エルゼ辺境伯家出身 パリス・エルゼ 408842 Edit

西の国に、男が居た。
男の名はパリス・エルゼ。平凡な名前の、平凡な男である。
彼は魔法の名手ではなかった。
彼の斧の一振りは、魔王を倒すには貧弱であった。
酒の強さだけは、誰にも負けなかった。
その程度の、男であった。
photo奇しくもこの男と同じ名が、西の国の年代記には記されている。
その男は、貴族に生まれ、極東の名を持つ女を娶り、王位を簒奪した。
現王の祖と言われる彼は、魔に呪われたかの如く歪な腕を持ち、
その腕で先王の首をもぎ取ったという。
この男の経歴には余りにも馬鹿げた記述が多く、後世の歴史家は、
クーデターを起こした組織の幹部らをごたまぜにした結果ではないか、と推測を立てた。
finなにしろ貴族に生まれ、幼くして母を失い、齢15にして社交界で浮名を流した。
18歳で爵位を継ぎ、23歳で金のために冒険者となり左腕を失った。
28歳にして一度帰還し世界樹を切り倒し、
33歳にして帰ってくれば両腕が異形と化していて身元不明の伴侶を連れ、
37歳にして王位を簒奪し、歳を経れどその姿は呪われたように老いず、不定で、
49歳にして蛮族との戦争に終止符を打ち、95歳になり息絶えた。
彼の子の一人は王となり、幾人かは冒険者となり、幾人かは平凡な人生を送った。
さらに、西の国に機械を持ち込んだのは、この男だとも言われている。

適当に抜き出しただけでこれである。
とてもではないが、信じられる話ではないのだ。
子供の書く小説でも、もう少しましな話になるだろう。
寝物語の後の夢でも、もう少し整合性があろう。
だからその国の学院の教科書においても、男の話は数行で終わる。

しかし、図書室で、奇特にも年代記を読み始めた子供は、時に男の虜となった。
そう。彼らの中でパリス・エルゼは、強靭な英雄となる。
学校では教えてくれない事の中で、今もパリスは忘れられぬまま、妻と共に生きている。





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Last-modified: 2012-01-03 Tue 03:43:00 JST (2903d)