蛇眼の吸血鬼 Edit

湿気を多分に含んだ黒髪は、背中を覆うように長く
特異な瞳孔を持つ、切れ長の釣り目は、琥珀のような色合いをしている。
主にワインレッドを基調にしたドレスを着込み、煌びやかな宝石や装身具は、見る者を魅了する程だ。

彼女は、所謂吸血鬼だ。月夜に行動し、血を喰らう。力は強く、様々な配下を従えている。
日の光を浴びれば肌が焼け爛れ、洗礼を受けた武器による傷は、治癒が非常に遅い。
流れる川を渡ることは出来ず、心臓を潰されれば、再生も行えない。
上記のように、非常に判り易いタイプの吸血鬼であることが、窺い知れるだろうか。
次は、彼女自身に目を向けて見よう。

本来、吸血鬼と呼ばれる怪物の多くは、享楽に価値を見出すものだ。
それは、肥えた舌を満足させるための血液であったり、虚無感を満たすための美術品であったり
自らの特異性をぶつけ、闘争の日々を送る者もいる。彼女は、この範疇に属する。

しかしながら、そういった連中とは、少々差異が見られた。
自ら剣を交え、術を交えるのではなく、隷属化した配下を戦わせるのだ。
大きな羽を持った怪鳥や、強靭な皮膚を持ったオーガ。卓越した戦闘技術を持った人間。
私が目にしたのは、以上の三種で全てだ。しかし、あの口振りからすれば、未だ明かさぬ、多くの配下を所持しているのだろう。
それらは全て、彼女に血を奪われ、個としての所有権を奪われた者達である。
自我と呼べる物は既に失われており、彼等に死を与えない限りは、解放されることが無い。
事実、私は怪鳥が、ハンターにより打ち滅ぼされる様を目撃した。
壮絶な争いであり、思い返しただけでも、指先が震えてペンも握れない。

この手記を読む、名も知らぬ君へ。
彼女は今も朽ちぬこと無く、宵の世界にいる。
興味本位で近付くのは、止した方が良い。
如何に弱者へ興味を持たぬ彼女でも、気紛れというものがあるだろう。
読者が減るのは心苦しいものがある。
そういった探究心は、是非私の作品で消化してほしい。

W&A社 「ナイトウィーブ」巻末コメントより抜粋 著者:エドワード・ベーラ

隷属化の悪鬼羅刹 Edit

気分で増えます

毒蜘蛛を駆る騎士 Edit

僕は、様々な怪異をイラストに認めてきた。
天空を飛び交う亡者の群れや、恐ろしい狼男。手だけが生えた、球体の悪魔なんてのもいたよね。
その中でも、格別に異彩を放っているのが、コイツなんだ。

馬が引く戦車のように巨大で、長く鋭い足を使って獲物を捕らえて離さない。
そんな化物蜘蛛を操り、戦地を縦横無尽に駆け回る、地獄の使途。
掲げたハルバートは、どんなに頑強な盾でも粉々に粉砕してしまうんだ!

けれどコイツは、残念ながら、僕が全てを考え出したワケじゃあないんだよね。
古書物を読み漁ってるときに挟み込んであった、ボロッボロのメモがそもそもの発端。
読めない文字も多かったけど、頑張ったよ。こんな恐るべき化物が、昔は存在していたなんて……。

そうなると、君達にも是非知ってもらいたい! 僕もそうであるように、君達も彼に惹き込まれるだろうってね。
だから僕は、筆を走らせた。これでもか!ってぐらいに。 満足できる出来に至るには、なかなか時間が掛かっちゃった。
でもおかげさまで、素晴らしい作品が出来上がったよ。去年の賞は、彼がいなければノミネートされなかっただろうね。

それにしても、昔の人は、彼をどのように退治していたのかな?
もしかすると、きっと退治するなんてできなくて、今も生きているのかも。
次に現れるのは、僕の隣かな。それとも……君の傍?

スチュワート社「リビングエニグマ3」P.461より抜粋 著者:ハリー・"ポエット"・ジュニア

"舌を震わすもの" Edit

そいつには体毛がない。頭部はつるりと禿げていて、瞼は爬虫類みたいにつるつるだ。
そいつには影がない。代わりに、どこの影からも現れるし、どこの闇からも現れる。
そいつには武器がない。けれど、どこの影でも武器を作れるし、どんな武器も扱える。
そいつには言葉がない。舌を震わせるような、耳障りな音で会話する。
そいつには形がない。しわがれた男のような姿をしているのに、突然どろりと溶けてしまう。
"舌を震わすもの"に気をつけろ。舌打ち声が聞こえたら気をつけろ。
足元に黒い水たまりはないか? あんたの後ろに影はないか?
ひたひたという足音もなく、あんたの後ろをついてくる禿げた男がいやしないか?
舌打ち声が聞こえたら気をつけろ。
"舌を震わすもの"に気をつけろ。
そこらの闇から、ほら来るぞ。
そこらの影から、そら来るぞ。
あんたの足元、そう、その水たまり。そいつがぐるりと立ち上がってそいつになるぞ。
倒したって意味が無い。そいつはまた水たまりに戻るだけ。
"舌を震わすもの"に気をつけろ。
舌打ち声に気をつけろ。

アニカラム大学隠秘学科教授・ロバート=ラーダーの遺した研究資料より発見された散文詩より。
なお氏は当時、何者かによって刺殺された状態で発見されたが、凶器の特定には至らず、発見もされなかった。
検死の結果、氏の体内から少量の黒ずんだ液体が発見されるも、分析を前にして何らかの理由により散逸している。


Last-modified: 2012-04-23 Mon 13:30:14 JST (2861d)