BGBR/0007
「まったくもう……」
バトルも今日で最後、最後と言う事は必然的に勝ち残った強い相手と当たると言う事で……
本当に粘りもプレイヤースキルも凄かった、だからこそ勝敗が決した時「勝った!」と言うより「終わったー…」って心情が口をついた。
グレイプニル、って名前を付けているARMSを畳み、つい今しがた倒した相手に「ごめんね」と心の中で謝る
ぶっちゃけボクが同じ立場ならそんなのを言葉に出されても困るし、バトルに参加してるなら織り込み済みの事……のはず
そして勝者と敗者が必ず生まれるなら、ボクは負けて裸を晒す方になるなんて冗談じゃなかった
賞金や最強の称号なんかより、むしろそっちの方が勝ちを掴み取るためのモチベになっていたりするわけだけど……
「え、ホントに……?」
最後のバトル相手に「お疲れさまー」と声をかけて手を差し出してから1時間程
自室のモニターに表示された結果を見て、素っ頓狂な声が出てしまう。
信じられなことに優勝できてしまうとか、まさかの展開が過ぎる
ランキング表の一番上、金色の王冠の場所にボクのアバターネームを見ても俄かには信じられなかった
数多くのプレイヤーが現実に戻ったであろう後の事、ボクはまだUssaの中にいる。 優勝者として最後に聞くべきことがある、との連絡があったからだ。勿論その内容は察しが付く、だからそれに従ってここに来ている。
「さて、では約束通りキミの願いを一つ叶えよう」
そう口にするのは、ボクにしこたま撃たれてボロボロになったGMこと、事件の張本人「カピバラ」だ 撃ったのはとりあえずのケジメみたいなもの、現実に戻ったら多分こいつは騒動の犯人として手が後ろに回るくらいの事はされる……と思うタブン どっかの創作で見たAIだったり電子生命体だったりはしないだろう、しないよね? ともかく、起こした事に対する罪はそっちで償ってもらうとして、銃弾は多くの女子の肌を晒させた個人的な憤りの代償とでも思ってもらう事にしよう っと思考が脱線しちゃった、願い、願いかぁ…… そこまで考え、改めて頭の中を整理して……ふと思いつく 優勝は無理だろう、そう思いつつも、叶えて貰いたい事を色々と想像していたし、ついさっきまではその内の一つをお願いしようとしていた けど、それを押しのけるくらいの一つの発想、それがボクの脳内に閃いたのだ 「……じゃあ」 おずおずとその内容をカピバラに伝える、そしてカピバラは一つの頷きと共に 「叶えよう」 短くそう答えた、ボクがUssaの中で覚えている記憶はこれが最後だった -- ハルミ
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──────────── 1 years later ──────────── 「でさー……って、ハルちゃん聞いてる?」 「えっ?あ、ごめんごめんアキちゃん、ちょっと考え事しててー」 と、ボクと同じ制服を着ている子に謝る。 ここは白銀台学園のテラス……を模した、新たなフルダイブ型VRゲーム『天魔福音』のゲーム内 Ussa(ウサ)を更に発展させ、進化を遂げた最新鋭の電脳世界だ あの時、罪とか犯人とかそう言う事を思い浮かべた時、多分Ussaはサービス停止か回収されるだろうな、と思った 事実、こんな危ないもので遊ばせられるかーって世論が叫ばれるだろうし……奇蹟的に死人は出なかったけどその流れが止められる要素になるとは思えない…… 折角苦労して育てたUssa内のデータはおじゃん、同様のVRゲームにも大きな影響が出ることになるだろう だから、そうなったら絶対勿体ないなーと思って、ボクはお願いしたんだ 「Ussaの開発をした人材と、データを残さず全部頂戴」って 後は優勝賞金の大半を投資し、その人材とデータの受け皿となる会社を作って貰って……開発会社のガワをそっくり入れ替えただけとも言う 悪いのはあんな事を仕組んだ人、フルダイブ型のゲームに罪があるわけじゃない、そんな考えが今に至るってわけで…… 原作者に許可を取ったり、あんな事が起きないようなセーフティーを組み込みました!って言うのを認めさせるのは結構骨が折れたようだけど その苦労の甲斐はあったんだと思う、あって欲しい。 「ほら、討伐の指令が来てるよ」 一緒に遊ぶ友達のアキちゃんがメッセージを見せてくれる 「もうちょっとゆっくりしたいんだけどなー、けど、ネヴィル討伐がボクらの役目だしね」 と、二人でリンカーを抜き、ウイングハイロウを駆り、宙に舞った こんな事が出来るのはゲームならでは、今にして思えば、あの3週間が無ければ存在しえなかった未来 少しだけ過去に思いを馳せ、今日も一人のプレイヤーとしてこの世界を楽しむのである -- ハルミ
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- バニーズ・バトル終了のメッセージが流れる
そしてボクの上に出るのはLOSERの文字、わざわざ顔を向けて確認するまでもない 銃弾を受けた痛みもないし、斬られた傷もないけれど、こっちが勝ってる要素は殆どなかったから 「負けちゃった、かぁ……」 バニースーツの破れた部分を腕で隠しつつ、そう呟いて小さく息を吐く それなりに対人をやってきてそれなりの腕だとは自負していたけれど、今日の負けはちょっと凹む 評価レートが圧倒的で、ボクのは2/100しかない、いわゆるメタられたってヤツだ -- ハルミ
- 「おつかれさま、大丈夫?」
今日の相手だった女性のプレイヤーがそう声をかけてくる、無事の確認は肌を晒してしまっていることに対して バトルフィールドは視線が通り難い廃ビルの中で、開始告知もOFFにしているけれど、見ている観客はいるだろうから 「ありがとう、でも問題ないよ」 装備欄から外套を選択し上から羽織る、バトルはバニースーツでってルールだから終わったら関係ないし……多分ね 「そ?それにしても……その武器ビルドはいただけないね?今回みたいになるからさ、私がいいビルド教えてあげよっか?」 相手は親切心で言ってくれているのは分かるけれど、ボクは勝ちよりも好きでこの装備にしているから…… だから、感謝しつつ適当にはぐらかしてバトルフィールドを後にする、これももう慣れたやり取りだった -- ハルミ
- (初回集計を見つつ)ボクは…っと、真ん中くらいかあ、今一つぱっとしないなー
けどまあエンジョイ勢だし、ガチな人に及ばないのはしょうがないとしても…やっぱり一位は取りたいなあ -- ハルミ
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