施設/コロッセオ
- Life or death
- Life or death
- 第一試合
- (なんだってこう都合が良く試合が組まれるのか キャスカの先日の試合を知らない兎は、拘束具を外されながら苛立つ)
(さてはこの忌々しい人間たちとグルになっているのか) (自分ならば嬲り殺せると見くびられているのか 巡る考えはますます苛立ちを助長し) (── 考えてみればあの目は猟犬にも似ている。ならば、あの人間は群れの仲間ではない、自分の敵だ) (馬鹿にしやがって 枷を外された口がそんな形で動いた) (コロッセオに降り立つ 闘士と敵意の篭った目で、相対する人間を睨めつけ) ばかに しやがって… -- ヒメリンゴ
- (内心ではここまで上手く事が運ぶとは思っていなかった その驚愕と、この場に立つことができる嬉しさに神に感謝すらしたくなる)
(そう、宿願叶って、とうとうあの獣人と相対することに成功したのだ アリーナの上、邪魔する物はどこにもない) (まるで猟犬のように鋭く眼前の相手を捉え、眼を細める それは敵意か、歓喜か、それとも別の感情か 兎にも角にも目の前の相手は同じようにこちらにも敵意を込めて睨んでくれているではないか) (少女からすれば、それは恋心抱いた相手からのウインクにも匹敵する甘美な目線であった 心躍る内心を最早押さえる事も無く――すっ、と、肉体に刻まれた武が、腰を落とし迎撃の姿勢を取らせる) (そして、試合開始の銅鑼が甲高く鳴らされた) -- キャスカ?
- (深く腰を落とした姿勢、いつでも地面を蹴れる姿勢。)
(人間より随分鋭敏な聴覚であったが、今は周囲の罵声も野次もその耳に入らない。ただ一人の人間だけに全ての意識は向けられている。) (銅鑼がけたたましく鳴るより早く、足が地面を蹴った。) (勢い良く舞った土煙はその速さを、深く抉れた地面はその力強さをこれ以上無く証明する) (たった一蹴りしただけで、随分空いていた二人の距離は縮まった。) (フェイントだとか撹乱するとか、そんな上等な知能はこの獣にはない、ただ真っ直ぐ詰め寄ってその首に爪の一撃を喰らわせる。それだけだ) (たかが人間が自分の速さについてこれるか、と笑う。) (銅鑼の音と共に、左足の爪が地面を掴む。横薙ぎの蹴りでその首を叩き折ろうと) -- ヒメリンゴ
- (銅鑼が鳴る寸前、眼前に血に飢えた獣が迫る その速度、迫力、どれをとっても先日の獅子など比べ物にもならない)
(笑みを浮かべながら必殺の蹴りを放つヒメリンゴの眼に、はたして捉えられただろうか――キャスカの、同じように口元に浮かぶ笑みを) (相手のすさまじい勢いの横薙ぎの蹴り、それにぴったりと合ったタイミングで――少女の身体が右脚を軸に回転する) (軸となる右脚の踏み込みは同じように地面を抉り、その脚力を遺憾なくもう片足に伝え――左脚による後ろ回し蹴りで、ヒメリンゴの右脚を迎撃する) (それはあたかも一つの芸術品のように、足を振り上げ打ち付け合う二匹の獣の姿と共に、銅鑼の轟音が鳴り響いた――死合いが始まる) -- キャスカ?
- (兎の目が丸く見開かれる)
(受け止められた それも、恐らくわざと。つまりこの人間は、自分の動きを目で捉えて 更に攻撃をぶつけてきた) …! (瞬時に右足を引くと、そのまま打ち合ったキャスカの左足首を掴む。) (左足は地面を、右足は相手の体を思い切り蹴ってサマーソルトを繰りだそうと両足に力が篭った) (よく見なくても、この人間も両手を封じられている。) (両手を封じられている、しかも人間に負けるなんてことは 絶対に嫌だ) ばかにしやがって、ばかにしやがって…! -- ヒメリンゴ
- (心地よい衝撃が左脚に来る とうとう自分の蹴りを受けきれる速度と威力を持つ相手と戦えるのだ――全力を出せる。そんな感動が全身を包む)
(左足首を掴まれ、右脚のみで身を支えるが、天性のバランス感覚としなやかな筋肉は重心を崩さない 相手の腰が沈む 感じるは脚の振り上げによるサマーソルト) (その発想、間違いではない 両腕が使えない相手の、片足を封じたこの状況での大技は悪くない ”両腕が使えなければ”だが) (敵のサマーソルトに対するは、己が筋肉と両腕の鎖 まず相手の地面をける左脚を見据え、腹部にくる右脚の蹴りを――両腕に巻かれた鎖を打点に重ねる事で、防御する) (そして左脚の振り上げを、相手の右脚を防御して生まれた反発力を利用した片足のみのバックステップで回避する その隙に左足首の拘束も振りほどいて) (両腕の鎖の上からでも鈍く響く痛みに、しかし耳は傾けず)……(相手の体勢が整っていない隙に、今度はこちらから反撃を繰り出す) (見せてやろうではないか 獣の業しか持たぬこの相手に、人間が練り上げた技術の大成である奥義――敵の身を踏み台として使う攻撃の神髄『殺陣』を) -- キャスカ?
- (先ほどから期待外れの感触ばかり掴まされる。柔い肉を弾き飛ばすつもりで出した技は硬い何かに阻まれ)
(確かにこの右足が掴んでいた感触は失われた。) (身を捩って左足一本で着地する。大いに崩れた体勢、兎は迷う。) (野生の勘はバックステップで逃げるべきだと告げている、しかしその一方この先この人間が何をしようとしているのか) (それを見てみたい、と思う気持ちも僅かにあって) (一瞬背後に引きかける体を、地面に爪を食い込ませることによってその場に留めた) (右足が遅れて地面に着けば、のけぞった体勢を戻す。) (ここで引くものか、と足は再び相手に向かうため地面を蹴ろうとした) -- ヒメリンゴ
- (ヒメリンゴが再度の突撃に地面を蹴ろうとした刹那――目前に、石のつぶてが高速で飛んできた)
(先程回し蹴りで踏み込んだ際に砕いた岩盤の一部を、足で正確に高速に蹴り飛ばし、ぶつける技――『訃霞』がプレゼントされたのだ) (だが、真の目的は当てる事ではなく隙を作る事 これから放つ奥義には隙が必要不可欠なための、キャスカの初めの一手であった) (そして蹴り飛ばした飛礫を追い掛けるように――少女の体躯が疾走する 目標は眼前の敵の腹部、鳩尾――!!) -- キャスカ?
- (耳が風切り音を捉える、考えるより早く体は反応していた)
(一直線に飛んでくる弾なら避けるのは容易い、それが一対一の勝負であるのなら特に。) (僅か体を反らすだけで、目的を果たせず後方に飛んでいく礫の音を聞きながら) (落胆を覚え、それは明らかな隙となって相手の接近を許した) …っ! (全身の力を以って体勢を戻そうと、腹筋から嫌な音が聞こえた気がしたけれどお構いなしに) (しかし、あまりに遅すぎた)
(鳩尾に走る衝撃、一瞬弾ける視界)…ふっ ぐ (肺から一気に空気が漏れる) -- ヒメリンゴ
- (この獣は、どうやら人間の技を「ばかにした」 人間ごときが自分の爪に、力に敵うはずがない、と――それが訃霞を避ける隙を生んだ)
(そのままぶつかりながら突貫してくれば、まだこちらも攻め手を失っただろうに かくして、目論見通り敵の鳩尾に、相手の脚とは構造の違う、槍の様な鋭さを持ってそれは突き刺さった) (そしてそのクリーンヒットを幕開けとして、始まるそれは、『殺陣』――鳩尾に刺さった右脚の飛び蹴りを、そのまま踏み台としてさらに体重をかけ) (奇跡的なバランスの元、左脚爪先を相手の胸骨に突き刺し、さらに踏み砕く勢いで体重を掛ける その反動を用いて鳩尾から右脚を引き抜き――敵の顔、下顎から突き上げるように膝蹴りを叩きこむ) (胸骨を踏みぬいて前かがみになった相手に、膝蹴りで強制的に上を向かせ、そのまま右足を伸ばし切り―――トドメに、眉間への踵落とし 無茶な体勢から、体重をかけて放たれたそれは兎の顔面に直撃して) (自分の身が足場を失い、地面に落ちる 受け身を取りつつ――『殺陣』が完璧に入った感触を脚に残して さて、これで倒れる相手だろうか、この獣人は) -- キャスカ?
- (それは始めて味わう痛みに近かった。)
(目まぐるしく痛い箇所が変わって、視界は安定しない。息をつく間すら無いとはこの事か) (ぐるん、と顔が上を向く 向かされる。随分と空が青い、一瞬そんなことを考えた) (さて、今までこれ以上の痛みなんて散々人間に味合わされた筈だが…) (今感じているこれは、今まで感じたそれより随分気持よく体に染み入る) …は (そして兎はようやっと気付いた。つまりこの人間は、自分の存在を蔑むでも無く馬鹿にするでもなく、真っ向から認め) (それでいて、勝負を挑んでいるのだ、と) ははっ… (まともに顔面に受けた蹴り、脳は既に痛いだなんて上等な感覚を伝えない。視界が白に染まっていく) (ぐらりと倒れそうになる体。飛びそうになる意識、しかしここで倒れてなるものか と) (消えかかっている意識の中、兎が浮かべているのは実に楽しそうな笑顔。長い爪が、地面から離れかかった足を留めた) (地面を蹴り、思い返す。最初は鳩尾だったか) こうだった かな(独り言の様に呟いて、先ほどの『殺陣』をトレースしたような初撃が繰り出される…が、恐らくその攻撃は相手に届かないだろう) (何せ蹴りが届く前に兎の意識は吹っ飛ぶだろうし、何よりまず 相手にもう少し、隙が足りない) -- ヒメリンゴ
- (受け身から捻りを用いて綺麗に立ちあがりながら、相手の表情が目に入る それはとてもすがすがしい顔で、恐らく自分も同じような顔をしているのだろう)
(そう、自分の全力を受けられる相手と戦うのは、楽しい どこかこの獣人との間に、言葉では交わせない絆を、感じた様な気がする そしてその新鮮な驚きは、相手の反撃に向けられた) (あのダメージからの、よもやの反撃――素晴らしい!叫びだしたくなるほど素晴らしい相手の攻撃に、ふと既視感を感じる) (立ちあがった己の、まごう事無く鳩尾を狙って繰り出されるその蹴りは――先程自分が見せた『殺陣』に他ならないではないか この獣人は、一瞬で先程の動きを振り返り、あろうことか反撃に用いたのだ) (相手への称賛の拍手が、心の中で止まない ―――でも、)…そうじゃないよ(足りない。蹴りの速度も距離も狙いも正しいが、隙が足りない) (既に自分の両脚は地につき、敵の蹴りに十全を持って立ち向かえる 兎の繰り出した、鋭い爪を伴って放たれる、本来なら人間が放つよりも高い威力を誇るであろうそれは――少女の繰り出す爪先によって、まるで剣戟を受け流すかの如く、弾かれた) (『倶梨伽羅』と呼ばれる対刃物用の足遣いの応用――隙のない相手への『殺陣』は、それだけで大いに危険が伴う 追撃の準備が出来ている自分と受け流されふらつく相手――勝負は着いた) -- キャスカ?
- (何がいけなかったろう、先ほどと何が違う?速さか、それとも狙いか、それともあの礫?)
(なんにしても、こうじゃないらしい) そっか (鈍い頭のスイッチは、答えにたどり着く前にパチンと切れた) (今度こそ、堪えきれず 爪は地面を殻滑りして)…(今日は、負けたよ人間 最後の負け惜しみを言ってやりたかったが叶わなかった) (先ほど受けた衝撃は体内に見事に響いて、言葉の代わりに溢れるのは血。地面が赤く染まって) (その上に倒れこむ、それで決定的に勝敗が決した) (時間にしてみればあっという間であったこの勝負に、観客がどのような言葉を浴びせるかそれは定かでないが…少なくともこの兎は満足したらしい) (意識を失って尚、その顔に浮かぶのは笑みであった) -- ヒメリンゴ
- (追撃の構えの必要は無くなった やはり流石に獣人と言えど、『殺陣』の連撃がクリーンヒットすれば、意識を借り取るらしい …いや、それでもなお反撃したこの獣人に、敬意を表すべきだろう)
(地に伏し、血にまみれる獣人に、一応細心の注意を払って脚先で脈を取る 完全に意識は刈り取ったようだが、生きてはいるようだ …安堵する、それは剣闘士としては間違った感情なのかもしれない) (しかし、これでいい 自分はこの戦いに、一片の悔いも不満もない 自分の実力を出し切れる、素晴らしい相手と相対したこの数瞬を忘れない)
(観客席は、既に動く気配が無い二人に向けて、大いに怒声を飛ばしていた 勝者であるキャスカには、「殺せ!」の大コールが贈られる) (…”ふざけるな”。この素晴らしい戦いを、他者に貶められてたまるか。すぅーーーーぅ、と大きく大きく息を吸い込み、そして……) ―――ッッ!!(観客席全員のそれよりもはるかに大きい雄たけびを放つ それは、狩猟民族の持つ強い声帯と肺活量による音撃であった) (余りの迫力に、一瞬、シン…とコロッセオが静まり返る そんな中、床に倒れている獣人の肩を担ぎあげ、共にアリーナの出口へ歩み始める 数瞬遅れて、さらなる怒声に包まれるコロッセオを、満足した気持ちで後にした) -- キャスカ?
- 第二試合
- Life or death
- 第一試合
- きゃっ…!(ゲートから、奴隷が蹴り出される。起き上がって当たりを見回すと、そこは想像もしていなかった場所だった)
(円形の闘技場。周囲の壁は高く、客席を埋め尽くす人々はまるで遠い国の人のような何を考えているかわからない目で私を見ている) (渡された剣を引きずりながら、壁まで下がる。こんな汚れた下着姿を見られていると思うと、羞恥に涙がこぼれる。もしかしたら、あの中にクラスメートがいるかもしれない。雑貨屋のおじさんや、よく公園を散歩するおばさん。彼らにこんな姿を見られていたら、もう顔見せできない。) いたっ…(だが、壁まで逃げると、客が石を投げておいたてる。小さな石が肩に当たり、悲鳴をあげながらアリーナの真ん中へ逃げる) -- シィラ
- (アリーナに出されるのは初めてだった。今までは訓練場のようなところでおそらくシィラと同じような見所のない奴隷を集めたチーム戦を行っていた) -- シィラ
- (ぎゅうっと剣を抱きしめ不安に震えていると、向かい側のゲートが開くのが見えた)
(もしかして、出してくれるのだろうかと淡い期待をしながらゲートが開くのを見ていると、長身の男がゲートから現われる。潤んだ瞳ではよく見えないが、手に剣を携えているのがわかった) (じりじりと、後ずさる) -- シィラ
- (今日の相手はどんな男だろうか?それともモンスターだろうか?軍隊時代に愛用していた質実剛健なつくりの剣を手に、アリーナへと歩みでる)
(剣はよく磨かれていて、他の剣闘士が使う使いまわしのさびの浮いたものと違いアリーナに立てば陽光を反射してまばゆい光を放つ) (ここで終わるわけにはいかない。遠い地で暮らす家族の顔を思い浮かべ、覚悟を決める) (ぎゅっとグリップを握り…)いない?(最初、アリーナに対戦相手の姿が無いと思ったのは、その相手があまりに小柄だったからだ) (そして、そのよく見知った姿に剣を取り落としそうになる) シィラ…… -- ケイン
- あ…(現われたのはよく知っている顔だった。ほっと胸をなでおろし、不安そうな顔に小さな笑顔を浮かべて鎖を引きずりながらよろよろと歩み寄る)
たすけて、ケイン……(きっと、今回も助けてくれる) -- シィラ
- (言葉を失う。これは意図的に組まれた対戦カードなのだろうか?貴賓席を睨む。きっと、あのボックスの中で張本人は笑っているのだろう)
(シィラがこちらに来る前に。目の前でシィラの顔を見て、匂いをかいでしまう前に、大仰に剣を立てて構える。これ以上、シィラが近づけば…きっと自分は) -- ケイン
- …え?(最初、何をしているのかわからなかった)
(信じられないものを見るような目で、あ…あ…と言葉にならない言葉が口の中で踊る。) (ふるふると力なく首を振りながら、少しづつ後ずさる。後ろを振り向く。が、もちろん自分がでてきたゲートは閉められ、格子の向こうでは恐ろしい顔をした衛兵がこちらを睨んでいる) や、やだ…たすけて……(剣を抱きしめたまま、ケインに、すがるような目を向ける) -- シィラ
- (だめだ、それは出来ない。そう言いかけて口をつぐむ。もし口を開いてしまったら、きっともうシィラを……)
(シィラを殺すことは出来なくなってしまう。) (振り上げる剣の動きが遅いのは、いたぶろうと思ったのではなかった。それは、まだ強く残る迷いゆえだった) (剣がまっすぐ天を向く。もうこれ以上、上げることはできない。振り上げた剣は下ろすしかないのだ) (どこへ?) (銀色の光を反射する剣が、振り下ろされる) (少女の持つ、剣に向かって。剣ならば斬りつけても怪我をすることはないだろう。戦ってくれ!一方的ななぶり殺しなんてしたくない。それは、エゴかもしれない。しかしそう願わずにはいられなかった。) -- ケイン
- いやあっ!!(自分に向かい、銀線が閃く)
(恐怖で身がすくみ、ぎゅっと剣を抱えて目を閉じる。) (だが、下手に避けようとしなかったのが幸いした。吸い込まれるようにケインの刃が抱えた剣に当たり、シィラの身体を裂くことなく、甲高い金属音をあげて折れ飛ぶ) (だが、衝撃で砂地に倒れ伏す。長い金髪が木の根のごとく広がった) -- シィラ
- (まさか折れるとは思わなかった。使いまわしの武具はこんなにももろいのか)
(だがこれで「勝負あり」だ。) (剣をおろし、客席を伺う。どうかこれで許して欲しい。シィラからは見えないが、きっと懇願するような目をしていただろう) -- ケイン
- (殺気立つ観客におびえる。)
(なんていってるの?わからない…わからない……) (こ) (ろ) (せ) (すぐにはわからなかった。まず、殺すということ場に思い当たる。そして誰を?) (そしてそれを理解した。逃げなきゃ…。ケインから逃げようとするが、腰が抜けて起き上がれない。しりもちをついたまま、後ずさる) (だが、壁に近づこうとすると観客の投げた石が当たり、それ以上は下がれない) -- シィラ
- (やはり許されるわけが無かった。ゆっくりと先ほどよりも剣をあげる)
(こんな年端もいかない少女を手にかけなければいけないのか?俺は……。) (剣が頭の高さを越える) (俺は、どんなところでも間違ったことはしたくない…しかし、しなければ自分が殺される) (剣がまっすぐに天を向く) (俺は……。見下ろした少女の顔が妹に重なる。顔立ちは全く違う。もっと垢抜けなくて田舎臭いどちらかといえば小太りのさえない娘だ) (俺は……) (剣を高く上げたまま、考える。何か無いのか…なにか……) -- ケイン
- い、いや…たすけ…おねがい……(今まさに振り下ろされんとする剣に、かちかちと歯を鳴らす。)
(懇願の声すらまともに出せない。全身が恐怖にすくみ、あわ立つ) -- シィラ
- (俺には……)
(掲げた剣を投げ捨てる) (シィラにつかみかかり手かせの鎖を持って引きずりあげると、胸に巻かれた襤褸布に手をかけ、下に穿いた下着まで一気に引き裂く。乱暴に、可能な限り乱暴に) -- ケイン
- (剣を捨てたのを見て、ほっとした表情を浮かべる。やっぱりこの人は、私の味方だったんだ。)
(しかし次の瞬間、笑顔が固まる。無理やり引き起こされ、いたっと抗議の声を上げかけ) きゃああっ!!(着衣を剥ぎ取られ、悲鳴をあげる) -- シィラ
- (考えるんだ。酒場で見た踊り子の艶かしい踊りを……。戦友たちと遊びに出た淫靡な酒場のことを思い出せ)
(必死に自身を奮い立たせる) (シイラに残った下着をすべて剥ぎ取り、組み伏す) (獣になるんだ。獣になるんだ。言葉の通じない獣に) (少女を、そしておれ自身を辱めることで、なんとか満足してもらえないだろうか……祈るように覆いかぶさる。) (アリーナにこだまするシィラの絶叫を聞かないように。必死で、必死で少女を犯す。いつの間にか、目からは涙がこぼれていた) -- ケイン
- いやあああああああああっ!!!!
(喉の奥から悲鳴がほとばしる。) (その行為が何を意味するものなのか、まだ知らなかったがそれでも自分が今冒涜されようとしているのは感じた) (逃げようと必死でもがき、そして) (剣を突き立てられたかと勘違いした。殺されてしまったと思った) -- シィラ
- (観客が満足するまで、飽きて他所でやれと引っ込ませるまでただ何も考えずに腰を振った。)
(まるで篩いをゆするように、動かすたびに何か大切なものが網の目から落ちていくようだった) -- ケイン
- 第二試合
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