MOG/0013

「サリウス様！サリウス様ー！どこにいらっしゃるんですかー！！」

陽光の下、大きな白猫に身体を預けて本を読んでいたサリウスの耳にそんな声が聞こえる

「ああ、やっぱりここでしたか…もう！アナタはどうして、こうもサボり癖が治らないんです…」

本を閉じ、大白猫の喉を一撫ですると、「ん」と軽い伸びととも立ち上がって
目の前の騎士然とした女性を見上げた

「…君たちが優秀なお陰だよ。僕は何もしなくても、万事上手くやっていける。いやーありがとう」

へらっと笑って礼を言うが、女騎士はますます怒った様子で

「『ありがとう』じゃありませんよ！曲がりなりにも、アナタは伝統ある月夜兵団の長なんですからね！？
　…ああ、母さんはこの方の何を見て『ステキな人』なんて言ったのでしょう…？
　大魔王様のほうがずっと凛々しくて格好良くて………はぁ…お慕い申してますわぁ…うふ、うふふふふふ」

「君は母親に似ず、随分と真面目に育ったよねぇ………妄想癖だけはしっかり受け継いでるけど
　…その大魔王だって、昔はもっと頼りなくて…子供だったんだ
　僕も将来もっと立派になりますから、もうちょっと待って頂けませんかねぇ？」

「けど大魔王様の隣が似合うのはアタシなんかじゃなく氷竜王様
　一見ドライな同盟関係に見えるけど、お二人がお話し中にふと朗らかな笑顔を交わすのが尊くてン゛ン゛ン゛ッ゛
　…こほん………実の娘の前で子供ぶるのはやめてください！なんかぞわぞわします！！」

「実の娘から『サリウス様』なんて他人行儀で呼ばれるのも哀しいんだけど？」

「互いの団員の手前、しょうがないことです。『父さん』呼びじゃ示しがつきませんから」

「今は他の皆はいないけど？」

「祇瑳がいるじゃないですか」

「祇瑳も家族だから問題ないだろー？」

「あーもう！父さんはいつも、口だけは達者で…」

「あ、やっと『父さん』て呼んでくれた。ふふ…父さん嬉しい」

「………行きますよ！皆が待ってます！！」

そう言うと天日騎士団長はサリウスの、父の手を握り、月夜神を陽光の下導く
その後ろには大白猫の祇瑳が続き…

たとえ神は空になく、世は事に満ちていても
日の光と月明りに照らされて　時は優しく穏やかに流れていくのだった

	魔王軍　月夜(つくよ)兵団長　　サリウス
	・魔王軍の将の一人 ・夜歩みし者たちの集う「月夜(つくよ)兵団」の長 ・月の魔力に長け、死霊術を操る ・『鍵の術』という技を持ち、 　夜襲、暗殺、潜伏・破壊工作といった策謀を得意とすると言われている

思想・性格 †

人およびそれらが信奉する神との共存・融和の意識は皆無と言ってよいほど薄い。
しばしば殲滅戦や敵方要人の暗殺などの強硬策を提案するので、主戦派・過激派との評がある。

一方で権力には無頓着、かつ他者への興味を示すことも稀であるため、冷淡あるいは冷徹という印象を受ける。
その性格ゆえか、これまで粛々と魔王軍の勢力拡大に貢献し、現在の地位を得るに至った。

人並みにといった程度かもしれないが、他者へも興味を示すようになってきた。

身体的特徴など †

男性。身長は152cmほどで、やや小柄。
比較的整った顔立ちと相まって他者から侮られることも少なくないようだが、本人は気に留めていない。
ただし断りなく身体に触れられることは極端に嫌っており、そうした無作法には静かなしかし大きな怒りで応えることだろう。
相変わらず無断で身体に触られることは好まないが、怒る、というほどでもなくなった。

身体能力は見た目に反して極めて高く、流石は魔王軍の将といったところ。
自らが最前線で戦うことはまずないが、仮にそうなったならば、己の背丈を超えるほど巨大な『魂狩の大鎌』を自在に振るい、数多の死体を積み上げることとなる。

☽月夜(つくよ)兵団 †

夜、特に月夜に力を増す魔物たちで編成された兵団。
その特性から、正面を切っての戦いではなく、夜襲、暗殺、潜伏・破壊工作といった策謀を担当する。
主な構成員は以下のとおり。

• 夜の魔獣
  • 梟、狼、猫、鼠、蝙蝠など、およびそれらの獣人
• 月の魔力で変身・狂暴化する魔物
  • 人狼、吸血鬼、狂戦士など
• アンデッドモンスター
  • スケルトン、ゾンビ、ゴーストなど

兵団員は正気が薄いまたは意志自体を持たない者がほとんどなので、サリウスに対する忠誠心は厚いとは言い難い。
しかし月の魔力による扇動や死霊術での操作により、目的達成の観点からは問題なく運用出来ている様子。
（平時に兵団員の世話をする者たちへの同情は禁じ得ないが）

正気が薄い者が多いのは変わっていないが、少なくとも軍として統率を取れた動きをすることが増えた。
無用な殺戮や破壊も減って、ときには敵の降伏をも受け容れるようになった。

サリウスの技能(スキル) †

月の魔力 †

魔力の源である月から力を引き出し、月が象徴する以下のような術を使うことが出来る。

• 夜歩む存在の肉体強化
• 狂気や不和を振り撒く
• 精神を研ぎ澄まし、思考を鋭敏化
• 治癒

死霊術 †

死体からゾンビやスケルトンを作り出したり、迷える魂を捕らえゴーストにしたりといった、死霊術全般。
厳密にはこれも月の魔力を用いて行う術の一つであり、生死の法則操作や冥府との交感といった専門的なそれとは異なる。
（＝より強力なアンデッドを率いる部隊は魔王軍内に別に存在し得る）

『鍵の術』 †

実態のない概念的な「鍵」を使って空間を開き、物質を別の場所に/別の場所から転移させる術。

物量に制限があり、通常に一度で転移させられるのは一分隊（5〜10名）程度。
また場所や距離に関しても、いわゆる地脈、龍脈、力線、エーテルフロウなどと呼ばれる魔力的な「道」で繋がっている場所に限られる。
さらには、結界の類による妨害も受け得る。

このように制限の多い術だが、それでも奇襲、暗殺、潜入工作といった幅広い用途に使えるため、月夜兵団が……というよりはサリウス自身が魔王軍内で無視できない存在感を示す一因になっている。

なお、入念な準備に基づき、大規模な術式（儀式）を行えば、上述の制限を超えられる可能性がある。

なまえのないむかしばなし †

　きょうだいは　おわかれとして
　おとうとに　いろいろなおくりものを　あげました

　でも　いちばんたいせつな
　“おくりものを　つかうりゆう”をあげるのを　わすれていました

　だから　かれは　いまでも
　それを　さがしつづけています