
或いは何処かの戦場、深い森の奥の洋館、魔族集う魔王城、或いは…… †
紫十字団(しじゅうじだん) †
魔王軍において医療に関わる業務を専門とする部隊。
戦闘においての負傷を治療するだけではなく、魔王軍内においての医療や衛生状態の維持なども行う。
他では見られない独自の回復魔法技術を有しており、その効果は非常に高い。
回復魔法については部隊内で指導、教練が行われているが、希望すれば部隊外の者でも指導は受けられる。
分かりやすい特徴として、団で行われる回復魔法は紫の光を放つ。
魔王軍内では比較的、員数が少ない団であり更に要請に応じて一名単位から他の団への従軍も行うため、
団としてまとまった行動をしていることは少なく、兵士以外からの認知度は低い。
団そのものとして戦闘行動をとることは多くはないが、必要がある場合は行い、割と強い。
主に自分たちを回復させながら戦う遅滞戦術を得意とする。しかしどうしても平均として攻撃手段に乏しく防御的性質が強いため、
用兵には用途が若干狭く、あくまでも他軍団の補助や魔界での医療従事が主な業務である。
紫十字団の団員は身体の何処かに紫十字を身につけることを義務付けられており、
主に団員は刺繍やアクセサリの形で身につけている。
ケイルは紫水晶を加工した指輪。団長は意匠を施したブレスレット。
魔王軍領内のある深い森の中に大きく古めかしい洋館の拠点を持つ。
基本的に団長はこの拠点に滞在しており、ケイルもふらついている時以外はよくここに居る。
- 過去、武勇で名を馳せた事もある魔族の貴族の屋敷。人間と戦ううちに人間の文化、考え方に興味を持ち、その力を取り入れていた。
その果てに人間界のある勢力と結びつきを持ち、協力して大魔王への反乱を企てていたため、内通者として初期の紫十字団に討伐された。
人から得た聖なる力と魔族としての魔の力を共存させることに成功し、強力な力を持っていた。
ケイル †
紫十字団の一兵士。古参だけが取り柄のうだつの上がらない万年ヒラ。
基本的に軽薄でへらへらと笑い、侵略戦争についてもそれほど真面目に取り組んでいる様子はない。
出来るだけ面倒そうな戦いになればそれを避け、つまらない戦場は行きたくないと公言する男。
こうと自分で決めれば命令無視も平気で行い、好きなように動き好きなように仕事をするが、
小言を言われていることはあれ、厳正な処罰を受けた形跡は殆ど確認ができない。
回復術師としての腕はそれなりに立つものの、たまに役に立つ事もあるも普段がダメ、といういうのがもっぱらの評判。
戦いにおいては素手による格闘戦を好む。武器についても心得はあるようだ。
何故か団長や副団長などに気安く、団長もそれを咎めないため歴の浅い団員は不思議に思っている。
種族は悪魔。同族による繁殖で増えるタイプではなく、概念存在として自然発生、受肉したタイプの悪魔である。
そのため厳密に言えば同族は存在せず、親などの類縁も存在しない。
雑にカットした白髪、赤目。左目側に古い傷跡。頬からこめかみにかけて赤い魔力紋。黒い丸メガネは伊達。
見た目はほぼ大柄な人間体男性の身体であり、発する負の魔力を感じ取れなければ人間と名乗っても分からないくらい。
ゆったりとした服で誤魔化してはいるが服の下には尋常でなく鍛えられた筋肉を持ち、その身体能力は非常に高い。
受肉してからも相当な時を生き魔族としても決して若くはないが、肉体をある程度イジれるため時折外見を変えていた。
現在の姿になってからも結構な時を過ごしている。
【実のところ】
バリバリ武闘派の軍団長とガンガンぶん殴り合える。紫十字団はケイルが半分手慰みに一から作り上げた団であり、
団で広められている回復魔法もケイルが考案、開発したものだが、形だけは団長が団を作り広めたこととされている。
侵略戦争に参加している理由は、楽しむため。将としてではなく、一兵卒として最前線に立ちたいが故のこと。
この事実は知る者は知っているが、それと同時にケイルが広く知られたくないということも知っているだろう。
過去、幾度も強敵を単独で葬り去っており、その実力、功績を鑑みれば一兵卒であることは有り得ないのだが、
情報部の先代と交わした密約により、大きな功績は情報部の情報統制により、
団全体、或いは団長ホーミの功績にすり替えられている。大魔王や魔軍司令には承知の事実であり、何処かで知る事もあるかもしれない。
- 回帰の悪魔
世界に稀に発生する、概念そのものが魂と自意識を持ち個別の存在となって確立する悪魔、それがケイルである。
ケイルの根源概念は『回帰』。ケイルは強固な肉体と強大な魔力を持ち、この根源概念にも
基づく概念魔法として回復魔法に類似する魔法を得意とする。
長命種に匹敵する寿命を持つが、仮に、不老不死や、不滅、永遠の命などが何らかの方法で得られるとしても、
この根源概念に反するためその効果は得られない。如何に回復し、蘇生しようとも絶対に無へといずれ帰結する。
もしその法則を覆してもなお不死を齎せるのだとすれば、それは根源概念そのものを書き換えられる何かだろう。
- ケイルの魔法
前述の通り、正確には回復魔法ではなく世界の理の一部である概念を操作・干渉する概念魔法。
ケイルの開発したこの魔法は魔力に意識的に現す術式さえ理解できれば、ケイルでなくとも使える。
開発者であるケイル自身が概念存在でもあるため、大なり小なりはこの回復魔法は『回帰』の概念に縛られる。
とはいえ、普通の回復系の魔法として決められた術式に沿って魔法を使うならば他の多数の魔法、魔術と同じ一種類の魔法である。
基本的には無詠唱式の魔法であるため、教練には術者が直接相手の魔力に働きかけ、術式を感覚的に理解させる指導方法が主に取られる。
この魔法を使う際は、ほぼほぼ例外なく紫色の光が発生する。
- 紫十字団式回復魔法もろもろ(大体まるっと回復魔法、と呼んでいる)
- 『活性』の回復魔法
もっともポピュラーで難易度が低い回復魔法。対象の自然治癒能力を活性化させ、回復を行う。
あくまで対象の治癒を促進する魔法のため、体力がなくなっている、血液を失っている、などの状況では効果的に回復を行えない。
使用する魔力の割に効果が高く、コスト面で優れている魔法でもある。普通に教える場合はこれをまず教える。
- 『形成』の回復魔法
ある物体の、世界における、物体の本質、似像存在概念を直すべき大本として定め、そこに直すために物質に干渉する、モノの回復魔法。
術者が似像存在概念を上手く読み取れなかったり、直すべき対象のそれがブレやすいものであると効果が上手く発揮されない。
最も効果が高い対象は固形の無生物であり、液体、気体や、生物に対しての効果は落ちる。
ただし生物相手に使用する場合、低体力、血液不足などの活性の回復魔法のデメリットを回避できるため、使い分けできる。
- 『浄化』の回復魔法
毒や病気に対して、その治療を目的とする回復魔法。対象の根本生命原理を読み取り、正常な状態を判別し、異常である状態を解消する。
読み取り難易度は、猛毒や難病であればあるほど難しくなり、術者と対象の概念属性の相性によってもその難易度は変わる。
これは他の対象の情報を読み取る回復魔法でも同様だが、魔の属性を持つ者は聖の属性を読み取るのに難易度が高まる傾向がある。
- 『蘇生』の回復魔法
いわゆる蘇生魔法。対象が「生きている」とされる似像存在概念、根本生命原理などを総合的に読み取り、決定し、
その状態へ戻すために回復させる、主に形成と浄化の回復魔法を組み合わせた高度回復魔法。
対象の「死亡」の程度により難易度、魔力消費量が変わり、主に肉体的、霊体的、魂の状態、それぞれのケースにより変化する。
魂が完全に消滅した状態では、この回復魔法では蘇生を行うことはできない。
- 『補完』の回復魔法
対象の破損した器官を擬似的に術者の魔力で再現した仮想躯体によって補い、一時的に機能させる補助回復魔法。
他の方法では回復が難しい際に使用する補助的な回復魔法であり、この魔法で応急処置をした後に本格的な治療を行う目的の魔法。
- 『改良』の回復魔法
肉体の根本生命原理に干渉し、その肉体を回復しながら作り変える高度回復魔法。主に活性、形成、補完の回復魔法を組み合わせるため、
難易度は高く、魔力消費量も多い。改良の回復魔法で作り変えた身体は、基本的に異質なものであるため、必要が無くなれば元の状態に戻すことが望ましい。
- 『逆行』の回復魔法
世界規程概念に干渉し、対象の時間軸を巻き戻すことで回復させる超高度回復魔法。ほぼほぼ対象そのものの状態、属性に左右されず回復を行える。
莫大な魔力、針の穴に糸を通すような難易度であり、なおかつ幾つかの状況に関しては時間を戻したとしても変化を及ぼせない。
- 『観測』の回復魔法
世界規程概念に干渉し、観測した事象の因果を辿り、出来事そのものを回帰させる超高度回復魔法。剣を振るわれ傷を負う場合、傷を負った、という事実や、
そもそも剣がそこにあった、という事実を消し去ることによって出来るはずだった傷を文字通り無くす事による回復魔法。
事象の観測のしやすさや、その事象の強度にもよるが、何気ない事象であっても世界そのものに干渉するに等しい大魔法のため、
凄まじい大魔力を使い、難易度もそれに比例する。そのため強度の高い事象によっては魔法も当然失敗しうる。
- 紫十字
ケイルが力を開放する際、瞳の虹彩が赤から紫へと変化する。そして更に瞳孔が深い紫色の十字状になり、頬の赤い魔力紋も紫色へと変わる。
本来のケイルの魔力属性としての色は、紫であるが燃費の観点、また常時魔力制御を行うことによる魔力操作の訓練の観点により、
これらの魔力属性の色を赤色に抑えることで、有事に高い魔力の開放を行えるようにしている。
紫十字団の命名となった根拠でもあるが、これはかつてホーミが故郷を盗賊に滅ぼされた際、それを助けたケイルが僅かではあるがこれを見せており、
傀儡の団長として団の設立の際に命名とシンボルを求められたホーミが、紫十字をそれに求めたためである。ケイルはちょっと嫌がった。
- 聖者の系譜
ケイルが遥か昔に相対した、人間の子孫。
ある人間の傍流の宗教団体が人為的に用意した聖者となるべき存在であったが、その団体をいきがかり上ケイルが潰した際に、
ケイル自身の存在に影響されある種の人間の形をした特異点となった。全てではないが、子孫は紫色の瞳をしている。
ホーミ †

紫十字団の団長。回復魔法を主として使う獣人の魔法使い。傷ついた仲間が居ればそこが死地だろうが飛び込み癒やし、
病に苦しむ団員がいれば自ら手を差し伸べ治療を行う。人望もあり、付いたあだ名は『戦場のウィステリア』
心優しく戦いに倒れる仲間たちに胸を痛めており、戦争が早く終わることを心より祈っている。
直接戦闘は苦手であり、戦場で輝かしい活躍などは余り行わないものの、献身的な働きと人望で団長として相応しいとされている。
【実のところ】
ケイルが人間たちに討伐されてしまった魔族の孤児を引き取り、育てた少女。
ホーミが扱う卓越した回復魔法も、ケイルが教え込んだもの。
表立って団長を押し付けられていることに呆れてもいるがケイルには色んな意味で逆らえない。いろんな。
- 傀儡の団長
ケイルに色々な意味で逆らえないが、実力自体は軍団長を任されるに相応しい実力を備えている。
しかしその力は防御方面に特化しているため、華々しい戦果とは概ね無縁である。
隊の運営手腕もなかなかのものではあるが、治療のためなら手間やコストを度外視してしまうことがあるので、金勘定は少し苦手。
- 双頭の蛇杖
一匹の直線状の蛇に、もう一匹の蛇が螺旋状に巻き付く形の、希少魔法鋼で作られた、魔界最高の鍛冶師が作った魔術杖。
魔法の効果を飛躍的に高めるほか、それそのものも非常に頑強であるため打撃武器として使用しても高い威力を誇る。
が、ホーミは体術も杖術もさっぱりなのでこれで殴ることはない。以前の戦功による褒章。
- 眼帯、包帯
ホーミが扱う魔法は主にケイルから教わった回復魔法であるため、大半の魔法は当然ながらケイルの方が上手である。
しかし、一部の魔法についてだけはケイルを上回る腕前を持っており、その一つに『相似』の回復魔法がある。
これは、他者の魂と肉体に同調することで相手の負っている負傷をそのまま自身に移すことのできる回復魔法であり、
使用者が負傷する代わりに、負傷者を回復させることができる魔法。
対象との同調さえできれば、回復させる体力がない、正常な状態を構築できない、属性の不一致により効かない、など、
他方式では回復できないケースでも治療を行えるため、レアでありかつ強力な回復魔法と言える。
手練れの術者は、その傷の状況にもよるが傷の転送の際にその傷の規模を縮小することができるため、
重症だったとしても術者が負う傷は軽傷に留まることが多い。しかし、術式が他の回復魔法と干渉するため、
この魔法で負った傷には回復魔法が効きづらく、術者自身の傷は自力での自然治癒に頼ることになる。
ホーミはこの相似回復魔法を得意としているため、普通の回復魔法ならば死んでしまうような相手も救うことができるが、
その代償として傷が絶えず、また、今まで負った傷も一般の兵士では到底及ばぬ程に数多い。
いつも幅広の黒の帽子とゆったりとした黒のローブを纏っているが、それは傷を隠すためでもある。
- 他の魔法
紫十字団式回復魔法の他にも、汎用的な魔法についても修めている。しかし主に防御、拘束、支援の部類であり、
攻撃魔法については使用しない。また、回復魔法についても他の方式の魔法を使える。
ケイルは他の方式の魔法については、知識はあっても使わないか使えないかで、特に使用することはない。
薬箱の奥底 †
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