士A「たたった、隊長ぉおおおお!」
今度はどうした!? 神殿騎士A「ドラゴンが! ドラゴンがこっちに向かってきます! 凄いスピードです!」 はぁああ!? な、なんでこっち着て……って、みんな同じ方向に逃げてるからだろうが!!! ええい、お前、そこのお前! 神殿騎士B「ハッ! なんでありましょうか隊長!」 お前は神を信じているか!? 神殿騎士B「無論であります!!」 そうか! なら向こうでよろしくやってもらえ!(足引っ掛ける) 神殿騎士B「へっ!? うううアアアアア!! 隊長! 隊長ォオオオオオ!!!」 神殿騎士A「いまだ! アイツが食われてるうちに逃げるぞ!」 要領分かってる部下の事は神並みに信用してるぞお前たちぃ!! 祈りは本国かえってから纏めてすますとして、今は逃げるぞ! -- カルロ
- (後から理由を探すことなどいくらでもできる)
(ここで重要なことは…勝手に身体が動いてしまって、他ならぬ自分の手で賽を投げてしまったということなのだ) (向こう見ずは生まれついた性分だ たとえ直し様がないとしても…もし生き残れたなら死ぬほど悔い改めよう)
(我に返ったのは総身の膂力をこめて一矢を放ってしまった後のこと) (いかに手をのばそうと届くはずもなし そして、その矢の向う先はといえば)
(天地を揺るがし名もなき兵どもを追い散らす巨体の頭 ぎらぎらと燃えて輝く緑竜の瞳だ)…―――っっ!! -- 喬爛
- 神殿騎士A「隊長ぉおお!」
今度は何だぁ!? 神殿騎士A「いえ、見慣れない装束の少女が目前で竜に!!」 その女はいい女かァ!? 神殿騎士A「自分は好みであります!!」 よし!! なら助けるぞ! 多分高値で売れる!! 神殿騎士A「ひっでぇ!? 好みっていったのに!」 (そういって駆け出しつつ神殿騎士の常識破りの膂力でもって喬爛をひっつかみ、走り出す) 女! 危ないぞ! つったてる暇があったら逃げろ! -- カルロ
- うへえ、あぶねえあぶねえ…(四本腕の甲冑を着込んだ、異形の青年が息をきらしている)
あーびっくりした、まさか竜が飛んでくるたあ…ま、商品は届けた後だし、あいつ等ならうまく逃げてんだろ 竜の奴もあのよく喋るアルメナ野郎を狙って(ふと、視界に入る少女、彼女が矢を向ける先にいるのは…) おいおいおいおいおい冗談だろ…!? -- 胡久美
- (ふわ、と身体が軽くなり視界がぐらぐら上下に揺れる 拾い上げられたのだと気付くまでほんの一瞬間があった)
…っは!? 放っ、放せぇーーーー!! これでは狙えぬ! 狙えぬではないか! 次の一矢で仕留めてくれよう…! そなたらの方こそ尻尾を巻いて逃げるがよい この身ひとつくらいどうとでも゛っ(舌を噛んで悶える) -- 喬爛
- アホが!! バリスタの連射どころか火砲でもびくともしないバケモノに弓などきくはずもないだろうが!
ええい、そこの!! そこの傭兵!! 後で金は払ってやるから撤退を支援しろ!! (胡久美をみつけてそう叫ぶ) -- カルロ
- (舌噛んで悶える、異国の女を眺めて)上の下、ってとこか。あの性格さえ…あ?
(名を呼ばれ振り向けば、そこにはつい先程仲間を餌に逃げおおせ様とした騎士の姿) (普段なら無視して逃げ出すが、今回ばかりはそうも言ってられない。あの少女のせいで完全に竜の関心はこちらへ向けられている。) (ならば、逃げる為の餌は多いに越した事は無い) てめえ、払わなかったら後で覚えておけよ!(四本の腕にはそれぞれ、西では見た事もない様な、細身の片刃剣が握られている。東ローディアの曲刀とも、作りが違うようだ) -- 胡久美
- 神に誓ってしこたま払ってやる!! 神殿騎士に二言は無い!
神殿騎士A「し、しかし、カルロ様! 完全にキレてますよドラゴン! 本当に逃げられるんですか!?」 知るか! それよりお前ぇ! お前はこの女が好きかァ!(小脇にかかえた喬爛をみせながら) 神殿騎士A「え!!? あ、ええええ、と、え、エキゾチックで魅力的だとは思います!」 そうかぁ!! なら女の為に死ねぇい!(足払い) 神殿騎士A「えええぇえ!? そ、そんなぁああ隊長ぉおおおお!! せめておっぱいくらい揉んでからぁあああ!」 神殿騎士C「副長が殿を勤めてくれたぞぉ!! みんな逃げろぉおお!」 あの傭兵もそこそこやるようだ、これなら大丈夫!! -- カルロ
- …あーー!!(口をあんぐりあけて神殿騎士Aの末路を見届ける)た、たわけぇ!! そなたまた…!
ええい阿呆と言ったな! あの化物を狩るのがよいのであろう!? お守りなど要らぬ!(カルロの腕を突き飛ばすように抜け出して) (主を失いさまよう軍馬に飛び乗り、瞬く間に御して併走した)ふん、下の下の駄馬だが無いよりよかろう さて、このまま地の果てまで駆けるも一興! だがそなたはそうも参るまい?(合成弓を片手に矢筒からまた一本引き抜いて) -- 喬爛
- あ!?(あっさり抜けられつつも、見事な馬術に暫し目を奪われ)
……って、おい、お前!? さては異国の蛮族か!? ドラゴンをしらないのかよ!? あれは倒すとか倒さないとかそういうもんじゃないんだよ! 出てきたらもう逃げるしかないんだ! やめろ、殺されるぞ! つか、お前がなんかすると僕らまでブレスで一掃されるんだよマジやめろぉおお! -- カルロ
- (さて、いつこのよく喋る口を黙らせようかと思案する内、抱えられた小娘は軽業師の様に馬へ)
(そして取り出された弓、先程の行動から恐らく彼女のやる事は…) てめええええ!!アホじゃなきゃ馬鹿だ馬鹿!ばーかばーか! 自殺したきゃ俺を巻き込むな!そこの色ボケ神殿騎士でも道連れにしてろ! (いいつつ、やや前方にいる非戦闘員らしき男の足へ、拾った短剣を投げつける。) (短剣が刺さり転倒し、呻く男を緑の竜は無慈悲に一呑みにし、噛み砕く) -- 胡久美
- だぁれが色ボケだ!! ぼかぁ神殿騎士として当然のことを人命救助の観点に基いて捕虜確保による金儲けをだなぁ! おお、ナイスだ傭兵! 出来れば西の雑兵を狙え!
異教徒は幾ら死んでもいい! -- カルロ
- うるさい!! 竜くらい知っているに決まっておろう!? 蛮族だの異教徒だの聞き捨てならぬことをつらつらと!
だが王者たるもの瑣事に構ってなどおれぬ 非礼のかど、そなたらの無知に免じて許してつかわそう! (二人の叫びを無視して放たれた矢は高い音色を立てながら蒼穹へと吸い込まれていく 一種独特の形状からして鏑矢だった様だ) (あの「災害」の注意が僅かでもそれれば僥倖、と二の矢を番えて放ち)自殺も何もじきに追いつかれよう? (このままではな、とつぶやき馬首をめぐらせて)私はこちらの道を行く! 生きていればまた会うこともあろう その方ら、名は何という! -- 喬爛
- はぁ!? 何をわけのわからな……おおお(鏑矢の音に反応してドラゴンが一瞬余所見をしてくれる。その間に散開することができた)
神殿騎士カルロ・ブレンゴーラだ、覚えておけ!! (名前をきかれるとバカ正直に答えてしまうエリート) -- カルロ
- 今金儲けって言ったねアルメナ野郎。
(厄日だ、と心の底からため息をつく。襲った集落は売り物が少なく、ケチる商人の首に刃を突きつけ限度額で売りつけさあ帰ろう) (という所で、まさかこんな目に合うとは。金は帰ってから受け取る様にしたのが、不幸中の幸いか) あ、クソ折角のカキタレが!(負けず劣らずの最低な台詞を言うと) あ?胡久美、胡久美・逆剥だよ(自らを王とのたまう、奇妙な女に名を告げた) -- 胡久美
- よし、傭兵、我々も逃げるぞ!
案ずるな! 怪我しても治してやるから思う様たたかえ!! いくぞ!! (そのまま2人で足引っ張り合いながら逃げたそうな) -- カルロ
- 我が名は虎塞公主・喬爛!(堂々と言い切って)いつか! あの竜どもを狩る者の名だ!! この顔、ゆめゆめ忘れるな!
(弓馬の技を尽くして注意を引きつつ道を逸れ、巨木の立ち並ぶ深い森へと分け入っていく その姿はすぐに見えなくなった) (それから数日の後、乗り潰されて絶命した馬の屍骸だけが発見されることになる 少女の行方は杳として知れず――) -- 喬爛
- ったぁく、顔はいいんだからアレでもうちょい大人しく…ぜってーやだし!
これ以上異形化してたまるかってんだ!!言われなくてもすたこらさっさだっつーの! (無事逃げきるまで、延々口喧嘩は続いたって話だ) -- 胡久美
- 黄金暦223年 1月 --
- (黄金暦223年 東西ローディア国境付近。後の時代に語られる、第十三次ローディア大戦の戦場の一角) -- カルロ
- ふん、西ローディアの重装騎兵……噂ほどじゃないな
まぁ、僕が相手ではそれもまた仕方がないことか。そうだろう、お前たち!(白い全身甲冑の部下たちをつれ、神殿騎士が行軍を続ける) (部下たちは食傷気味といった声色でそれぞれ賞賛をのべる) ははは、そうだろうそうだろう。このアルメナ神聖騎士団の司教にして神殿騎士、カルロ・ブレンゴーラにかかれば馬にのった地方民など物の数ではない -- カルロ
- (真正面から迫り来る騎兵をハルバードで文字通り一刀両断し、都合4つの肉塊にかえつつ三目を細める)
他愛ない。どうした雑兵共? もうお終いか? ああ、まったく、ここにも僕に膝をつかせる猛者はいないのか これじゃあ古都くんだりからこんなド田舎まで来た甲斐がない -- カルロ
- 神殿騎士A「カルロ様。突出しすぎなのでは……」
神殿騎士B「一度退いて本隊と合流するのが上策かと」 ん? なんだお前たち? こんな田舎の馬賊共相手に何をおびえている? 我等はアルメナの信徒にして聖戦士だぞ。今だ肉体改造も恐れている凡俗共に遅れをとるわけがあるまい 臆病風に吹かれたのならお前たちだけ下がれ。僕1人でも十分だ! (突撃し、ハルバードを振り回すカルロを見ながら、やれやれといった様子でついていく神殿騎士達) -- カルロ
- (カルロの余裕の戦いぶりを尻目に、一歩離れたその場所で数人の兵士が戦っている。)
(もしその姿をひと目でも見れば、いかにも古臭い鎧に包まれて戦うその姿は、カルロのような育ちのよいものには酷く醜くうつったことだろう。) (神国の一般兵を振り払うように薙ぎながら次々と倒していくその姿は、女にして高く、男しては低い体型だ。) (最後の一人を血祭りに上げたところで、ずるりとその視線がカルロの方に向かった) (距離があるにもかかわらず、その紫の陰湿な瞳は確実にカルロを捉えていた) -- カティス?
- ぬ……? ほほう、これはこれは面白い
少しは気骨のある猛者が西にもいるようではない……かぁ!!(一息でハルバード遠方よりカティスに投擲! バリスタの一撃とも見紛う一投だ) (神殿騎士であるカルロからしてみればただの小手調べだが、普通の人間からすれば砲弾の一撃のようにすら思える) -- カルロ
- (突然の投擲にも戦場であるが為に、常に細心の注意は怠らない いつ攻撃されても対応できるよう足の重心に気を配りながら、全速力で右に移動する)
(瞬時の移動が功を奏したか、そのまま立ち尽くしていれば確実に脳天に直撃していたであろうハルバートは、今や何もない地面に突き刺さる) (それを確認するまでもなく、踵を返して再度カルロを捉える) 騎士殿は大勢でかからなければ戦えず、あまつさえ取り逃がすとはぶざまにも程がある! (明らかな挑発の声は、男にしては高く女にしては低い しかしそれよりもその声には怨念が込められているかのようなおどろおどろしさがあった) (それはカルロの姿からアルメナの人間だと把握したからなのだが、今のカルロにはそれは理解できないだろう) -- カティス?
- はっ! 吠えるではないか痴れ者!(今だ余裕綽綽と言った様子で部下からあらたなハルバードをとりあげ、一歩前にでる)
お前たちは下がっていろ。久々に骨のありそうな獲物だ。あの女は僕がやる (怨嗟の声色をうけ、挑発されればあっさりとそれにのり、前に出てくる神殿騎士。明らかに隊長格) 我こそは神国の先駆けにして神の使途! 神殿騎士カルロ・ブレンゴーラ! いざ参る! -- カルロ
- 我が名はカティス=カーク! きさまの信じる神など貴様もろとも切り捨ててくれる!
(大仰に言ってのけるもカルロの腕前はさきほどの投擲で少しは把握できた 彼は自分よりも強い しかし挑発に乗るうかつさもある) (これが演技だという可能性も充分にあるが、自身が始めたこの対決だ そう簡単には逃がしてはくれまい) (動かず、じりじりとその場にとどまり、カルロに視線を向けたまま、じりじりと左に弧を描くように動く) -- カティス?
- ははは、蛮族らしい物言いだ。神の御慈悲を知らぬというなら、その身に直接聖句を刻んでやろう
何度刻んだところでお前が慈悲を乞うか、今から楽しみだ! (対するカルロは自らの身体能力に胡坐をかいた、直線的で単純な動きをする) (フェイントも技巧も何もない、ただの振り下ろし。縦一閃そのまま防具ごと一刀両断してやろうという、力任せの強撃だ) -- カルロ
- (カルロの言葉一つ一つに、紫の瞳がヘドロのように淀んでいく)…ふ、はははははははっ
何が神だ。あれが神か?あの禍々しくも醜いのが神か。あれならば私の方が万倍美しい! あんな醜いカスに慈悲を乞うくらいならば、ブタの餌になった方がまだマシだ! (騎士というからにはそれなりの技術も身に着けているだろうと判断していた所、彼のある意味予想外の攻撃に少し戸惑う。あまりにも単純で素直な攻撃だった) (だがその力は甘く見ない。まともに受ければこの鎧など紙にも等しくあっという間に切られてしまうだろう) (剣を握りギリギリまで引きつけながら、紙一重でその攻撃を交わしながらカルロの胴体に向かって横薙ぎに剣を振るった) -- カティス?
- なっ、ほぐぅ!?(技巧を凝らしたカウンターを真正面からもらい、鎧越しに衝撃がカルロへダイレクトに伝わる)
(祝福儀礼を施された神殿騎士のフルプレート。そのうえチェインメイルと重ね着までしている超重装をたちきることは流石に叶わないが、カルロの矮躯が軽々と吹っ飛ばされる) 神殿騎士「カルロ様!」 神殿騎士「隊長、今支援を!」 ええい!! さがっていろといったはずだ雑兵共!! 僕の聖戦を穢すつもりか!? (青筋を顔に浮かべながら立ち上がり、血を吐き捨ててカティスに向き直る) やってくれたな女ァ……少しはできるようだが、僕を本気にさせたのは失敗だったな……膾に刻んで、望み通り豚のエサにしてやる!! (逆上し、先ほどよりもはるかに単調になったが、かわりに力の倍増された一撃を愚直に繰り出す) 死ぃいいいねぇえええええええええええええ! -- カルロ
- (細身の剣から伝わる確かな衝撃。鎧に纏って体型が判別つかないのはどちらも同じだが、それでもこの攻撃で簡単に吹き飛ばされるのは想像の範囲外であった)
(それでも油断はしない。ざっと距離をあける為に後退しつつ、相手の出方を待つ。自分の攻撃の特徴は速さだ。相手よりも素早く叩きこむか攻撃を食らう前に繰り出すか) (しかしカルロの姿を見て、その意欲に変化が芽生える。またもや技術もへったくれもない一撃に馬鹿にされたような怒りが込み上げた) (先程よりも明らかにその威力は増しているが、当然これも受けるつもりはない。同じようにギリギリで交わしながら、視線はカルロから外さなかった)
(身体が揺らぐのと同時に、ボサボサの髪がざらりと舞って、女の隠された右側を露わにする) (右側には人の目が額に頬にとぞろぞろと張り付いていた 群れる目が一斉にカルロをぎょろりと睨みつける。あきらかにその異形の姿はアルメナで受けたそれであった) (避ける動作から繰り出された攻撃は、先程は剣だったが今度は違った。マントに隠された左腕が、カルロの腹を打たんとばかりに下から繰り出された) (露わになっている女の腕と想像していれば、そのあまりの違いに絶句しただろう。それはカルロの腕よりも遥かに太く鋼のごとし硬さを誇り、地面に届くほどの長さを保っていたのだ) -- カティス?
- なぁっ!?
(驚愕と同時に再び吹き飛ばされる。今度は文字通り弾き飛ばされ、荒野の岩肌に叩きつけられて倒れる) がはっ……ごほっ……ば、バカな……! その身体は……顔は……! 神の御業……! (背後に控えていた神殿騎士達もざわめく。まさかの同類の登場に驚愕を隠せない) -- カルロ
- …黙れ(神の御業という声に、ぎりっと歯を噛み締めながら、怒りと憎しみに満ちた声を放った)
何が神だ…。私の、私の身体をこんな目に。 どうして私がこんな目に…。どうして私がこんなことに。(もはや定まらない視線でぶつぶつ呟きながら、ふいにマントを翻して身体を隠した) これ以上は戦うつもりはない。お前の不浄な血で穢れたくないのでね(状況は1対多数と不利でありながら、勝利とも取れる声で踵を返して去ろうとする) (彼女の視線の先には西ローディアの騎士たちが大群を率いてこちらに向かってくる。増援が来たのを遠くから感知していたのだ 一人去りゆく背中を追撃するのはたやすいが、この援軍を相手にする確率が増すばかりだろう) (彼女はカルロの反応を待たずに、すでにその存在を意識の外に追いやって歩いていった) -- カティス?
- 不浄の血、だと? この高潔なる僕の、神殿騎士を捕まえて、不浄などと……!!! 女、いわせておけばぁああ!!!
神殿騎士「カルロ様! いけません!」 神殿騎士「今追撃すれば王国軍の部隊につかまります! ご自重ください!」 黙れ黙れ黙れ!! 貴様等一騎当千の神殿騎士だろう!? 何を臆しているか! 今すぐ追撃……を……! (頭に血が昇りすぎて気絶する。カティスの一撃は神殿騎士すら昏倒せしめたのである)神殿騎士「し、しめた、よしお前等ズラかるぞ! 隊長かついでくれ!」 神殿騎士「了解!」 (そして、急いでカルロの部隊は撤退していった) -- カルロ
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