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パラドックスとは Edit

人の負の思念から生まれる怪物「怪異」の大分類のうちの一つ。妖怪・邪霊・都市伝説等に続く存在となる
確認されだしたのは高等教育が発展し数学が一般人にも普及してきた数十年ほど前。当時は未分類の雑霊の一種と考えられていた
現在も確認数は少ない部類の怪異だが、七年前の「フェルマー事件」から一般人にもその存在が認知され始め、発生数を増加させつつある

古代から現代に到るまで人類の繁栄を支えてきた「数学」の情報をベースとし、
数多の証明・反証が行われてきた理論を具現化させた存在。情報生命体という表現がちかいだろうか
「人の語る噂」が悪意により具現化したものが都市伝説(フォークロア)ならば、「人の生み出した繁栄の源」が悪意により具現化したものがパラドックスと言えるだろう
元になる理論は証明されている、反証されているを問わない


蛍光グリーンに発光する身体はパラドックスを構成する悪性情報の塊である
これらは通常空間中では急速に揮発してしまうため、斥力場を生じて殻を作る事により擬似的に身体を作り出し、現世に形を成している
そしてこの斥力を扱う能力は攻撃にも使用でき、投射することでヒトに対し危害を加えてくる
また、一定以上の強大な力を持つパラドックスは自身を構成する数学理論を元にした特殊能力を備えている事がある
特に反証された理論のパラドックスであれば物理法則を悠々と捻じ曲げる厄介な能力を備えていることが多く、対処が困難である

怪異の行う行動に対して動機を問うことは往々にして無為ではあるが、
パラドックスに関しては「自身の司る理論の実証」を目的とした行為が多く見られる
その為にヒトの生命を傷つけることなど厭いもしない
そして一度理論を実証したとしても「再現性の実証」のため犯行を繰り返す
故に他の怪異同様討伐されるべき存在である

パラドックス対策 Edit

1:物理で殴る Edit

情報生命体的存在という概要から物理が通用しないイメージを抱くものもいるが、パラドックスに対し物理攻撃は有効である
彼らの身体を形作る斥力場は自身の悪性情報が外へ漏出しないための殻である
斥力場に負荷が掛かれば維持が困難となり、損傷・破壊せしめればパラドックスは自身の形を保てず揮発する
無論斥力場は内側だけでなく外側からの干渉を阻む鎧でもあるため、個体差はあるが多少の物理攻撃であれば耐える
それでも続けて攻撃を受ければ崩壊する 他の怪異が専門であるハンターでも対処は十分可能だ

2:理論を反証する Edit

数学理論が具現化した存在であるパラドックスにとって、理論の証明は不可欠である
故に「その理論は間違っている」と突きつけられることは彼らにとって致命的になる
反証された理論のパラドックスは自身に対する反証の概要をなぞられるだけでも忌避感を覚え、場合によっては逃走する
(口裂け女に対し「ポマード」と唱える行為に類似するだろうか)
完璧な理論を論述することができれば、存在そのものを崩壊させる事もできるだろう
(悪霊に対し読経などで解呪・浄化する方法に近いと言える)
その為、有力な数学者であれば退魔師としての実力がなくともパラドックスを反証・崩壊させることも可能だ
とはいえ、強力なパラドックスは複雑な理論で構成されることも多く、その苛烈な攻撃の中戦闘力のない学者を長時間守ることは困難だろうが……

ちなみに立証された理論のパラドックスに関しては証明したとしても退去させることはできず、むしろ存在を確立させることとなる。相手を選ぶ事が肝要となる。

パラドックス図鑑 Edit

一般パラドックス Edit

怪異脅威度:E〜D
存在強度の弱いパラドックスの姿は様々であるが、単純な二次曲線グラフやシンプルな形の三角錐など複雑さのない形であることが大半である
強さもまちまちとは言え単純な斥力投射以外に戦闘力がない
このレベルであれば退魔師見習いやちょっと腕に自慢がある程度の一般人でも退けられるだろう

シュレディンガー Edit

怪異脅威度:C-
小さな猫のようなシルエットをしたパラドックス。
「シュレディンガーの猫」の思考実験理論を元に生まれた。
量子力学における確率的非決定論を司り、「生と死が重なった状態」を作り出すことを目的とする。
人間を襲っては「生きてないが死んでもいない状態」を作り出し、理論の実証を目指す。
「その場に存在するかどうかが確率で定まる」能力を持っており、見た目通りの場所に攻撃を仕掛けても外れてしまう可能性がある
ただ、理論を持つパラドックスの中では容量が小さく、あまり遠くには存在できない。その為範囲攻撃に弱い。

ラプラス Edit

怪異脅威度:B
周囲の物質の状態を素粒子レベルで観測できるならば、未来観測も可能であるとされる「ラプラスの悪魔」の仮説を元にしたパラドックス
その姿が海竜のようなシルエットをしているのは某有名怪物収集ゲームに引っ張られているからだろうか。
「未来観測」の能力を持ち、一定範囲内に於いては全てがまるで予め定まっているかのように的確に攻撃を避け、ピンポイントで敵の急所を穿ち殺害する
その能力は絶対的で観測された未来が覆ることはないが、余りにも強大な能力に容量を逼迫された代償に本体の攻撃力・防御力・機動力は劣悪
一手一手追い詰めれば「王手詰み」を起こす 自身が滅ぼされる未来観測も覆すことはできない

マクスウェル Edit

怪異脅威度:B+
分子運動の観測・操作により熱量操作を行い、無限の熱エネルギーを取り出しうるとされる「マクスウェルの悪魔」の理論から生まれたパラドックス
翼と角を持つまさに悪魔然としたシルエットで現れる
「熱量操作」の能力は空気中の分子運動からでも無限に熱エネルギーを収集、その反動で冷えた空気を生じさせ熱と冷気の両方を操る
人類が夢にまで見る永久機関の生成を成し遂げる怪異であり、各所研究者から羨望の目で見られるが、それでも政府による当怪異への対処策は「殺害のみ(Dead only)
無限の熱量と無限の冷気は野放図な破壊活動を可能にし、捕獲・制御が困難であると認識された

ヒルベルト Edit

怪異脅威度:A
大きなホテルのドアと、そこへ招き入れるホテルマンの影の姿をしたパラドックス
ダフィット・ヒルベルトによる「無限ホテルのパラドックス」を元にしており、「無限」を司る
ドアの内部はどこまでも続く廊下に無数に部屋が用意され、ホテルマンは外部の人間やモノを部屋へと招く
各部屋は常に満室となっているがホテルは無限の部屋を持っており、
泊まっている「客」を奥の部屋へ移すことで空き部屋を作り、新たな「客」を招き何もかもを飲み込む

過去に京都市神宮丸太町で一度確認されていたが、討伐報告がないまま消失、以後行方不明だった
しかし、「ヴィシャス」を生み出していた異界映画館の主、「無限」を喰らう龍・碧龍オルタードゥームとの会戦にて
ヒルベルトがオルタードゥームに捕食され腹に収まっていた事が判明する
碧龍の罠として仕組まれた「幸せな夢」の一部として京極刹那を苦しめたが、
無限を構成する無限ホテル案内の工程を逆転され、全てを吐き出し崩壊した

フェルマー Edit

怪異脅威度:A+
七年前、京都市右京区にて「フェルマー事件」を引き起こした元凶。
死者120人余りを出したこの事件はパラドックスの驚異を日本全国に知らしめ、パラドックスの増加傾向を引き起こした。

人類最大の難問とされた「フェルマーの最終定理」を元としたパラドックス
直角三角形をいくつも組み合わせたシルエットはフェルマーの最終定理が「ピタゴラスの定理」と関連していることに由来するようだ
その能力も「直角三角形状に引いたエリアの消滅」。直角を成す二本のラインにより区切られたエリアが対角線で閉じられた時、その空間は『否定』され消滅する

パラドックスという怪異を定義するきっかけとなったこの怪異は、四年前当時弱冠十三歳であった京極凱が主導した数理怪異討伐隊によって討伐が成された
以来、フェルマーの同型となる怪異の出現は確認されていない

カオス Edit

怪異脅威度:S
「バタフライ・エフェクト」としても知られる「カオス理論」を元にした、「ローレンツ・アトラクター」の形状をしたパラドックス
能力としては「初期値鋭敏性付与」を持つ。これはほんの毛先程の僅かな初期位置などの違いから結果が大きく異なる状態になるという、
予測不可能性を対象に付与する混沌を体現した能力となる。
ここから派生し周辺の大気の挙動を混沌化させることにより異常気象を操る、
「天候操作」の能力を併せ持つ。これはローレンツ・アトラクターが気象予測モデルとして考案されたことにも由来する。

神戸市灘区・星樹館学園付近で発生が確認されたこのパラドックスはこの学園に秘匿されていた禁忌遺物を奪取
そのまま大阪・舞洲まで逃走し、身を隠していた
それを追ってきた星樹館の生徒・蘭京香とパラドックスの目撃情報を聞きつけた京極凱と鉢合わせする
死闘の末ダメージを負わせた二人に対し初期値鋭敏性付与を行い二人の体を攪拌、後の京極刹那となる男性人格を持つ女性を生み出す

8月頃、忘れていた事態を思い出すべく調査に来た京極凱が率いる瑞祥高校の退魔師一行により再発見される
驚異的な力で再度凱を退け、「パラドックスによる人間の奴隷化」を要求、満たされなければ「レーヴァティンの欠片」の力により宇宙を破壊すると脅迫する
今の戦力では倒しきれないと判断され、一時撤退を余儀なくされた

そして2024年1月頃、京極刹那の上申により事態を重く見た行政によりカオス討伐作戦が展開される
全国から腕利きの退魔師が召集、被害拡大を防ぐ障壁を大規模に展開した上での討伐が行われた
以前の会戦で手口を知る瑞祥高校の生徒たちが中心となり戦闘が行われ、
最終的に身体を「微分」され能力を失った当個体は集中砲火によって討伐された
その身は特殊な道具によって能力を複製され、怪異からの能力抽出研究の実験第一号となったのだという


Last-modified: 2023-06-12 Mon 20:13:24 JST (312d)