聖杯戦争/最終/再世の塔    企画/ゴルロア聖杯戦争/4期


- 再世の塔 ・ 蒼の広間 -

再世の塔・蒼の広間
 


編集:聖杯戦争/決戦/再世の塔・蒼の広間  差分:聖杯戦争/決戦/再世の塔・蒼の広間

 
お名前:
  • - 再世の塔 ・ 蒼の広間 -
    • 告知

最新の1件を表示しています。 コメントページを参照



 

最新の1件を表示しています。 コメントページを参照

  • ──────────────────────
お名前:






  • - 再世の塔 ・ 蒼の広間 -
    • 告知
  • ──────────────────────
  • - 再世の塔 ・ 蒼の広間 -
    • (何人かが塔へ突入して、暫く経ってから足を踏み入れる)
      (彼方此方で起きているだろう争いを避けるように進んでいたせいか、いやに静かな部屋へと辿り着いた)
      (何が起きているのかは分からないが、派手に暴れているのだろう)
      (それにより時偶起こる揺れで水が落ちる…その音が聞こえる程に静かな部屋)
      (静か過ぎて、不気味な位で…思わず、足を止めて周りを見渡した)

      …ッ
      (この塔が出来てから、妙に左手の甲が痛む)
      (そこは、かつて令呪が在った場所)
      (ちりちりと、じわじわと、焼けるような痛みが走る)
      …もう、無いのに
      (苦虫を噛み潰したような顔で、右手を、左手の甲へ添える)
      (亡くした悲しみなど…忘れて、居たいのに)
      (…忘れる事なんて、有る筈がないのに)
      (忘れさせまいとするように痛む甲に、思わず爪を立てた)
      (どれだけ力を入れているのか、わからない ただ、血は流れていて)
      (何も考えたくなくて、流れる赤を見続けていた) -- リコール 2011-10-31 (月) 22:37:26
      • 周辺の喧騒、混沌とした状況……
        対照的に静謐な空間、吸い込まれ…そのまま溶け込み、沈みそうな蒼

        手の傷み越しに、伝わり流れ込んでくる…
        …叫びにも似た、誰かの声無き声が何処からか聞こえて

        一面の青の部屋とは全く異質な……血のように禍々しい赤い粒子が視界に混ざり始める
        -- 2011-10-31 (月) 22:57:05
      • (自分がつけた傷とは違う…また、焼けるような痛み)
        痛ッ…  …?
        (痛いのに変わりはない けれど、先程とは違う)
        (何かが、違う)

        …こ、え?
        (声が、する)
        (聞こえる)
        (よんで、いる?)
        (状況が理解できず、思わず狼狽える)
        (すると 一面の蒼に)
        (朱が、混じる)
        …!
        (見覚えのある朱に、思わず目を見開く)

        ら、い…  せん、さ、
        (もう居ない筈の)
        (…亡くした筈の)
        (名前を思わず、口にした) -- リコール 2011-10-31 (月) 23:13:53
      • 視界に映る紅い粒子の根源は、もはやリコールの記憶のみにある仮面の従者ではなく……見上げる程の黒の巨体
        人を模しながらも無駄を削ぎ落とし、一方で刃のように鋭角的な部位を多数備えた…
        機械仕掛けの巨人……塔の外周で翔んでいた存在と幾らか似ては居たが
        その先へと飛躍した機体なのは直感的に理解できる

        黒い巨人が双刀を構えて待つ姿……何処と無く、誰かと重なって見えて
        -- 2011-11-01 (火) 00:52:07
      • (見覚えのある朱いそれ…しかし当然、自分のサーヴァントではなく)
        (無意識に、肩を少し落として小さくため息を付いた)
        (…しかし、その黒い巨人さえも何処かしら見覚えがある気がして…思考を巡らせる)

        (『……塔の外で見た、「あれ」…いや、似てはいる、けれど…』)
        (…そう、きっと…あれより、「上位の存在」)
        (『…あれと似ている…つまり目の前の「これ」も…自分の敵では?』)
        (ただ立ち尽くして頭だけを動かしていたが、そう思い至り)
        (何時でも動けるように、攻撃できるように、神経を研ぎ澄ます)
        (黒い巨体を睨みつけ、動きを待つ…)

        (…何故だろうか)
        (人ですらないのに)
        (姿形が似ているわけでもないのに)
        (敵なのに)

        (何故、こんなにも…彼を想起させるのか、わからなくて)
        (じわり、じわりと…心が乱されているような気がして)
        (これすらも敵の思惑ではないのか)
        (鬩ぎ合う思考を振り払うように頭を振って)
        …来ないのなら、仕掛けたって、良いんだぞ

        (通じるのかも分からない挑発…聞こえるか聞こえないのか、分からない程度の声で)
        (きっと、挑発と言うよりは自分を鼓舞するようなもの) -- リコール 2011-11-01 (火) 01:23:36
      • 何かを守る役目を課されているのか、気勢を挙げるリコールとは対照的に黒い巨体は不動……
        、泰然と宙空で静止する一方で。一歩でも先に踏み出せば一転容赦無く武威を行使するであろう威圧感

        奥に見えるのは無数の結晶だが
        -- 2011-11-01 (火) 20:32:49
      • (奥に何があるのかも、黒い巨人が何のためにここに居るのかも、リコールには分からない…)
        (暫くの沈黙の後…漸く、一言)
        …動かないのなら、肯定と取らせて貰おう
        (そう言うと深呼吸をひとつ)
        (そして、巨人を見据える)

        (『あちらはこちらの事を既に認識している』)
        (『なのに、動かない』)
        (『それなら、一か八かに賭けてみるのも…悪くは無いかも知れない、な』)

        (左手の痛みが、何かを伝えている)
        (それは何が起きる予感なのか)
        (…悪い事では無いのでは、ないか)
        (もう一度確かめるように…右手でそっと、左手の甲を撫ぜる)
        (流れていた朱が伸ばされ、朱に染まっても、知った事ではない)

        …ライセンサー…… グラハム…グラハム・エーカー!

        (最早呼び掛けではなく)
        (そうであって欲しい…と言う、縋るような、そんな叫び)

        (どうしても)
        (どうしても、拭えないのだ)
        (もしかして)
        (もしかして、彼が─)

        応えろッ!!! -- リコール 2011-11-01 (火) 21:25:27
      • 破れかぶれなリコールの悲痛な叫びが…微かな希望に縋り願うように名を呼ぶ声が、
        広間に響き渡り、やがて…元の静寂が戻る
        対峙する黒い巨人には一見して何ら影響を及ぼさずにみえたが……一石投じた波紋は徐々に広がる

        誰かから伝わるように感じた痛みが、また少しづつ一層の熱を伴って
        ……呼び掛けに応える熱い血潮か鼓動のように

        先刻まで泰然としていた巨人の様子にも変化。
        無音で大気を震わせ、過剰なまでに紅い粒子を放出…漆黒の装甲が灼熱して深紅に輝く
        -- 2011-11-01 (火) 21:58:47
      • (自分の声が広間へ吸い込まれ…静寂が、帰って来る)
        (『…やはり、見当違い…だったのだろうか』)
        (期待はしていないと言えば、嘘になる)
        (先程より落胆の色は大きく出て、視線を下に落としそうになる)
        (そう、落とし「そう」に)

        …っつ、ぅ…
        (先程より一層の痛みが、熱が、襲ってくる)
        (思わずしゃがみ込み、左手を抑えるように…体で、右手で、包む)
        (…けれど何故かそれは、心地の良いものに、感じられて)
        (痛みの恐怖から逃れるように)
        (痛みに、縋っている)

        (─そして、巨人が動く)
        (その体制のまま、顔だけ上げて、変化を瞳に映す)
        (黒を深紅に染めて動くそれ)
        (呼びかけの後の静寂…そして、この変化)
        (『そうか…これは、やっぱり…敵だったのかも、しれないな』)
        (悔しそうに、悲しそうに)
        (顔を歪ませて、深紅を纏った巨人を見つめる)

        (『…動かなければ』)
        (未だ痛む左手を握り締める)
        (『……動かなければ』)
        (しゃがみ込んでいた体を動かして)
        (漸く、と言った様子で立ち上がり)
        (じゃり、と地を踏みしめて、踵を返そうと─) -- リコール 2011-11-01 (火) 22:36:11
      • その場を動かぬまま、機械の巨人は声もなく咆えるように己を灼いて
        赤熱した装甲表面が周囲の水気を瞬く間に蒸発させ、白い蒸気を巻き上げる
        リコールが『敵意の前兆』と判断して距離を取ろうとした刹那の後、轟音
        呆気なく黒い機体が ――― 爆ぜる
        -- 2011-11-02 (水) 00:14:19
      • (轟音に思わず動いていた足が止まる)
        (耐え切れなくて、耳を塞いだ…そこで巨体が、爆ぜる)

        (巨人と余り距離を取れていなかった為か、爆風が襲ってくる)
        (自然と耳を塞いでいた手は、視界を守るように自分の目の前へ)
        (無防備なそこを襲ってくる…そんな可能性も捨てきれなかったが、そんな余裕もなく)
        (目を瞑り、気休めの様に手を振って、煙を払う) -- リコール 2011-11-02 (水) 00:31:08
      • 唐突な爆発の轟音と高質量の物体の落下音……広がった白煙が辺りを覆う
        再び静寂が戻り、傷の熱い痛みもまたいつのまにか引いて
        座り込むように墜ちた黒い機体、残骸から人影が起き上がって
        リコールの方へと向かって来るのが、おぼろげながら見えてくる
        -- 2011-11-02 (水) 01:01:47
      • (部屋に静寂が戻る頃には、周りを確認する余裕も出てきた)
        (けれど、煙はまだ引いて居ない)
        (警戒して周りを確認し続けていて…ふと、違和感に気付く)

        (『…痛みが』 …ない)
        (塔が出現してずっと、続いていた痛みが…何時の間にか引いている)
        (先程まであんなに、熱くて…)
        (けれど、縋っていたせいか…何処か引いた痛みが恋しくて)
        (『…何故寂しさを感じているのか、分からない』)
        (自嘲するように軽く笑って、赤く染まった甲を再びそっと撫でる)

        (…そうしていると、目の端に何か動くモノが見えた)
        (素早く顔をそちらに向けて、睨みつけるように目を凝らし…人影を見つめる) -- リコール 2011-11-02 (水) 01:19:36
      • (白煙の向こう側の人影を警戒してか、睨み付けるリコールへと掛けられる…誰かの声)
        やれやれ………待たせたのは悪かったが、そんなに怒る事もあるまい。
        (何処か聞き覚えのある、男の声が) -- 仮面の男? 2011-11-02 (水) 01:29:43
      • ッ!?
        (声を聞いて、肩を揺らす)
        (最初は、突然の声に驚いただけだった)
        (敵かと思って、驚いただけ)

        (けれど、それは聞き覚えのある声で)
        (…その声を、聞き間違える筈など、無くて)

        …っレディを待たせるな、馬鹿者
        (何時も、そうやって返していた)
        (だから、口から出るのはそんな言葉ばっかりで)

        (それでもきっと顔は、情けない事になっているのだろう)
        (そんな顔を向けるのが悔しくて、顔を下へ向ける)
        (自分の足元にだけ小雨が降りはじめたように、丸く濡れた跡)
        (顔を落としたからか、またひとつ、新しい跡を作った) -- リコール 2011-11-02 (水) 01:49:08
      • …ハハッ、面目もないが。主人よ、そう顔をくしゃくしゃにしては美人も台無しだぞ?
        (何処かとぼけた調子の返事も、以前と似たようなものだ)
        何はともあれ、再会を祝したいものだが……そうもいかないようだな
        (身を屈めていた男が主人を不意に懐へ寄せて、微かに頭上を見上げる…数瞬の後、何処かで何かあったのか……塔全体に奔る激震)
        (大きな揺れ、パラパラと天井から砂礫が降って) -- 仮面の男? 2011-11-02 (水) 22:21:08
      • (場に似つかわしくないとぼけた返答に、思わず笑う)
        …見ない間に、上手い世辞が言えるようになってるとは、な
        何をしていたか…分かったもんじゃない
        (未だ鼻を啜りながらだが、顔を袖で拭って…上げる)
        (ぎこちないながらの、笑顔)

        …ぅ、わっ
        (不意打ちとばかりに引き寄せられて思わず声をあげる)
        (不満の声を続ける前に…従者の視線に気付き、追うように見上げた)
        (…そこに、大きな振動)

        塔も再会を祝っている……と言う訳でも、無さそうだな
        (やれやれだ、と言わんばかりに肩を竦めて、軽く息を吐く)
        (『…しかし、他の奴らが暴れている物にしては…大きすぎやしないか?』)
        …これは何事だ
        (頼れるサーヴァント様は、どうお考えで?…と、言いたげな視線を投げる)
        (…そもそも、そんな遣り取りしている暇さえ、あるのだろうかとも思いつつ)
        (それでも、何とかしてくれるだろう 目の前の、頼れるサーヴァントならば) -- リコール 2011-11-02 (水) 22:53:20
      • (実を言えば主人以上にまるで状況を掴めていないような有様なのだが、)
        (男の直感はこれがよくない兆候と告げている…不思議と思い浮かぶのは)
        柱の崩壊(ブレイクピラー)』……
        (呟いたのは軌道エレベーターの倒壊事件の通称、それが意味するのは…)
        創世記曰く、統一言語の塔は人の傲慢さ故に神の怒りで崩れたそうだ
        (バベルの説話)
        主人よ、猶予まで読めんだけに長居は奨めんが……
        何かを為しに此処へ来たのであれば、早々に終わらせに行くとしよう
        (的確ながら根本的に解っていない男の返答) -- 仮面の男? 2011-11-03 (木) 00:19:13
      • (呟いた言葉、そして続けられた話に眉を寄せる)
        …説明すると長いんだが、殴りに来た相手が居たんだ
        しかし、なんだ

        (他のマスターが塔に入っていく中、ひとり考えて居たのもあるのだけれど)
        (こうして、自分のサーヴァントが帰ってきてくれたのを見て)
        (…怒りだとか、そういうものが…消えてしまったような気がして)
        (……でも、それを口に出してしまうのは)
        (今は少し)
        (時間と勇気が足りない)

        …他の奴が、十分なまでに殴ってくれている事だろうから
        わたしは遠慮しようかな…自分の身も、可愛い事だし
        (シスターを殴る筈の自分の両手は)
        (もう既に、サーヴァントを掴んでしまっているから)
        (申し訳無いが、大役は任せる事にしよう)
        しかし、この状況…そう易々とわたし達は帰れなさそうだぞ
        …わたしの頼れるサーヴァントは、どうしてくれるんだ? -- リコール 2011-11-03 (木) 00:56:30
      • (見れば主人の逡巡と何か言いたげな素振りは解ったが、)
        (敢えてこの場では口に出さぬ事を選んだのも察せられただけに)
        …そうか。譲るならば長居は無用、撤退するとしよう
        (今は問い質さぬ程度には意を汲む良識が男にもあったらしい)
        現在地がよく判らぬだけに、のんびり主人の来た道をあるく…とは、流石にいくまいしな……
        (次第に礫が降り始めて、主人を庇いながら問い掛ける)
        主人よ、此処は一つ……空を飛んでみたくはないか?
        (答えも聞かずに召喚を始めて) -- 仮面の男? 2011-11-03 (木) 01:42:13
      • とりあえずドンパチやっている所は避けて…とやっていたからな
        引き返すにしても遠回りだろう…間に合わないな、多分
        (ここに来るまでに結構時間を食った…そもそも正確に道を覚えているとも言い切れない)
        (それにこの有様だ、在った道が失くなっていると言うのも考えられる)

        (『さて…とりあえず…』)
        (何も言わずとも自分を庇い思考を巡らせるサーヴァントを見て)
        (『…死ぬ事は無いだろうが…どうなることやら』)

        (毎度の如く、根拠の無い自信とは違う)
        (…今は、ひとりじゃないから)
        (けれど状況を考えると呑気なのだろう自分の思考に、くすくすと笑っている所に)
        (想像もしていなかった、突然の問掛け)
        (思わず、ぽかんとして)

        は……そ、そら?
        (問い掛けた割に答えを聞く様子が全く見られないライセンサーに、思わず鸚鵡返し) -- リコール 2011-11-03 (木) 02:12:05
      • ああ、空へ…な。初めてでも心配は無用だ、エスコートは任せるがいい……!
        (場に召喚されたのは先とはまた違う、漆黒の機体…アレよりは寧ろ塔の外で見たモノが近いだろうか)
        間に合わぬなら、間に合うように…切り拓くしかあるまい。
        (無論、新たな道を…だ!と男は愉しげに笑う)

        (カスタム仕様のユニオンフラッグ、ライセンサーの愛機…それを再現した宝具)
        (その予備シートへと、有無を言わさずに唖然とした主人を押し込んで)

        ユニオンフラッグ、グラハム・エーカー……出るぞ!
        (機体が翔び発つ) -- 仮面の男? 2011-11-04 (金) 12:32:04
      • (『空を「とぶ」って…まさか』)
        (『「跳ぶ」では、なかろうか』)
        (こんな状況なら致し方ないであろう提案でも、思わず血の気が引く)
        (けれど、そうではなく)

        …これ、は
        (これこそ正に、先程見たものより塔の外で見た「あれ」に近い)
        (今更ながらにあれは塔によって力を利用されていたのだと気付き)
        (少しだけ怒りが舞い戻ってきたような気がしたが)
        (…この状況でも愉しげに笑う男を見て、別に良いかとも、思う)
        (それだけ、秀でている能力だと)
        (それだけ、秀でている従者だと)
        (胸を張ればいいんじゃないか、なんて)

        (またも、状況を考えずぼんやり思っているとシートへ押し込まれ)
        ちょっ、待──

        (空へと、翔んだ) -- リコール 2011-11-04 (金) 22:23:19
      • (文句をぶつけるべき男の姿は傍には無く、窮屈な予備搭乗席に不可思議な機器)
        (外部全周の光景が内部に投影され…見えるのは目まぐるしく変わる風景)
        (リコールの視界は機体の視点であり、同時にライセンサーと共有の景色)

        (背へと押しつけるような加速の次は身体ごと遥か高みへ持ち上げられるような浮遊感)
        『主人よ、もう少し荒く翔ぶが…問題ないか?』
        (機体の飛行が安定したからか、正面のモニターの隅から男の顔…機内の通信回線からの音声)
        (加速が増して、塔の内壁面が一気に近付き)

        (そして……) -- 仮面の男? 2011-11-05 (土) 11:00:13
      • (翔んだ瞬間思わず固く目を閉じて)
        (暫くしてゆるゆると目を開ける)
        (先程自分を有無を言わさずシートへ押し込んだ張本人は側に居らず)
        (文句も言えず、ただ周りを見回す)
        (見慣れない機器、そして、見慣れない景色)
        (思わずぼんやりと見入っていたが、小さく軽い体は慣れない感覚に翻弄されていて)
        (落ち着かないとそわそわとしていると、表示される映像と流れる音声)

        どうせ駄目だと言っても聞かない癖に…なに、問題ない
        (とその声に答えた瞬間の、加速)
        (近づく内壁面を見て思わず再び固く目を閉じる) -- リコール 2011-11-05 (土) 23:04:45
      • (瞬きすら許されぬ速度、内壁への到達は一瞬)
        …果たして性能差は絶対か?速さは質量に勝てないか?
        否、断じて否!そんな道理は、私の無理で……抉じ開ける!
        (男の口元から溢れる多量の鮮血……限界以上の過負荷に肉体は悲鳴を上げるが無視)
        (刹那という限られた刻限を濃密に…最大限まで謳歌する為に、己が一命睹して)

        どれ程巨大であろうと、如何なる分厚い塊とて……砕けぬ理はない!
        (立ち阻む壁面とて例外ではなく)
        (過充填した電磁加速砲弾が収束、破壊が剰算されて壁面を穿ち…空への道が築かれる) -- 仮面の男? 2011-11-06 (日) 23:42:40
      • (祈るように、自身の体を抱く)
        (そして無意識に)
        (何時ぞやの、最初で最後の戦争の時の様に、ライセンサーへ魔力を送り始める)
        (リコールを支配する感情は恐れか?諦めか?怒りか?悲しみか?)
        (…それとも、全て混ぜ込んだ上の、期待か?)
        (彼女のすべてを占めるようなそれで、塞き止めていた何かが外れ)
        (体の何処に在ったのか分からない程の魔力が、溢れる様に流れ出す)

        (自分の左手の甲)
        (…消えていた筈の令呪が)
        (何時の間にか再び、戻っていて)
        (光を放っているのに気が付かない)
        (……令呪を消費している訳ではないそれは、ライセンサーの叫びに)
        (想いに)
        (そしてリコールの祈りに)
        (想いに)
        (反応して)

        ライ、センサー…っ!


        (より一層と輝くと同時に、道が開かれた)

        …………ライセンサー
        (か細い声)
        (声だけ聞くと誰だか分からない程、何時もと違う声で、名前を呼ぶ) -- リコール 2011-11-07 (月) 07:09:32
      • (存在すら削って枯渇寸前だった男、そこに不思議と湧き出す活力……流石に根源の見当は付く)
        (直には見えずとも、こうして共に…この空に或るのは確かな事実で)
        (血で汚れた口元を拭い、祈るように呼び掛ける微かな声と後押しする力に応えて) -- 仮面の男? 2011-11-07 (月) 23:24:05
      • (瞑目前の脳裏に微かに過った衝突のイメージ、視界を閉ざして時間も判然としない中…その瞬間は不思議と訪れない)
        『……リコール、目を閉ざしては勿体ないぞ。この広い空を、世界を……見ずに…』
        (搭乗席に響く男の声、微かにかすれて聞こえるが)
        (塔を取り巻く暗雲を突き抜けた先、雲の高みの、空の上) -- 2011-11-07 (月) 23:27:04
      • (その声に従って、目を開ける)
        (固く閉じすぎていた所為か…少しだけ視界がぼんやりする)
        (目を擦って、言われるがままに目の前に広がる世界を、瞳に映す)

        …ライセンサー
        (やっぱり何時もと違うような、情けなく細い声)
        (今度は自分でも気付く程に…今発した声は誰のものかと思う位で)

        わたしは、こんなに綺麗な空を…初めて、見た
        ……いや、空は何時も綺麗だったのかも、知れない、けど
        ………わたしは、空を見ては、来なかったから

        (…何故今こんな話を始めているのか、自分にも良く分からないけれど)
        (それは、無事に生きて、脱出出来ていると言う安堵からなのか)
        (たどたどしい喋りではあるものの、自分の事を話している、そんな意味では)
        (何時も以上に、饒舌になっている気がして)

        …何時も、前だけを見て歩いていて…だから
        ……わたしに、世界を見せてくれて、ありがとう…グラハム
        (順序を立てていない、要領を得ない喋り方だけど)
        (それでも、伝えたくて) -- リコール 2011-11-08 (火) 01:02:17
      • (空に包まれ、見惚れたように声を喪い、茫然とするのを…妨げずに見守って)
        ……礼には及ばん。
        (かすれ震える声で語り出し、静かに。ゆっくりと独白するのを相槌ながら…)
        (溜め込んできた言葉を全て吐き出せるように促して)
        (拙くも伝わるものはある、短くとも示せるものがあるように)

        (一筋縄でいかぬ輩に囲まれながら…幼くとも侮られぬように、)
        (頑ななまでに気丈に振る舞う…一人でも平気だと示す様に)
        ……リコール、何処へ行きたい?
        (利口で愚かで、優しく素直な…誇り高き少女へと男は問う) -- 仮面の男? 2011-11-08 (火) 22:17:49
      • …わたしは

        (何処へ、行きたいのか)
        (…いつの間にか、自分の手には令呪が戻っていて)
        (サーヴァントも自分の元へと戻って来てくれたけれど)
        (もう、聖杯の道は閉ざされてしまった)
        (縋った希望は、消えてしまった)
        (望みは叶わなくて)
        (…死んだ人間は、生き返らなくて)
        (自分は一体、どうしたい?)
        (どこへ、向かいたい?)

        …かえりたい…家に、かえりたい
        (単純に、問いに答えるように出た言葉が)
        ……たわいのない会話をして、笑い合って、毎日、しあわせな家に…かえりたい
        (…手に届かない希望を望む言葉へと、変わって)
        もうひとりで食べるごはんはいやだ…
        もうひとりで寝る毎日はいやだ…
        もうひとりで過ごすのはいやだ…やだ、いやなんだ…

        (そこに居るのは)
        (昔持っていた小さな幸せを望んで、泣きじゃくる)
        (ただの小さい少女だった) -- リコール 2011-11-09 (水) 00:44:23
      • そう、か……。ならば……
        (帰ろう、キミの家へ……絞り出した痛切な想いに応えて)
        (男は故国で広く知られた『故郷への道』という曲を思い浮べる…二度とは戻れぬ郷里へ想いを馳せた歌)
        (彼女が聖杯に託し、取り戻そうとした過ぎ去った日々)
        (其処にはやはり戻れる筈もなく…もはや誰も、彼女を出迎える者が居ないのだとしても)

        (今また孤独な日々へと怯える少女に再度告げ)
        リコール。案内してくれ、キミの家を。私に見せてくれ…『我が家』を
        (ただいまと告げる彼女へと、おかえりと応える位はしてやれる) -- 仮面の男? 2011-11-10 (木) 01:04:43
      • (自分の元へと戻ってきてくれて、守ってくれて)
        (…こうして今も、自分の側に居てくれる)
        (それだけでも十分過ぎる程なのに)
        (…なのにまだ自分は我侭を重ねようとしていて)
        (『自分はもう大人な筈なのに』)
        (『ひとりでなんでも出来ていなきゃいけないのに』)
        (『…きっと聞き分けのない子供だと、思われてしまった』)

        (呆れられるかも知れないと、思った)
        (返ってくる言葉を想像しては、怖くなって)
        (…なのに、返って来た答えは、自分が今一番欲しかった物で)

        …っまかせろ
        (そう言ってすっかり涙を吸って色を変えた袖で、また顔を拭い)
        ついでだ、家までの道を覚えておくといい …行こう

        (前を向いて、帰り道への指示を始める──) -- リコール 2011-11-10 (木) 20:35:15
  • ──────────────────────
  • - 再世の塔 ・ 蒼の広間 -
    • (水浸しの広間。宛ら運命の輪でも模した様な車輪を中央に添えた……蒼碧の水の中に、其れは立っていた)
      (腰まで届く長い黒髪)
      (同じく黒い軽装の鎧)
      (そして、何より黒い瘴気を纏ったその異様の少年)
      (丁度入り口から背を向ける形で、水淵の前に佇んでいる) -- 黒髪の少年 2011-10-27 (木) 03:57:42
      • (見間違いのはずない。自分が見間違えるはずがない)
        (もうすぐここは爆破される。一人では逃げられないかもしれないのはわかっていた。それでも)
        (あの子に――セイバーに会える可能性が少しでもあるのなら、迷いはない)

        (自分達の戦った場所。二人が水に沈んだ場所にそこは良く似ていた)
        (ぱしゃん、ぱしゃんと水の上を走る音。薄く張った水に波紋を作る)
        (あの時と同じように、彼の元へ走る。黒いドレスが水を吸って重くなっても)
        (運命の輪の前で、ふたり)

        …セイバー…生きて…生きていたの…ね…?

        (震える声で、背中に呼びかける)
        -- スー 2011-10-27 (木) 04:10:14
      • (水に沈むその広間の中央で、背を向けたまま、嗤い声を漏らす……小さく肩を揺らして、嗤う)
        (嗤うたびに微かに揺れる波紋が、花嫁のドレスから伝わる其れと交わる)
        (運営の輪の前で、振り返る)

        生きている……其れは正確ではない。元より余は死んでも生きても居ない

        そうだろう、スィーニ?

        (濃紺と菫の瞳を揺らせて、嗤う) -- 黒髪の少年 2011-10-27 (木) 04:34:55
      • (ああ)
        (何もかも、あの時と同じ)
        (誓いを交わした終わりの日)
        (愛しい人がそこにいた)

        そう、ね…心臓の音は偽物で真似ているだけ…命も記憶も模造品…スーと同じ。
        (思い出を確かめるように口にする)

        (ゆっくりと歩き出して)

        (彼まであと二歩)

        (彼まであと一歩)

        セイバー…っ!!!!!!!!!!
        (名前を呼んで、胸に飛び込んだ)

        (涙にぬれる瞳を彼に向ける。間近で見る顔は、愛した人。彼)
        …もう会えないと思ってたの…一人で生きていかなくちゃって…でもずっと会いたくて…!!
        あの時矛盾の魔王に奪われてしまったと思ったのに…逃げてこられたのね?
        -- スー 2011-10-27 (木) 04:46:38
      • (抱き締める。愛おしく、狂おしく、強く強く抱き締める。もう二度と離さないとばかりに)
        (贋物の心音。贋物の記憶。贋物の身体)
        (最初からそれは全て贋物だった。贋物をこり固めた贋物のサーヴァントが其れだった)
        (故に目前の其れは聖杯がもう一度産み出した複製といえど同じ事)

        (しかし)

        其れは余も同じ事だ……よもや水底に『沈んだ後にまた』見える日か来るとは……魔王たる余もさしもに予想だにしなかったことだな、ふふふ……

        (違和感が伝えてくる)

        第一、逃げるも何もない……闇は余だ……『即ち、水淵もまた闇であり、闇は魔王であり、余なのだ』……聖杯の闇すら余にとっては問題ではない 

        (確かな齟齬を伝えてくる)

        二人で闇に堕ちたのだ……一人で生きることはない……死もまた甘美だ

        (それは柔らかな本物の笑顔で伝えてくる)
        (贋作を複製してもそれは贋作の複製でしかないということを) -- 黒髪の少年 2011-10-27 (木) 05:20:29
      • (温かい、失ってからもずっと求め続けていた体温がそこにあった)
        (抱きしめる腕の強さも、彼のもの)
        (これは全部偽物の作り物。でも本物なの。スー達にとっては……)

        (でも)

        (なんだろう)

        (この子は……違う

        (覚えてない。本当の…「最後の日」の事を)

        (………そうか)

        ………そうね。「貴方は闇そのもの」
        (矛盾の魔王の闇の中に喰らわれて、今はもう闇に溶けて消えてしまった)
        ………二人で堕ちたのに一人で生きるなんて残酷なこと…「あるわけがない」よね。
        (涙を流して、最期に自分を呼んだあの子が夢だったらどんなに良かったか)

        (やっぱり)
        (貴方はもう…いないのね)

        あったかい…(彼の頬に触れる)
        (こんなに同じなのに)
        (こんなに違う)

        …やっぱり、貴方は貴方ね。今、はっきりとわかったわ。
        スー達は、偽物でも、本物だった。
        あの日々の積み重ねで…本物になれたのよ。

        …やっぱり、スーはセイバーがいい。本物の、貴方がいい。

        (ここは全て偽物の作り物の塔)
        (死んだサーヴァントの「情報」をまた再世しただけ)
        (なんて残酷で、なんて醜く寂しい所なんだろう)
        (シスター…かわいそうなお人形さん)
        (取り戻せない過去を求めて、過去と同じものを造ったとしても、もうそれは別なもの)

        (あねさまも、ギルデも、取り戻しても違うものだ。それでもいいと思っていたけれど)
        (目の前の彼を見ていても、苦しいだけ)
        (こんなに愛しいのに…)

        ねえ、キスして。いつもいっぱいくれたでしょう?
        そして好きだって、愛してるって言って…水底に沈む前の夜、ずっと囁いてくれたみたいに。

        (甘えた声で、誘う)
        (足元の、水の中の影が、少しだけざわめいた)
        -- スー 2011-10-27 (木) 06:19:02
      • (スィーニの、愛しい女の言葉を聞いて微笑む。全て得たりといった表情で深く、愛しく……微笑む)

        ……汝相手に今更気取ってもしかたないから云うがな……
        ……ずっと会いたかった。もう会えるなんて思っていなかった……水底に沈み、共に堕ちた伴侶とどうしてまた会えるなどと思うだろうか……?

        (嘘偽りのない言葉で贋物の言葉を綴る。黒髪の少年にそんな自覚はない)
        (何故なら彼は複製だから。水底に沈んで死んだ複製だから)

        くく……聖杯の力すら利して共に運命を捻じ曲げたのだ……スィーニ、もう二度と手放さないぞ、悉くが余のものだ

        (彼の言葉も気持ちも全てが本物。本物の贋物)
        (本物を切り取って張り付けた贋物)
        (本物と寸分の狂いもないバックアップ。むしろ沈んだ後の矛盾の魔宮で起きたエラーがない本当の純正品)
        (言葉すら交わしていない蛇足の日々……それがない本当の黒髪のセイバー。それが目前にいるはずだった)

        今更何を憚る必要があるか……愛しているぞ、スィーニ

        (感情に任せて強引に花嫁を押し倒し、水の中で肢体を絡め、舌を絡める)
        (互いの身体が水を吸い、尚一層重くなる)

        ……どうしようもなく一途なところが好きだ、スィーニ……

        (水淵に墜ちたあの日と同じように)

        ……そうやってあっさりと愛欲に堕ちる脆さが好きだ、スィーニ……

        (強く強く抱き締めて、唇を奪う)

        ……何時までも余との過去を忘れぬ未練が好きだ、スィーニ……

        (もう、明確に本心だと分かるか。どうでも佳い)

        ……自らを棚に上げて余に寄り添うことに腐心するいじらしさが好きだ、スィーニ……

        (幸福ならだったらそれで良かった。嘘も真も関係なかった。今も昔も真実に価値など無い)

        ……愛に餓え、すすり泣く様が好きだ、スィーニ……

        (主観で其れが不幸だと云えるのなら)

        ……自らの答えに躊躇わない様が好きだ、スィーニ……

        (例え其れが客観から見て幸福でしかなくても)

        ……闇歩む覚悟故に自らよりも他者に憐憫する傲慢が好きだ、スィーニ……

        (闇は不幸を肯定する)

        ……解答することを厭わない汝が好きだ、スィーニ……

        (利己を求めた女に覆い被さり、自らの欲望の求めるままに貪る)

        ……邪悪を邪悪と理解して振りかざす賢しさが好きだ、スィーニ……

        (破滅以外に道が示されても、破滅こそが正しいのなら誘おう……この手で)

        ……その癖、満足に自ら御せない感情に戸惑う様も好きだ、スィーニ……

        (其れもまた夫の役目。そして夫の矜持)

        (目を醒まさせてやろう。暖かい深淵で)
        (耳の奥まで響かせてやろう。宵闇の嬌声で)

        ……そこまで狂気に塗れても……そこまで血に穢れても……余を手放さない汝が好きだ、スィーニ……

        (末期の患者に安楽を与えるように……ただ、不幸を抱いて囁く)
        (水淵の中……ただ抱いた)

        (恐らく之が最期だろう……そう確信しながら……甘い時間を貪る)

        (彼が諦めた最後の愛を……そっと肌を重ねて、耳元で囁いた)

        ……真っ黒に汚れた、どうしようもない罪人のスィーニを……愛しているさ……いつまでもこうしていられるかは分からない、聖杯は寛大ではないぞ……?

        契約を履行してやる……今度は『3人一緒』だ……続きは来世だ
        (そっと告げる。諦めることを……彼は贋物だ。聖杯の贋物ゆえに知っている。一度聖杯の底に墜ちたからこそ知っている。ずっとはいられないと。聖杯が機能を停止すれば直ぐにでも自分はまた消え去ると)
        (故に今再び過去を繰り返そうとしている。幸福の為に……嘗て手にかけた男のように、過去を繰り返そうと……スィーニの首に手を伸ばす) -- 黒髪の少年 2011-10-27 (木) 08:16:08
      • スーだって、会いたかったよ…ずっと、あの時から…気が狂いそうなほどに…
        目が覚めたら、貴方がいないの、でも泣けないの。泣いたら壊れてしまうような気がして。
        壊れてしまったら、貴方の命が無駄になってしまうような気がして。
        だから必死に…自分はまだ幸せだと、子供がいるから幸せだと、自分に言い聞かせて…。
        でもずっと会いたかった……抱きしめて欲しかった……

        ……抱きしめたかった…。

        (愛しい人の自愛に満ちた微笑み。こんな顔を見せてくれたのは初めてだ)
        (満ち足りて)
        (幸せな顔)
        (…ずっと見たかったはずなのに)

        (けれど、違う
        (絶望して、敗北感に苛まれて、最期に涙で自分を求めた少年が彼の顔に重なる)
        (…あの子も、この子も、どちらのセイバーも複製の複製だ)
        (同じどころかきっとあちらのセイバーの方が再現度では劣っているはずなのに)

        (浮かぶのは自分の死に怯えた少年の顔)
        (愛しく思うのは遠い恋人を呼ぶ震えた声)

        (ずっと会いたかったのは…目の前の人、魔王として自信に溢れ、何者をも恐れない彼のはずなのに)

        (あの頼りなく、惨めとも言える少年が恋しくて)
        (言葉も交わせなかった数日間が、声も届かなかった夢が、どうしてこんなに心を占めるのか)

        (本当に、抱きしめたいのは……誰なのか)




        (愛している)


        (一番聞きたかった言葉の後に、唇が触れた)
        (冷たい水の上で、体を重ねる)
        (彼の体温は温かいのに、指先の動きは熱を与えてくれるのに、体は冷えていく)

        スーも…あいし… っ ぅ…んっ…
        (答えは唇に塞がれて、最後まで言えない)
        (あの夜と同じ、優しい囁きと、とけてしまいそうな快楽)
        (好きと言われる度に体に甘い疼き)
        (押し殺せない嬌声が広間に響く)
        (喪服がはだけて、白い肌が蒼い光に照らされて)
        (揺さぶられる体が水音を立てる)
        (意思の強い瞳が自分を捉えて離さない)




        (ああ、貴方はどこまでも愛しい……)

        偽物


        ……そう…やっぱり、消えてしまうのね…貴方は元々模造品にスーの願いを混ぜた存在。
        一番…消えやすいのかもしれない…夢だから。
        (上気した顔で悲しげに微笑む。紅をひいた唇が、妖艶な弧を描いた)
        (側の顔に乱れた吐息を隠しながら囁きを返す。瞳を閉じて)

        ……その迷いのなさを、全てを支配し貪り尽くそうとする強欲さを、限りなく優しく包んでくれる闇を、縋りつける強さを


        ……愛して「いた」わ。


        そして…

        愛しているわ…弱くて脆くて…悲しい子。
        今際の際で、恋人の名を呼んで泣く事しか出来なかった貴方を。

        (彼の手に力が篭る前に、赤い瞳が彼を射抜くように開かれて)

        酷い人、子供が流れたらどうするの?ふふっ…
        ……ごめんなさい。貴方と一緒には行けないの。
        でも3人はずっと一緒にいられる方法はあるわ。
        (迷いのない、晴れやかな笑顔)



        (そして……――最後の呪印が光る―――)



        ねえセイバー…『スーに食べられて頂戴』
        その力を貴方を取り戻すために貸してほしいのよ。

        (服がはだけたままの扇情的な姿のその下…水の底から)
        (闇色の影の腕が無数に伸びて、彼を飲み込もうと絡みつく)
        -- スー 2011-10-27 (木) 09:48:48
      • (甘い表情のまま、甘い雰囲気のまま、甘い時間のまま)

        ……何……?

        (理解の外にある言葉が紡がれる)

        ……食べられ……て……?

        (スィーニの言葉を聞いて、まず最初に怪訝な顔をする。理解できなくて)

        スィーニ、何を云って……!?

        (次に驚愕に顔を歪める。理解できなくて)

        ……余を取戻す……? 聖杯から、か……? なら、既に汝の願いは……!?

        (次の言葉を紡ぐ事は出来ない。その口は影に覆われ、塞がれる)
        (花嫁に覆い被さる自らの影。其の影に身体が飲み込まれる)
        (四肢を縛られ、花嫁の身体に尚一層押し付けられる)
        (身体を裂かれ、臓腑を引きずり出される)
        (濃紺の瞳を抉られ、血の涙を流す。菫の瞳は見開かれ、其の瞳孔が震えて花嫁の顔を捉える)

        (其の貌は美しかった。其の貌は愛おしかった)
        (以前は全てを云えなくて後悔した。躊躇って後悔した。だから今度は躊躇わなかった。躊躇わずに手を伸ばした)
        (なのにどうしてこうなっている。どうしてこうなってしまった)
        (分からない。全く理解できない)
        (ただ今分かっている事は一つしかない)

        (彼女は本気だ。喰らい尽くされる。魂の一片に至るまで全て)

        (咄嗟に首に伸ばした手に力を入れる)
        (令呪に抗い、か細い女の首筋に力を込める)
        (これが自分の花嫁で在るはずがない。折角また闇の向こうで巡り合えた偶機を摘み取ろう筈がない)
        (これは花嫁ではない、何者かが操っている。そうに決まっている。そうであってくれ)
        (理解の外にある事象は理解してはならない。狂気と正気の狭間で正気から目を背ける事でしか振り切ることはできない。心ある故にそうせざるを得ない)
        (呪うように、願うように、少年は腕にぐっと力を込める) -- 黒髪の少年 2011-10-28 (金) 01:28:40
      • (令呪が光り、熱を持つ)
        (彼は闇に縛られ影に押しつぶされていく…間近で)
        (肉を裂く音が聞こえる。零れ落ちる血が闇から降り注ぎ白い肌を赤く染めた)

        (目はそらさなかった。離れもしなかった)
        (最後まで、側にいたくて)

        (愛してるものとは違う…本物(偽物)でも)

        (あの肉塊から現れたセイバー…彼にはきっと令呪は効かなかった)
        (「化け物になりたくない」と言う自分の遺言を守るために、肉塊の作用を押さえるために、死の間際に肉塊へと転写された彼の劣化品には)

        (どちらもきっと同じ偽物。どちらがより本物に近いかといわれれば目の前で驚愕と苦悶の表情を見せる彼の方)

        (でも自分にとっては…)
        (あの、言葉も交わせなかった、魔王に負けた脆い少年が……)
        (……――本物になってしまった)

        …怒らないで……優しくわがままを聞いて。ずっとそうしてきてくれたでしょう?
        スーの事そんな風に見ないで…いつもみたいに、抱きしめて。
        (いつの間にかこぼれていた涙。両手で狂気に怯える彼の頬を包んだ)

        許して…スーは「貴方」と「生きたい」の。
        (切ない言葉。涙で揺れる瞳は彼が愛した魔王の花嫁のもの)
        (忘れようもない。最後の夜に彼を求めて囁いた時の顔)

        (彼の両手が首を絞める)
        (令呪に逆らって力が弱くなっていても、女の首を折るのなんて容易い事)
        (その間にも闇は彼を蝕み、取り込んでいく)


        (どちらがどちらを殺すのが早いだろうか)

        (そんな事をかんがえて、ふっと笑う)



        (どちらでもいいんだ)
        (ここで死ぬのなら…運命)
        (これは賭け。もう一度自分の物語を続けるために必要な力を手に入れるための)



        愛して…る…わ……。


        (愛しげに笑顔を浮かべて声を絞り出した)
        -- スー 2011-10-28 (金) 02:22:16
      • (血の涙を流しながら、嘆きの吐息を漏らしながら、聞いてしまう)
        (致命的な其の言葉を……聞いてしまう)

        (揺れる瞳孔が止まる)
        (手に込める力が無くなる)
        (令呪の力が完全に発動した為か、それとも闇に力を奪われきった為か……どちらも要因ではあったが決定的な理由ではない)
        (決定的な理由(トドメ)なんて分かりきっている)

        (そう、闇の中で少年は理解してしまったから)
        (理解しなければ未だ幸福であったろう事実に……理解しなければ幸福になれなかった事実に……矛盾するスィーニの気持ちの正体に……気付いてしまったから)

        (目前の少女はもう自分を見ていない)
        (自分を見ながら自分を見ていない)
        (あの瞳は覚えている。最初に自分を見たときと同じ瞳だ)

        (そうあの瞳は――)


        (誰かの面影を重ねている瞳)


        (――そういう瞳)

        (ああ……そうか……)
        (……そう云うことか……)

        (血の涙を流す紺瞳を閉じて、見開いた菫瞳も細めて……少年は『笑う』)
        (既に口は塞がれ、喉も裂かれて声も出ない。それでも伝わる。伝わってしまう)
        (互いの気持ちを『理解』してしまう)
        (故に少年は語る。口など最早必要ない。耳すら最早余計である。そう断じて語る)

        スィーニ……汝は既に……(未来)を手にしたのだな
        故にもう……(過去)が居なくてもいいのだな……?

        (既に半ば影に没した口元を満足気に結ぶ……誇るように。諦めるように)
        (力の抜けた手を伸ばして、頬を伝うスィーニの涙を拭う)
        (甘やかして悲しみを拭う)

        (其の手すら、影に咀嚼されて消える)

        (だが、最早これでいい。何も問題はない)
        (余は昔の男の話をされるのが嫌いだ。だからコレで佳い)

        (全てを理解して(諦めて)しまった故に……少年は笑って逝く)
        (未来)を欲する人の子に……(過去)が敵うわけがないのだから)

        なぁ……スィーニ……

        (最後に震える声で聞く……消える直前、闇に飲まれる直前に、音のない、震える声で彼は聞く。声なき声で彼は聞く)

        余は……余はもう……必要ないのか? 汝をもう()さなくてもいいのか……? -- 黒髪の少年 2011-10-28 (金) 03:00:35
      • (賭けは自分の勝ち)
        (……けれど、勝つのは初めからわかっていたの

        (だってセイバーはスーを愛しているから)

        (偽物でも)
        (本物でも)

        (たった一つ、絶対に同じ事)



        (彼の腕が緩んで、闇の合間に笑顔が見えた)
        (優しく涙を拭ってくれて)

        (…ああ、やっぱりスーは、貴方が好きよ)

        (偽物でも)
        (本物でも)


        (愛しているわ。寂しくて優しい貴方)


        ……違うわ、必要なくなんてない。
        貴方(過去)も、もう一人の貴方(未来)も…スーのものよ。
        誰にも渡さない。だから、神様にだってくれてやらないの。
        スーが食べて、ずーっと一緒に生きるのよ。

        (誇らしげに、闇に手を伸ばしたまま語りかける)
        (彼の顔も、手も、何も見えない)
        (目の前の闇が収縮していく)
        (消えてしまえばもう、スーのもの)

        ……貴方(未来)も愛してくれなきゃ嫌よ。
        ずっとずっと騙し(愛し)続けて…来世だけじゃなく、永遠に…!!

        貴方は、欲張りなスーが好きだって囁いてくれたでしょう?

        (悪戯をして甘える少女のように、闇に語る)
        (彼はそれをいつだって優しく認めてくれた)
        (だから今更拒んだりなんてするわけがないじゃない)

        (スーの全てを受け入れてくれる貴方…全てはスーの願いのままに)




        何を犠牲にしても、何を踏みにじっても…取り戻したいものがあるの
        だから、スーと約束して…力を貸して?

        (彼を呼んだ日の様に言葉を紡いで、あどけなく)

        (笑った)



        (………人形(ホムンクルス)は人になり、そしてまた人ではない何かに変わる)
        (それはどこまでも残酷になれる、何よりも純粋な想い…)
        (……恋ゆえに、愛ゆえに)
        -- スー 2011-10-28 (金) 03:54:24
      • (スィーニの言葉が影に響いて……其の貌が歪む)

        (喜色に)

        (影が蠢く。影が犇く……そして……)
        ……くくく……ふふふふ、ははははははは……!(微笑する)
        己を省みぬ欲望。人の理に反旗を翻す意志……拭えぬ背徳への確信と、そこから生まれる無限の力……甘美な畏敬と強欲だ……佳いだろう……嘗て余から奪ったものは無数に居たが、余を取戻す等とのたまったのは汝が初めてだ……

        ……心地佳い、汝が闇に応えよう……

        (そして……その手を掴む)

        今こそ契約は為された……だが心せよ(影が膨れ上がり、確かな輪郭を伴ってスィーニの中に顕現する。スィーニの手を掴み、身体を引き寄せ……気恥ずかしそうに笑う)


        ……愛への願いを欲する手を掴むのは、同じ愛ある手でしかないということを……


        (闇の中で、影の中で、スィーニの中で、其れは呟く。堂々と、其れで居て少し照れながら……愛を呟く)

        (嘗て魔王を倒そうと願った者の物語は無数にあった)

        (しかし、囚われの魔王を助ける少女のお話なんて……ただの一つもありはしなかった)

        (きっと誰も望まなかったから。きっと誰も信じなかったから)

        (此処で紡がれた話はそういう話。これからも語られず、そして語られても信じられない贋物のお話)


        (……真実に価値なんてないけれど……誰も願わない真実に価値なんて微塵もないけれど……)

        (たった一人の少女が願う真実なら……悪くもない気がした)

        (魔王の話は誰もが幸せになったりはしない。必ず誰かが不幸になる。勇者か魔王のどちらかが必ず不幸になる)
        (優勝劣敗はこの世の理……誰も彼もが幸せになったりなんてしない。誰かが幸せになれば必ず誰かが不幸になる……幸福は有限なのだ。人々は其れを望む)


        (だけど、偶には……誰にも語られない一人の為だけのお話なら……)


        (悪者が幸せになったって……魔王もお姫様も幸せになったって……佳い気がした)


        ……偶にはハッピーエンドも悪くない……


        (贋物の魔王は贋物のお姫様を抱いて笑う。幸せそうに。嬉しそうに)


        ……愛しているぞ……スィーニ……過去も、未来も……永久に……愛しているぞ……


        (最期の最初にスィーニの胎中でそう呟いて……少年は再び闇へと回帰して逝った) -- 黒髪の少年 2011-10-28 (金) 12:57:56
      • (高らかな笑い声。闇に喰われていく闇が手を引き引き込まれる)
        (そこには彼の、人らしい笑顔)

        (そうよ貴方(セイバー)に気弱な顔は似合わない)
        (いつも自信たっぷりに笑っていて欲しい…でもそういう可愛い笑顔も好きよ)

        ……ごめんなさい。わがままで。
        ふふ、でも駄目よ、「契約ではなく、約束」よ?
        涙に沈んだかわいそうな貴方を一緒に助けに行きましょう…。

        (囁かれる愛に幸せそうに微笑んで、抱きしめる)

        (子供が残った。だからこれで幸せなのだと必死に思い込もうとした)
        (でもそうじゃない。やっぱり貴方がいないと駄目なの

        (だから助けに行くわ)
        (孤独な魔王はもう独りじゃないの)
        (泣かないでと、抱きしめに)

        (物語を「探しに」行くのではなく、物語を「創りに」行くのよ)

        (誰も望んでいない物語でも、スーだけは望んでいるの)
        貴方(魔王)を助けたい。貴方(魔王)と幸せになりたい)

        (腕の中で彼を見る。なんて幸せそうな笑顔。大丈夫よ、その笑顔はもう誰にも曇らせさせないの)


        魔王は少女の愛で人になり、それからずっと幸せに暮らすの。
        ね、素敵なお話でしょう?

        (そして彼が消えていく。闇の中へ。そしてその闇を体が吸い込んでいく……)

        (……最期に、彼の声)

        (スーも………永久に……愛しているわ…愛し続けるわ…セイバー…)

        (答えは彼にきっと届いているはず。だってもう貴方はスーのお腹の中)




        (運命の輪はただ静かに。広間は蒼い水をたたえている)
        (残されたのは、身重の少女)
        (ひとりドレスをととのえ、胸の返り血を指ですくって舐めて)

        ……ふう、おなかいっぱい。

        (緊張感のない可愛らしい声で満足げに、目立ち始めたお腹をなでた)

        (影から日傘を出し、軽やかに水の上を輪る)





        (…………………………そして、広間からは誰もいなくなった)
        -- スー 2011-10-28 (金) 19:08:49
  • ──────────────────────

Last-modified: 2011-11-10 Thu 23:29:59 JST (4550d)